JP2016163540A - 有用物質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】イソクエン酸を前駆体として生合成される目的物質の製造法を提供する。【解決手段】L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素の活性、マリルCoAリアーゼ活性、及びイソクエン酸リアーゼ活性が増大するように改変された微生物を培地で培養し、該培地より目的物質を採取することにより、目的物質を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、微生物を用いた有用物質の製造法に関する。
L−グルタミン酸は、主として、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属に属するいわゆるコリネ型細菌のL−グルタミン酸生産菌またはそれらの変異株を用いた発酵法により製造されている(非特許文献1)。また、その他の菌株を用いた発酵法によるL−グルタミン酸の製造法としては、例えば、バチルス属、ストレプトミセス属、ペニシリウム属等の微生物を用いる方法(特許文献1)、シュードモナス属、アースロバクター属、セラチア属、キャンディダ属等に属する微生物を用いる方法(特許文献2)、バチルス属、シュードモナス属、セラチア属、アエロバクター・アエロゲネス(現エンテロバクター・アエロゲネス)等に属する微生物を用いる方法(特許文献3)、エシェリヒア・コリの変異株を用いる方法(特許文献4)、クレブシエラ属、エルビニア属、パントテア属、エンテロバクター属等に属する微生物を用いる方法(特許文献5〜7)が知られている。
また、組換えDNA技術によりL−グルタミン酸の生合成酵素の活性を増大させることに
よって微生物のL−グルタミン酸生産能を向上させる、種々の技術が知られている。例えば、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属細菌への、エシェリヒア・コリ又はコリネバクテリウム・グルタミクム由来のクエン酸シンターゼをコードする遺伝子の導入が、L−グルタミン酸生産能の向上に効果的であったことが報告されている(特許文献8)。また、コリネ型細菌由来のクエン酸シンターゼ遺伝子の、エンテロバクター属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属、又はエシェリヒア属に属する腸内細菌への導入が、L−グルタミン酸生産能の向上に効果的であったことが報告されている(特許文献7)。
L−グルタミン酸以外のL−グルタミン酸系アミノ酸、例えば、オルニチン及びシトルリン(非特許文献2〜4)、L−グルタミン(特許文献9)、L−プロリン(特許文献10)、ならびにL−アルギニン(特許文献11、12)も、L−グルタミン酸と同様に、上記のような微生物を用いた発酵法により製造されている。
前記のようなL−グルタミン酸生産能を向上させる技術は、主として解糖系及びTCAサイクルの酵素の活性を増強するものである。しかし、解糖系及びTCAサイクルを介したL−グルタミン酸生産においては、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼによる脱炭酸を伴うため、1分子のL−グルタミン酸を生成するのに必ず1分子のCO2が放出される。従って、L−グルタミン酸の生産性をさらに向上させるために
は、この脱炭酸を減少させることが必要であると考えられる。
脱炭酸を減少させ、L−グルタミン酸生産能を高める試みとしては、例えば、D−キシルロース−5−リン酸ホスホケトラーゼ及び/又はフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼを利用する方法(特許文献13);α-ケトグルタル酸シンターゼを利用する方法
(特許文献14);マレートチオキナーゼ、マリルCoAリアーゼ、グリオキシル酸カルボ
リガーゼ、及び2−ヒドロキシ−3−オキソプロピオン酸レダクターゼを利用する方法(特許文献15);グリオキシル酸サイクルを通じて炭酸固定を行う方法(特許文献16)が報告されている。
米国特許第3,220,929号明細書 米国特許第3,563,857号明細書 特公昭32-9393号公報 特開平5-244970号公報 特開2000-106869号公報 特開2000-189169号公報 特開2000-189175号公報 特公平7-121228号公報 特開2002-300887号公報 欧州特許第1172433号明細書 特開2000-287693号公報 特開2001-046082号公報 WO2006/016705号パンフレット WO2008/114721号パンフレット WO2013/018734号パンフレット WO2011/099006号パンフレット
明石邦彦ら著 アミノ酸発酵、学会出版センター、195〜215頁、1986年 Lee, Y.-J. and Cho, J.-Y. 2006, Biotechnol. Lett. 28: 1849-1856 Choi, D. K. et al. 1996. J. Ferment. Bioeng. 81: 216-219 Plachy, J. 1987. Kvasny Prumysl 33: 73-75
本発明は、微生物の目的物質生産能を向上させる新規な技術を開発し、効率的な目的物質の製造法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼの活性が増大するように微生物を改変することにより、微生物の目的物質生産能を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
目的物質の製造方法であって、
目的物質の生産能を有する微生物を培地で培養して目的物質を該培地中又は該微生物の菌体内に生成蓄積すること、および該培地又は菌体より目的物質を採取すること、を含み、
前記微生物が、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素の活性、マリルCoAリアーゼ活性、及びイソクエン酸リアーゼ活性が増大するように改変されており、
前記目的物質が、イソクエン酸を前駆体として生合成される物質であることを特徴とする、方法。
[2]
前記L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素が、マレートチオキナーゼ、スクシニルCoAシンターゼ、およびスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼか
らなる群より選択される、前記方法。
[3]
前記微生物が、さらにマレートシンターゼ活性が低下するように改変されている、前記方法。
[4]
前記微生物が、さらにTCAサイクルの補充経路が増強されるように改変されている、前記方法。
[5]
前記イソクエン酸を前駆体とする目的物質が、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−プロリン、L−アルギニン、L−オルニチン、L―シトルリン、イタコン酸、およびγ−アミノ酪酸からなる群より選択される、前記方法。
[6]
前記微生物が、コリネ型細菌または腸内細菌科に属する細菌である、前記方法。
[7]
前記コリネ型細菌が、コリネバクテリウム・グルタミカムである、前記方法。
[8]
前記腸内細菌科に属する細菌が、パントエア・アナナティスまたはエシェリヒア・コリである、前記方法。
本発明によれば、微生物の目的物質生産能を向上させることができ、目的物質を効率よく製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の微生物
本発明の微生物は、目的物質の生産能を有し、且つ、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素の活性、マリルCoAリアーゼ活性、及びイソクエン酸リアーゼ活性が増大するように改変された微生物である。
<1−1>目的物質の生産能を有する微生物
本発明において、「目的物質」とは、イソクエン酸を前駆体として生合成される物質である。イソクエン酸を前駆体として生合成される物質としては、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−プロリン、L−オルニチン、L−シトルリン、L−アルギニン、イタコン酸、およびγ−アミノ酪酸(gamma-aminobutyric acid;GABA)が挙げられる。本発明
において、アミノ酸は、特記しない限り、いずれもL−アミノ酸であってよい。本発明においては、1種の目的物質が製造されてもよく、2種またはそれ以上の目的物質が製造されてもよい。
「目的物質の生産能」とは、本発明の微生物を培地中で培養したときに、目的物質を細胞又は培地から回収できる程度に、細胞又は培地中に生成および蓄積する能力をいう。目的物質の生産能を有する微生物は、非改変株よりも多い量の目的物質を培地に蓄積することができる微生物であってよい。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。また、目的物質の生産能を有する微生物は、好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1.0g/L以上の量の目的物質を培地に蓄積することができる微生物であってもよい。本発明の微生物が生産する目的物質は、1種であってもよく、2種またはそれ以上であってもよい。
微生物としては、例えば、細菌や酵母が挙げられる。これらの中では、細菌が好ましい
細菌としては、例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌やコリネ型細菌が挙げられる。また、細菌としては、例えば、アリサイクロバチルス(Alicyclobacillus)属細菌やバチルス(Bacillus)属細菌も挙げられる。
腸内細菌科に属する細菌としては、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクタ
ー(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セ
ラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、フォトラブダス(Photorhabdus)属
、プロビデンシア(Providencia)属、サルモネラ(Salmonella)属、モルガネラ(Morganella)等の属に属する細菌が挙げられる。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌を用いることができる。
エシェリヒア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりエシェリヒア属に分類されている細菌が挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、Neidhardtらの著書(Backmann, B. J. 1996. Derivations and Genotypes
of some mutant derivatives of Escherichia coli K-12, p. 2460-2488. Table 1. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.
)に記載されたものが挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。エシェリヒア・コリとして、具体的には、例えば、プロトタイプの野生株K12由来のエシェリヒア・コリW3110(ATCC 27325)やエシェリヒア・コリMG1655(ATCC 47076)が挙げられる。
エンテロバクター属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりエンテロバクター属に分類されている細菌が挙げられる。エンテロバクター属細菌としては、例えば、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)やエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)が挙げられる。エンテロバクター・アグロメランスとして、具体的には、例えば、エンテロバクター・アグロメランスATCC12287株が挙げられる。エンテロバクター・アエロゲネスとして、具体的
には、例えば、エンテロバクター・アエロゲネスATCC13048株、NBRC12010株(Biotechonol Bioeng. 2007 Mar 27; 98(2) 340-348)、AJ110637株(FERM BP-10955)が挙げられる
。また、エンテロバクター属細菌としては、例えば、欧州特許出願公開EP0952221号明細
書に記載されたものが挙げられる。なお、Enterobacter agglomeransには、Pantoea agglomeransと分類されているものも存在する。
パントエア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりパントエア属に分類されている細菌が挙げられる。パントエア属細菌としては、例えば、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)が挙げられる。パントエア・アナナティスとして、具体的には、例えば、パントエア・アナナティスLMG20103株、パントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP-6614)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)
、SC17株(FERM BP-11091)、及びSC17(0)株(VKPM B-9246)が挙げられる。なお、エン
テロバクター・アグロメランスのある種のものは、最近、16S rRNAの塩基配列分析等に基づき、パントエア・アグロメランス、パントエア・アナナティス、パントエア・ステワルティイ等に再分類された(Int. J. Syst. Bacteriol., 43, 162-173 (1993))。本発明において、パントエア属細菌には、このようにパントエア属に再分類された細菌も含まれる
エルビニア属細菌としては、エルビニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、エル
ビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)が挙げられる。クレブシエラ属細菌としては、クレブシエラ・プランティコーラ(Klebsiella planticola)が挙げられる。
コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリ
ウム(Brevibacterium)属、およびミクロバクテリウム(Microbacterium)属等の属に属する細菌が挙げられる。
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような種が挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)
コリネバクテリウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)
コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)
コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)
コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium melassecola)
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシエンス)(Corynebacterium thermoaminogenes (Corynebacterium efficiens))
コリネバクテリウム・ハーキュリス(Corynebacterium herculis)
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)
ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)
ブレビバクテリウム・イマリオフィラム(Brevibacterium immariophilum)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevibacterium thiogenitalis)
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis))
ブレビバクテリウム・アルバム(Brevibacterium album)
ブレビバクテリウム・セリナム(Brevibacterium cerinum)
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterium ammoniaphilum)
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような菌株が挙げられる。
Corynebacterium acetoacidophilum ATCC 13870
Corynebacterium acetoglutamicum ATCC 15806
Corynebacterium alkanolyticum ATCC 21511
Corynebacterium callunae ATCC 15991
Corynebacterium glutamicum ATCC 13020, ATCC 13032, ATCC 13060,ATCC 13869,FERM BP-734
Corynebacterium lilium ATCC 15990
Corynebacterium melassecola ATCC 17965
Corynebacterium thermoaminogenes AJ12340 (FERM BP-1539)
Corynebacterium herculis ATCC 13868
Brevibacterium divaricatum ATCC 14020
Brevibacterium flavum ATCC 13826, ATCC 14067, AJ12418 (FERM BP-2205)
Brevibacterium immariophilum ATCC 14068
Brevibacterium lactofermentum ATCC 13869
Brevibacterium roseum ATCC 13825
Brevibacterium saccharolyticum ATCC 14066
Brevibacterium thiogenitalis ATCC 19240
Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis) ATCC 6871, ATCC 6872
Brevibacterium album ATCC 15111
Brevibacterium cerinum ATCC 15112
Microbacterium ammoniaphilum ATCC 15354
なお、コリネバクテリウム属細菌には、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に統合された細菌(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))も含まれる。また、コリネバクテリウム・スタティオニスには、従来コリネバクテ
リウム・アンモニアゲネスに分類されていたが、16S rRNAの塩基配列解析等によりコリネバクテリウム・スタティオニスに再分類された細菌も含まれる(Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 60, 874-879(2010))。
バチルス属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりバチルス属に分類される細菌が挙げられる。バチルス属細菌としては、例えば、下記のような種が挙げられる。
バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)
バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)
バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)
バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)
バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)
バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)
バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymixa)
バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)
バチルス・サブチリスとして、具体的には、例えば、バチルス・サブチリス168 Marburg株(ATCC 6051)やバチルス・サブチリスPY79株(Plasmid, 1984, 12, 1-9)が挙げられる。バチルス・アミロリケファシエンスとして、具体的には、例えば、バチルス・アミロリケファシエンスT株(ATCC 23842)やバチルス・アミロリケファシエンスN株(ATCC 23845)が挙げられる。
これらの菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する
登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
本発明の微生物は、本来的に目的物質の生産能を有するものであってもよく、目的物質の生産能を有するように改変されたものであってもよい。目的物質の生産能を有する微生物は、例えば、上記のような微生物に目的物質の生産能を付与することにより、または、上記のような微生物の目的物質の生産能を増強することにより、取得できる。
目的物質の生産能の付与または増強は、従来、コリネ型細菌又はエシェリヒア属細菌等のアミノ酸生産菌の育種に採用されてきた方法により行うことができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年5月30日初版発行、第77〜100頁参照)。そのよう
な方法としては、例えば、栄養要求性変異株の取得、目的物質のアナログ耐性株の取得、代謝制御変異株の取得、目的物質の生合成系酵素の活性が増強された組換え株の創製が挙
げられる。目的物質生産菌の育種において、付与される栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は、単独であってもよく、2種又は3種以上であってもよい。また、目的物質生産菌の育種において、活性が増強される目的物質生合成系酵素も、単独であってもよく、2種又は3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の活性の増強が組み合わされてもよい。
目的物質の生産能を有する栄養要求性変異株、アナログ耐性株、又は代謝制御変異株は、親株又は野生株を通常の変異処理に供し、得られた変異株の中から、栄養要求性、アナログ耐性、又は代謝制御変異を示し、且つ目的物質の生産能を有するものを選択することによって取得できる。通常の変異処理としては、X線や紫外線の照射、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、メチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。
また、目的物質の生産能の付与又は増強は、目的物質の生合成に関与する酵素の活性を増強することによっても行うことができる。酵素活性の増強は、例えば、同酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように微生物を改変することにより行うことができる。遺伝子の発現を増強する方法は、WO00/18935号パンフレット、欧州特許出願公開1010755号明
細書等に記載されている。酵素活性を増強する詳細な手法については後述する。
また、目的物質の生産能の付与又は増強は、目的物質の生合成経路から分岐して目的物質以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下させることによっても行うことができる。なお、ここでいう「目的物質の生合成経路から分岐して目的物質以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素」には、目的物質の分解に関与する酵素も含まれる。酵素活性を低下させる手法については後述する。
以下、目的物質の生産菌、および目的物質の生産能を付与または増強する方法について具体的に例示する。
<L−グルタミン酸生産菌>
L−グルタミン酸生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−グルタミン酸生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように微生物を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(gdhA)、グルタミンシンテターゼ(glnA)、グルタミン酸シンターゼ(gltAB)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(icdA)、アコニテートヒドラターゼ(acnA, acnB)、クエン酸シンターゼ(gltA)、メチルクエン酸シンターゼ(prpC)、ホスホエノールピ
ルビン酸カルボキシラーゼ(ppc)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc)、ピルビン酸キナーゼ(pykA, pykF)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(aceEF, lpdA)、ホスホエノールピルビン
酸シンターゼ(ppsA)、エノラーゼ(eno)、ホスホグリセルムターゼ(pgmA, pgmI)、ホスホ
グリセリン酸キナーゼ(pgk)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gapA)
、トリオースリン酸イソメラーゼ(tpiA)、フルトースビスリン酸アルドラーゼ(fbp)、ホ
スホフルクトキナーゼ(pfkA, pfkB)、グルコースリン酸イソメラーゼ(pgi)、6−ホス
ホグルコン酸デヒドラターゼ(edd)、2−ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコン酸
アルドラーゼ(eda)、トランスヒドロゲナーゼなどが挙げられる。尚、酵素名の後のカ
ッコ内は、遺伝子名である(以下の記載においても同様)。これらの酵素の中では、例えば、グルタメートデヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルベートカルボキシラーゼ、及びメチルクエン酸シンターゼから選択される1またはそれ以上の酵素の活性を増強するのが好ましい。クエン酸シンターゼ遺伝子、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子、および/またはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の発現が増大するように改変された株としては、EP1078989A、EP955368A、及びEP952221Aに開示されたものが挙げられる。また、L−グルタミン酸生合成系酵素遺伝子の発現が増大するよ
うに改変された微生物としては、WO99/07853、及びEP1352966Bに開示されたものも挙げられる。
L−グルタミン酸生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が低下するように微生物を改変する方法も挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(sucA)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(sdhABCD)、酢酸キナーゼ(ack)、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(ilvG)、アセト乳酸シンターゼ(ilvI等)、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ(pfl)、乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)、アルコールデヒドロゲナーゼ(adh)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(gadAB)、1−ピロリン−5−カルボキシレートデヒドロゲナーゼ(putA)などが挙げられる。この中では特に、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下又は欠損させることが好ましい。
エシェリヒア属細菌においてα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を欠損もしくは低下させる方法は、特開平5-244970号公報及び特開平7−203980号公報などに記載されて
いる。また、コリネ型細菌においてα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を欠損もしくは低下させる方法は、国際公開95/34672号パンフレットに記載されている。さらに、パントエア属細菌、エンテロバクター属細菌、クレブシエラ属細菌、エルビニア属細菌等の腸内細菌においてα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を欠損もしくは低下させる方法は、米国特許6197559号公報、米国特許6682912号公報、米国特許6331419号公報、米国
特許8129151号公報に開示されている。さらに、コリネ型細菌、パントエア属細菌で、α
―ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性及びコハク酸デヒドロゲナーゼ活性を低下させる方法は、WO2008/075483号公報に開示されている。
例えば、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下させるには該酵素のE1oサブ
ユニットをコードするsucA(odhA)遺伝子を改変すればよい。α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が低下した株として、例えば、以下の株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムΔS株(国際公開95/34672号パンフレット

ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12821(FERM BP−4172;フランス特許公
報9401748号明細書参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12822 (FERM BP-4173;フランス特許公報9401748号明細書参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ12823(FERM BP-4174;フランス特許公報9401748
号明細書参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869 OAGN、OA2-2、OAGN2-2 (国際公開パン
フレット2006/028298号参照)
エシェリヒア・コリW3110sucA::Kmr
エシェリヒア・コリAJ12624(FERM BP-3853)
エシェリヒア・コリAJ12628(FERM BP-3854)
エシェリヒア・コリAJ12949(FERM BP-4881)
ブレビバクテリム・ラクトファーメンタム ΔS株 (国際公開95/34672号パンフレッ
ト参照)
パントエア・アナナティス AJ13601 (FERM BP-7207 欧州特許公開明細書1078989)
パントエア・アナナティス AJ13356 (FERM BP-6615 米国特許6,331,419号)
パントエア・アナナティス SC17sucA (FERM BP-8646 WO2005/085419)
クレブシエラ・プランティコーラ AJ13410 (FERM BP-6617 米国特許6,197,559号)
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、パントエア・
アナナティスAJ13355株(FERM BP-6614)やSC17株(FERM BP-11091)が挙げられる。AJ13355株は、静岡県磐田市の土壌から、低pHでL−グルタミン酸及び炭素源を含む培地で増
殖できる株として分離された株である。SC17株は、AJ13355株から、粘液質低生産変異株
として選択された株である(米国特許第6,596,517号)。SC17株は、平成21年2月4日
に、産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構
特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に寄託され、受託番号FERM BP-11091が付与されている。パントエア・アナナティスAJ13355は、1998年2月19日に、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM P-16644とし
て寄託され、1999年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-6614が付与されている。
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、α-ケトグル
タレートデヒドロゲナーゼ(αKGDH)活性が欠損または低下したパントエア属に属する細菌が挙げられる。このような株としては、AJ13355株のαKGDH-E1サブユニット遺伝子(sucA)の欠損株であるAJ13356(米国特許第6,331,419号)、及びSC17株のsucA遺伝子欠損株であるSC17sucA(米国特許第6,596,517号)が挙げられる。AJ13356は、1998年2月19日、工業
技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受
託番号FERM P-16645として寄託され、1999年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託
に移管され、受託番号FERM BP-6616が付与されている。また、SC17sucA株は、ブライベートナンバーAJ417株が付与され、2004年2月26日に産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM BP-08646として寄託されている。
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株、AJ13601株、NP106株、及びNA1株が挙げられる。SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB
株は、SC17sucA株に、エシェリヒア・コリ由来のクエン酸シンターゼ遺伝子(gltA)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(ppsA)、およびグルタメートデヒドロゲナーゼ遺伝子(gdhA)を含むプラスミドRSFCPG、並びに、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のクエン酸シンターゼ遺伝子(gltA)を含むプラスミドpSTVCBを導入して得た株である。AJ13601株は、このSC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株から低pH下で高濃度の
L−グルタミン酸に耐性を示す株として選択された株である。また、NP106株は、AJ13601株からプラスミドRSFCPG+pSTVCBを脱落させた株である。AJ13601株は、1999年8月18日に
、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM P-17516として寄託され、2000年7月6日にブダペ
スト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-7207が付与されている。
尚、AJ13355は、分離された当時はエンテロバクター・アグロメランスと同定されたが
、近年、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アナナティスに再分類されている。よって、AJ13355、AJ13356、およびAJ13601は、上記寄託機関にEnterobacter agglomeransとして寄託されているが、本明細書ではPantoea ananatisとして記載する。
さらにコリネ型細菌にL−グルタミン酸生産能を付与する方法として、yggB遺伝子(NCgl 1221;NP_600492 [gi:19552490])を増幅する方法、コード領域内に変異を導入した変
異型yggB遺伝子を導入する方法を用いることも可能である(WO2006/070944)。
L−グルタミン酸生産能は、L−グルタミン酸排出遺伝子であるyhfK遺伝子(WO2005/085419)やybjL遺伝子(WO2008/133161)を増幅することによっても付与することができる。
L−グルタミン酸生産能を付与または増強する別の方法として、有機酸アナログや呼吸阻害剤などへの耐性を付与する方法や、細胞壁合成阻害剤に対する感受性を付与する方法も挙げられる。例えば、モノフルオロ酢酸耐性を付与する方法(特開昭50-113209)、ア
デニン耐性またはチミン耐性を付与する方法(特開昭57-065198)、ウレアーゼを弱化さ
せる方法(特開昭52-038088)、マロン酸耐性を付与する方法(特開昭52-038088)、ベンゾピロンまたはナフトキノン類への耐性を付与する方法(特開昭56-1889)、HOQNO耐性を付与する方法(特開昭56-140895)、α-ケトマロン酸耐性を付与する方法(特開昭57-2689)、グアニジン耐性を付与する方法(特開昭56-35981)、ペニシリンに対する感受性を
付与する方法(特開平4-88994)などが挙げられる。
このような耐性菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ3949 (FERM BP-2632:特開昭50-113209参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11628 (FERM P-5736;特開昭57-065198参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11355 (FERM P-5007;特開昭56-1889号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11368 (FERM P-5020;特開昭56-1889号公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11217 (FERM P-4318;特開昭57-2689号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11218 (FERM P-4319;特開昭57-2689号公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11564 (FERM P-5472;特開昭56-140895公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11439 (FERM P-5136;特開昭56-35981号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムH7684 (FERM BP-3004;特開平04-88994号公報参照)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ11426(FERM P-5123;特開平56-048890号
