JP6149435B2 - 高圧水素ガス用低合金鋼および高圧水素用蓄圧器 - Google Patents

高圧水素ガス用低合金鋼および高圧水素用蓄圧器 Download PDF

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Description

本発明は、高圧水素ガス用低合金鋼および高圧水素用蓄圧器に関する。
近年、水素を燃料として走行する燃料電池自動車の開発および燃料電池自動車に水素を供給する水素ステーションの実用化研究が進められている。低合金鋼は、主として水素ステーションに設置される水素を貯蔵する容器(蓄圧器)に用いられる。従来の45MPa級の水素ステーションには、主としてCrおよびMoを含有するJIS SCM435鋼が用いられ、特に、大型厚肉容器には、2%程度のNiを含有するSNCM439鋼が一般に用いられている。
水素ガス環境において優れた機械的特性と疲労特性を有する低合金鋼として、特許文献1には0.10〜0.20%のCに加え、Cr、MoおよびVを含有する引張強さが900〜950MPaの低合金鋼が開示され、特許文献2には特許文献1の低合金鋼にNiを含有させた引張強さが900〜950MPaの低合金鋼が開示されている。特許文献3には、0.15〜0.60%のCに加え、MoとVを含有する引張強さが900MPa以上の低合金鋼が開示されている。特許文献4には、0.05〜0.12%のC、特許文献5には0.05〜0.15%のCを含有するベイナイト組織を主体とした低合金鋼が開示されている。
特開2009−46737号公報 特開2009−275249号公報 特開2009−74122号公報 特開2012−107332号公報 特開2012−107333号公報
今後商用化される燃料電池自動車のタンクとしては、ガソリン車並の航続距離を確保するために、70MPaの高圧水素を充填可能なものが主流となると言われている。そして、燃料電池自動車に水素を供給する水素ステーションには70MPa以上の高圧で水素を貯蔵する必要があり、水素用蓄圧器には耐圧性能の観点から、高強度で、かつ12mmを超える厚肉の低合金鋼からなる容器が求められている。
厚肉かつ高強度の低合金性蓄圧器には、0.2%以上のCを含有させ、焼入れ焼戻し処理により均一な焼戻しマルテンサイト組織とした材料が、高強度を維持しつつ靭性や水素ガス中の機械的特性(水素環境脆化特性)に最も優れていると考えられる。ただし、厚肉材、特に12mmを超える厚さになると、従来鋼では焼入れ性の確保(焼入れ後のマルテンサイト率の確保)が困難となり、上部ベイナイト組織が混入した不均一な組織となるため靭性や水素環境脆化特性が低下する問題が生じやすい。
本発明は、900MPa以上の引張強さを有し、かつ高圧水素ガス環境下で水素環境脆化特性に優れる厚肉の低合金鋼、および、その鋼からなる水素用蓄圧器を提供することを目的とする。
本発明者らは、12mmを超える厚肉でも焼入れ性を確保できる成分系を種々検討した結果、下記の知見を得た。
(a)Cは、焼入れ性の向上に有効であり、極力多く含有させるのが望ましいが、過剰に含有させると焼入れ時の焼割れのおそれがあり、Mn、Cr、MoおよびVを適量含有させるのが良い。よって、Cは0.35%以上とし、さらにMn、Cr、MoおよびVをC含有量との関係で適量含有させるのが有効である。ただし、MnおよびCrは、過剰に含有させると水素吸収能を高め、水素ガス環境における機械的特性を低下させてしまう。また、MoおよびVは、過剰に含有させると、焼入れ時に充分固溶せず、焼入れ性がかえって低下する。このため、Mn、Cr、MoおよびVを単独で含有させるのではなく、これらの元素を全て含有させることが重要である。
(b)Mn、Cr、MoおよびVの有効性は、下式(1)のC当量(Ceq)で整理できる。低合金鋼の焼入れ性を高めるためには、それぞれの元素の含有量を所定の範囲とするとともに、Ceqを1.00以上とすることが重要である。また、Ceq(質量%)と板厚t(mm)とが下式(2)の関係を満たす必要がある。
Ceq=C+(Mn+Cr+Mo+V)/5 ・・・(1)
Ceq/t≧0.025 ・・・(2)
ただし、式(1)中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
(c)MnおよびCrを多く含む鋼の耐水素環境脆化特性の向上には、旧オーステナイト粒径の微細化が有効である。特に、ASTM粒度番号が9.0番以上の粒度の場合に、耐水素環境脆化特性が向上する。
