JP2016172228A - 発泡性マイクロスフェアーの製造方法、及び発泡性マイクロスフェアー - Google Patents

発泡性マイクロスフェアーの製造方法、及び発泡性マイクロスフェアー Download PDF

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Abstract

【課題】分散液調製中や重合開始前等所望しない時期の油相及び水相での重合反応の開始が抑制され、かつ、所期の油相での重合反応が阻害されず、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーの製造方法;並びに、物性が優れる発泡性マイクロスフェアーを提供すること。
【解決手段】水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び、(好ましくは20℃の水への溶解度が1質量%以下の)非水溶性重合禁止剤、例えばビタミンE、或いは、ヒドロキシ基、キノン基またはアルコキシ基を有する油溶性の芳香族化合物を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合する生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法;並びに、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上、好ましくは平均粒径が0.5-150μmの発泡性マイクロスフェアー。
【選択図】なし

Description

本発明は、発泡性マイクロスフェアーの製造方法、及び発泡性マイクロスフェアーに関し、更に詳しくは、分散液調製中や重合開始前等、所望しない時期における重合反応の開始が十分に抑制されるとともに、発泡性マイクロスフェアーを製造するための懸濁重合を行うときに油相での重合反応が阻害されず、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーの製造方法、及び発泡性マイクロスフェアーに関する。
発泡性マイクロスフェアー(「熱膨張性マイクロカプセル」といわれることもある。)は、発泡インクでの用途をはじめとして、軽量化を目的とした塗料やプラスチックの充填剤など、種々の分野への用途展開が図られている。発泡性マイクロスフェアーは、通常、揮発性の液体発泡剤(「物理的発泡剤」または「揮発性膨張剤」等ということもある。)を重合体で包摂しマイクロカプセル化したものである。発泡剤としては、所望により、加熱時に分解してガスを発生する化学発泡剤が用いられることもある。発泡性マイクロスフェアーは、一般に、水系媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合する方法により製造することができる。重合反応が進むにつれて、生成する重合体により外殻が形成され、その外殻内に発泡剤が包み込まれるようにして封入された構造をもつ発泡性マイクロスフェアーが得られる。
発泡性マイクロスフェアーの外殻を形成する重合体としては、一般に、ガスバリア性が良好な熱可塑性樹脂が用いられる。外殻を形成する重合体は、加熱すると軟化する。発泡剤としては、該重合体の軟化点以下の温度でガス状になるものを選択する。発泡性マイクロスフェアーを加熱すると、発泡剤が気化して膨脹する力が外殻に働くとともに、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少する。そのため、ある温度を境にして、発泡性マイクロスフェアーの急激な膨脹が起きる。この温度を発泡開始温度という。発泡性マイクロスフェアーは、発泡開始温度より高い温度、すなわち、発泡温度に加熱すると、それ自体が膨脹して、独立気泡体(「発泡体粒子」、「中空粒子」または「中空プラスチックバルーン」等ということがある。)を形成する。
発泡性マイクロスフェアーを形成するために行われる懸濁重合では、一般に、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を添加し、攪拌混合して、重合性混合物の微細な液滴を造粒し、次いで、昇温して懸濁重合を行う。重合性混合物の多くは、通常水に不溶性であるため、水系分散媒体中で油相を形成するので、攪拌混合することにより、微細な液滴に造粒される。懸濁重合により、この微細な液滴とほぼ同じ粒径の発泡性マイクロスフェアーが形成される。懸濁重合法においては、分散安定剤、安定助剤(「補助安定剤」ということもある。)、重合開始剤(「触媒」ということもある。)、重合助剤などの種々の添加剤の種類と含有量を適切に選択して組み合わせ、また、攪拌混合条件や重合条件等を適切に選択して組み合わせることによって、粒子形状や粒径分布を調整することが可能である。
また、重合性単量体が、所望しない早期の段階(重合性混合物の調製や分散液の調製中等)で重合反応を開始してしまうことがあると、得られる発泡性マイクロスフェアーが均質な所期の発泡特性を有しなかったり、生産性の低下や発泡性マイクロスフェアーの品質低下が起きたりする。例えば、外気温が高いときには、所望しない重合反応が開始するおそれがあり、特に、大規模生産を行う場合は、重合性混合物の調製や分散液の調製に時間がかかるため、その間に所望しない重合反応が開始するおそれがある。このため、発泡性マイクロスフェアーの製造方法にあっては、温度25℃において1時間以上、好ましくは2時間以上、場合により4時間以上の重合抑制効果が求められる。
一般に、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸等のビニル化合物の重合を抑制する重合禁止剤としては、キノン系化合物(ベンゾキノン等)、ハイドロキノン(「ヒドロキノン」ということもある。)系化合物、フェノール系化合物(メトキノン、トコフェロール等)、ヒンダードアミン系化合物、アミン系化合物、リン系化合物、マンガン塩化合物、ジフェニルジチオカルバミン酸銅、ニトロソ化合物、N−オキシル化合物など多くの化合物群が知られている。これらの重合禁止剤の多くは、ビニル化合物モノマーの合成時や合成後の精製のための蒸留工程で使用され、また、該モノマーの保存や保管時にもごく少量使用される。通例、該モノマーから重合体を製造するのに先だって重合禁止剤を除去する工程がおかれる。
発泡性マイクロスフェアーを製造するに当たっては、水系分散媒体中に重合禁止剤を使用することが知られている。その理由は望ましくない水相中での重合を抑制することにより、重合性混合物を水系分散媒体中で撹拌・重合するときに液粘度の上昇、液滴の反応容器への付着や液滴の凝集などの発生を抑制して、生産性の低下や発泡性マイクロスフェアーの品質低下が起きたりすることを防止することにある。例えば、特許文献1には、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤及び重合性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体の外殻中に発泡剤を包み込んで含有する発泡性マイクロスフェアーを製造する方法において、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、水可溶性アスコルビン酸類、または硼酸の存在下に、重合性混合物の懸濁重合を行うことにより、重合時における生成重合体粒子の凝集や重合缶壁へのスケールの付着を防止することが開示されている。特許文献2には、中空樹脂粒子の製造方法において、モノマー成分が不溶である液体相(水相)に、水性重合禁止剤を含有することが開示されている。特許文献3には、重合助剤(重合禁止剤)は、一般に、懸濁重合における水系での乳化重合物の発生抑制やスケール防止のために用いられていることが開示され、また、アスコルビン酸類や亜硝酸アルカリ金属塩類等を重合禁止剤として使用すると、膨張倍率(発泡倍率と同義である。)等の物性の向上が十分でなかったり、熱安定性が低く重合反応中に分解して重合禁止剤としての性質が失われ、または得られる熱膨張性マイクロカプセル(発泡性マイクロスフェアー)や熱膨張して得られる中空微粒子の物性改善が十分とはいえない、という問題のあることが開示されている。
発泡性マイクロスフェアーの製造方法において、重合禁止剤としては、所望しない時期(重合性混合物の調製や分散液の調製中等)における重合性単量体の重合反応の開始を十分に抑制する効果を有することが不可欠であると同時に、その後に行う発泡性マイクロスフェアーの外殻を形成する懸濁重合等の重合反応において、重合反応速度などを阻害しないためにできるだけ少量の添加で効果を奏するものであることが求められる。また、得られる発泡性マイクロスフェアーの物性を優れたものにできることが求められる。
