以下、図面に基き本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
(1)全体構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシリーズ式ハイブリッド車両1のブロック構成図である。車両1は、内燃機関であるエンジン10と、発電機20と、バッテリ30と、走行用の駆動モータ40とを備える。エンジン10は発電機20を駆動して発電させるための発電用エンジンであり、水素タンク70に貯留されている水素(詳しくは水素ガス、本発明の「第1燃料」に相当)とCNGタンク270に貯留されているCNG(圧縮天然ガス、本発明の「第2燃料」に相当)とを燃料として併用する気体燃料エンジンである。水素タンク70は圧縮された高圧の水素ガスを貯留し、CNGタンク270は圧縮された高圧の天然ガスを貯留する。CNGは水素より燃焼熱が大きくかつリーン限界が低い(リーン限界の空気過剰率λが小さい)気体燃料である。車両1の走行は常に駆動モータ40で行われ、駆動モータ40に発電機20及び/又はバッテリ30からインバータ50を介して電力が供給される。
発電機20は、回転軸(図示せず)がエンジン10の出力軸(図3に示すエキセントリックシャフト13)に連結され、エンジン10で駆動されて駆動モータ40を駆動させるための電力を発電するジェネレータとしての機能の他、エンジン10に駆動力を付与してエンジン10を始動させるスタータモータとしての機能を有する。
具体的に、発電機20は、図示しないが、回転軸と連動して回転するロータと、ロータの周囲に配置されたステータとを備え、ロータに磁界を発生させるためのフィールドコイルが巻装され、ステータに磁界を発生させるための三相コイルが巻装される。上記フィールドコイル及び三相コイルはそれぞれ個別にインバータ50に接続され、ロータが回転軸ひいてはエンジン10の出力軸によって回転されると、発電機20は電力を発電するジェネレータとして機能し、インバータ50から三相コイルに電流が印加されると、発電機20はトルクを発生するモータとして機能する。
発電時は、インバータ50からフィールドコイルに電流が印加され、それによって発生する磁界の中をロータが回転することにより、ステータの三相コイルに誘導電流が発生する。発電量は、フィールドコイルへの印加電流の増減によって調節され、フィールドコイルへの印加電流が高く磁束密度が高いほど発電量が多くなる。
バッテリ30は、比較的、高電圧、大容量のバッテリであり、発電機20で発電された電力を蓄電する他、車両1の外部電源による充電が可能である。
駆動モータ40は、発電機20の発電電力及びバッテリ30の蓄電電力の少なくとも一方の電力を用いて駆動され、駆動モータ40の駆動力が差動装置60を介して駆動輪(左右の前輪)61に伝達されて車両1が走行する。駆動モータ40は、車両1の減速時は、ジェネレータとして機能し、駆動モータ40で発電された電力はバッテリ30に蓄電される。
発電機20、バッテリ30、及び駆動モータ40の間にインバータ50が介設され、このインバータ50を介して発電機20の発電電力がバッテリ30及び駆動モータ40の少なくとも一方に供給され、また、このインバータ50を介してバッテリ30の蓄電電力が駆動モータ40及びスタータモータとしての発電機20に供給される。
図2に示すように、エンジン10は、ツインロータ式のロータリピストンエンジンであり、2つのロータハウジング11と図示しない3つのサイドハウジングとが交互に重ね合わされてエンジン本体が構成される。
図2において、2つのロータハウジング11は展開された状態で描かれ、2つのロータハウジング11の中央部にそれぞれ描かれるエキセントリックシャフト13は共通する単一のものであり、吸気通路14及び排気通路15に描かれる矢印は吸気及び排気の流れを示す。
各ロータハウジング11とその両側のサイドハウジングとでそれぞれ繭状のロータ収容室(本発明の「気筒」に相当)11aが形成され、各ロータ収容室11aに概略三角形状のロータ12が収容される。ロータ12は、三角形の各頂部に図示しないアペックスシールを有し、上記アペックスシールがロータハウジング11のトロコイド内周面に当接することにより、ロータ収容室11aに3つの作動室を画成し、その状態で、エキセントリックシャフト13の周りで自転しつつ、エキセントリックシャフト13の周りを公転する。ロータ12が1回転する間に、3つの作動室がトロコイド内周面に沿って移動し、各作動室で、吸気、圧縮、膨張、及び排気の各行程が行われ、これにより発生する回転力がロータ12を介してエキセントリックシャフト13から取り出される。
