JP2016155078A - 正浸透処理システム - Google Patents

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Abstract

【課題】有機性化合物に対し十分な耐久性をもち、水の透過性に優れる正浸透処理システムを提供する。【解決手段】正浸透処理システムは、半透膜ユニットと、半透膜ユニットを介して互いに仕切られた第1の領域および第2の領域と、第1の領域に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部と、第2の領域に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部と、を備え、低浸透圧溶液が供給された第1の領域から、高浸透圧溶液が供給された第2の領域へと、半透膜ユニットを介して流体移動を生じさせる正浸透処理システムであって、半透膜ユニットが、ポリケトン多孔膜支持層と、ポリケトン多孔膜支持層上に配された半透膜スキン層とから成る複合半透膜を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、浸透圧差を駆動力として低浸透圧溶液から高浸透圧溶液へ水を透過させる正浸透処理システムに関する。
正浸透処理は、溶質濃度の異なる溶液を、半透膜を介して接触させることにより、溶質濃度差から生じる浸透圧差を駆動力として、溶質濃度の低い希薄溶液から溶質濃度の高い濃厚溶液へ水を透過させる処理である。
正浸透処理によって、希薄溶液を濃縮したり、あるいは濃厚溶液を希釈したりすることができる。また、希薄溶液から濃厚溶液へ流体が浸透する際の正浸透圧エネルギーによって、発電機を駆動させることもできる。
正浸透処理は、半透膜を用いて溶質よりも水を優先的に透過させる点で、逆浸透処理と共通する。しかし、正浸透処理は、浸透圧差を利用して水を希薄溶液側から濃厚溶液側に透過させており、この点で、浸透圧差に対抗して濃厚溶液側を加圧することにより、水を濃厚溶液側から希薄溶液側に透過させる逆浸透処理とは異なる。そのため、逆浸透処理で用いる半透膜をそのまま正浸透処理に適用しても、必ずしも正浸透処理に適したものとはならない。
逆浸透処理では、膜を挟んだ一方側に濃厚溶液を配し、他方側に希釈溶液を配して、両溶液の浸透圧差に対抗して濃厚溶液側を加圧することにより、水を濃厚溶液側から希薄溶液側に浸透させる。そのため、逆浸透膜には、濃厚溶液側の加圧に耐えられるだけの強度を有することが求められる。そのため、逆浸透膜には、支持層の空隙率をあまり高めずに、支持層の強度を確保することが必要となる。その結果、支持層内で溶質が自由に拡散するスペースが制限されるが、逆浸透膜では透水の進行方向と塩の漏洩方向が同じであるため、支持層で内部分極が起こらず、支持層の構造が膜の透水量(膜透過流速)に与える影響が、決定的なものとならない。従って、濃厚溶液側に加わる圧力の増加に伴い、膜の透水量も同様に増加させることができる。
一方、正浸透膜では、支持層の内部濃度分極が、膜の透水量に大きな影響を与える。正浸透処理では、膜を挟んだ一方側に濃厚溶液を配し、他方側に希薄溶液を配して、両溶液の浸透圧差を駆動力として、水を希薄溶液側から濃厚溶液側に透過させる。この際、正浸透膜の透水量を高めるためには、支持層の内部濃度分極を出来るだけ低減して、スキン層の実効浸透圧差を高めることが重要となる。支持層内で溶質が自由に拡散するスペースが制限されると、支持層内での溶質の濃度分極が起こりやすくなり、十分な透水量を確保することが困難となる。従って、正浸透膜では、支持層を、内部での溶質の拡散を出来るだけ制限しないような空隙率の高い、しかも、そのように形成しても所定の強度を確保することが出来るような材料から構成することが、所望する膜性能を付与する点で重要である。
これまで、正浸透処理用の膜(正浸透膜)として、様々な半透膜が検討されてきた。例えば特許文献1には、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−酢酸ビニル共重合体、ポリスルホン等の支持層にポリアミドスキン層が積層された正浸透膜が開示されている。また、特許文献2には、エポキシ樹脂支持層にポリアミドスキン層が積層された正浸透膜が開示され、特許文献3には、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリプロピレンの支持層にポリアミドスキン層が積層された正浸透膜が開示されている。
このように、従来、様々な正浸透膜が検討されているが、高い透水性能を有する正浸透膜はまだ少なく、高性能な正浸透膜が望まれている。また、従来の高分子正浸透膜では、酸や有機溶媒への耐久性や耐熱性に課題があり、適用範囲が制限されていた。
これに対して、特許文献4には、無機材料であるゼオライトを含有する耐久性に優れる正浸透膜を用いる正浸透膜流動システムが提案されている。
しかしながら、半透膜の透水量は極めて低く、耐久性と透水性能を両立できていない為、正浸透膜流動システムとしては実用性に課題がある。
特開2012−519593号公報 特開2013−013888号公報 特開2013−502323号公報 特開2014−039915号公報
本発明は、上述したような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、特に有機性化合物に対し十分な耐久性をもち、水の透過性に優れる正浸透処理システムを提供することにある。
本発明者らは、上記の問題点を解消する為に鋭意検討を進めた結果、ポリケトン多孔膜を正浸透膜の支持層とし、この表裏面あるいは内外面どちらかの一方の面に半透膜スキン層を積層することにより、支持層の内部分極が効果的に低減され、透水量を高めることができ、かつ、有機性化合物に対する耐久性が高く、正浸透処理システムとして高い透水量を維持できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
半透膜ユニットと、
前記半透膜ユニットを介して互いに仕切られた第1の領域および第2の領域と、
前記第1の領域に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部と、
前記第2の領域に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部と、を備え、
前記低浸透圧溶液が供給された前記第1の領域から、前記高浸透圧溶液が供給された前記第2の領域へと、前記前記半透膜ユニットを介して流体移動を生じさせる正浸透処理システムであって、
前記半透膜ユニットが、ポリケトン多孔膜支持層と、該ポリケトン多孔膜支持層上に配された半透膜スキン層とから成る複合半透膜を含むことを特徴とする正浸透処理システム。
[2]
前記ポリケトン多孔膜支持層が中空糸形状又は平板形状である、[1]に記載の正浸透処理システム。
[3]
前記半透膜スキン層が、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリビニルアルコール/ポリピペラジンアミド、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリピペラジンアミド、ポリイミドのいずれかから成る、[1]又は[2]に記載の正浸透処理システム。
[4]
前記低浸透圧溶液または前記高浸透圧溶液の少なくとも一方に有機性化合物を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の正浸透処理システム。
[5]
ポリケトン多孔膜支持層と、該ポリケトン多孔膜支持層上に配された半透膜スキン層とから成る複合半透膜を含むことを特徴とする、半透膜ユニット。
[6]
[1]〜[4]のいずれかに記載の正浸透処理システムを用いて、前記低浸透圧溶液から前記高浸透圧溶液に水を通過させた後、該高浸透圧溶液から水を回収することを特徴とする、造水方法。