すなわち、水系分散媒体中で、重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された発泡性マイクロスフェアーを製造する発泡性マイクロスフェアーの製造方法において、少なくとも重合性単量体と重合開始剤を含有する重合性混合物(油相を形成する)を含む液滴を形成する造粒時に、油相において少量で十分な重合抑止効果(例えば、温度25℃において1時間以上、好ましくは2時間以上、場合により4時間以上の重合禁止効果等が望まれる。)を有するとともに、発泡性マイクロスフェアーを得るための懸濁重合による油相での重合反応を阻害せず、油相での重合反応を安定的に行うことができ、かつ、発泡倍率等の発泡性マイクロスフェアーの物性に優れる適切な重合禁止剤及びその用法は見いだされていなかった。
したがって、分散液調製中や重合開始前等、すなわち、水系分散媒体中で少なくとも発泡剤と重合性単量体と重合禁止剤(油相を形成する。)とを含有する重合性混合物を懸濁重合する以前である、所望しない時期における油相での重合反応の開始が十分に抑制されるとともに、重合性混合物を懸濁重合して発泡性マイクロスフェアーを得るために行う油相での重合反応が阻害されることがなく、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーを製造する方法、並びに、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーを提供することが求められていた。
特開平11−209504号公報 特開2005−146223号公報 国際公開第2008−142849号
本発明の課題は、分散液調製中や重合開始前等所望しない時期における油相での重合反応の開始が抑制され、かつ、所期の油相での重合反応が阻害されず、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーの製造方法;並びに、物性が優れる発泡性マイクロスフェアーを提供することにある。
本発明者らは、課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の重合禁止剤を油相に含有させることにより、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合することを特徴とする、
生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、発泡性マイクロスフェアーの製造方法に関する発明の具体的態様として、以下(1)〜(10)の発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提供される。
(1)非水溶性重合禁止剤は、温度20℃での水に対する溶解度が1質量%以下である前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(2)非水溶性重合禁止剤は、ビタミンEを含有する前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(3)非水溶性重合禁止剤は、ヒドロキシ基、キノン基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する油溶性の芳香族化合物を含有する前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(4)ヒドロキシ基を有する油溶性の芳香族化合物が、フェノール類またはナフトール類である前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(5)キノン基を有する油溶性の芳香族化合物が、ベンゾキノン類、ナフトキノン類、またはアントラキノン類である前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(6)アルコキシ基を有する油溶性の芳香族化合物が、ベンゼン誘導体またはナフタレン誘導体である前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(7)重合性単量体が、塩化ビニリデン30〜95質量%と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体5〜70質量%とを含有する単量体混合物である前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(8)重合性単量体が、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体25〜100質量%と、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜75質量%とを含有する単量体混合物である前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(9)水系分散媒体中に重クロム酸塩、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、硼酸及び水可溶性アスコルビン酸類からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
(10)水系分散媒体中に含有される前記の化合物が亜硝酸アルカリ金属塩である前記の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
さらに、本発明によれば、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合して得られる、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーが提供され、その具体的態様として、平均粒径が0.5〜150μmである前記の発泡性マイクロスフェアーが提供される。
本発明によれば、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合することを特徴とする、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法であることにより、分散液調製中や重合開始前等所望しない時期における油相での重合反応の開始が十分に抑制されるとともに、発泡性マイクロスフェアーの外殻形成するための重合反応が阻害されず、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提供されるという効果が奏される。
また、本発明によれば、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合して得られる、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーであることにより、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーが提供されるという効果が奏される。
I.発泡性マイクロスフェアーの製造方法
本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ということがある。)は、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合することを特徴とする、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法である。本発明の製造方法においては、発泡剤、重合性単量体、その他後に説明する諸添加剤等は、特に限定されるものではなく、従来公知のものが使用できる。すなわち、本発明の製造方法は、あらゆるタイプの発泡性マイクロスフェアーの製造に適用することができる。
1.発泡剤