公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11440(FERM P-5137;特開平56-048890号公報参照

ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ11796(FERM P-6402;特開平58-158192号
公報参照)
また、コリネ型細菌について、L−グルタミン酸生産能を付与または増強する方法としては、yggB遺伝子の発現を増強する方法やコード領域内に変異を導入した変異型yggB遺伝子を導入する方法も挙げられる(WO2006/070944)。yggB遺伝子は、メカノセンシティブ
チャンネル(mechanosensitive channel)をコードする遺伝子である。Corynebacterium glutamicum ATCC13032のyggB遺伝子は、NCBIデータベースにGenBank Accession No. NC_003450で登録されているゲノム配列中、1,336,091〜1,337,692の配列の相補配列に相
当し、NCgl1221とも呼ばれる。Corynebacterium glutamicum ATCC13032のyggB遺伝子にコードされるYggBタンパク質は、GenBank accession No. NP_600492として登録されている
<γ−アミノ酪酸生産菌>
γ−アミノ酪酸(GABA)は、L−グルタミン酸の脱炭酸により生じる。よって、GABA生産能を付与または増強するためには、例えば、上述したL−グルタミン酸生産能を付与または増強する方法を適宜利用できる。また、GABA生産能は、グルタミン酸デカルボキシラーゼの活性が増大するように微生物を改変することにより、付与又は増強できる(特開2001-054390)。
<L−グルタミン生産菌>
L−グルタミン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、グルタミン酸デヒドロ
ゲナーゼ活性を強化した細菌、グルタミンシンセターゼ(glnA)活性を強化した細菌、およびグルタミナーゼ遺伝子を破壊した細菌が挙げられる(欧州特許出願公開1229121号、1424398号明細書)。グルタミンシンセターゼの活性増強は、グルタミンアデニニルトランスフェラーゼ遺伝子(glnE)の破壊やPII制御タンパク質遺伝子(glnB)の破壊によって
も達成できる(EP1229121)。また、エシェリヒア属に属し、グルタミンシンセターゼの397位のチロシン残基が他のアミノ酸残基に置換された変異型グルタミンシンセターゼを有する菌株も好適なL−グルタミン生産菌として例示できる(米国特許出願公開第2003-0148474号明細書)。
また、L−グルタミン生産能を付与または増強する方法として、6-ジアゾ-5-オキソ-ノルロイシン耐性を付与する方法 (特開平3-232497)、プリンアナログ耐性及びメチオニン
スルホキシド耐性を付与する方法(特開昭61-202694)、α-ケトマレイン酸耐性を付与する方法(特開昭56-151495)などが挙げられる。
L−グルタミン生産能を有するコリネ型細菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11573 (FERM P-5492、特開昭56-161495)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11576 (FERM BP-10381、特開昭56-161495)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12212 (FERM P-8123、特開昭61-202694)
<L−プロリン生産菌>
L−プロリン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、L−プロリンによるフィードバック阻害が解除されたγ−グルタミルキナーゼを保持する細菌や、L−プロリン分解系が弱化した細菌が挙げられる。L−プロリンによるフィードバック阻害が解除されたγ−グルタミルキナーゼをコードするDNAを用いて細菌を改変する方法は、DandekarとUratsuの文献(J. Bacteriol. 170, 12: 5943-5945 (1988))に開示されている。また、L−プロリン分解系が弱化した細菌を得る方法としては、例えば、プロリンデヒドロゲナーゼ遺伝子に酵素活性を低下させる変異を導入する方法が挙げられる。L−プロリン生産能を有する細菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ NRRL B-12403株及びNRRL B-12404株 (英国特許 2075056)、エシェリヒア・コリVKPM B-8012株 (米国特許公開2002-0058315)、ドイツ特許3127361号に開示されたプラスミドを保持するエシェリヒア・コリ変異株、な
らびにBloom F.R. らの文献 (The 15th Miami winter symposium, 1983, p.34) に開示されたプラスミドを保持するエシェリヒア・コリ変異株が挙げられる。
また、L−プロリン生産能を有する細菌の具体例としては、3,4-デヒドロキシプロリン、アザチジン−2−カルボキシレート耐性株であるエシェリヒア・コリ702株(VKPMB-8011)や、702のilvA欠損株である702ilvA株(VKPMB-8012株)や、b2682、b2683、b1242又はb3434遺伝子にコードされるタンパク質の活性を増強したE. coli等も挙げられる(特開2002−300874号公報)。
<L−アルギニン生産菌>
L−アルギニン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−アルギニン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように微生物を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、N−アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)、N-アセチルグルタミン酸キナーゼ(argB)、アセチルオルニチントランスアミナーゼ(argD)、アセチルオルニチンデアセチラーゼ(argE)オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(argF)、アルギニノコハク酸シンターゼ(argG)、アルギニノコハク酸リアーゼ(argH)カルバモイルリン酸シンターゼ(carAB)が挙げられる。N-アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)遺伝子とし
ては、例えば、野生型の15位〜19位に相当するアミノ酸配列が置換されたL−アルギニンによるフィードバック阻害が解除された変異型の遺伝子を用いると好適である(欧州出願公開1170361号明細書)。
L−アルギニン生産能を有する微生物としては、α−メチルメチオニン、p−フルオロフェニルアラニン、D−アルギニン、アルギニンヒドロキサム酸、S−(2−アミノエチル)−システイン、α−メチルセリン、β−2−チエニルアラニン、又はスルファグアニジンに耐性を有するエシェリヒア・コリ変異株(特開昭56-106598号公報参照)等が挙げ
られる。また、L−アルギニン生産能を有する微生物としては、L−アルギニンによるフィードバック阻害に耐性な変異を有し、かつ、高い活性を有するN−アセチルグルタミン酸シンターゼを保持するL−アルギニン生産菌である、エシェリヒア・コリ237株(ロシ
ア特許出願第2000117677号)も挙げられる。同株は、2000年4月10日にロシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオーガニズム(Russian National Collection of Industrial Microorganisms (VKPM), GNII Genetika ) にVKPM B-7925の受託番号で寄託され、2001年5月18日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され
た。また、L−アルギニン生産能を有する微生物としては、237株の誘導体で、酢酸資化
能を向上させたL−アルギニン生産菌である、エシェリヒア・コリ382株(特開2002-017342号公報)も挙げられる。エシェリヒア・コリ382株は、2000年4月10日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM)にVKPM B-7926の受託番号で寄託されている。
L−アルギニン生産能を有する微生物としては、コリネ型細菌野生株;サルファ剤、2−チアゾールアラニン又はα−アミノ−β−ヒドロキシ吉草酸等の薬剤に耐性を有するコリネ型細菌;2−チアゾールアラニン耐性に加えて、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−スレオニン、L−イソロイシン、L−メチオニンまたはL−トリプトファン要求性を有するコリネ型細菌(特開昭54-44096号);ケトマロン酸、フルオロマロン酸又はモノフルオロ酢酸に耐性を有するコリネ型細菌(特開昭57-18989号);アルギニノールに耐性を有するコリネ型細菌(特開昭62-24075号);または、X−グアニジン(Xは脂肪酸又は脂肪鎖の誘導体)に耐性を有するコリネ型細菌(特開平2-186995号)等も挙げられる。また、L−アルギニン生産能を有するコリネ型細菌としては、5−アザウラシル、6−アザウラシル、2−チオウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−アザシトシン、6−アザシトシン等に耐性な変異株;アルギニンヒドロキサメート、2−チオウラシルに耐性な変異株、アルギニンヒドロキサメート及び6−アザウラシルに耐性な変異株(特開昭49-126819号);ヒスチジンアナログ又はトリプトファンアナログに耐性な変異株
(特開昭52-114092号)、メチニオン、ヒスチジン、スレオニン、プロリン、イソロイシ
イン、リジン、アデニン、グアニンまたはウラシル(またはウラシル前駆体)の少なくとも一つに要求性を有する変異株(特開昭52-99289号参);アルギニンヒドロキサメートに耐性な変異株(特公昭51-6754号);コハク酸要求性又は核酸塩基アナログに耐性な変異
株(特開昭58-9692号);アルギニン分解能を欠損し、アルギニンのアンタゴニスト及び
カナバニンに耐性を有し、リジンを要求する変異株(特開昭52-8729号);アルギニン、
アルギニンヒドロキサメート、ホモアルギニン、D−アルギニン、及びカナバニン耐性、またはアルギニンヒドロキサメート及び6−アザウラシル耐性の変異株(特開昭53-143288号);及び、カナバニン耐性の変異株(特開昭53-3586号)等も挙げられる。
L−アルギニン生産能を有するコリネ型細菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11169(FERM BP-6892)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12092(FERM BP-6906)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11336(FERM BP-6893)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11345(FERM BP-6894)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12430(FERM BP-2228)
また、L−アルギニン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、アルギニンリプレッサーであるArgRを欠損した株(米国特許出願公開2002-0045223号)や細胞内のグルタミンシンテターゼ活性を上昇させた株(米国特許出願公開2005-0014236号公報)も挙げられる。
<L−シトルリン生産菌およびL−オルニチン生産菌>
L−シトルリンおよびL−オルニチンは、L−アルギニンと生合成経路が共通している。よって、N−アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)、N-アセチルグルタミン酸キナーゼ(argB)、アセチルオルニチントランスアミナーゼ(argD)、および/またはアセチルオルニチンデアセチラーゼ(argE)の酵素活性を上昇させることによって、L−シトルリンおよび/またはL−オルニチンの生産能を付与または増強することができる(国際公開2006-35831号パンフレット)。
<イタコン酸生産菌>
イタコン酸生産菌としては、C.glutamicum R/cad002株(特開2008-182936)、E.coli PCI 516株およびPCI 519株(共にUS2010/0285546 A1)、Aspergillus terreus AtCAD株(
特開2013-51900)が挙げられる。
また、目的物質生産能を有する微生物は、糖代謝やエネルギー代謝に関与するタンパク質の活性が増大するよう改変されていてもよい。これらのタンパク質の活性は、例えば、これらのタンパク質をコードする遺伝子の発現を上昇させることにより、増大させることができる。
糖代謝に関与するタンパク質としては、糖の取り込みに関与するタンパク質や解糖系酵素が挙げられる。糖代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子としては、グルコース6−リン酸イソメラーゼ遺伝子(pgi;国際公開第01/02542号パンフレット)、ホスホエ
ノールピルビン酸シンターゼ遺伝子(pps; 欧州出願公開877090号明細書)、ホスホグルコムターゼ遺伝子(pgm;国際公開03/04598号パンフレット)、フルクトース二リン酸ア
ルドラーゼ遺伝子(pfkBfbp;国際公開03/04664号パンフレット)、ピルビン酸キナーゼ遺伝子(pykF;国際公開03/008609号パンフレット)、トランスアルドラーゼ遺伝子(talB;
国際公開03/008611号パンフレット)、フマラーゼ遺伝子(fum;国際公開01/02545号パン
フレット)、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ遺伝子(pps;欧州出願公開877090号パンフレット)、non-PTSシュクロース取り込み遺伝子遺伝子(csc;欧州出願公開149911号
パンフレット)、シュクロース資化性遺伝子(scrABオペロン;国際公開第90/04636号パ
ンフレット)が挙げられる。
エネルギー代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子としては、トランスヒドロゲナーゼ遺伝子(pntAB;米国特許 5,830,716号明細書)、チトクロムbo型オキシダーゼ(cytochromoe bo type oxidase)遺伝子(cyoB 欧州特許出願公開1070376号明細書)が挙げら
れる。
また、炭素源としてグリセロールを使用する場合、グリセロールの資化性を高めるために、目的物質生産能を有する微生物は、glpR遺伝子(EP1715056)の発現が弱化されてい
るか、glpA、glpB、glpC、glpD、glpE、glpF、glpG、glpK、glpQ、glpT、glpX、tpiA、gldA、dhaK、dhaL、dhaM、dhaR、fsa及びtalC遺伝子等のグリセロール代謝遺伝子(EP1715055A)の発現が増強されるよう、改変されていてもよい。
また、目的物質生産能を有する微生物は、微生物の細胞から目的物質を排出する活性が増大するよう改変されていてもよい。目的物質を排出する活性は、例えば、目的物質を排出するタンパク質をコードする遺伝子の発現を上昇させることにより、増大させることができる。例えば、各種アミノ酸を排出するタンパク質をコードする遺伝子としては、b2682遺伝子及びb2683遺伝子(ygaZH遺伝子) (EP 1239041 A2)が挙げられる。
なお、上記の目的物質生産能を有する微生物の育種に使用される遺伝子は、元の機能が維持されたタンパク質をコードする限り、上記例示した遺伝子や公知の塩基配列を有する遺伝子に限られず、そのバリアントであってもよい。例えば、目的物質生産能を有する微生物の育種に使用される遺伝子は、公知のタンパク質のアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。遺伝子やタンパク質のバリアントについては、後述するL−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼ、ならびにそれらをコードする遺伝子の保存的バリアントに関する記載を準用できる。
<1−2>マリルCoA経路の増強
本発明の微生物は、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼの活性が増大するよう、改変されている。以下、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼを総称して「本発明の酵素」という場合がある。本発明の細菌は、上述したような目的物質の生産能を有する微生物を、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼの活性が増大するように改変することにより取得できる。また、本発明の微生物は、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼの活性が増大するように微生物を改変した後に、目的物質の生産能を付与または増強することによっても得ることができる。本発明において、本発明の微生物を構築するための改変は、任意の順番で行うことができる。
「L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素」とは、L−リンゴ酸とCoAを結合させ、マリルCoAへと変換する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう。L−リンゴ酸か
らマリルCoAを合成する酵素としては、マレートチオキナーゼ、スクシニルCoAシンターゼ、およびスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼが挙げられる。本発明において
は、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素から選択される1種またはそれ以上の酵
素の活性を増大させることができる。すなわち、例えば、マレートチオキナーゼ、スクシニルCoAシンターゼ、およびスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼのいずれかの活性を増大させてもよく、それら全ての活性を増大させてもよい。タンパク質の活性は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を上昇させることにより、増大させることができる。タンパク質の活性を増大させる詳細な手法は後述する。
「マレートチオキナーゼ」とは、L−リンゴ酸とCoAからマリルCoAを生成する反応を可逆的に触媒する酵素(EC 6.2.1.9)をいう。また、同反応を触媒する活性を、「マレートチオキナーゼ活性」ともいう。なお、上記反応は、生体内および生体外において可逆であることが知られており、すなわち、マレートチオキナーゼは、上記反応の逆反応も触媒できることが知られている。マレートチオキナーゼは、マリルCoAシンターゼ、マレート−CoAリガーゼ、またはマリルコエンザイムAシンターゼとも呼ばれる。
マレートチオキナーゼは、複数のサブユニットからなる複合体、通常はαサブユニットとβサブユニットからなる複合体、として機能することが知られている。αサブユニットはmtkB遺伝子によってコードされ、βサブユニットはmtkA遺伝子によってコードされている。mtkA遺伝子とmtkB遺伝子は、通常はゲノム上において連続して存在している。
マレートチオキナーゼをコードする遺伝子は、メタンなどのC1炭素源の資化経路(J.
Bacteriol., 176(23), 7398-7404 (1994))や3−ヒドロキシプロピオン酸経路(Arch. Microbiol., 151, 252-256 (1989))を保有する生物において確認されている。なお、一
般的に、ゲノム上のマレートチオキナーゼをコードするmtkAB遺伝子の近傍には、後述す
るマリルCoAリアーゼをコードするmclA遺伝子が存在する。mkAB遺伝子とmclA遺伝子がゲ
ノム上で近接して存在している生物種は、例えば、NCBI BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)により特定することができる。
マレートチオキナーゼをコードする遺伝子として、具体的には、例えば、メチロバクテリウム・エクストロクエンス(Methylobacterium extorquens)等のメチロバクテリウム
属細菌、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)等のメソリゾビウム属細菌、グラニュリバクター・ベセスデンシス(Granulibacter bethesdensis)等のグラニュリバクター属細菌、ロゼオバクター・デニトリフィカンス(Roseobacter denitrificans)等の
ロゼオバクター属細菌、モーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)等のモーレラ属細菌、ハイホマイクロビウム・メチロボラム(Hyphomicrobium methylovorum)等
のハイホマイクロビウム属細菌、クロロフレクサス・アウランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)等のクロロフレクサス属細菌、ニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas
europaea)等のニトロソモナス属細菌のmtkAB遺伝子が挙げられる。
メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_012808.1)、メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のマレートチオキナーゼをコードするmtkAB遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわち、メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のmtkA遺伝子はGenBank accession number NC_012808.1に記載のメチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のゲノム配列の塩基番号1803549〜1804721に相当する。また、メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のmtkB遺伝子はGenBank accession number NC_012808.1に記載のメチロバク
テリウム・エクストルクエンスAM1株のゲノム配列の塩基番号1804744〜1805634に相当す
る。メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のmtkA遺伝子の塩基配列、及び同遺
伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号75および76に示す。メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のmtkB遺伝子の塩基配列、及び同遺伝
子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号77および78に示す。
メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank
accession number NC_002678.2)、メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のマレートチ
オキナーゼをコードするmtkAB遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわち、メソリゾ
ビウム・ロティMAFF303099株のmtkA遺伝子及びmtkB遺伝子は、それぞれ、メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のゲノム配列(GenBank accession number NC_002678.2)の塩基番号1110720〜1111904 及び塩基番号1111919〜1112818に相当する。メソリゾビウム・ロテ
ィMAFF303099株のmtkA遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号79および80に示す。メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のmtkB遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号81および82に示す。
グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_002678.2)、グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のマレートチオキナーゼをコードするmtkAB遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわち、グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のmtkA遺伝子及びmtkB遺伝子の
は、それぞれ、グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のゲノム配列(GenBank accession number NC_008343.1)の塩基番号55236〜56405及び塩基番号56421〜57317に相
当する。グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のmtkA遺伝子の塩基配列、及び
同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号83および84に示す。グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のmtkB遺伝子の塩基配列、及び同
遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号85および86に示す。
マレートチオキナーゼ遺伝子としては、宿主で機能するタンパク質をコードするものであれば特に制限されず用いることができる。例えば、ハイホマイクロビウム・メチロボラム(Hyphomicrobium methylovolum)、ハイホマイクロビウム・デニトリフィカンス(Hyphomicrobium denitrificans)、リゾビウム属の一種(Rhizobium sp.)NGR234株、グラニュリバクター・ベセスデンシス(Granulibacter bethesdensis)、ニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas europaea)、およびメチロコッカス・キャプスラタス(Methylococcus capsulatus)のマレートチオキナーゼをコードする遺伝子が、E. coli、Pantoea ananatis、およびCorynebacterium glutamicumにおいて発現し機能することが報告されている(WO2013/018734)。
マレートチオキナーゼのαサブユニットとβサブユニットは、後述するスクシニルCoA
シンターゼのαサブユニットとβサブユニットと、それぞれ高い相同性を有している。後述する実施例に示すように、本発明者により、スクシニルCoAシンターゼがマレートチオ
キナーゼ活性を有することが発見された。すなわち、マレートチオキナーゼ活性は、スクシニルCoAシンターゼ活性を増大させることによっても、増大させることができる。
マレートチオキナーゼの活性が増大したことは、例えば、改変前の微生物と、改変後の微生物より粗酵素液を調製し、そのマレートチオキナーゼ活性を比較することにより、確認できる。マレートチオキナーゼの活性は、例えば、Louisの方法(Louis B. Hersh J Biol Chem. 1973 Nov 10;248(21):7295-303.)に従って測定できる。具体的には、グリオキシル酸と速やかに反応し呈色するフェニルヒドラジンとCoAとATPとマリルCoAリアーゼと
粗酵素液を含有する反応液にL−リンゴ酸を添加し、生成されるグリオキシレートフェニルヒドラジンの量を分光学的に測定することによって、マレートチオキナーゼ活性を測定できる。なお、本方法はマレートチオキナーゼにより生成されたマリルCoAが、マリルCoAリアーゼによりアセチルCoAとグリオキシル酸に分解されることを利用する。
「スクシニルCoAシンターゼ」とは、ATPまたはGTPなどのヌクレオチド3リン酸がヌクレオチド2リン酸と無機リン酸へ加水分解される反応を伴いながら、コハク酸とコエンザイ
ムA(以下、CoA)からスクシニルCoAを生成する反応を触媒する酵素(EC 6.2.1.5またはEC 6.2.1.4)をいう。また、同反応を触媒する活性を、「スクシニルCoAシンターゼ活性」ともいう。なお、上記反応は、生体内および生体外において可逆であることが知られており、すなわち、スクシニルCoAシンターゼは、上記反応の逆反応も触媒できることが知ら
れている。スクシニルCoAシンターゼは、スクシニルCoAリガーゼ、スクシニルコエンザイムAシンターゼ、スクシネートチオキナーゼ、スクシニックチオキナーゼ、スクシネート
ホスホリレーティングエンザイム、またはP−エンザイムとも呼ばれる。
スクシニルCoAシンターゼは、複数のサブユニットからなる複合体、通常はαサブユニ
ットとβサブユニットからなる複合体、として機能することが知られている。αサブユニットはsucD遺伝子によってコードされ、βサブユニットはsucC遺伝子によってコードされている。sucC遺伝子とsucD遺伝子は、通常はゲノム上において連続して存在している。
スクシニルCoAシンターゼをコードする遺伝子は、様々な生物においてその存在が認め
られている。スクシニルCoAシンターゼをコードする遺伝子は、例えば、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes; http://www.genome.jp/kegg/)、NCBI(National Cen
ter for Biotechnology Information; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/)、およびBRENDA(BRaunschweig ENzyme DAtabase; http://www.brenda-enzymes.info/)等の各種デ
ータベースに登録されている。スクシニルCoAシンターゼ遺伝子としては、宿主で機能す
るタンパク質をコードするものであれば特に制限されず用いることができるが、例えばスクシニルCoA生成効率の観点から、宿主微生物に内在するスクシニルCoAシンターゼ遺伝子を用いてもよい。
スクシニルCoAシンターゼをコードする遺伝子として、具体的には、例えば、エシェリ
ヒア・コリ等のエシェリヒア属細菌、パントエア・アナナティス等のパントエア属細菌、コリネバクテリウム・グルタミカム、コリネバクテリウム・エッフィシエンス、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等のコリネバクテリウム属細菌のsucCD遺伝子が挙げられ
る。
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、エシェリヒア・コリMG1655株のスクシニルCoAシンターゼをコードするsucCD遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちsucC遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列の塩基番号762237〜763403に相当する。また、sucD遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3
に記載のエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列の塩基番号763403〜764272に相当する。エシェリヒア・コリMG1655株のsucC遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号87および88に示す。エシェリヒア・コリMG1655株のsucD遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号89および90に示す。
パントエア・アナナティスAJ13355株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_017531.1)、パントエア・アナナティスAJ13355株のスクシニルCoAシンターゼをコードするsucCD遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちsucC遺伝子
はGenBank accession number NC_017531.1に記載のパントエア・アナナティスAJ13355株
のゲノム配列の塩基番号610188〜611354に相当する。また、sucD遺伝子はGenBank accession number NC_017531.1に記載のパントエア・アナナティスAJ13355株のゲノム配列の塩
基番号611354〜612229に相当する。パントエア・アナナティスAJ13355株のsucC遺伝子の
塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号91および92に示す。パントエア・アナナティスAJ13355株のsucD遺伝子の塩基配列、及
び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号93および94に示す。
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_003450.3)、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のスクシニルCoAシンターゼをコードするsucCD遺伝子の塩基配列も報告されている
。すなわちsucC遺伝子はGenBank accession number NC_003450.3に記載のコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のゲノム配列の塩基番号2725382〜2726578に相当する。
また、sucD遺伝子はGenBank accession number NC_003450.3に記載のコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のゲノム配列の塩基番号2724476〜2725360に相当する。コリ
ネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のsucC遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコ
ードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号95および96に示す。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のsucD遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコー
ドするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号97および98に示す。コリネバクテリウム・グルタミカム2256株(ATCC 13869)のsucC遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号183および184に示す。コリネバクテリウム・グルタミカム2256株(ATCC 13869)のsucD遺伝子の塩基配列、及
び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号185および186に示す。
なお、スクシニルCoAシンターゼに変異を導入することにより、スクシニルCoAシンターゼ活性および/またはマレートチオキナーゼ活性を増大させてもよい。少なくともマレートチオキナーゼ活性が増大する変異としては、例えば、以下のような変異が挙げられる。・エシェリヒア・コリのsucD遺伝子がコードするαサブユニットの124位のプロリンがア
ラニンに置換される変異
・エシェリヒア・コリのsucD遺伝子がコードするαサブユニットの157位のチロシンがグ
リシンに置換される変異
・エシェリヒア・コリのsucD遺伝子がコードするαサブユニットの161位のバリンがアラ
ニンに置換される変異
・エシェリヒア・コリのsucD遺伝子がコードするαサブユニットの97位のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換される変異
・エシェリヒア・コリのsucC遺伝子がコードするβサブユニットの271位のグリシンがア
ラニンに置換される変異
これらの変異は、1つのみ導入されてもよく、2つまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、エシェリヒア・コリのsucD遺伝子がコードするαサブユニットの161位のバリン
がアラニンに置換され、sucC遺伝子がコードするβサブユニットの271位のグリシンがア
ラニンに置換された変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子を構築してもよい。
上記変異を有さないスクシニルCoAシンターゼを「野生型スクシニルCoAシンターゼ」、それをコードする遺伝子を「野生型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子」ともいう。また、
上記変異を有するスクシニルCoAシンターゼを「変異型スクシニルCoAシンターゼ」、それをコードする遺伝子を「変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子」ともいう。
野生型スクシニルCoAシンターゼは、上記例示したようなエシェリヒア・コリの野生型
スクシニルCoAシンターゼに限られず、その保存的バリアントであってもよい。なお、上
記変異の表記における変異の位置は相対的なものであって、アミノ酸の欠失、挿入、または付加などによってその位置は前後することがある。例えば、「αサブユニットの161位
のバリン」とは、配列番号90における161位のバリン残基に相当するアミノ酸残基を意
味し、161位よりもN末端側の1アミノ酸残基が欠失している場合は、N末端から160番目のアミノ酸残基が「αサブユニットの161位のバリン」であるものとする。また、161位よりもN末端側に1アミノ酸残基挿入されている場合は、N末端から162番目のアミノ酸残基が
「αサブユニットの161位のバリン」であるものとする。
任意のアミノ酸配列における上記変異対象のアミノ酸残基は、当該任意のアミノ酸配列と配列番号90のアミノ酸配列とでアライメントを行うことにより決定できる。アライメントは、例えば、公知の遺伝子解析ソフトウェアを利用して行うことができる。具体的なソフトウェアとしては、日立ソリューションズ製のDNASISや、ゼネティックス製のGENETYXなどが挙げられる(Elizabeth C. Tyler et al., Computers and Biomedical Research,
24(1), 72-96, 1991;Barton GJ et al., Journal of molecular biology, 198(2), 327-37. 1987)。
スクシニルCoAシンターゼの活性が増大したことは、例えば、改変前の微生物と、改変
後の微生物より粗酵素液を調製し、そのスクシニルCoAシンターゼ活性を比較することに
より、確認できる。スクシニルCoAシンターゼの活性は、例えば、Williamsonの方法(John R. Williamson, Barbara E. Corkey Methods in Enzymology, edited by Colowich JM.
