JP2016172909A - 高圧水素用容器およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
・Type I:金属容器
・Type II:金属ライナー・フープ巻き容器
・Type III:金属ライナー・全周巻き容器
・Type IV:非金属ライナー・全周巻き容器。
B−(11/14)N+(11/48)Ti+(11/91)Zr+(11/178)Hf≧0.0003
ただし、上記の式中のB、N、Ti、ZrおよびHfは、それぞれの元素の質量%での鋼中含有量を意味し、Ti、ZrおよびHfは、鋼中にその元素を含まない場合、「0」である。
質量%で、
C:0.27〜0.38%、
Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.35〜2.50%、
B:0.0003〜0.003%、
Al:0.005〜0.10%、
Cr:0〜2.15%、
Mo:0〜0.30%、
Ti:0〜0.02%、
Zr:0〜0.04%、
Hf:0〜0.05%、
V:0〜0.03%、
W:0〜0.4%、
Nb:0〜0.05%、
Ta:0〜0.05%、
Ni:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Co:0〜1.0%、
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.01%、
REM:0〜0.20%、
残部:Feおよび不純物であり、
不純物としてのP、S、OおよびNが、
P:0.025%以下、
S:0.01%以下、
O:0.01%以下、
N:0.01%以下であり、かつ
下記の[1]式で表されるFn1が、1.50≦Fn1≦2.50を満足する化学組成を有し、
旧オーステナイト結晶粒がASTM粒度番号9.0以上であり、
厚さが30mm以上の部位における内外面の硬度差が、ロックウェルC硬さで5.0以下であり、かつ引張強さが850MPa以上である、
高圧水素用容器。
Fn1=Mn+Cr+Mo・・・[1]
ただし、[1]式中のMn、CrおよびMoは、それぞれの元素の鋼中含有量(%)を意味し、CrおよびMoは、鋼中にその元素を含まない場合、「0」である。
Fn2=B−(11/14)N+(11/48)Ti+(11/91)Zr+(11/178)Hf・・・[2]
ただし、[2]式中のB、N、Ti、ZrおよびHfは、それぞれ元素の鋼中含有量(%)を意味し、Ti、ZrおよびHfは、鋼中にその元素を含まない場合、「0」である。
(A)Ti:0.001〜0.02%、Zr:0.001〜0.04%およびHf:0.001〜0.05%
(B)V:0.01〜0.03%、W:0.01〜0.4%、Nb:0.001〜0.05%およびTa:0.001〜0.05%
(C)Ni:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.0%およびCo:0.1〜1.0%
(D)Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%およびREM:0.0001〜0.20%
(i)上記(1)から(3)までのいずれかに記載の化学組成を有し、厚さ30mm以上の部位を有する高圧水素用容器の素形材を、Ac3点以上かつ850℃を超える温度に加熱した後、800〜500℃の温度域における平均冷却速度を20〜200℃/sとして、前記素形材の外面側のみから冷却して焼入れを行う工程
(ii)前記焼入れられた素形材をAc1点以下の温度で焼戻しする工程
本発明の高圧水素用容器の化学組成の限定理由は次のとおりである。以下の説明において各元素の含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、鋼の焼入れ性を高めて厚さ方向のマルテンサイトの分布を均一にし、十分な耐水素ガス脆化特性を得るのに有効な元素である。この効果を得るには、C含有量を0.27%以上とする必要がある。一方、0.38%を超えて過剰にCを含有させてもその効果は飽和し、また、焼入れ時の焼割れの危険性が増す。このため、C含有量は0.27〜0.38%とする。C含有量の好ましい下限は0.30%であり、より好ましい下限は0.33%である。C含有量の好ましい上限は0.36%である。
Siは、鋼の脱酸に有効な元素である。脱酸効果を得るには、Si含有量を0.05%以上とする必要がある。一方、Si含有量が1.0%を超えると、軟質相であるフェライト相の析出を促進して、高圧水素ガス環境下での機械的特性を低下させるので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。このため、Si含有量は0.05〜1.0%とする。Si含有量の好ましい下限は0.1%であり、より好ましい下限は0.15%である。Si含有量の好ましい上限は0.5%であり、より好ましい上限は0.35%である。