本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法において使用する発泡剤は、通常、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である。このような発泡剤としては、低沸点有機溶剤が好適であり、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、イソドデカン、石油エーテル、イソパラフィン混合物等の炭化水素;CClF、CCl、CClF、CClF−CClF等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等のテトラアルキルシラン;などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、イソブタン、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、石油エーテル、イソオクタン、イソドデカン、及びこれらの2種以上の混合物が好ましい。また、所望により、加熱により熱分解してガス状になる化合物を使用してもよい。発泡剤の含有量は、以下に説明する重合性単量体の合計量100質量部に対して、通常10〜40質量部、好ましくは12〜35質量部、より好ましくは15〜32質量部の範囲である。
2.重合性単量体
重合性単量体としては、後に説明するように、水系分散媒体中で懸濁重合して得られる生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された発泡性マイクロスフェアーを形成することができる限り、特に限定されない。好ましくは、生成重合体の外殻がガスバリア性、耐溶剤性や耐熱性を有し、また、良好な発泡性、所望によっては高温での発泡性を有する重合体を生成することができる観点から、重合性単量体が、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(該単量体を総称して、「(メタ)アクリロニトリル」ということがある。)、及び/または、塩化ビニリデンを含有することが好ましい。
(メタ)アクリロニトリル、及び/または、塩化ビニリデン以外の重合性単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、α−メチルスチレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエンなどが挙げられる。
これらの重合性単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい重合性単量体は、(メタ)アクリロニトリル、及び/または、塩化ビニリデンを含有する単量体混合物である。
〔(メタ)アクリロニトリルを含有する単量体混合物〕
(メタ)アクリロニトリルを含有する単量体混合物としては、重合性単量体が、(メタ)アクリロニトリル(アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体)25〜100質量%と、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(以下、「(メタ)アクリロニトリル以外の単量体」ということがある。)0〜75質量%とを含有する単量体混合物であることが好ましい。なお、重合性単量体が、(メタ)アクリロニトリル100質量%を含有する場合は、厳密には単量体混合物に該当するものではないが、本発明においては、この場合を含めて単量体混合物という。
(メタ)アクリロニトリルを含有する単量体混合物は、(メタ)アクリロニトリルの含有比率が高いほど、形成される発泡性マイクロスフェアーの発泡温度が高く、その含有比率が低いほど、形成される発泡性マイクロスフェアーの発泡温度が低くなる傾向がある。また、(メタ)アクリロニトリル以外の単量体の種類及び組成によっても、形成される発泡性マイクロスフェアーの発泡温度や最大発泡倍率等を調整することが可能である。したがって、(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリル以外の単量体との割合、及び、(メタ)アクリロニトリル以外の単量体の種類及び組成を調整することにより、所望の発泡性マイクロスフェアーを形成することができる。(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリル以外の単量体との好ましい組み合わせは、(メタ)アクリロニトリル25〜99.5質量%、好ましくは30〜99質量%、及び(メタ)アクリロニトリル以外の単量体0.5〜75質量%、好ましくは1〜70質量%(合計量を100質量%とする。)であり、(メタ)アクリロニトリル以外の単量体として、特に好ましくはメタクリル酸メチルである。(メタ)アクリロニトリルの含有比率が低すぎると、形成される発泡性マイクロスフェアーの発泡温度が低くなったり、ガスバリア性が不足したりすることがある。
〔塩化ビニリデンを含有する単量体混合物〕
塩化ビニリデンを含有する単量体混合物としては、重合性単量体が、塩化ビニリデン30〜95質量%と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(以下、「塩化ビニリデン以外の単量体」ということがある。)5〜70質量%とを含有する単量体混合物であることが好ましい。
塩化ビニリデンを含有する単量体混合物は、塩化ビニリデンの含有比率が高いほど、形成される発泡性マイクロスフェアーのガスバリア性が高く、その含有比率が低いほど、形成される発泡性マイクロスフェアーのガスバリア性が低くなる傾向がある。また、塩化ビニリデン以外の単量体の種類及び組成によっても、形成される発泡性マイクロスフェアーの発泡温度や最大発泡倍率等を調整することが可能である。したがって、塩化ビニリデンと塩化ビニリデン以外の単量体との割合、及び、塩化ビニリデン以外の単量体の種類及び組成を調整することにより、所望の発泡性マイクロスフェアーを形成することができる。塩化ビニリデンと塩化ビニリデン以外の単量体との好ましい組み合わせは、塩化ビニリデン35〜90質量%、好ましくは40〜80質量%、及び塩化ビニリデン以外の単量体10〜65質量%、好ましくは20〜60質量%(合計量を100質量%とする。)であり、塩化ビニリデン以外の単量体として、好ましくは(メタ)アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルであり、塩化ビニリデンを含有する単量体混合物の好ましい組み合わせとしては、塩化ビニリデン45〜75質量%、(メタ)アクリロニトリル20〜50質量%、及びメタクリル酸メチル3〜10質量%(合計量を100質量%とする。)である。塩化ビニリデンの含有比率が低すぎると、形成される発泡性マイクロスフェアーのガスバリア性が不足したり、所望の最大発泡倍率が得られなかったりすることがある。
3.架橋性単量体
先に説明した重合性単量体とともに、発泡特性及び耐熱性等を改良するために、架橋性単量体を併用することができる。架橋性単量体としては、通常、2以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物が用いられる。より具体的には、架橋性単量体として、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール〔エチレングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール〔ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸アリル、イソシアン酸トリアリル、トリアクリルホルマール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチルグリコール、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。架橋性単量体の使用割合は、重合性単量体の通常0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%、更に好ましくは0.15〜1質量%である。
4.重合開始剤
重合性単量体は、所定温度環境において重合開始剤と接触することにより重合する。重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般に使用されているものを使用することができるが、使用する重合性単量体に可溶の油溶性重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシシエステル、パーオキシジカーボネート、及びアゾ化合物が挙げられる。より具体的には、メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α,α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−オキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート(以下、「IPP」ということがある。)、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジ−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられる。重合開始剤は、重合性単量体基準で、通常0.01〜7質量%、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.3〜2質量%の割合で使用される。
