JP2016151473A - 熱型センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】物理量の変化に応じて変化する温度を測定することにより物理量を測定する熱型センサにおいて、物理量の測定精度をより高くする。【解決手段】熱型センサ100は、物理量の変化に応じて温度が変化する測定領域と、基準領域との温度差により物理量を測定する。熱型センサは、第1の導電形の半導体により形成された第1の熱電素子131と、第1の熱電素子131とは異なる材料により形成された第2の熱電素子151とにより構成されたサーモパイルと、第1の熱電素子131と同一の材料により形成された第1の電極132と、第2の導電型の半導体により形成された第2の電極152とが接合されたダイオードとを有している。物理量を測定するための温度差は、測定領域と基準領域とにサーモパイルの第1と第2の接点を配置することにより、サーモパイルが出力する電圧信号により測定される。【選択図】図3

Description

この発明は、物理量の変化に応じて変化する温度を測定することにより物理量を測定する熱型センサにおいて、物理量の測定精度をより高くする技術に関する。
ガス濃度、流量、流速あるいは湿度等の物理量の変化に応じて変化する温度を測定し、当該物理量を測定する熱型センサは、幅広い分野で使用されている。例えば、水素等の可燃性ガスの濃度を測定するため、触媒を用いて可燃性ガスを燃焼させ、燃焼熱による触媒温度の上昇を電気的に検出する接触燃焼式ガスセンサが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、接触燃焼式ガスセンサにおいて、サーモパイルにより燃焼熱を検出することにより、可燃性ガスに対してより大きなセンサ出力を得て、低濃度の可燃性ガスや感度の低い可燃性ガスに対してガス検知感度を向上すること、および、抵抗(測温抵抗体)により周囲温度を測定することが記載されている。
特開2001−99801号公報
しかしながら、一般的に、測温抵抗体が占める面積を小さくすることは困難であり、周囲温度(環境温度)を測定するために測温抵抗体を用いた場合、周囲温度として測定可能な位置が限定される。そのため、適切な位置において周囲温度を測定し、ガス濃度の測定精度を高くすることは、必ずしも容易でなかった。この問題は、接触燃焼式ガスセンサに限らず、ガス濃度、流量、流速あるいは湿度等を測定する種々の熱型センサに共通する。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、物理量の変化に応じて変化する温度を測定することにより物理量を測定する熱型センサにおいて、物理量の測定精度をより高くする技術を提供することを目的とする。
上記課題の少なくとも一部を達成するため、本発明の熱型センサは、断熱部上に位置し物理量の変化に応じて温度が変化する測定領域と、前記測定領域の温度の測定の基準となり前記測定領域とは別個の基準領域と、の温度差を測定することにより前記物理量を測定する熱型センサであって、第1の導電形の半導体により形成された第1の熱電素子と、前記第1の熱電素子とは異なる材料により形成された第2の熱電素子と、により構成されたサーモパイルと、前記第1の熱電素子と同一の材料により形成された第1の電極と、第2の導電型の半導体により形成された第2の電極と、を有し、前記第1と第2の電極とによりpn接合が形成され、前記熱型センサの特定の位置の温度を測定可能なダイオードと、を備え、前記温度差は、前記測定領域に前記サーモパイルの第1の接点を配置し、前記基準領域に前記サーモパイルの第2の接点を配置することにより、前記サーモパイルが出力する電圧信号により測定されることを特徴とする。
この構成によれば、熱型センサの特定の位置の温度をダイオードにより測定することが可能となる。一般に、ダイオードが占める面積は、測温抵抗体が占める面積よりも小さくできる。そのため、熱型センサにおいて、ダイオードをより適切な位置に配置することができるので、当該ダイオードにより温度を測定することにより、物理量の測定精度をより高くすることが可能となる。また、サーモパイルを構成する第1の熱電素子と、ダイオードの第1の電極とを同一の材料により形成しているので、第1の熱電素子と第1の電極とを同時に形成することができるので、熱型センサの製造工程をより短縮することが可能となる。
前記第1の熱電素子および前記第1の電極は、前記第1の導電型のポリシリコンにより形成されており、前記第2の熱電素子は、前記第2の導電型のポリシリコンにより形成されているものとしても良い。一般に、異なる導電型の半導体を用いたサーモパイルは、熱起電力が大きいため、サーモパイルが出力する電圧信号をより大きくすることができる。そのため、測定領域と基準領域との温度差をより高い感度で測定することができるので、物理量の測定精度をより高くすることが可能となる。また、半導体の中でもポリシリコンは成膜や不純物濃度を変化させることによる広範囲の抵抗値制御および微細加工が容易なため、第1と第2の熱電素子を形成することがより容易となる。
前記第2の電極は、前記第2の導電型のポリシリコンにより形成されているものとしても良い。第2の電極と第2の導電型のポリシリコンにより形成することにより、第2の電極と第2の熱電素子とを同時に形成することができる。そのため、熱型センサの製造工程をさらに短縮することが可能となる。
前記熱型センサは、さらに、前記測定領域上の前記第1の接点の近傍に形成され、可燃性ガスの燃焼触媒を担持した担体を含むガス反応膜と、前記測定領域に形成され、前記ガス反応膜を加熱するように構成されたヒータと、を備え、前記燃焼触媒による前記可燃性ガスの燃焼による前記測定領域の温度の変化を測定することにより、前記物理量として前記可燃性ガスの濃度を測定するものとしても良い。この熱型センサとして構成された接触燃焼式ガスセンサによれば、物理量としての可燃性ガスの濃度の測定精度をより高くすることが可能となる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、ガスセンサや種々の物理量を測定するための熱型センサ、そのガスセンサを利用したセンサモジュール、そのセンサモジュールを使用したガス検出装置およびガス検出システム、それらのガスセンサ、センサモジュールおよびガス検出装置を用いたリークテスト装置やリークテストシステム等の態様で実現することができる。
本発明の第1実施形態としての燃焼式センサモジュールの構成を示す説明図。 ガスセンサの製造工程の中間段階における中間体の形状を示す説明図。 図2の後の段階における中間体の形状を示す説明図。 図3の後の段階における中間体の形状を示す説明図。 図4に示す段階の後、さらに工程を進めることにより得られるガスセンサの形状を示す説明図。 本発明の第2実施形態としての吸光式センサモジュールの構成を示す説明図。 第2実施形態としてのガスセンサの構成を示す説明図。