(d)MoおよびVは、焼入れ性を高める効果のほか、微細なV−Mo系炭化物またはV−Mo系炭窒化物(以下、「V−Mo系炭化物等」と呼ぶ。)を焼戻し時に析出させて、焼入れ後の焼戻し温度を高めることができる。高温での焼戻しが可能となれば、焼入れ時に導入された水素トラップサイトとなる転位をより低減することができ、耐水素環境脆化を向上させることができる。この効果を得るには電子顕微鏡観察で1μmの広さの視野中に30個以上析出させる必要がある。
このように、本発明者らは、12mm超の厚肉でも焼入れ性を確保しマルテンサイト率を維持するため、MnおよびCrを従来鋼よりも高める一方で、MnやCr等のFe以外の固溶合金元素を増加させることは水素の吸収量を増加させ、一般的に水素脆化感受性を高める作用がある。このため、結晶粒の微細化ならびに微細なMo−V系炭化物による高温焼戻しにより耐水素脆性(耐水素環境脆化特性)を向上させ、高Mn−高Crの材料でも優れた耐水素環境脆化特性を有する鋼を見出した。
本発明は、このような技術思想に基づいてなされたものであり、下記(1)の高圧水素ガス用低合金鋼および下記(2)の高圧水素用蓄圧器を要旨としている。
(1)質量%で、C:0.35〜0.65%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜3.0%、Al:0.005〜0.10%、Cr:0.8〜4.5%、Mo:0.5〜1.5%、V:0.05〜0.30%およびNb:0.01〜0.1%と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物としてのPが0.025%以下、Sが0.01%以下、Oが0.01%以下、Nが0.03%以下であり、引張強さが900MPa以上であり、旧オーステナイト結晶粒度番号が9.0番以上であり、V−Mo系炭化物および/またはV−Mo系炭窒化物が合計で30個/μm以上であり、常温における大気中に対する45MPaの高圧水素ガス中の切欠破断強度の比で定義される相対切欠破断強度が80%以上であり、下式(1)で定義されるCeq(質量%)と板厚t(mm)とが下式(2)の関係を満たす、高圧水素用低合金鋼。
Ceq=C+(Mn+Cr+Mo+V)/5≧1.00 ・・・(1)
Ceq/t≧0.025 ・・・(2)
ただし、式(1)中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味し、式(2)においてt>12である
なお、上記(1)の高圧水素用低合金鋼は、さらに、質量%で、下記(a)〜(c)に示される元素から選択した1種以上の元素を含んでもよい。
(a)W:0.01〜3.0%、Ti:0.001〜0.05%、Zr:0.001〜0.1%、Hf:0.001〜0.1%およびTa:0.001〜1.0%、
(b)B:0.0003〜0.003%、Ni:0.1〜5.0%、Cu:0.1〜3.0%およびCo:0.1〜3.0%、ならびに、
(c)Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50
(2)上記(1)の高圧水素用低合金鋼を用いた高圧水素用蓄圧器。
本発明によれば、引張強さが900MPa以上の高強度を有し、かつ12mmを超えた厚肉でも高圧水素ガス環境において優れた機械的特性を有する高圧水素ガス用の低合金鋼を得ることができる。この鋼は、高圧水素用蓄圧器の素材に最適である。
(A) 鋼の化学組成
C:0.35〜0.65%
Cは、鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素であり、0.35%以上含有させる必要がある。一方、過剰に含有させてもその効果は飽和し、また、焼入れ時の焼割れの危険性が増す。よって、Cの含有量は0.35〜0.65%とした。Cの好ましい下限は0.38%である。Cの好ましい上限は0.55%であり、より好ましい上限は0.48%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、鋼の脱酸に有効であるとともに、焼戻し軟化抵抗を高める効果も有する。脱酸効果を得るためには0.05%以上含有させる必要がある。一方、その含有量が0.5%を超えると、軟化相のフェライト相の析出を促進して、強度を低下させる。従って、Siの含有量は0.05〜0.5%とした。