5.分散安定剤及び補助安定剤等
懸濁重合は、通常、分散安定剤(懸濁剤)を含有する水系分散媒体中で行われる。分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部の割合で使用される。
分散安定剤に加えて、補助安定剤、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等を使用することができる。
好ましい組み合わせの一つとして、コロイダルシリカと縮合生成物の組み合わせがある。縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸の縮合生成物が好ましい。縮合物は、その酸価によって規定される。好ましくは、酸価が60mgKOH/g以上95mgKOH/g未満のものである。特に好ましくは、酸価が65mgKOH/g以上90mgKOH/g以下の縮合物である。さらに、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加すると、より均一な粒子形状を有する発泡性マイクロスフェアーが得られやすくなる。無機塩としては、食塩が好適に用いられる。コロイダルシリカの使用量は、その粒子径によっても変わるが、通常、重合性単量体100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは1.5〜10質量部の割合で使用される。縮合生成物は、重合性単量体100質量部に対して、通常0.05〜2質量部の割合で使用される。無機塩は、重合性単量体100質量部に対して、0〜100質量部程度、多くの場合0.5〜50質量部程度の割合で使用する。
他の好ましい組み合わせは、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物の組み合わせが挙げられる。水溶性窒素含有化合物の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミンが挙げられる。これらの中でも、コロイダルシリカとポリビニルピロリドンの組み合わせが好適に用いられる。他の好ましい組み合わせには、水酸化マグネシウム及び/またはリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせがある。
分散安定剤としては、水溶性多価金属化合物(例えば、塩化マグネシウム)と水酸化アルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム)との水相中での反応により得られる難水溶性金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)のコロイドを用いることができる。また、リン酸カルシウムは、リン酸ナトリウムと塩化カルシウムとの水相中での反応生成物を使用することが可能である。乳化剤として、陰イオン性界面活性剤、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩やポリオキシエチレンアルキル(アリル)エーテルのリン酸エステル等を用いてもよい。
乳化剤は、一般に使用しないが、所望により陰イオン性界面活性剤、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩やポリオキシエチレンアルキル(アリル)エーテルのリン酸エステル等を用いてもよい。
さらに、重合助剤として、水系分散媒体(水相)中に、重クロム酸塩、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、硼酸酸及び水可溶性アスコルビン酸類(ビタミンC等)からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有させることができる。これらの化合物の存在下に懸濁重合を行うと、重合時に、水相での重合粒子同士の凝集が起こらず、重合物が重合缶壁に付着することがなく、重合による発熱を効率的に除去しながら安定して発泡性マイクロスフェアーを製造することができる。特に、重合性単量体を含有する重合性混合物が、非水溶性重合禁止剤を含有するとともに、水系分散媒体中に前記の少なくとも一種の化合物、中でも水系分散媒体中に亜硝酸アルカリ金属塩を含有する発泡性マイクロスフェアーの製造方法が好ましい。亜硝酸アルカリ金属塩の中では、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリウムが入手の容易性や価格の点で好ましい。これらの化合物は、重合性単量体100質量部に対して、通常、0.001〜1質量部、好ましくは0.01〜0.1質量部の割合で使用される。
6.非水溶性重合禁止剤
本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法は、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合することを特徴とする。非水溶性重合禁止剤とは、水に対して溶解性を有しない重合禁止剤であり、通常温度20℃での水に対する溶解度が1質量%以下である重合禁止剤を意味する。ここで、温度20℃での水に対する溶解度とは、温度20℃(760torrの圧力条件下)の水100gに溶解する重合禁止剤の質量(単位:質量%とする。)をいうが、また、日本薬局方(第16改正)通則29に定める「溶解性」、すなわち、溶質1g又は1mLを溶かす(具体的には、温度20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶ける度合をいうものとされる。)に要する溶媒量(単位:mL)としても求めることができる。本発明において使用する非水溶性重合禁止剤としては、発泡の均一性等の観点から、温度20℃での水に対する溶解度が0.5質量%以下であることが好ましく、温度20℃での水に対する溶解度が0.3質量%以下であることがより好ましい。
本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法においては、i)水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁することによって、非水溶性重合禁止剤が、まず重合性単量体により形成される油相に溶解して、所望しない重合反応の開始、特に、重合性混合物の調製時や分散液の調製時等の重合性混合物中での重合の生起が十分に抑制され、ii)その後、該非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合を行うことによって、発泡剤を封入した生成重合体の外殻が形成される重合反応時には、非水溶性重合禁止剤の存在により、重合反応が阻害されたりすることがない、などの機構により、最大発泡倍率等の物性が優れ、所望により粒径が所定の範囲内である最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーが得られるものと推察される。
本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法において使用することができる非水溶性重合禁止剤としては、所定の温度20℃での水に対する低い溶解度を有し、先に説明した作用を奏することができる限り、特に限定されないが、所望しない時期の重合反応の抑制効果と所望する時期での重合反応の速やかな進行とのバランスや、得られる発泡性マイクロスフェアーの物性が優れていること等の観点から、好ましくはビタミンEやヒドロキシ基、キノン基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する油溶性の芳香族化合物を含有するものが挙げられる。
(1)ビタミンE
