図1に本発明のリラクタンスモータの例を示す。11はステータ、12はロータ軸である。17は第1のロータ磁極であり、突極状の軟磁性体で、その円周方向幅jが105°の例である。R1と付記している。18は第2のロータ磁極であり、突極状の軟磁性体で、その円周方向幅jが75°の例である。R2と付記している。
13はA相のステータ磁極であり、14はA/相のステータ磁極であり、両ステータ磁極の円周方向幅は75°の例を示している。それぞれ、A、A/と付記している。19と1AはA相ステータ磁極13を励磁するA相巻線で、図示する電流シンボルの方向に電流を通電する。従って、A相ステータ磁極13はS極である。1Cと1BはA/相のステータ磁極14を励磁するA/相巻線で、図示する電流シンボルの方向に電流を通電する。従って、A/相ステータ磁極14はN極である。19と1A、1Cと1Bの両巻線は破線で示すように集中巻きの巻線であり、両巻線は直列に接続して同一のA相電流Iaを通電する。A相のステータ磁極13とA/相のステータ磁極14とは逆相の関係である。前記A相電流Iaにより14と13の両ステータ磁極は同時に励磁され、励磁磁束がA/相ステータ磁極14を通り、ロータ磁極17と18を通り、A相ステータ磁極13を通り、ステータバックヨークを介して一巡する。
15はB相のステータ磁極であり、16はB/相のステータ磁極であり、両ステータ磁極の円周方向幅は75°の例を示している。それぞれ、B、B/と付記している。1Dと1EはB相ステータ磁極15を励磁するB相巻線で、図示する電流シンボルの方向に電流を通電する。従って、B相ステータ磁極15はS極である。1Gと1FはB/相のステータ磁極16を励磁するB/相巻線で、図示する電流シンボルの方向に電流を通電する。従って、B/相ステータ磁極16はN極である。1Dと1E、1Gと1Fの両巻線は破線で示すように集中巻きの巻線であり、両巻線は直列に接続して同一のB相電流Ibを通電する。B相のステータ磁極15とB/相のステータ磁極16とは逆相の関係である。前記B相電流Ibにより16と15の両ステータ磁極は同時に励磁され、励磁磁束がB/相ステータ磁極16を通り、第1のロータ磁極17と第2のロータ磁極18を通り、B相ステータ磁極15を通り、ステータバックヨークを介して一巡する。
図1は2極のリラクタンスモータで、本発明では一周を電気角で360°とし、反時計回転方向CCWを正回転方向として説明する。ステータの基準点はA相ステータ磁極13の時計回転方向CWの端である。この基準点からCCWへステータの円周方向位置θmeを定義する。図1ではこの円周方向位置θmeを付記しており、紙面の上側は0°、紙面の左側は90°、紙面の下側は180°、紙面の右側は270°である。一方、ロータの回転位置θreは、前記円周方向位置θme=0°の基準点に対する第1のロータ磁極17のCCW端のCCW方向の角度を示す。前記の円周方向位置θmeとロータの回転位置θreは共に電気角で示すことにする。通電する電流は、前記A相電流IaとB相電流Ibの二つで、かつ、両電流Ia、Ibは片方向のみの電流である。図1のロータ回転位置θreは5°であり、前記A相電流Iaを通電することによりA相ステータ磁極とロータ磁極17に吸引力が発生し、CCWのトルクが発生する。この回転位置ではB相電流Ibを通電しても、B相ステータ磁極15とロータ磁極18の間に吸引力が発生して、CCWのトルクが発生する。
ここで、第1のロータ磁極17と第2のロータ磁極18は非対称であるため、磁束が非対称に通ることになり、トルク発生の考え方が複雑になる。しかし、図6以降のモータでは、多極化し、かつ、ステータ磁極とロータ磁極との作用する組み合わせを対称化する。図1のモータモデルについては、ステータ磁極とロータ磁極の対向面積にもとづく発生トルクに限定して、仮定の下で説明する。
図2は、図1のロータがCCWへ40°回転して、45°のロータ回転位置θreにある。この回転位置でA相電流Iaを通電すれば、A相ステータ磁極13と第1のロータ磁極17の間に吸引力が発生し、A/相ステータ磁極14と第2のロータ磁極18の間に吸引力が発生し、CCWのトルクが発生する。なお、第2のロータ磁極18のロータ回転位置θreは195°である。また、図3、図4、図5に、ステータ磁極とロータ磁極の形状と特性の関係を示し説明する。なお、各トルクは正負のどちらの電流でも発生できるリラクタンス力である。
図2において、逆に、A相電流Iaを零とし、B相電流Ibを通電すれば、B相ステータ磁極15とロータ磁極18の間に吸引力が発生し、B/相ステータ磁極16とロータ磁極17の間に吸引力が発生し、時計回転方向CWのトルクが発生する。
図3は、図1のステータの磁極とロータの磁極とが対向する円周上の面、いわゆる、エアギャップ面を直線状に展開した展開図である。水平軸は、ステータの円周方向位置θmeであり、図1に付記した0°、90°、180°、270°と同じ値である。縦軸はロータ軸方向である。図3の13、15、14、16は、それぞれ、A相ステータ磁極、B相ステータ磁極、A/相ステータ磁極、B/相ステータ磁極のロータに対向する面の各形状を示しており、図1と同じ番号で示している。図3の17と18は図1のロータ磁極17とロータ磁極1のステータに対向する面の形状である。これら17と18が、ロータ回転位置θreの0°、30°、45°、75°、90°、105°の場合について、ステータ磁極に対するそれぞれの円周方向位置を示している。図1においてロータ磁極17がロータ回転位置θreの0°から105°までCCWへ回転することは、図3においてロータ磁極17が紙面の右側へ移動することに相当し、図1と図3との該当位置はステータの円周方向位置θmeの値により確認することができる。例えば、図2はロータ回転位置θreが45°なので、図3のθre=45°のロータ磁極17,18の展開図に相当する。図3および図1では、各ステータ磁極の円周方向幅は75°で、第1のロータ磁極17の円周方向幅は105°、第2のロータ磁極18の円周方向幅は75°の例である。そして、図3において、ロータ磁極17の右端と18の右端との位相差は150°である。なお、破線で示すステータ磁極およびロータ磁極は、360°位相が異なるステータ磁極およびロータ磁極を示しており、同一のものである。
図3でθre=0°の位置では、A相電流Iaを通電することにより、A相ステータ磁極13とロータ磁極17、18がCCWとCWへ同程度に吸引し、A/相ステータ磁極14と第1のロータ磁極17がCWへ吸引するので、合計するとCWへトルクが発生する。しかし、ロータがわずかにCWへ回転すると、A相ステータ磁極13とロータ磁極17に発生するCCWトルクが増加し、A相ステータ磁極13と第2のロータ磁極18に発生するCWトルクおよびA/相ステータ磁極14と第1のロータ磁極17に作用するCWトルクは急激に低下する。また、θre=0°の位置でB相電流Ibを通電すると、B相ステータ磁極15と第2のロータ磁極18との間にCCWトルクが発生する。この時、B/相ステータ磁極16は第1のロータ磁極17へ全面が対向しており、ロータのラジアル方向への力は発生するものの、トルクは発生しない。
図3でθre=30°の位置では、A相電流Iaを通電することにより、A相ステータ磁極13とロータ磁極17がCCWのトルクを発生し、A/相ステータ磁極14とロータ磁極18がCCWへトルクを発生する。θre=45°の位置でのトルクも同様である。θre=75°の位置までロータが回転すると、A相ステータ磁極13と第1のロータ磁極17がCCWのトルクを発生できなくなるが、A/相ステータ磁極14と第2のロータ磁極18はCCWへトルクを発生できる。θre=90°の位置では、A相ステータ磁極13は第1のロータ磁極17と前部分が対向しているのでCCWトルクを発生することはできないがCWトルクを発生するわけでもなく発生トルクは零である。この時、A/相ステータ磁極14と第2のロータ磁極18はCCWへトルクを発生できる。さらに、A/相ステータ磁極14と第2のロータ磁極18はロータ回転位置θre=105°までCCWトルクを発生することができる。
以上の結果、A相電流の通電によりロータ回転位置θreが0°から105°までトルクを発生できることを示した。即ち、90°以上の間、CCWのトルクを発生できることになる。A相とA/相は対象の構成なので、180どから285°までCCWのトルクを発生できることになる。また、A相、A/相とB相、B/相は相対的に90°位相が異なる構成なので、同様に、90°から195°と270°から375°までCCWのトルクを発生できることになる。結局、2相の電流でCCWへ連続してトルクを発生できることになる。
図4は、図3とその説明の内容を横軸をロータ回転位置θreとしてCCWトルクの発生を示す図である。IaはA相電流、IbはB相電流の例である。TAは、A相電流IaによりA相ステータ磁極13が発生するトルクである。TA/は、A相電流IaによりA/相ステータ磁極14が発生するトルクである。TBは、B相電流IbによりB相ステータ磁極15が発生するトルクである。TB/は、B相電流IbによりB/相ステータ磁極16が発生するトルクである。(TA+TA/)はTAとTA/の和であり、A相電流Iaにより発生するトルクでもある。(TB+TB/)はTBとTB/の和であり、B相電流Ibにより発生するトルクでもある。Tallはこれらのトルクの合計である。トルクの脈動はあるが、CCWのトルクを連続的に発生している。
前記A相電流IaとB相電流Ibの駆動回路の例を図25に示す。251はモータの制御回路および各電力素子の駆動回路である。257はA相の巻線とA/相の巻線である。258はB相の巻線とB/相の巻線である。252は直流電源である。253と254は電力素子であり、259と25Aはエネルギー回生用のダイオードである。255と256は電力素子であり、25Bと25Cはエネルギー回生用のダイオードである。これらの直流電圧、直流電流の駆動回路は良く使用される構成であり、パルス幅変調により精度の高い電流制御が可能である。このような構成で、A相電流IaとB相電流Ibを通電することができる。3相のリラクタンスモータでは、6個の電力素子が必要であることに比較すると、図1のモータ駆動では4個の電力素子で駆動できることになり、インバータの簡素化が可能である。
図26は、2個の電力素子でA相電流IaとB相電流Ibを通電することのできる駆動回路である。直流電源252、257のA相の巻線とA/相の巻線、258のB相の巻線とB/相の巻線は図25と同じである。261と262はコンデンサで、直流電源252の中間電位267を作っている。263はA相電流Iaを通電する電力素子である。265はB相電流Ibを通電する電力素子である。264と266はエネルギー回生用のダイオードである。このように、中間電位267を作ることにより、図1のモータを2個の電力素子で駆動することもでき、インバータの簡素化が可能である。なお、図26の詳細については後述する。