Mn:0.05〜3%
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには、0.05%以上含有させる必要がある。一方、3%を超えて含有させると、水素吸収量が増すことと、P、S等の不純物元素と共に旧オーステナイト粒界に偏析し耐水素環境脆化特性を低下させる。よって、Mnの含有量は0.05〜3%とした。Mnの好ましい下限は0.4%である。Mnの好ましい上限は2.0%であり、より好ましい上限は1.6%である。
Al:0.005〜0.10%
Alは、鋼の脱酸に有効な元素である。その効果は、含有量が0.005%未満では得られない。一方、0.10%を超えて含有させてもその効果は飽和する。よって、Alの含有量は0.005〜0.10%とした。なお、本発明のAl含有量とは、酸可溶Al(Sol.Al)を指す。
Cr:0.8〜4.5%
Crは、鋼の焼入れ性を向上させる効果を有するので、0.8%以上含有させる。一方、4.5%を超えて含有させると水素吸収量が増し、耐水素環境脆化特性が低下する。よって、Crの含有量は0.8〜4.5%とした。Crの好ましい下限は1.0%であり、より好ましい下限は1.2%である。Crの好ましい上限は3.0%であり、より好ましい上限は2.2%である。
Mo:0.5〜1.5%
Moは、鋼の焼入れ性を向上させる効果を有し、また、焼戻し時に微細なV−Mo系炭化物等を形成し、焼戻し温度を高めて耐水素環境脆化特性を向上させる。よって、0.5%以上の含有が必要である。一方、1.5%を超えて含有させると焼入れ時に未固溶の炭化物が増え、焼入れ性がかえって低下する。よって、Moの含有量は0.5〜1.5%とした。Moの好ましい下限は0.7%である。Moの好ましい上限は1.3%であり、より好ましい上限は1.1%である。
V:0.05〜0.30%
は、鋼の焼入れ性を向上させる効果を有し、また、焼戻し時に微細なV−Mo系炭化物等を形成し、焼戻し温度を高めて耐水素環境脆化特性を向上させる。よって、0.05%以上の含有が必要である。一方、0.30%を超えて含有させると焼入れ時に未固溶の炭化物が増え、焼入れ性がかえって低下する。よって、Vの含有量は0.05〜0.30%とした。Vの好ましい下限は0.10%であり、の好ましい上限は0.20%である。
Nb:0.01〜0.1%
Nbは、焼入れ時に微細な炭化物を形成し、ピン止め効果により旧オーステナイト粒径を微細化するのに有効な元素である。よって、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.1%を超えて含有させてもその効果は飽和する。よって、Nbの含有量は0.01〜0.1%とした。Nbの好ましい下限は0.02%である。Nbの好ましい上限は0.05%であり、より好ましい上限は0.035%である。
本発明に係る低合金鋼の一つは、上記の各元素を含有し、残部はFeおよび不純物からなるものである。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分を意味する。不純物中のP、S、O(酸素)およびN(窒素)については、さらに下記の含有量の範囲に制限する必要がある。
P:0.025%以下
Pは、粒界に偏析し、耐水素環境脆化特性を低下させるので、その含有量は0.025%以下に制限する必要がある。Pの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
S:0.01%以下
SもPと同様に粒界に偏析し、耐水素環境脆化特性を低下させるので、その含有量は0.01%以下に制限する必要がある。Sの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
O(酸素):0.01%以下
O(酸素)は、不純物として鋼中に存在し、その含有量が0.01%を超えると粗大な酸化物を形成して靭性等の機械的特性を低下させる。従って、O(酸素)は0.01%以下とする。
N(窒素):0.03%以下
N(窒素)は、不純物として鋼中に存在する元素であるが、Al、Nb、TiおよびZr等と炭窒化物を形成し、旧オーステナイト粒径の微細化に有効である。この効果は、Nが微量でも含まれておれば発揮されるが、0.03%を超えて含有させても飽和する。よって、N含有量は0.03%以下とした。炭窒化物の微細析出による結晶粒の微細化をより積極的に狙う場合には、Nは好ましくは0.004%以上、より好ましくは0.008%以上、更に好ましくは、0.01%以上とする。なお、Nは、鋼中にBが存在すると、B窒化物(BN)を形成し、Bの焼入れ性向上効果を阻害する恐れがあるため、Bを含有させる場合には、N含有量は0.01%以下とし、Ti等でNを固定して有効Bを確保することが好ましい。