ロータ収容室11aに吸気通路14及び排気通路15が接続される。吸気通路14は、上流側は1つの単路であるが、下流側は2つの分岐路に分岐し、各分岐路がそれぞれ各ロータハウジング11の吸気行程が行われる作動室に連通するように接続される。排気通路15は、下流側は1つの単路であるが、上流側は2つの分岐路に分岐し、各分岐路がそれぞれ各ロータハウジング11の排気行程が行われる作動室に連通するように接続される。
吸気通路14の上流側の単路にスロットル弁16が配設される。スロットル弁16は、ステッピングモータ等のスロットル弁アクチュエータ90により駆動されて開度(スロットル開度)が調節され、吸気通路14の流通面積、すなわちエンジン10の吸入空気量(吸気量)を調節する。
吸気通路14の下流側の分岐路にそれぞれポート噴射インジェクタ17,217が配設される。これらのうち、インジェクタ17は、水素タンク70から供給される水素を各ロータハウジング11の吸気ポートに噴射、つまりポート噴射(本発明の「ポート供給」に相当)する水素用ポート噴射インジェクタ(本発明の「第1燃料供給手段」に相当)であり、インジェクタ217は、CNGタンク270から供給されるCNGを各ロータハウジング11の吸気ポートにポート噴射するCNG用ポート噴射インジェクタ(本発明の「第2燃料供給手段」に相当)である。上記インジェクタ17,217で噴射された水素又はCNGは空気と混合された予混合状態で各ロータハウジング11の吸気行程が行われる作動室に供給される。
各ロータハウジング11にそれぞれ直噴インジェクタ18,218が配設される。これらのうち、インジェクタ18は、水素タンク70から供給される水素を各ロータハウジング11の吸気行程が行われる作動室内に直接噴射、つまり筒内噴射(本発明の「筒内供給」に相当)する水素用直噴インジェクタ(本発明の「第1燃料供給手段」に相当)であり、インジェクタ218は、CNGタンク270から供給されるCNGを各ロータハウジング11の吸気行程が行われる作動室内に直接筒内噴射するCNG用直噴インジェクタ(本発明の「第2燃料供給手段」に相当)である。
本実施形態では、エンジン10の通常運転中は、専ら、直噴インジェクタ18,218による筒内噴射のみが行われる。言い換えると、ポート噴射と筒内噴射とが0/100の比率(本発明の「基準比率」に相当)で行われる。
各ロータハウジング11にそれぞれリーディング側及びトレーリング側の2つの点火プラグ19が配設される。点火プラグ19は、ポート噴射インジェクタ17,217や直噴インジェクタ18,218で噴射された水素及びCNGと空気との混合気に火花点火するものである。
排気通路15の下流側の単路に排気ガスを浄化するための排気ガス浄化触媒81,82が配設される。これらのうち、上流側の排気ガス浄化触媒81は三元触媒であり、下流側の排気ガス浄化触媒82はNOx吸蔵還元触媒である。
排気通路15の下流側の単路の三元触媒81よりも上流にターボ過給機300のタービンホイール(以下単に「タービン」という)301が配置され、吸気通路14の上流側の単路のスロットル弁16よりも下流にターボ過給機300のコンプレッサホイール(同じく「コンプレッサ」という)302が配置され、上記タービン301とコンプレッサ302とが相互に連結軸303で連結される。図示しないが、ターボ過給機300は、タービン301の近傍に、排気ガスの一部をバイパスさせるウェイストゲートを有する。
本実施形態では、エンジン10は、図示しない連通ポート及び連通制御弁により、ミラーサイクル化がなされている。すなわち、連通ポートは、2つのロータハウジング11に挟まれたサイドハウジングに形成され、2つのロータ収容室11aを連通する。連通制御弁は、連通ポートに設けられたバタフライ弁であり、連通ポートを開閉する。連通制御弁が開くと、一方のロータ収容室11aの圧縮行程の作動室と、他方のロータ収容室11aの吸気行程の作動室とが連通し、圧縮行程の作動室から吸気行程の作動室に吸気の一部が押し出される。そのため、連通制御弁が閉じるまでは、圧縮ストロークがデッドストロークとなって有効圧縮比が低下する。これにより、レシプロエンジンで吸気弁の閉弁時期を遅角させるのと同様、ミラーサイクル化がなされる。併せて、スロットル弁16の開度を大き目に設定することにより、ポンプ損失の低減が図られる。