New York: Academic, 1969, p. 434-514.)に従って測定できる。具体的には、CoA、ATP
、ホスホエノールピルビン酸、ピルベートキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、NADH、および粗酵素液を含有する反応液にコハク酸を添加し、消費されるNADHの量を分光学的に測定することによって、スクシニルCoAシンターゼ活性を測定できる。
「スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ」とは、スクシニルCoAとL−リンゴ酸から、コハク酸とマリルCoAを生成する反応を触媒する酵素(EC 2.8.3.-)をいう。ま
た、同反応を触媒する活性を、「スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ活性」
ともいう。スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼは、スクシニルCoA(S)−マ
レートCoAトランスフェラーゼ、またはL−カルニチンデヒドロターゼ/バイルアシッド−インデューシブルプロテインfamilyとも呼ばれる。
スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼとしては、複数のサブユニットからな
る複合体として機能するものが知られている。そのようなスクシニルCoA:マレートCoAト
ランスフェラーゼは、通常は、smtA遺伝子によってコードされたサブユニットとsmtB遺伝子によってコードされたサブユニットにより構成されている。smtA遺伝子とsmtB遺伝子は、通常はゲノム上において連続して存在している。
そのようなスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼをコードする遺伝子として
、具体的には、例えば、クロロフレクサス・アウランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)等のクロロフレクサス属細菌、およびアキュミュリバクター・ホスファチス(Accumulibacter phosphatis)等のアキュミュリバクター属細菌のsmtAB遺伝子やそのホモログが挙げられる。smtA遺伝子によってコードされたタンパク質とsmtB遺伝子によってコードされたタンパク質は互いに相同性が高く、例えば、クロロフレクサス・アウランチアクスのsmtA遺伝子によってコードされたタンパク質とsmtB遺伝子によってコードされたタンパク質のアミノ酸相同性は59%である。なお、クロロフレクサス・アウランチアクスのsmtAB遺伝子はE. coliにおいて発現し機能することが報告されている(Friedmann S et al. (2006)J Bacteriol. 188(7):2646-55.)。
また、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼとしては、単一の遺伝子により
コードされるものも挙げられる。そのようなスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラ
ーゼは、CoA-transferase family III (CaiB/BaiF)に分類される酵素であって、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ活性を有するものであれば、特に限定されない。
そのようなスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼをコードする遺伝子として
、具体的には、例えば、マグネトスピリルム・マグネティカム(Magnetospirillum magneticum)等のマグネトスピリルム属細菌、およびロドスピリルム・ルブラム(Rhodospirillum rubrum)等のロドスピリルム属細菌のsmtB遺伝子ホモログが挙げられる。
クロロフレクサス・アウランチアクスJ-10-fl株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_010175.1)、クロロフレクサス・アウランチアクスJ-10-fl株のスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼをコードするsmtAB遺伝子(以下
、「Ca_smtAB遺伝子」ともいう)の塩基配列も報告されている。すなわち、Ca_smtA遺伝
子及びCa_smtB遺伝子は、それぞれ、クロロフレクサス・アウランチアクスJ-10-fl株のゲノム配列(GenBank accession number NC_010175.1)の塩基番号224515〜225882及び223035 〜224252に相当する。Ca_smtA遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列(YP_001633822)を、それぞれ配列番号99および100に示す。Ca_smtB遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列(YP_001633821)を、それぞれ配列番号101および102に示す。
アキュミュリバクター・ホスファチス(候補株)clade IIAstr.. UW-1株(Candidatus
Accumulibacter phosphatis clade IIA str. UW-1)のゲノムDNAの全塩基配列は公知である(GenBank accession number NC_013194.1)。アキュミュリバクター・ホスファチス(候補株)clade IIAstr.. UW-1株のスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子としては、Ca_smtA遺伝子およびCa_smtB遺伝子のホモログ(以下、それぞれ「Ap_smtA遺
伝子」および「Ap_smtB遺伝子」ともいい、2つをまとめて「Ap_smtAB遺伝子」ともいう
)が挙げられる。Ap_smtA遺伝子及びAp_smtB遺伝子は、それぞれ、アキュミュリバクター・ホスファチス(候補株)clade IIAstr.. UW-1株のゲノム配列(GenBank accession number NC_013194.1)の塩基番号2888316〜2889563及び2889587〜2890813に相当する。Ap_smtA遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号103および104に示す。Ap_smtB遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコード
するタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号105および106に示す。
ロドスピリルム・ルブラムATCC 11170株のゲノムDNAの全塩基配列は公知である(GenBank accession number NC_007643.1)。ロドスピリルム・ルブラムATCC 11170株のスクシ
ニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子としては、Ca_smtB遺伝子に相同な遺伝子(以下、「Rr_smt遺伝子」ともいう)が挙げられる。Rr_smt遺伝子は、ロドスピリルム・ルブラムATCC 11170株のゲノム配列(GenBank accession number NC_007643.1)の塩基番号2965790〜2967016に相当する。Rr_smt遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列(YP_427637)を、それぞれ配列番号107および108に示す
マグネトスピリルム・マグネティカムAMB-1株のゲノムDNAの全塩基配列は公知である(GenBank accession number NC_007626.1)。マグネトスピリルム・マグネティカムAMB-1
株のスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子としては、Ca_smtB遺伝子に相同な遺伝子(以下、「Mm_smt遺伝子」ともいう)が挙げられる。Mm_smt遺伝子は、マグネトスピリルム・マグネティカムAMB-1株のゲノム配列(GenBank accession number NC_007626.1)の塩基番号2307230〜2308438に相当する。Mm_smt遺伝子の塩基配列、及び同遺伝
子がコードするタンパク質のアミノ酸配列(YP_421496)を、それぞれ配列番号109お
よび110に示す。
スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼの活性が増大したことは、例えば、改
変前の微生物と、改変後の微生物より粗酵素液を調製し、そのスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ活性を比較することにより、確認できる。スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼの活性は、例えば、Friedmannの方法(Friedmann S et al. (2006)J Bacteriol. 188(7):2646-55.)に従って測定できる。具体的には、グリオキシル酸と速やかに反応し呈色するフェニルヒドラジンとスクシニルCoAとマリルCoAリアーゼと粗酵素液を含有する反応液にL−リンゴ酸を添加し、生成されるグリオキシレートフェニルヒドラジンの量を分光学的に測定することによって、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフ
ェラーゼ活性を測定できる。
「マリルCoAリアーゼ」とは、マリルCoAから、アセチルCoAとグリオキシル酸を可逆的
に生成する反応を触媒する酵素(EC 4.1.3.24)をいう。また、同反応を触媒する活性を
、「マリルCoAリアーゼ活性」ともいう。マリルCoAリアーゼは、マリルコエンザイムAリ
アーゼ、または(3S)−3−カルボキシ−3−ヒドロキシプロパノイルCoAグリオキシレイト
リアーゼとも呼ばれる。
マリルCoAリアーゼをコードする遺伝子として、具体的には、例えば、メチロバクテリ
ウム・エクストロクエンス(Methylobacterium extorquens)等のメチロバクテリウム属
細菌、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)等のメソリゾビウム属細菌、グラニュリバクター・ベセスデンシス(Granulibacter bethesdensis)等のグラニュリバクタ
ー属細菌、ロゼオバクター・デニトリフィカンス(Roseobacter denitrificans)等のロ
ゼオバクター属細菌、モーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)等のモーレラ属細菌、ハイホマイクロビウム・メチロボラム(Hyphomicrobium methylovorum)等の
ハイホマイクロビウム属細菌、クロロフレクサス・アウランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)等のクロロフレクサス属細菌、ニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas europaea)等のニトロソモナス属細菌のmclA遺伝子が挙げられる。
メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のマリルCoAリアーゼをコードするmclA遺伝子はGenBank accession number NC_012808.1に記載のメチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のゲノム配列の塩基番号1808790〜1809764に相当する。メチロバクテリ
ウム・エクストルクエンスAM1株のmclA遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタ
ンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号111および112に示す。
メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のマリルCoAリアーゼをコードするmclA遺伝子は
、メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のゲノム配列(GenBank accession number NC_002678.2)の塩基番号1109744〜1110700に相当する。メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のmclA遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号113および114に示す。
グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のマリルCoAリアーゼをコードするmclA遺伝子のDNA配列は、グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のゲノム配列(GenBank accession number NC_008343.1)の塩基番号60117〜61112に相当する。グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のmclA遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードする
タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号115および116に示す。
マリルCoAリアーゼの活性が増大したことは、例えば、改変前の微生物と、改変後の微
生物より粗酵素液を調製し、そのマリルCoAリアーゼ活性を比較することにより、確認で
きる。マリルCoAリアーゼの活性は、例えば、Louisの方法(Louis B. Hersh J Biol Chem. 1973 Nov 10;248(21):7295-303.)に従って測定できる。具体的には、グリオキシル酸
と速やかに反応し呈色するフェニルヒドラジンとCoAとATPとマレートチオキナーゼと粗酵素液を含有する反応液にL−リンゴ酸を添加し、生成されるグリオキシレートフェニルヒドラジンの量を分光学的に測定することによって、マリルCoAリアーゼ活性を測定できる
。なお、本方法はマレートチオキナーゼにより生成されたマリルCoAが、マリルCoAリアーゼによりアセチルCoAとグリオキシル酸に分解されることを利用する。あるいは、CoAとATPとマレートチオキナーゼとL−リンゴ酸に代えて、マリルCoAを用いても同様にマリルCoAリアーゼ活性を測定できる。
「イソクエン酸リアーゼ」とは、イソクエン酸から、グリオキシル酸とコハク酸を生成する反応を可逆的に触媒する酵素(EC 4.1.3.1)をいう。また、同反応を触媒する活性を、「イソクエン酸リアーゼ活性」ともいう。イソクエン酸リアーゼは、イソサイトレイトリアーゼ、イソサイトラーゼ、イソシトリターゼ、イソシトラターゼ、スレオ−Ds−イサイトレイトグリオキシレイトリアーゼ、またはイソサイトレイトグリオキシレイトリアーゼとも呼ばれる。
イソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子は、様々な生物においてその存在が認められている。イソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子は、例えば、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes; http://www.genome.jp/kegg/)、NCBI(National Center for
Biotechnology Information; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/)、およびBRENDA(BRaunschweig ENzyme DAtabase; http://www.brenda-enzymes.info/)等の各種データベースに登録されている。イソクエン酸リアーゼ遺伝子としては、宿主で機能するタンパク質
をコードするものであれば特に制限されず用いることができるが、例えばイソクエン酸リアーゼ生成効率の観点から、宿主微生物に内在するイソクエン酸リアーゼ遺伝子を用いてもよい。
イソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子として、具体的には、例えば、エシェリヒア・コリ等のエシェリヒア属細菌、パントエア・アナナティス等のパントエア属細菌、およびコリネバクテリウム・グルタミカム等のコリネバクテリウム属細菌のaceA遺伝子が挙げられる。
エシェリヒア・コリMG1655株のイソクエン酸リアーゼをコードするaceA遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列の塩基番号4215132〜4216436に相当する。エシェリヒア・コリMG1655株のaceA遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号117および118に示す。
パントエア・アナナティスAJ13355株のイソクエン酸リアーゼをコードするaceA遺伝子
はGenBank accession number NC_017531.1に記載のパントエア・アナナティスAJ13355株
のゲノム配列の塩基番号4068278〜4069579に相当する。パントエア・アナナティスAJ13355株のaceA遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、
それぞれ配列番号119および120に示す。
また、例えばコリネバクテリウム属細菌には、2コピーのイソクエン酸リアーゼ遺伝子(以下、「ICL1遺伝子」および「ICL2遺伝子」ともいう)を有するものがある。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のICL1遺伝子(Cgl2331)およびICL2遺伝子(Cgl0097)は、それぞれ、GenBank accession number NC_003450.3に記載のコリネバクテリウ
ム・グルタミカムATCC13032株のゲノム配列の塩基番号2470741〜2472039および106392〜105838に相当する。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のICL1遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号121および122に示す。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のICL2遺伝子の塩基
配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号167および168に示す。また、コリネバクテリウム・グルタミカム2256株(ATCC 13869)のICL1遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号169および170に示す。コリネバクテリウム・グルタミカム2256株(ATCC
13869)のICL2遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号171および172に示す。
aceA遺伝子は、通常、aceBAK遺伝子からなるオペロンを形成している。後述するようにaceBがコードするマレートシンターゼの活性は弱化していることが好ましい。従って、イソクエン酸リアーゼの活性を増強する際には、例えば、実施例に記載したように、aceBAKオペロンのうちaceB遺伝子を欠失すると同時に強力なプロモーターを導入することにより、aceA遺伝子の発現を増強してもよい。
イソクエン酸リアーゼの活性が増大したことは、例えば、改変前の微生物と、改変後の微生物より粗酵素液を調製し、そのイソクエン酸リアーゼ活性を比較することにより、確認できる。イソクエン酸リアーゼの活性は、例えば、Hoytらの方法(Hoyt JC et al. (1988) Biochim Biophys Acta. 14;966(1):30-5.)に従って測定できる。具体的には、グリ
オキシル酸と速やかに反応し呈色するフェニルヒドラジンと粗酵素液を含有する反応液にイソクエン酸を添加し、生成されるグリオキシレートフェニルヒドラジンの量を分光学的に測定することによって、イソクエン酸リアーゼ活性を測定できる。また、イソクエン酸リアーゼの活性は、例えば、Mackintoshらの方法(Mackintosh, C et al. (1988) Bioche
m. J. 250, 25-31)に従って測定できる。具体的には、NADPとイソクエン酸デヒドロゲナーゼと粗酵素液を含有する反応液にグリオキシル酸とコハク酸を添加し、生成されるNADPHの量を分光学的に測定することによって、イソクエン酸リアーゼ活性を測定できる。
本発明の酵素は、元の機能が維持されている限り、上記例示した本発明の酵素、例えば各種mtkAB、sucCD、smtAB、smt、mclA、またはaceA遺伝子にコードされるタンパク質、のバリアントであってもよい。なお、そのようなバリアントを「保存的バリアント」という場合がある。保存的バリアントとしては、例えば、上記例示した本発明の酵素、例えば各種mtkAB、sucCD、smtAB、smt、mclA、またはaceA遺伝子にコードされるタンパク質、のホモログや人為的な改変体が挙げられる。
「元の機能が維持されている」とは、タンパク質のバリアントが、元のタンパク質の活性に対応する活性を有することをいう。すなわち、マレートチオキナーゼについての「元の機能が維持されている」とは、タンパク質がマレートチオキナーゼ活性を有することをいい、スクシニルCoAシンターゼについての「元の機能が維持されている」とは、タンパ
ク質がスクシニルCoAシンターゼ活性を有することをいい、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼについての「元の機能が維持されている」とは、タンパク質がスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ活性を有することをいい、マリルCoAリアーゼについての「元の機能が維持されている」とは、タンパク質がマリルCoAリアーゼ活性を有す
ることをいい、イソクエン酸リアーゼについての「元の機能が維持されている」とは、タンパク質がイソクエン酸リアーゼ活性を有することをいう。なお、タンパク質が複数のサブユニットからなる複合体として機能する場合は、各サブユニットについての「元の機能が維持されている」とは、各サブユニットが残りのサブユニットと複合体を形成し、当該複合体が対応する活性を有することであってよい。すなわち、例えば、マレートチオキナーゼの各サブユニットについての「元の機能が維持されている」とは、各サブユニットが残りのサブユニットと複合体を形成し、当該複合体がマレートチオキナーゼ活性を有することであってよい。
上記例示した本発明の酵素のホモログをコードする遺伝子は、例えば、上記例示した本発明の酵素をコードする遺伝子の塩基配列を問い合わせ配列として用いたBLAST検索やFASTA検索によって公開データベースから容易に取得することができる。また、上記例示した本発明の酵素のホモログをコードする遺伝子は、例えば、細菌や酵母の染色体を鋳型にして、これら公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより取得することができる。
上記例示した本発明の酵素の保存的バリアントをコードする遺伝子は、例えば、以下のような遺伝子であってよい。すなわち、本発明の酵素をコードする遺伝子は、元の機能が維持されたタンパク質をコードする限りにおいて、上記アミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。この場合、対応する活性は、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加される前のタンパク質に対して、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上が
維持され得る。なお上記「1又は数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には、1〜50個、1〜40個、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個を意味する。
上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、
置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場
合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミ
ノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入
、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
さらに、上記のような保存的変異を有する遺伝子は、上記アミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有し、かつ、元の機能が維持されたタンパク質をコードす
る遺伝子であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)は、「同一性」(identity)を指すことがある。
また、本発明の酵素をコードする遺伝子は、公知の遺伝子配列から調製され得るプローブ、例えば上記塩基配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、元の機能が維持されたタンパク質をコードするDNAであってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相
同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。
上述の通り、上記ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、遺伝子の相補配列の一部であってもよい。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、これらの塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用い
る場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
また、本発明の酵素をコードする遺伝子は、元の機能が維持されたタンパク質をコードする限り、任意のコドンがそれと等価のコドンに置換されたものであってもよい。例えば、本発明の酵素をコードする遺伝子は、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されたものであってもよい。
なお、上記の遺伝子やタンパク質の保存的バリアントに関する記載は、α−ケトグルタル酸シンターゼ等の任意のタンパク質、およびそれらをコードする遺伝子にも準用できる。
<1−3>その他の改変
本発明の微生物は、さらに、他の改変を有していてもよい。他の改変は、目的物質の種類や微生物の種類等に応じて適宜選択することができる。
例えば、本発明の微生物は、マレートシンターゼの活性が低下するよう、改変されていてよい。「マレートシンターゼ」とは、以下の反応を可逆的に触媒する酵素をいう(EC 2.3.3.9)。
acetyl-CoA + glyoxylate + H2O → (S)-malate + coenzyme A + H+
マレートシンターゼ活性は、例えば、後述するように、マレートシンターゼをコードする遺伝子を破壊等することにより低下させることができる。マレートシンターゼをコードする遺伝子としては、aceB遺伝子やglcB遺伝子が挙げられる。エシェリヒア・コリMG1655株のaceB遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号123および124に示す。エシェリヒア・コリMG1655株のglcB遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号173および174に示す。パントエア・アナナティスAJ13355株のaceB遺伝子の塩基配列
、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号125および126に示す。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のaceB遺伝子の塩基配
列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号127および128に示す。コリネバクテリウム・グルタミカム2256株(ATCC 13869)のaceB遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号175および176に示す。マレートシンターゼの活性が低下したことは、例えば、グリオキシル酸に依存するアセチルCoAのチオエステル結合の分解を232 nmの吸光度の減少
で測定する方法(Dixon,G.H.,Kornberg,H.L., 1960, Biochem.J, 1;41:p217-233)によりマレートシンターゼ活性を測定することによって確認することができる。
また、本発明の微生物は、PTS glucose enzyme II BCの活性が低下するよう、改変されていてよい。「PTS glucose enzyme II BC」とは、グルコース特異的phosphotransferase
system(PTS)をいう。PTS glucose enzyme II BC活性は、例えば、後述するように、PTS glucose enzyme II BCをコードする遺伝子を破壊等することにより低下させることができる。PTS glucose enzyme II BCは、ptsG遺伝子がコードしている。エシェリヒア・コリMG1655株のptsG遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号129および130に示す。パントエア・アナナティスAJ13355株
のptsG遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号131および132に示す。
また、例えばコリネバクテリウム属細菌には、2コピーのptsG遺伝子(以下、「ptsG1
遺伝子」および「ptsG2遺伝子」ともいう)を有するものがある。コリネバクテリウム・
グルタミカムATCC13032株のptsG1遺伝子(Cgl1360)の塩基配列、及び同遺伝子がコード
するタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号133および134に示す。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のptsG2遺伝子(Cgl2642)の塩基配列、及び同
遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号177および178に示す。また、コリネバクテリウム・グルタミカム2256株(ATCC 13869)のptsG1遺伝子
の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号179および180に示す。コリネバクテリウム・グルタミカム2256株(ATCC 13869)のptsG2遺伝子の塩基配列、及び同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それ
ぞれ配列番号181および182に示す。
また、本発明の微生物は、グリオキシル酸分解に関与する酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が低下するよう、改変されていてよい。グリオキシル酸分解に関与
する酵素としては、グリオキシレートレダクターゼ、グリオキシル酸カルボリガーゼ、および2−ケト−3−デオキシグルコン酸6−リン酸アルドラーゼが挙げられる。
グリオキシレートレダクターゼは、ghrA遺伝子(E. coli)、ghrB遺伝子(E. coli)(Nunez et al, Biochem. J. 54:707-715 (2001))、ycdW遺伝子(P. ananatis)がコード
しており、以下の反応を触媒する。
glyoxylate + NADPH + H+ → glycolate + NADP+ (EC 1.1.1.79)
グリオキシル酸カルボリガーゼは、gcl遺伝子がコードしており、以下の反応を触媒す
る。
2 glyoxylate + H+ → CO2 + tartronate semialdehyde (EC 4.1.1.47)
2−ケト−3−デオキシグルコン酸6−リン酸アルドラーゼはeda遺伝子がコードして
おり、以下の反応を触媒する。
glyoxylate + pyruvate → 4-Hydroxy-2-oxoglutarate
また、本発明の微生物は、NADHの酸化を伴う、ピルビン酸またはアセチルCoAに由来す
る物質の生合成系が弱化されるよう、改変されていてよい。NADHの酸化を伴う、ピルビン酸またはアセチルCoAに由来する物質の生合成系を弱化させることは、同生合成系の1種
またはそれ以上の酵素の活性を低下させることにより達成できる。同生合成系の酵素としては、例えば、以下に示す酵素が挙げられる(WO2009/072562)。
・乳酸デヒドロゲナーゼ(乳酸生合成系)
・アルコールデヒドロゲナーゼ(エタノール生合成系)。
・アセト乳酸シンターゼ、アセト乳酸デカルボキシラーゼ、アセトインレダクターゼ(2,3-ブタンジオール生合成系)。
「乳酸デヒドロゲナーゼ」とは、NADHまたはNADPHを電子供与体として、ピルビン酸から乳酸を生成する反応を触媒する酵素をいう。また、同反応を触媒する活性を、「乳酸デヒドロゲナーゼ活性」ともいう。乳酸デヒドロゲナーゼは、L−乳酸を生成するL型乳酸脱水素酵素(L-LDH; EC 1.1.1.27)と、D−乳酸を生成するD型乳酸脱水酵素
(D-LDH; EC1.1.1.28)に大別されるが、そのいずれの活性を低下させてもよい。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性は、例えば、後述するように、乳酸デヒドロゲナーゼをコー
ドする遺伝子(LDH遺伝子)を破壊等することにより低下させることができる。エシェリ
ヒア・コリのLDH遺伝子として、D-LDH遺伝子(ldhA)の塩基配列を配列番号135に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号136に示す。パントエア・アナナティスのLDH遺伝子として、D-LDH遺伝子(ldhA)の塩基配列を配列番号137に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号138に示す。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032
のL-LDH遺伝子(ldh)の塩基配列を配列番号187に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号188に示す。コリネバクテリウム・グルタミカム2256株(ATCC 13869)のL-LDH遺伝子(ldh)の塩基配列を配列番号189に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号190に示す。乳酸デヒドロゲナーゼ活性が低下したことは、例えば、公知の方法(L. Kanarek and R.L. Hill, J. Biol. Chem. 239, 4202 (1964))により乳酸デヒドロ
ゲナーゼ活性を測定することによって確認することができる。乳酸デヒドロゲナーゼ活性が低下した腸内細菌の変異株の具体的な製造方法としては、Alam, K. Y., Clark, D. P. 1989. J. Bacteriol. 171: 6213-6217に記載されている方法等が挙げられる。
「アルコールデヒドロゲナーゼ」とは、NADHまたはNADPHを電子供与体として、アルデヒドからアルコールを生成する反応を触媒する酵素をいう(EC 1.1.1.1、EC 1.1.1.2、またはEC 1.1.1.71)。また、同反応を触媒する活性を、「アルコールデヒドロゲ
ナーゼ活性」ともいう。アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)活性は、例えば、後述する
ように、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(ADH遺伝子)を破壊等するこ
とにより低下させることができる。エシェリヒア・コリのADH遺伝子として、adhE遺伝子
の塩基配列を配列番号139に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号140に示す。パントエア・アナナティスのADH遺伝子として、adhE遺伝子の塩基配列を配列番号
141に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号142に示す。コリネバクテリウム・グルタミカムのADH遺伝子として、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のadhE遺伝子の塩基配列を配列番号191に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号192に示す。アルコールデヒドロゲナーゼ活性が低下したことは、例えば、公知の方法(Lutstorf, U.M., Schurch, P.M. & von Wartburg, J.P., Eur. J. Biochem. 17, 497-508(1970))によりアルコールデヒドロゲナーゼ活性を測定することによって確認することができる。アルコールデヒドロゲナーゼ活性が低下した腸内細菌の変異株の具体的な製造方法としては、Sanchez, A. M., Bennett, G. N., San, K.-Y., Biotechnol. Prog. 21, 358-365(2005)に記載されている方法等が挙げられる。
「アセト乳酸シンターゼ」とは、2分子のピルビン酸からアセト乳酸およびCO2を生
成する反応を触媒する酵素をいう(EC 2.2.1.6)。また、同反応を触媒する活性を、「アセト乳酸シンターゼ活性」ともいう。アセト乳酸シンターゼ(AHAS)には、AHAS
I〜IIIのアイソザイムが知られているが、いずれのアイソザイムの活性を低下させてもよい。アセト乳酸シンターゼ活性は、例えば、後述するように、アセト乳酸シンターゼをコードする遺伝子を破壊等することにより低下させることができる。アセト乳酸シンターゼをコードする遺伝子としては、AHAS Iの活性サブユニットをコードするilvB遺伝子、AHAS IIの活性サブユニットをコードするilvG遺伝子、AHAS IIIの活性サブユニットをコードするilvI遺伝子が挙げられる。E. coli MG1655のilvB、ilvI遺伝子の塩基配列をそれぞれ配列番号193、195に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号194、196に示す。Pantoea ananatis AJ13355のilvG、ilvI遺伝子の塩基配列をそれぞれ配列番号197、199に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号198、200に示す。Corynebacterium glutamicum ATCC 13032のilvB遺伝子の塩基配列を配列番号201に、同遺伝子がコ
ードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号202に示す。アセト乳酸シンターゼ活性が低下したことは、例えば、公知の方法(F.C. Stormer and H.E. Umbarger, Biochem. Biophys. Res. Commun., 17, 5, 587-592(1964))によりアセト乳酸シンターゼ活性を測定することによって確認することができる。
「アセト乳酸デカルボキシラーゼ」とは、アセト乳酸を脱炭酸してアセトインを生成する反応を触媒する酵素をいう(EC 4.1.1.5)。また、同反応を触媒する活性を、「アセト乳酸デカルボキシラーゼ活性」ともいう。アセト乳酸デカルボキシラーゼ活性は、例えば、後述するように、アセト乳酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子を破壊等することにより低下させることができる。Pantoea ananatis AJ13355のアセト乳酸デカルボキシラーゼ遺伝子(budA)の塩基配列を配列番号203に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号204に示す。なお、例えば、E. coliやCorynebacterium glutamicumは、アセト乳酸デカルボキシラーゼを有していない。アセト乳酸デカルボキシラー
ゼ活性が低下したことは、例えば、公知の方法(Juni E., J. Biol. Chem., 195(2): 715-726(1952))によりアセト乳酸デカルボキシラーゼ活性を測定することによって確認することができる。
「アセトインレダクターゼ」とは、NADHまたはNADPHを電子供与体として、アセトインから2,3-ブタンジオールを生成する反応を触媒する酵素をいう(EC 1.1.1.4)。また、同反応を触媒する活性を、「アセトインレダクターゼ活性」ともいう。アセトインレダクターゼ活性は、例えば、後述するように、アセトインレダクターゼをコードする遺伝子を破壊等することにより低下させることができる。Pantoea ananatis AJ13355のアセ
トインレダクターゼ遺伝子(budC)の塩基配列を配列番号205に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号206に示す。Corynebacterium glutamicum ATCC 13032のアセトインレダクターゼ遺伝子(butA)の塩基配列を配列番号207に、同遺
伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号208に示す。なお、例えば、E.