上述のように、鋼の焼入れ性を向上させるなどの理由から、Mn、Cr、MoおよびVを適量含有させることとしているが、低合金鋼の焼入れ性を高めるためには、Cとこれらの元素との関係をの元素の含有量を所定の範囲とするとともに、下式(1)で定義されるCeq(質量%)を1.00以上とすることが重要である。また、12mmを超える厚さの鋼材の焼入れ性を確保するためには、Ceq(質量%)と板厚t(mm)とが下式(2)の関係を満たす必要がある。
Ceq=C+(Mn+Cr+Mo+V)/5 ・・・(1)
Ceq/t≧0.025 ・・・(2)
ただし、式(1)中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
本発明に係る低合金鋼には、必要に応じて、下記の元素を含有させてもよい。
(a)W:0.01〜3.0%、Ti:0.001〜0.05%、Zr:0.001〜0.1%、Hf:0.001〜0.1%およびTa:0.001〜1.0%
これらの元素は、いずれも炭窒化物の生成を促進する効果を有する。それぞれの含有量の限定理由は次のとおりである。
特に、Wは、Moの一部を代替して、微細なV−W系炭化物または微細なV−Mo−W系炭化物を形成し、焼戻し温度を高めて耐水素環境脆化特性を向上させる効果を有しているので、鋼に含有させてもよい。含有させる場合にはその含有量を0.01%以上とするのがよい。一方、3.0%を超えて含有させると焼入れ時の未固溶炭化物が増加し焼入性がかえって低下する。よって、Wを含有させる場合には、その含有量を0.01〜3.0%とする。
Ti、Zr、HfおよびTaは、微細な炭窒化物を形成し、旧オーステナイト結晶粒を微細化する効果を有するので、鋼に含有させてもよい。含有させる場合には、いずれも0.001%以上とするのがよい。しかし、過剰に含有させてもその効果は飽和する。よって、これらの元素を含有させる場合には、それぞれ、Tiの含有量は0.001〜0.05%、Zrの含有量は0.001〜0.1%、Hfの含有量は0.001〜0.1%、Taの含有量は0.001〜1.0%とする。
(b)B:0.0003〜0.003%、Ni:0.1〜5.0%、Cu:0.1〜3.0%およびCo:0.1〜3.0%
これらの元素は、いずれも鋼の焼入れ性を向上させるのに有効である。それぞれの含有量の限定理由は次のとおりである。
Bは、CrまたはMnほどではないが、微量の含有量で鋼の焼入れ性を向上させる効果を有するので、鋼に含有させてもよい。含有させる場合には、その含有量を0.0003%以上とするのがよい。一方、0.003%を超えて含有させると旧オーステナイト結晶粒界に粗大な炭化物であるM23(C,B)(MはFe、CrまたはMo)を生成し、耐水素環境脆化特性を低下させる。よって、Bを含有させる場合には、その含有量を0.0003〜0.003%とする。
Ni、CuおよびCoは、MnまたはCrと同様に焼入れ性の向上に有効であり、鋼に含有させてもよい。含有させる場合には、いずれも0.1%以上含有させるのがよい。一方、過剰に含有させても上記の効果は飽和する。特に、Cuについては加工性の低下を招く。よって、これらの元素を含有させる場合には、Niの含有量は0.1〜5.0%、Cuの含有量は0.1〜3.0%、Coの含有量は0.1〜3.0%とする。
(c)Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%
これらの元素は、いずれも鋼中のSと結合して硫化物を形成し、介在物の形状を改善して靭性等の機械的特性を改善するので、鋼に含有させてもよい。含有させる場合には、いずれも0.0001%以上含有させるのがよい。一方、過剰に含有させても上記の効果は飽和する。よって、これらの元素を含有させる場合には、Caの含有量は0.0001〜0.01%、Mgの含有量は0.0001〜0.01%、Laの含有量は0.0001〜0.20%、Ceの含有量は0.0001〜0.20%、Yの含有量は0.0001〜0.40%、Smの含有量は0.0001〜0.40%、Prの含有量は0.0001〜0.40%、Ndの含有量は0.0001〜0.50%とする。