図3に示すように、水素タンク70と水素用ポート噴射インジェクタ17及び直噴インジェクタ18とを連絡する水素燃料配管120と、CNGタンク270とCNG用ポート噴射インジェクタ217及び直噴インジェクタ218とを連絡するCNG燃料配管220とが備えられ、水素燃料配管120上に、水素タンク70内の水素の圧力を減圧する水素用レギュレータ109と、水素用レギュレータ109で減圧された後の水素の圧力を検出する水素圧力センサ111とが設けられ、CNG燃料配管220上に、CNGタンク270内のCNGの圧力を減圧するCNG用レギュレータ209と、CNG用レギュレータ209で減圧された後のCNGの圧力を検出するCNG圧力センサ211とが設けられる。
(2)制御系
図2に示すように、上記エンジン10の制御系にコントロールユニット100が備えられる。コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであり、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、RAMやROM等により構成されてプログラムやデータ等を格納するメモリと、電気信号を入出力する入出力(I/O)バスとを含む。
コントロールユニット100に、バッテリ電流・電圧センサ101(図1参照)、アクセル開度センサ102、車速センサ103、回転角センサ104、空燃比センサ105、エンジン水温センサ106、タービン回転センサ107、エアフローセンサ108、バッテリ温度センサ110、水素圧力センサ111(図3参照)、及びCNG圧力センサ211(図3参照)等からの検出信号が入力される。
バッテリ電流・電圧センサ101は、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧を検出する。アクセル開度センサ102は、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(アクセル開度)を検出する。車速センサ103は、車両1の走行速度を検出する。回転角センサ104は、エキセントリックシャフト13に設けられ、エキセントリックシャフト13の回転角度位置を検出する。この回転角センサ104は、エンジン10の回転を検出するエンジン回転センサを兼ねる。空燃比センサ105は、エンジン10の排気ガスの空燃比を検出する。エンジン水温センサ106は、ロータハウジング11の内部に形成されたウォータジャケット(図示せず)に設けられ、ウォータジャケットを流れるエンジン冷却水の温度(エンジン水温)を検出する。タービン回転センサ(本発明の「タービン回転数検出手段」に相当)107は、過給機300のタービン301の回転(タービン回転)を検出する。エアフローセンサ108は、エンジン10に吸入される空気量を検出する。バッテリ温度センサ110は、バッテリ30の温度を検出する。水素圧力センサ111及びCNG圧力センサ211は、それぞれ、上述のように、レギュレータ109,209で減圧後の水素圧力及びCNG圧力を検出する。
コントロールユニット100は、上記検出信号に基き、ポート噴射インジェクタ17,217、直噴インジェクタ18,218、点火プラグ19、及びスロットル弁アクチュエータ90に制御信号を出力してエンジン10の運転制御を行い(図1参照)、インバータ50に制御信号を出力して発電機20、バッテリ30、及び駆動モータ40の電力制御を行い(図1参照)、レギュレータ109,209に制御信号を出力してエンジン10に供給する水素及びCNGの圧力制御を行う(図3参照)。また、コントロールユニット100は、基本的に、エンジン10の通常運転中は、空気過剰率をリーン限界に近い所定の空気過剰率に設定し、直噴インジェクタ18,218のみから水素及びCNGを噴射(筒内噴射)させる。
(3)制御動作
図4は、コントロールユニット100が行うエンジン10の基本制御動作の一例を示すフローチャートである。
コントロールユニット100は、ステップS1で、車速V、アクセル開度Acc、エンジン回転Ne、及びバッテリSOC(State of Charge)等を読み込み、ステップS2で、車速及びアクセル開度に基き駆動モータ40に対する要求出力を計算し、ステップS3で、上記要求出力及びバッテリSOCに基きエンジン10に対する要求出力を計算する。