coliは、アセトインレダクターゼを有していない。アセトインレダクターゼ活性が低下
したことは、例えば、公知の方法(K. Blomqvist et al., J Bacteriol., 175, 5, 1392-1404(1993))によりアセトインレダクターゼ活性を測定することによって確認することができる。
また、本発明の微生物は、酢酸生合成系が弱化されるよう、改変されていてよい。本発明の微生物は、具体的には、例えば、以下の酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が低下するよう、改変されていてよい(US2007-0054387、WO2005/052135、WO99/53035、WO2006/031424、WO2005/113745、WO2005/113744)。
・ホスホトランスアセチラーゼ
・アセテートキナーゼ
・ピルビン酸オキシダーゼ
・アセチルCoAハイドロラーゼ
ホスホトランスアセチラーゼ(PTA)活性は、例えば、後述するように、ホスホトラン
スアセチラーゼをコードする遺伝子(PTA遺伝子)を破壊等することにより低下させるこ
とができる。エシェリヒア・コリのPTA遺伝子として、pta遺伝子の塩基配列を配列番号143に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号144に示す。パントエア・アナナティスのPTA遺伝子として、pta遺伝子の塩基配列を配列番号145に、同遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号146に示す。ホスホトランスアセチラーゼ活性が低下したことは、公知の方法(Klotzsch, H.R., Meth. Enzymol. 12, 381-386(1969))によりホスホトランスアセチラーゼ活性を測定することによって確認することができる。
また、本発明の微生物は、ピルビン酸・ギ酸リアーゼ(PFL)活性が低下するように改
変されていてよい。ピルビン酸・ギ酸リアーゼ活性は、例えば、後述するように、ピルビン酸・ギ酸リアーゼをコードする遺伝子(PFL遺伝子)を破壊等することにより低下させ
ることができる。エシェリヒア・コリのPFL遺伝子として、pflB, pflD, tdcE遺伝子の塩
基配列をそれぞれ配列番号147、149、および151に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号148、150、および152に示す。パントエア・アナナティスのPFL遺伝子として、pflB遺伝子の塩基配列を配列番号153に、同
遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号154に示す。ピルビン酸・ギ酸リアーゼ活性が低下したことは、公知の方法(Knappe, J. & Blaschkowski, H.P., Meth. Enzymol. 41, 508-518(1975))によりピルビン酸・ギ酸リアーゼ活性を測定すること
によって確認することができる。
また、本発明の微生物は、TCAサイクルの補充経路が増強されるよう、改変されていて
よい。本発明の微生物は、具体的には、例えば、以下の酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するよう、改変されていてよい(特開平11-196888号、特開2006-320208号、WO99/53035、WO2005/021770、Hong SH, Lee SY. Biotechnol Bioeng. 74(2): 89-95(2001)、Millard, C. S., Chao, Y. P., Liao, J. C., Donnelly, M. I. Appl. Environ. Microbiol. 62: 1808-1810(1996)、Pil Kim, Maris Laivenieks, Claire Vieille,
and J.Gregory Zeikus. Appl. Environ. Microbiol. 70: 1238-1241(2004))。
・ピルビン酸カルボキシラーゼ
・ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ
・ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ
酵素活性は、例えば、後述するように、酵素をコードする遺伝子の発現を上昇させることにより、増大させることができる。ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカムやブレビバクテリウム・フラバム等のコリネ型細菌、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)
、リゾビウム・エトリ(Rhizobium etli)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)やシゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の
酵母のPC遺伝子が挙げられる(WO2009/072562)。ホスホエノールピルビン酸カルボキシ
キナーゼをコードする遺伝子としては、例えば、アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)のpckA遺伝子(GenBank Accession No. YP_001343536.1)
、ハエモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)のpckA遺伝子(GenBank Accession No. YP_248516.1)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)のpckA遺伝子(GenBank Accession No. NP_246481.1)、マンヘイミア・サクシニシプロデュ
ーセンス(Mannheimia succiniciproducens)のpckA遺伝子(GenBank Accession No. YP_089485.1)、エルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis)
のpckA遺伝子(GenBank Accession No. YP_072243)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)のpckA遺伝子(GenBank Accession No. ZP_01981004.1)、セレノモナス・ルミナン
ティウム(Selenomonas ruminantium)のpckA遺伝子(GenBank Accession No. AB016600
)が挙げられる(WO2009/072562)。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコー
ドする遺伝子としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカムやブレビバクテリウム・フラバム等のコリネ型細菌、エシェリヒア・コリ等のエシェリヒア属細菌、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)のppc遺伝子が挙げられる。
また、酵素活性は、例えば、フィードバック阻害の低減または解除によっても、増大させることができる。例えば、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)の活性は、コハク酸生合成経路の中間産物であるL−リンゴ酸により阻害される(Masato Yano and Katsura Izui, Eur. Biochem. FEBS, 247, 74-81, 1997)。L−リンゴ酸による阻害は、例えば、PEPCに1アミノ酸置換による脱感作変異を導入することにより低減することが
できる。1アミノ酸置換による脱感作変異としては、具体的には、例えば、エシェリヒア
・コリ由来のPEPCタンパク質の620番目のアミノ酸をリジンからセリンへ置換する変異が挙げられる(同文献)。
また、本発明の微生物は、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(「α-KGDH」ともい
う)の活性が低下するよう改変されていてよい。「α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ」とは、α−ケトグルタル酸(2−オキソグルタル酸)を酸化的に脱炭酸し、サクシニル−CoA(succinyl-CoA)を生成する反応を触媒する酵素をいう。また、同反応を触媒する活
性を、「α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性」ともいう。α-KGDHは、オキソグル
タル酸デヒドロゲナーゼ(oxoglutarate dehydrogenase)、または2-オキソグルタル酸
デヒドロゲナーゼ(2-oxoglutarate dehydrogenase)ともいう。
上記反応は、α-KGDH(E1o;EC 1.2.4.2)、ジヒドロリポアミドS−サクシニルトランスフェラーゼ(dihydrolipoamide-S-succinyltransferase)(E2o;EC 2.3.1.61)、ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ(dihydrolipoamide dehydrogenase)(E3;EC 1.8.1.4)の3種の酵素によって触媒される。すなわち、これらの3種類の酵素はそれぞれ以下の反応を触媒し、α-KGDH活性とは、具体的には、これら3つの反応を合わせた反応を触媒
する活性をいう。
E1o: 2-oxoglutarate + [dihydrolipoyllysine-residue succinyltransferase] lipoyllysine → [dihydrolipoyllysine-residue succinyltransferase] S-succinyldihydrolipoyllysine + CO2
E2o:CoA + enzyme N6-(S-succinyldihydrolipoyl)lysine → succinyl-CoA + enzyme N6-(dihydrolipoyl)lysine
E3: protein N6-(dihydrolipoyl)lysine + NAD+ → protein N6-(lipoyl)lysine + NAD
H + H+
腸内細菌科、例えばパントエア・アナナティスでは、この3種それぞれの酵素活性を有するサブユニットタンパク質、E1o、E2o、およびE3、が複合体を形成している。そして、各サブユニットは各々sucA、sucB、及びlpdA遺伝子によってコードされ、sucA、sucB遺伝子は、サクシネートデヒドロゲナーゼアイロン−スルファープロテイン遺伝子(sdhB)の下流に存在している(米国特許第6,331,419号)。尚、同特許には、これらの遺伝子はエ
ンテロバクター・アグロメランスAJ13355の遺伝子として記載されているが、同菌株は、
後にパントエア・アナナティスに再分類されている。腸内細菌のα-KGDHをコードする遺
伝子として、パントエア・アナナティスAJ13355のsucA、sucB、およびlpdA遺伝子の塩基
配列を、それぞれ配列番号155、157、および159に示す。また、同遺伝子にコードされるSucA、SucB、およびLpdAタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号156、158、および160に示す。また、エシェリヒア・コリのα-KGDH遺伝子であるsucA
、sucB、およびlpdA遺伝子にコードされるSucA、SucB、およびLpdAタンパク質は、それぞれGenBank NP_415254、NP_415255、およびNP_414658として開示されている。
また、コリネ型細菌では、E1oサブユニットはodhA遺伝子(sucA遺伝子とも呼ばれる;GenBank Accession No. NC_003450のNCgl1084として登録されている)によってコードされ、E3サブユニットはlpd遺伝子(GenBank Accession No. Y16642)によってコードされて
いる。一方、E2oサブユニットは、E1oサブユニットとともに2機能性タンパク質としてodhA遺伝子にコードされているか(Usuda, Y. et al., Microbiology 1996. 142: 3347-3354参照)、あるいはodhA遺伝子とは別のGenBank Accession No. NC_003450のNCgl2126として登録されている遺伝子によってコードされていると推測されている。従って、本発明においては、odhA遺伝子は、E1oサブユニットをコードする遺伝子であるが、併せてE2oをコードしていてもよい。ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC 13032のodhA遺伝子の塩基配列及び同遺伝子にコードされるE1oサブユニットのアミノ酸配列(WO2006/028298)を、それぞれ配列番号161および162に示す。また、lpd遺伝子の塩基配列及び
同遺伝子にコードされるE3サブユニットのアミノ酸配列(WO2006/028298)を、それぞれ
配列番号163および164に示す。また、上記GenBank Accession No. NC_003450のNCgl2126の塩基配列及び同配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ
配列番号165および166に示す。
α-KGDH活性が低下したことは、公知の方法(Shiio, I. and Ujigawa-Takeda, K. 1980. Agric. Biol. Chem. 44: 1897-1904)によりα-KGDH活性を測定することによって確認
することができる。
なお、これら他の改変に使用される遺伝子も、元の機能が維持されたタンパク質をコードする限り、上記例示した遺伝子や公知の塩基配列を有する遺伝子に限られず、そのバリアントであってもよい。遺伝子やタンパク質のバリアントについては、先述したL−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼ、ならびにそれらをコードする遺伝子の保存的バリアントに関する記載を準用できる。
<1−4>タンパク質の活性を増大させる手法
以下に、タンパク質の活性を増大させる手法について説明する。
「タンパク質の活性が増大する」とは、同タンパク質の活性が野生株や親株等の非改変株に対して増大していることを意味する。なお、「タンパク質の活性が増大する」ことを、「タンパク質の活性が増強される」ともいう。「タンパク質の活性が増大する」とは、具体的には、非改変株と比較して、同タンパク質の細胞当たりの分子数が増加していること、および/または、同タンパク質の分子当たりの機能が増大していることをいう。すな
わち、「タンパク質の活性が増大する」という場合の「活性」とは、タンパク質の触媒活性に限られず、タンパク質をコードする遺伝子の転写量(mRNA量)またはタンパク質の量を意味してもよい。また、「タンパク質の活性が増大する」とは、もともと標的のタンパク質の活性を有する菌株において同タンパク質の活性を増大させることだけでなく、もともと標的のタンパク質の活性が存在しない菌株に同タンパク質の活性を付与することを含む。また、結果としてタンパク質の活性が増大する限り、微生物が本来有する標的のタンパク質の活性を低下または消失させた上で、好適な標的のタンパク質の活性を付与してもよい。
タンパク質の活性は、非改変株と比較して増大していれば特に制限されないが、例えば、非改変株と比較して、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。また、非改変株が標的のタンパク質の活性を有していない場合は、同タンパク質をコードする遺伝子を導入することにより同タンパク質が生成されていればよいが、例えば、同タンパク質はその酵素活性が測定できる程度に生産されていてよい。
タンパク質の活性が増大するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を上昇させることによって達成される。なお、「遺伝子の発現が上昇する」ことを、「遺伝子の発現が増強される」ともいう。遺伝子の発現は、例えば、非改変株と比較して、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。また、「遺伝子の発現が上昇する」とは、もともと標的の遺伝子が発現している菌株において同遺伝子の発現量を上昇させることだけでなく、もともと標的の遺伝子が発現していない菌株において、同遺伝子を発現させることを含む。すなわち、「遺伝子の発現が上昇する」とは、例えば、標的の遺伝子を保持しない菌株に同遺伝子を導入し、同遺伝子を発現させることを含む。
遺伝子の発現の上昇は、例えば、遺伝子のコピー数を増加させることにより達成できる。
遺伝子のコピー数の増加は、宿主微生物の染色体へ同遺伝子を導入することにより達成できる。染色体への遺伝子の導入は、例えば、相同組み換えを利用して行うことができる(MillerI, J. H. Experiments in Molecular Genetics, 1972, Cold Spring Harbor Laboratory)。遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入さ
れてもよい。例えば、染色体上に多数のコピーが存在する配列を標的として相同組み換えを行うことで、染色体へ遺伝子の多数のコピーを導入することができる。染色体上に多数のコピーが存在する配列としては、反復DNA配列(repetitive DNA)、トランスポゾンの
両端に存在するインバーテッド・リピートが挙げられる。また、目的物質の生産に不要な遺伝子等の染色体上の適当な配列を標的として相同組み換えを行ってもよい。相同組み換えは、例えば、Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)法(Datsenko,
K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))等の直鎖状DNAを用いる方法、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法、またはファージを用いたtransduction法により行うことができる。また、遺伝子は、トランスポゾンやMini-Muを用いて染色体上にランダムに導入することも
できる(特開平2-109985号公報、US5,882,888、EP805867B1)。
染色体上に標的遺伝子が導入されたことの確認は、同遺伝子の全部又は一部と相補的な配列を持つプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション、又は同遺伝子の配列に基づいて作成したプライマーを用いたPCR等によって確認できる。
また、遺伝子のコピー数の増加は、標的遺伝子を含むベクターを宿主微生物に導入することによっても達成できる。例えば、標的遺伝子を含むDNA断片を、宿主微生物で機能
するベクターと連結して同遺伝子の発現ベクターを構築し、当該発現ベクターで宿主微生物を形質転換することにより、同遺伝子のコピー数を増加させることができる。標的遺伝子を含むDNA断片は、例えば、標的遺伝子を有する微生物のゲノムDNAを鋳型とするPCRにより取得できる。ベクターとしては、宿主微生物の細胞内において自律複製可能なベクターを用いることができる。ベクターは、マルチコピーベクターであるのが好ましい。また、形質転換体を選択するために、ベクターは抗生物質耐性遺伝子などのマーカーを有することが好ましい。ベクターは、例えば、細菌プラスミド由来のベクター、酵母プラスミド由来のベクター、バクテリオファージ由来のベクター、コスミド、またはファージミド等であってよい。エシェリヒア・コリ等の腸内細菌科の細菌において自律複製可能なベクターとして、具体的には、例えば、pUC19、pUC18、pHSG299、pHSG399、pHSG398、pACYC184、pBR322、pSTV29(いずれもタカラバイオ社より入手可)、pMW219(ニッポンジ
ーン社)、pTrc99A(ファルマシア社)、pPROK系ベクター(クロンテック社)、pKK233‐2(クロンテック社製)、pET系ベクター(ノバジェン社)、pQE系ベクター(キアゲン社
)、広宿主域ベクターRSF1010が挙げられる。コリネ型細菌で自律複製可能なベクターと
して、具体的には、例えば、pHM1519(Agric, Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));pAM330(Agric. Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));これらを改良した薬剤耐性遺伝子を
有するプラスミド;特開平3-210184号公報に記載のプラスミドpCRY30;特開平2-72876号
公報及び米国特許5,185,262号明細書公報に記載のプラスミドpCRY21、pCRY2KE、pCRY2KX
、pCRY31、pCRY3KE及びpCRY3KX;特開平1-191686号公報に記載のプラスミドpCRY2およびpCRY3;特開昭58-192900号公報に記載のpAJ655、pAJ611及びpAJ1844;特開昭57-134500号
公報に記載のpCG1;特開昭58-35197号公報に記載のpCG2;特開昭57-183799号公報に記載
のpCG4およびpCG11が挙げられる。
遺伝子を導入する場合、遺伝子は、発現可能に本発明の微生物に保持されていればよい。具体的には、遺伝子は、本発明の微生物で機能するプロモーター配列による制御を受けて発現するように導入されていればよい。プロモーターは、宿主由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、導入する遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターとしては、例えば、後述するような、より強力なプロモーターを利用してもよい。
また、2またはそれ以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に本発明の微生物に保持されていればよい。例えば、各遺伝子は、全てが単一の発現ベクター上に保持されていてもよく、全てが染色体上に保持されていてもよい。また、各遺伝子は、複数の発現ベクター上に別々に保持されていてもよく、単一または複数の発現ベクター上と染色体上とに別々に保持されていてもよい。また、2またはそれ以上の遺伝子でオペロンを構成して導入してもよい。「2またはそれ以上の遺伝子を導入する場合」としては、例えば、2またはそれ以上の酵素をそれぞれコードする遺伝子を導入する場合、単一の酵素を構成する2またはそれ以上のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を導入する場合、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
導入される遺伝子は、宿主で機能するタンパク質をコードするものであれば特に制限されない。導入される遺伝子は、宿主由来の遺伝子であってもよく、異種由来の遺伝子であってもよい。導入される遺伝子は、例えば、同遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用い、同遺伝子を有する生物のゲノムDNAや同遺伝子を搭載するプラスミド等を
鋳型として、PCRにより取得することができる。また、導入される遺伝子は、例えば、同
遺伝子の塩基配列に基づいて全合成してもよい。
なお、タンパク質が複数のサブユニットからなる複合体として機能する場合、結果としてタンパク質の活性が増大する限り、それら複数のサブユニットの全てを改変してもよく
、一部のみを改変してもよい。すなわち、例えば、遺伝子の発現を上昇させることによりタンパク質の活性を増大させる場合、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全ての発現を増強してもよく、一部の発現のみを増強してもよい。通常は、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全ての発現を増強するのが好ましい。また、複合体を構成する各サブユニットは、複合体が目的のタンパク質の機能を有する限り、1種の生物由来であってもよく、2種またはそれ以上の異なる生物由来であってもよい。すなわち、例えば、複数のサブユニットをコードする、同一の生物由来の遺伝子を宿主に導入してもよく、それぞれ異なる生物由来の遺伝子を宿主に導入してもよい。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の転写効率を向上させることにより達成できる。遺伝子の転写効率の向上は、例えば、染色体上の遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。「より強力なプロモーター」とは、遺伝子の転写が、もともと存在している野生型のプロモーターよりも向上するプロモーターを意味する。より強力なプロモーターとしては、例えば、公知の高発現プロモーターであるT7プロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、thrプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、およびPLプロモーターが挙げられる。また、コリネ型細菌を用いる場
合には、人為的に設計変更されたP54-6プロモーター(Appl.Microbiol.Biotechnolo., 53, 674-679(2000))、コリネ型細菌内で酢酸、エタノール、ピルビン酸等で誘導できるpta、aceA、aceB、adh、amyEプロモーター、コリネ型細菌内で発現量が多い強力なプロモー
ターであるcspB、SOD、tufプロモーター(Journal of Biotechnology 104 (2003) 311-323, Appl Environ Microbiol. 2005 Dec;71(12):8587-96.)等のプロモーターを用いるこ
とができる。また、より強力なプロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得してもよい。例えば、プロモーター領域内の-35、-10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの活性を高めることができる(国際公開第00/18935号)。高活性型プロモーターとしては、各種tac様プロモーター(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)やpnlp8プロモーター(WO2010/027045)が挙げられる。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の翻訳効率を向上させることにより達成できる。遺伝子の翻訳効率の向上は、例えば、染色体上の遺伝子のシャインダルガノ(SD)配列(リボソーム結合部位(RBS)ともいう)をより強力なSD配列に置換することにより達成できる。「より強力なSD配列」とは、mRNAの翻訳が、もともと存在している野生型のSD配列よりも向上するSD配列を意味する。より強力なSD配列としては、例えば、ファージT7由来の遺伝子10のRBSが挙げられる(Olins P. O. et al, Gene, 1988, 73, 227-235)。さらに、RBSと開始コドンとの間のスペーサー領域、特に開始コドンのすぐ上流の配列(5'-UTR)における数個のヌクレオチドの置換、あるいは挿入、あるいは欠失がmRNAの安定性および翻訳効率に非常に影響を及ぼすことが知られており、これらを改変することによっても遺伝子の翻訳効率を向上させることができる。
本発明においては、プロモーター、SD配列、およびRBSと開始コドンとの間のスペーサー領域等の遺伝子の発現に影響する部位を総称して「発現調節領域」ともいう。発現調節領域は、プロモーター検索ベクターやGENETYX等の遺伝子解析ソフトを用いて決定することができる。これら発現調節領域の改変は、例えば、温度感受性ベクターを用いた方法や、Redドリブンインテグレーション法(WO2005/010175)により行うことが
できる。
遺伝子の翻訳効率の向上は、例えば、コドンの改変によっても達成できる。エシェリヒア・コリ等において、mRNA分子の集団内に見出される61種のアミノ酸コドン間には
明らかなコドンの偏りが存在し、あるtRNAの存在量は、対応するコドンの使用頻度と直接比例するようである(Kane, J.F., Curr. Opin. Biotechnol., 6(5), 494-500 (1995))。すなわち、過剰のレアコドンを含むmRNAが大量に存在すると翻訳の問題が生じ
うる。近年の研究によれば、特に、AGG/AGA、CUA、AUA、CGA、又はCCCコドンのクラスターが、合成されたタンパク質の量および質の両方を低下させ得ることが示唆されている。このような問題は、特に異種遺伝子の発現の際に生じうる。よって、遺伝子の異種発現を行う場合等には、遺伝子中に存在するレアコドンを、より高頻度で利用される同義コドンに置き換えることにより、遺伝子の翻訳効率を向上させることができる。コドンの置換は、例えば、DNAの目的の部位に目的の変異を導入する部位特異的変異法により行うことができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))や、ファージを用いる方法(Kramer,W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 154, 350 (1987);Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987))が挙げられる。また、コドンが置換された遺伝子断片を全合成してもよい。種々の生物におけるコドンの使用頻度は、「コドン使用データベース」(http://www.kazusa.or.jp/codon; Nakamura, Y. et al, Nucl. Acids Res., 28, 292 (2000))に開示されている。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の発現を上昇させるようなレギュレーターを増幅すること、または、遺伝子の発現を低下させるようなレギュレーターを欠失または弱化させることによっても達成できる。
上記のような遺伝子の発現を上昇させる手法は、単独で用いてもよく、任意の組み合わせで用いてもよい。
また、タンパク質の活性が増大するような改変は、例えば、タンパク質の比活性を増強することによっても達成できる。比活性の増強には、フィードバック阻害の低減および解除も含まれる。比活性が増強されたタンパク質は、例えば、種々の生物を探索し取得することができる。また、在来のタンパク質に変異を導入することで高活性型のものを取得してもよい。導入される変異は、例えば、タンパク質の1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されるものであってよい。変異の導入は、例えば、上述したような部位特異的変異法により行うことができる。また、変異の導入は、例えば、突然変異処理により行ってもよい。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エ
チルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。また、in vitroでDNAを直接ヒドロキシルアミンで処
理し、ランダム変異を誘発してもよい。比活性の増強は、単独で用いてもよく、上記のような遺伝子の発現を増強させる手法と任意に組み合わせて用いてもよい。
形質転換の方法は特に限定されず、従来知られた方法を用いることができる。例えば、エシェリヒア・コリ K-12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウム
で処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel, M. and Higa, A.,J. Mol. Biol. 1970, 53,
159-162)や、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法(Duncan, C. H., Wilson, G. A. and Young, F. E.., 1997. Gene 1: 153-167)を用いることができる。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類、及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組
換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang, S.and Choen, S.N., 1979.Mol. Gen. Genet. 168: 111-115; Bibb, M. J., Ward, J. M. and Hopwood, O. A. 1978.Nature 274: 398-400; Hinnen, A., Hicks, J. B. and Fink, G. R. 1978. Proc. Natl.Acad. Sci. USA 75: 1929
-1933)も応用できる。
タンパク質の活性が増大したことは、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。
タンパク質の活性が増大したことは、同タンパク質をコードする遺伝子の発現が上昇したことを確認することによっても、確認できる。遺伝子の発現が上昇したことは、同遺伝子の転写量が上昇したことを確認することや、同遺伝子から発現するタンパク質の量が上昇したことを確認することにより確認できる。
遺伝子の転写量が上昇したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を野生株または親株等の非改変株と比較することによって行うことができる。mRNAの量を評価する方法としてはノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR等が挙げられる(Sambrook, J., et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual/Third Edition, Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001)。mRNAの量は、非改変株と比較して
、例えば、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。
タンパク質の量が上昇したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことができる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。タンパク質の量は、非改変株と比較して、例えば、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。
上記したタンパク質の活性を増大させる手法は、任意のタンパク質、例えばL−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼ、の活性増強や、任意の遺伝子、例えばそれら任意のタンパク質をコードする遺伝子、の発現増強に利用できる。
<1−5>タンパク質の活性を低下させる手法
以下に、タンパク質の活性を低下させる手法について説明する。