また、モータの出力トルクについては、単に連続的にトルクが得られるだけでなく、より大きな平均トルクを出力することにより、モータの小型化と低コスト化を実現することができる。例えば、図4において、ロータ回転位置θreが30°から75°の区間は、A相トルクであるTAとA/相トルクであるTA/の両方がトルクを発生できるので、(TA+TA/)およびモータの合計トルクTallに示されるように大きなトルクとなっている。このような大きなトルクを発生できる領域を広げることにより、モータの平均トルクを向上することができる。図1などに示すモータのトルクは、ステータ磁極の円周方向幅、各ロータ磁極の円周方向幅、各ロータ磁極相対的な位相、A相電流Iaの通電範囲と値、B相電流Ibの通電範囲と値により変わるので、モータの電磁気的な特性と求めらトルクニーズに応じた設計を行う必要がある。なお、その他のモータトルクの改善方についても後述する。
図1、図2、図3、図4で示すモータは簡素な構成であり、図25、図26に示す2相の片方向電流駆動回路も簡素な構成である。この構成でCCWの連続トルクを発生でき、低コストなモータシステムを実現できる。
次に、図1に示すモータが連続的なトルクを発生できる条件について説明する。図5は、図3と同様であり、図1のステータの磁極とロータの磁極とが対向する円周上の面、いわゆる、エアギャップ面を直線状に展開した展開図である。水平軸は、エアギャップ面の角度であり、円周方向位置θmeである。51はA相ステータ磁極のロータに対向する面であり、その円周方向幅は(90°−e)である。53はA/相ステータ磁極のロータに対向する面であり、その円周方向幅は(90°−g)である。52はB相ステータ磁極のロータに対向する面であり、その円周方向幅は(90°−f)である。54はB/相ステータ磁極のロータに対向する面であり、その円周方向幅は(90°−h)である。55は第1のロータ磁極であり、その円周方向波はjである。56は第2のロータ磁極であり、その円周方向波はkである。なお、破線で示す58と51、破線で示す57と54、破線で示す59は55は同じものであり、それぞれ相対的に360°の位相差の位置に、目視的な理解を容易にする目的で記載している。
図5の各相ステータ磁極の形状自由度は、各ステータ磁極の円周方向幅、各ステータ磁極の円周方向位置、ステータ磁極がロ−タに対向する面の凹凸、スキューなどの3次元形状などを自由に設計することができる。しかし、説明のためには単純化、モデル化が必要である。そこで、各ステータ磁極の円周方向幅は(90°−e)であり、各ステータ磁極の円周方向位置は90°ピッチである場合について説明する。また、図5のe、f、g、hは等しい値とする。また、図1のA相ステータ磁極13と図5のA相ステータ磁極51は同じものであり、それらのCW端をステータの円周方向位置θme=0°の基準の点とする。そして前記定義と重複するが、この円周方向位置θme=0°の点に対する第1のロータ磁極55のCCWの端の回転角をロータ回転位置θreとしている。図5のロータ回転位置θreは0°である。この時、第2のロータ磁極56のロータ回転位置θreも当然0°であるが、例えば、56のCCWの端の円周方向位置θmeは(180°−m)である。
図5に示すモータにおいて、A相電流Iaを通電するA相ステータ磁極51とA/相ステータ磁極53で、ロータ回転位置θreの0°から90°までの間に渡って、CCWのトルクを発生する条件について説明する。まず、図5において、eは正の値であり、各ステータ磁極の円周方向幅(90°−e)は90°より小さい値である。A相ステータ磁極51と第1のロータ磁極55が発生できるトルクは、第1のロータ磁極55の円周方向幅jがA相ステータ磁極51の円周方向幅(90°−e)より大きい場合には、ロータ回転位置θreの0°から(90°−e)までCCWのトルクを発生できる。図4のトルクTAである。
(90°−e)<j (1)
そして、A/相ステータ磁極53と第2のロータ磁極56の発生するトルクは、図5において、第2のロータ磁極56が円周方向位置θmeの90°から(90°+e)まで存在すれば、ロータ回転位置θreの(90°−e)から90°の間にCCWのトルクを発生できる。図4のトルクTA/である。
m<(90°−e) (2)
90°<(k+m) (3)
また、A相ステータ磁極51とA/相ステータ磁極53で90°以上の範囲においてCCWトルクを発生するためには、少なくとも、ステータ磁極の円周方向幅(90°−e)が45°以上である。
45°<(90°−e) (4)
ただし、第1のロータ磁極55がCW方向トルクを発生しないためには、その円周方向幅jが(90°+e)より小さいか、あるいは、CCW回転時にA相電流Iaを通電開始するタイミングを前記CWトルクが低下する位置へ遅らせる必要がある。
j<(90°+e) (5)
ロータ回転位置θre=0の位置では、A相ステータ磁極51と第2のロータ磁極56との間にCWのトルクも発生するので、前記の(k+m)が(90°+e)以下であるか、あるいは、CCW回転時にA相電流Iaを通電開始するタイミングを前記CWトルクが低下する位置へ遅らせる必要がある。
(k+m)<(90°+e) (6)
また、第1のロータ磁極55の円周方向幅jが90°以上の大きさでなければ、ロータ回転位置θreの0°から90°の間で負のトルクを発生する。CCWの駆動について考えると、前記jを前記(k+m)と同じ値にする方法が素直な考え方である。
90°<j (7)
ここで、(7)式は(1)式を含み、jのより厳しい必要条件となっている。
また、前記mの値が前記eより大きくなければ、A/相ステータ磁極53のロータ方向の対向面の全面が第2のロータ磁極56に対向してしまうことになり、特にロータ回転位置θreが90°に近づく近傍でトルクを発生することができなくなる。
e<m (8)
なお、これら(1)式から(7)式の条件は、A相ステータ磁極51とA/相ステータ磁極53が、ロータ回転位置θreの0°から90°までの間にCCWのトルクを発生するための、最低限の必要条件である。また、これらの必要条件とは別に、A相電流Iaの有無を選択する制御上の自由度があり、前記必要条件を緩和することも可能である。一方、モータの平均出力トルクを大きくするためには、これら(1)式から(8)式の条件、および、A相電流Iaの通電自由度の範囲内で、各ステータ磁極の円周方向幅を大きくするなど、適正値を選択できる。
また、(1)式から(8)式をより分かり易く変形する。(4)式は次式となる。
e<45° (9)
(5)式と(7)式より、次のように書け、(1)式の条件も含まれる。
90°<j<(90°+e) (10)
(3)式と(6)式より、次のように書ける。
90°<(k+m)<(90°+e) (11)
(2)式と(8)式より、次のように書ける。
e<m<(90°−e) (12)
(12)式のmの最小値eを(11)式へ右辺へ代入し、(12)式のmの最大値(90°−e)を(11)式の左辺へ代入すると次式となる。
e<k<90° (13)
なお前記のように、A相電流Iaの通電自由度を活用すれば、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)式よりは緩い条件とすることも可能である。
ロータ回転位置θreが0°から90°までの範囲を、A相ステータ磁極51とA/相ステータ磁極53でCCWのトルクを発生して駆動する方法、各形状の条件について説明した。ロータ回転位置θreが90°から180°までの範囲については、同様に、B相ステータ磁極52とB/相ステータ磁極54でCCWのトルクを発生して駆動することができる。ロータ回転位置θreが180°から270°までの範囲については、同様に、A/相ステータ磁極53とA相ステータ磁極51でCCWのトルクを発生して駆動することができる。ロータ回転位置θreが270°から360°までの範囲については、同様に、B/相ステータ磁極54とB相ステータ磁極52でCCWのトルクを発生して駆動することができる。これらの結果、図4に示したように、多回転に渡って連続してCCWのトルクを発生して駆動することができる。
次に、図1のモータのアンバランスの問題について説明する。図1のモータは、あえて、ロータ形状がロータ中心に対して点対称とならない形状とすることにより、片方向の2相電流でCCWへ連続的なトルクが発生できる構造としている。その結果、ロータとステータ間の磁気抵抗のアンバランスがある。例えば、ロータ回転位置θreによっては、第1のロータ磁極17の先端部の磁束密度と第2のロータ磁極18の先端部の磁束密度とが大きく異なる。磁束密度が異なるためにロータに作用する磁気吸引力のアンバランスもある。ロータが非対称構造なので、質量的なアンバランスもある。これらの3種類のアンバランスは、振動、騒音の問題、トルク脈動の問題の原因となる。これらの問題はモータを多極化し、かつ、各ステータ磁極と各ロータ磁極との組み合わせを作ることにより解決することができる。解決した具体的なモータ構造を図6以降のモータ例で示す。磁束のアンバランスの問題の一つの例として、図1において、A相ステータ磁極13と第1のロータ磁極17を通る磁束φA1がB相ステータ磁極および第2のロータ磁極18の作用に与える悪影響については説明しなかった。この対応として、モータを多極化して、逆相であるA/相ステータ磁極と第1のロータ磁極とが作用する構成を作って−φA1の磁束を通過させることにより、前記悪影響を解消することができる。
図6の61はステータ、62はロータ軸である。図6は、図1のモータを4極にし、図6の紙面の右側のA相ステータ磁極69とA/相ステータ磁極67を入れ替え、B相ステータ磁極6AとB/相ステータ磁極68を入れ替えた構造としている。63はA相ステータ磁極、65はA/相ステータ磁極、64はB相ステータ磁極、66はB/相ステータ磁極である。各ステータ磁極に集中巻き巻線を電流の方向を示すシンボルで示している。A相ステータ磁極とB相ステータ磁極はS極で、A/相ステータ磁極とB/相ステータ磁極はN極である。6Bと6Cは第1のロータ磁極で、6Dと6Eは第2のロータ磁極である。モータ各部の電気角回転位置を一点鎖線で示し、付記している。図6の構成では、A相ステータ磁極とA/相ステータ磁極を点対称に配置し、B相ステータ磁極とB/相ステータ磁極を点対称に配置している。ロータは完全に点対称である。
