JP2016169996A - セメント組成物の判定方法、およびセメント組成物の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメント組成物の判定方法は、パルスNMR測定装置を用いて測定した、セメント組成物のペーストの縦緩和時間に基づき、セメント組成物中の凝集したシリカフュームおよび/または粒体シリカフュームの多寡を判定する。また、セメント組成物の処理方法は、前記判定方法に基づき、凝集したシリカフュームおよび/または粒体シリカフュームを多く含むと判定されたセメント組成物を、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機を用いて撹拌処理する方法である。
【選択図】図1
Description
しかし、BET比表面積が15m2/g以上の微小なシリカフュームは、保管中に一部が凝集して不均質な凝集物が生じ易く、このようなシリカフュームとポルトランドセメントを混合したプレミックスタイプのセメント組成物は、往々にして凝集シリカフュームを含むという問題がある。また、凝集していないシリカフュームを用いた場合でも、BET比表面積が15〜25m2/gのシリカフュームを含むプレミックスタイプのセメント組成物では、製造後、半年以上経過すると、含まれているシリカフュームが凝集するという問題がある。かかるセメント組成物を用いた、モルタルおよびコンクリート(以下「モルタル等」という。)の混練では、凝集シリカフュームを解砕するための時間を要し、製造時の凝集していないシリカフュームを含むセメント組成物を用いたモルタル等に比べ、混練時間が長くなり、その分モルタル等の製造効率が低下する。
特許文献1では、シリカフュームの品質判定方法が提案されている。具体的には、該方法は、シリカフュームに水中で外力を加え、外力を加えた前後等におけるシリカフュームの粒度分布の変化や粒度分布に関連したパラメーターの変化を測定して、シリカフュームの品質を判定する方法である。また、
特許文献2では、水性スラリー中の固形分の最大寸法の測定方法が提案されている。具体的には、該方法は、無色透明な糖蜜状の希釈液をスラリーに添加して、スラリー中の粒子の凝集分散状態を保った状態で顕微鏡観察し、単粒子および凝集粒子からなる固形分の最大寸法を測定する方法である。
しかし、特許文献1に記載の方法は、シリカフューム中の凝集状態の判定が目的ではなく、特許文献2に記載の方法は、個々の粒子を顕微鏡で観察して、最大寸法を測定するため手間がかかる。
特許文献3では、顆粒(粒体)状のシリカフューム等を用いた高強度セメントの製造方法が提案されている。具体的には、該方法は、セメントクリンカを粉砕するに際し、セメントクリンカと粒径が1μm以下のシリカフューム等の超微粒子からなる粒径2mm未満の顆粒状物質と、粉砕助剤とを添加して粉砕する方法である。そして、該方法によれば、セメント中に単一粒子となって分散した超微粒子の割合が著しく多くなり、セメントの流動性と強度発現性が改善するとしている。しかし、該セメントであっても、やはり製造した後、半年以上が経過すると、分散していたシリカフュームが凝集して塊状の粒子を形成し、該シリカフュームを含むセメントを用いたモルタル等は混練時間が長くなるという問題がある。
(i)パルスNMR測定装置を用いて測定した、セメント組成物のペーストの縦緩和時間は、凝集シリカフューム等の多寡を判定するための指標になること、
(ii)凝集シリカフューム等を含むセメント組成物を、特定の混合機を用いて撹拌処理したセメント組成物を用いたモルタル等は、混練時間が短縮すること
を見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の構成を有するセメント組成物の判定方法等である。
[2]前記[1]に記載のセメント組成物の判定方法に基づき、凝集シリカフュームおよび/または粒体シリカフュームを多く含むと判定されたセメント組成物を、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機を用いて撹拌処理する、セメント組成物の処理方法。
[3]前記ブレード状の撹拌羽根を有する混合機が、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサである、前記[2]に記載のセメント組成物の処理方法。
また、本発明のセメント組成物の処理方法は、前記セメント組成物の判定方法に基づき、凝集シリカフュームおよび/または粒体シリカフュームを多く含むと判定されたセメント組成物を、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機を用いて撹拌処理する方法である。