[7]
[1]〜[4]のいずれかに記載の正浸透処理システムを用いて、含水物から水を除去することを特徴とする、含水物の濃縮方法。
[8]
[1]〜[4]のいずれかに記載の正浸透処理システムを用いて、前記低浸透圧溶液から前記高浸透圧溶液へ透過する水で、該高浸透圧溶液を希釈することを特徴とする、希釈方法。
[9]
[1]〜[4]のいずれかに記載の正浸透処理システムを用いて、前記高浸透圧溶液に流れる流量を増加させ、増加した流量で水流発電機を駆動させて発電することを特徴とする、発電方法。
本発明の正浸透処理システムは、半透膜の支持層としてポリケトン多孔膜を用いることにより、支持層の内部濃度分極を抑え、透水量を効果的に高めることが出来る。さらに、有機性化合物を含む低浸透圧流体に対する耐久性を高めることが出来、長時間性能の安定した正浸透処理システムとして使用できる。従って、本発明の正浸透処理システムは、例えば、海水の淡水化、かん水の脱塩、排水処理、各種有価物の濃縮、さらにはオイル・ガスの掘削における随伴水の処理、浸透圧の異なる2液を利用した発電、糖類や肥料や冷媒の希釈などにも好適に用いることができる。
本発明の正浸透処理システムにおいて用いられる半透膜ユニット(中空糸モジュール)の一構成例を示す断面図。 本発明の正浸透処理システムの一構成例を模式的に示す図。 ポリケトン中空糸膜を形成する為に用いる紡糸口金(円筒二重管)の構造を示す断面図。 本発明の正浸透処理システムの他の一構成例を模式的に示す図。
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
図1は、本発明の正浸透処理システムの一構成例を模式的に示す図である。
この正浸透処理システムは、半透膜ユニットと、半透膜ユニットを介して互いに仕切られた第1の領域A1および第2の領域A2と、第1の領域A1に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部と、第2の領域A2に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部と、を備える。
本発明の正浸透処理システムは、正浸透現象を利用したものである。すなわち、この正浸透処理システムでは、半透膜ユニットの一方の面側(第1の領域A1)に低浸透圧溶液を配し、他方の面側(第2の領域A2)に、低浸透圧溶液より浸透圧の高い高浸透圧溶液を供給する。すると、低浸透圧溶液側から高浸透圧溶液側へ流体移動が生じることで、高浸透圧溶液側の流量を増加させる。
図1は、本発明の正浸透処理システムにおいて用いられる半透膜ユニットの一構成例を模式的に示す断面図である。本実施形態では、半透膜ユニットとして中空糸形状の半透膜を用いた場合を例に挙げて説明するが、これに限定されず、平板形状(平膜形状)の半透膜を用いることもできる。
図1に示されるように、中空糸膜モジュール1は、両端に開口を有する複数本の中空糸膜(半透膜ユニット)5aからなる中空糸膜束5と、中空糸膜束5を収容する筒状ケース2と、中空糸膜束5の両端部を筒状ケース2に接着固定する接着固定層6,7と、を備えている。接着固定層6,7により、中空糸膜5aの開口が露出する領域と、中空糸膜5aを挟んで前記領域に連通する外の領域とが区画される。ここでは、中空糸膜束5の両端部側を第1の領域A1とし、中空糸膜5aの外側を第2の領域A2とした場合を例に挙げて説明するが、第1の領域A1と第2の領域A2とが逆であっても構わない。
筒状ケース2には、流体の出入り用のシェル側導管3,4が設けられており、シェル側導管3,4は、筒状ケース2から外側に突き出すように設けられている。
筒状ケース2の両端部には、配管が接続されるヘッダ部8,9が配されている。ヘッダ部8,9には、流体の出入り口となるコア側導管10,11がそれぞれ設けられている。
また、筒状ケース2内に収容された中空糸膜束5の両端部には、複数本の中空糸膜5aの密度分布の偏りを低減するために、偏り規制部材(図示略)が配置されていてもよい。
図2は、本発明の正浸透処理システムの一構成例を模式的に示す図である。この正浸透処理システムでは、図1に示したような中空糸膜モジュール1を用いている。
図2に示されるように、正浸透処理システム100は、例えば、正浸透処理用途であり、中空糸膜モジュール1において、シェル側導管4から中空糸膜5aの外側である第2の領域A2に高浸透圧溶液を供給し、ヘッダ部8から中空糸膜束5の両端部側である第1の領域A1に低浸透圧溶液を供給する。
正浸透処理システム100は、中空糸膜モジュール1のシェル側導管4に接続されて、高浸透圧供給部110から高浸透圧溶液を供給する供給配管101と、シェル側導管3に接続されて循環液を送り出す循環配管102とを備えている。循環配管102は、高浸透圧供給部110に接続されている。さらに、供給配管101や循環配管102の途中には、圧力計や各種弁など(図示せず)が配設されていてもよい。
また、正浸透処理システム100は、中空糸膜モジュール1のコア側導管10に接続されて、低浸透圧供給部111から低浸透圧溶液を供給する供給配管103と、コア側導管11に接続されて低浸透圧溶液を送り出す循環配管104とを備えている。循環配管104は、低浸透圧供給部111に接続されている。さらに、供給配管103や循環配管104の途中には、圧力計や各種弁など(図示せず)が配設されていてもよい。
中空糸膜モジュール1は、シェル側導管3が循環配管102に接続され、また、ヘッダ部8のコア側導管10が低浸透圧溶液の供給配管103に接続される。また、シェル側導管4は高浸透圧溶液の供給配管101に接続され、ヘッダ部9のコア側導管11が循環配管104に接続される。
このような正浸透処理システム100において、高浸透圧溶液は、高浸透圧供給部110から供給配管101及びシェル側導管4を通じて、中空糸膜モジュール1の、中空糸膜5aの外側である第2の領域A2に導入される。低浸透圧溶液は、低浸透圧供給部111から供給配管103及びコア側導管10を通じて、中空糸膜モジュール1の、中空糸膜束5の両端部側である第1の領域A1に導入される。
ヘッダ部8側の第1の領域A1に供給された低浸透圧溶液は、中空糸膜5aの内側を流れるが、このとき、低浸透圧溶液の溶媒(例えば水)の一部は、中空糸膜5a(半透膜)を通過して、中空糸膜5aの外側である第2の領域A2に移動する。この第2の領域A2に移動した溶媒により、例えば、第2の領域A2を流れる高浸透圧溶液は希釈される。ヘッダ部9側に移動した低浸透圧溶液は、中空糸膜5aの端部の開口からヘッダ部9内の第1の領域A1に抜け、コア側導管11を通じて循環配管104に排出される。希釈された高浸透圧溶液はシェル側導管3を通じて第2の領域A2から排出される。
なお、ここでは正浸透処理システム100を用いて高浸透圧溶液を希釈する場合について説明したが、これに限定されず、他の正浸透処理を行うこともできる。
また、上述した説明では、中空糸膜モジュール1において、中空糸膜束5の両端部側を第1の領域A1(低浸透圧側)とし、中空糸膜5aの外側を第2の領域A2(高浸透圧側)とした場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、中空糸膜束5の両端部側を第2の領域A2(高浸透圧側)とし、中空糸膜5aの外側を第1の領域A1(低浸透圧側)としてもよい。
そして本発明の正浸透処理システムは、半透膜ユニットとして、ポリケトン多孔膜支持層上に半透膜スキン層を積層させた複合半透膜を用いることを特徴とする。具体的には、本実施形態では、図1の中空糸膜モジュール1における中空糸膜5a(半透膜ユニット)として、ポリケトン中空糸膜(ポリケトン多孔膜支持層)の内表面または外表面に半透膜スキン層が積層されたものを用いる。