次いで、コントロールユニット100は、ステップS4で、計算したエンジン10に対する要求出力からエンジン10を起動する必要があるか否かを判定し、NOの場合、つまりエンジン10を起動しなくてもバッテリ30の蓄電電力のみを供給すれば駆動モータ40に対する要求出力が達成される場合は、ステップS1に戻る。
一方、ステップS4でYESの場合、つまりエンジン10が発電機20を駆動して発電させなければ(言い換えると発電機20の発電電力も供給しなければ)駆動モータ40に対する要求出力が達成されない場合は、コントロールユニット100は、ステップS5で、水素及びCNGの両燃料共残量があるか否かを判定し(この判定は水素圧力センサ111及びCNG圧力センサ211の検出値に基き行うことができる)、NOの場合、ステップS7で、CNGがないか否かを判定し、これらの結果から、ステップS5でYESの場合、つまり水素及びCNGの両燃料共残量がある場合は、ステップS6に進み、ステップS7でYESの場合、つまりCNGがない(水素のみある)場合は、ステップS8に進み、ステップS7でNOの場合、つまり水素がない(CNGのみある)場合は、ステップS9に進む。
コントロールユニット100は、ステップS6で、水素とCNGとの比率(より詳しくは体積比率、以下同様)を50/50とし、空気過剰率をリーン限界に近い空気過剰率(λ=1.8)に設定し、ポート噴射と筒内噴射との比率を0/100(つまり基準比率)として直噴インジェクタ18,218による筒内噴射のみ行い、点火プラグ19による点火を開始する。
コントロールユニット100は、ステップS8で、水素とCNGとの比率を100/0とし、空気過剰率をリーン限界に近い空気過剰率(λ=2.2)に設定し、ポート噴射と筒内噴射との比率を0/100として直噴インジェクタ18,218による筒内噴射のみ行い、点火プラグ19による点火を開始する。
コントロールユニット100は、ステップS9で、水素とCNGとの比率を0/100とし、空気過剰率をリーン限界に近い空気過剰率(λ=1.5)に設定し、ポート噴射と筒内噴射との比率を0/100として直噴インジェクタ18,218による筒内噴射のみ行い、点火プラグ19による点火を開始する。
次いで、コントロールユニット100は、ステップS10で、エンジン10の目標回転を2000rpm(NA)とし、ステップS3で算出したエンジン10に対する要求出力と、ステップS6、S8、又はS9で設定した燃料割合(水素とCNGとの比率)とに応じたターボ過給機300による目標過給圧を設定し、このエンジン10の基本制御動作を終了する。
図5及び図6に、エンジン10の空気過剰率λとNOx発生量、熱効率η、及びトルクTとの関係を示す。各ラインは、筒内噴射のみ、2000rpm(NA)での全負荷ラインである。
図中の符号(i)は、水素とCNGとの比率=50/50、λ=1.8のポイント(ステップS6)、図中の符号(ii)は、水素とCNGとの比率=100/0、λ=2.2のポイント(ステップS8)、図中の符号(iii)は、水素とCNGとの比率=0/100、λ=1.5のポイント(ステップS9)である。ポイント(iii)の熱効率η以外は、ステップS6,S8,S9間で、NOx発生量、熱効率η、及びトルクTが揃っている。もっとも、ポイント(iii)についても、熱効率ηは低いがトルクTがポイント(i),(ii)と揃っている。
この状態において、ステップS10で設定した目標過給圧でエンジン10が過給されると、ポイント(i),(ii),(iii)のいずれにおいても、熱効率η及びトルクTが高められる。
図7は、コントロールユニット100が行うエンジン10のタービン過回転防止制御動作の一例を示すフローチャートである。この制御動作は、図4の基本制御動作において、水素及びCNGの両燃料共残量があり(ステップS5でYES)、水素とCNGとの比率を50/50(本発明の「基準比率」に相当)とし、空気過剰率をリーン限界に近いλ=1.8に設定して(ステップS6)、エンジン10を通常運転していることを前提とする。
コントロールユニット100は、ステップS21で、タービン回転センサ107を介してタービン回転を検出し、ステップS22で、タービン回転数Ntが設定回転数Nt2以上か否かを判定し、NOの場合、ステップS23で、タービン回転数Ntが基準回転数Ntoを超えかつ設定回転数Nt2未満か否かを判定し、これらの結果から、ステップS22でYESの場合、つまりタービン回転数Nt≧設定回転数Nt2の場合は、ステップS26に進み、ステップS23でYESの場合、つまり基準回転数Nto<タービン回転数Nt<設定回転数Nt2の場合は、ステップS25に進み、ステップS23でNOの場合、つまりタービン回転数Nt≦基準回転数Ntoの場合は、ステップS24に進む。