本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法において好ましく使用される非水溶性重合禁止剤であるビタミンEは、脂溶性ビタミンの一種であって、α-トコフェロールの生理活性をもつ限り、トコールとトコトリエノールのすべての誘導体を一般的に指すとされる、クロマン環の芳香族環に有するOH基により抗酸化作用を有するフェノール化合物である。ビタミンEには、α−、β−、γ−、δ−トコフェロールとα−、β−、γ−、δ−トコトリエノールとの8種類が存在し、それぞれ光学異性体がある。天然ビタミンEは、d−α−トコフェロールであり、本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法においては、非水溶性重合禁止剤として、天然ビタミンEを使用することがより好ましい。なお、脂溶性ビタミンに属するビタミンEは、温度20℃の水に対する溶解度が、0.1質量%未満である。
(2)ヒドロキシ基、キノン基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する油溶性の芳香族化合物
また、本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法において好ましく使用される非水溶性重合禁止剤であるヒドロキシ基、キノン基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する油溶性の芳香族化合物は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族環に、ヒドロキシ基、キノン基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを置換基として有する油溶性の化合物であり、温度20℃の水に対する溶解度(以下、単に「溶解度」ということがある。)が、通常1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である非水溶性の化合物である。より好ましい前記の油溶性の芳香族化合物としては、(i)ヒドロキシ基を有する油溶性の芳香族化合物が、フェノール類またはナフトール類、例えば、t−ブチルヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ブチルヒドロキシアニソール、4−メトキシナフトール等;(ii)キノン基を有する油溶性の芳香族化合物が、ベンゾキノン類、ナフトキノン類、またはアントラキノン類、例えば、ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン、1,2−ナフトキノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン等;あるいは、(iii)アルコキシ基を有する油溶性の芳香族化合物が、ベンゼン誘導体またはナフタレン誘導体、例えば、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン等;などを挙げることができる。特に好ましい前記の油溶性の芳香族化合物としては、4−メトキシナフトール(溶解度:0.1質量%未満)、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(溶解度:0.2質量%)、1,4−ナフトキノン(溶解度:0.1質量%未満)、t−ブチルカテコール(溶解度:0.2質量%)、ブチルヒドロキシアニソール(溶解度:0.1質量%未満)、t−ブチルヒドロキノン(溶解度:1質量%)等が挙げられる。
さらに、酸素不存在下でも、所期の効果を十分発揮することができることから、ビタミンE、ヒドロキシ基を有する油溶性の芳香族化合物がナフトール類、またはキノン基を有する油溶性の芳香族化合物がナフトキノン類やアントラキノン類、及びアルコキシ基を有する油溶性の芳香族化合物であるナフタレン誘導体がより好ましい。これらの化合物としては、4−メトキシナフトール、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン等が挙げられる。なお、実質的に酸素不存在下とは、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス等の不活性ガスで反応系内や容器内を置換することにより、反応系内や容器の空間部の酸素濃度が充分に低下した条件をいい、例えば、反応系内や容器の空間部の酸素濃度が通常1vol%以下、好ましくは0.1vol%以下のような条件をいう。
本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法において使用される非水溶性重合禁止剤の使用量は、本発明の目的に適合する限り特に限定されないが、重合性単量体の合計量に対して、通常0.0005〜0.5質量%(5〜5000ppm)、好ましくは0.001〜0.1質量%(10〜1000ppm)、より好ましくは0.002〜0.07質量%(20〜700ppm)、更に好ましくは0.003〜0.05質量%(30〜500ppm)、特に好ましくは0.005〜0.04質量%(50〜400ppm)の割合である。なお、本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法において使用される重合性単量体には、重合性単量体の移送中や保管中に意図しない重合を開始させないため、あらかじめ重合禁止剤が含有されていることがある。その際、該重合禁止剤が本発明における非水溶性重合禁止剤に該当する場合には、前記した本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法における非水溶性重合禁止剤の使用量は、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁するときに残存するあらかじめ含有されていた重合禁止剤(非水溶性重合禁止剤)の含有量を考慮して、不足分または過剰分に該当する使用量を相殺するように、非水溶性重合禁止剤の使用量を調整すればよい。この場合における非水溶性重合禁止剤の使用量は、通常0.002〜0.5質量%(20〜5000ppm)、好ましくは0.005〜0.1質量%(50〜1000ppm)、より好ましくは0.006〜0.05質量%(60〜500ppm)、特に好ましくは0.007〜0.05質量%(70〜500ppm)の割合である。
また、本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法においては、更に水系分散媒体(水相)中に重合助剤である重クロム酸塩、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、硼酸及び水可溶性アスコルビン酸類等の化合物を含有させ、重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合をしてもよい。すなわち、水系分散媒体中に重クロム酸塩、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、硼酸及び水可溶性アスコルビン酸類からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する発泡性マイクロスフェアーの製造方法とすることによって、特に、水系分散媒体中に含有される前記の化合物が亜硝酸アルカリ金属塩である発泡性マイクロスフェアーの製造方法とすることによって、重合性単量体の組成及び/または発泡剤の種類や含有量との組み合わせにより、発泡性マイクロスフェアーの最大発泡倍率の大きさや均一性等を調整することができるので好ましい。
〔重合抑制効果〕
本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法において、非水溶性重合禁止剤を油相中で使用することによる所望しない重合反応の開始を抑制する効果は、以下の方法によっても確認することができる。すなわち、窒素ガスを充填したガラス製アンプル(容積50mL)に、所望の重合性単量体の組み合わせ及び重合開始剤、並びに、重合性単量体の合計量100質量部に対して0.02質量部(200ppmに相当する。)の非水溶性重合禁止剤を封入して、該アンプルを温度25℃の恒温水槽に浸漬する。該アンプルの内容物が重合を開始することに伴い生じる白濁の有無を目視で観察し、白濁が観察されるまでの経過時間(単位:時間。以下、「重合抑制時間」ということがある。)を測定する。例えば、該重合抑制時間が1時間以上であれば、温度25℃において1時間以上の重合抑制効果があるといえるので、外気温が高いとき、特に、大規模生産を行う場合にも、重合性混合物の調製時や分散液の調製時中等において所望しない油相での重合反応が開始するおそれがない。重合抑制時間は、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上、特に好ましくは4時間以上である。なお、重合抑制時間が長すぎると、最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーを製造するための重合反応の開始と進行が妨げられるおそれがあるので、重合抑制時間は、通常10時間以下、多くの場合8時間以内の範囲とすることが好ましい。