半透膜において、ポリケトン多孔膜を支持層とし、この表裏面あるいは内外面どちらかの一方の面に半透膜スキン層を積層することにより、支持層の内部分極が効果的に低減され、透水量を高めることができ、かつ有機性化合物に対する耐久性が高く、正浸透処理システムとして高い透水量を維持できる。
半透膜には、汚染物質の吸着による性能低下を抑制する為などの目的で、織布や不織布などの布帛、メンブレンなどが複合半透膜の片面あるいは両面に積層されていても良い。
ポリケトン多孔膜を構成するポリケトンポリマー(以下、ポリケトン)は、一酸化炭素とオレフィンとの共重合体から成る。支持層をポリケトンから構成することにより、強度を確保しつつ、空隙率の高い支持層を形成することが可能となる。また、従来、逆浸透膜では不織布等の支持基材が必要とされる場合があった。しかし、ポリケトン支持層は自立性が高いため、このような支持基材も不要となる。これにより、正浸透膜の薄膜化も可能となる。さらに、ポリケトンは、平板状(平膜状)や中空糸状等の任意の形状を容易に形成することができるため、従来公知の膜モジュールに適用することも容易となる。
強度を確保し、空隙率の高い支持層を形成する観点から、ポリケトン支持層は、一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを、10質量%以上、100質量%以下の割合で含むことが好ましい。さらに、ポリケトン支持層のポリケトンの含有率は、多いほど好ましい。例えば、ポリケトン支持層中のポリケトン含有率は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。ポリケトン支持層中のポリケトンの含有率は、支持層を構成する成分のうち、ポリケトンのみを溶解する溶媒によって、ポリケトンを溶解除去する方法や、ポリケトン以外を溶解する溶媒によって、ポリケトン以外を溶解除去する方法によって確認することができる。
ポリケトンの合成において、一酸化炭素と共重合させるオレフィンとしては、目的に応じて任意の種類の化合物を選択できる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の鎖状オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族化合物、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン等の環状オレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化アルケン、エチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル、および酢酸ビニル等が挙げられる。ポリケトン支持層の強度を確保する点からは、共重合させるオレフィンの種類は、1〜3種類であることが好ましく、1〜2種類であることがより好ましく、1種類であることが更に好ましい。
ポリケトンは、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
−R−C(=O)− ・・・(1)
[式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表し、置換基としては、水素、ハロゲン、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、およびシラノール基よりなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む。]
上記式(1)において、ポリケトンの繰り返し単位(すなわちケトン繰り返し単位)は1種類のみから構成されていてもよく、2種類以上の組み合わせであってもよい。
上記式(1)の炭化水素基Rの炭素数は2〜8がより好ましく、2〜3がさらに好ましく、2が最も好ましい。特に、ポリケトンを構成する繰り返し単位は、下記式(2)で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を多く含むことが好ましい。
−CH−CH−C(=O)− ・・・(2)
ポリケトン支持層の強度を確保する点から、ポリケトンを構成する繰り返し単位中の1−オキソトリメチレン繰り返し単位の割合は、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。1−オキソトリメチレン繰り返し単位の割合は100モル%でもよい。なお、ここで100モル%とは、公知の元素分析、NMR(核磁気共鳴)、ガスクロマトグラフィー等の分析装置において、ポリマー末端基を除いて1−オキソトリメチレン以外の繰り返し単位が観測されないことを意味する。典型的には、ポリケトンを構成する繰り返し単位の構造および各構造の量は、NMRによって確認される。
ポリケトンから構成される支持層は多孔体構造であり、内部の貫通空隙を経て溶質や水が通過することができる。支持層内の内部濃度分極を効果的に抑えるためには、支持層内に、より大きな孔径の細孔が形成されていることが好ましく、この点から、ポリケトン支持層は、最大孔径が50nm以上の細孔が形成されていることが好ましい。最大孔径は、バブルポイント法(ASTM F316−86又はJIS K3832に準拠)により測定される。最大孔径が50nm以上であるポリケトン多孔膜を正浸透膜の支持層として用いた場合、支持層内での内部濃度分極を低減することが可能であるため、正浸透膜の高性能化が可能となる。最大孔径を増大させるにしたがって内部濃度分極が低減されることから、ポリケトン支持層の最大孔径は、50nm以上がより好ましく、80nm以上がさらに好ましく、130nm以上が最も好ましい。一方、最大孔径を大きくするにしたがって活性層を支えることが困難になり、耐圧性が悪くなるおそれがあることから、ポリケトン支持層の最大孔径は、2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましく、最も好ましくは0.6μm以下である。
ポリケトン支持層の空隙率は特に限定されないが、空隙率が高くなるほど支持層内での溶質の拡散がしやすくなり、支持層の内部濃度分極を抑えて、正浸透膜の透水量を高めることが可能になる。このことから、ポリケトン支持層の空隙率は、60%〜95%が好ましく、70%〜95%がより好ましく、80%〜95%がさらに好ましい。ポリケトン支持層(多孔膜)の空隙率は、下記(3)式により算出される。
空隙率(%)=(1−G/ρ/V)×100 ・・・(3)
[式中、Gはポリケトン支持層の質量(g)であり、ρはポリケトン支持層を構成する全ての樹脂の質量平均密度(g/cm)であり、Vはポリケトン支持層の体積(cm)である。]
上記式(3)において、ポリケトン支持層が、ポリケトンとは密度の異なる樹脂と、ポリケトン樹脂との複合化によって構成される場合、質量平均密度ρは、各々の樹脂の密度に、その構成質量比率を乗じた値の和である。例えば、ρA及びρBの密度をそれぞれ持つ繊維が、GA及びGBの質量比率で構成された不織布に、密度ρpのポリケトンがGpの質量比率で複合されているときには、質量平均密度は、下記式(4)で表される。
質量平均密度=(ρA・GA+ρB・GB+ρp・Gp)/(GA+GB+Gp) ・・・(4)
ポリケトン支持層を構成する多孔膜は、対称膜であっても非対称膜であってもよい。なお、ポリケトン多孔膜が非対称膜である場合は、半透膜スキン層がポリケトン多孔膜の緻密面に設けられることが好ましい。