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させるのに有効な元素であり、特にBと組み合わせて含有させることにより鋼の焼入れ性をさらに向上させることができる。この効果を得るには、Mnを0.35%以上含有させたうえで、後述するように、Mn、CrおよびMoの合計含有量である[1]式で表されるFn1を1.50以上で2.50以下とする必要がある。上記のMn、CrおよびMoのうちではMnが最も安価であるため、製造コストの観点から、Mn含有量の上限を2.50%とする。なお、Mn含有量が多くなった場合のMnとPとの共偏析に基づく各種特性の低下防止の観点からも、Mn含有量の上限は2.50%とするべきである。したがって、Mn含有量を0.35〜2.50%とする。
Bは、焼入れによって厚さ方向に十分かつ均一なマルテンサイト組織を得るのに有効な元素である。この効果を得るにはB含有量を0.0003%以上とする必要がある。しかし、B含有量が過剰になるとその効果は飽和する。このため、B含有量は0.0003〜0.003%とする。B含有量の好ましい下限は0.0005%であり、より好ましい下限は0.0007%である。B含有量の好ましい上限は0.002%であり、より好ましい上限は0.0015%である。なお、B含有量は後述する[2]式を満たすことが好ましい。
Alは、鋼の脱酸に有効な元素である。この効果を得るにはAl含有量を0.005%以上とする必要がある。一方、Al含有量が0.10%を超えると、酸化物が形成されやすくなり、靱性等に悪影響を与える。このため、Al含有量は0.005〜0.10%とする。なお、AlにはNを固定する効果もあるため、Bの活用を前提とする本発明においては、0.015%以上のAlを含有させることが好ましい。Al含有量のより好ましい下限は0.02%である。Al含有量の好ましい上限は0.07%であり、より好ましい上限は0.05%である。なお、本発明のAl含有量とは、酸可溶Al(所謂「Sol.Al」)での含有量を指す。
Crは、鋼の焼入れ性を向上させるのに有効な元素であり、特にBと組み合わせて含有させることにより鋼の焼入れ性をさらに向上させることができる。このため、必要に応じてCrを含有させてもよい。しかしながら、上記の効果を得るには、後述するように、[1]式で表されるFn1を1.50以上で2.50以下とする必要がある。上記のMn、CrおよびMoのうちではMnが最も安価でありMoが最も高価である。このため、製造コストの観点から、含有させる場合のCr量の上限を2.15%とする。
Moは、鋼の焼入れ性を向上させるのに有効な元素であり、特にBと組み合わせて含有させることにより鋼の焼入れ性をさらに向上させることができる。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、上記の効果を得るには、後述するように、[1]式で表されるFn1を1.50以上で2.50以下とする必要がある。上記のMn、CrおよびMoのうちではMnが最も安価でありMoが最も高価である。このため、製造コストの観点から、含有させる場合のMo量の上限を0.30%とする。
Tiは、窒化物生成能の高い元素であるため、NをTi窒化物の形で固定し、固溶Bを増加させ、焼入れ性を高める効果を有する。Tiには、炭窒化物の生成を促進し、高圧水素用容器の結晶粒を微細化させ、高圧水素ガス環境下での機械的特性を向上させて良好な耐水素ガス脆化特性を得る効果もある。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiを0.02%を超えて含有すると、窒化物および/または炭窒化物が過剰に生成し、高圧水素用容器の内外面の硬度差を大きくするとともに、高圧水素ガス環境下での機械的特性を低下させるので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。このため、含有させる場合のTiの量を0.02%以下とする。Tiの量は、0.015%以下であることが好ましい。一方、前記したTiの効果を安定して発現させるためには、Tiの量は、0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがさらに好ましい。
Zrは、窒化物生成能の高い元素であるため、NをZr窒化物の形で固定し、固溶Bを増加させ、焼入れ性を高める効果を有する。Zrには、炭窒化物の生成を促進し、高圧水素用容器の結晶粒を微細化させ、高圧水素ガス環境下での機械的特性を向上させて良好な耐水素ガス脆化特性を得る効果もある。このため、必要に応じてZrを含有させてもよい。しかしながら、Zrを0.04%を超えて含有すると、窒化物および/または炭窒化物が過剰に生成し、高圧水素用容器の内外面の硬度差を大きくするとともに、高圧水素ガス環境下での機械的特性を低下させるので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。このため、含有させる場合のZrの量を0.04%以下とする。Zrの量は、0.03%以下であることが好ましい。一方、前記したZrの効果を安定して発現させるためには、Zrの量は、0.001%以上であることが好ましく、0.02%以上であることがさらに好ましい。