A.第1実施形態:
A1.接触燃焼式ガスセンサモジュール:
図1は、本発明の第1実施形態としての接触燃焼式ガスセンサモジュール10(以下、単に「燃焼式センサモジュール10」とも呼ぶ)の構成を示す説明図である。図1(a)は、燃焼式センサモジュール10の断面を示している。第1実施形態の燃焼式センサモジュール10では、燃焼式センサチップ100が、ケース11とキャップ12とからなるパッケージ19内に実装されている。キャップ12は、例えば、ステンレス鋼や真鍮等の焼結金属、ステンレス鋼等からなる金網、あるいは、多孔質セラミックスで形成されている。これにより、パッケージ19内外の通気性が確保されるとともに、燃焼式センサチップ100の汚染が抑制され、また、燃焼式センサモジュール10自体の防爆化が図られている。燃焼式センサチップ100は、空洞部119が設けられた基板110がダイボンド材15によりケース11に接着されることにより、ケース11に固定されている。
図1(b)は、ケース11に固定された燃焼式センサチップ100を上面から見た様子を示している。図1(b)における一点鎖線Aは、図1(a)で示した断面の位置を示す切断線である。また、一点鎖線C1,C2は、燃焼式センサチップ100の中心位置を示す中心線である。図1(b)に示すように、燃焼式センサチップ100の上面には、導電膜が露出したボンディングパッドP11〜P17が形成されている。このボンディングパッドP11〜P17と、ケース11の外部電極13に接続された端子14とをワイヤ16で接続することにより、燃焼式センサチップ100と外部回路との接続が可能となっている。
燃焼式センサチップ100の上面には、可燃性ガスを触媒燃焼させるためのガス反応膜191と、比較のための参照膜192とが設けられている。可燃性ガスがキャップ12を透過して燃焼式センサチップ100に到達すると、ガス反応膜191では、可燃性ガスが触媒燃焼し、可燃性ガスの濃度に応じた量の熱が発生する。そのため、ガス反応膜191は、可燃性ガスの濃度に応じて温度が上昇する。一方、参照膜192は、触媒燃焼による温度上昇が発生しない。詳細については後述するが、燃焼式センサチップ100は、ガス反応膜191と参照膜192とのそれぞれの温度を表す信号を出力する。これらの出力信号に基づいて、可燃性ガスの触媒燃焼により温度上昇するガス反応膜191と、可燃性ガスによる温度上昇がない参照膜192との温度差を求めることにより、雰囲気中の可燃性ガスの濃度を測定することができる。なお、このように、燃焼式センサチップ100は、燃焼式センサモジュール10において、ガスを検出する機能を担っているので、ガスセンサそのものであると謂える。そのため、以下では、燃焼式センサチップ100を単に「ガスセンサ100」と呼ぶ。
図1(b)に示すように、ガスセンサ100は、横方向に伸びる中心線C1に対して対称に形成されており、また、縦方向に伸びる中心線C2に対してほぼ対称に形成されている。そのため、以下では、必要性がない限り、このように対称性を有する部分については、その1つについてのみ説明する。また、中心線C1よりガス反応膜191側の部分は、ガス反応膜191の温度を表す信号、すなわち、雰囲気中の可燃性ガスの濃度に応じた信号を出力するように構成されており、中心線C1より参照膜192側の部分は、外的要因によるガス反応膜191の温度変化を補償するための信号を出力する。そのため、ガス反応膜191側の部分は、ガスを検出するガス検出部RD1とも謂うことができ、参照膜192側の部分は外的要因による出力変動を補償する補償部RC1とも謂うことができる。このように、ガスセンサ100は、ガス検出部RD1と補償部RC1とがほぼ対称に形成されているので、環境温度の変化等の外的要因による出力変動を高い精度で補償することができる。
A2.ガスセンサの製造工程:
図1(a)に示すように、ガスセンサ100は、空洞部119が設けられた基板110と、基板110の上面に形成された絶縁膜120とを有している。絶縁膜120上には、ガスの検出機能を実現するための構造(後述する)を形成する複数の膜(機能膜)が積層されている。具体的には、絶縁膜120上に、半導体、導電体および絶縁体等を成膜し、必要に応じてパターニングすることにより、種々の機能膜が形成される。なお、以下では、成膜およびパターニングにより形成される機能膜については、当該パターニングの前後を通して、同一の符号を付して参照する。これらの機能膜は、半導体デバイスの製造方法として周知の技術を用いて形成することができるので、各機能膜の具体的な形成方法については説明を省略する。また、絶縁膜120および絶縁膜120上に積層される機能膜は、ガスセンサの製造工程や構造の変更に伴い、適宜追加あるいは省略される。
図2は、ガスセンサ100の製造工程の中間段階における中間体100aの形状を示す説明図である。図2(a)は、中間体100aを上面から見た様子を示しており、図2(b)は、図2(a)の切断線Aにおける中間体100aの断面を示している。ガスセンサ100の製造工程では、まず、空洞部119(図1(a))を有さないシリコン(Si)等の基板110aを準備する。次いで、準備した基板110aの上面に、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)およびSiOをこの順に成膜することにより、絶縁膜120を形成する。なお、絶縁膜120を、SiOとSiとの多層膜とせず、酸窒化ケイ素(SiON)の単層膜とすることも可能である。また、基板110aの裏面に、SiOおよびSiをこの順に成膜することにより、マスク膜102aを形成する。
基板110aに絶縁膜120とマスク膜102aとを形成した後、上面にn型ポリシリコンを成膜することにより、n型半導体膜130を形成する。このn型半導体膜130をパターニングすることにより、絶縁膜120上にn型熱電素子131とカソード体132とが形成される。n型熱電素子131とカソード体132との形成後、上面にSiOを成膜することにより、第1の層間絶縁膜140aを形成する。この第1の層間絶縁膜140aをパターニングすることにより、カソード体132上の一部分に開口部(コンタクトホール)H11が形成された中間体100aが得られる。
図3は、図2の後の段階における中間体100bの形状を示す説明図である。図3(a)は、中間体100bを上面から見た様子を示しており、図3(b)は、図3(a)の切断線Aにおける中間体100bの断面を示している。コンタクトホールH11の形成後、上面にp型ポリシリコンを成膜することにより、p型半導体膜150を形成する。このp型半導体膜150をパターニングすることにより、p型熱電素子151とアノード体152とが形成される。このとき、2つの電極としてのカソード体132とアノード体152とがコンタクトホールH11を介して接続されることにより、pn接合を有するダイオードが形成される。