ポリケトン支持層の形状は、平板状(平膜状)や中空糸状など任意の形状のものを用いることが出来る。これらポリケトン支持層は公知の方法により製造することができる。例えば、ポリケトンをハロゲン化金属塩(例えば、ハロゲン化亜鉛塩やハロゲン化アルカリ金属塩)を含有する溶液に溶解してポリケトンドープを調製し、このドープをフィルムダイや二重管オリフィス(図3参照)を通して凝固浴中に吐出して、平板状や中空糸状に成形する。さらに洗浄および乾燥することにより、ポリケトン多孔膜が得られる。この場合、例えば、ドープ中のポリマー濃度や凝固浴の温度を調整することで、ポリケトン多孔膜の空隙率や孔径を変えることができる。また、ポリケトンを良溶媒(例えば、レソルシノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、o−クロルフェノール等)に溶解させる。そして、得られた溶液を基板上にキャストして非溶媒(例えば、メタノール、イソプロパノール、アセトン、水等)中に浸漬し、さらに洗浄および乾燥することにより、ポリケトン多孔膜を得ることもできる。この場合、例えば、ポリケトンと良溶媒との混合比率や非溶媒の種類を調整することで、ポリケトン多孔膜の空隙率や孔径を変えることができる。なお、ポリケトンは、例えば、パラジウムやニッケルを触媒として用いて一酸化炭素とオレフィンを重合させることにより得ることができる。ポリケトン支持層の製造は、例えば、特開2002−348401号公報や特開平2−4431号公報に記載されている方法を参考にすることができる。
ポリケトン支持層上には、半透膜スキン層が形成されている。半透膜スキン層は、従来の正浸透膜や逆浸透膜で用いられる公知の素材でよく、浸透圧差を利用して水を希薄溶液側から濃厚溶液側に効率的に透過させる能力をもつ素材のスキン層であればよく、一般に逆浸透(RO)膜やナノフィルター(NF)として使用される半透膜を使用することが出来る。例えば、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリビニルアルコール/ポリピペラジンアミド、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリピペラジンアミド、ポリイミドが好適に用いられる。低浸透圧溶液や高浸透圧溶液に対する耐久性などを考慮して半透膜を選択すればよい。特に、ポリアミドスキン層が、ポリケトン中空糸膜に対する薄膜形成の容易さの点で好適に使用される。
さらに、半透膜スキン層がポリアミドスキン層であれば、ポリアミンとポリカルボン酸誘導体とを重合することにより得られるものであることが好ましく、ポリアミンのアミノ基とポリカルボン酸誘導体のカルボニル基とが縮合してアミド基が形成されたものであることが好ましい。
この場合、ポリアミドスキン層は、ポリアミンとポリカルボン酸誘導体とを重合することにより得ることができる。このとき、ポリアミンがポリケトンのカルボニル基と反応することにより、ポリアミドスキン層をポリケトン支持層に結合させることができる。例えば、ポリアミドスキン層を界面重合法により形成する場合は、ポリアミドスキン層をポリケトン支持層に結合させることができ、それによりポリアミドスキン層を強固にポリケトン支持層上に形成することができる。つまり、界面重合によりポリアミドスキン層をポリケトン支持層に結合することができる。
塩の漏洩をできるだけ抑制する観点から、ポリアミドスキン層は、ポリケトン支持層に結合していることが好ましい。結合とは、化学結合や物理的に結合した状態が挙げられる。化学結合としては、共有結合のようなものであってもよい。共有結合としては、C−C結合、C=N結合、ピロール環を介する結合などが挙げられる。一方、物理的に結合した状態としては、水素結合、ファンデルワールス力、静電引力、疎水相互作用のような分子間力によって、化学結合を介さずに結合した吸着や付着の様な状態が挙げられる。好ましくは、ポリアミンがポリケトンと化学結合した状態である。
ポリアミドスキン層は、ポリアミンとポリカルボン酸誘導体とを界面重合することにより得られるものであることが好ましい。詳細には、ポリアミドスキン層は、ポリケトン支持層上にポリアミンを配し、さらにその上にポリカルボン酸誘導体を配し、ポリアミンとポリカルボン酸誘導体とを界面重合することにより得られるものであることが好ましい。例えば、ポリアミン水溶液をポリケトン支持層上に塗布し、さらにその上にポリカルボン酸誘導体を有機溶媒に溶かした溶液(ポリカルボン酸誘導体含有溶液)を塗布し、ポリアミンとポリカルボン酸誘導体とを界面重合させることにより、ポリケトン支持層上にポリアミドスキン層を形成することができる。ポリカルボン酸誘導体を溶解する有機溶媒としては、水に対する溶解度が低いものが好ましく、例えば、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができる。ポリアミン水溶液やポリカルボン酸誘導体含有溶液の濃度や塗布量を調整することにより、ポリアミドスキン層の孔径や厚みを変えることができ、これによりスキン層の分離能を調整することができる。ポリアミドスキン層の形成は、例えば、特開昭58−24303号公報や特開平1−180208号公報に記載されている方法を参考にすればよい。
ポリアミドスキン層は、ポリアミンとポリカルボン酸誘導体とを重合することにより得ることができる。このとき、ポリアミンがポリケトンのカルボニル基と反応することにより、ポリアミドスキン層をポリケトン支持層に結合させることができる。例えば、ポリアミドスキン層を界面重合法により形成する場合は、ポリアミドスキン層をポリケトン支持層に結合させることができ、それによりポリアミドスキン層を強固にポリケトン支持層上に形成することができる。つまり、界面重合によりポリアミドスキン層をポリケトン支持層に結合することができる。
ポリアミン水溶液をポリケトン支持層上に塗布してから、ポリカルボン酸誘導体含有溶液を塗布するまでの時間は、例えば、10秒〜180秒程度に調整すればよい。ポリアミン水溶液をポリケトン支持層上に塗布して、その上にポリカルボン酸誘導体含有溶液を塗布してスキン層を形成したら、余分なポリカルボン酸誘導体含有溶液を除去し、アニーリングすることが好ましい。アニーリングは公知の方法により行えばよく、例えば、加熱処理による方法や、熱水で洗浄した後に次亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄する方法などが挙げられる。アニーリングにより、スキン層の性能を高めることができる。アニーリングを加熱により行う場合、例えば、70℃〜160℃(好ましくは80℃〜130℃)の範囲の温度で、1分〜20分(好ましくは3分〜15分)行えばよい。
スキン層の厚さは特に限定されないが、通常0.05μm〜2μm程度であり、好ましくは0.05μm〜1μmである。スキン層の厚みは、断面をSEMで観察することにより測定することができる。
本発明の正浸透処理システムは、低浸透圧溶液あるいは高浸透圧溶液の少なくとも一方に有機性化合物を含む。
低浸透圧溶液に有機性化合物が含まれる場合、有機性化合物には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの低級アルコール類や炭素数6以上の高級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ペンタン、ヘキサン、デカン、ウンデカン、シクロオクタンなどの炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、鉱物油、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ピリジンなどの産業用や試験研究用に使用される一般的な有機性溶剤などが挙げられる。
支持層を構成するポリケトンは、前記の有機性化合物のような様々な有機性化合物に対して安定であるため、例えば排水処理や濃縮、脱水を行う際に本発明の正浸透処理システムを用いることで、長時間安定した運転が可能となる。