例えば、A相ステータ磁極63と69は、第1のロータ磁極と第2のロータ磁極の両方に作用する配置構成である。則ち、第1のロータ磁極と第2のロータ磁極との作用の平均値となるので、それらの非対称性の問題は解消される。同様に、A/相ステータ磁極65と67も、第1のロータ磁極と第2のロータ磁極の両方に作用する配置構成である。これら4つのステータ磁極にはA相電流Iaを通電するので、それぞれの磁束成分は電気角で360°離れた位置へ、すなわち、N極からS極へ点対称に作用すると解釈することができる。磁束の向きは点対称ではないが、電磁気的な吸引力、トルクは点対称性を保っている。このような結果、図6に示すモータは、磁気抵抗のアンバランス問題、磁気吸引力のアンバランス問題、ロータ質量のアンバランス問題を解決している。
次に、図7と図8に示すモータは、図1のモータを8極にし、ロータ磁極の配置を一部変更したモータ構成の例である。図8は横断面図である。図7は、図8のステータとロータ間のエアギャップ面を直線状に展開し、ステータ磁極のエアギャップ面形状とロータ磁極のエアギャップ面形状を示す図である。7J、7K、7N、7Pは第1のロータ磁極で、円周方向に2個づつ並べて配置している。7L、7M、7Q、7Rは第2のロータ磁極で、円周方向に2個づつ並べて配置している。また、図1のモータ構成に比較すると、第1のロータ磁極7Kと第2のロータ磁極7Lの位置を入れ替え、第1のロータ磁極7Pと第2のロータ磁極7Qの位置を入れ替えているとも言える。
図8のステータ磁極は、図1のステータ磁極を8極にしていて、ステータ磁極の円周方向の並び順などは同じである。71、75、79、7DはA相ステータ磁極である。73、77、7B、7FはA/相ステータ磁極である。72、76、7A、7EはB相ステータ磁極である。74、78、7C、7GはB/相ステータ磁極である。各ステータ磁極に集中巻き巻線を電流の方向を示すシンボルで示している。A相ステータ磁極とB相ステータ磁極はS極で、A/相ステータ磁極とB/相ステータ磁極はN極である。各ステータ磁極とロータ磁極は、ロータ中心に対して点対称となる構成である。また、各ステータ磁極とロータ磁極との間に作用する電磁気的な関係、トルクなどは図1の場合と同じである。このような結果、図8に示すモータは、磁気抵抗のアンバランス問題、磁気吸引力のアンバランス問題、ロータ質量のアンバランス問題を解決している。
次に、図9に、図5のロータ磁極の形状を変形したモータの展開図の例を示す。図9のモータの横断面図は図1と類似した形状である。図9のステータ磁極は図5のステータ磁極と同じである。図9のロータ磁極91と92は、それらの円周方向位置が相対的に180°異なるが、形状は同じである。ロータ磁極61の形状は、図5に示す第1のロータ磁極55と第2のロータ磁極56の平均をとった形状である。R5と付記している。従って、A相ステータ磁極51とA/相のステータ磁極53とが両ロータ磁極へ電磁気的に作用する場合に、両ステータ磁極へ同一のA相電流Iaを通電するのであれば、図5と図9は同一の電磁気的な作用することになる。厳密には形状の差異があるので異なるが、概略のモデルとしてはほぼ同じである。従って、図9に示すモータは、片方向電流の2相電流で、CCWへ連続トルクを発生することができる。
しかし、図9のロータ構成は、例えば電磁鋼板を積層して構成する場合、2種類の電磁鋼板が必要であり、組み立て時にも組み立て時にも形状が異なることに起因する工数が必要となる。電磁気的には、3次元形状のロータは渦電流損を発生しやすい問題がある。一方では、図9のロータ磁極を圧粉磁心などで構成する場合には、同一形状のロータ磁極の方が製作性に優れることもある。
次に、図10に図1のモータを変形した他の例を示す。図10の紙面で上側はモータの縦断面図であり、このモータは2組のモータ要素を組み合わせた構成となっている。104はロータ軸である。101は第1のステータのバックヨーク部、102はステータ磁極の歯、10Hは巻線、103は第1のロータである。これらの第1のステータ101、第1のロータ103などの横断面図は、図9の紙面で下側の左側の図である。109は第1のステータである。10AはA相ステータ磁極、10DはA/相ステータ磁極である。これらのステータ磁極を円周上に4組、同一順に配置している。その内径側のロータは、図8のロータと同じである。
105は第2のステータのバックヨーク部、106はステータ磁極の歯、107は巻線、10Jは第2のロータである。これらの第2のステータ105、第2のロータ10Jなどの横断面図は、図9の紙面で下側の右側の図である。10Cは第2のステータである。10BはB相ステータ磁極、10FはB/相ステータ磁極である。これらのステータ磁極を円周上に4組、同一順に配置している。10Q、10R、10L、10Mは第1のロータ磁極で、10S、10K、10N、10Pは第2のロータ磁極である。図10の2組のモータの作用は、図1および図8で説明したモータ構成と同じ作用である。例えば、A相ステータ磁極10Aと第1のロータ磁極7Jとが発生するトルクは、図1のA相ステータ磁極13と第1のロータ磁極17とが発生するトルクと同じ作用である。
図10のモータ構成は、図1のモータで説明したような、磁気抵抗のアンバランス問題、磁気吸引力のアンバランス問題、ロータ質量のアンバランス問題を解決している。そして、極数を少なくする効果を得ている。また、図1に比較し、A相、A/相とB相、B/相を紙面で左右に分離したので、ステータ磁極の歯を十分に太くでき、各巻線スペース広くとることができる。従って、ステータの歯の磁気飽和の問題を大幅に軽減することができ、歯間のスペースを大きくすることができるので、歯間の漏れ磁束を小さくすることもできる。また、巻線スペースを広くできることから、巻線抵抗を低減することもできる。ピークトルクを大きくするような設計も可能である。
なお、後に説明するが、第1のステータ磁極101と第2のステータ磁極105とを磁気的に結合する軟磁性体108、および、10E、10G、10K、10Mに示す永久磁石により、永久磁石を利用した磁束の励磁も行うことができる。また、円周方向に隣り合うステータ磁極のN極、S極の極性が逆なので、隣り合う歯の間にステータ磁極の極性と同じ方向を向いた永久磁石を付加でき、軟磁性体の磁気特性をより効果的に使用できる。
次に、図11に請求項2の実施例を示す。このモータは、図8のモータに永久磁石117、11A、11D、11G、11H、11J、11K、11Lを追加することにより、ステータの軟磁性体の磁気特性の利用方法を改善している。ここで、図11などのモータの電磁鋼板などを使用する上での問題点について考えてみる。リラクタンスモータのトルクは磁気吸引力で生成するため、ステータ磁極を片方向電流で励磁している。ステータの歯を構成する電磁鋼板には、その極性による片方向の磁束だけが通り、反対方向の磁束が通ることはない。図13は電磁鋼板の磁化力H[A/m]と磁束密度B[T]の関係を示す磁気特性例であり、第1象限と第3象限とに示す正と負の特性である。図1などのリラクタンスモータのステータの歯は、図13の第1象限の原点から動作点139までの特性だけが使用され、第3象限の負の特性は使用されていない。この時、磁束密度の変化は133であり、電磁鋼板の磁束密度の最大変化である135は使えていない。
図11のモータの磁気的作用を説明するため、図11の部分拡大図を図12に示す。永久磁石11AのN極はA/相ステータ磁極114の方向で、永久磁石11AのS極はB相ステータ磁極113の方向である。その磁束122はA/相ステータ磁極114の歯を通り、バックヨークを通り、B相ステータ磁極113の歯を通り、一巡する。なお、永久磁石11Aが生成する磁束122はステータの磁気抵抗の小さな軟磁性体部を通るので、直接的にトルクを発生することはほとんど無い。そして、図12の永久磁石11Aはその磁束122により、B相ステータ磁極113の磁気的な動作点を図13の原点から負の動作点137へ変化させ、磁気的に負のバイアスをしている。
一方で、B相ステータ磁極113が巻線124と125のB相電流Ibで励磁する時には、図6、図8の作用を説明したように、その他のB相ステータ磁極、B/相ステータ磁極も同じB電流Ibで同時に励磁している。従って、B相ステータ磁極113がB電流Ibで励磁されて通過する磁束成分φbは、対向するロータ磁極を通り、ロータのバックヨークを通り、他のロータ磁極を通り、他のB/相ステータ磁極を通り、ステータのバックヨークを通り、元のB相ステータ磁極113へ戻り、一巡する。この磁束成分φbは、前記の磁束122と重畳するが、通常動作の範囲では影響しないように設計することができる。
磁束の方向については、B相ステータ磁極113を励磁する巻線124と125にはB相電流Ibが巻線のシンボルの方向に通電するので、B相ステータ磁極113はS極であり、その励磁磁束φbはB相ステータ磁極113の先端部からバックヨークの方向へ通る。この励磁磁束φbの方向は、前記磁束122とは反対の方向である。A/相ステータ磁極114を励磁する巻線126と127にはA相電流Iaが巻線のシンボルの方向に通電するので、A/相ステータ磁極114はN極であり、その励磁磁束φa/はA/相ステータ磁極114のバックヨークから先端部の方向へ通る。この励磁磁束φA/の方向は、前記磁束122とは反対の方向である。
永久磁石117と磁束121、および、永久磁石11Dと磁束123についても同様の作用である。
次に、図13における各磁束の動作点について説明する。前記永久磁石11Aが存在しない場合は、B相ステータ磁極113の磁気的な動作点は図13の原点から動作点139の範囲であり、電磁鋼板の磁束密度の変化は133である。次に、前記永久磁石11Aが存在する場合は、B相ステータ磁極113の磁気的な動作点は137から動作点139の範囲であり、電磁鋼板の磁束密度の変化は134と大幅に増加できる。電磁鋼板の負の磁束密度から正の磁束密度まで有効に活用できることになる。則ち、前記永久磁石11Aは磁気特性の負バイアス用永久磁石として作用し、歯の磁気特性を効果的に活用できるように作用する。なお、A/相ステータ磁極114などの他のステータ磁極についても同様である。
この結果、B相ステータ磁極113の磁路の円周方向幅である歯の幅を(133/135)へ狭く、小さくすることができる。そして、巻線124、125を巻回する巻線スペースを確保できることになる。この巻線スペースの確保は、図31に示す従来のリラクタンスモータのステータ磁極の円周方向配置に比較して、図11のモータのステータ磁極の円周方向配置の密度を約2倍に高密度化できる要因の一つとなっている。そして、モータの高トルク化ができることから、小型化、低コスト化も可能となる。
なお、B相ステータ磁極113の磁気的な動作範囲を図13の137から138となるようにモータを設計すれば、巻線124と125へB電流Ibを通電した時の動作点を138とすることも可能であり、磁束密度の変化132は前記134と比較してさほど低下せず、電磁鋼板の比透磁率の大きな領域を活用することとなるので、励磁負担を小さくすることができ、鉄損も低減することができる。従って、中程度のモータ負荷時のモータ効率を向上することができる。