Hfも、窒化物生成能の高い元素であるため、NをHf窒化物の形で固定し、固溶Bを増加させ、焼入れ性を高める効果を有する。Hfには、炭窒化物の生成を促進し、高圧水素用容器の結晶粒を微細化させ、高圧水素ガス環境下での機械的特性を向上させて良好な耐水素ガス脆化特性を得る効果もある。このため、必要に応じてHfを含有させてもよい。しかしながら、Hfを0.05%を超えて含有すると、窒化物および/または炭窒化物が過剰に生成し、高圧水素用容器の内外面の硬度差を大きくするとともに、高圧水素ガス環境下での機械的特性を低下させるので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。このため、含有させる場合のHfの量を0.05%以下とする。Hfの量は、0.04%以下であることが好ましい。一方、前記したHfの効果を安定して発現させるためには、Hfの量は、0.001%以上であることが好ましく、0.02%以上であることがさらに好ましい。
Vは、炭窒化物の生成を促進し、高圧水素用容器の結晶粒を微細化させ、高圧水素ガス環境下での機械的特性を向上させて良好な耐水素ガス脆化特性を得るのに有効な元素である。Vには、鋼の焼入れ性を向上させる効果もある。このため、必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、Vを0.03%を超えて含有すると、炭窒化物が過剰に生成し、高圧水素用容器の内外面の硬度差を大きくするとともに、高圧水素ガス環境下での機械的特性を低下させるので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。このため、含有させる場合のVの量を0.03%以下とする。Vの量は、0.025%以下であることが好ましい。一方、前記したVの効果を安定して発現させるためには、Vの量は、0.01%以上であることが好ましく、0.015%以上であることがさらに好ましい。
Wは、炭窒化物の生成を促進し、高圧水素用容器の結晶粒を微細化させ、高圧水素ガス環境下での機械的特性を向上させて良好な耐水素ガス脆化特性を得るのに有効な元素である。Wには、鋼の焼入れ性を向上させる効果もある。このため、必要に応じてWを含有させてもよい。しかしながら、Wを0.4%を超えて含有すると、炭窒化物が過剰に生成し、高圧水素用容器の内外面の硬度差を大きくするとともに、高圧水素ガス環境下での機械的特性を低下させるので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。このため、含有させる場合のWの量を0.4%以下とする。Wの量は、0.3%以下であることが好ましい。一方、前記したWの効果を安定して発現させるためには、Wの量は、0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがさらに好ましい。
Nbは、炭窒化物の生成を促進し、高圧水素用容器の結晶粒を微細化させ、高圧水素ガス環境下での機械的特性を向上させて良好な耐水素ガス脆化特性を得るのに有効な元素である。このため、必要に応じてNbを含有させてもよい。しかしながら、Nbを0.05%を超えて含有すると、炭窒化物が過剰に生成し、高圧水素用容器の内外面の硬度差を大きくするとともに、高圧水素ガス環境下での機械的特性を低下させるので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。このため、含有させる場合のNbの量を0.05%以下とする。Nbの量は、0.03%以下であることが好ましい。一方、前記したNbの効果を安定して発現させるためには、Nbの量は、0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがさらに好ましい。
Taは、炭窒化物の生成を促進し、高圧水素用容器の結晶粒を微細化させ、高圧水素ガス環境下での機械的特性を向上させて良好な耐水素ガス脆化特性を得るのに有効な元素である。このため、必要に応じてTaを含有させてもよい。しかしながら、Taを0.05%を超えて含有すると、炭窒化物が過剰に生成し、高圧水素用容器の内外面の硬度差を大きくするとともに、高圧水素ガス環境下での機械的特性を低下させるので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。このため、含有させる場合のTaの量を0.05%以下とする。Taの量は、0.03%以下であることが好ましい。一方、前記したTaの効果を安定して発現させるためには、Taの量は、0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがさらに好ましい。
Niは、鋼の焼入れ性を向上させる元素である。このため、必要に応じてNiを含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が1.0%を超えると、製造コストが大きく嵩む。このため、含有させる場合のNiの量を1.0%以下とする。Niの量は、0.5%以下であることが好ましい。一方、前記したNiの効果を安定して発現させるためには、Niの量は、0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがさらに好ましい。