「タンパク質の活性が低下する」とは、同タンパク質の活性が野性株や親株等の非改変株と比較して減少していることを意味し、活性が完全に消失している場合を含む。「タンパク質の活性が低下する」とは、具体的には、非改変株と比較して、同タンパク質の細胞当たりの分子数が低下していること、および/または、同タンパク質の分子当たりの機能が低下していることをいう。すなわち、「タンパク質の活性が低下する」という場合の「活性」とは、タンパク質の触媒活性に限られず、タンパク質をコードする遺伝子の転写量(mRNA量)またはタンパク質の量を意味してもよい。なお、「タンパク質の細胞当たりの分子数が低下している」ことには、同タンパク質が全く存在していない場合が含まれる。また、「タンパク質の分子当たりの機能が低下している」ことには、同タンパク質の分子当たりの機能が完全に消失している場合が含まれる。タンパク質の活性は、非改変株と比較して低下していれば特に制限されないが、例えば、非改変株と比較して、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることにより達成される。「遺伝子の発現が低下する」ことには、同遺伝子が全く発現していない場合が含まれる。なお、「遺伝子の発現が低下する」ことを、「遺伝子の発現が弱化される」ともいう。遺伝子の発現は、例えば、非改変株と比較して、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
遺伝子の発現の低下は、例えば、転写効率の低下によるものであってもよく、翻訳効率
の低下によるものであってもよく、それらの組み合わせによるものであってもよい。遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のプロモーターやシャインダルガノ(SD)配列等の発現調節配列を改変することにより達成できる。発現調節配列を改変する場合には、発現調節配列は、好ましくは1塩基以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ましくは3塩基以上が改変される。また、発現調節配列の一部または全部を欠失させてもよい。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、発現制御に関わる因子を操作することによっても達成できる。発現制御に関わる因子としては、転写や翻訳制御に関わる低分子(誘導物質、阻害物質など)、タンパク質(転写因子など)、核酸(siRNAなど)等が挙げられる。
また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子を破壊することにより達成できる。遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域の一部又は全部を欠損させることにより達成できる。さらには、染色体上の遺伝子の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失させてもよい。タンパク質の活性の低下が達成できる限り、欠失させる領域は、N末端領域、内部領域、C末端領域等のいずれの領域であってもよい。通常、欠失させる領域は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、欠失させる領域の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、終止コドンを導入すること(ナンセンス変異)、あるいは1〜2塩基を付加または欠失するフレームシフト変異を導入すること等によっても達成できる(Journal of Biological Chemistry 272:8611-8617(1997), Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 95 5511-5515(1998), Journal of Biological Chemistry 26 116, 20833-20839(1991))。
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域に他の配列を挿入することによっても達成できる。挿入部位は遺伝子のいずれの領域であってもよいが、挿入する配列は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、挿入部位の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。他の配列としては、コードされるタンパク質の活性を低下又は消失させるものであれば特に制限されないが、例えば、抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子や目的物質の生産に有用な遺伝子が挙げられる。
染色体上の遺伝子を上記のように改変することは、例えば、遺伝子の部分配列を欠失し、正常に機能するタンパク質を産生しないように改変した欠失型遺伝子を作製し、該欠失型遺伝子を含む組換えDNAで微生物を形質転換して、欠失型遺伝子と染色体上の野生型遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、染色体上の野生型遺伝子を欠失型遺伝子に置換することによって達成できる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。欠失型遺伝子によってコードされるタンパク質は、生成したとしても、野生型タンパク質とは異なる立体構造を有し、機能が低下又は消失する。このような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に確立しており、「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))、Redドリブンインテグレーション法とλファージ由来の
切り出しシステム(Cho, E. H., Gumport, R. I., Gardner, J. F. J. Bacteriol. 184: 5200-5203 (2002))とを組み合わせた方法(WO2005/010175号参照)等の直鎖状DNAを
用いる方法や、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法などがある(米国特許第6303383号、特開平05-007491号)。
また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、突然変異処理により行って
もよい。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN−メチル−N'
−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。
なお、タンパク質が複数のサブユニットからなる複合体として機能する場合、結果としてタンパク質の活性が低下する限り、それら複数のサブユニットの全てを改変してもよく、一部のみを改変してもよい。すなわち、例えば、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全てを破壊等してもよく、一部のみを破壊等してもよい。また、タンパク質に複数のアイソザイムが存在する場合、結果としてタンパク質の活性が低下する限り、複数のアイソザイムの全ての活性を低下させてもよく、一部のみの活性を低下させてもよい。すなわち、例えば、それらのアイソザイムをコードする複数の遺伝子の全てを破壊等してもよく、一部のみを破壊等してもよい。
タンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。
タンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質をコードする遺伝子の発現が低下したことを確認することによっても、確認できる。遺伝子の発現が低下したことは、同遺伝子の転写量が低下したことを確認することや、同遺伝子から発現するタンパク質の量が低下したことを確認することにより確認できる。
遺伝子の転写量が低下したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を非改変株と比較することによって行うことが出来る。mRNAの量を評価する方法としては、ノーザンハイブリダイゼーション、RT−PCR等が挙げられる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。mRNAの量は、非改変株
と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
タンパク質の量が低下したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことが出来る(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。タンパク質の量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
遺伝子が破壊されたことは、破壊に用いた手段に応じて、同遺伝子の一部または全部の塩基配列、制限酵素地図、または全長等を決定することで確認できる。
上記したタンパク質の活性を低下させる手法は、任意のタンパク質、例えばマレートシンターゼ、の活性低下や、任意の遺伝子、例えばそれら任意のタンパク質をコードする遺伝子、の発現低下に利用できる。
<2>本発明の目的物質の製造法
本発明の方法は、本発明の微生物を培地で培養して目的物質を該培地中又は該微生物の菌体内に生成蓄積すること、および該培地又は菌体より目的物質を採取することを含む、目的物質の製造法である。本発明においては、1種の目的物質が製造されてもよく、2種またはそれ以上の目的物質が製造されてもよい。
使用する培地は、本発明の微生物が増殖でき、目的物質が生産される限り、特に制限されない。培地としては、例えば、細菌等の微生物の培養に用いられる通常の培地を用いることができる。培地としては、例えば、炭素源、窒素源、リン酸源、硫黄源、その他の各種有機成分や無機成分から選択される成分を必要に応じて含有する培地を用いることがで
きる。培地成分の種類や濃度は、使用する微生物の種類や製造する目的物質の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
炭素源は、本発明の微生物が資化して目的物質を生成し得るものであれば、特に限定されない。炭素源として、具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、廃糖蜜、澱粉加水分解物、バイオマスの加水分解物等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸類、グリセロール、粗グリセロール、エタノール等のアルコール類、脂肪酸類が挙げられる。なお、炭素源としては、植物由来原料を好適に用いることができる。植物としては、例えば、トウモロコシ、米、小麦、大豆、サトウキビ、ビート、綿が挙げられる。植物由来原料としては、例えば、根、茎、幹、枝、葉、花、種子等の器官、それらを含む植物体、それら植物器官の分解産物が挙げられる。植物由来原料の利用形態は特に制限されず、例えば、未加工品、絞り汁、粉砕物、生成物等のいずれの形態でも利用できる。また、キシロース等の5炭糖、グルコース等の6炭糖、またはそれらの混合物は、例えば、植物バイオマスから取得して利用できる。具体的には、これらの糖類は、植物バイオマスを、水蒸気処理、濃酸加水分解、希酸加水分解、セルラーゼ等の酵素による加水分解、アルカリ処理等の処理に供することにより取得できる。なお、ヘミセルロースは一般的にセルロースよりも加水分解されやすいため、植物バイオマス中のヘミセルロースを予め加水分解して5炭糖を遊離させ、次いで、セルロースを加水分解して6炭糖を生成させてもよい。また、キシロースは、例えば、本発明の微生物にグルコース等の6炭糖からキシロースへの変換経路を保有させて、6炭糖からの変換により供給してもよい。炭素源としては、1種の炭素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の炭素源を組み合わせて用いてもよい。
培地中での炭素源の濃度は、本発明の微生物が増殖でき、目的物質が生産される限り、特に制限されない。培地中での炭素源の濃度は、目的物質の生産が阻害されない範囲で可能な限り高くするのが好ましい。培地中での炭素源の初発濃度は、例えば、通常5〜30 %(W/V)、好ましくは10〜20 %(W/V)であってよい。また、発酵の進行に伴う炭素源の消費に
応じて、炭素源を追加で添加してもよい。
窒素源として、具体的には、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆タンパク質分解物等の有機窒素源、アンモニア、ウレアが挙げられる。pH調整に用いられるアンモニアガスやアンモニア水を窒素源として利用してもよい。窒素源としては、1種の窒素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の窒素源を組み合わせて用いてもよい。
リン酸源として、具体的には、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム等のリン酸塩、ピロリン酸等のリン酸ポリマーが挙げられる。リン酸源としては、1種のリン酸源を用いてもよく、2種またはそれ以上のリン酸源を組み合わせて用いてもよい。
硫黄源として、具体的には、例えば、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が挙げられる。硫黄源としては、1種の硫黄源を用いてもよく、2種またはそれ以上の硫黄源を組み合わせて用いてもよい。
その他の各種有機成分や無機成分として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の微量金属類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等のビ
タミン類;アミノ酸類;核酸類;これらを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク質分解物等の有機成分が挙げられる。その他の各種有機成分や無機成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよ
い。
また、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には、培地に要求される栄養素を補添することが好ましい。また、例えば、コリネ型細菌によりL−グルタミン酸を製造する場合は、培地中のビオチン量を制限することや、培地に界面活性剤またはペニシリンを添加することが好ましい。また、培養時の発泡を抑えるために、培地には市販の消泡剤を適量添加しておくことが好ましい。
培養条件は、本発明の微生物が増殖でき、目的物質が生産される限り、特に制限されない。培養は、例えば、細菌等の微生物の培養に用いられる通常の条件で行うことができる。培養条件は、使用する微生物の種類や製造する目的物質の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
培養は、液体培地を用いて行うことができる。培養の際には、本発明の微生物を寒天培地等の固体培地で培養したものを直接液体培地に接種してもよく、本発明の微生物を液体培地で種培養したものを本培養用の液体培地に接種してもよい。すなわち、培養は、種培養と本培養とに分けて行われてもよい。培養開始時に培地に含有される本発明の微生物の量は特に制限されない。例えば、OD660=4〜8の種培養液を、培養開始時に、本培養用の培地に対して0.1質量%〜30質量%、好ましくは1質量%〜10質量%、添加してよい。
培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。なお、培養が種培養と本培養とに分けて行われる場合、種培養と本培養の培養条件は、同一であってもよく、そうでなくてもよい。例えば、種培養と本培養を、共に回分培養で行ってもよい。また、例えば、種培養を回分培養で行い、本培養を流加培養または連続培養で行ってもよい。
培養は、好気条件で行ってもよく、微好気条件で行ってもよく、嫌気条件で行ってもよい。培養は、微好気条件または嫌気条件で行うのが好ましい。好気条件とは、液体培地中の溶存酸素濃度が、酸素膜電極による検出限界である0.33ppm以上であることをいい、好
ましくは1.5ppm以上であることであってよい。微好気条件とは、培養系に酸素が供給されているが、液体培地中の溶存酸素濃度が0.33ppm未満であることをいう。嫌気条件とは、
培養系に酸素が供給されない条件をいう。培養は、その全期間において上記で選択された条件で行われてもよく、一部の期間のみ上記で選択された条件で行われてもよい。すなわち、「好気条件で培養する」とは、培養の全期間の内の、少なくとも一部の期間において好気条件で培養が行われることをいう。また、「微好気条件で培養する」とは、培養の全期間の内の、少なくとも一部の期間において微好気条件で培養が行われることをいう。また、「嫌気条件で培養する」とは、培養の全期間の内の、少なくとも一部の期間において嫌気条件で培養が行われることをいう。「一部の期間」とは、例えば、培養の全期間の50%以上、70以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の期間であってよい。なお、「培養の全期間」とは、培養が種培養と本培養とに分けて行われる場合には、本培養の全期間を意味してよい。好気条件での培養は、具体的には、通気培養または振盪培養で行うことができる。また、通気量や攪拌速度を低下させる、容器を密閉して無通気で培養する、炭酸ガス含有の不活性ガスを通気する等の手段により、液体培地中の溶存酸素濃度を低下させ、微好気条件または嫌気条件を達成できる。
培地のpHは、例えば、pH3〜10、好ましくはpH4.0〜9.5であってよい。培養中、必要に
応じて培地のpHを調整することができる。培地のpHは、アンモニアガス、アンモニア水、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム
、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の各種アルカリ性または酸性物質を用いて調整することができる。
培地には、炭酸イオン、重炭酸イオン、炭酸ガス、またはそれらの組み合わせが含有されていてよい。これらの成分は、例えば、本発明の微生物の代謝により、またはpH調整に用いられる炭酸塩および/または重炭酸塩から、供給することができる。また、これらの成分は、必要に応じて、炭酸、重炭酸、それらの塩、または炭酸ガスから供給することもできる。炭酸又は重炭酸の塩の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムが挙げられる。炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンは、例えば、0.001〜5M、好ましくは0.1〜3M、さらに好ましくは1〜2Mの濃度で添加してよい
。炭酸ガスを含有させる場合は、例えば、溶液1L当たり50mg〜25g、好ましくは100mg〜15g、さらに好ましくは150mg〜10gの炭酸ガスを含有させてよい。
培養温度は、例えば、20〜45℃、好ましくは25℃〜37℃であってよい。培養期間は、例えば、1時間以上、4時間以上、10時間以上、または15時間以上であってよく、168時間以下、120時間以下、90時間、または72時間以下であってよい。培養期間は、具体的には、例えば、10時間〜120時間であってよい。培養は、例えば、培地中の炭素源が消費されるまで、あるいは本発明の微生物の活性がなくなるまで、継続してもよい。
このような条件下で本発明の微生物を培養することにより、菌体内および/または培地中に目的物質が蓄積する。
また、L−グルタミン酸を製造する場合、L−グルタミン酸が析出する条件に調整された液体培地を用いて、培地中にL−グルタミン酸を析出させながら培養を行うことも出来る。L−グルタミン酸が析出する条件としては、例えば、pH5.0〜3.0、好ましくはpH4.9〜3.5、さらに好ましくはpH4.9〜4.0、特に好ましくはpH4.7付近の条件が挙げられる(欧州特許出願公開第1078989号明細書)。尚、培養は、その
全期間において上記pHで行われてもよく、一部の期間のみ上記pHで行われてもよい。「一部の期間」とは、上記例示したような期間であってよい。
目的物質が生成したことは、化合物の検出または同定に用いられる公知の手法により確認することができる。そのような手法としては、例えば、HPLC、LC/MS、GC/MS、NMRが挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせて用いることができる。
生成した目的物質の回収は、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。そのような手法としては、例えば、イオン交換樹脂法、膜処理法、沈殿法、および晶析法が挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせて用いることができる。なお、菌体内に目的物質が蓄積する場合には、例えば、菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清から、イオン交換樹脂法などによって目的物質を回収することができる。回収される目的物質は、フリー体、その塩、またはそれらの混合物であってよい。塩としては、例えば、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
また、目的物質が培地中に析出する場合は、遠心分離又は濾過等により回収することができる。また、培地中に析出した目的物質は、培地中に溶解している目的物質を晶析した後に、併せて単離してもよい。
尚、回収される目的物質は、目的物質以外に、例えば、微生物菌体、培地成分、水分、
及び微生物の代謝副産物を含んでいてもよい。回収された目的物質の純度は、例えば、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、90%(w/w)以
上、または95%(w/w)以上であってよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。
<実施例1:エシェリヒア・コリMG1655株由来評価株の作成>
エシェリヒア・コリMG1655株において、スクシニルCoAシンターゼ、マレートチオキナ
ーゼ、またはスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼと、マリルCoAリアーゼ及びイソクエン酸リアーゼとを介して、L−グルタミン酸系アミノ酸が生成されることを示すための評価株を構築した。
<1−1>gltA遺伝子〜sdhABCD遺伝子領域欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、クエン酸シンターゼをコードするgltA遺伝子の塩基配列も報
告されている。すなわちgltA遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号752408〜753691に相当する。また、コハク酸デヒドロゲナーゼをコードするsdhCDAB遺伝子は、エシェリヒア・コリMG1655株のゲ
ノムDNAにおいてgltA遺伝子に隣接して存在する。すなわち、sdhCDAB遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号754400〜757628に相当する。
このgltA遺伝子〜sdhCDAB遺伝子を含む領域の欠損は、「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol.97, No.12, p6640-6645) とλファージ由来の切り出しシステム(J. Bacteriol. 2002 Sep; 184(18): 5200-3. Interactions between integrase and excisionase in the phage
lambda excisive nucleoprotein complex. Cho EH, Gumport RI, Gardner JF.)によっ
て行った。
gltA遺伝子〜sdhCDAB遺伝子を含む領域の欠損用DNA断片を、pMW118-attL-Km-attR(WO2005/010175、特開2005-58227)を鋳型として、配列番号1と配列番号2のオリゴヌクレオチドを用いてPCRにより増幅した。なお、pMW118-attL-Km-attRは、pMW118(宝バイオ社製)に、λファージのアタッチメントサイトであるattL及びattR遺伝子と抗生物質耐性遺伝子であるカナマイシン耐性遺伝子をattL-Km-attRの順に挿入したプラスミドである。PCR
により増幅された断片をWizard PCR Prep DNA Purification System(Promega社製)を用いて精製した。
遺伝子欠損用DNA断片を、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を含むエシェリヒア・コリMG1655株にエレクトロポレーションにより導入した。プラスミドpKD46(Proc.
Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640-6645)は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRed相同組換えシステムのRedレコンビナーゼをコード
する遺伝子(γ、β、exo遺伝子)を含む、λファージの合計2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBL アクセッション番号 J02459, 塩基番号31088〜33241の領域)が挿入されたプラスミドである。プラスミドpKD46は遺伝子欠損用DNA断片をMG1655株の染色体に組み込むために必要である。
エレクトロポレーション用のコンピテントセルは次のようにして調製した。まず、100 mg/Lのアンピシリンを含んだ L培地(10 g/L Bacto trypton, 5 g/L Bacto Yeast extract
, 5 g/L NaCl)で、pKD46を導入したエシェリヒア・コリMG1655株を30℃で一晩培養した。この培養液50μLを100 mg/Lのアンピシリンと10 mMのL-アラビノースを含んだ5 mLのL培
地に植菌した。これを30℃で通気しながら600nmにおける吸光度(OD600)が約0.6になる
まで生育させた後、菌体を回収し、10 %グリセロールで3回洗浄した後に100倍に濃縮することによってエレクトロポレーション用のコンピテントセルを得た。エレクトロポレーションは70μLのコンピテントセルと約1000 ngのPCR産物を用いて行った。エレクトロポレーション後のセルは1 mLのSOC培地(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第
2版、Sambrook, J.ら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年))を加えて37
℃で2.5時間培養した後、37℃でKm(カナマイシン)(40 mg/L)を含むLBGM9アガロース
プレート(トリプトン1%、酵母抽出液0.5%、塩化ナトリウム1.05 %、グルコース0.5 %、
リン酸水素2ナトリウム12水和物1.72 %、リン酸2水素カリウム0.3 %、塩化アンモニウム0.1 %、アガロース2 %)で平板培養し、Km耐性組換え体を選択した。得られたコロニーの
アンピシリン耐性を試験し、pKD46が脱落しているアンピシリン感受性株を取得した。
カナマイシン耐性によって選択した変異体のgltA〜sdhCDAB遺伝子を含む領域の欠失を
、PCRによって確認した。gltA〜sdhCDAB遺伝子を含む領域の欠失が確認された株をEMC0::Kmと名づけた。
次に、gltA〜sdhABCD遺伝子領域に導入されたカナマイシン耐性遺伝子を、λファージ
由来の切り出しシステム(Cho, E. H. et al. 2002. J. Bacteriol. 184: 5200-5203)によって、以下の方法で除去した。
薬剤耐性遺伝子を除去するために、λファージのインテグラーゼ(Int)をコードする
遺伝子およびエクジショナーゼ(Xis)をコードする遺伝子を搭載し、温度感受性の複製
能を有するプラスミドである、pMW-intxis-sacB(Cm)及びpMW-intxis-sacB(Spc)を構築し
た。
クロラムフェニコール耐性遺伝子を搭載した薬剤耐性遺伝子除去用プラスミドであるpMW-intxis-sacB(Cm)は、pMW-intxis-ts(WO2007/037460)のPstI-SphIサイトにRSF-Red-TER(特開2009-232844)由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子とsacB遺伝子を挿入することにより構築した。具体的にはRSF-Red-TERを鋳型として、配列番号37と配列番号38
のプライマーを用いて、PCRによりクロラムフェニコール耐性遺伝子とsacB遺伝子を含む
約4.0kbの断片を増幅し、これを精製した。一方で、pMW-intxis-tsをPstIとSphIで処理し、更に末端をTakara社製BKL kitを用いて平滑化およびリン酸化した。これら2つの断片
をライゲーション反応により連結し、エシェリヒア・コリDH5α株を形質転換し、25mg/L
クロラムフェニコール、100 mg/Lアンピシリンを含むLアガロースプレート(10 g/L Bacto trypton, 5 g/L Bacto Yeast extract, 5 g/L NaCl, 2 %アガロース)で選択することにより、pMW-intxis-sacB(Cm)を保持するDH5α株を得た。pMW-intxis-sacB(Cm)を保持す
るDH5α株から、常法によりプラスミドpMW-intxis-sacB(Cm)を得た。
スペクチノマイシン耐性遺伝子を搭載した薬剤耐性遺伝子除去用プラスミドであるpMW-intxis-sacB(Spc)は、以下の手順で構築した。スペクチノマイシン耐性遺伝子としては、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)由来のスペクチノマイシン耐
性遺伝子を、バチルスジェネチックストックセンター(BGSC)より市販されているエシェリヒア・コリECE101株から、プラスミドpDG1726を調製し、該プラスミドからカセットと
して取り出すことにより、取得することができる。まず、Pantoea ananatis SC17(0)/RSFRedTER株(RU patent application 2006134574, WO2008/090770, US2010-062496)から、SC17(0)/RSFRedSpc株をRedドリブンインテグレーション法により作成した。具体的には、配列番号68と配列番号69に示すプライマーを用い、pDG1726を鋳型としてPCR反応を行い、両端にRSF-Red-TER上の配列の一部と相同な50 bpの配列を有するスペクチノマイシン
耐性遺伝子断片を得た。SC17(0)/RSFRedTER株をLB液体培地にて終夜培養し、この培養液1
mLを、終濃度1 mMのIPTGと25 mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB液体培地100 mLに植菌して34℃で3時間振盪培養を行った。菌体を回収した後、10 %グリセロールで3回洗浄したものをコンピテントセルとした。増幅したPCR断片をPromega社製Wizard PCR Prepを用
いて精製したものをエレクトロポレーション法によりコンピテントセルに導入し、25mg/Lのスペクチノマイシンを含むLアガロースプレートで選択することにより、SC17(0)/RSFRedSpc株を得た。SC17(0)/RSFRedSpc株より、常法によりプラスミドRSF-Red-TER(Spc)を取
得した。続いて、RSF-Red-TER(Spc)を鋳型とし、配列番号70および配列番号71の合成オリゴヌクレオチドを用いたPCRにより、sacB遺伝子及びスペクチノマイシン耐性遺伝子
のORFを増幅し、常法により増幅したDNA断片を精製した。精製後、BKLキット(TaKaRa)
により両末端をリン酸化した。続けて、pMW-intxis-ts(WO2007/037460)をSphIにより制限酵素処理した後、DNA Blunting Kit(TaKaRA)により切断断片を平滑化し、前述のリン酸化されたDNA断片をライゲーションすることでpMW-intxis-sacB(Spc)を作製した。
pMW-intxis-sacB(Cm)またはpMW-intxis-sacB(Spc)の導入により、染色体上のattL配列
あるいはattR配列を認識して組換えを起こし、attLとattRの間の遺伝子を切り出し、染色体上にはattLあるいはattR配列のみ残る。
EMC0::Kmのコンピテントセルを常法に従って作製し、ヘルパープラスミドpMW-intxis-sacB(Cm)にて形質転換し、30℃で25 mg/Lのクロラムフェニコールを含むLBGM9プレート上
にて平板培養し、クロラムフェニコール耐性株を選択した。次に、薬剤(抗生物質)を含まないLBGM9プレート上で、42℃で2回継代し、得られたコロニーのクロラムフェニコール耐性及びカナマイシン耐性を試験し、クロラムフェニコール及びカナマイシン感受性株を取得した。得られた株のgltA〜sdhCDAB遺伝子を含む領域に導入されたカナマイシン耐性
遺伝子の欠失を、PCRによって確認した。この株をEMC0と名づけた。
<1−2>aceB遺伝子欠損、aceA遺伝子の発現増強、aceK遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、マレートシンターゼAをコードするaceB遺伝子、イソクエン酸リアーゼをコードするaceA遺伝子、イソクエン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスファタ
ーゼをコードするaceK遺伝子の塩基配列も報告されている。これらの遺伝子はエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム上において連続して存在する。すなわち、aceB遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号4213501〜4215102に相当する。また、aceA遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ケ゛ノム配列の塩基番号4215132〜4216436に相当する。また、aceK遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号4216619〜4218355に相当する。
以下の通り、エシェリヒア・コリMG1655株のaceA遺伝子の発現増強とaceB及びaceK遺伝子の欠損を行った。
遺伝子の発現強度を変更する方法として、一段階で目的遺伝子の上流に様々な発現強度を有するプロモーター配列を挿入する方法が開発されている(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)。同文献では、P. ananatis SC17(0)株において、ゲノム上のlacZ遺伝子上流に、λファージ由来の切り出しシステムにより除去可能なカナマイシン耐性遺伝子(attL-Km-attR)と、−35領域を変異させ様々な発現強度を有するtac様プロモーターと、リボソーム結合部位(RBS)とが挿入されている株
が構築されている。そのため、本株のゲノムDNAを鋳型とし、上記Redドリブンインテグレーション法により、目的遺伝子の上流にλファージ由来の切り出しシステムにより除去可能なカナマイシン耐性遺伝子(attL-Km-attR)と様々な発現強度を有するプロモーターを