また、ステータ磁極を通る磁束が増加すると、ロータ磁極を通過する磁束も増加するので、増加に対応したロータ磁極形状とする必要がある。図11等のロータ磁極形状は根本が細い形状をモデル的に示しているが、通過磁束が大きくなると、ロータ磁極の根本が太くなるような形状とする必要がある。
なお、図14は日本工業規格JISの電磁鋼板35A270に相当する製品の磁気特性である。横軸は磁化力H[A/m]で、通常、指数軸で示すことが多いが、直線軸で示し、途中の波線部でそのレンジを変えている。左側の縦軸は磁束密度B[T]で、右側の縦軸は比透磁率である。実線で示す特性141、142は磁化特性で、途中は波線で示し、省略している。破線で示す特性143、144は比透磁率で、途中は波線で示し、省略している。比透磁率が1000以上である範囲は磁束密度が1.5T以下の領域であり、1.5T以上の領域では比透磁率が低下し、励磁負担が増加する。従って、図13の動作点137から138の範囲で動作できるようにモータを設計することができれば、励磁負担を低減し、鉄損を低減することができる。
前記の磁束密度の負のバイアス効果を発揮する永久磁石を配置できる歯間は、円周方向に隣接する二つのステータ磁極の磁気極性がN極とS極の組み合わせであって、相互に異極である場合である。二つのステータ磁極の歯間に、永久磁石の極性の向きを合わせて配置することにより、二つのステータ磁極の歯に磁束密度の負のバイアスをかけることができる。しかし、例えばN極とN極との同極が隣接する場合には、歯間の永久磁石で両方のステータ磁極に負の磁束密度のバイアスをかけることはできない。また、各ステータ磁極を励磁する時には、円周方向に隣接するステータ磁極との間に漏れ磁束が発生して歯の磁束密度が上昇するなどの問題があるが、前記永久磁石11Aにより漏れ磁束を低減する効果もある。また、A/相ステータ磁極についても同様であり、図12の他の永久磁石、他のステータ磁極についても同様である。
なお、リラクタンストルクTは、その場の磁気エネルギーの変化に随伴して得られる。磁路は、主には鉄心部とエアギャップ部であるが、鉄心部で蓄積される磁気エネルギーはトルクには寄与しない。そこで、鉄心部ではできるだけ磁化力が消費されないように、電磁鋼板の比透磁率の高い領域で使用することが好ましい。例えば、エアギャップを0.2mmとし、鉄心磁路長を100mmとし、巻線電流のアンペア・ターン値の2/3をトルクに活用したい場合は、0.2mm/2=100mm/μ*と考えることができ、比透磁率μ*を1000以上の値となるように電磁鋼板の形状設計を行う必要がある。そして、エアギャップ部の磁気エネルギーの高密度化が高トルク化に繋がる。
次に、図16に請求項3の実施例を示す。図16は、モータの全てのステータ磁極の歯間に永久磁石を配置し、全てのステータ磁極の歯をその円周方向両側に隣接する二つの永久磁石により磁束密度の負のバイアスをかけることのできるモータ構造の例である。12極ロータ、16ステータ、片方向電流の2相電流制御のモータである。161と165と169と16DはA相ステータ磁極であってS極で、164と168と16Cと16GはA/相ステータ磁極であってN極で、163と167と16Bと16FはB相ステータ磁極であってS極で、162と166と16Aと16EはB/相ステータ磁極であるあってN極である。16M、16Qは永久磁石であり、磁極の方向は隣接するステータ磁極の極性と一致している。図12の永久磁石11Aと同様に、各永久磁石は各ステータ磁極の歯に磁束密度の負のバイアスをかける。図16に示す他の永久磁石も同様である。また、16Rと16Pは軟磁性体あるいは永久磁石であり、永久磁石16Qの磁束を通過させる磁路である。なお、破線で示す16H、16J、16Kなどのスペースは、ステータ磁極を円周方向に等ピッチで配置する場合にはステータ磁極が配置される場所であり、一部のステータ磁極を排除することにより円周方向に隣接するステータ磁極のN極、S極の極性を相互に逆極性にすることができる。これらのスペース16H、16J、16Kなどは巻線の配置などに有効に活用できる。16S、16U、16W、16Y、361、363は第1のロータ磁極であり、16T、16V、16X、16Z、362、364は第2のロータ磁極である。
図16のモータのトルク発生原理は、図1、図8等と同じである。そして、各歯の磁束密度はその極性に応じて、負の磁束密度のバイアスが円周方向に隣接する永久磁石によりかけられている。例えば、永久磁石16MのN極を通る磁束はB/相ステータ磁極162の歯を通り、バックヨークを通り、A相ステータ磁極161の歯を通り、永久磁石16MのS極へ戻ってくる。B/相ステータ磁極162はN極であり、その巻線電流により励磁される時に磁束がバックヨーク側から歯のロータ側先端へ通る。従って、その磁束の方向は前記永久磁石16Mの磁束の方向とは反対方向であり、前記永久磁石16Mの磁束はB/相ステータ磁極162の歯を負の磁束密度にバイアスしていることになる。また同様に、永久磁石16QのN極を通る磁束は磁路16Pを通り、B/相ステータ磁極162の歯を通り、バックヨークを通り、B相ステータ磁極161の歯を通り、磁路16Rを通り、永久磁石16QのS極へ戻ってくる。永久磁石16Qの磁束もB/相ステータ磁極162の歯の磁束密度を負にバイアスしていることになる。図16の他の歯についても同様な関係になっており、各永久磁石は各歯が励磁された時にロータとバックヨークの間に通過できる磁束の量が増加するように作用している。
このように、各ステータ磁極先端の円周方向両側に永久磁石を配置し、それぞれがステータ磁極の歯へ磁束密度の負のバイアスをかけることができるので、バックヨーク側とロータとの間へより多くの磁束が通過可能となる。また、図16の歯間に配置するその他の永久磁石も同様の作用、効果である。これらの結果、ステータ磁極の歯の幅をへ狭く、小さくすることができる。そして、各歯に巻回する巻線スペースを確保できることになり、ステータの円周方向全周により多くの個数のステータ磁極を配置できることになる。
あるいは、歯の円周方向幅を狭くせず、ある程度広くし、図13に示す磁束密度の動作範囲を動作点137から138までの比透磁率の高い領域に限定した設計とすることにより、ステータの磁気抵抗低減、鉄損の低減を行うこともできる。また、歯幅の低減と磁気抵抗の低減とをバランス良く設計することも可能である。なお、図11のモータの永久磁石117、11A等も同様な作用、効果であるが、図16のモータでは永久磁石を相対的に2倍の個数を配置することができ、ステータ磁極間の漏れ磁束も低減できるので、磁束密度の負のバイアスに関しては図11のモータの構成の方が優れている。
図16のステータ構成は、図8に示したステータ磁極の円周方向の配置に比較して、スペース的には、3個に1個の割でステータ磁極を取り除いている。そして、配置構造の工夫により、ステータ磁極のN極とS極とが円周方向に交互に配置する構成を実現している。なお、5個に1個の割合でステータ磁極を除く等のモータ構成の変形も可能である。また、図16のモータは、6極のロータ、8個のステータ磁極、片方向電流の2相電流制御のモータに簡略化することもできる。しかしその場合には、回転トルクとロータ質量のアンバランスについては問題ないが、磁気抵抗のアンバランス問題、磁気吸引力のアンバランス問題には注意を要する。
次に、請求項4の実施例を示す。図6に示すモータは前記のように、63、69はA相ステータ磁極のS極であり、64と6AはB相ステータ磁極のS極である。65と67はA/相ステータ磁極のN極であり、66と68はB/相ステータ磁極のN極である。図6の紙面で、上側の4個のステータ磁極はS極で、下側4個のステータ磁極はN極である。従って、B相ステータ磁極64とA/相ステータ磁極65の間、および、A相ステータ磁極69とB/相ステータ磁極68の間のバックヨーク部に、図示するような励磁用の永久磁石6Fと6Gとを追加することにより、各相ステータ磁極の巻線へ通電する電流の励磁負担を低減することができる。電流を低減できるので、モータを高効率化できることになる。永久磁石の磁極の向きは、紙面で上側がS極で下側がN極である。図6の紙面で、上側の4個のステータ磁極は、おおよそ2個のロータ磁極と対向していて、ロータが回転しても対向する面積の変動は小さい関係となっている。従って、永久磁石6Fと6Gが励磁するステータとロータ間の磁束密度は、比較的安定していて、変動が小さい。
図15は希土類永久磁石の磁化力H[kA/m]と磁束密度B[T]の特性の例である。この動作点151は磁束密度1.0Tと比較的高く、動作点152は磁束密度0.3Tと比較的低く、両動作点では磁束密度の差BASと磁化力の差HASがある。一方、EVの主機用モータなどの場合、低速から高速回転までの広範囲な回転領域での運転が望まれる。例えば、急坂道を登る場合には、大きなトルクが一定時間必要なため、低速回転での大きな磁束密度が求められ、動作点151が好ましい。一方、高速走行では、高速回転でモータ誘起電圧が過大とならないように磁束密度を低くする必要があり、動作点152が好ましい。永久磁石の形状は、N極からS極までの磁石厚みは薄く、磁石磁極の面積は広い形状であれば、永久磁石の動作点を各ステータ磁極の励磁電流により可変することが可能である。また、永久磁石の面積を大きくとるために、永久磁石を配置する部分のバックヨーク厚みを大きくすること、あるいは、配置構造を工夫することもできる。
また、前記の励磁用永久磁石は、モータの回転数など運転状況に応じて磁束密度を変える必要があるので、永久磁石の強さを外部起磁力により非可逆な着磁、あるいは、減磁を行って可変する方法が効果的である。図6の6Hと6Jは、励磁用永久磁石6Fの磁気特性を可変する励磁巻線である。6Kと6Lは、励磁用永久磁石6Gの磁気特性を可変する励磁巻線である。モータが低速で高トルクを必要とするときには永久磁石の強さを強め、モータが高速回転の時には永久磁石の強さを弱めることにより永久磁石を効果的に活用することができる。
また、前記の励磁巻線6H、6J、6K、6Lは、永久磁石の強さを可変する機能ではなく、ステータ磁極の励磁用の巻線として使用することもできる。通電電流を可変することにより励磁の大きさを可変することができる。その場合には、励磁用永久磁石6F、6Gは必ずしも必要ではない。なお、前記励磁巻線は図8、図11などの本発明モータへも活用することができる。