以下、本発明について、セメント組成物の判定方法と、セメント組成物の処理方法に分けて詳細に説明する。
(1)セメント組成物
本発明において判定の対象であるセメント組成物は、シリカフュームとセメントを含む組成物である。
(i)シリカフューム
前記セメント組成物に含まれる凝集シリカフューム、または粒体シリカフュームのBET比表面積は、通常、12〜25m2/gである。該値がこの範囲を外れるシリカフュームは入手が困難である。なお、該BET比表面積は、好ましくは13〜20m2/gである。
ここで凝集シリカフュームとは、例えば、レーザー回折・散乱型粒度分布測定装置で測定した1μm以上の粒径の粒子の割合が20質量%以上のシリカフュームをいう。なお、セメント組成物の製造に、凝集していないシリカフュームを用いたとしても、製造後、半年以上経過すると、セメント組成物に含まれるシリカフュームは凝集し易い。また、保管条件によっては、製造後、数か月で、セメント組成物に含まれるシリカフュームは凝集する場合がある。
なお、粒体シリカフュームとは、JIS A 6207に記載されているシリカフュームをいう。
前記セメント組成物に含まれるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、および低熱ポルトランドセメントからなる群より選ばれる1種以上のポルトランドセメントが挙げられる。
これらのセメントの中でも、モルタル等の流動性や作業性等の観点から、好ましくは中庸熱ポルトランドセメント、および低熱ポルトランドセメントである。
前記セメント組成物の組成は、セメント100質量部に対し、シリカフュームは好ましくは5〜40質量部である。該値が該範囲にあれば、セメント組成物は流動性と強度発現性が高い。なお、セメント組成物の組成は、セメント100質量部に対し、シリカフュームは、より好ましくは8〜35質量部、さらに好ましくは10〜30質量部である。
前記セメント組成物は、他に石灰石粉末、石英粉末、石膏、フライアッシュ、石炭灰、高炉スラグ、および膨張材等の混和材を含むことができる。該混和材の配合量は、セメント100質量部に対し、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。
次に、本発明のセメント組成物の判定方法において、指標として用いる縦緩和時間の測定について説明する。
該縦緩和時間(T1)は、セメント組成物のスラリーを入れた試料管を、パルスNMR測定装置内の2つの永久磁石の間にあるコイル内に挿入した後、電磁波パルスを前記コイルに照射して測定する。セメント組成物のスラリーは、調整した後、好ましくは10秒以内に測定に供する。該スラリーの調整後、10秒経過した後は、縦緩和時間の測定誤差が大きくなる場合がある。なお、前記測定に供するまでの時間は、より好ましくは5秒以内である。
セメントとシリカフュームを混合してセメント組成物を作製し、所定の期間が経過した後の、セメント組成物のペーストの縦緩和時間と該セメント組成物を用いたモルタルの流動化時間との間には、後掲の表1および図1に示すように正の相関がある。そして、図1の例では、縦緩和時間が75msを境にして、モルタルの流動化時間が大きく異なる。この流動化時間の差は、混合後の時間の経過により生成した凝集シリカフュームの量に関係する。
もっとも、セメント組成物中の凝集シリカフュームおよび/または粒体シリカフュームの多寡を判定する基準は相対的であり、例えば、セメント組成物を用いたモルタルの流動化時間によりセメント組成物を評価する場合、要求性能を満たす流動化時間の値を定め、さらに該値から縦緩和時間の基準値を定める。そして、該基準値を満たす場合、セメント組成物中の凝集シリカフュームおよび/または粒体シリカフュームの含有量は少ないと判定する。例えば、図1の例では、縦緩和時間の基準値を75msと定めると、75ms以下では凝集シリカフュームが少なく、75msを超えると凝集シリカフュームは多いと判定する。
本発明のセメント組成物の処理方法は、前記セメント組成物の判定方法に基づき、凝集シリカフューム等を含むと判定されたセメント組成物を、該セメント組成物を含むモルタル等の混練時間が短縮するように、特定の混合機を用いて処理する方法である。
(1)混合機
前記特定の混合機は、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機であり、例えば、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサ等が挙げられる。これらの混合機はいずれも、強力な分散力(せん断作用)を有するブレード状の高速攪拌羽根(チョッパーまたはローター)を備えており、その回転速度は概ね1000rpmから6000rpmの範囲で調整可能である。