(B) 鋼の組織
鋼の組織は、焼入れ性を確保しつつ耐水素環境脆化特性を向上させるためには、旧オーステナイト結晶のASTM粒度番号で9.0番以上の金属組織とする必要がある。なお、旧オーステナイト結晶粒度番号を9.0番以下とするには、Nb等のピン止めに有効な元素と、焼入れ温度を過度に高くし過ぎないことが重要である。
さらに、微細なV−Mo系炭化物等による高温焼戻しの効果を得るには、V−Mo系炭化物等の析出数を30個/μm以上とする必要がある。ここでV−Mo系炭化物等とは、V・MoとCを主体とするNaCl構造のMX型炭化物を意味する。Mを構成する主要合金元素はVおよびMoであるが、その一部のごく微量がNb、W、Ti、Zrで置換されていてもよい。Xを構成する主要元素はCであるが、その一部がNで置換されていてもよい。なお、V−Mo系炭化物等の析出数は、V−Mo系炭化物およびV−Mo系炭窒化物の双方が存在する場合には、析出数の合計を意味する。
(C) 製造方法
本発明に係る低合金鋼は、通常の方法で熱間圧延を行い、その後、焼入れ焼戻しにより強度を調質する。特に、焼入れは900〜950℃の温度で行うのが好ましい。900℃未満では、焼入性が不充分で、厚肉材の強度が得られないおそれがあり、また、MoおよびVを充分に固溶させることができず、焼戻し時にV−Mo系炭化物等の微細析出物を形成することが困難となる。一方、焼入れ温度が950℃を超えると、旧オーステナイト粒径が粗大化し、耐水素環境脆化特性が低下するおそれがある。
表1に示す化学組成を有する低合金鋼を真空溶解し、熱間鍛造により厚さ40〜150mmの厚さのブロックとし、このブロックを用いて熱間圧延を行い、厚さ15〜80mmの板材とした。その後、表2に示す条件で焼入れ焼戻しを行い、強度を調整した。
Figure 0006149435
<旧オーステナイト結晶粒度番号>
焼入れ後焼戻し前の板材の断面方向を樹脂埋めした試験材を用意し、ピクリン酸にて腐食した後に、旧オーステナイト粒のASTM結晶粒度番号を求めた。なお、数例についてEBSDに基づく焼き戻し後の鋼材の結晶粒度番号を測定したが、表2に示す結果とほぼ同等であった。
<V−Mo系炭化物等の個数>
焼戻し後の板材の断面方向を樹脂埋めした試験材を用意し、薄膜法による電子顕微鏡観察を行い析出物の計測を行った。10万倍の倍率で1μmの視野を各鋼材につき10視野観察して計測した後、平均値を求めた。なお、精度の観点から表2には、1の位を四捨五入した値を示した。
<引張強度>
焼戻し後の板材から圧延方向を長手方向に平行部径が6mm、平行部の長さが40mmの丸棒引張試験片を作製し、引張試験を行い、引張強度を測定した。
<耐水素環境脆化特性>
板材の長手方向に平行部直径が3mmで、中央部に1mm深さの環状切欠けを付与した試験片を採取した。切欠は60℃のV型で、先端のRは0.1mmとした。この試験片を用いて、常温大気中または常温の45MPaの高圧水素ガス中でひずみ速度3×10−6(s−1)で引張試験を行い、破断強度を測定した。大気中破断強度と水素中破断強度の比を相対切欠破断強度とし、この値が80%以上であれば水素による強度低下は軽微であり、耐水素環境脆化特性に優れると判断した。
これらの結果を表2に併記した。
Figure 0006149435
表2に示すように、本発明例である試験番号1〜25は、いずれも結晶粒度番号が9.0番以上で、V−Mo系炭化物等の個数が1μmあたり30個以上であり、Ceq/t(C当量と板厚tの比)が0.025以上であった。これらの実施例はいずれの相対破断強度も80%以上であり、良好な耐水素環境脆化特性を有していた。
一方、試験番号26〜38は比較例である。試験番号26は、焼入れ温度が低すぎて、焼入れ時のVおよびMoの固溶が不充分で、焼戻しによるV−Mo系炭化物等の析出が不充分であった。このため、耐水素環境脆化特性に劣っていた。試験番号27は、焼入れ温度が高すぎて、旧オーステナイト粒の粗大化が起こり、耐水素環境脆化特性に劣っていた。試験番号28は、Ceq/tが0.025未満、すなわち、鋼の焼入れ性(Ceq)に対して板厚が厚すぎた結果、焼入れ時のマルテンサイト率が低下し、耐水素環境脆化特性に劣っていた。