Cuは、鋼の焼入れ性を向上させる元素である。このため、必要に応じてCuを含有させてもよい。しかしながら、Cuの含有量が1.0%を超えると、熱間加工性が低下する。このため、含有させる場合のCuの量を1.0%以下とする。Cuの量は、0.5%以下であることが好ましい。一方、前記したCuの効果を安定して発現させるためには、Cuの量は、0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがさらに好ましい。
Coは、鋼の焼入れ性を向上させる元素である。このため、必要に応じてCoを含有させてもよい。しかしながら、Coの含有量が1.0%を超えると、製造コストが大きく嵩む。このため、含有させる場合のCoの量を1.0%以下とする。Coの量は、0.5%以下であることが好ましい。一方、前記したCoの効果を安定して発現させるためには、Coの量は、0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがさらに好ましい。
Caは、鋼中のSと結合して硫化物を形成し、介在物の形状を改善して靱性等の機械的特性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかしながら、Caを0.01%を超えて含有させても機械的特性の向上効果が飽和する。このため、含有させる場合のCaの量を0.01%以下とする。Caの量は、0.005%以下であることが好ましい。一方、前記したCaの効果を安定して発現させるためには、Caの量は、0.0001%以上であることが好ましく、0.001%以上であることがさらに好ましい。
Mgは、鋼中のSと結合して硫化物を形成し、介在物の形状を改善して靱性等の機械的特性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じてMgを含有させてもよい。しかしながら、Mgを0.01%を超えて含有させても機械的特性の向上効果が飽和する。このため、含有させる場合のMgの量を0.01%以下とする。Mgの量は、0.005%以下であることが好ましい。一方、前記したMgの効果を安定して発現させるためには、Mgの量は、0.0001%以上であることが好ましく、0.001%以上であることがさらに好ましい。
REMは、鋼中のSと結合して硫化物を形成し、介在物の形状を改善して靱性等の機械的特性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じてREMを含有させてもよい。しかしながら、REMを0.20%を超えて含有させても機械的特性の向上効果が飽和する。このため、含有させる場合のREMの量を0.20%以下とする。REMの量は、0.10%以下であることが好ましい。一方、前記したREMの効果を安定して発現させるためには、REMの量は、0.0001%以上であることが好ましく、0.005%以上であることがさらに好ましい。
Pは、結晶粒界に偏析し、耐水素ガス脆化特性を低下させる。このため、P含有量は0.025%以下に制限する必要がある。P含有量はできるだけ少ないことが望ましい。
Sは、結晶粒界に偏析し、耐水素ガス脆化特性を低下させる。このため、S含有量は0.01%以下に制限する必要がある。S含有量はできるだけ少ないことが望ましい。
Oは、不純物として鋼中に存在し、含有量が0.01%を超えると粗大な酸化物を形成して靱性等の機械的特性を低下させる。そのため、O含有量は0.01%以下とする。O含有量はできるだけ少ないことが望ましい。
Nは、不純物として鋼中に存在し、Bと優先的に結合してB窒化物(BN)を形成し、鋼の焼入れ性を低下させる。そのため、N含有量は0.01%以下とする。なお、鋼中にTi、Zr、Hfのいずれもを含有させない場合は、N含有量は0.007%以下とすることが望ましく、0.005%以下とすることがさらに望ましい。
厚さが30mm以上の部位を有する高圧水素用容器は、上述の各元素の含有量、中でもC、B、Mn、CrおよびMoの含有量が上述の範囲にあって、しかも下記[1]式で表されるFn1が、1.50≦Fn1≦2.50を満たす場合に、高圧水素ガス環境下での機械的特性および耐水素ガス脆化特性に優れる。
Fn1=Mn+Cr+Mo・・・[1]
ただし、[1]式中のMn、CrおよびMoは、それぞれの元素の鋼中含有量(%)を意味し、CrおよびMoは、鋼中にその元素を含まない場合、「0」である。
本発明の高圧水素用容器は、下記[2]式で表されるFn2が、Fn2≧0.0003であることが好ましい。
Fn2=B−(11/14)N+(11/48)Ti+(11/91)Zr+(11/178)Hf・・・[2]
ただし、[2]式中のB、N、Ti、ZrおよびHfは、それぞれ元素の鋼中含有量(%)を意味し、Ti、ZrおよびHfは、鋼中にその元素を含まない場合、「0」である。
旧オーステナイト結晶粒がASTM粒度番号9.0未満の場合には、厚さが30mm以上の部位を有する高圧水素用容器に、高圧水素ガス環境下で十分な機械的特性を付与できないので良好な耐水素ガス脆化特性が得られない。したがって、厚さが30mm以上の部位を有する本発明の高圧水素用容器は、旧オーステナイト結晶粒がASTM粒度番号9.0以上と規定する。高圧水素ガス環境下での機械的特性は、旧オーステナイト結晶粒が微細であればあるほど、つまりASTM粒度番号が大きければ大きいほど良好になるが、工業的な製造工程では該粒度番号の上限は12.0程度である。