7.水系分散媒体
本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法において、懸濁重合は水系分散媒体中で行われる。水系分散媒体としては、水を使用することができ、具体的には脱イオン水や蒸留水を使用することができる。重合性単量体の合計量に対する水系分散媒体の使用量は、特に限定されないが、通常0.5〜10倍、多くの場合1〜7倍(質量比)である。
8.重合性混合物の懸濁、及び懸濁重合
本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法においては、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合することを特徴とする。
〔重合性混合物の懸濁〕
本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法において、懸濁重合に先立って、水系分散媒体中で懸濁する、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物は、その調製方法が特に限定されない。通常は、水等の水系分散媒体に、分散安定剤(懸濁剤)、更に必要に応じて補助安定剤や重合助剤等を加えて、分散安定剤を含有する水系分散媒体(水相)を調製する。後に説明するように、懸濁重合を行うに当たっては、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって、最適のpH条件を選定することが好ましいので、必要に応じて系のpHを調整してもよい。なお、分散安定剤として水酸化マグネシウムまたはリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性環境の中で重合させる。他方、別途、発泡剤、重合性単量体、及び必要に応じて架橋性単量体等を混合して、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する混合物(油相)を調製し、次いで、前記の水相と油相とを混合する。なお、本発明の目的を阻害しない限り、先の分散安定剤を含有する水系分散媒体に、発泡剤、重合性単量体、及び架橋性単量体等を加えてもよい。
本発明の発泡性マイクロスフェアーの製造方法において使用する非水溶性重合禁止剤は、前記の油相(少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する混合物)に添加して、重合性混合物に含有される。また、重合開始剤は、あらかじめ重合性単量体に添加して使用することができるが、早期の重合を避ける必要がある場合には、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する混合物(油相)を、先の分散安定剤を含有する水系分散媒体に、添加し攪拌混合するときに、重合開始剤を加え、水系分散媒体中で一体化してもよい。これらの調製方法により、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を得ることができる。本発明によれば、前記の少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物は、温度25℃の水系分散媒体中において、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上、特に好ましくは4時間以上保存・保持しても、予期しない重合反応が抑制されているので、所望のときに懸濁重合を行うことができる。
次いで、得られた少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を、通常は攪拌混合等の方法によって、懸濁する。重合性混合物を、攪拌混合等により懸濁することにより、水系分散媒体を含有する水相中において、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤を含有する油相が液滴を形成する。重合性混合物を懸濁するために行う攪拌混合の条件を選択することにより、所望の大きさの微細な液滴に造粒することができる。液滴の平均粒径は、目的とする発泡性マイクロスフェアーの平均粒径とほぼ一致させることが好ましく、通常、0.2〜500μmの範囲であり、0.5〜150μm程度とすることが好ましい。攪拌混合に際しては、発泡性マイクロスフェアーの所望の粒径に応じて、攪拌機の種類や回転数などの条件設定を行う。この際、重合缶の大きさと形状、バッフルの有無等をも勘案して条件を選択する。攪拌機としては、高せん断力を有するホモジナイザーが好ましい。粒径分布が極めてシャープな発泡性マイクロスフェアーを得るには、水系分散媒体及び重合性混合物を連続式高速回転高せん断型攪拌分散機内に供給し、該攪拌分散機中で両者を連続的に攪拌分散させた後、得られた分散液を重合槽内に注入し、該重合槽内で懸濁重合を行う方法を採用することが好ましい。また、回分式高速回転高せん断分散機を用いることもできる。
〔懸濁重合〕
水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁した後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合する。懸濁重合は、水系分散媒体中で行われ、通常、分散安定剤(懸濁剤)を含有する水系分散媒体中で行われる。懸濁重合を行うに当たっては、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって、最適のpH条件を選定することが好ましい。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカなどのシリカを使用する場合は、酸性環境で重合を行うことが好ましいので、先に説明した重合性混合物の懸濁に先立ち、あらかじめ分散安定剤を含有する水系分散媒体に、酸を加えて、系のpHを約3〜4に調整しておいてもよい。また、分散安定剤として水酸化マグネシウムまたはリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性環境の中で重合させる。
重合(懸濁重合)反応は、非水溶性重合禁止剤の存在下に、通常酸素不存在下で、例えば、脱気して、または窒素ガス等の不活性ガスで置換した重合缶内において、温度40〜80℃、好ましくは50〜70℃で、1〜40時間、好ましくは3〜30時間攪拌しながら行う。重合により生成する発泡性マイクロスフェアーは、微粒子固体を形成するので、水系分散媒体を含有する水相は、例えば、ろ過、遠心分離、沈降等のそれ自体公知の分離方法によって、発泡性マイクロスフェアーから分離除去される。その際、非水溶性重合禁止剤は、重合反応を阻害することなく、緩やかに重合反応を進めるよう作用すると推察され、その結果、発泡特性等の物性が優れる最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーが得られる。得られる発泡性マイクロスフェアーは、必要に応じて、発泡剤がガス化しない程度の比較的低温で乾燥される。
II.発泡性マイクロスフェアー
本発明によれば、先に説明した発泡性マイクロスフェアーの製造方法によって、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合して得られる、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーが提供される。
〔最大発泡倍率〕