なお、n型半導体膜130およびp型半導体膜150の少なくとも一方の材料として、ポリシリコンに替えて、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、鉄シリサイド(FeSi)、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)あるいはビスマス・アンチモン(BiSb)等の種々の半導体を用いても良い。また、第1実施形態では、絶縁膜120上にn型半導体膜130を形成し、層間絶縁膜140a上にp型半導体膜150を形成しているが、これらの半導体膜の導電型を逆にすることも可能である。さらに、2つの半導体膜130,150のいずれかを金属からなる導電膜に置き換えることも可能である。また、ダイオードを、基板110aと、n型もしくはp型半導体膜とにより形成することができる。
p型熱電素子151とアノード体152との形成後、上面にSiOを成膜することにより、第2の層間絶縁膜160を形成する。そして、第1の層間絶縁膜140a(図2)と第2の層間絶縁膜160とを併せてパターニングする。これにより、コンタクトホールH12〜H17が形成された中間体100bが得られる。この中間体100bでは、コンタクトホールH12,H13によりn型熱電素子131が上面に露出し、コンタクトホールH14,H15によりp型熱電素子151が上面に露出している。また、コンタクトホールH16,H17により、それぞれ、アノード体152とカソード体132とが上面に露出している。
図4は、図3の後の段階における中間体100cの形状を示す説明図である。図4(a)は、中間体100cを上面から見た様子を示しており、図4(b)は、図4(a)の切断線Aにおける中間体100cの断面を示している。コンタクトホールH12〜H17の形成後、上面にニクロム(NiCr)を成膜することにより、導電膜170を形成する。この導電膜170をパターニングすることにより、ヒータ171が形成される。また、第1および第2の層間絶縁膜140,160には、n型およびp型半導体膜130,150が露出したコンタクトホールH12〜H17が形成されているので、ヒータ171の形成と同時に、n型半導体膜130と、p型半導体膜150と、導電膜170とをヒータ171の形成と同時に、所定の機能を実現するように接続する配線が形成される。具体的には、温接点接続線172、冷接点接続線173、信号出力線174、サーモパイル接続線175、ヒータ通電線176、グランド配線177、アノード接続線178およびカソード接続線179が形成される。
なお、導電膜170を形成する材料として、NiCrに替えて、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)あるいはアルミニウム合金(例えば、AlSiやAlSiCu)等、合金を含む種々の金属を用いても良い。また、第1実施形態では、ヒータ171と各配線172〜179とを、導電膜170として形成しているが、ヒータをポリシリコンあるいはアモルファスシリコンで形成し、各配線172〜179を金属で形成し、ヒータ通電線176と、ポリシリコンあるいはアモルファスシリコンで形成されたヒータとを接合するものとしても良い。
ヒータ171は、幅の狭い葛折の線状に形成されており、その両端がそれぞれヒータ通電線176とグランド配線177とに接続されている。そのため、ヒータ通電線176とグランド配線177との間に電圧を印加することにより、ヒータ171に通電することができる。温接点接続線172は、上下に積層されたn型熱電素子131とp型熱電素子151とを接続して、ガス反応膜191や参照膜192(図1)の温度を測定するための温接点を形成する。冷接点接続線173は、隣接するn型熱電素子131とp型熱電素子151とを接続して、温度測定の基準となる冷接点を形成するとともに、n型熱電素子131とp型熱電素子151とで構成される複数の熱電対を直列接続する。サーモパイル接続線175は、熱電対を直列接続したサーモパイルをさらに直列接続する。信号出力線174は、直列接続されたサーモパイルの一端のp型熱電素子151に接続されている。一方、直列接続されたサーモパイルの他端にあるn型熱電素子131は、グランド配線177に接続されている。これにより、信号出力線174には、グランド配線177に対して、温接点と冷接点との温度差に対応した電圧信号が出力される。なお、このように、冷接点が配置される基板110上の領域は、温度測定の基準となるので、基準領域とも謂うことができる。また、温接点が配置されるガス反応膜191や参照膜192の下の領域は、冷接点を基準とした温度測定の対象であるので、測定領域とも謂うことができる。アノード接続線178およびカソード接続線179は、pn接合されたアノード体152およびカソード体132に接続されている。そこで、アノード接続線178からカソード接続線179に一定の電流を流した際の順電圧等により、基板110(図1)の温度を測定することができる。
図5は、図4に示す段階の後、さらに工程を進めることにより得られるガスセンサ100の形状を示す説明図である。図5(a)は、ガスセンサ100を上面から見た様子を示しており、図5(b)は、図5(a)の切断線Aにおけるガスセンサ100の断面を示している。導電膜170の形成(図4)の後、中間体100c上に、SiOを成膜して、保護膜180を形成する。この保護膜180をパターニングして開口部181〜185を設けることにより、信号出力線174が露出したボンディングパッド(信号出力パッド)P11,P13と、ヒータ通電線176が露出したボンディングパッド(ヒータ通電パッド)P12,P14と、グランド配線177が露出したボンディングパッド(グランドパッド)P15と、アノード接続線178が露出したボンディングパッド(アノードパッド)P16と、カソード接続線179が露出したボンディングパッド(カソードパッド)P17とが形成される。また、電磁ノイズからのシールド性を向上させ、あるいは、グランド配線に近接した冷接点の温度の均一性を向上させるため、絶縁膜120と、第1および第2の層間絶縁膜140,160とに開口部を設け、グランド配線と基板110aとを接続しても良い。