図8のモータの場合は、81、82、83、84、85、86、87、88の永久磁石を図示する極性の方向に向けて追加することにより、各ステータ磁極を励磁することができる。円周方向に隣り合う2個の永久磁石の間に位置する2個のステータ磁極は同じ極性であり、ロータが回転しても前記2個のステータ磁極はおおよそ1個分のロータ磁極が対向し、おおよそ同一の面積である。その結果、各ステータ磁極の励磁電流が0の時には、ステータ磁極とロータ磁極との対向面の磁束密度はほぼ一定の値となる。また、永久磁石の磁束密度の変動も小さく、安定した励磁が可能なモータ構成である。
図10のモータの場合は10E、10G、10K、10Mなどの永久磁石を図示する極性の方向に向けて追加することにより、各ステータ磁極を励磁することができる。このモータの場合、第1のステータのバックヨーク部101と第2のステータのバックヨーク部105とを磁気的に結合する磁気結合部108が必要である。そして、永久磁石10Eと10Kとは、第1のステータのバックヨーク部101と磁気結合部108とバックヨーク部105とを通してロータ軸方向に連続的に配置している。永久磁石10Gと10Mも、第1のステータのバックヨーク部101と磁気結合部108とバックヨーク部105とを通してロータ軸方向に連続的に配置している。この結果、磁気的に繋がった領域にA相ステータ磁極10AとB相ステータ磁極10Bがある。そして、これら二つのステータ磁極に対向するロータ磁極の面積は、ロータが回転してもおおよそ同一の面積である。従って、ステータ磁極とロータ磁極が対向する部分の磁束密度の変化は小さくなる構成である。図10のモータのその他のステータ磁極、および、その他の永久磁石も同様の関係である。これらの結果、10E、10G、10K、10Mなどの永久磁石は各ステータ磁極を励磁することができる。各相ステータ磁極の巻線電流を低減することができ、モータの高効率化が可能である。
次に、図8のモータ等で示した永久磁石によるステータ磁極の励磁と、図12のモータなどで示した永久磁石によるステータ磁極の歯の磁束密度を負にバイアスする方法との両方を同時に実現する構成について説明する。図17は、図11の部分拡大図である。119、11C、11Fはそれぞれのステータ磁極を励磁する励磁用永久磁石である。117、11A、11Dはステータ磁極の歯の磁束密度を負にバイアスする永久磁石である。その他の構成は図12と同じである。
永久磁石11Cは、A相ステータ磁極112、B相ステータ磁極113、A/相ステータ磁極114、B/相ステータ磁極115を励磁する。永久磁石11Cの磁束は11N、11Q、11Pなどであり、ロータへ供給される。ステータ磁極の巻線電流が通電されていない時には、図15の永久磁石特性において、永久磁石11Cの動作点は152である。ステータ磁極の巻線に電流が通電されると、動作点は152から151まで変化する。一方、永久磁石11Aは、A/相ステータ磁極の歯とB相ステータ磁極の歯の磁束密度を負にバイアスする。この永久磁石11Aの磁束は122であり、ステータ内で循環する。磁石11AのN極からS極までの厚みを大きくしているので、図15の永久磁石の動作点は153である。そして、永久磁石11Aが追加されると、永久磁石11Cの動作点は152から154へ変化する。なお、各ステータ磁極を電流で励磁する場合には、歯の間に配置する永久磁石117、11A、11Dなどへ大きな逆方向の起磁力が作用する。そのため、各永久磁石はその動作点が大きく変動しないように、また、減磁しないように磁石厚みを厚くする必要がある。
図17において、B相ステータ磁極113を通る磁束11Nと磁束122は、磁束の方向が相互に逆向きである。A/相ステータ磁極114を通る磁束11Pと磁束122も、磁束の方向が相互に逆向きである。これらは磁気回路の考え方を示したもので、実際には、これらを重ね合わせた磁束が各ステータ磁極の歯を通ることになる。
図17の磁気回路の設計によりモータ特性を変えることができるので、ニーズに合わせた設計ができる。例えば、各ステータ磁極の歯の磁束密度は、図13の電磁鋼板の磁気特性において、負にバイアスされた動作点137から138まで、あるいは、139まで変化するように設計できる。設計に関わる主なパラメータは、ロータ回転位置、各ステータ磁極の形状、励磁電流、各永久磁石の特性と形状等である。
永久磁石11Aの目的は、B相ステータ磁極113の歯とA/相ステータ磁極114の歯を負の磁束密度にバイアスすることである。従って、永久磁石11Aの形状は、N極からS極までの厚みが大きい方が好ましい。また、永久磁石11Cの目的は、高速回転時には小さな磁束密度で、低速回転時で高トルクの時には励磁電流と共に作用して大きな磁束密度とすることである。従って、永久磁石11Cの形状は、N極からS極までの厚みが薄い方が好ましい。また、永久磁石11CのN極、S極の面積は広く、少なくとも、永久磁石11Aの面積よりは広くないと励磁用磁石としての意味がない。
なお、永久磁石11Aと11Cは異なる種類、特性の永久磁石でも良く、その場合には形状関係は変わる。また、本発明の趣旨で、磁石形状の変形、改良も可能である。永久磁石11Cのような励磁用磁石の動作点151、152について図15とその説明で示したが、EVなどでは軽負荷、中負荷の使用頻度が高く、動作点151、152の中間の領域での効率向上も求められる。
また、A相ステータ磁極112とB相ステータ磁極113は共にS極であり、その間に永久磁石を配置できないが、両ステータ磁極間の漏れ磁束を低減するための銅板、アルミ板などを歯間の永久磁石の位置へ配置することができ、一定回転以上でトルクを向上する効果がある。
また、前記の図10のモータへステータ磁極の歯の磁束密度を負にバイアスする永久磁石を、10U、10A、10D、10T、10B、10Fなどの各ステータ磁極の歯間に付加できる。図10の構成は図示するように2組のモータ要素を組み合わせた構成としているので、円周方向に隣接する各ステータ磁極のN極、S極の極性が相互に逆になる配置構成が可能となっている。その結果、図16の歯間の永久磁石16L、16Qなどのように、図10の各ステータ磁極の歯間に磁束密度を負にバイアスする永久磁石を追加することができる。
ステータ磁極の歯は、図13の磁気特性において、132、あるいは、134、あるいは、135の磁束密度差を活用することは、前記のように、その形状の設計次第で物理的に可能である。しかし、ロータに対向するステータ磁極の先端部SPS、および、ステータに対向するロータ磁極の先端部RPSについては、磁束が片極性であるため、例えば、通常の電磁鋼板の場合、最大の磁束密度が2.0T程度であり、最大磁束密度差が2.0T程度の値しかとることはできない。図13の132に示すような3.0Tというような磁束密度差の効果を、通常の電磁鋼板で得ることはできない。
この対応策として、パーメンジュールなどの高磁束密度が可能な軟磁性材料を前記ステータ磁極の先端部SPS、および、前記ロータ磁極の先端部RPSに使用することができる。具体的には、前記ステータ磁極の先端部SPSは図10の10Vなどの部位であり、前記ロータ磁極の先端部RPSは図10の10Wなどの部位である。なお、ロータ磁極7Rの内径側の太さは大きくし、磁束密度の増加を可能としている。
パーメンジュールは高価なので、使用量を少なくするためにこのような先端部だけに使用した例を示している。モータの軟磁性体の多くにパーメンジュールを使用することは現実的ではない。なお、ステータ磁極の歯の部分には、歯間に挿入した永久磁石の磁束とバックヨークからロータを通る磁束とが重ね合わされるので、結果として、ステータ磁極の先端部SPSより磁束密度は小さい。
パーメンジュールの部分10V、10Wと他の軟鉄部との結合方法、パーメンジュールの形状は強度、コストなどで選択できる。また、パーメンジュールの最大磁束密度は2.4T程度と高く、リラクタンストルクは磁束密度の2乗となるので大変効果的である。また、このようなパーメンジュールは、図6,図11、図16、図18、図19などの他のモータについても同じことが言え、活用できる。
次に、各ステータ磁極を励磁する永久磁石を配置する他の例を図30に示し、説明する。図30は、図8等のモータのバックヨーク部を直線状に展開し、外径側から見た図である。図30の紙面の水平方向はバックヨークの円周方向で、図30の紙面の上下方向はロータ軸方向である。303は永久磁石であり、301のバックヨークの方をS極、302のバックヨークの方をN極としている。永久磁石303がバックヨークを上下に2分していて、上側をS極に励磁し、下側をN極に励磁している。そして、図30の紙面の奥に各ステータ磁極が円周方向に並んで配置している。図30における、一つのステータ磁極の歯の形状は例えば308であり、バックヨーク301の上側からバックヨーク302の下側まで長方形となる。この308のステータ磁極S極であるとすると、磁気的に、バックヨーク301と繋がっている。
304、305、306、307は永久磁石であり、ステータ磁極の歯とバックヨークとの間に配置している。304、305は歯側がN極でバックヨーク301側がS極である。306、307は歯側がS極でバックヨーク302側がN極である。なお、ステータ磁極の歯308および永久磁石304などは、説明のために模式的に記載しているもので、実際には円周上の全周に並べて配置している。
今、図30の308のような一つのS極のステータ磁極SSSの場合について説明する。ステータ磁極SSSの歯はバックヨーク301へは直接つながり、バックヨーク302とは306の様な永久磁石を間に配置する。その結果、ステータ磁極SSSの歯のバックヨーク側のほぼ全面が永久磁石のS極に繋がることになる。また、N極のステータ磁極NNNの場合について説明する。ステータ磁極NNNの歯はバックヨーク302へは直接つながり、バックヨーク301とは304の様な永久磁石を間に配置する。その結果、ステータ磁極NNNの歯のバックヨーク側のほぼ全面が永久磁石のN極に繋がることになる。なお、例えば、あるステータ磁極がロータ磁極に対向していない場合は、304、306などの永久磁石の磁束は歯の軟磁性体部を通ってバックヨーク側を通るので、各永久磁石の電磁気的な動作点がロータ回転位置に影響されて大きく変化することはない。図15に示したようにモータ電流によって磁石の動作点は変化する。図30のような構成とすることにより、各ステータ磁極を永久磁石により励磁することができるので、モータの励磁電流を軽減することができ、モータを高効率化、小型化することができる。
また、永久磁石303の形状は図30では直線形状で、実際の形状は円環状の磁石を示しているが、ステータ磁極の形状に同期して図30の紙面で上下に波状の凹凸を設けた形状とすることもできる。そうすることにより、永久磁石304、305、306、307等を小さくすることができる。薄型のモータの場合、削除することが可能となる。