そして、プロシェアミキサは、図2に一例を示すように、主にショベル羽根1とチョッパー2とからなり、材料投入口3から投入された粉体材料はショベル羽根1の混合作用による浮遊拡散混合と、チョッパー2の分散作用による高速せん断分散により分散混合を行った後、材料排出口から粉体を排出するミキサである。プロシェアミキサを混合機として用いる場合、チョッパーの回転速度が、好ましくは2000rpm以上、より好ましくは3000rpm以上の攪拌能力を有するプロシェアミキサが望ましい。プロシェアミキサは、例えば、太平洋機工社製のプロシェアミキサがあり、その型式はWB−20(傾斜型)やWB−2400が挙げられる。
また、アイリッヒミキサは、例えば、日本アイリッヒ社製のアイリッヒミキサがあり、その型式はR02が挙げられる。また、ヘンシェルミキサは、例えば、日本コークス工業社製のヘンシェルミキサがあり、その型式はFM20Cが挙げられる。
本発明においては、上記ブレード状の撹拌羽根を有する混合機を用いて撹拌することにより、セメント組成物中の凝集シリカフュームおよび/または粒体シリカフュームが解砕されて、モルタルやコンクリートの混練時間が短縮されると推察する。
1.使用材料
(1)セメント組成物A
中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)100質量部に対し、BET比表面積18.5m2/gの凝集シリカフューム(金属シリコン系、1μm以上の粒径の粒子の割合が30質量%、密度2.25g/cm3(エムケム ジャパン社製))を13質量部含むセメント組成物
(2)セメント組成物B
中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)100質量部に対し、BET比表面積18.5m2/gの凝集していないシリカフューム(金属シリコン系、1μm以上の粒径の粒子の割合が10質量%、密度2.25g/cm3(エムケム ジャパン社製))を13質量部含むセメント組成物
(3)セメント組成物C
製造後12カ月経過したセメント組成物B(凝集シリカフュームを含む)
(4)細骨材
山砂(静岡県掛川市産)
(5)高性能減水剤
マスターグレニウムSP8HU X2[登録商標](BASFジャパン社製)
(6)空気量調整剤
マスターエア404[登録商標](BASFジャパン社製)
(7)水:水道水
該モルタルの配合は、水/セメント組成物の質量比が0.14、細骨材/セメント組成物の質量比が0.33、高性能減水剤の添加量がセメント組成物の質量×1.5%である。また、モルタルの空気量は空気量調整剤を用いて3%以下に調整した。
前記配合に従い、セメント組成物等のモルタルの原料を一括してホバートミキサーに投入し低速で混練して、流動化時間(秒)を測定した。本発明の処理対象であるセメント組成物を含むモルタルの性状は、初めは粉状から徐々に大きな塊状に変化し、さらに混ぜると、流動化した状態に変化するという特異な変化を示す。そして、流動化時間とは、混練開始時から前記流動化した状態に至るまでの時間である。なお、モルタルの混練時間は、前記流動化時間+180秒とした。
次に、前記混練したモルタルを用いてJIS R 5201「セメントの物理試験方法 11.フロー試験」に準拠してモルタルのフローを測定した。ただし、15回の落下運動は実施しなかった。
前記セメント組成物Bを調製した後、セメント組成物Bをビニール袋に入れ、30℃、相対湿度80%の条件で保管した。表1に記載の保管期間の経過時に、セメント組成物B3gと、蒸留水3gとを混合して、セメント組成物Bのスラリーを調製した。次に、該スラリーを試料管に入れて、該試料管をパルスNMR測定装置(米国XiGo Nanotools社製)内のコイル内に挿入した後、電磁波パルスを前記コイルに照射して、20℃の環境下での縦緩和時間を、1試料あたり5回測定して、その平均値を求めた。
また、表1に記載の保管期間の経過時に、セメント組成物Bを用いて前記モルタルを調製し、前記の方法に従い、モルタルの流動化時間を測定した。ここで測定して得られた縦緩和時間(平均値)と流動化時間を表1と図1に示す。
(1)該処理に用いた混合機と混合条件
(i)プロシェアミキサa
型式:WB−20(傾斜型)、チョッパーの回転速度:3600〜6000rpm、チョッパーの周速:18m/s以上、容積:20リットル、太平洋機工社製