挿入することができる。同文献で報告されているtac様プロモーター配列のうち、最も発
現強度が高いとされる配列(同文献におけるSEQ ID No.16)の−35領域から、リボソーム結合部位(RBS)を含む開始コドンまでのDNA配列を配列番号73に示した。
以下の通り、エシェリヒア・コリMG1655株のaceA遺伝子の発現増強とaceB遺伝子の欠損を同時に行った。aceB遺伝子の上流の配列とattL配列を有する合成オリゴヌクレオチド(配列番号3)、及びaceA遺伝子の開始コドンより下流の配列とtac様プロモーターの一部
に対応する配列を有する合成オリゴヌクレオチド(配列番号4)を用いて、上記最も発現強度が高いとされるtac様プロモーター配列を有するP. ananatis SC17(0)株のゲノムDNA
を鋳型としてPCRを行った。増幅したPCR産物を常法により精製後、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を保持するエシェリヒア・コリMG1655株にエレクトロポレーショ
ンにより導入した。カナマイシン耐性を指標として株の選別を行い、得られたカナマイシン耐性株において、aceB遺伝子が欠損され、aceA遺伝子の直前にtac様プロモーター配列
が挿入されていることをPCRによって確認した。本株を、MG1655::ΔaceBP4071-aceA::Km
と名付けた。MG1655::ΔaceBP4071-aceA::KmはpKD46プラスミドを保持していなかったた
め、常法にて再度pKD46プラスミドを導入した。本株において、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法でaceK遺伝子を欠損した。具体的には、pMW118-attL-Tc-attR(WO2005/010175、特開2005-58227)を鋳型として配列番号5と配列番号6のオリゴ
ヌクレオチドを用いたPCRを行った。増幅したPCR産物を常法により精製後、pKD46を保持
するMG1655::ΔaceBP4071-aceA::Kmにエレクトロポレーションにより導入した。25 mg/L
のテトラサイクリン塩酸塩を含むLBGM9アガロースプレートにおいて、テトラサイクリン
耐性を指標として株を選別した。このようにして得られたテトラサイクリン耐性株において、aceB遺伝子が欠損され、aceA遺伝子の直前にtac様プロモーター配列が挿入され、さ
らにaceK遺伝子が欠損されていることをPCRによって確認した。本株を、MG1655::ΔaceB P4071-aceA::KmΔaceK::tetと名付けた。
<1−3>glcB遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、マレートシンターゼGをコードするglcB遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちglcB遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号3119656〜3121827に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のマレートシンターゼGをコードするglcB遺伝子の欠損は
、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号7と配列番号8のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-Tc-attRを鋳型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。テトラサイクリン耐性を指標として選別した株がエシェリヒア・コリMG1655株のglcB遺伝子が欠損された株であることをPCRにより確認し、本株
をMG1655 ΔglcB::tetと名づけた。
<1−4>gcl遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、グリオキシル酸カルボリガーゼをコードするgcl遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちgcl遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に
記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号533140〜534921に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のグリオキシル酸カルボリガーゼをコードするgcl遺伝子
の欠損は、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号9と配列番号10のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-Cm-attR (WO 05/010175)を鋳型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。25 mg/Lのクロラムフェニコールを含むLBGM9プレートにおいて、クロラムフェニコール耐性を指標として選別した株
がエシェリヒア・コリMG1655株のgclA遺伝子が欠損された株であることをPCRにより確認
し、本株をMG1655 Δgcl::Cmと名づけた。
<1−5>maeA遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NAD−マリックエンザイム)をコードするmaeA遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちmaeA遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号1551996〜1553693に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NAD−マリックエンザイム
)をコードするmaeA遺伝子の欠損は、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号11と配列番号12のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-Tc-attRを鋳型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。テトラサイクリン耐性を指標として選別した株がエシェリヒア・コリMG1655株のmaeA遺伝子が欠損された株であることをPCRにより確認し、本株をMG1655 ΔmaeA::tetと名づけた。
<1−6>maeB遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NADP−マリックエンザイム)を
コードするmaeB遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちmaeB遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号2574120〜2576399に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NADP−マリックエンザイム)をコードするmaeB遺伝子の欠損は、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号13と配列番号14のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-Cm-attRを鋳型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。クロラムフェニコール耐性を指標として選別した株がエシェリヒア・コリMG1655株のmaeB遺伝子が欠損された株であることをPCRにより確認し、本株をMG1655 ΔmaeB::Cmと名づけた。
<1−7>mdh遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするmdh遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちmdh遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載
のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号3381352〜3382290に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするmdh遺伝子の欠
損は、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号15と配列番号16のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-Km-attRを鋳
型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。カナマイシン耐性を指標として選別した株が
エシェリヒア・コリMG1655株のmdh遺伝子が欠損された株であることをPCRにより確認し、本株をMG1655 Δmdh::Kmと名づけた。
<1−8>prpC遺伝子、prpD遺伝子、prpE遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、2−メチルクエン酸シンターゼをコードするprpC遺伝子、2−メチルクエン酸デヒドラターゼをコードするprpD遺伝子、プロピオニルーCoAリガーゼを
コードするprpE遺伝子の塩基配列も報告されている。これらの遺伝子はエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム上で連続して存在する。すなわちprpC遺伝子はGenBank accession nu
mber NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号349236〜350405に相当する。また、prpD遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号350439〜351890に相当する。また、prpE遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号351930〜353816に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のprpC遺伝子、prpD遺伝子、prpE遺伝子を含む領域の欠損を、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法に従い行った。具体的には、配列番号17と配列番号18のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-Km-attRを
鋳型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。カナマイシン耐性を指標として選別した株
がエシェリヒア・コリMG1655株のprpCDE遺伝子が欠損された株であることをPCRにより確
認し、本株をMG1655 ΔprpCDE::Kmと名づけた。
<1−9>dctA遺伝子発現増強株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、C4ジカルボン酸、オロト酸、およびクエン酸の取り込み担体
をコードするdctA遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちdctA遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号3680184〜3681470に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のC4ジカルボン酸、オロト酸、およびクエン酸の取り込み担体をコードするdctA遺伝子の発現増強は、実施例<1−2>記載のaceA遺伝子の発現増強と同様に、Redドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号21と
配列番号22のオリゴヌクレオチドを用いて、上記文献(Katashkina JI et al. Russian
Federation Patent application 2006134574)において最も発現強度が高いとされるtac様プロモーター配列を有するP. ananatis SC17(0)株のゲノムDNAを鋳型として、PCRより
増幅した断片を用いた。カナマイシン耐性を指標として選別した株がエシェリヒア・コリMG1655株のdctA遺伝子の直前にtac様プロモーター配列が挿入された株であることをPCRにより確認し、本株をMG1655 P4071-dctA::Kmと名づけた。
<1−10>mqo遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、マレート:キノンオキシドレダクターゼをコードするmqo遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちmqo遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号2303130〜2304776に相
当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のマレート:キノンオキシドレダクターゼをコードするmqo遺伝子の欠損は、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。
具体的には、配列番号19と配列番号20のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-Km-attRを鋳型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。カナマイシン耐性を指標として選別した株がエシェリヒア・コリMG1655株のmqo遺伝子が欠損された株であることをPCRにより確認し、本株をMG1655 Δmqo::Kmと名づけた。
<1−11>エシェリヒア・コリMG1655株由来評価株の作成
EMC0株を親株とし、実施例<1−2>〜<1−10>にて構築した菌株を供与体として、形質導入とλファージ由来の切り出しシステムによる薬剤耐性遺伝子の除去を繰り返すことで、評価株を作成した。
形質導入は、P1kcファージを用い、Millerらの方法(Miller, J. H., Experiments in
molecular genetics. Cold Spring Harbor, N.Y: Cold Spring Harbor Laboratory; 1972, Generalized transduction: use of P1 in strain construction; pp. 201-205)に従
い、以下の手順で行った。
形質導入に用いるP1kcファージの調製は以下の手順で行った。実施例<1−2>にて作成したMG1655::ΔaceB P4071-aceA::KmΔaceK::tetを、3 mLの2.5 mM のCaCl2を含むL培
地で37℃で一晩培養した。3 mLのL培地+軟寒天(0.5% agar)に100μlの培養液とP1kcファージ液を添加し、2.5 mM CaCl2を含むLアガロースプレート(10 g/L Bacto trypton, 5 g/L Bacto Yeast extract, 5 g/L NaCl, 2 %アガロース)に重層した。軟寒天が固化した後、37℃で一晩培養した。プラークが生じた軟寒天上に5 mLのL培地を加え、寒天を破砕し
、増殖したファージを回収した。このL培地にクロロホルムを1 mL加えて穏やかに混合し
、15 min室温で静置した。遠心分離(4℃, 2,000×g, 5 min)により菌体および軟寒天を除去し、その上清を、0.45μmのアドバンテック東洋株式会社製セルロースアセテートタイ
プメンブレンフィルターにより処理し、ファージ懸濁液として回収した。
形質導入は以下の手順で行った。3 mLの2.5 mMのCaCl2を含むL培地で37℃で一晩培養したエシェリヒア・コリ MG1655株より育種した株をレシピエントの前培養液として用いた
。この前培養液100μlに、2.5 mMのCaCl2を含むL培地で1倍、もしくは10倍、もしくは100倍希釈したファージ懸濁液を100μl加え、37℃で20分保温した。ファージ粒子の吸着後、100μlの1 Mクエン酸三ナトリウムと、1 mLのL培地を加え、37℃で30分保温した。混合液を遠心分離(4℃, 5,000×g, 1 min)することで得られる菌体沈殿物を、40 mg/Lのカナ
マイシン及び25 mg/Lのテトラサイクリン塩酸塩を含むLBGM9アガロースプレートに塗布し、37℃で一晩培養した。形成したコロニーのうち、PCRにより、目的位置への遺伝子の形
質導入(ΔaceB P4071-aceA::KmΔaceK::tet)が確認された株を、形質導入体として得た。本株をEMC1.0::Km tetと名付けた。
形質導入を行った後、前記λファージ由来の切り出しシステムを利用し、薬剤耐性遺伝子を除去した。具体的には、EMC1.0::Km tetにヘルパープラスミドpMW-intxis-sacB(Cm)
を導入し、30℃で25 mg/Lのクロラムフェニコールを含むLBGM9プレート上にて平板培養し、クロラムフェニコール耐性株を選択した。次に、薬剤(抗生物質)を含まないLBGM9
プレート上で、42℃で2回継代し、得られたコロニーのクロラムフェニコール耐性、テトラサイクリン耐性、及びカナマイシン耐性を試験し、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、及びカナマイシン感受性株を取得した。得られた株のaceB遺伝子を含む領域に導入されたカナマイシン耐性遺伝子及びaceK遺伝子を含む領域に導入されたテトラサイクリン耐性遺伝子の欠失をPCRによって確認した。この株をEMC1.0と名づけた。
同様に、実施例<1−3>〜<1−10>にて作成した菌株(MG1655 ΔglcB::tet、MG1655 Δgcl::Cm、MG1655 ΔmaeA::tet、MG1655 ΔmaeB::Cm、MG1655 Δmdh::Km、MG1655 ΔprpCDE::Km、MG1655 P4071-dctA::Km、MG1655 Δmqo::Km)について、それぞれP1kcフ
ァージを作成し、形質導入と薬剤耐性遺伝子の除去を繰り返すことで評価株を作成した。
具体的には、MG1655 ΔglcB::tetを用いて作成したP1kcファージによりEMC1.0のglcB遺伝子を破壊し、薬剤耐性遺伝子を除去した株をEMC1.1と名付けた。
MG1655 Δgcl::Cmを用いて作成したP1kcファージによりEMC1.1のgcl遺伝子を破壊し、
薬剤耐性遺伝子を除去した株をEMC1.2と名付けた。
MG1655 ΔmaeA::tetを用いて作成したP1kcファージによりEMC1.2のmaeA遺伝子を破壊し、薬剤耐性遺伝子を除去した株をEMC1.3と名付けた。
MG1655 ΔmaeB::Cmを用いて作成したP1kcファージによりEMC1.3のmaeB遺伝子を破壊し
、薬剤耐性遺伝子を除去した株をEMC1.4と名付けた。
MG1655 Δmdh::Kmを用いて作成したP1kcファージによりEMC1.4のmdh遺伝子を破壊し、
薬剤耐性遺伝子を除去した株をEMC1.5と名付けた。
MG1655 Δgcl::Cmを用いて作成したP1kcファージによりEMC1.5のdctA遺伝子の上流にtac様プロモーター配列を挿入し、薬剤耐性遺伝子を除去した株をEMC1.6と名付けた。
MG1655 P4071-dctA::Kmを用いて作成したP1kcファージによりEMC1.6のprpCDE遺伝子を
破壊し、薬剤耐性遺伝子を除去した株をEMC1.62と名付けた。
MG1655 Δmqo::Kmを用いて作成したP1kcファージによりEMC1.62のmqo遺伝子を破壊し、薬剤耐性遺伝子を除去した株をEMC1.65と名付けた。
なお、薬剤耐性遺伝子の除去のためには、ヘルパープラスミドpMW-intxis-sacB(Cm)ま
たはpMW-intxis-sacB(Spc)を用いた。なお、pMW-intxis-sacB(Spc)を用いた場合は、30℃で25 mg/Lのスペクチノマイシン 二塩酸塩 五水和物を含むLBGM9プレート上にて一晩平板培養し、スペクチノマイシン耐性株を選択した後、薬剤を含まないLBGM9プレート上で、42℃で2回継代し、薬剤耐性遺伝子を除去した株を得た。
以上の手順により構築された評価株(「EMC系列株」ともいう)の株名及び遺伝子型を
表1に示す。
Figure 2016163540
<実施例2:イソクエン酸リアーゼの可逆性の確認>
<2−1>評価株の調製
EMC0及びEMC1.0を、それぞれLBGM9アガロースプレートに塗布し、37℃で一晩生育させ
た。菌体を1 mL滅菌水に回収し、菌体を滅菌水で2回洗浄後、100倍希釈のOD600が10とな
る菌体懸濁液を調製した。ここで評価株として用いたEMC0及びEMC1.0の特徴を表2に示す。
Figure 2016163540
<2−2>評価培地の調製
評価培地として、M9グルコース最少培地(5 g/Lグルコース、17.1 g/Lリン酸水素2ナ
トリウム、3.0 g/Lリン酸2水素カリウム、1.0 g/L塩化アンモニウム、0.5 g/L NaCl、0.25 g/L硫酸マグネシウム7水和物)を調製した。また、M9グルコース最少培地を元に、グ
リオキシル酸一水和物およびコハク酸二ナトリウムを最終濃度1 g/Lとなるように、片方
または両方加えた培地も調製した。また、M9グルコース最少培地を元に、グルタミン酸ナトリウムを最終濃度1 g/Lとなるように加えた培地も調製した。
<2−3>植菌・培養
上記の通り調製した培地5 mLに、OD600が10となる菌体懸濁液を5μL植菌した。培養は
、自動OD測定培養装置BIO-PHOTORECORDER TN-1506(ADVANTEC社)とその専用L字試験管を用い、660 nmの吸光度(OD660)を15分毎に記録しながら、37℃、70 rpmで振盪しながら
行った。
上記の条件で40時間培養を行った場合の、菌体生育の有無を表3に示す。表3では、菌体が生育しOD660が0.8以上であったものを「+++」、OD660が0.05以下で菌体の生育が
見られなかったものを「−」として表記した。EMC0及びEMC1.0は、添加物を含まない培地、グリオキシル酸のみを添加した培地、及びコハク酸のみを添加した培地では菌体の生育は見られず、グルタミン酸を添加した培地では菌体の生育が見られた。このことから、EMC0及びEMC1.0は、gltA欠損によりグルタミン酸要求性となっていることが確認された。また、グリオキシル酸及びコハク酸を添加した培地では、EMC0は菌体の生育が見られないものの、EMC1.0は菌体の生育がみられた。このことから、評価株EMC1.0では、グリオキシル酸とコハク酸からイソクエン酸リアーゼによりイソクエン酸が生成し、グルタミン酸要求性が相補されたものと考えられる。
Figure 2016163540
<実施例3:エシェリヒア・コリ由来スクシニルCoAシンターゼ遺伝子の発現プラスミド
の構築>
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、エシェリヒア・コリMG1655株のスクシニルCoAシンターゼをコードする遺伝子(以下、「sucCD遺伝子」と略することがある)の塩基配列も報告されて
いる。すなわちsucC遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号762237〜763403に相当する。また、sucD遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号763403〜764272に相当する。
エシェリヒア・コリ由来スクシニルCoAシンターゼ遺伝子の発現プラスミドは、以下の
通り、まずゲノムDNA上においてsucCD遺伝子にtac様プロモーター配列を連結し、次いで
、本ゲノムDNAを鋳型にしてPCRにより増幅したtac様プロモーター及びsucCD遺伝子を含むDNA断片をpMWプラスミドおよびpSTVプラスミドにクローニングすることにより、構築した。
<3−1>sucCD遺伝子上流へのtac様プロモーター配列の挿入
まず、実施例<1−2>と同様に、以下の手順により、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAにおいて、sucCD遺伝子の直前にtac様プロモーター配列を挿入した。
sucCD遺伝子の上流の配列とattL配列を有する合成オリゴヌクレオチド(配列番号23
)及びsucCD遺伝子の開始コドンより下流の配列とtac様プロモーターの一部に対応する配列を有する合成オリゴヌクレオチド(配列番号24)をプライマーに用いて、上記文献(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)において
最も発現強度が高いとされるtac様プロモーター配列(配列番号73)を有するP. ananatis SC17(0)株のゲノムDNAを鋳型としてPCRより増幅した断片を用いた。増幅したPCR産物
を常法により精製後、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を保持するエシェリ
ヒア・コリMG1655株にエレクトロポレーションにより導入した。次に、カナマイシン耐性となったエシェリヒア・コリMG1655株のsucCD遺伝子の直前にプロモーター配列が挿入さ
れていることをPCRによって確認した。本株より、sucCD遺伝子の直前にプロモーター配列が挿入されたゲノムDNAを常法により調製した。
<3−2>エシェリヒア・コリ由来スクシニルCoAシンターゼ遺伝子の発現プラスミドの
構築
実施例<3−1>で構築したsucCD遺伝子の直前にtac様プロモーター配列が挿入されたエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムを鋳型として、配列番号25および26の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCRを行い、tac様プロモーター及びsucCD遺伝子を含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片をBamHI及びEcoRIで切断し、pMW219及びpSTV29(タカラバイ
オ社製)のBamHI−EcoRI制限部位に挿入し、スクシニルCoAシンターゼ遺伝子発現用プラ
スミドを構築し、それぞれpMW-STKおよびpSTV-STKと名付けた。
<実施例4:エシェリヒア・コリ由来スクシニルCoAシンターゼ遺伝子への変異導入>
<4−1>エシェリヒア・コリ由来スクシニルCoAシンターゼ遺伝子への部位特異的変異
導入
エシェリヒア・コリ由来スクシニルCoAシンターゼ遺伝子への部位特異的変異導入は下
記の通り行った。pSTV-STKを鋳型とし、表4記載の配列番号のプライマーペアでPCRを行
った。PCR産物を制限酵素DpnIで処理して鋳型を分解後、エシェリヒア・コリJM109株コンピテントセルを形質転換し、クロラムフェニコール25μg/mLを含むLアガロースプレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをクロラムフェニコール25μg/mLを含むLアガロースプレートで37℃にて一晩培養し、生育した菌から常法によりプラスミドを回収し、DNA配列を確認して、sucCD遺伝子のDNA配列に目的の変異が正しく導入されたプラ
スミド(表4)を得た。
Figure 2016163540
<4−2>エシェリヒア・コリ由来スクシニルCoAシンターゼ遺伝子への二重変異の導入
以下の通り、pSTV-STKのsucCD遺伝子に、αサブユニット(sucD遺伝子によりコードさ
れる)の161番目のバリンがアラニンに置換され、βサブユニット(sucC遺伝子によりコ
ードされる)の271番目のグリシンがアラニンに置換される変異を導入した。
pSTV-STKのBamHI制限部位とEcoRI制限部位に挿入されたtac様プロモーターを連結したsucCD遺伝子において、上記の2つのアミノ酸置換を伴う変異が導入されるようなDNA配列
をデザインした。このようにしてデザインされたDNA配列を配列番号67に示す。配列番
号67のDNA配列は、pUC57プラスミドベクターのBamHI制限部位とEcoRI制限部位に挿入された形で合成した。本プラスミドから、BamHI制限部位とEcoRI制限部位を利用して、pSTV29にtac様プロモーターを連結した二重変異sucCD遺伝子を挿入した。このようにして得られたプラスミドをpSTV-STK(V161A, G271A:β)と名付けた。同プラスミドを「pSTV-STK**
」ともいう。
<実施例5:マレートチオキナーゼ遺伝子、マリルCoAリアーゼ遺伝子、スクシニルCoA:
マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子の発現プラスミドの構築>
<5−1>マレートチオキナーゼ遺伝子及びマリルCoAリアーゼ遺伝子の発現プラスミド
の構築
以下の手順により、メチロバクテリウム・エクストルクエンス、メソリゾビウム・ロティ、およびグラニュリバクター・ベセスデンシス由来の、マレートチオキナーゼ遺伝子とマリルCoAリアーゼ遺伝子を人工的にDNA合成することにより取得し、発現プラスミドを構築した。なお、各遺伝子配列は、エシェリヒア・コリにおいて高発現されるよう、エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変した。なお、遺伝子の由来となる上記各生物とエシェリヒア・コリにおいて、コドンと対応するアミノ酸の組み合わせは同じであるとされており、エシェリヒア・コリにおいて高発現されるよう、エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い各遺伝子配列を改変しても、改変前と同じアミノ酸配列を有するタンパク質が発現される。
メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株由来のマレートチオキナーゼをコード
するmtkAB遺伝子の上流にtacプロモーターとRBS配列(配列番号72)を連結し、HindIIIとSalI制限部位を5'末端に、PstIとEcoRI制限部位を3'末端に保有するDNA配列をデザインした。メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株由来のマリルCoAリアーゼをコードするmclA遺伝子の上流にtacプロモーターとRBS配列(配列番号72)を連結し、HindIII
とpstI制限部位を5'末端に、SalIとEcoRI制限部位を3'末端に保有するDNA配列をデザインした。その際、mtkA、mtkB、およびmclA遺伝子がエシェリヒア・コリにおいて高発現されるよう、エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従いDNA配列を改変した。また、DNA配列を改変した結果、合成するDNA配列には両端以外にHindIII、SalI、PstI、EcoRI制限部
位が生じないようにデザインした。このようにしてデザインされた、mclA遺伝子を含むDNA配列は配列番号39に、mtkAB遺伝子を含むDNA配列は配列番号40に示した。
配列番号39、及び配列番号40のDNA配列の合成は、タカラバイオ社に委託した。合
成された、tacプロモーター、RBS配列、及びメチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株由来のmclA遺伝子を含むDNA配列は、pTWV229のHindIII−EcoRI制限部位に挿入し、得
られたプラスミドをpTWV-MEX_Aと名付けた。合成された、tacプロモーター、RBS配列、及びメチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株由来のmtkAB遺伝子を含むDNA配列は、pHSG396のHindIII−EcoRI制限部位に挿入し、得られたプラスミドをpHSG-MEX_Kと名付けた。
続いて、pHSG-MEX_KをHindIIIおよびSalIで制限処理することによって開環し得られる
約4.5kbpのDNA断片と、pTWV-MEX_AをHindIIIおよびSalIで制限処理することによって得られる約1.0kbpのDNA断片を混合し、ライゲーション処理し、これらのDNA断片を連結した。本操作によってメチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株由来のmtkAB遺伝子とmclA遺伝子を同時に発現するプラスミドを得ることができる。本プラスミドを、pHSG396-MEX_AKと名付けた。
メソリゾビウム・ロティMAFF303099株、及び、グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株由来のmtkAB遺伝子及びmclA遺伝子の発現プラスミドについては、下記の方法により作成した。
メソリゾビウム・ロティMAFF303099株およびグラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のそれぞれに由来する遺伝子について、5'末端から順に、HindIII制限部位、tacプ
ロモーターとRBS配列(配列番号72)を連結したマリルCoAリアーゼをコードするmclA遺伝子、SalI制限部位、tacプロモーターとRBS配列(配列番号72)を連結したマレートチオキナーゼをコードするmtkAB遺伝子、EcoRI制限部位を有するDNA配列をデザインした。
その際、上述した各生物由来のmtkA、mtkB、およびmclA遺伝子がエシェリヒア・コリにおいて高発現されるよう、エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従いDNA配列を改変し
た。また、DNA配列を改変した結果、合成するDNA配列には両端以外にHindIII、SalI、EcoRI制限部位が生じないようにデザインした。このようにしてデザインされた、メソリゾビウム・ロティMAFF303099株由来のmclA遺伝子とmtkAB遺伝子を含むDNA配列を配列番号41に、グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株由来のmclA遺伝子とmtkAB遺伝子を含むDNA配列を配列番号42に示した。
配列番号41及び配列番号42のDNA配列の合成は、Genscript社に委託した。合成された配列番号41及び配列番号42のDNA断片をHindIII−EcoRI制限部位を用いてpHSG396にそれぞれ挿入した。このようにして得られた、メソリゾビウム・ロティMAFF303099株由来のmtkAB遺伝子及びmclA遺伝子の発現プラスミドをpHSG-MLO_AK、グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株由来のmtkAB遺伝子及びmclA遺伝子の発現プラスミドをpHSG-GRA_AKと名付けた。
メソリゾビウム・ロティMAFF303099株由来のmclA遺伝子のみを発現するプラスミドを作成するため、合成された配列番号41のDNA断片のHindIII制限部位とSalI制限部位の間に存在する、tacプロモーターとRBS配列を連結したmclA遺伝子を、pTWV229のHindIII制限部位とSalI制限部位の間に挿入した。得られたプラスミドを、pTWV-MLO_Aと名付けた。
<5−2>スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子発現プラスミドの構築