ここで、図8に示すように、設定回転数Nt2はタービン回転数Ntの限界点である許容回転数Ntmaxより低い所定の回転数であり、基準回転数Ntoは上記設定回転数Nt2より低い所定の回転数である。
コントロールユニット100は、ステップS26で、水素とCNGとの比率をマップから決定し、より詳しくは、急勾配(本発明の「第2増大率」に相当)で水素の割合を増大し、ステップS27に進む。
コントロールユニット100は、ステップS25で、水素とCNGとの比率をマップから決定し、より詳しくは、低勾配(本発明の「第1増大率」に相当)で水素の割合を増大し、ステップS27に進む。
具体的に、コントロールユニット100は、図8に示すようなマップを格納しており、このマップにタービン回転数Ntを当て嵌めることにより、水素とCNGとの比率を決定する。例えば、ステップS26では、Nt≧Nt2であるから、タービン回転数Ntは第2領域R2にあり、図示するように、タービン回転数Ntの増加に対して水素の割合が相対的に大きい増大率(急勾配)で増大する。これに対し、ステップS25では、Nto<Nt<Nt2であるから、タービン回転数Ntは第1領域R1にあり、図示するように、タービン回転数Ntの増加に対して水素の割合が相対的に小さい増大率(低勾配)で増大する。
本実施形態において、タービン回転数Ntが基準回転数Ntoを超えている状態を「限界接近時」という。
図8から明らかなように、第1領域R1及び第2領域R2においては、タービン回転数Ntが高いほど水素の割合が増大し、第2領域R2は第1領域R1よりも水素の割合が増大する。
コントロールユニット100は、ステップS24で、水素とCNGとの比率を50/50とし、ステップS21にリターンする。
ステップS24では、Nt≦Ntoであるから、タービン回転数Ntは図8の第3領域R3〜第4領域R4にあり、図示するように、水素とCNGとの比率が50/50に維持される。
コントロールユニット100は、ステップS27で、タービン回転が上昇しているか否かを判定し、YESの場合は、ステップS22に戻り、NOの場合、つまりタービン回転が減少に転じているときは、ステップS28で、タービン回転数Ntが閾値回転数Nt1を下回ったか否かを判定する。
ここで、図8に示すように、閾値回転数Nt1は上記基準回転数Ntoより低い所定の回転数である。
コントロールユニット100は、ステップS28でNOの場合、つまりタービン回転数Nt≧閾値回転数Nt1の場合(タービン回転数Ntが図8の第3領域R3〜第1領域R1〜第2領域R2にある場合)は、ステップS28に戻り、ステップS28でYESの場合、つまりタービン回転数Nt<閾値回転数Nt1の場合(タービン回転数Ntが図8の第4領域R4にある場合)は、ステップS29で、水素とCNGとの比率を徐々に50/50(つまり基準比率)に戻し、ステップS21にリターンする。
図9は、図7の制御動作中のタービン回転数Ntの時間変化を示すタイムチャートである。
時刻t1までは、タービン回転数Ntは上昇するも基準回転数Nto以下であり(ステップS23でNO)、水素とCNGとの比率が50/50に維持される(ステップS24)。
時刻t1に、タービン回転数Ntが基準回転数Ntoを超えると(ステップS23でYES)、水素の割合が低勾配で増大し(ステップS25)、タービン回転数Ntの上昇速度が鈍化する。
それでも、タービン回転数Ntが上昇を続け(ステップS27でYES)、時刻t2に、設定回転数Nt2以上となると(ステップS22でYES)、水素の割合が急勾配で増大し(ステップS26)、タービン回転数Ntの上昇速度がさらに鈍化する。
その結果、タービン回転数Ntが減少に転じ(ステップS27でNO)、タービン回転数Ntの限界点である許容回転数Ntmaxを超えることが防止される。
タービン回転数Ntが減少を続け、時刻t3に、閾値回転数Nt1を下回ると(ステップS28でYES)、水素とCNGとの比率が徐々に50/50に戻され(ステップS29)、それに伴い、タービン回転数Ntの減少速度が鈍化し、やがてタービン回転数Ntが再び上昇に転じる。
(4)作用等
以上のように、本実施形態では、排気通路15に配置されるタービン301と吸気通路14に配置されるコンプレッサ302とを有するターボ過給機300を備える過給機付きエンジン10の燃料制御装置において、次のような特徴的構成を採用した。