保護膜180をパターニングした後、基板110に設けられる空洞部119を形成する。空洞部119の形成に際しては、まず、マスク膜102aに開口部109を形成する。次いで、開口部109が設けられたマスク膜102をマスクとして基板110aをエッチングすることにより、空洞部119が形成される。エッチングは、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)や水酸化カリウム(KOH)の水溶液を用いた結晶異方性エッチングにより行うことができる。また、このようなウェットエッチングの他、いわゆるボッシュプロセス等のドライエッチングにより空洞部119を形成するものとしても良い。このように空洞部119を形成することにより、絶縁膜120が裏面側において露出したメンブレン121が形成される。なお、このメンブレン121は、図5から分かるように、空洞部119を渡るように形成されている。
なお、図5の例では、基板を下面側からエッチングすることにより空洞部119を形成しているが、空洞部は、基板を上面側からエッチングして形成することも可能である。この場合、絶縁膜120と、第1および第2の層間絶縁膜140,160と、保護膜180とに貫通穴を設け、当該貫通穴を通して基板をエッチングすることにより空洞部を形成することができる。このように基板を上面側からエッチングした場合、基板の上面側からの加工のみでガスセンサを製造でき、また、基板の残存部を下面側からエッチングした場合よりも多くすることができる。そのため、ガスセンサの製造工程を簡略化して歩留まりをより高くすることができるとともに、エッチング後の基板の強度をより高くすることができる点で、基板を上面側からエッチングするのが好ましい。一方、基板の下面側からエッチングする方が、絶縁膜120に貫通穴を設けることなく空洞部119が形成できるので、メンブレンに貫通穴が形成されて強度が低下することを抑制し、メンブレンの破損を抑制できる点で、好ましい。
また、空洞部は、必ずしも基板に設ける必要はない。例えば、基板と絶縁膜との間、もしくは、絶縁膜120とn型半導体膜および第1の層間絶縁膜との間に、空洞部を形成することも可能である。このような基板上の空洞部は、基板もしくは絶縁膜120上の空洞部を形成する領域に犠牲膜を形成した後、上述のように保護膜までの各機能膜を形成し、次いで保護膜上面から犠牲膜に到達する貫通穴を設け、当該貫通穴を通して犠牲膜を除去することにより、形成することができる。犠牲膜を形成する材料としては、ポリイミド等の樹脂やポリシリコン等の半導体を用いることができる。樹脂からなる犠牲膜は、アッシングにより除去することができ、半導体からなる犠牲膜は、エッチングにより除去することができる。但し、犠牲膜として半導体を用いる場合には、基板もしくはn型半導体膜のエッチングを阻止するため、基板、もしくは、絶縁膜120および犠牲膜の上に、SiOやSi等からなる阻止膜が形成される。このように、基板上に空洞部を形成した場合、基板をエッチングした場合よりも、基板の強度をより高くすることができる。一方、ガスセンサの製造工程をより簡略化できる点においては、基板をエッチングするのが好ましい。
空洞部119の形成後、保護膜180上にガス反応膜191および参照膜192を形成する。具体的には、ガス反応膜191および参照膜192を形成する領域に、それぞれ、燃焼触媒としての白金(Pt)微粒子を担持させたアルミナ粒子等の担体を含むペーストと、触媒を担持させていない担体を含むペーストとを塗布する。ペーストの塗布は、ディスペンサによる塗布技術やスクリーン印刷技術を用いて行うことができる。ペーストを塗布した後、焼成することにより、ガス反応膜191および参照膜192が形成される。このように、保護膜180上にガス反応膜191と参照膜192とを形成することにより、ガスセンサ100が得られる。
なお、ガス反応膜191に使用する燃焼触媒として、Pt微粒子に替えて、パラジウム(Pd)微粒子を用いることも可能である。また、参照膜192の比熱をガス反応膜191に近づけるため、参照膜192を形成するためのペーストに酸化銅(CuO)等の金属酸化物を混ぜても良い。さらに、参照膜192に含まれる担体に、特定のガスについて選択的に触媒として作用する燃焼触媒(例えば、Auの超微粒子)を担持するものとしても良い。この場合においても、当該特定のガス以外の可燃性ガスに関しては、参照膜192の担体には燃焼触媒が担持されていないと謂うことができる。
なお、第1実施形態のガスセンサ100においては、温接点を形成する温接点接続線172と、ガス反応膜191および参照膜192と、ヒータ171とが、いずれもメンブレン121上に形成されている。一方、冷接点を形成する冷接点接続線173は、基板110上に形成されている。また、温接点接続線172により形成される温接点は、ガス反応膜191や参照膜192の下に形成されている。但し、温接点は、必ずしもガス反応膜191や参照膜192の下に形成される必要はない。一般的に、温接点は、ガス反応膜191や参照膜192の近傍に形成されていれば良い。このようにしても、ガス反応膜191や参照膜192の温度を測定することができる。同様に、冷接点は、基板110の近傍に形成されていれば良い。
A3.ガスセンサの動作:
図5(a)および図5(b)に示すように、温接点接続線172は、ガス反応膜191と参照膜192とのそれぞれの下に形成されているため、温接点接続線172の温度は、ガス反応膜191や参照膜192の温度とほぼ同一となる。一方、図1に示すように、基板110は、ダイボンド材15によりパッケージ19のケース11に接着されているので、基板110上に配置された冷接点接続線173の温度は、パッケージ19の温度や環境温度とほぼ同一となる。そのため、信号出力パッドP11,P13には、それぞれ、環境温度を基準としたガス反応膜191および参照膜192の温度に対応した電圧が出力される。そして、2つの信号出力パッドP11,P13の出力電圧の差を取ることにより、環境温度等の外的要因を補償して、ガス反応膜191と参照膜192との温度差を測定することができる。
ガスセンサ100を動作させる際には、グランドパッドP15とヒータ通電パッドP12,P14との間に電圧を印加して、ヒータ171を発熱させ、ガス反応膜191と参照膜192との温度を上昇させる。ガス反応膜191においては、温度が上昇することにより燃焼触媒が活性化する。これにより、雰囲気中に可燃性ガスが存在する場合には、可燃性ガスが触媒燃焼して発熱し、可燃性ガスの濃度に応じて温度が上昇する。一方、参照膜192は、雰囲気中に可燃性ガスが存在する場合においても発熱しない。そのため、ガス反応膜191と参照膜192とには、可燃性ガスの濃度に応じた温度差が生じる。このガス反応膜191と参照膜192との温度差を、上述のように測定することにより、雰囲気中の可燃性ガスの濃度を測定することができる。