以下の手順により、クロロフレクサス・アウランチアクス、アキュミュリバクター・ホスファチス、マグネトスピリルム・マグネティカム、およびロドスピリルム・ルブラム由来のスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子を人工的にDNA合成することにより取得し、発現プラスミドを構築した。
クロロフレクサス・アウランチアクスJ-10-fl株由来のスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼをコードするsmtAB遺伝子(Ca_smtAB遺伝子)の上流にtacプロモーターとRBS配列(配列番号72)を連結し、SalI制限部位を5'末端に、EcoRI制限部位を3'末端に有するDNA配列をデザインした。その際、smtA及びsmtB遺伝子のDNA配列をエシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変した。また、DNA配列を改変した結果、合成するDNA配列には両端以外にHindIII、SalI、EcoRI、SphI、NdeI制限部位が生じないようにデザインした。このようにしてデザインされたDNA配列を配列番号43に示した。配列番号43のDNA配列の合成は、Genscript社に委託し、合成されたDNA断片をSalI−EcoRI制限部位を用
いてpSTV29に挿入した。この結果得られたCa_smtAB遺伝子の発現プラスミドをpSTV-Ca_T
と名付けた。
アキュミュリバクター・ホスファチス(候補株)clade IIAstr.. UW-1株由来のスクシ
ニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼをコードするsmtAB遺伝子(Ap_smtAB遺伝子)の上流にtacプロモーターとRBS配列(配列番号72)を連結し、BamHI制限部位を5'末端に
、EcoRI制限部位を3'末端に有するDNA配列をデザインした。その際、smtA及びsmtB遺伝子のDNA配列をエシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変した。また、DNA配列を改変した結果、合成するDNA配列には両端以外にHindIII、BamHI、EcoRI、SphI、NdeI制限部位が生じないようにデザインした。このようにしてデザインされたDNA配列を配列番号4
4に示した。配列番号44のDNA配列の合成は、Genscript社に委託し、合成されたDNA断
片をBamHI−EcoRI制限部位を用いてpSTV29に挿入した。この結果得られたAp_smtAB遺伝子の発現プラスミドをpSTV-Ap_Tと名付けた。
マグネトスピリルム・マグネティカムAMB-1株由来のスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼをコードするsmt遺伝子(Mm_smt遺伝子)の上流にtacプロモーターとRBS配
列(配列番号72)を連結し、SalI制限部位を5'末端に、EcoRI制限部位を3'末端に保有
するDNA配列をデザインした。その際、Mm_smt遺伝子のDNA配列をエシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変した。また、DNA配列を改変する際、合成するDNA配列には両端以外にHindIII、SalI、EcoRI、SphI、NdeI制限部位が生じないようにデザインした。このようにしてデザインされたDNA配列を配列番号45に示した。配列番号45のDNA配列の合成は、Genscript社に委託し、合成されたDNA断片をSalI−EcoRI制限部位を用いてpSTV29
およびpTWV229のそれぞれに挿入した。このようにして得られたpSTV29を由来とするMm_smt遺伝子の発現プラスミドをpSTV-Mm_T、pTWV229を由来とするMm_smt遺伝子の発現プラス
ミドをpTWV-Mm_Tと名付けた。
ロドスピリルム・ルブラムATCC 11170株由来のスクシニルCoA:マレートCoAトランスフ
ェラーゼをコードするsmt遺伝子(Rr_smt遺伝子)の上流にtacプロモーターとRBS配列(
配列番号72)を連結し、SalI制限部位を5'末端に、EcoRI制限部位を3'末端に保有するDNA配列をデザインした。その際、Rr_smt遺伝子のDNA配列をエシェリヒア・コリのコドン
使用頻度等に従い改変した。また、DNA配列を改変する際、合成するDNA配列には両端以外にHindIII、SalI、EcoRI、SphI、NdeI制限部位が生じないようにデザインした。このようにしてデザインされたDNA配列を配列番号46に示した。配列番号46のDNA配列の合成は、Genscript社に委託し、合成されたDNA断片をSalI−EcoRI制限部位を用いてpSTV29に挿
入した。この結果得られたRr_smt遺伝子の発現プラスミドをpSTV-Rr_Tと名付けた。
<実施例6:マレートチオキナーゼとマリルCoAリアーゼによるL−リンゴ酸を基質とし
たグリオキシル酸生成活性の測定>
<6−1>各生物由来のマレートチオキナーゼ遺伝子およびマリルCoAリアーゼ遺伝子導
入株の構築
マレートチオキナーゼとマリルCoAリアーゼによるL−リンゴ酸を基質としたグリオキ
シル酸生成活性の測定を行うために、EMC1.65にpHSG-MEX_AK、pHSG-MLO_AK、pHSG-GRA_AKをそれぞれ導入した株を構築した。コントロール株としてはEMC1.65にpHSG396を導入した株を構築した。なお、pHSG-MEX_AK、pHSG-MLO_AK、pHSG-GRA_AK、pHSG396はクロラムフェニコール耐性を付与するプラスミドであるため、クロラムフェニコール25μg/mLを含むLBGM9アガロースプレートを用いて、プラスミドが導入された株の選択を行った。
<6−2>細胞抽出液の調製
各株を、クロラムフェニコール25μg/mLを含むLBGM9培地3 mLで30℃にて一晩振とう培
養した。続いて、クロラムフェニコール25μg/mLを含むLBGM9培地50 mLに対して、培養液を500μL植菌し、振とう培養し、OD600が0.4〜0.6となったところで、遠心操作により集
菌した。集菌体を100 mMのリン酸カリウムバッファー(pH7.0)で2度洗菌し、5 mM MgCl2を含む50 mM Tris-HCl (pH7.5)液にて懸濁した。懸濁後の細胞を超音波破砕し、超遠心分離(4℃、53,000 rpm、1時間 (RP80AT, HITACHI-KOKI社製))後に得られる上清画分を細
胞抽出液として得た。得られた細胞抽出液のタンパク質濃度はブラッドフォード法により測定した。なお、集菌体を−80℃で保存する場合もある。
<6−3>活性測定
活性測定は、30℃にて、Beckman coulter DU-800 spectrometerを用い、分光学的に行
った。マレートチオキナーゼとマリルCoAリアーゼによるL−リンゴ酸を基質としたグリ
オキシル酸生成活性は、Louisの方法(Louis B. Hersh J Biol Chem. 1973 Nov 10; 248(21): 7295-303.)に従って測定した。具体的には、50 mM Tris-HCl (pH7.5)、50 mM KCl
、5 mM MgCl2、1.5 mM フェニルヒドラジン、および1 mM CoA Na、4 mM ATP Na2を含む測定液1 mLに、タンパク質量で50〜500μg分の細胞抽出液を混合した後、L−リンゴ酸2ナトリウムを最終濃度20mMとなるように添加した。L−リンゴ酸2ナトリウムを添加後の324 nmの吸光度の上昇と添加した細胞抽出液タンパク質量から求められる酵素活性値を表5に示した。
Figure 2016163540
マレートチオキナーゼ遺伝子及びマリルCoAリアーゼ遺伝子を導入した株で、マレート
チオキナーゼ及びマリルCoAリアーゼの連結酵素活性が検出された。また、メソリゾビウ
ム・ロティMAFF303099株由来のマレートチオキナーゼ遺伝子とマリルCoAリアーゼ遺伝子
を導入した株で最も高い活性が検出された。
<実施例7:エシェリヒア・コリ由来のスクシニルCoAシンターゼによるマレートチオキ
ナーゼ活性の確認>
<7−1>エシェリヒア・コリ由来のスクシニルCoAシンターゼ遺伝子発現増強株の構築
EMC1.65にpTWV-MEX_Aを導入した株を構築した。本株にpSTV-STKをさらに導入し、メチ
ロバクテリウム・エクストロクエンスAM1株由来のmclA遺伝子及びエシェリヒア・コリ由
来のスクシニルCoAシンターゼ遺伝子の発現が増強された株を構築した。また、EMC1.65にpTWV-MEX_Aを導入した株に、さらにpSTV29を導入したコントロール株を構築した。なお、pTWV-MEX_Aはアンピシリンを付与するプラスミドであり、pSTV29はクロラムフェニコール耐性を付与するプラスミドであるため、アンピシリンナトリウム100μg/mL及びクロラム
フェニコール25μg/mLを含むLBGM9アガロースプレートを用いて、プラスミドが導入され
た株の選択を行った。
<7−2>細胞抽出液の調製
実施例<7−1>にて構築した株から、細胞抽出液を実施例<6−2>と同様に調製した。但し、培地としては、アンピシリンナトリウム100μg/mL及びクロラムフェニコール25μg/mLを含むLBGM9培地を用いた。
<7−3>活性測定
活性測定は実施例<6−3>と同様にして行い、その結果を表6に示した。表6に示した通り、スクシニルCoAシンターゼ遺伝子の発現を増幅することで、マレートチオキナー
ゼ及びマリルCoAリアーゼの連結酵素活性が増大した。よって、スクシニルCoAシンターゼはマレートチオキナーゼ活性を有することが示された。
Figure 2016163540
<実施例8:エシェリヒア・コリ由来のスクシニルCoAシンターゼ遺伝子への変異導入に
よるマレートチオキナーゼ活性向上>
<8−1>エシェリヒア・コリ由来の変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子発現株の構

実施例<7−1>と同様に、EMC1.65にpTWV-MEX_Aを導入した株に、実施例<4−1>
及び実施例<4−2>にて作成した、エシェリヒア・コリ由来の各変異型スクシニルCoA
シンターゼ遺伝子の発現プラスミドを導入し、メチロバクテリウム・エクストロクエンスAM1株由来のmclA遺伝子及びエシェリヒア・コリ由来の各変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子を発現する株を構築した。
<8−2>細胞抽出液の調製
実施例<8−1>で作成した株から、細胞抽出液を実施例<7−2>と同様に調製した。但し、培地としては、アンピシリンナトリウム100μg/mL、及びクロラムフェニコール25μg/mLを含むLBGM9培地を用いた。
<8−3>活性測定
活性測定は実施例<6−2>と同様にして行い、その結果を表7に示した。表7に示した通り、スクシニルCoAシンターゼ遺伝子へアミノ酸置換を伴う変異を導入することで、
マレートチオキナーゼ活性が向上した。即ち、野生型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子導
入時(pSTV-STK)では43.8 nmol/min/mg protein(以下、mU)の活性であったものが、sucD遺伝子がコードするαサブユニットの124番目のプロリンがアラニンに置換された場合
(pSTV-STK(P124A))では52.4 mUに上昇し、sucD遺伝子がコードするαサブユニットの157番目のチロシンがグリシンに置換された場合(pSTV-STK(T157G))では90.4 mUに上昇し
、sucD遺伝子がコードするαサブユニットの161番目のバリンがアラニンに置換された場
合(pSTV-STK(V161A))では59.3 mUに上昇し、sucD遺伝子がコードするαサブユニットの97番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換された場合(pSTV-STK(E97D))では95. 3 mUに上昇し、sucC遺伝子がコードするβサブユニットの271番目のグリシンがアラニンに
置換された場合(pSTV-STK(G271A:β))では48 mUに上昇した。また、sucD遺伝子がコー
ドするαサブユニットの161番目のバリンがアラニンに置換され、sucC遺伝子がコードす
るβサブユニットの271番目のグリシンがアラニンに置換された場合(pSTV-STK(V161A, G271A:β))では、132 mUに上昇した。
Figure 2016163540
<実施例9:smtAB遺伝子導入株でのスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ活性の測定>
<9−1>Ca_smtAB遺伝子導入株およびAp_smtAB遺伝子導入株の構築
EMC1.65株にpSTV-Ca_TおよびpSTV-Ap_Tをそれぞれ導入した株を構築した。コントロー
ル株としてはEMC1.65株にpSTV29を導入した株を構築した。なお、pSTV29由来のプラスミ
ドはクロラムフェニコール耐性を付与するプラスミドであるため、クロラムフェニコール25μg/mLを含むLBGM9アガロースプレートを用いて、プラスミドが導入された株の選択を
行った。
<9−2>細胞抽出液の調製
実施例<9−1>にて作成された菌株、及び実施例<7−1>にて作成されたEMC1.65
にpTWV-MEX_Aを導入した株を、それぞれ実施例<6−2>と同様に培養し、菌体を回収した。但し、培地としては、EMC1.65にpTWV-MEX_Aを導入した株を培養する際にはアンピシ
リンナトリウム100μg/mLを含むLBGM9培地を用い、pSTV-Ca_T、pSTV-Ap_T、およびpSYV29のそれぞれを導入した株を培養する際にはクロラムフェニコール25μg/mLを含むLBGM9培
地を用いた。集菌体を100 mMのリン酸カリウムバッファー(pH7.0)で2度洗菌した後、4
mM MgCl2を含む50 mM MOPS-KOH (pH7.0)液にて懸濁した。懸濁後の細胞を超音波破砕し
、超遠心分離(4℃、53,000 rpm 1時間(RP80AT, HITACHI-KOKI社製))後に得られる上
清画分を細胞抽出液として得た。得られた細胞抽出液のタンパク質濃度はブラッドフォード法により測定した。なお、集菌体を−80℃で保存する場合もある。
<9−3>活性測定
スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼの活性は、Friedmannの方法 (Friedmann S. et al., (2006) J Bacteriol. 188(7):2646-55.)に従って測定した。具体的には
、200 mM MOPS-KOH (pH6.5)、5 mM MgCl2、3.5 mM phenylhydrazine、20 mM Malate Na2
を含む測定液500μlに、細胞抽出液を混合した後、Succinyl-CoA Naを最終濃度1 mMとな
るように添加した。細胞抽出液としては、pTWV-MEX_mclA導入株由来の細胞抽出液をタン
パク25μg分と、pSTV29、pSTV-Ca_smtAB、pSTV-Ap_smtABのそれぞれを導入した株由来の
細胞抽出液をタンパク500μg分とを添加した。Succinyl-CoA Naを添加後の324 nmの吸光度の上昇から求められるスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼの活性を表8に
示す。その結果、Ca_smtAB遺伝子導入株およびAp_smtAB遺伝子導入株において、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ活性が増大することが示された。
Figure 2016163540
<実施例10:smt遺伝子導入株でのスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ活性の測定>
<10−1>Mm_smt遺伝子導入株およびRr_smt遺伝子導入株の構築
実施例<7−1>にて作成されたEMC1.65にpTWV-MEX_Aを導入した株に、さらにpMW-STKを導入した株を構築した。本株は、カナマイシン40μg/mLを含むLBGM9アガロースプレー
トを用いて選択した。本株にさらに、pSTV-Mm_smtおよびpSTV-Rr_smtのそれぞれを導入した株を構築した。コントロール株として、pSTV29を導入した株を構築した。なお、これらの株は、100μg/mLのアンピシリン、40μg/mLのカナマイシン、および25μg/mLのクロラ
ムフェニコールを含むLBGM9アガロースプレートを用いて選択した。
<10−2>細胞抽出液の調製
実施例<6−2>と同様の操作により、細胞抽出液を調製した。但し、培地としては、100μg/mLのアンピシリンナトリウム、40μg/mLのカナマイシン、および25μg/mLのクロ
ラムフェニコールを含むLBGM9培地を用いた。
<10−3>活性測定
スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼの活性は、実施例<9−3>と同様に
測定した。活性値を表9に示す。その結果、Mm_smt遺伝子導入株およびRr_smt遺伝子導入株において、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ活性が増大することが示さ
れた。
Figure 2016163540
<実施例11:mclA遺伝子のゲノムへの導入>
以下の方法で、mclA遺伝子をエシェリヒア・コリEMC1.65のゲノム上に導入した。mclA
遺伝子をゲノム上で発現させるために、glcB遺伝子領域にpnlp8プロモーターとT7プロモ
ーター由来のRBS配列を連結したMLO_mclA遺伝子を導入した。
<11−1>pTWV-Km-pnlp8F10-MLO_Aの構築
pnlp8プロモーター(WO2010/027045)は、エシェリヒア・コリMG1655株のnlpD遺伝子のプロモーター領域の−10領域の塩基配列を置換することにより得られたプロモーターであり、遺伝子の発現量が向上したプロモーターである。
遺伝子の発現をさらに向上させることを目的として、以下の通り、pnlp8プロモーター
領域のシャインダルガルノ配列をT7プロモーターpET16bのシャインダルガルノ配列(F10
因子)に置換した、pnlp8F10を作成した。
具体的には、pMW-Km-Pnlp8(WO2010/027045)を鋳型とし、配列番号47及び配列番号
48のオリゴヌクレオチドを用いてPCRすることにより、attL-Km-attR配列とpnlp8F10配
列を含むDNA断片(attL-Km-attR-pnlp8F10)を取得した。attL-Km-attR-pnlp8F10断片を
常法により精製した。精製したattL-Km-attR-pnlp8F10断片を鋳型とし、配列番号49と
配列番号50のオリゴヌクレオチドを用いてPCRすることにより、DNA断片を増幅した。増幅されたDNA断片は、attL-Km-attR配列とpnlp8F10配列を含み、さらに、attL-Km-attR配
列の上流にpTWV229の一部に相補的な配列を、pnlp8F10配列の下流にMLO_mclA遺伝子配列
の開始コドンから20塩基に相補的な配列を保有する。一方で、pTWV-MLO_Aを鋳型とし、配列番号51と配列番号52のオリゴヌクレオチドを用いてPCRすることにより、DNA断片を増幅した。増幅されたDNA断片はtacプロモーター配列(配列番号72)を含まないpTWV-MLO_A全長の配列からなる。これら、2つの増幅DNA断片を混合し、In-Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社製)で連結した。連結産物でJM109を形質転換し、アンピシリン耐性コロニーを取得した。コロニーを形成した株より得られたプラスミドが、λファージ由来の切り出しシステムにより除去可能なKm耐性遺伝子と、pnlp8F10により発現されるメソリゾビウム・ロティMAFF303099株由来のmclA遺伝子を含む配列を有していることを確認した。本プラスミドをpTWV-Km-pnlp8F10-MLO_Aと名付けた。
<11−2>glcB遺伝子のpnlp8F10-MLO_Aによる置換
配列番号53、配列番号54に示したプライマーを用いて、プラスミドpTWV-Km-pnlp8F10-MLO_Aを鋳型としたPCRを行い、λファージ由来の切り出しシステムにより除去可能なKm耐性遺伝子と、pnlp8F10により発現されるMLO_mclA遺伝子を含むDNA断片を得た。本DNA
断片の両端には、glcB遺伝子の上流と下流に相同な配列が含まれる。本DNA断片を用い、
実施例<4−1>記載のRedドリブンインテグレーション法により、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノム上のglcB遺伝子領域を、λファージ由来の切り出しシステムにより除去
可能なKm耐性遺伝子と、pnlp8F10により発現されるMLO_mclA遺伝子を含む配列で置換した。得られた株を、MG1655ΔglcB::pnlp-8F10-MLO_A::Kmと名付けた。
<11−3>EMC1.65のglcB遺伝子のpnlp8F10-MLO_Aによる置換
実施例<1−11>に記載の方法により、MG1655ΔglcB::pnlp-8F10-MLO_A::Kmから得
られたP1kcファージを用いて、EMC1.65のglcB遺伝子領域をλファージ由来の切り出しシ
ステムにより除去可能なKm耐性遺伝子と、pnlp8F10により発現されるMLO_mclA遺伝子を含む配列で置換した。得られた株をEMC1.65A::Kmと名付けた。実施例<1−11>に記載の方法により、λファージ由来の切り出しシステムにより本株のカナマイシン耐性遺伝子を除去した株を構築し、EMC1.65Aと名付けた。
<実施例12:L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、およびイソクエン酸リアーゼを介したグルタミン酸生成の確認
<12−1>評価株の構築と調製
EMC1.65及びEMC1.65A株にpTWV229およびpTWV-Mm_Tのそれぞれを導入し、さらにpSTV29
およびpSTV-STK**のそれぞれを導入した評価株を構築した。
<12−2>評価培地の調製
評価培地として、5 g/Lグリセロール、17.1 g/Lリン酸水素2ナトリウム、3.0 g/Lリン酸2水素カリウム、1.0 g/L塩化アンモニウム、0.5 g/L NaCl、0.25 g/L硫酸マグネシウ
ム7水和物、0.1 g/Lリジン塩酸塩、0.1 g/Lジアミノピメリン酸、0.5 g/Lメチオニン、1
g/Lアスパラギン酸ナトリウム、8 g/L L−リンゴ酸二ナトリウム、2 g/Lコハク酸二ナ
トリウム、200 mM MOPS-KOH(pH7.0)、25μg/mLクロラムフェニコール、100μg/mLアンピ
シリンナトリウム)を調製した。
<12−3>植菌・培養
実施例<12−1>で構築した評価株を、クロラムフェニコール25μg/mL及びアンピシリンナトリウム100μg/mLを含むLBGM9-アガロースプレート培地上にて、37℃で、1晩生
育させた。菌体を回収して滅菌水で懸濁し、OD600が10の菌体懸濁液を調製した。
実施例<5−2>にて調製した培地5 mLに、上記菌体懸濁液を5μL植菌した。培養は、自動OD測定培養装置BIO-PHOTORECORDER TN-1506(ADVANTEC社)とその専用L字試験管を用い、30℃、70 rpmで振盪を行いながら、96時間行った。培養後、培地中に蓄積したL−グルタミン酸の濃度をバイオテックアナライザー AS-310(サクラエスアイ(株))により
分析した。
培養後の培養液に含まれていたL−グルタミン酸の量を表10に示した。その結果、対象株(EMC1.65/pSTV29, pTWV229)、変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子のみを導入した株(EMC1.65/pSTV-STK**, pTWV229)、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子のみを導入した株(EMC1.65/pSTV29, pTWV-Mm_T)、およびマリルCoAリアーゼ遺伝子のみを導入した株(EMC1.65A/pSTV29, pTWV229)では、全くグルタミン酸が生成されなかった。一方、マリルCoAリアーゼ遺伝子に加えて、変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子を導入した株(EMC1.65A/pSTV-STK**, pTWV229)、及びスクシニルCoA:マレートCoAト
ランスフェラーゼ遺伝子を導入した株(EMC1.65A/pSTV29, pTWV-Mm_T)では、グルタミン酸が蓄積した。これらのことから、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素及びマリ
ルCoAリアーゼにより生成されたグリオキシル酸がイソクエン酸リアーゼによりコハク酸
と縮合することでイソクエン酸を生成し、グルタミン酸が生成されたと考えられる。
Figure 2016163540
<実施例13:エシェリヒア・コリMG1655株由来のコハク酸生産株の構築>
実施例<12−3>の結果から、L−リンゴ酸とコハク酸から、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素、マリルCoAリアーゼ、及びイソクエン酸リアーゼを介して、グルタミン酸が効率よく生成されることが示された。そこで、次に、有用物質の生産に一般的に用いられる炭素源である、グルコースなどの糖やグリセロールなどのアルコールをもとに、本代謝経路を介してグルタミン酸が効率よく生成される菌株を構築した。
グルコースなどの糖やグリセロールなどのアルコールをもとに、本代謝経路を介してグルタミン酸を効率よく生成するためには、それらの炭素源から還元的TCAサイクルを介し
てコハク酸とL−リンゴ酸が効率的に生成される菌株を用いることが望ましい。
例えば、エシェリヒア・コリMG1655株より育種された菌株を用いることで、有用物質の生産に一般的に用いられる炭素源である、グルコースなどの糖やグリセロールなどのアルコールをもとに、L−リンゴ酸とコハク酸を効率的に生成することは可能である。例えば、WO2006/034156では、副生物である乳酸、酢酸、およびエタノールなどの生合成経路を
遮断することでコハク酸を効率的に生成させることが示されている。乳酸生合成経路を遮
断するとは、具体的には、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldhA遺伝子を欠損することである。酢酸生合成経路を遮断するとは、具体的には、例えば、ピルビン酸オキシダーゼをコードするpoxB遺伝子、アセテートキナーゼをコードするackA遺伝子、ホスホトランスアセチラーゼをコードするpta遺伝子を欠損することである。エタノール生合成
経路を遮断するとは、具体的には、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼをコードするadhE遺伝子を欠損することである。
また、エシェリヒア・コリMG1655株より育種された菌株を用いてL−グルタミン酸を生産するには、グルタミン酸排出系の発現を増強することが望ましい。グルタミン酸排出系の発現を増強するとは、具体的には、例えば、ybjL遺伝子の発現を増強することである(WO2008/133161)。
上記の知見をもとに、実施例1で作成したEMC1.4より、以下の通り、コハク酸とL−リンゴ酸が効率的に生成される菌株を構築した。
<13−1>adhE遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、アルコールデヒドロゲナーゼをコードするadhE遺伝子の塩基
配列も報告されている。すなわちadhE遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号1294669〜1297344に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のアルコールデヒドロゲナーゼをコードするadhE遺伝子の欠損は、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号55と配列番号56のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-tc-attRを
鋳型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。adhE遺伝子が欠損された株をMG1655 ΔadhE::tetと名づけた。
<13−2>ldhA遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldhA遺伝子の塩基配列も
報告されている。すなわちldhA遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号1439878〜1440867に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株の乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldhA遺伝子の欠損株としてはWO2008/153116に開示されているものを用いた。具体的には、WO/2008/153116記
載のMG1655ΔsucAΔldhA株を作成する過程で作成された、λファージ由来の切り出しシステムにより除去可能なクロラムフェニコール耐性遺伝子(attL-cm-attR)でldhA遺伝子が置換された株を用いた。本株をMG1655 ΔsucAΔldhA::cmと名づけた。
<13−3>poxB遺伝子欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、ピルビン酸オキシダーゼをコードするpoxB遺伝子の塩基配列
も報告されている。すなわちpoxB遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号908554〜910272に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のピルビン酸オキシダーゼをコードするpoxB遺伝子の欠損は、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号57と配列番号58のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-tc-attRを鋳型
とし、PCRにより増幅した断片を用いた。poxB遺伝子が欠損された株をMG1655 ΔpoxB::tetと名づけた。
<13−4>ybjL遺伝子発現増強株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、グルタミン酸排出担体をコードするybjL遺伝子の塩基配列も
報告されている。すなわちybjL遺伝子はGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の塩基番号887357〜88904に相当する。
エシェリヒア・コリMG1655株のグルタミン酸排出担体をコードするybjL遺伝子<WO2008/133161>の遺伝子発現増強は、実施例<1−2>記載のRedドリブンインテグレーション
法で行った。具体的には、配列番号59と配列番号60のオリゴヌクレオチドを用いて、上記文献(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574
)において最も発現強度の高いとされるtac様プロモーター配列を有するP. ananatis SC17(0)株のゲノムDNAを鋳型として、PCRにより増幅した断片を用いた。ybjL遺伝子発現が増強された株をMG1655 P4071-ybjL::Kmと名づけた。
<13−5>gltA遺伝子、sdhABCD遺伝子、およびsucAB遺伝子の欠損、ならびにsucCD遺
伝子の発現増強株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、クエン酸シンターゼをコードするgltA遺伝子、コハク酸デヒ
ドロゲナーゼをコードするsdhCDAB遺伝子、2−オキソグルタル酸デカルボキシラーゼを
コードするsucA遺伝子、ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼをコードするsucB遺伝子、スクシニルCoAシンターゼをコードするsucCD遺伝子の塩基配列も報告されている。これらの遺伝子はエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムにおいて連続して存在する。すなわち、GenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列において、gltA遺伝子は塩基番号752408〜753691に、sdhCDAB遺伝子は塩基番号754400〜757628に、sucA遺伝子は塩基番号757929〜760730に、sucB遺伝子は塩基番号760745〜761962に、sucC遺伝子は塩基番号762237〜763403に、sucD遺伝子は塩基番号763403〜764272に
、それぞれ相当する。
なお、gltA遺伝子とそのほかの遺伝子は逆向きで存在し、gltA遺伝子とsdhA遺伝子は開始コドン同士を互いに向けて存在している。そのため、gltA遺伝子の下流の配列とattL配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号61)、及びsucCD遺伝子の開始コドンより下
流の配列とtac様プロモーターの一部に対応する配列を有するオリゴヌクレオチド(配列
番号62)を用いて、上記文献(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)のSEQ ID No.20の−35領域を有するtac様のプロモーター配列を有する菌株のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。当該tac様のプロモーター配列の−35領
域から、リボソーム結合部位(RBS)を含む開始コドンまでのDNA配列を配列番号74
に示した。PCRにより増幅した断片を用い、実施例<1−2>記載のRedドリブンインテグレーション法で、gltA遺伝子、sdhABCD遺伝子、sucAB遺伝子が欠損され、sucCD遺伝子発
現が増強された株を構築した。構築された株を、MG1655ΔgltA-sucABP4074-sucCD::Kmと
名付けた。
<13−6>ackA遺伝子とpta遺伝子の欠損株の構築
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number NC_000913.3)、酢酸キナーゼをコードするackA遺伝子とリン酸アセチルトラ
ンスフェラーゼをコードするpta遺伝子の塩基配列も報告されている。すなわちGenBank accession number NC_000913.3に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列において
、ackA遺伝子は塩基番号2411492〜 2412694に、pta遺伝子は241276〜2414913に相当する
エシェリヒア・コリMG1655株の酢酸キナーゼをコードするackA遺伝子とリン酸アセチルトランスフェラーゼをコードするpta遺伝子はゲノム上において連続して存在する。これ
らの遺伝子を含む領域の欠損は、実施例<1−1>記載のRedドリブンインテグレーション法で行った。具体的には、配列番号63と配列番号64のオリゴヌクレオチドを用いて、pMW118-attL-Km-attRを鋳型とし、PCRにより増幅した断片を用いた。ackA遺伝子とpta遺
伝子を含む領域が欠損された株をMG1655 ΔackA-pta::Kmと名づけた。
<13−7>エシェリヒア・コリMG1655株由来のコハク酸生産株の構築