また、図30の各永久磁石は、各ステータ磁極の巻線などへ磁石可変電流を通電することにより、モータ運転中に増磁、減磁などを行い、永久磁石の可変制御を行うことも可能である。
次に、図18に請求項5の実施例を示す。1個のモータに2組のモータ要素を組み合わせたモータ構成である。本発明モータでは、2組のモータ要素組み合わせ、一部が磁気的に繋がることにより磁束の自由度が増し、新たな効果が発生する。図18の181はロータ軸、182は第1モータのロータ、183の円周上の構成は第1モータのステータの各相ステータ磁極、184は第1モータのステータと第2モータのステータとの共通のバックヨーク、185の円周上の構成は第2モータのステータの各相ステータ磁極、186は第2モータのロータである。6極対、12極のモータである。円周方向の電気角位置を一点鎖線で示してその角度を付記している。特に、第1モータのロータ182と第1モータのステータの各相ステータ磁極183は、図16のモータと同じである。第1モータのステータの各相ステータ磁極183、および、第2モータのステータの各相ステータ磁極185の円周方向の並びは電気角で540°の周期性がある。第2モータのステータと第2モータのロータ186は、第1モータのステータと第1モータのロータ181に対し、電気角で270°の位相差がある。第1モータのロータ181と第2モータのロータ186は、側面で機械的に連結されていて、一緒に回転する。
16U、16W、16Y、および、186、18F、18H、18Kは、図1の第1のロータ17と電気角的に同じである。16T、16V、16X、および、18E、18G、18Jは、図1の第2のロータ18と電気角的に同じである。183、165、および、188、18Cは、図16の161と同様のA相ステータ磁極である。164、187、18Bは、図16の164と同様のA/相ステータ磁極である。163、185、18Aは、図16の163と同様のB相ステータ磁極である。162、189、18Dは、図16の162と同様のB/相ステータ磁極である。18Pは、図16の16M、16Qなどと同じ作用をする永久磁石で、A相ステータ磁極165とA/相ステータ磁極164の歯を負の磁束密度にバイアスする。18T、および、18L、18Qも同様で、円周方向前後のステータ磁極の歯を負の磁束密度にバイアスする。18Mは、B相ステータ磁極163、A相ステータ磁極188、および、A/相ステータ磁極164、B/相ステータ磁極189を励磁する永久磁石である。18Rは、A/相ステータ磁極164、B/相ステータ磁極189、および、A相ステータ磁極165、B相ステータ磁極18Aを励磁する永久磁石である。
図16のモータでは、円周方向に隣接するステータ磁極のN極、S極の極性が相互に逆なので、負の磁束密度にバイアスする永久磁石16M、16Qなどを活用できる。しかし、ロータ回転位置が変化してもステータ磁極側の磁束が一定になるような構成にはなっておらず、励磁用の永久磁石の取り付けは困難である。これに対し、図18のモータは各ステータ磁極が円周方向の隣のステータ磁極の極性は、N極、S極の極性が逆極性であり、負の磁束密度にバイアスする永久磁石18P、18Tなどを配置することができる。そして、例えば、A/相ステータ磁極164とB/相ステータ磁極のバックヨークが一体化して繋がっていて、ロータ回転位置変化に対して両ステータ磁極を通過する磁束の大きさがほぼ一定の関係にある。従って、モータ電流が0の場合、励磁用永久磁石18M、18Rの磁束密度はほぼ一定となり、励磁用のこれらの永久磁石が効果的に作用する。
前記の図10のモータは、2組のモータ要素をロータ軸方向に組み合わせたモータ構成である。図10のモータ構成を、図18のモータのように、内外径の方向に配置して変形することも可能である。第1のロータ103、第1のステータ101、102、10Hを内径側に配置し、第2のステータ105、106、107をその外径側に配置し、第2のロータ10Jを外径側に配置する構成である。二つのステータバックヨークは背中合わせに一体化されるので、軟磁性体108は不要となる。また、この場合には励磁用永久磁石10E、10Kの取り付けが可能である。そして、円周方向に隣のステータ磁極はN極、S極が逆なので、歯間の永久磁石を付加し、各ステータ磁極の歯を負の磁束密度にバイアスすることもできる。図10のモータを内外径の方向に配置して変形したモータは、扁平なモータ形状を実現できる。
次に、図19のモータについて説明する。図19の紙面で上側はモータの縦断面図で、2組のモータ構成を一体化している。10Bはロータ軸である。191は第1のステータのバックヨーク部、192はステータ磁極の歯、193は巻線、194は第1のロータである。これらの第1のステータ191、第1のロータ194などの横断面図は、図19の紙面で下側、左側の図である。19C、19E、19G、19JはA相ステータ磁極であり、S極である。19D、19F、19H、19KはB/相ステータ磁極であり、N極である。これらのステータ磁極を円周上に4組、同一順に配置している。391、392、393などは、各ステータ磁極の間に配置した永久磁石で、各ステータ磁極の歯を負の磁束密度にバイアスすることができる。各永久磁石の磁極方向は、図示する方向であり、各ステータ磁極の磁極と一致している。19L、19M、19Nなどは、各ステータ磁極を励磁する永久磁石である。各永久磁石の磁極方向は、図示する方向であり、各ステータ磁極の磁極の方向と一致している。その内径側のロータは、図6のロータと同じである。4極のモータ構成である。
195は第2のステータのバックヨーク部、196はステータ磁極の歯、197は巻線、198は第2のロータである。これらの第2のステータ195、第2のロータ198などの横断面図は、図19の紙面で下側、右側の図である。19P、19R、19T、19VはB相ステータ磁極、19Q、19S、19U、19WはA/相ステータ磁極である。これらのステータ磁極を円周上に4組、同一順に配置している。199は、第1のステータ191と第2のステータ195とを磁気的に結合する軟磁性体である。19P、19R、19T、19VはB相ステータ磁極であり、S極である。19Q、19S、19U、19WはA/相ステータ磁極であり、N極である。これらのステータ磁極を円周上に4組、同一順に配置している。394、395、396などは、各ステータ磁極の間に配置した永久磁石で、各ステータ磁極の歯を負の磁束密度にバイアスすることができる。各永久磁石の磁極方向は、図示する方向であり、各ステータ磁極の磁極と一致している。19X、19Y、19Zなどは、各ステータ磁極を励磁する永久磁石である。各永久磁石の磁極方向は、図示する方向であり、各ステータ磁極の磁極の方向と一致している。397、398は第1のロータ磁極で、399、39Aは第2のロータ磁極である。19Aは、第1のロータ磁極194と第2のロータ磁極198とを磁気的に結合する軟磁性体である。永久磁石19Mは、第1のステータと軟磁性体19Aと第2のステータ195の間に渡って配置していて、永久磁石19Yに繋がっている。永久磁石19L、19Nなども同じである。ロータ軸19Bが鉄損の小さい軟磁性材料であれば、軟磁性体19Aを兼ねることもできる。
図19の2組のモータのトルク発生作用は、図1および図8で説明したモータのトルク発生と同じである。例えば、A相ステータ磁極19Cと第1のロータ磁極6Bとが発生するトルクは、図1のA相ステータ磁極13と第1のロータ磁極17とが発生するトルクと同じ作用である。また、図19のモータでは、19X、19Y、19Zなどの永久磁石で各ステータ磁極の歯の磁束密度を負に励磁することにより、図13の磁束密度の変化を132あるいは134へ拡大することができ、ステータ磁極の歯の円周方向幅を小さくすることができる。その結果、各ステータ磁極に巻回する巻線のスペースを確保することができる。そして、電気角360°の間にステータ磁極を4個配置することができる。従来のリラクタンスモータのステータ磁極の2倍の密度で配置できることになり、高トルク化が可能となる。図11などのモータも同様の効果を得ることができるが、図19、図16、図18のモータでは、全てのステータ磁極間に永久磁石を配置することができ、各ステータ磁極を負に励磁する効果が大きく、大電流通電時のステータ磁極間の漏れ磁束の低減効果も大きい。
また、図19のモータは、各ステータ磁極を励磁する永久磁石19L、19M、19N、19X、19Y、19Zなどを配置することが可能である。例えば、A相ステータ磁極19Cがロータに対向する面積は、ロータの回転と共に大きく変化する。しかし、A相ステータ磁極19CのバックヨークとB相ステータ磁極19Pのバックヨークとが磁気的に繋がっていて、両ステータ磁極に対向するロータ磁極が電気角でほぼ90°異なることから、両ステータ磁極がロータ磁極に対向する面積の変動を小さくすることが可能となっている。その結果、永久磁石19Mと19Nを配置することにより、A相ステータ磁極19CとB相ステータ磁極19Pをほぼ均一に励磁することができ、これら永久磁石19M、19Nの配置による弊害は小さい。しかも、図19のモータでは、円周方向に各ステータ磁極ごとに励磁用の永久磁石を高密度に配置することができるので、励磁能力が高い。これらの結果、図19のモータは、トルク出力が大きく、高効率である。また、横断面形状から分かるように4極のモータを構成することが可能であり、簡素な構成である。そして、前記の磁気抵抗のアンバランス問題、磁気吸引力のアンバランス問題、ロータ質量のアンバランス問題を解決している。
図19のモータの問題の一つは、磁束の通路形状が3次元となり、図19の第1のステータ191、第1のロータ194、軟磁性体19A、第2のロータ198、第2のステータ195、軟磁性体199と通る交番磁束が発生するため、電磁鋼板内に渦電流が発生する問題がある。この対策の一つとして、圧粉磁心など、電気抵抗の小さい軟磁性体を使用する方法がある。また、電磁鋼板の向きを通過磁束の方向に向けるなどの工夫もできる。
また、図19のモータは、モータ要素の一つを内径側に配置し、他のモータ要素を外径側に配置して変形し、図18のモータのような扁平なモータ形状を実現することもできる。第1のロータ194、第1のステータ191を内径側に配置し、第2のステータ195、第2のロータ198を外径側に配置する構成である。但し、第1のロータ磁極194と第2のロータ磁極198とを磁気的に結合する軟磁性体19Aに相当する部材は必要である。第1のロータ194と第2のロータ198は機械的に接続する必要があり、軟磁性体として磁路を兼ねることができる。扁平なモータ形状が求められる用途には好適である。なお、この場合には前記の渦電流の問題はない。