本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの最大発泡倍率は、以下の方法によって測定する発泡倍率(塗膜法)により求めるものである。すなわち、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA;エチレン/酢酸ビニル=30/70質量%)を含有するEVA系水性エマルジョン(濃度55重量%)に対して、発泡性マイクロスフェアーが固形分換算で5:1となるように添加して塗工液を調整する。この塗工液を両面アート紙に200μmのギャップを有するコーターで塗布した後、発泡開始温度の近傍からより高い温度までの複数の所定温度のオーブンに入れて、2分間加熱して発泡させる。発泡後の塗膜厚みを測定し、発泡前後の塗膜圧比から、各々の所定温度における発泡倍率を求め、測定された最大の発泡倍率を、発泡性マイクロスフェアーの最大発泡倍率とする。本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの最大発泡倍率は、好ましくは6倍以上、より好ましくは7倍以上である。前記最大発泡倍率は、上限値が特にないが、発泡体粒子または発泡性マイクロスフェアーの強度や、発泡の均一性または安定性の観点等から、通常30倍以下、多くの場合20倍以下である。
〔平均粒径〕
本発明の最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの平均粒径は、取扱い性や発泡の均一性または安定性の観点等から、好ましくは平均粒径が0.5〜150μmであり、より好ましくは1〜120μmである。発泡性マイクロスフェアーの平均粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製のSALDシリーズ等)を使用して測定するものであり、粒子径(球相当径)の積算%(体積基準及び対数スケール)の粒径分布曲線に基づいて得られる50%粒子径(「メディアン径」ということもある。以下、「平均粒径(D50)」ということがある。)をいう(単位:μm)。平均粒径が小さすぎると、クッション性、軽量化が不十分となるおそれがあり、平均粒径が大きすぎると、発泡成形体の気泡が大きすぎ、繰り返し圧縮に対する耐疲労性、または、強度が不十分となるおそれがある。
本発明により得られる最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーは、発泡(膨張)させて、または未発泡のままで、各種分野に使用される。該発泡性マイクロスフェアーは、例えば、その膨張性を利用して、自動車等の塗料の充填剤、発泡インク(壁紙、T−シャツ等のレリーフ模様付け)の発泡剤、収縮防止剤などに使用される。また、発泡性マイクロスフェアーは、発泡による体積増加を利用して、プラスチック、塗料、各種資材などの軽量化や多孔質化、各種機能性付与(例えば、スリップ性、断熱性、クッション性、遮音性等)の目的で使用される。特に、本発明による発泡性マイクロスフェアーは、表面性や平滑性が要求される塗料、インク分野や、プラスチック成形品(例えば内装材等)の軽量化などに好適に用いることができる。
これに対して、非水溶性重合禁止剤を含有することなく、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体及び重合開始剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の不存在下に懸濁重合して得られる、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された発泡性マイクロスフェアーは、最大発泡倍率が5倍に満たなかったり、粒径や最大発泡倍率や発泡開始温度にバラツキがあったりすることがあるため、使用目的に合致しないことがある。更には、発泡性マイクロスフェアーを製造するときに、重合反応の進行が遅すぎたり、または制御できない異常反応が生じたり、重合容器に付着物が多量に発生するなどの問題が生じることがある。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明に係る発泡性マイクロスフェアー等の特性の測定方法は、以下のとおりである。
〔最大発泡倍率〕
発泡性マイクロスフェアーの最大発泡倍率は、先に説明した発泡倍率(塗膜法)を、温度100℃から5℃刻みとした各温度のオーブン内で2分間発泡させることにより測定することによって、求めた。
〔平均粒径(D50)〕
発泡性マイクロスフェアーの平均粒径(D50)は、株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒子径分布測定装置SALD−3000Jを使用して測定した。
〔重合抑制効果〕
発泡性マイクロスフェアーの製造方法において、所望しない重合反応の開始を抑制する重合抑制効果は、以下の方法によって確認した。すなわち、ガラス製アンプル(容積50mL)に、所望の重合性単量体の組み合わせ及び重合開始剤、並びに、重合性単量体の合計量100質量部に対して0.02質量部(200ppmに相当する。)の非水溶性重合禁止剤を添加し窒素置換して封入し、該アンプルを温度25℃の恒温水槽に浸漬した。該アンプルの内容物が重合を開始することに伴い生じる白濁の有無を目視で観察することにより、重合抑制時間(単位:時間)を測定した。2時間経過後に白濁がみられないときは、重合抑制時間は、2時間を超えるものと判定した。
〔I〕重合抑制効果の確認
[実施例1]
窒素ガスを充填したガラス製アンプル(容積50mL)に、重合性単量体である塩化ビニリデン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル(質量比65/30/5)、並びに、重合性単量体の合計量100質量部に対して0.02質量部の天然ビタミンE、及び、重合開始剤であるIPP1質量部を封入して、該アンプルを温度25℃の恒温水槽に浸漬して重合抑制時間を測定したところ、重合抑制時間は、2時間を超えるものであった。なお、これら購入した重合性単量体には、重合禁止剤としてメトキノン(温度20℃の水に対する溶解度は、3.8質量%である。)が予め含有されており、その含有量は、重合性単量体合計量100質量部に対して0.0013質量部、すなわち13ppmであった。
[実施例2]
天然ビタミンEに代えて、t−ブチルヒドロキノン(以下、「t−BuHQ」ということがある。)を、重合性単量体の合計量100質量部に対して0.02質量部封入したことを除いて、実施例1と同様にして該アンプルを温度25℃の恒温水槽に浸漬して重合抑制時間を測定したところ、重合抑制時間は、2時間を超えるものであった。
[比較例1]
天然ビタミンEを封入しなかったことを除いて、実施例1と同様にして該アンプルを温度25℃の恒温水槽に浸漬して重合抑制時間を測定したところ、重合抑制時間は、5分間未満であった。
〔II〕発泡性マイクロスフェアーの製造
[実施例3]
〔重合性混合物の懸濁〕
重合単量体である塩化ビニリデン(以下、「VD」ということがある。)65g、アクリロニトリル(以下、「AN」ということがある。)30g及びメタクリル酸メチル(以下、「MMA」ということがある。)5g(質量比:VD/AN/MMA=65/30/5)と、架橋性単量体であるエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)0.2gと、非水溶性重合禁止剤である天然ビタミンE0.02g(重合性単量体の合計量100質量部に対して0.02質量部。以下、「対モノマー0.02質量%」ということがある。)と、発泡剤であるイソブタン16g、及び重合開始剤であるIPP1gを混合して、重合性混合物(油相)を調製し、重合性混合物を温度25℃で保存した。なお、購入した重合性単量体には、重合禁止剤であるメトキノンが予め含有されており、その含有量は、重合性単量体合計量100質量部に対して0.0013質量部、すなわち13ppmであった。他方、シリカ2.0g(20質量%コロイダルシリカ分散液として供給した。)、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物(酸価=78mgKOH/g)0.375g(50質量%水溶液として供給した。)、亜硝酸ナトリウム0.06g、及び水240gを混合した後、塩酸(5質量%水溶液)を添加してpHが3.2になるように調整し、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製した。
温度25℃で2時間保存した前記の重合性混合物と前記の水系分散媒体とを混合して、ホモジナイザーで攪拌混合することにより、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁して、水系分散媒体中に重合性混合物の微小な液滴を造粒した。
〔懸濁重合〕