すなわち、水素をエンジン10に供給する水素用ポート噴射インジェクタ17及び水素用直噴インジェクタ18と、水素より燃焼熱が大きくかつリーン限界が低いCNGをエンジン10に供給するCNG用ポート噴射インジェクタ217及びCNG用直噴インジェクタ218と、上記タービン301の回転数を検出するタービン回転センサ107と、上記タービン回転センサ107で検出されるタービン回転数Ntが所定の許容回転数Ntmax以下となるように上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218を制御するコントロールユニット100とを備える。
上記コントロールユニット100は、通常運転中は、水素とCNGとが50/50の比率で併用され、かつ空気過剰率λがリーン限界に近い1.8に設定されると共に(ステップS6)、上記タービン回転数Ntが上記許容回転数Ntmaxより低い所定の基準回転数Ntoを超えた限界接近時は(ステップS23でYES)、水素の割合が増大しCNGの割合が減少するように、上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218を制御する(ステップS25,S26)。
この構成によれば、水素とCNGとを併用してリーン運転中に、タービン回転数Ntが上昇して許容回転数Ntmaxに近づいたときは、単純にエンジン10への燃料噴射量を減量するのではなく、水素とCNGとの比率を変化させる。具体的に、燃焼熱が相対的に小さくリーン限界が相対的に高い水素の割合を増大し、燃焼熱が相対的に大きくリーン限界が相対的に低いCNGの割合を減少する。
これにより、CNGの割合は減少するが水素の割合が増大するから、燃料トータルの燃焼熱の急減が回避されて、排気熱量の大幅低下が防止される。また、リーン限界が相対的に高い水素の割合が増大するから、燃料トータルのリーン限界が高くなって、通常運転中のリーン空燃比が維持されつつ、失火が防止される。その結果、排気エネルギひいてはタービン回転数Ntの急減、ないし過給圧の大幅低下が回避される。
その上で、燃焼熱が相対的に小さく、したがって排気熱量が相対的に小さい水素の割合が増大し、逆に、燃焼熱が相対的に大きく、したがって排気熱量が相対的に大きいCNGの割合が減少するので、排気エネルギが確実に低減し、タービン回転数Ntの上昇が確実に抑制される。
以上により、本実施形態によれば、ウェイストゲートやスロットル弁16を用いずに、過給圧の大幅低下を回避しつつ、タービン301の過回転を確実に防止できる過給機付きエンジン10の燃料制御装置が提供される。
本実施形態では、上記コントロールユニット100は、限界接近時は(言い換えると第1領域R1及び第2領域R2においては)、上記タービン回転数Ntが高いほど水素の割合が増大するように、上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218を制御する。
この構成によれば、タービン回転数Ntが許容回転数Ntmaxに近づくにつれて、排気エネルギがより確実に低減し、タービン回転数Ntの上昇がより確実に抑制され、タービン301の過回転がより確実に防止される。
本実施形態では、上記コントロールユニット100は、限界接近時は(ステップS23でYES)、上記タービン回転数Ntが上記基準回転数Ntoを超えかつ上記基準回転数Ntoより高い所定の設定回転数Nt2未満の第1領域R1では、上記タービン回転数Ntの増加に対して水素の割合が低勾配で増大し(ステップS25)、上記タービン回転数Ntが上記設定回転数Nt2以上かつ上記許容回転数Ntmax以下の第2領域R2では、上記タービン回転数Ntの増加に対して水素の割合が急勾配で増大するように(ステップS26)、上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218を制御する。
この構成によれば、基準回転数Ntoと許容回転数Ntmaxとの間に第1領域R1と第2領域R2とが設けられ、タービン回転数Ntが許容回転数Ntmaxにより近い第2領域R2では第1領域R1に比べてタービン回転数Ntの増加が同じでも排気エネルギがより大きく低減される。そのため、第2領域R2では、タービン回転数Ntが確実に減少に転じ(ステップS27でNO)、タービン301の過回転がより一層確実に防止される。