このように、ヒータ171を発熱させると、ガス反応膜191における可燃性ガスの触媒燃焼が促進されるので、ガスセンサ100における可燃性ガスの検出感度が高くなる。また、可燃性ガスとして水素ガス(H)を検出する場合、ガス反応膜191における触媒燃焼により水(HO)が生成される。このとき、ガス反応膜191の温度が低いと、生成されたHOが凝結してガス反応膜191が濡れ、検出感度が低下する虞がある。一方、第1実施形態のガスセンサ100では、ヒータ171によりガス反応膜191を加熱することにより、生成されたHOによる検出感度の低下を抑制することが可能となる。また、参照膜192は、ガス反応膜191と同様にヒータ171により加熱することができ、独立に加熱温度を制御できるので、雰囲気に可燃性ガスが含まれない場合に、ガス反応膜191と参照膜192とをほぼ同温度とし、ガス検出部RD1と補償部RC1との出力電圧の差(オフセット)をほぼ0とすることが可能となる。
第1実施形態のガスセンサ100では、上述のように、ヒータ171と、温接点を形成する温接点接続線172と、ガス反応膜191および参照膜192とが、いずれもメンブレン121上に形成されている。このメンブレン121は、一般に薄く(約1〜5μm)形成されるので、メンブレン121自体の熱容量が小さくなるとともに、熱伝導度が低い絶縁膜(SiO,Si)を主体に構成されている。また、メンブレン121の下面には、熱を伝達しない空洞部119が形成されている。このように、ガス反応膜191を空洞部119上に形成された熱容量が小さく、熱伝導度が低いメンブレン121の上部に形成することにより、ガス反応膜191における可燃性ガスの触媒燃焼で発生する熱量が少ない場合においても、ガス反応膜191の温度を十分に上昇させることができる。そのため、ガスセンサ100における可燃性ガスの検出感度をより高くすることができる。なお、メンブレン121の下面に形成された空洞部119は、熱を伝達しないので、断熱部とも言うことができる。
このように、第1実施形態のガスセンサ100では、ガス検出部RD1と補償部RC1とのそれぞれに設けられたサーモパイルが出力する電圧の差を取ることにより、環境温度等の外的要因を補償している。しかしながら、環境温度が変化した場合、基板110、ガス反応膜191および参照膜192の温度が変化する可能性がある。ガス反応膜191の温度が変化すると、燃焼触媒の活性が変化し、可燃性ガスの濃度が一定であっても、ガス検出部RD1のサーモパイルの出力電圧が変化する。また、熱起電力を決定するゼーベック係数は、一般に非線形であり、温接点と冷接点との温度差が一定であっても、冷接点の温度が変化すると、サーモパイルの出力電圧が変化する。そのため、可燃性ガスの濃度を一定とした場合における、可燃性ガス濃度の測定値の変化(ドリフト)が発生する虞がある。
一方、第1実施形態のガスセンサ100では、基板110の上部にアノード体152およびカソード体132がpn接合されたダイオードが形成されている。このように形成されたダイオードを用いることにより、上述のように、基板110の温度を測定することができる。そのため、ダイオードにより測定された基板110の温度により、サーモパイルの出力電圧により測定される可燃性ガスの濃度を補正することにより、ドリフトの影響を低減し、可燃性ガスの濃度をより高い精度で測定することができる。また、測定されたガス濃度を補正するほか、ダイオードにより測定された基板110の温度に応じて、ヒータ171に供給する電力を調整し、ガス反応膜191および参照膜192の温度を一定に維持し、ドリフトを低減することも可能である。
なお、第1実施形態のガスセンサ100では、サーモパイルを構成する2つの熱電素子131,151をn型およびp型の半導体により形成している。そのため、これらの熱電素子131,151を形成すると同時に、ダイオードを構成するカソード体132とアノード体152とを形成することができる。そのため、工程を追加することなく、基板110の温度を測定するためのダイオード(基板測温素子)を形成することができるので、基板測温素子を有するガスセンサの製造工程を短縮することができる。さらに、基板測温素子として、ダイオードを用いることにより、Pt等による測温抵抗体を用いる場合よりも、基板測温素子の占める面積を小さくすることができる。そのため、ガスセンサの小型化を図ることが可能である。また、基板測温素子の占める面積が小さくなることにより、ガスセンサ上のより適切な位置に基板測温素子を設け、あるいは、複数の基板測温素子を設けることにより、より正確に測定値を補正してドリフトの影響を低減し、あるいは、環境温度の変化によるガス反応膜191および参照膜192の温度変化をより小さくしてドリフトを低減することが可能となる。また、一般に測温抵抗体に利用されるPtは、Pt自体が高価であるとともに、パターニングが容易でない。そのため、基板測温素子として測温抵抗体を用いた場合、ガスセンサのコストが上昇するとともに、基板の温度測定特性が不安定化する虞がある。さらに、Ptのパターニングに使用されるイオンミリングは、パターニングされるPtの下の層にダメージを与える可能性がある。そのため、基板測温素子として測温抵抗体を用いた場合、イオンミリングによるダメージによりガスセンサの品質が低下する虞がある。一方、第1実施形態では、基板測温素子としてダイオードを用いることにより、コストの低減を図るとともに、ガスセンサの品質の低下や、基板の温度測定特性の不安定化を抑制することができる。
さらに、第1実施形態のガスセンサ100では、基板110の上部にダイオードを設け、基板110の温度を測定しているが、ダイオードをメンブレン121上に設け、メンブレン121の温度を測定することも可能である。一般的には、ダイオードを用いることにより、ガスセンサ100上の特定の位置における温度を測定することが可能である。例えば、ヒータ171の近くにダイオードを設け、ヒータ171近傍の温度を測定することも可能である。この場合、ダイオードにより測定されたヒータ171近傍の温度に応じてヒータ171に供給する電力を調整することにより、環境温度の変化によるガス反応膜191および参照膜192の温度変化をより確実に抑制することが可能となる。
第1実施形態では、ガス検出部RD1のヒータ171に通電するためのヒータ通電パッドP12と、補償部RC1のヒータ171に通電するためのヒータ通電パッドP14とを別個に形成し、ガス検出部RD1と補償部RC1とのヒータ171に別個に通電できるようにしているが、例えば、これらのヒータ通電パッドを1つの端子に接続し、2つのヒータ171に同時に通電することも可能である。但し、雰囲気中に可燃性ガスがない状態において各ヒータ171の通電電流を調整して、ガス濃度に対応する出力信号のオフセットを0に調整することにより、より低濃度のガスを検出することが可能となる点で、ガス検出部RD1のヒータ171と補償部RC1のヒータ171とに別個に通電できるようにするのが好ましい。