重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて温度50℃で22時間加熱することにより、非水溶性重合禁止剤(天然ビタミンE)の存在下に懸濁重合した。重合後、生成した発泡性マイクロスフェアーを含有するスラリーを濾過・水洗し、乾燥して、発泡性マイクロスフェアーを得た。得られた発泡性マイクロスフェアーについて、発泡倍率(塗膜法)を測定した結果(温度120、130、140及び150℃について表示)と最大発泡倍率、並びに平均粒径(D50)(以下、単に「平均粒径」と表記することがある。)を測定した結果(以下、総称して「発泡倍率と平均粒径の測定結果」ということがある。)を、表1に示す。
[実施例4]
非水溶性重合禁止剤として、天然ビタミンEに代えて、t−BuHQを使用したことを除いて、実施例3と同様にして、重合性混合物の懸濁と懸濁重合を行うことにより、発泡性マイクロスフェアーを得た。得られた発泡性マイクロスフェアーについて、発泡倍率と平均粒径の測定結果を、表1に示す。
[比較例2]
非水溶性重合禁止剤である天然ビタミンEを使用しなかったことを除いて、実施例3と同様にして、重合性混合物を懸濁した後に懸濁重合を開始したところ、短時間で沈殿物が発生して、発泡性マイクロスフェアーを得ることができなかった(発泡性マイクロスフェアーの発泡倍率と平均粒径の測定結果を取得できなかった。)。
Figure 2016172228
表1から、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合することを特徴とする、実施例3及び4の発泡性マイクロスフェアーの製造方法によれば、分散液調製中や重合開始前等所望しない時期における油相や水相での重合反応の開始が抑制され、かつ、所期の油相での重合反応が阻害されず、発泡倍率(塗膜法)の測定により求めた最大発泡倍率が5倍以上、具体的には10.2倍または7.8倍である、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーを得られることが分かった。
特に、温度20℃の水に対する溶解度が0.1質量%未満である非水溶性重合禁止剤(天然ビタミンE)を使用する実施例3の発泡性マイクロスフェアーの製造方法によれば、平均粒径(D50)が13.0μmと微小の発泡性マイクロスフェアーであって、しかも、発泡倍率(塗膜法)の測定により求めた最大発泡倍率が10.2倍であることから、前記の溶解度が1質量%である非水溶性重合禁止剤(t−BuHQ)を使用する実施例4と比較しても、発泡倍率等の物性が特に優れた発泡性マイクロスフェアーが得られることが分かった。
これに対して、非水溶性重合禁止剤を含有することなく、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、及び重合開始剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の不存在下に懸濁重合する比較例2の発泡性マイクロスフェアーの製造方法によれば、分散液調製中や重合開始前等所望しない時期における油相での重合反応の開始を抑制し、かつ、所期の油相での重合反応を阻害することなく、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーを得られないことが分かった。
本発明は、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合することを特徴とする、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法であることによって、所望しない時期における油相及び水相における重合反応の開始が十分に抑制され、かつ、所期の油相での重合反応が阻害されず、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーの製造方法を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明は、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合して得られる、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーであることによって、発泡倍率等の物性が優れる発泡性マイクロスフェアーを提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (13)

  1. 水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合することを特徴とする、
    生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  2. 非水溶性重合禁止剤は、温度20℃での水に対する溶解度が1質量%以下である請求項1記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  3. 非水溶性重合禁止剤は、ビタミンEを含有する請求項1または2記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  4. 非水溶性重合禁止剤は、ヒドロキシ基、キノン基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する油溶性の芳香族化合物を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  5. ヒドロキシ基を有する油溶性の芳香族化合物が、フェノール類またはナフトール類である請求項4記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  6. キノン基を有する油溶性の芳香族化合物が、ベンゾキノン類、ナフトキノン類、またはアントラキノン類である請求項4記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  7. アルコキシ基を有する油溶性の芳香族化合物が、ベンゼン誘導体またはナフタレン誘導体である請求項4記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  8. 重合性単量体が、塩化ビニリデン30〜95質量%と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体5〜70質量%とを含有する単量体混合物である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  9. 重合性単量体が、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体25〜100質量%と、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜75質量%とを含有する単量体混合物である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  10. 水系分散媒体中に重クロム酸塩、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、硼酸及び水可溶性アスコルビン酸類からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  11. 水系分散媒体中に含有される前記の化合物が亜硝酸アルカリ金属塩である請求項10記載の発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  12. 水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、重合開始剤及び非水溶性重合禁止剤を含有する重合性混合物を懸濁し、その後、非水溶性重合禁止剤の存在下に懸濁重合して得られる、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された最大発泡倍率が5倍以上である発泡性マイクロスフェアー。
  13. 平均粒径が0.5〜150μmである請求項12記載の発泡性マイクロスフェアー。
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CN109796763A (zh) * 2018-12-05 2019-05-24 深圳市鑫昌龙新材料科技股份有限公司 微球和油基料的组合物及其制备方法
CN112980042A (zh) * 2021-03-05 2021-06-18 济南金昌树新材料科技有限公司 一种耐高温型热膨胀发泡微球的制备方法及所得产品

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