次に、図20に請求項6の実施例を示す。図20のモータは、図1を変形したモータである。前記のように、図1のモータは、2相の電流でありながら、CCWの方向へ連続的なトルクを発生できることを示した。そして、CCWへ回転している時に回生制動も可能である。しかし、図1のモータは、回生制動のトルクを円周方向に連続的に発生することはできない。この点の改良策として、図20のモータは、簡素な4相モータを簡素な4相回路で駆動して連続的な回生制動も可能とする。なお、回生トルクも全周に渡って得られるということは、図20のモータがCCWとCWの両方向へ連続的なトルク生成ができることでもある。また、EVの主機用モータ用途としては、回生トルクの連続化は低振動化の点でも期待でき、より好ましい。
図20のモータは図1のモータと類似しているが、差異を明確にするために、各部を異なる名称で説明する。201はステータである。203はC相ステータ磁極のS極で、209と20Aはその集中巻き巻線であり、C相電流Icを通電する。Cと付記している。204はE相ステータ磁極のS極で、20Cと20Bはその集中巻き巻線であり、E相電流Ieを通電する。Eと付記している。205はD相ステータ磁極のN極で、20Dと20Eはその集中巻き巻線であり、D相電流Idを通電する。Dと付記している。206はF相ステータ磁極のN極で、20Gと20Fはその集中巻き巻線であり、F相電流Ifを通電する。Fと付記している。207は第3のロータ磁極で、208は第4のステータ磁極である。R3、R4と付記している。図20の全周で2極であり、機械角および電気角で360°である。電気角の角度である0°、90°、180°、270°の円周方向位置を1点鎖線で示す中心線と共に付記している。
図21は、図20のステータの磁極とロータの磁極とが対向する円周上の面、いわゆる、エアギャップ面を直線状に展開した展開図である。水平軸は、ステータの円周方向位置θmeであり、図20に付記した0°、90°、180°、270°と同じ値である。図21の203、205、204、206は、それぞれ、C相ステータ磁極、D相ステータ磁極、E相ステータ磁極、F相ステータ磁極のロータに対向する面の各形状を示しており、図20と同じ番号で示している。図21の207と208は図20の第3のロータ磁極207と第4のロータ磁極208のステータに対向する面の形状である。
図21は、図20のモータがCCWへ回転する時の回生トルクを説明する図である。図21および図20では、各ステータ磁極の円周方向幅は75°で、第3のロータ磁極207の円周方向幅は75°、第4のロータ磁極208の円周方向幅は75°の例である。そして、図21において、第3のロータ磁極207の右端と第4のロータ磁極208の右端との位相差は150°である。なお、破線で示すステータ磁極およびロータ磁極は、360°位相が異なるステータ磁極およびロータ磁極を示しており、同一のものである。図21では、ロータ磁極207と208が、ロータ回転位置θreの75°、105°、120°、150°、165°、180°の場合について、ステータ磁極に対するそれぞれの円周方向位置θmeを示している。なお、図20においてロータ磁極207がロータ回転位置θreの75°から180°までCCWへ回転することは、図21において第3のロータ磁極207が紙面の右側へ移動することに相当し、図20と図21との該当位置はステータの円周方向位置θmeの値により確認することができる。なお、図20、図23の説明では、ステータ磁極とロータ磁極との対向面積で磁気抵抗を説明している。磁束の通過経路としては説明に無理があるが、図6、図8、図10、図11、図16、図18、図19などの多極化のモータモデルへ適用することにより磁気的に対称構造として、磁束経路の矛盾は解消する。
次に、図21において、CCW回転時にどのように回生トルクを発生するかを、各ロータ回転位置θreでの各相電流の通電関係と共に説明する。θre=75°の位置でC相電流Icを通電すると、C相ステータ磁極203と第3のロータ磁極207は丁度対向しているので、ラジアル方向の吸引力が作用するが、回転トルクは発生しない。しかし、ロータがCCWへさらに回転するとCWのトルク、則ち、負のトルクが発生しモータは回生トルクを発生する。
図21でθre=105°の位置では、C相電流Icを通電することにより、C相ステータ磁極203と第3のロータ磁極207がCWのトルクを発生する。E相電流Ieを通電すると、E相ステータ磁極204と第4のロータ磁極208は丁度対向しているので、ラジアル方向の吸引力が作用するが、回転トルクは発生しない。しかし、ロータがCCWへ回転するとCWのトルク、則ち、負のトルクが発生しモータは回生トルクを発生する。
θre=120°の位置では、C相電流Icを通電することにより、C相ステータ磁極203と第3のロータ磁極207がCWのトルクを発生する。同時に、E相電流Ieを通電することにより、E相ステータ磁極204と第4のロータ磁極208がCWのトルクを発生する。
θre=150°の位置では、C相ステータ磁極203と第3のロータ磁極207との対向面がなくなるので、この回転位置から第3のロータ磁極207のCWのトルクが出なくなる。E相電流Ieを通電することにより、E相ステータ磁極204と第4のロータ磁極208がCWのトルクを発生する。
θre=165°の位置では、D相電流Idを通電すると、D相ステータ磁極205と第3のロータ磁極207は丁度対向しているので、ラジアル方向の吸引力が作用するが、回転トルクは発生しない。しかし、ロータがCCWへ回転するとCWのトルク、則ち、負のトルクが発生しモータは回生トルクを発生する。E相電流Ieを通電することにより、E相ステータ磁極204と第4のロータ磁極208がCWのトルクを発生する。
θre=180°の位置では、D相電流Idを通電することにより、D相ステータ磁極205と第3のロータ磁極207がCWのトルクを発生する。一方、E相ステータ磁極204と第4のロータ磁極208との対向面がなくなるので、この回転位置から第4のロータ磁極208のCWのトルクが出なくなる。
以上の結果、ロータ回転位置θreが75°から180°の105°の間、CCWへ回転している状態で、CWのトルク、則ち、負のトルクが発生しモータは回生トルクを発生することを示した。これは、90°以上の間、CWのトルクを発生できるので、4相のステータ磁極が対称構造であることから、全回転に渡ってCWのトルクを発生できることを示している。
図22は、図21とその説明の内容を横軸をロータ回転位置θreとしてCWトルクの発生を示す図である。IcはC相電流、IdはD相電流、IeはE相電流、IfはF相電流の例である。TCは、C相電流IcによりC相ステータ磁極203が発生するトルクである。TDは、D相電流IdによりD相ステータ磁極205が発生するトルクである。TEは、E相電流IeによりE相ステータ磁極204が発生するトルクである。TFは、F相電流IfによりF相ステータ磁極206が発生するトルクである。(TC+TE)はTCとTEの和であり、90以上の間CWトルクを発生している。(TD+TF)はTDとTFの和であり、90以上の間CWトルクを発生している。Tallはこれらのトルクの合計である。トルクの脈動はあるが、CWのトルクを連続的に発生している。
次に、図20に示すモータが回転時にCCWのトルクとCWのトルクを連続的に発生できる条件について説明する。図23は、図21と同様であり、図20のステータの磁極とロータの磁極とが対向する円周上の面、いわゆる、エアギャップ面を直線状に展開した展開図である。水平軸は、エアギャップ面の角度であり、円周方向位置θmeである。C相ステータ磁極203、D相ステータ磁極205、E相ステータ磁極204、F相ステータ磁極206の円周方向幅は(90°−e)で、電気角360°の円周方向位置の間に等間隔に配置している。第3のロータ磁極207の円周方向幅はn、第4のロータ磁極208の円周方向幅はkである。図20のC相ステータ磁極203と図23のA相ステータ磁極51は同じものであり、それらのCW端をステータの円周方向位置θme=0°の基準の点とする。そして、この円周方向位置θme=0°の基準点に対する第3のロータ磁極207のCCWの端の回転角をロータ回転位置θreとしている。図20のロータ回転位置θreは0°である。また、ロータ回転位置θreが0°の時の第4のステータ磁極のCWの端の円周方向位置θmeを(180°−m)と定義する。それは、図23の状態である。また、図20においてロータ磁極207がCCWへ回転することは、図23においてロータ磁極217が紙面の右側へ移動することに相当し、図20と図23との該当位置は、エアギャップ面の円周方向位置θmeの値により確認することができる。
図23に示すモータがCCWのトルクを発生する方法を考える。4相の電流Ic、Id、Ie、Ifを可変できるので、図5において2相の電流Ia、Ibで駆動する条件とは異なる。C相電流Icを通電するC相ステータ磁極203とE相ステータ磁極214で、ロータ回転位置θreの0°から90°までの間に渡って、CCWのトルクを発生する条件について説明する。まず、図23において、eは正の値であり、各ステータ磁極の円周方向幅(90°−e)は90°より小さい値である。C相ステータ磁極203と第3のロータ磁極207が発生できるトルクは、第3のロータ磁極207の円周方向幅nがC相ステータ磁極203の円周方向幅(90°−e)より大きい場合には、ロータ回転位置θreの0°から(90°−e)までCCWのトルクを発生できる。図22のトルクTCである。第3のロータ磁極207の円周方向幅nがC相ステータ磁極203の円周方向幅(90°−e)より小さい場合には、ロータ回転位置θreの0°からnまでの間CCWのトルクを発生できる。ここで、C相ステータ磁極203と第3のロータ磁極207とで、最低でも、ロータ回転位置θreの0°から45°のCCWのトルクを発生する条件は下記となる。
45°<(90°−e)、かつ、45°<n (14)
E相ステータ磁極204と第4のロータ磁極208とで、最低でも、ロータ回転位置θreの45°から90°のCCWのトルクを発生する条件は下記となる。
45°<(90°−e)、かつ、45°<k (15)
m<45° (16)
90°<k+m (17)
e<m (18)
また、CCWへ回転時にロータ回転位置θre=0°の位置で、C相ステータ磁極203と第3のロータ磁極207がCCWトルクを発生する時に、C相ステータ磁極203と第4のロータ磁極208との間で逆向きのCWトルクを発生しない条件は、図23より次の通りである。
k+m<90°+e (19)
但しこの条件は、C相電流Icの通電開始タイミングを遅らせることにより、前記の逆向きのCWトルクの発生を抑制することもでき、(19)式の条件を緩和することもできる。