第1実施形態では、燃焼触媒を担持していない担体を含む参照膜192を形成しているが、製造工程を簡略化するために参照膜192の形成を省略することも可能である。この場合、補償部RC1の温接点は、温度がガス反応膜191に近くなるヒータ171の温度を測定するように、ヒータ171の近傍に形成されていれば良い。このとき、補償部RC1のヒータ171は、補償部RC1の温接点の近傍を含む領域に形成されているといえる。但し、参照膜192およびガス反応膜191のそれぞれが形成している領域の熱容量をより近くし、気流等の影響による可燃性ガスの検出精度の低下を抑制することができる点で、参照膜192を形成するのが好ましい。
また、第1実施形態では、ガス反応膜191および参照膜192のそれぞれの下にヒータ171を形成しているが、参照膜192の下のヒータ171を省略することも可能である。この場合においても、空洞部119を渡る薄いメンブレン121上にガス反応膜191および参照膜192が形成されているので、雰囲気が可燃性ガスを含まない場合におけるガス反応膜191と参照膜192との温度差は、主としてメンブレン121上の構造により決定される。そして、基板110の温度が変動しても、ガス反応膜191と参照膜192との温度差の変動は抑制されるので、可燃性ガスの濃度に対応するガス反応膜191の温度上昇量をより正確に求めることが可能となる。但し、雰囲気が可燃性ガスを含まない場合においてガス反応膜191と参照膜192とをほぼ同温度とし、ガス濃度に対応する出力信号のオフセットをほぼ0とすることにより、低濃度のガスをより容易に検出することが可能となる点で、ガス反応膜191および参照膜192のそれぞれの下にヒータ171を形成するのが好ましい。
B.第2実施形態:
図6は、本発明の第2実施形態としての吸光式ガスセンサモジュール20(以下、単に「吸光式センサモジュール20」とも呼ぶ)の構成を示す説明図である。図6(a)は、吸光式センサモジュール20の図6(b)の一点鎖線D2における断面を示している。吸光式センサモジュール20では、吸光式センサチップ200が、ヘッダ21とキャップ30とからなるパッケージ29内に実装されている。キャップ30の上面には、2つの貫通穴39が設けられており、貫通穴39のそれぞれの位置に、互いに異なる特定の波長を透過するフィルタ31,32が取り付けられている。これにより、吸光式センサチップ200は、パッケージ29内に封止されている。吸光式センサチップ200は、その基板210がダイボンド材25によりヘッダ21に接着されることにより、ヘッダ21に固定されている。
図6(b)は、ヘッダ21に固定された吸光式センサチップ200を上面から見た様子を示している。なお、図6(b)における一点鎖線D1,D2は、吸光式センサチップ200の中心位置を示す中心線である。吸光式センサチップ200の上面には、導電膜が露出したボンディングパッドP21,P23,P26,P27が形成されている。このボンディングパッドP21,P23,P26,P27と、封止材23を介してヘッダ21に取り付けられた端子24とをワイヤ26で接続することにより、吸光式センサチップ200は外部の回路に接続される。
図6(a)および図6(b)に示すように、吸光式センサチップ200の上面には、赤外線を吸収する赤外線吸収膜293,294が設けられている。赤外線光源(図示しない)が点灯されると、赤外線光源と吸光式センサモジュール20との間に設置された検出対象ガス封入セル(図示しない)内に導入された検出ガス対象ガスを透過して、吸光式ガスセンサモジュール20の上面から入射した赤外線が、フィルタ31,32を透過して吸光式センサチップ200の赤外線吸収膜293,294に到達すると、到達した赤外線の強度に応じて熱が発生し、赤外線吸収膜293,294の温度が上昇する。このとき、フィルタ31が透過する波長を特定のガス(検出対象ガス)の吸収線の波長とし、フィルタ32が透過する波長を検出対象ガスで吸収されない波長とすることにより、吸光式ガスセンサモジュール20に入射する赤外線の光路上における検出対象ガスの濃度に応じて、赤外線吸収膜293における温度上昇量が、赤外線吸収膜294における温度上昇量よりも低くなる。吸光式センサチップ200は、2つの赤外線吸収膜293,294の温度差を表す信号を出力する。この出力信号に基づいて、検出対象ガスによる吸収により温度上昇量が低下する赤外線吸収膜293と、温度上昇量の低下がない赤外線吸収膜294との温度差を求めることにより、検出対象ガスの濃度を測定することができる。なお、このように、吸光式センサチップ200も、吸光式センサモジュール20において、ガスを検出する機能を担っているので、以下では、吸光式センサチップ200を単に「ガスセンサ200」と呼ぶ。
なお、ガスセンサ200においても、検出対象ガスの吸収線の波長を透過するフィルタ31側の部分は、検出対象ガスの濃度の測定に使用され、中心線C1より検出対象ガスで吸収されない波長を透過するフィルタ32側の部分は、赤外光の光源の輝度や環境温度等の外的要因の変動による赤外線吸収膜293の温度変化を補償するために使用される。そのため、フィルタ31側の部分は、ガスを検出するガス検出部RD2とも謂うことができ、フィルタ32側の部分は外的要因による出力変動を補償する補償部RC2とも謂うことができる。
図7は、第2実施形態としてのガスセンサ200の構成を示す説明図である。図7(a)は、ガスセンサ200を上面から見た様子を示しており、図7(b)は、図7(a)の切断線Bにおけるガスセンサ200の断面を示し、図7(c)は、図7(a)の左側から見た中心線D2におけるガスセンサ200の断面を示している。第2実施形態のガスセンサ200は、第1実施形態のガスセンサ100と同様に作製され、構成も類似している。そのため、ガスセンサ200のうちガスセンサ100と類似する各部には、ガスセンサ100の各部に付した符号の最初の数字を「1」から「2」に変更した符号を付すとともに、その説明を省略する。
上述のように、第2実施形態のガスセンサ200と第1実施形態のガスセンサ100とは、ガスの検出原理が異なっているため、構成が異なっている。具体的には、第2実施形態のガスセンサ200では、ガス反応膜191、参照膜192、ヒータ171およびヒータ通電線176を省略するとともに、赤外線吸収膜293,294および反射膜RFFを設けている。赤外線吸収膜293,294は、ガス反応膜191や参照膜192における担体に替えて、カーボンブラックあるいは金属酸化物を含むペーストを塗布し、焼成することにより形成される。反射膜RFFは、赤外線吸収膜293,294の下部に導電膜270として形成される。この反射膜RFFにより、赤外線吸収膜293,294を透過した赤外線が赤外線吸収膜293,294に向けて反射されるため、赤外線吸収膜293,294における発熱量を大きくし、ガスの検出感度をより高くすることができる。