EMC1.4株をレシピエントとし、実施例<13−1>〜実施例<13−6>にて構築
した菌株を供与体として、形質導入を順に行うことで評価株を作成した。形質導入は、実施例<1−11>と同様に、P1kcファージを用いて行い、薬剤耐性遺伝子の除去にはヘルパープラスミドpMW-intxis-sacB(Cm)またはpMW-intxis-sacB(Spc)を用いた。結果として
作成された株をEMSF株と名付けた。EMSF株の遺伝子型は、MG1655ΔgltA ΔsdhABCD ΔsucAB P4074-sucCD ΔaceB-P4071-aceA ΔaceK ΔglcB ΔgclA ΔmaeA ΔmaeB ΔldhA P4071-ybjL ΔadhE ΔackA-pta ΔpoxBである。
<実施例14:ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(ppc)への脱感作変
異導入>
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)の活性は、コハク酸生合成経路の中間産物であるL−リンゴ酸により阻害される(Masato Yano and Katsura Izui, Eur. Biochem. FEBS, 247, 74-81, 1997)。L−リンゴ酸による阻害は、例えば、PEPCに1アミ
ノ酸置換による脱感作変異を導入することにより低減することができる。1アミノ酸置換
による脱感作変異としては、具体的には、例えば、エシェリヒア・コリ由来のPEPCタンパク質の620番目のアミノ酸をリジンからセリンへ置換する変異が挙げられる(同文献)。
RSFPPG(WO2008/020654)は、メチルクエン酸シンターゼをコードするprpC遺伝子、PEPCをコードするppc遺伝子、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードするgdh遺伝子を搭載したプラスミドである。これらの遺伝子の内、PEPCをコードするppc遺伝子に上記の
脱感作変異を導入した。具体的に以下に方法を示す。
RSFPPGを鋳型として、配列番号65と配列番号66の合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして、PCRを行い、PEPCタンパク質の620番目のアミノ酸がリジンからセリンへ
置換されたPEPC遺伝子を含むRSFPPG全長を増幅した。得られたPCR産物をDpnIで処理し、JM109を形質転換し、テトラサイクリン耐性コロニーを取得した。コロニーを形成した株より得られたプラスミドに、目的の変異が導入されていることを確認した。このようにして得られた、PEPC遺伝子への脱感作変異が導入されたRSFPPGをRSFPP*Gと名付けた。
<実施例15:マレートチオキナーゼ及びマリルCoAリアーゼ活性を向上させたエシェリ
ヒア・コリ評価株による糖からのグルタミン酸生産>
<15−1>エシェリヒア・コリ評価株の構築
実施例<13−7>にて作成したコハク酸生産株であるEMSF株のコンピテントセルを常法に従って作製し、RSFPP*Gにて形質転換し、37℃で25 mg/Lのテトラサイクリン塩酸塩を含むLBGM9アガロースプレート培地上にて平板培養し、テトラサイクリン耐性株を選択し
た。ここで得られたテトラサイクリン耐性株のコンピテントセルを常法に従って作製し、さらにpHSG396およびpHSG-MLO_AKのそれぞれにて形質転換し、37℃で25 mg/Lのテトラサ
イクリン塩酸塩及び25 mg/Lのクロラムフェニコールを含むLBGM9-アガロースプレート培
地上にて平板培養し、生育した株を評価株とした。評価株を表11に示す。
Figure 2016163540
<15−2>マレートチオキナーゼ及びマリルCoAリアーゼ活性を向上させたエシェリヒ
ア・コリ評価株による糖からのグルタミン酸生産
実施例<15−1>にて作成した評価株を、25μg/mLのテトラサイクリンと25μg/mLのクロラムフェニコールを含むLBGM9アガロースプレートにて30℃で18時間培養した。得ら
れた菌体を全量、以下に示す組成の種培養培地300mLを注入した1L容ジャーファーメンタ
ーに植菌した。
[種培養培地組成]
20 g/L Bacto trypton、10 g/L Bacto Yeast extract、10 g/L NaCl、6 %グルコース、0.05 %硫酸マグネシウム7水和物、1.72 %リン酸水素2ナトリウム12水和物、0.3 %リン酸2
水素カリウム、0.1 %塩化アンモニウム、2 %アガロース、0.4 g/Lリジン塩酸塩、0.4 g/Lジアミノピメリン酸、0.4 g/Lメチオニン、25 mg/Lテトラサイクリン塩酸塩、25 mg/Lク
ロラムフェニコール、0.1 mL/L GD-113(消泡剤)
温度30℃、通気1 VVM、撹拌700 rpmで、アンモニアでpHを7.0に制御し、18時間培養を
行った後、通気のうち、80 %を窒素ガスに切り替え、撹拌を500 rpmに低下させ、さらに5時間培養を行った。
種培地中に生育した菌体を遠心操作により回収し、以下に示す組成の本培養培地10 mL
で洗菌した後、本培養培地60 mLで懸濁し、種菌体懸濁液を得た。本培養培地80 mLを注入した100 mL容ジャーファーメンターに、種菌体懸濁液を20 mL植菌した。
[本培養培地組成]
50 g/Lグルコース, 0.4 g/L MgSO4, 0.1 mL/L GD-113(消泡剤), 4 g/L (NH4)2S04, 2 g/L
KH2PO4, 4 g/Lイーストエキストラクト, 10 mg/L FeSO4・7H20, 10 mg/L MnSO4・4〜5H20, O.4 g/L L-リジン, 0.4 g/L DL-メチオニン, 0.4 g/L ジアミノピメリン酸, 25 mg/L テトラサイクリン, 25 mg/L クロラムフェニコール
本培養は、温度30℃、撹拌700 rpmで、アンモニアでpHを7.0に制御して行った。また、窒素ガス10 mL/min、空気40 mL/min、二酸化炭素ガス50 mL/minの条件で通気を行った。
培地中のグルコース濃度と蓄積したL−グルタミン酸の濃度をバイオテックアナライザー AS-310(サクラエスアイ(株))により分析した。
本培養を27時間行った後に、培養液中に蓄積したグルタミン酸濃度を表12に示した。なお、27時間行った後の培養液中のグルコースは完全に消費されていた。マレートチオキナーゼ遺伝子及びマリルCoAリアーゼ遺伝子を導入した株(EC/mtk mclA)では、対象株(EC/Vec)よりも多くのグルタミン酸を蓄積し、高い対糖収率でグルタミン酸を生成することが示された。
Figure 2016163540
<実施例16:エシェリヒア・コリ評価株における、糖からのグルタミン酸生産に対する変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子、マリルCoAリアーゼ遺伝子の導入効果>
<16−1>EMSF株へのmclA遺伝子のゲノム固定化
実施例<11−3>に記載の方法により、MG1655ΔglcB::pnlp-8F10-MLO_A::Kmから得
られたP1kcファージを用いて、mclA遺伝子をEMSF株のゲノム上に導入した。EMSF株のglcB遺伝子はすでに破壊されているが、本操作により、glcB遺伝子領域が、λファージ由来の切り出しシステムにより除去可能なKm耐性遺伝子と、pnlp8F10により発現されるMLO_mclA遺伝子を含む配列に置換された株を得た。本株より、実施例<1−1>に記載された方法により、λファージ由来の切り出しシステムにより、カナマイシン耐性遺伝子を除去した株を作成し、EMSFA株と名付けた。
<16−2>エシェリヒア・コリ評価株の構築
EMSF株のコンピテントセルを常法に従って作製し、RSFPP*Gにて形質転換し、37℃で25 mg/Lのテトラサイクリン塩酸塩を含むLBGM9アガロースプレートにて平板培養し、テトラ
サイクリン耐性株を選択した。ここで得られたテトラサイクリン耐性株のコンピテントセルを常法に従って作製し、pSTV29にて形質転換し、37℃で25 mg/Lのテトラサイクリン塩
酸塩及び25 mg/Lのクロラムフェニコールを含むLBGM9アガロースプレートにて平板培養し、生育した株を評価株とした。また、同様にEMSFA株にRSFPP*Gを導入した株に、さらにpSTV29、pSTVSTK**、およびpSTV-Mm_Tのそれぞれを導入し、評価株とした。評価株を表13に示す。
Figure 2016163540
<16−3>変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子、スクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子、マリルCoAリアーゼ遺伝子を導入したエシェリヒア・コリ評価株に
おける糖からのグルタミン酸生産
実施例<16−2>にて作成した評価株を、25μg/mLのテトラサイクリンと25μg/mLのクロラムフェニコールを含むLBGM9アガロースプレートにて30℃で18時間培養した。得ら
れた菌体を全量、以下に示す組成の種培養培地300 mLを注入した1 L容ジャーファーメン
ターに植菌した。
[種培養培地組成]
20 g/L Bacto trypton、10 g/L Bacto Yeast extract、10 g/L NaCl、6 %グルコース、0.05 %硫酸マグネシウム7水和物、1.72 %リン酸水素2ナトリウム12水和物、0.3 %リン酸2
水素カリウム、0.1 %塩化アンモニウム、2 %アガロース、0.4 g/Lリジン塩酸塩、0.4 g/Lジアミノピメリン酸、0.4 g/Lメチオニン、25 mg/Lテトラサイクリン塩酸塩、25 mg/Lク
ロラムフェニコール、0.1 mL/L GD-113(消泡剤)
温度30℃、通気1 VVM、撹拌700 rpmで、アンモニアでpHを7.0に制御し、18時間培養を
行った後、通気のうち、80 %を窒素ガスに切り替え、撹拌を500 rpmに低下させ、さらに5時間培養を行った。
種培地中に生育した菌体を遠心操作によりそれぞれ回収し、以下に示す組成の本培養培地50 mLで洗菌した後、本培養培地で懸濁し、種菌体懸濁原液を得た。この種菌体懸濁原
液を100倍希釈した液体の波長600 nmの吸光度を分光光度計U-2900(日立)により測定し
、得られた結果から各菌体懸濁原液を、波長600 nmの吸光度が106となるように希釈し、
種菌体懸濁液を得た。本培養培地70 mLを注入した100 mL容ジャーファーメンターに、種
菌体懸濁液を30 mL植菌した。
[本培養培地組成]
50 g/Lグルコース, 0.4 g/L MgSO4, 0.1 mL/L GD-113(消泡剤), 4 g/L (NH4)2S04, 2 g/L
KH2PO4, 4 g/Lイーストエキストラクト, 10 mg/L FeSO4・7H20, 10 mg/L MnSO4・4〜5H20, O.4 g/L L-リジン, 0.4 g/L DL-メチオニン, 0.4 g/L ジアミノピメリン酸, 25 mg/L テトラサイクリン, 25 mg/L クロラムフェニコール
本培養は、温度30℃、撹拌700 rpmで、アンモニアでpHを7.0に制御して行った。また、窒素ガス10 mL/min、空気40 mL/min、二酸化炭素ガス50 mL/minの条件で通気を行った。
培地中のグルコース濃度と蓄積したL−グルタミン酸の濃度をバイオテックアナライザー AS-310(サクラエスアイ(株))により分析した。
本培養を42時間行った後に、培養液中に蓄積したグルタミン酸濃度を表14に示した。なお、42時間行った後の培養液中のグルコースは完全に消費されていた。マリルCoAリア
ーゼ遺伝子を導入した株(EC+mclA/pSTV)は、対象株(EC/pSTV)よりも多くのグルタミ
ン酸を蓄積し、高い対糖収率でグルタミン酸を生成することが示された。また、マリルCoAリアーゼ遺伝子を導入した株に、さらに変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子またはスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子を導入することで、より多くのグル
タミン酸が蓄積した(EC+mclA/stk**およびEC+mclA/smt)。これらのことから、マリルCoAリアーゼ遺伝子を導入した株に変異型スクシニルCoAシンターゼ遺伝子またはスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼ遺伝子を導入することで、高い対糖収率でグルタミ
ン酸が生成されることが示された。
Figure 2016163540
<配列表の説明>
配列番号1〜38:プライマー
配列番号39:エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変されたメチロバクテリ
ウム・エクストルクエンスAM1株由来のmclA遺伝子を含むDNA断片の塩基配列
配列番号40:エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変されたメチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株由来のmtkAB遺伝子を含むDNA断片の塩基配列
配列番号41:エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変されたメソリゾビウム・ロティMAFF303099株由来のmclA遺伝子とmtkAB遺伝子を含むDNA断片の塩基配列
配列番号42:エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変されたグラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株由来のmclA遺伝子とmtkAB遺伝子を含むDNA断片の塩基配

配列番号43:エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変されたCa_smtAB遺伝子を含むDNA断片の塩基配列
配列番号44:エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変されたAp_smtAB遺伝子を含むDNA断片の塩基配列
配列番号45:エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変されたMm_smt遺伝子を含むDNA断片の塩基配列
配列番号46:エシェリヒア・コリのコドン使用頻度等に従い改変されたRr_smt遺伝子遺伝子を含むDNA断片の塩基配列
配列番号47〜66:プライマー
配列番号67:二重変異sucCD遺伝子を含むDNA断片の塩基配列
配列番号68〜71:プライマー
配列番号72:PLtacプロモーター
配列番号73、74:tac様プロモーター
配列番号75:メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のmtkA遺伝子の塩基配列
配列番号76:メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のMtkAタンパク質のアミ
ノ酸配列
配列番号77:メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のmtkB遺伝子の塩基配列
配列番号78:メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のMtkBタンパク質のアミ
ノ酸配列
配列番号79:メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のmtkA遺伝子の塩基配列
配列番号80:メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のMtkAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号81:メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のmtkB遺伝子の塩基配列
配列番号82:メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のMtkBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号83:グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のmtkA遺伝子の塩基配列
配列番号84:グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のMtkAタンパク質のアミ
ノ酸配列
配列番号85:グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のmtkB遺伝子の塩基配列
配列番号86:グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のMtkBタンパク質のアミ
ノ酸配列
配列番号87:E. coli MG1655のsucC遺伝子の塩基配列
配列番号88:E. coli MG1655のSucCタンパク質のアミノ酸配列
配列番号89:E. coli MG1655のsucD遺伝子の塩基配列
配列番号90:E. coli MG1655のSucDタンパク質のアミノ酸配列
配列番号91:Pantoea ananatis AJ13355のsucC遺伝子の塩基配列
配列番号92:Pantoea ananatis AJ13355のSucCタンパク質のアミノ酸配列
配列番号93:Pantoea ananatis AJ13355のsucD遺伝子の塩基配列
配列番号94:Pantoea ananatis AJ13355のSucDタンパク質のアミノ酸配列
配列番号95:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のsucC遺伝子の塩基配列
配列番号96:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のSucCタンパク質のアミノ酸配列配列番号97:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のsucD遺伝子の塩基配列
配列番号98:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のSucDタンパク質のアミノ酸配列配列番号99:クロロフレクサス・アウランチアクスJ-10-fl株のCa_smtA遺伝子の塩基配

配列番号100:クロロフレクサス・アウランチアクスJ-10-fl株のCa_SmtAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号101:クロロフレクサス・アウランチアクスJ-10-fl株のCa_smtB遺伝子の塩基配列
配列番号102:クロロフレクサス・アウランチアクスJ-10-fl株のCa_SmtBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号103:アキュミュリバクター・ホスファチス(候補株)clade IIAstr.. UW-1
株のAp_smtA遺伝子の塩基配列
配列番号104:アキュミュリバクター・ホスファチス(候補株)clade IIAstr.. UW-1
株のAp_SmtAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号105:アキュミュリバクター・ホスファチス(候補株)clade IIAstr.. UW-1
株のAp_smtB遺伝子の塩基配列
配列番号106:アキュミュリバクター・ホスファチス(候補株)clade IIAstr.. UW-1
株のAp_SmtBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号107:ロドスピリルム・ランバムATCC 11170株のMm_smt遺伝子の塩基配列
配列番号108:ロドスピリルム・ランバムATCC 11170株のMm_Smtタンパク質のアミノ酸配列
配列番号109:マグネトスピリルム・マグネティカムAMB-1株のRr_smt遺伝子の塩基配

配列番号110:マグネトスピリルム・マグネティカムAMB-1株のRr_Smtタンパク質のア
ミノ酸配列
配列番号111:メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のmclA遺伝子の塩基配

配列番号112:メチロバクテリウム・エクストルクエンスAM1株のMclAタンパク質のア
ミノ酸配列
配列番号113:メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のmclA遺伝子の塩基配列
配列番号114:メソリゾビウム・ロティMAFF303099株のMclAタンパク質のアミノ酸配列配列番号115:グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のmclA遺伝子の塩基配

配列番号116:グラニュリバクター・ベセスデンシスCGDNIH1株のMclAタンパク質のア
ミノ酸配列
配列番号117:E. coli MG1655のaceA遺伝子の塩基配列
配列番号118:E. coli MG1655のAceAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号119:Pantoea ananatis AJ13355のaceA遺伝子の塩基配列
配列番号120:Pantoea ananatis AJ13355のAceAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号121:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のICL1遺伝子の塩基配列
配列番号122:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のICL1がコードするタンパク質のアミノ酸配列
配列番号123:E. coli MG1655のaceB遺伝子の塩基配列
配列番号124:E. coli MG1655のAceBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号125:Pantoea ananatis AJ13355のaceB遺伝子の塩基配列
配列番号126:Pantoea ananatis AJ13355のAceBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号127:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のaceB遺伝子の塩基配列
配列番号128:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のAceBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号129:E. coli MG1655のptsG遺伝子の塩基配列
配列番号130:E. coli MG1655のPtsGタンパク質のアミノ酸配列
配列番号131:Pantoea ananatis AJ13355のptsG遺伝子の塩基配列
配列番号132:Pantoea ananatis AJ13355のPtsGタンパク質のアミノ酸配列
配列番号133:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のptsG1遺伝子の塩基配列
配列番号134:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のptsG1がコードするタンパク
質のアミノ酸配列
配列番号135:E. coli MG1655のldhA遺伝子の塩基配列
配列番号136:E. coli MG1655のLdhAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号137:Pantoea ananatis AJ13355のldhA遺伝子の塩基配列
配列番号138:Pantoea ananatis AJ13355のLdhAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号139:E. coli MG1655のadhE遺伝子の塩基配列
配列番号140:E. coli MG1655のAdhEタンパク質のアミノ酸配列
配列番号141:Pantoea ananatis AJ13355のadhE遺伝子の塩基配列
配列番号142:Pantoea ananatis AJ13355のAdhEタンパク質のアミノ酸配列
配列番号143:E. coli MG1655のpta遺伝子の塩基配列
配列番号144:E. coli MG1655のPtaタンパク質のアミノ酸配列
配列番号145:Pantoea ananatis AJ13355のpta遺伝子の塩基配列
配列番号146:Pantoea ananatis AJ13355のPtaタンパク質のアミノ酸配列
配列番号147:E. coli MG1655のpflB遺伝子の塩基配列
配列番号148:E. coli MG1655のPflBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号149:E. coli MG1655のpflD遺伝子の塩基配列
配列番号150:E. coli MG1655のPflDタンパク質のアミノ酸配列
配列番号151:E. coli MG1655のtdcE遺伝子の塩基配列
配列番号152:E. coli MG1655のTdcEタンパク質のアミノ酸配列
配列番号153:Pantoea ananatis AJ13355のpflB遺伝子の塩基配列
配列番号154:Pantoea ananatis AJ13355のPflBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号155:Pantoea ananatis AJ13355のsucA遺伝子の塩基配列
配列番号156:Pantoea ananatis AJ13355のSucAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号157:Pantoea ananatis AJ13355のsucB遺伝子の塩基配列
配列番号158:Pantoea ananatis AJ13355のSucBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号159:Pantoea ananatis AJ13355のlpdA遺伝子の塩基配列
配列番号160:Pantoea ananatis AJ13355のLpdAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号161:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のodhA遺伝子の塩基配列
配列番号162:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のE1oサブユニットアミノ酸配

配列番号163:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のlpd遺伝子の塩基配列
配列番号164:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のE3サブユニットアミノ酸配列配列番号165:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のNCgl2126の塩基配列
配列番号166:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のNCgl2126がコードするタンパク質アミノ酸配列
配列番号167:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のICL2遺伝子の塩基配列
配列番号168:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のICL2がコードするタンパク質のアミノ酸配列
配列番号169:Corynebacterium glutamicum 2256のICL1遺伝子の塩基配列
配列番号170:Corynebacterium glutamicum 2256のICL1がコードするタンパク質のア
ミノ酸配列
配列番号171:Corynebacterium glutamicum 2256のICL2遺伝子の塩基配列
配列番号172:Corynebacterium glutamicum 2256のICL2がコードするタンパク質のア
ミノ酸配列
配列番号173:E. coli MG1655のglcB遺伝子の塩基配列
配列番号174:E. coli MG1655のGlcBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号175:Corynebacterium glutamicum 2256のaceB遺伝子の塩基配列
配列番号176:Corynebacterium glutamicum 2256のAceBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号177:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のptsG2遺伝子の塩基配列
配列番号178:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のptsG2がコードするタンパク
質のアミノ酸配列
配列番号179:Corynebacterium glutamicum 2256のptsG1遺伝子の塩基配列
配列番号180:Corynebacterium glutamicum 2256のptsG1がコードするタンパク質のアミノ酸配列
配列番号181:Corynebacterium glutamicum 2256のptsG2遺伝子の塩基配列
配列番号182:Corynebacterium glutamicum 2256のptsG2がコードするタンパク質のアミノ酸配列
配列番号183:Corynebacterium glutamicum 2256のsucC遺伝子の塩基配列
配列番号184:Corynebacterium glutamicum 2256のSucCタンパク質のアミノ酸配列
配列番号185:Corynebacterium glutamicum 2256のsucD遺伝子の塩基配列
配列番号186:Corynebacterium glutamicum 2256のSucDタンパク質のアミノ酸配列
配列番号187:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のldh遺伝子の塩基配列
配列番号188:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のLdhタンパク質のアミノ酸配

配列番号189:Corynebacterium glutamicum 2256のldh遺伝子の塩基配列
配列番号190:Corynebacterium glutamicum 2256のLdhタンパク質のアミノ酸配列
配列番号191:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のadhE遺伝子の塩基配列
配列番号192:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のAdhEタンパク質のアミノ酸配列
配列番号193:E. coli MG1655のilvB遺伝子の塩基配列
配列番号194:E. coli MG1655のIlvBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号195:E. coli MG1655のilvI遺伝子の塩基配列
配列番号196:E. coli MG1655のIlvIタンパク質のアミノ酸配列
配列番号197:Pantoea ananatis AJ13355のilvG遺伝子の塩基配列
配列番号198:Pantoea ananatis AJ13355のIlvGタンパク質のアミノ酸配列
配列番号199:Pantoea ananatis AJ13355のilvI遺伝子の塩基配列
配列番号200:Pantoea ananatis AJ13355のIlvIタンパク質のアミノ酸配列
配列番号201:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のilvB遺伝子の塩基配列
配列番号202:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のIlvBタンパク質のアミノ酸配列
配列番号203:Pantoea ananatis AJ13355のbudA遺伝子の塩基配列
配列番号204:Pantoea ananatis AJ13355のBudAタンパク質のアミノ酸配列
配列番号205:Pantoea ananatis AJ13355のbudC遺伝子の塩基配列
配列番号206:Pantoea ananatis AJ13355のBudCタンパク質のアミノ酸配列
配列番号207:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のbutA遺伝子の塩基配列
配列番号208:Corynebacterium glutamicum ATCC13032のButAタンパク質のアミノ酸配列

Claims (8)

  1. 目的物質の製造方法であって、
    目的物質の生産能を有する微生物を培地で培養して目的物質を該培地中又は該微生物の菌体内に生成蓄積すること、および該培地又は菌体より目的物質を採取すること、を含み、
    前記微生物が、L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素の活性、マリルCoAリアーゼ活性、及びイソクエン酸リアーゼ活性が増大するように改変されており、
    前記目的物質が、イソクエン酸を前駆体として生合成される物質であることを特徴とする、方法。
  2. 前記L−リンゴ酸からマリルCoAを合成する酵素が、マレートチオキナーゼ、スクシニルCoAシンターゼ、およびスクシニルCoA:マレートCoAトランスフェラーゼからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記微生物が、さらにマレートシンターゼ活性が低下するように改変されている、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記微生物が、さらにTCAサイクルの補充経路が増強されるように改変されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記イソクエン酸を前駆体とする目的物質が、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−プロリン、L−アルギニン、L−オルニチン、L―シトルリン、イタコン酸、およびγ−アミノ酪酸からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記微生物が、コリネ型細菌または腸内細菌科に属する細菌である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記コリネ型細菌が、コリネバクテリウム・グルタミカムである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記腸内細菌科に属する細菌が、パントエア・アナナティスまたはエシェリヒア・コリである、請求項6に記載の方法。
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