他方、ロータがCCWへ回転する時にCWのトルク、則ち、負のトルクである回生トルクを連続的に発生する条件は、第3のロータ磁極207のCW端の位置(θre−n)と第4のロータ磁極208のCW端の位置(θre+180°−m−k)との相対的な位相差が(180°−e)より小さいことである。
(θre+180°−m−k)−(θre−n)<180−e
n<m+k−e (20)
前記各値の例について考えてみる。e=15°、m=20°、n=kの場合、(17)、(19)式よりC相ステータ磁極203の円周方向幅nの値は70°より大きく85°より小さい値となる。同様に、e=15°、m=30°、n=kの場合、C相ステータ磁極203の円周方向幅nの値は60°より大きく75°より小さい値となる。同様に、e=15°、m=15°、n=kの場合、C相ステータ磁極203の円周方向幅nの値は75°より大きく90°より小さい値となる。
また、図20のモータはモータの原理を説明するための2極のモータモデルなので、ステータとロータ間の磁気抵抗のアンバランスがある。ロータに作用する磁気吸引力のアンバランスもある。質量的な機械的アンバランスもある。これらのアンバランスの問題は、図20のモータを多極化し、図6、図8、図10、図11、図16、図18、図19などの構成のモータとすることにより解消することができる。永久磁石を活用した高性能化も実現できる。
図24に、図9のロータ形状を変形し、4相電流で駆動する構成としたモータの直線展開図を示す。ステータは図20、図23と同じである。242は第5のロータで、図9の62と同じ形状である。241は第6のロータでその円周方向の幅rを、第5のロータの円周方向幅(p+q)より小さくしている。図24のモータの目的、作用は、CCWとCWの両方向に連続したトルク生成することであり、図20、図23の目的と同じである。
図24のモータの構成、作用を図20、図23と比較して説明する。第6のロータ磁極241の円周方向の幅rは、図23の第3のロータ磁極の円周方向の幅nに相当する。第5のロータ磁極241の円周方向の幅pとqは、図23の第4のロータ磁極の円周方向の幅kとmに相当する。図24のステータから見たロータ磁極241、242の磁気抵抗の和は、図23のステータから見たロータ磁極217、218の磁気抵抗の和はに等しい関係となっている。その観点では、図24のモータと図23のモータは同じトルクの出力が可能である。ただし、第5のロータ242の円周方向の幅でqの部分が円周方向に広いので、その部分に関わるステータ磁極の電流を余計に通電する必要がある。
次に、図26に、図1等のモータを駆動する簡素な構成の例を示す。2相の片方向電流を駆動する。257はA相の巻線とA/相の巻線である。258はB相の巻線とB/相の巻線である。252は直流電源である。261と262はコンデンサであり、267はそれらの中間点であり、この中間点267を中心に正と負の直流電源を作っている。263は巻線257へA相電流Iaを通電する電力素子で、264は電力素子263がオフの時にA相電流Iaを環流するダイオードである。265は巻線258へB相電流Ibを通電する電力素子で、266は電力素子264がオフの時にB相電流Ibを環流するダイオードである。図26の駆動回路で図6、図8等のモータを駆動することができる。3相交流モータ、図31のモータなどは、通常、6個の電力素子で駆動されている。その点を比較すると、図26の駆動回路は2個の電力素子で駆動できるので簡素であり、小型化、低コスト化の可能性がある。なお、直流電源253、コンデンサ261、262の部分は、図27に示す直流電源271と直流電源272に置き換えることもできる。直流電源がバッテリーの場合、1個のバッテリーの中間点を端子として取りだすことができれば、コスト増加を抑えて2個の直流電源とすることができる。また、2個に分けたバッテリーの電圧アンバランスは、充電時、使用時において、負荷側の駆動回路で調整することもできる。
次に、図27に請求項7の実施例を示す。図27は、図20、図24等のモータを駆動する、4相の片方向電流を駆動する簡素な構成の例である。27Bは図20のC相巻線209、20Aで、C相電流Icを通電する。27CはE相巻線20C、20Bで、E相電流Ieを通電する。27DはD相巻線20D、20Eで、D相電流Idを通電する。27EはF相巻線20G、20Fで、F相電流Ifを通電する。273はC相巻線27BへC相電流Icを通電する電力素子であり、274は電力素子273がオフの時にC相電流Icを環流するダイオードである。275はE相巻線27CへE相電流Ieを通電する電力素子であり、276は電力素子275がオフの時にE相電流Ieを環流するダイオードである。277はD相巻線27DへD相電流Idを通電する電力素子であり、278は電力素子277がオフの時にD相電流Idを環流するダイオードである。279はF相巻線27EへF相電流Ifを通電する電力素子であり、27Aは電力素子279がオフの時にF相電流Ifを環流するダイオードである。ここで、C相電流IcとD相電流Id和は、E相電流IeとF相電流Ifの和に近いので、電源の脈動電流を比較的少なくできる。図27に示す4相電流の駆動回路は、4個の電力素子で駆動できるので簡素であり、小型化、低コスト化が可能である。なお、4相電流の駆動回路は、図25の構成を2組使用して、8個の電力素子で駆動することも可能である。
次に、図28、図29に請求項8の実施例を示す。リラクタンストルクは磁束経路の磁束密度が大きくなると磁路の磁気抵抗が増加するので、磁束密度が大きくなるとトルクが低下し易いという問題がある。例えば、図3のA相ステータ磁極13と第1のロータ磁極17との間に作用するトルクTAについて考えてみる。ロータ回転位置θre=0°では、A相ステータ磁極13と第1のロータ磁極17とは対向し始めるところであり、A相電流Iaを通電してもそれぞれの磁路にはわずかな磁束が通っているだけであり、磁束密度は低い。従って、大きなトルクを発生することができる。ロータ回転位置θre=30°では、A相ステータ磁極13と第1の30/75がロータ磁極17に対向しているので、A相電流Iaが大きい場合は単純論理で、それぞれの磁路は飽和磁束密度の30/75の磁束密度になっている。まだ十分大きなトルクを発生することができる。ロータ回転位置θre=45°では、A相ステータ磁極13と第1の45/75がロータ磁極17に対向しているので、A相電流Iaが大きい場合は単純論理で、それぞれの磁路は飽和磁束密度の45/75の磁束密度になっている。エアギャップ部の磁気抵抗に対して磁路の磁気抵抗が無視できない領域に入ってきて、トルクがやや低下し始める。そして、ロータ回転位置θre=75°に近づくにつれ、トルクが急激に低下する。
図28のTACは、図4のTAを拡大した図であり、A相ステータ磁極13の理想的なトルクである。対して、TARはA相ステータ磁極13を通過する磁束が増加するにつれ磁路の磁束密度が上昇し、磁気抵抗が増加して281の部分ではトルクが急激に低下する現実的なトルク特性である。281の部分のトルクの落ち込みにより、トルクが低下する回転位置が発生する問題がある。
図29は、トルクが低下する問題を改善する方法として、軟磁性体を付加する方法を示す図である。図29の各ステータ磁極は、図3の各ステータ磁極と同じである。図29では、各ステータ磁極のロータ磁極に対向する面の側面で、ロータ軸方向に、それぞれ、軟磁性体291、292、293、294、295、296、297、298を付加している。各軟磁性体の円周方向位置は、各ステータ磁極のCCWの端からCW方向30°の位置である。図29の第1のロータ磁極17、第2のロータ磁極1Bについても、各ロータ磁極のステータ磁極に対向する面の側面で、ロータ軸方向に、それぞれ、軟磁性体299、29A、29B、29Cを付加している。各軟磁性体の円周方向位置は、各ロータ磁極のCCWの端からCW方向30°の位置である。
図29において、ロータ回転位置θre=0°では、A相ステータ磁極13と第1のロータ磁極17は対向し始めた位置であり、それぞれの軟磁性体291、292と299、29Aとはまだ離れているので、A相電流Iaを通電しても軟磁性体同士の電磁気的相互作用はない。ロータ回転位置θre=60°に近づくと、それぞれの軟磁性体291、292と299、29Aとが近接し、A相電流Iaにより吸引力が発生し、リラクタンストルクを発生する。図28のTAPに前記軟磁性体291、292と299、29Aとのリラクタンストルク282を示す。このように、TARに示すリラクタンストルクの落ち込み281を軟磁性体291、292、299、29Aによって改善し、TAPの改善トルク282を得ることができる。また、A/相ステータ磁極14と第2のロータ磁極1Bとの間のトルクについては、ロータ回転位置θre=90°に近づくと、それぞれの軟磁性体295、296と29B、29Cとが近接し、A相電流Iaにより吸引力が発生し、リラクタンストルクを発生する。このように、各ステータ磁極、各ロータ磁極に軟磁性体を付加することにより、トルクの低減の問題を軽減することができる。B相ステータ磁極15、B/相ステータ磁極16についても同様である。なお、前記軟磁性体の取り付け位置については、ステータとロータとの相対的な関係なので、取り付けの自由度があり、選択できる。
以上本発明について説明したが、種々の変形、応用、組み合わせが可能である。ロータのスキュー、ステータのスキュー、段スキュー、エアギャップ長を変えるなどのエアギャップ面形状の3次元的な変形などの技術を活用できる。例えば、CW片方向回転を優先する場合は、ステータ磁極のCCWのエアギャップを小さくし、ステータ磁極のCWのエアギャップを大きくすれば、ロータがそのステータ磁極にさしかかった時のCW方向トルクを大きくすることができる。ロータ側についても同様であり、本発明の技術と合わせて活用することができる。ロータ、ステータにスリット状の空隙部を付加して磁気特性を改良することも可能である。アウターロータ型モータ、アキシャルギャップ型モータなどのモータ形状の変更、極数の変更もできる。内外径方向、ロータ軸方向に複数のモータ要素する、あるいは、他の種類のモータ要素と組み合わせることも可能である。環状巻線、波巻巻線、モータ要素の複合化に伴うトロイダル巻線などの種々巻線も活用できる。アルミ線、圧分磁心、アモルファス金属の鉄心、パーメンジュール、樹脂などの種々の材料が使える。また、種々の永久磁石が使用でき、使用時に磁石の磁気特性を可変することも可能である。モータ用電流での磁石可変、あるいは、専用の装置での磁石可変も可能である。また、各巻線の誘起電圧、インダクタンスがロータの回転と共に変化することを利用したセンサレス位置検出技術の活用も可能である。また、モータの振動、騒音を低減するために、各相電流の増加、減少の速度を抑制したり、トルクの発生の点では不要あるいは不利となる電流を流すこともできる。これらについても本発明に含むものである。