また、ガスセンサ200では、2つの赤外線吸収膜293,294の温度差を表す信号を出力するため、グランド配線177を省略し、導電膜270として形成されたサーモパイル連結線TCLにより、ガス検出部RD2および補償部RC2のサーモパイルをフロート状態で接続している。具体的には、サーモパイル連結線TCLは、ガス検出部RD2および補償部RC2のそれぞれにおいて、サーモパイルを構成する直列接続された熱電対の端にあたるn型熱電素子231を互いに接続している。このようにn型熱電素子231を互いに接続することにより、信号出力パッドP21から信号出力パッドP23に繋がる回路として見たときに、ガス検出部RD2におけるサーモパイルと、補償部RC2におけるサーモパイルとにおいて、熱電対としての接続順序が逆になっている。具体的に言えば、ガス検出部RD2では、信号出力パッドP21からサーモパイル連結線TCLに向かって順に、温接点においてp型熱電素子251からn型熱電素子231に接続され、冷接点においてn型熱電素子231からp型熱電素子251に接続されている。一方、補償部RC2では、サーモパイル連結線TCLから信号出力パッドP23に向かって順に、冷接点においてp型熱電素子251からn型熱電素子231に接続され、温接点においてn型熱電素子231からp型熱電素子251に接続されている。
このように、直列接続された熱電対の端にあたるn型熱電素子231をフロート状態で互いに接続することにより、2つの信号出力パッドP21,P23間の電圧は、ガス検出部RD2と補償部RC2とのそれぞれの赤外線吸収膜293,294の温度差を表す電圧となる。言い換えれば、2つの信号出力パッドP21,P23からは、検出対象ガスの濃度に対応した信号が直接出力される。そのため、吸光式センサモジュール20(図6)の外部において差動増幅器により出力信号の差を求めることを省略できるので、ガスの検出回路をより簡単にすることが可能となる。また、一般的に差動増幅器等の増幅器は、入力電圧が電源電圧を超えると動作しない。そのため、差動増幅器により出力信号の差を求める場合には、出力信号の電圧が差動増幅器の電源電圧を超えないように、サーモパイルを構成する熱電対の段数や、熱電素子231,251として使用する材料が制限される。一方、直列接続された熱電対の端にあたる熱電素子231をフロート状態で接続すれば、2つの赤外線吸収膜293,294の温度差を表す電圧が出力される。そのため、サーモパイルを構成する熱電対の段数を増やし、また、より熱起電力が大きくなるように熱電素子として使用する材料を選択することにより、ガスの検出感度をより高くすることが可能となる。なお、直列接続の末端に位置する熱電素子をフロート状態で接続する構成は、接触燃焼式のガスセンサにおいても採用することができる。
さらに、ガスセンサ200では、いわゆるボッシュプロセスを用いて基板210に2つの空洞部218,219を設けている。空洞部221,222を区切る板状部212は、ヘッダ21(図6)にダイボンド材25を用いて接着される。図7に示すように、板状部212は、ガス検出部RD2と補償部RC2との境界(中心線D2)の下に設けられており、ヘッダ21に接着されている。そのため、赤外線吸収膜293,294のそれぞれにおいて発生した熱は、板状部212とヘッダ21とを介して吸光式センサモジュール20の外部に放出され、ガス検出部RD2と補償部RC2とは、熱的に分離される。これにより、赤外線吸収膜293,294の温度上昇量の差をより正確に求めることが可能となるので、検出対象ガスの検出感度をより高くすることができる。
第2実施形態のガスセンサ200では、第1実施形態のガスセンサ100と同様に、基板210上に基板測温素子としてのダイオードを設けている。そのため、第1実施形態のガスセンサ100と同様に、サーモパイルの出力電圧により測定される検出対象ガスの濃度を補正することができるので、検出対象ガスの濃度をより正確に測定することが可能となる。また、基板測温素子としてダイオードを用いることにより、ガスセンサの小型化とコストの低減を図るとともに、ガスセンサの品質の低下や、基板の温度測定特性の不安定化を抑制することができる。
C.変形例:
本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
C1.変形例1:
上記各実施形態では、ガス検出部と補償部とのそれぞれにおいて、2つのサーモパイルを設けているが、サーモパイルの数は、任意の数とすることができる。例えば、ガス検出部と補償部とのそれぞれにおいて、単一のサーモパイルを設けるものとしても良く、また、さらにサーモパイルを増やすものとしても良い。また、上記各実施形態では、ガス反応膜と参照膜あるいは赤外線吸収膜の温度を測定するために、熱電対を直列接続したサーモパイルを用いているが、ガス検出部と補償部とのそれぞれにおいて、単一の熱電対、あるいは、測温抵抗体やサーミスタ等の他の測温素子を設け、それによりガス反応膜と参照膜あるいは赤外線吸収膜の温度を測定するものとしても良い。但し、ガス反応膜と参照膜あるいは赤外線吸収膜の温度を表す十分に高い電圧信号が直接出力され、ガスの検出感度をより高くすることが容易となる点で、サーモパイルによりガス反応膜と参照膜あるいは赤外線吸収膜の温度を測定するのが好ましい。
C2.変形例2:
上記各実施形態では、サーモパイルの温接点を、ガス反応膜、参照膜および赤外線吸収膜の下に配置し、冷接点を温度測定の基準となる基板の上に配置しているが、温接点および冷接点の配置は、この態様に限定されない。例えば、ガス検出部のガス反応膜あるいは赤外線吸収膜の下に温接点を配置し、補償部の参照膜あるいは赤外線吸収膜の下に冷接点を配置することも可能である。この場合、冷接点が配置される補償部の参照膜あるいは赤外線吸収膜の下は、温度測定の基準となるので、基準領域と謂うことができ、温接点が配置されるガス検出部のガス反応膜あるいは赤外線吸収膜の下は、冷接点を基準領域とした温度特性の対象であるので、測定領域とも謂うことができる。また、基準領域に温接点を配置し、測定領域に冷接点を配置することも可能である。このようにしても、サーモパイルから出力される電圧信号の極性が反転するだけであるので、ガスの検出をすることができる。
C3.変形例3:
上記各実施形態では、ガスセンサに、ガス検出部と補償部とを設けているが、補償部を省略することも可能である。この場合、可燃性ガスあるいは検出対象ガスが存在しない状態において、ガス反応膜を加熱するヒータに通電を開始し、あるいは、赤外線光源を点灯してから十分に時間が経過した後、演算増幅器等を用いて出力電圧が0となるようにオフセットを調整することにより、可燃性ガスあるいは検出対象ガスの検出を行うことができる。