低浸透圧溶液に有機性化合物が含まれる場合の高浸透圧溶液は、低浸透圧溶液より相対的な浸透圧が高ければよく、その溶質は特に限定されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの水に易溶な塩類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ポリエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの重合体、これらの重合体の共重合体などが挙げられる。
特に、重合体を含む溶液のような高粘度溶液が用いられる場合、空隙率が高く、かつ屈曲率が低く、支持層の緻密層が薄いポリケトン多孔膜を支持層として用いることで、内部分極を効果的に抑えることが出来、透水量を高くすることが出来る。
高浸透圧溶液に有機性化合物が含まれる場合、有機性化合物に特に制限はないが、低浸透圧溶液より相対的な浸透圧を高くするための溶質成分が挙げられる。有機性化合物の具体的な例としては、例えば、グルコースやフルクトースなどの糖類、肥料、冷媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ポリエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの重合体、前記した重合体の共重合体などが挙げられる。
高浸透圧溶液から水を回収する場合、回収を容易にするという観点から、溶質と水とが、温度によって固−液分離あるいは液−液分離するような溶質が好適に用いられる。このような溶質としては、例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)のような温度応答性高分子や低分子量ジオール(例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールや1,2−エタンジオール)のランダム共重合体またはシーケンシャル共重合体などが挙げられる。
支持層を構成するポリケトンは、前記した有機性化合物のような様々な有機性化合物に対して安定であるため、例えば排水処理や濃縮を行う際に、本発明の正浸透処理システムを用いることで、長時間安定した運転が可能となる。
特に、重合体を含む溶液のような高粘度溶液が用いられる場合、空隙率が高く、かつ屈曲率が低く、支持層の緻密層が薄いポリケトン多孔膜を支持層として用いることで、内部分極を効果的に抑えることが出来、透水量を高くすることが出来る。
なお、上述した説明では、中空糸形状の半透膜ユニットを用いた場合を例に挙げて説明したが、平板状(平膜状)の半透膜ユニットを用いることもできる。
図4は、平板状の半透膜ユニットを用いた、本発明の正浸透処理システムの一構成例を模式的に示す図である。
この正浸透処理システムは、直方体形状のケース内に収容された平板状の半透膜121を含む半透膜ユニット120と、半透膜121を介して互いに仕切られた第1の領域A1および第2の領域A2と、第1の領域A1に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部110と、第2の領域A2に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部111と、を備える。
正浸透処理システムは、高浸透圧供給部110から高浸透圧溶液を供給する供給配管101と、循環液を送り出す循環配管102とを備えている。また、正浸透処理システムは、低浸透圧供給部111から低浸透圧溶液を供給する供給配管103と、低浸透圧溶液を送り出す循環配管104とを備えている。さらに、供給配管101,103や循環配管102,104の途中には、圧力計や各種弁など(図示せず)が配設されていてもよい。
半透膜ユニットには、より具体的には特開2014−23985号公報のようなスパイラル型モジュールなどが挙げられる。
[造水方法]
本発明の造水方法は、上述したような本発明の正浸透処理システムを膜分離手段として用いるものである。
本発明の造水方法においては、正浸透膜ユニット(半透膜ユニット)を用い、分離活性層である半透膜スキン層側に低浸透圧溶液を接触させ、その反対側に高浸透圧溶液を接触させる、または、半透膜スキン層側に高浸透圧溶液を接触させ、その反対側に低浸透圧溶液を接触させる。そして、低浸透圧溶液から高浸透圧溶液へ正浸透膜ユニットを介して水を浸透させ、その後に高浸透圧溶液から水を回収することにより造水する。
低浸透圧溶液には無機性溶質が含まれていてもよい。
低浸透圧溶液および高浸透圧溶液は、本発明の正浸透処理システムで処理される前に、ろ過などの公知技術による前処理を行うことにより、微粒子などの異物を除去してもよい。
造水を行う際の温度は特に限定されない。
[含水物の濃縮方法]
本発明の含水物の濃縮方法は、本発明の正浸透処理システムを用いるものである。
本発明の含水物の濃縮方法においては、正浸透膜ユニット(半透膜ユニット)を用い、半透膜スキン層側に低浸透圧溶液を接触させ、その反対側に高浸透圧溶液を接触させる、または、半透膜スキン層側に高浸透圧溶液を接触させ、その反対側に低浸透圧溶液を接触させる。そして、含水物から浸透圧の高浸透圧溶液へ膜を介して水を浸透させることにより、含水物の濃縮や脱水を行う。
濃縮や脱水の対象となる含水物としては、正浸透膜ユニットによって、濃縮が可能な含水物であれば特に制限はなく、有機性化合物または無機性化合物のいずれでもよい。
例えば、有機性化合物が含まれる溶液を濃縮または脱水する場合、有機性化合物としては、例えば、酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、蟻酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸などのカルボン酸類や、スルホン酸、スルフィン酸、ハビツル酸、尿酸、フェノール、エノール、ジケトン型化合物、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルフォンアミド、第1級および第2級ニトロ化合物などの有機酸類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの低級アルコール類や炭素数6以上の高級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ペンタン、ヘキサン、デカン、ウンデカン、シクロオクタンなどの炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、鉱物油、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミドやピリジンなどの窒素を含む有機化合物、酢酸エステル、アクリル酸エステル等のエステル類、その他、ジメチルスルホキシドなどの産業用や試験研究用に使用される一般的な有機性溶剤、糖類、肥料、酵素が挙げられる。
また、含水有機物の有機物としては、水と混合物を形成するような高分子化合物でもよい。このような高分子化合物の例として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどのポリオール類、ポリアミン類、ポリスルホン酸類、ポリアクリル酸などのポリカルボン酸類、ポリアクリル酸エステルなどのポリカルボン酸エステル類、グラフト重合等によってポリマー類を変性させた変性高分子化合物類、オレフィンなどの非極性モノマーとカルボキシル基等の極性基を有する極性モノマーとの共重合によって得られる共重合高分子化合物類などが挙げられる。
また、含水有機物としては、エタノール水溶液のような共沸混合物でもよい。具体的には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類と水の混合物、酢酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等のエステル類と水との混合物、ギ酸、イソ酪酸、吉草酸等のカルボン酸類と水との混合物、フェノールやアニリン等の芳香族有機化合物と水との混合物、アセトニトリル、アクリロニトリル等の窒素含有化合物と水との混合物等が挙げられる。本発明の正浸透処理システムを用いることで、蒸留による濃縮よりも効率よく、水を選択的に除去して含水有機物を濃縮することが出来る。