外面側のみから片面焼入れされた本発明の高圧水素用容器は、厚さが30mm以上の部位における下記の[3]式で表される高圧水素用容器の内外面の硬度差(ΔH)が、ロックウェルC硬さ(以下、「HRC」という。)で5.0以下である。
ΔH=HO−HI・・・[3]
ただし、「HO」および「HI」はそれぞれ、高圧水素容器の、厚さが30mm以上の部位における外面近傍のHRCおよび内面近傍のHRCである。
本発明の高圧水素用容器は、引張強さが850MPa以上である。この引張強さであれば、70MPa級の高圧水素用容器として安定して用いることができる。上記引張強さの上限は十分な耐水素ガス脆化特性を確保する観点から1000MPaである。
本発明の高圧水素用容器は、例えば、以下の方法により製造することができるが、この方法には限定されない。
Ac1(℃)=751−16.3C+34.9Si−27.5Mn−5.5Cu−15.9Ni+12.7Cr+3.4Mo
Ac3(℃)=881−205.7C+53.1Si−15.0Mn−26.5Cu−20.1Ni−0.7Cr+41.1Mo
ΔH’=HO’−HI’・・・[3']
(T1/T2)×100・・・[4]。
Claims (5)
- 厚さが30mm以上の部位を有する、外面側からのみ焼入れされた高圧水素用容器であって、
質量%で、
C:0.27〜0.38%、
Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.35〜2.50%、
B:0.0003〜0.003%、
Al:0.005〜0.10%、
Cr:0〜2.15%、
Mo:0〜0.30%、
Ti:0〜0.02%、
Zr:0〜0.04%、
Hf:0〜0.05%、
V:0〜0.03%、
W:0〜0.4%、
Nb:0〜0.05%、
Ta:0〜0.05%、
Ni:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Co:0〜1.0%、
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.01%、
REM:0〜0.20%、
残部:Feおよび不純物であり、
不純物としてのP、S、OおよびNが、
P:0.025%以下、
S:0.01%以下、
O:0.01%以下、
N:0.01%以下であり、かつ
下記の[1]式で表されるFn1が、1.50≦Fn1≦2.50を満足する化学組成を有し、
旧オーステナイト結晶粒がASTM粒度番号9.0以上であり、
厚さが30mm以上の部位における内外面の硬度差が、ロックウェルC硬さで5.0以下であり、かつ引張強さが850MPa以上である、
高圧水素用容器。
Fn1=Mn+Cr+Mo・・・[1]
ただし、[1]式中のMn、CrおよびMoは、それぞれの元素の鋼中含有量(%)を意味し、CrおよびMoは、鋼中にその元素を含まない場合、「0」である。 - 化学組成が、下記の[2]式で表されるFn2が、Fn2≧0.0003を満足する、請求項1に記載の高圧水素用容器。
Fn2=B−(11/14)N+(11/48)Ti+(11/91)Zr+(11/178)Hf・・・[2]
ただし、[2]式中のB、N、Ti、ZrおよびHfは、それぞれ元素の鋼中含有量(%)を意味し、Ti、ZrおよびHfは、鋼中にその元素を含まない場合、「0」である。 - 下記の(A)〜(D)に掲げる元素から選択される1種以上を含有する、請求項1または2に記載の高圧水素用容器。
(A)Ti:0.001〜0.02%、Zr:0.001〜0.04%およびHf:0.001〜0.05%
(B)V:0.01〜0.03%、W:0.01〜0.4%、Nb:0.001〜0.05%およびTa:0.001〜0.05%
(C)Ni:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.0%およびCo:0.1〜1.0%
(D)Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%およびREM:0.0001〜0.20% - 以下の(i)および(ii)の工程を含む、請求項1から3までのいずれかに記載の高圧水素用容器の製造方法。
(i)請求項1から3までのいずれかに記載の化学組成を有し、厚さ30mm以上の部位を有する高圧水素用容器の素形材を、Ac3点以上かつ850℃を超える温度に加熱した後、800〜500℃の温度域における平均冷却速度を20〜200℃/sとして、前記素形材の外面側のみから冷却して焼入れを行う工程
(ii)前記焼入れられた素形材をAc1点以下の温度で焼戻しする工程 - 外面側のみから冷却して焼入れを行うに際し、ミスト焼入れまたはシャワー焼入れを用い、該焼入れ後に焼戻しを行う、請求項4に記載の高圧水素用容器の製造方法。
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