C4.変形例4:
上記各実施形態では、断熱部として、基板自体に設けられた空洞部、もしくは、基板上に形成された空洞部を用いているが、断熱部は必ずしも空洞である必要はない。断熱部は、例えば、基板自体に設けられた空洞部に、多孔質材や樹脂等の断熱材を埋め込むことにより形成することができる。多孔質材としてSiOを用いる場合には、周知の低比誘電率(Low-k)絶縁膜やシリカエアロゲルの形成技術により空洞部に多孔質SiOを埋め込むことができる。多孔質材として樹脂を用いる場合には、当該樹脂のモノマやプレポリマを空洞部に充填し、その後、熱や紫外線によりモノマやプレポリマを重合させれば良い。また、断熱部として、基板上に多孔質材や樹脂等の断熱膜を形成するものとしても良い。この場合、上述した基板上に空洞部を形成する工程と同様に、基板もしくは絶縁膜上に多孔質材や樹脂等の断熱膜を形成し、形成した断熱膜を残存させることにより断熱部を形成することができる。また、基板上に断熱膜を形成するためのポリシリコン膜を形成し、当該ポリシリコン膜を陽極酸化により多孔質化しても良い。さらに、断熱部として、基板自体に多孔質部を形成するものとしても良い。多孔質部は、例えば、基板としてSi基板を用いている場合には、基板自体に空洞部を形成する工程と同様に、基板の下面側もしくは基板の上面側から、空洞部に相当する領域を陽極酸化により多孔質化することで形成することができる。なお、空洞でない断熱部を用いる場合において、断熱部の材料が導電性を有する場合には、断熱部と、半導体膜あるいは導電膜との間には絶縁膜が追加される。このように、空洞でない断熱部を用いることにより、断熱部上に形成された機能膜の破損が抑制される。
C5.変形例5:
上記各実施形態では、本発明を物理量としてのガス濃度を、ガス濃度に応じて温度が変化する測定領域(すなわち、ガス反応膜191あるいは赤外線吸収膜293の近傍)と、測定領域の温度の測定の基準となる基準領域(すなわち、基板110,210上)との温度差を測定することにより測定するガスセンサに適用しているが、本発明は、ガスセンサの他、物理量の変化に応じて温度が変化する測定領域と、測定領域の温度の測定の基準となる基準領域との温度差を測定することにより、当該物理量を測定する種々の熱型センサに適用することができる。本発明は、例えば、物理量として、流量、流速あるいは湿度を測定する熱型センサに適用することができる。この場合、メンブレン上に、測定領域であるヒータと、ヒータの近傍にサーモパイルの温接点を配置し、基準領域である基板上にサーモパイルの冷接点を配置し、サーモパイルが出力する電圧信号により測定領域と基準領域との温度差を測定すれば良い。この場合においても、ダイオードにより温度を測定することにより、環境温度の変化による測定値のドリフトの影響を低減し、あるいは、測定値のドリフトを抑制することが可能となるので、物理量の測定精度をより高くすることができる。
10…燃焼式センサモジュール、11…ケース、12,30…キャップ、13…外部電極、14,24…端子、15,25…ダイボンド材、16,26…ワイヤ、19,29…パッケージ、20…吸光式センサモジュール、21…ヘッダ、23…封止材、31,32…フィルタ、39…貫通穴、100,200…ガスセンサ、100a,100b,100c…中間体、102,102a…マスク膜、109…開口部、110,110a,210…基板、119,218,219…空洞部、120,220…絶縁膜、121,221,222…メンブレン、130,230…n型半導体膜、131,231…n型熱電素子、132,232…カソード体、140,140a,160,240,260…層間絶縁膜、150,250…p型半導体膜、151,251…p型熱電素子、152,252…アノード体、170,270…導電膜、171…ヒータ、172,272…温接点接続線、173,273…冷接点接続線、174,274…信号出力線、175,275…サーモパイル接続線、176…ヒータ通電線、177…グランド配線、178,278…アノード接続線、179,279…カソード接続線、180,280…保護膜、181〜185,281,284,285…開口部、191…ガス反応膜、192…参照膜、212…板状部、293,294…赤外線吸収膜、H11〜H17…コンタクトホール、P11,P13,P21,P23…信号出力パッド、P12,P14…ヒータ通電パッド、P15…グランドパッド、P16,P26…アノードパッド、P17,P27…カソードパッド、RC1,RC2…補償部、RD1,RD2…ガス検出部、RFF…反射膜、TCL…サーモパイル連結線

Claims (4)

  1. 断熱部上に位置し物理量の変化に応じて温度が変化する測定領域と、前記測定領域の温度の測定の基準となり前記測定領域とは別個の基準領域と、の温度差を測定することにより前記物理量を測定する熱型センサであって、
    第1の導電形の半導体により形成された第1の熱電素子と、前記第1の熱電素子とは異なる材料により形成された第2の熱電素子と、により構成されたサーモパイルと、
    前記第1の熱電素子と同一の材料により形成された第1の電極と、第2の導電型の半導体により形成された第2の電極と、を有し、前記第1と第2の電極とによりpn接合が形成され、前記熱型センサの特定の位置の温度を測定可能なダイオードと、
    を備え、
    前記温度差は、前記測定領域に前記サーモパイルの第1の接点を配置し、前記基準領域に前記サーモパイルの第2の接点を配置することにより、前記サーモパイルが出力する電圧信号により測定される、
    熱型センサ。
  2. 請求項1記載の熱型センサであって、
    前記第1の熱電素子および前記第1の電極は、前記第1の導電型のポリシリコンにより形成されており、
    前記第2の熱電素子は、前記第2の導電型のポリシリコンにより形成されている、
    熱型センサ。
  3. 前記第2の電極は、前記第2の導電型のポリシリコンにより形成されている、請求項2記載の熱型センサ。
  4. 請求項1ないし3のいずれか記載の熱型センサであり、さらに、
    前記測定領域上の前記第1の接点の近傍に形成され、可燃性ガスの燃焼触媒を担持した担体を含むガス反応膜と、
    前記測定領域に形成され、前記ガス反応膜を加熱するように構成されたヒータと、
    を備え、
    前記燃焼触媒による前記可燃性ガスの燃焼による前記測定領域の温度の変化を測定することにより、前記物理量として前記可燃性ガスの濃度を測定する、
    熱型センサ。
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