さらに、含水有機物としては、ラテックスのような、水とポリマーとの混合物でもよい。ラテックスに用いられるポリマーとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのオレフィン−極性モノマー共重合体、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリアミド、ポリエステル、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂;尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;天然ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体などのブタジエン共重合体等のゴム等が挙げられる。ラテックスには界面活性剤が含まれても良い。
更に、含水有機物の例としては、果汁、酒類、食酢などの液体食品、液体肥料、生活排水、工業排水、揮発性有機化合物(VOC)を回収した水溶液などが挙げられる。果汁、酒類、食酢などの液体食品においては、正浸透膜(複合体)による濃縮であれば、蒸発などの手法と異なり、低温でも濃縮が可能であるため、風味を損なわずに、濃縮、減容できるという点で特に望ましい。
また、本発明の正浸透膜(複合体)は、耐酸性を有するため、水と酢酸など有機酸の混合物からの有機酸の濃縮、エステル化反応促進のための系中の水の除去などにも有効に利用できる。
一方、無機性化合物が含まれる溶液を濃縮または脱水する場合、無機性化合物としては、例えば、金属粒子や金属イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどのアニオンなどが挙げられる。
[希釈方法]
本発明の希釈方法は、本発明の正浸透処理システムを用いるものである。
本発明の希釈方法においては、正浸透膜ユニット(半透膜ユニット)を用い、分離活性層である半透膜スキン層側に低浸透圧溶液を接触させ、その反対側に高浸透圧溶液を接触させる、または、半透膜スキン層側に高浸透圧溶液を接触させ、その反対側に低浸透圧溶液を接触させる。そして、低浸透圧溶液から高浸透圧溶液へ正浸透膜を介して水を浸透させることにより高浸透圧溶液を希釈する。希釈される対象物としては、特に限定されないが、例えば肥料や冷媒などが挙げられる。
低浸透圧溶液および高浸透圧溶液は、本発明の正浸透処理システムで処理される前に、ろ過などの公知技術による前処理を行うことで、微粒子などの異物を除去しても良い。
希釈を行う際の温度は特に限定されない。
[発電方法]
本発明の発電方法は、本発明の正浸透処理システムを用いるものである。
本発明の発電方法においては、正浸透膜ユニット(半透膜ユニット)を用い、分離活性層である半透膜スキン層側に低浸透圧溶液を接触させ、その反対側に高浸透圧溶液を接触させる、または、半透膜スキン層側に高浸透圧溶液を接触させ、その反対側に低浸透圧溶液を接触させる。そして、低浸透圧溶液から高浸透圧溶液へ正浸透膜を介して水を浸透させることにより、高浸透圧溶液に流れる流量を増加させ、増加した流量で水流発電機を駆動させて発電を行う。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の説明では、具体的な化合物や数値等を挙げて説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例において用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)最大孔径:d
PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200AEX)を用い、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力=15.6dynes/cm)を用い、JIS K3832(バブルポイント法)に準拠して測定した。
(2)ポリケトン支持層(中空糸)の膜部と半透膜スキン層(ポリアミド)との平均厚みの測定
ポリアミドスキン層が積層されたポリケトン中空糸膜を凍結および割断して、中空糸断面サンプルを作製した。これを、走査型電子顕微鏡(日立製作所製、形式S−4800)を使用し、加速電圧1.0kV、WD5mm基準±0.7mm、およびエミッション電流設定10±1μAの条件で観察した。その写真からポリケトン中空糸膜の膜部とポリアミドスキン層の平均厚みの測定を行った。
(3)高浸透圧溶液が食塩水である場合の、正浸透膜流動システムの透水量と塩の逆拡散の測定:(実施例1〜3および比較例1〜3)
各実施例および比較例で得られた複合中空糸膜モジュールのコア側導管(図1の10および11)に、試験液A(純水30L)、試験液B(純水28.5Lとトルエン1.73L、重量比95:5)または試験液C(純水29.85Lとアセトン0.19L、重量比99.5:0.5)のいずれか1つを入れた50Lのタンクを配管で繋ぎ、ポンプで純水を循環させた。タンクには電導度計が装備されており、純水への塩の移動が測定できる。一方、シェル側導管(図1の3および4)には、濃度3.5質量%の食塩水20Lを入れた50Lのタンクを配管で繋ぎ、ポンプで食塩水を循環させた。コア側とシェル側のタンクは、それぞれ天秤の上に設置され、水の移動が測定できる。コア側の流量を2.2L/分、シェル側の流量を8.8L/分として同時に運転し、塩の移動量および水の移動量を、それぞれ測定した。この水の移動量から透水量を、塩の移動量から塩の逆拡散を、それぞれ算出した。
(4)高浸透圧溶液が有機性化合物を含む溶液である場合の、正浸透膜流動システムの透水量:(実施例4および比較例4)
各実施例および比較例で得られた複合中空糸膜モジュールのコア側導管(図1の10および11)に、純水30Lを入れた50Lのタンクを配管で繋ぎ、ポンプで純水を循環させた。一方、シェル側導管(図1の3および4)には、濃度15質量%のポリエチレングリコール200(東京化成工業株式会社製)水溶液20Lを入れた50Lのタンクを配管で繋ぎ、ポンプで水溶液を循環させた。コア側とシェル側のタンクは、それぞれ天秤の上に設置され、水の移動が測定できる。コア側の流量を2.2L/分、シェル側の流量を8.8L/分として同時に運転し、水の移動量を測定した。この水の移動量から透水量を算出した。
さらに、ポリエチレングリコールの漏れについて、10回試験後のコア側(純水)の液10mlをガラス板上に取り出し、100℃で20分加熱して水分を除去した後に、残った物質を赤外分光光度計(日本分光株式会社製、形式FT/IR−6200)を使用しポリエチレングリコールの有無を評価した。
<実施例1>
エチレンと一酸化炭素とが完全交互共重合した、極限粘度2.2dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度15重量%で65重量%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間撹拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
図3に示した二重管オリフィス14の紡口(外外径D:0.6mm、外内径D:0.33mm、内外径D:0.22mm)を用いて、この50℃のドープ(ドープ粘度:100poise)を、外側の輪状オリフィス12から、同時に、25重量%のメタノール水溶液を、内側の円状オリフィス13から、40重量%のメタノール水溶液の凝固浴に吐出した。これを引き上げて、水洗しながら巻き取った。得られた中空糸膜を長さ70cmに切断して束にした。さらに水洗した後、アセトンで溶媒置換し、さらにヘキサンで溶媒置換した後、50℃で乾燥を行った。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は78%であり、最大孔径は130nmであった。