試験番号29は、Ceqが低く、試験番号30は、CeqおよびC含有量が低く、いずれも焼入れ性が不足し、耐水素環境脆化特性に劣っていた。試験番号31は、Siが、試験番号32は、Mnがそれぞれ過剰であるため、耐水素環境脆化特性に劣っていた。試験番号33はPが、試験番号34は、Sがそれぞれ過剰であるため、耐水素環境脆化特性に劣っていた。試験番号35は、Crが不足し焼入れ性に劣り、試験番号36は、逆にCrが過剰であるため、それぞれ耐水素環境脆化特性に劣っていた。試験番号37は、Moが不足し、試験番号38は、Vが不足し、焼戻し時のV−Mo系炭化物等の析出が不充分で耐水素環境脆化特性に劣っていた。試験番号39は、Nbが不足し、旧オーステナイト粒の粗大化が起こり、耐水素環境脆化特性に劣っていた。
本発明によれば、引張強さが900MPa以上の高強度を有し、かつ12mmを超えた厚肉でも高圧水素ガス環境において優れた機械的特性を有する高圧水素ガス用の低合金鋼を得ることができる。この鋼は、高圧水素用蓄圧器の素材に最適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.35〜0.65%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜3.0%、Al:0.005〜0.10%、Cr:0.8〜4.5%、Mo:0.5〜1.5%、V:0.05〜0.30%およびNb:0.01〜0.1%と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物としてのPが0.025%以下、Sが0.01%以下、Oが0.01%以下、Nが0.03%以下であり、引張強さが900MPa以上であり、旧オーステナイト結晶粒度番号が9.0番以上であり、V−Mo系炭化物および/またはV−Mo系炭窒化物が合計で30個/μm以上であり、常温における大気中に対する45MPaの高圧水素ガス中の切欠破断強度の比で定義される相対切欠破断強度が80%以上であり、下式(1)で定義されるCeq(質量%)と板厚t(mm)とが下式(2)の関係を満たす、高圧水素用低合金鋼。
    Ceq=C+(Mn+Cr+Mo+V)/5≧1.00 ・・・(1)
    Ceq/t≧0.025 ・・・(2)
    ただし、式(1)中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味し、式(2)においてt>12である
  2. 質量%で、C:0.35〜0.65%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜3.0%、Al:0.005〜0.10%、Cr:0.8〜4.5%、Mo:0.5〜1.5%、V:0.05〜0.30%およびNb:0.01〜0.1%と、下記(a)〜(c)に示される元素から選択した1種以上の元素と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物としてのPが0.025%以下、Sが0.01%以下、Oが0.01%以下、Nが0.03%以下であり、引張強さが900MPa以上であり、旧オーステナイト結晶粒度番号が9.0番以上であり、V−Mo系炭化物および/またはV−Mo系炭窒化物が合計で30個/μm以上であり、常温における大気中に対する45MPaの高圧水素ガス中の切欠破断強度の比で定義される相対切欠破断強度が80%以上であり、下式(1)で定義されるCeq(質量%)と板厚t(mm)とが下式(2)の関係を満たす、高圧水素用低合金鋼。
    (a)W:0.01〜3.0%、Ti:0.001〜0.05%、Zr:0.001〜0.1%、Hf:0.001〜0.1%およびTa:0.001〜1.0%、
    (b)B:0.0003〜0.003%、Ni:0.1〜5.0%、Cu:0.1〜3.0%およびCo:0.1〜3.0%、ならびに、
    (c)Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%
    Ceq=C+(Mn+Cr+Mo+V)/5≧1.00 ・・・(1)
    Ceq/t≧0.025 ・・・(2)
    ただし、式(1)中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味し、式(2)においてt>12である
  3. 請求項1または2に記載の高圧水素用低合金鋼を用いた、高圧水素用蓄圧器。
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