(ii)プロシェアミキサb
型式:WB−2400、チョッパーの回転速度:3600rpm、チョッパーの周速:
28m/s、容積:2.3m3、太平洋機工社製
なお、前記セメント組成物のプロシェアミキサへの投入量は、プロシェアミキサaで8.4kg、プロシェアミキサbで800kgであった。
プロシェアミキサaを用いて、ショベル羽根の周速が4.2m/s、チョッパーの回転速度が6000rpmの条件で、前記12週間保管したセメント組成物Bを10分間撹拌した。撹拌後、このセメント組成物Bを用いて前記モルタルを作製し、該モルタルの流動化時間を測定したところ、流動化時間は110秒と短かった。
(i)撹拌時間の効果
前記プロシェアミキサaのショベル羽根の周速が4.2m/s、およびチョッパーの回転速度が6000rpmの条件で、前記セメント組成物Aを、15分、10分、5分、および3分撹拌した。撹拌した後のセメント組成物Aを用いて前記モルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は図3の(1)に示す。
図3の(1)に示すように、撹拌時間が長くなるほどモルタルの流動化時間は短縮する。
前記プロシェアミキサaのショベル羽根の周速が4.2m/s、および撹拌時間が10分の条件で、前記セメント組成物Aを、チョッパーの回転速度が6000rpm、4800rpm、および3600rpmで撹拌した。撹拌した後のセメント組成物Aを用いてモルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は図3の(2)に示す。
図3の(2)に示すように、チョッパーの回転速度が大きくなるほどモルタルの流動化時間は短縮する。
前記プロシェアミキサaのチョッパーの回転速度が3600rpm、および撹拌時間が10分の条件で、前記セメント組成物Aを、ショベル羽根の周速が4.2m/s、および3.5m/sで撹拌した。撹拌した後のセメント組成物Aを用いてモルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は図3の(3)に示す。
図3の(3)に示すように、ショベル羽根の周速は大きい方がモルタルの流動化時間は短縮する傾向にある。
前記プロシェアミキサaのショベル羽根の周速が3.5m/s、およびチョッパーの回転速度が3600rpmの条件で、前記セメント組成物Cを、10分、および15分撹拌した。撹拌した後のセメント組成物Cを用いて前記モルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は図4に示す。
図4に示すように、撹拌する前のセメント組成物C(未処理)では流動化時間が長いことから、シリカフュームは凝集していると考える。そして、撹拌時間が長いほどモルタルのフロー値は大きくなり、流動化時間は短縮する。
前記プロシェアミキサb(工場向けの実機)のショベル羽根の周速が3.5m/s、およびチョッパーの回転速度が3600rpmの条件で、前記セメント組成物Aを、5分、10分、15分、20分、30分、45分、および60分撹拌した。撹拌する前(未処理)と撹拌した後のセメント組成物Aを用いて前記モルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は図5に示す。
図5に示すように、撹拌時間が長くなるほどモルタルの流動化時間は短縮する。
以上の結果から、本発明のセメント組成物の処理方法は、凝集シリカフュームを含むセメント組成物を用いたモルタルやコンクリートの混練時間を短縮でき、モルタルやコンクリートの製造効率が向上する。
2 チョッパー
3 材料投入口
4 材料排出口
Claims (3)
- パルスNMR測定装置を用いて測定した、セメント組成物のペーストの縦緩和時間に基づき、セメント組成物中の凝集したシリカフュームおよび/または粒体シリカフュームの多寡を判定する、セメント組成物の判定方法。
- 請求項1に記載のセメント組成物の判定方法に基づき、凝集したシリカフュームおよび/または粒体シリカフュームを多く含むと判定されたセメント組成物を、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機を用いて撹拌処理する、セメント組成物の処理方法。
- 前記ブレード状の撹拌羽根を有する混合機が、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサである、請求項2に記載のセメント組成物の処理方法。
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