上記ポリケトン中空糸膜1,500本を、5cm径、50cm長の円筒状プラスチックハウジング(筒状ケース)に充填し、両端部を接着剤で固定することにより図1に示した構造を有する、ポリケトン中空糸膜モジュールを作製した。
次に、m−フェニレンジアミン2.0重量%、カンファースルホン酸4.0重量%、トリエチルアミン2.0重量%、及び、ドデシル硫酸ナトリウム0.25重量%を含む水溶液(第1モノマー溶液)を、上記モジュールのコア側(中空糸の内側)に充填し、300秒静置した。その後、液を抜いて、コア側に空気を通して、中空糸膜側に過剰に付着した溶液を除去した。次いで、トリメシン酸クロリド0.15重量%のヘキサン溶液(第2モノマー溶液)を、モジュールのコア側に1.5L/分の流量で120秒送液し、界面重合を行った。この時のコア側圧力およびシェル側圧力は双方とも常圧とし、重合温度は25℃とした。次いで、上記モジュールのコア側に90℃の窒素を600秒流し、さらにシェル側およびコア側の双方を純水で洗浄することにより、ポリケトン中空糸膜の内表面にポリアミドスキン層が積層された正浸透中空糸膜モジュール(半透膜ユニット)を作製した。
試験液A(純水30L)を用いて測定した、この正浸透中空糸モジュールの透水量は18.5kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は1.2g/(m×hr)であった。
さらに、測定後の正浸透中空糸モジュールを用いて、同じ測定を9回(合計10回)行った。10回目の透水量は18.5kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は1.2g/(m×hr)であった。このモジュールを分解して測定した、ポリケトン中空糸膜の直径は1080μmであり、その膜部の厚みは150μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。
後述する比較例1との比較から分かる通り、ポリケトン中空糸膜を用いた実施例1では、透水量を高め、塩の漏れを抑えることが可能であった。トルエンのような有機性化合物が含まれる場合でも、支持層の耐久性があるために、繰り返し使用しても性能が下がることはなかった。
このモジュールを分解して測定したポリケトン中空糸膜の直径は1080μmであり、その膜部の厚みは150μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。肉眼観察では、特に支持層の様子に変化は見られなかった。
<実施例2>
実施例1と同じ方法で作製したポリケトン正浸透中空糸膜モジュールを使用し、試験液B(純水28.5Lとトルエン1.73L、重量比95:5)を用いて透水量を測定した。その結果、透水量は16.0kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は1.2g/(m×hr)であった。実施例1と同様に繰り返し測定を行った後の、10回目の透水量は16.0kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は1.2g/(m×hr)であった。トルエンのような有機性化合物が含まれる場合でも、支持層の耐久性があるために、繰り返し使用しても性能が下がることはなかった。
このモジュールを分解して測定した、ポリケトン中空糸膜の直径は1080μmであり、その膜部の厚みは150μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。
<実施例3>
実施例1と同じ方法で作製したポリケトン正浸透中空糸膜モジュールを使用し、試験液C(純水29.85Lとアセトン0.19L、重量比99.5:0.5)を用いて透水量を測定したところ、透水量は15.4kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は1.2g/(m×hr)であった。実施例1と同様に繰り返し測定を行った後の、10回目の透水量は15.4kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は1.2g/(m×hr)であった。アセトンのような有機性化合物が含まれる場合でも、支持層の耐久性があるために、繰り返し使用しても性能が下がることはなかった。
このモジュールを分解して測定した、ポリケトン中空糸膜の直径は1080μmであり、その膜部の厚みは150μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。
<比較例1>
ポリエーテルスルホン(BASF社製、商品名Ultrason)を、ポリマー濃度20重量%でN−メチル−2−ピロリドンに添加し、80℃で2時間撹拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
この50℃のドープ(ドープ粘度:60poise)を、二重管オリフィス14(図3参照)を用いて、外側の輪状オリフィス12から、同時に、水を内側の円状オリフィス13から、水凝固浴に吐出した。これを引き上げて、水洗しながら巻き取った。得られた中空糸膜を長さ70cmに切断して束にし、さらに水洗した後、乾燥を行った。このようにして得られたポリエーテルスルホン中空糸膜の空隙率は69%であり、最大孔径は80nmであった。
上記ポリエーテルスルホン中空糸膜を用いて、実施例1と同様にモジュールを作製した。次いで実施例1と同様の界面重合を行うことにより、ポリエーテルスルホン中空糸膜の内表面にポリアミドスキン層が積層された、正浸透中空糸膜モジュールを作製した。
試験液A(純水30L)を用いて測定した、この正浸透中空糸モジュールの透水量は7.5kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は21.0g/(m×hr)であった。実施例1と同様に繰り返し測定を行った後の、10回目の透水量は7.0kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は21.2g/(m×hr)であった。
このモジュールを分解して測定した、ポリエーテルスルホン中空糸膜の直径は1000μmであり、その膜部の厚みは230μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。
<比較例2>
比較例1と同じ方法で作製したポリエーテルスルホン正浸透中空糸膜モジュールを使用し、試験液B(純水28.5Lとトルエン1.73L、重量比95:5)を用いて透水量を測定したところ、透水量は7.2kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は30.0g/(m×hr)であった。さらに、測定後の正浸透中空糸モジュールを用いて、同じ測定を9回(合計10回)行った。10回目の透水量は9.0kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は35.8g/(m×hr)であった。
トルエンによりポリエーテルスルホン支持層が劣化し、長時間使用すると性能が下がる傾向にあった。
このモジュールを分解して測定した、ポリエーテルスルホン中空糸膜の直径は1000μmであり、その膜部の厚みは230μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。肉眼で断面を観察したところ、膨潤している様子であった。
<比較例3>
比較例1と同じ方法で作製したポリエーテルスルホン正浸透中空糸膜モジュールを使用し、試験液C(純水29.85Lとアセトン0.19L、重量比99.5:0.5)を用いて透水量を測定したところ、透水量は7.0kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は35.0g/(m×hr)であった。さらに、測定後の正浸透中空糸モジュールを用いて、同じ測定を9回(合計10回)行った。10回目の透水量は10.0kg/(m×hr)であり、塩の逆拡散は40.2g/(m×hr)であった。アセトンによりポリエーテルスルホン支持層が劣化し、長時間使用すると性能が下がる傾向にあった。
このモジュールを分解して測定した、ポリエーテルスルホン中空糸膜の直径は1000μmであり、その膜部の厚みは230μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。肉眼で断面を観察したところ、膨潤している様子であった。
以上の結果を表1にまとめて示す。
Figure 2016155078
表1から明らかなように、ポリケトン多孔膜を支持層とする本発明の正浸透膜システムでは、トルエンのように支持層に対して浸蝕性のある有機化合物が低浸透圧溶液に含まれている場合であっても、安定して長時間高い透水性を発揮することができ、かつ、高浸透圧溶液からの塩の逆拡散も低レベルに維持することが出来ることが確認された。
<実施例4>
実施例1と同じ方法で作製したポリケトン正浸透中空糸膜モジュールを使用し、低浸透圧溶液として水、高浸透圧溶液としてポリエチレングリコール200水溶液を用いた場合の透水量は、5.6kg/(m×hr)であった。
さらに、測定後の正浸透中空糸モジュールを用いて、同じ測定を9回(合計10回)行った。10回目の透水量は5.6kg/(m×hr)であった。10回試験後のコア側(純水)の液からは、ポリエチレングリコールは検出されなかった。
エチレングリコールのような有機性化合物が含まれる場合でも、支持層の耐久性があるために、繰り返し使用しても性能が下がることはなかった。
このモジュールを分解して測定したポリケトン中空糸膜の直径は1080μmであり、その膜部の厚みは150μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。肉眼観察では、特に支持層の様子に変化は見られなかった。
<比較例4>
比較例1と同じ方法で作製したポリエーテルスルホン正浸透中空糸膜モジュールを使用し、実施例4と同様に透水量の測定を行った。
この正浸透中空糸モジュールの透水量は2.2kg/(m×hr)であった。実施例1と同様に繰り返し測定を行った後の、10回目の透水量は4.0kg/(m×hr)であった。10回試験後のコア側(純水)の液からは、ポリエチレングリコールが検出された。
ポリエチレングリコールによりポリエーテルスルホン支持層が劣化し、長時間使用すると性能が下がる傾向にあった。
このモジュールを分解して測定したポリエーテルスルホン中空糸膜の直径は1000μmであり、その膜部の厚みは230μmであった。また、ポリアミドスキン層の厚みは0.8μmであった。肉眼で断面を観察したところ、膨潤している様子であった。
以上の結果を表2にまとめて示す。
Figure 2016155078
表2から明らかなように、ポリケトン多孔膜を支持層とする本発明の正浸透膜システムでは、ポリエチレングリコールのように支持層に対して浸蝕性のある有機化合物が高浸透圧溶液に含まれる場合でも、安定して長時間高い透水性を発揮することができ、かつ、高浸透圧溶液からの溶質成分の逆拡散も低レベルに維持することが出来ることが確認された。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば上述した実施の形態では、ポリケトン多孔膜支持層が中空糸形状である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、膜状(板状)など、他の形状である場合にも本発明は適用可能である。
本発明の正浸透処理システムは、有機性化合物に対し十分な耐久性をもち、水の透過性に優れたものとなり、海水の淡水化、かん水の脱塩、排水処理、各種有価物の濃縮、さらにはオイル・ガスの掘削における随伴水の処理、浸透圧の異なる2液を利用した発電、糖類や肥料や冷媒の希釈などにも好適に用いることができる。
1 :中空糸膜モジュール
2 :筒状ケース
3 :シェル側導管
4 :シェル側導管
5 :中空糸膜束
5a :中空糸膜
6 :接着固定層
7 :接着固定層
8 :ヘッダ部
9 :ヘッダ部
10 :コア側導管
11 :コア側導管
12 :輪状オリフィス
13 :円状オリフィス
14 :二重管オリフィス
100 :正浸透処理システム
101 :供給配管
102 :循環配管
103 :供給配管
104 :循環配管
110 :高浸透圧供給部
111 :低浸透圧供給部
A1 :第1の領域
A2 :第2の領域

Claims (9)

  1. 半透膜ユニットと、
    前記半透膜ユニットを介して互いに仕切られた第1の領域および第2の領域と、
    前記第1の領域に低浸透圧溶液を供給する低浸透圧溶液供給部と、
    前記第2の領域に高浸透圧溶液を供給する高浸透圧溶液供給部と、を備え、
    前記低浸透圧溶液が供給された前記第1の領域から、前記高浸透圧溶液が供給された前記第2の領域へと、前記半透膜ユニットを介して流体移動を生じさせる正浸透処理システムであって、
    前記半透膜ユニットが、ポリケトン多孔膜支持層と、該ポリケトン多孔膜支持層上に配された半透膜スキン層とから成る複合半透膜を含むことを特徴とする正浸透処理システム。
  2. 前記ポリケトン多孔膜支持層が中空糸形状又は平板形状である、請求項1に記載の正浸透処理システム。
  3. 前記半透膜スキン層が、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリビニルアルコール/ポリピペラジンアミド、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリピペラジンアミド、ポリイミドのいずれかから成る、請求項1又は2に記載の正浸透処理システム。
  4. 前記低浸透圧溶液または前記高浸透圧溶液の少なくとも一方に有機性化合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の正浸透処理システム。
  5. ポリケトン多孔膜支持層と、該ポリケトン多孔膜支持層上に配された半透膜スキン層とから成る複合半透膜を含むことを特徴とする、半透膜ユニット。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の正浸透処理システムを用いて、前記低浸透圧溶液から前記高浸透圧溶液に水を通過させた後、該高浸透圧溶液から水を回収することを特徴とする、造水方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の正浸透処理システムを用いて、含水物から水を除去することを特徴とする、含水物の濃縮方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の正浸透処理システムを用いて、前記低浸透圧溶液から前記高浸透圧溶液へ透過する水で、該高浸透圧溶液を希釈することを特徴とする、希釈方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の正浸透処理システムを用いて、前記高浸透圧溶液に流れる流量を増加させ、増加した流量で水流発電機を駆動させて発電することを特徴とする、発電方法。
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