本実施形態では、上記コントロールユニット100は、ステップS25,S26で水素の割合が増大した結果、上記タービン回転数Ntが上記基準回転数Ntoより低い所定の閾値回転数Nt1を下回ったときは(ステップS28でYES)、水素とCNGとの比率が50/50の比率に戻るように(ステップS29)、上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218を制御する。
この構成によれば、排気エネルギの低減によりタービン回転数Ntが低下して許容回転数Ntmaxから遠ざかったときは、ステップS25,S26で変化させた水素とCNGとの比率を通常運転中の50/50の比率に戻すので、過剰な排気エネルギの低減が免れる。
<第2の実施形態>
次に、図10及び図11を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。この第2実施形態は、エンジン10のタービン過回転防止制御動作が、図4の基本制御動作のステップS6ではなくステップS8又はS9でエンジン10を通常運転していることを前提とする点で、第1実施形態と相違し、その他の点は第1実施形態と同様である。第1実施形態と同じ又は類似の構成要素には同じ符号を用い、第1実施形態と重複する部分は説明を省略し、第2実施形態の特徴部分のみ説明を加える。
水素及びCNGのうち、いずれか一方の気体燃料がなくなったときは(ステップS5でNO)、残った他方の気体燃料でエンジン10を運転する他はない(ステップS8における水素のみでの運転又はステップS9におけるCNGのみでの運転)。ただし、その場合は、タービン301の過回転防止のために、第1実施形態のステップS25,S26のように、水素とCNGとの比率を変えることができない。
また、エンジン10の通常運転中は、空気過剰率がリーン限界に近い所定の空気過剰率に設定されるため、単純に燃料だけを減量すると、空燃比(ないし空気過剰率)がリーン限界を超えてしまい、失火の懸念がある。それを回避するためには、燃料と一緒に吸気量も減量する必要があり、そのためにはスロットル弁16を絞ればよいが、ポンプ損失が増えて効率が低下する。
そこで、この第2実施形態では、気体燃料の場合、ポート噴射を行うと、気体燃料の体積分、吸気量(本実施形態ではロータハウジング11の吸気行程が行われる作動室への吸気の供給量)が減量することに着目し、タービン301の過回転防止のために、ポート噴射の割合を増大し、筒内噴射の割合を減少するようにした。つまり、第1実施形態が特徴とする水素/CNGの比率の変更に代えて、ポート噴射/筒内噴射の比率の変更を行うようにした。これにより、スロットル弁16を絞ることなく、燃料と同時に吸気量も減量でき、リーン空燃比を維持しつつ、失火を防止できる。かつ、排気エネルギの低減、及びタービン301の過回転防止が図られる。
図10は、この第2実施形態でコントロールユニット100が行うエンジン10のタービン過回転防止制御動作の一例を示すフローチャートである。この制御動作は、図4の基本制御動作において、水素及びCNGのいずれか一方の燃料残量がなく(ステップS5でNO)、ポート噴射と筒内噴射との比率を0/100(つまり基準比率)として筒内噴射のみ行い、水素のみでエンジン10を通常運転(ステップS8)又はCNGのみでエンジン10を通常運転(ステップS9)していることを前提とする。
コントロールユニット100は、ステップS31で、タービン回転センサ107を介してタービン回転を検出し、ステップS32で、タービン回転数Ntが設定回転数Nt2以上か否かを判定し、NOの場合、ステップS33で、タービン回転数Ntが基準回転数Ntoを超えかつ設定回転数Nt2未満か否かを判定し、これらの結果から、ステップS32でYESの場合、つまりタービン回転数Nt≧設定回転数Nt2の場合は、ステップS36に進み、ステップS33でYESの場合、つまり基準回転数Nto<タービン回転数Nt<設定回転数Nt2の場合は、ステップS35に進み、ステップS33でNOの場合、つまりタービン回転数Nt≦基準回転数Ntoの場合は、ステップS34に進む。
コントロールユニット100は、ステップS36で、ポート噴射と筒内噴射との比率をマップから決定し、より詳しくは、急勾配(本発明の「第4増大率」に相当)でポート噴射の割合を増大し、ステップS37に進む。
コントロールユニット100は、ステップS35で、ポート噴射と筒内噴射との比率をマップから決定し、より詳しくは、低勾配(本発明の「第3増大率」に相当)でポート噴射の割合を増大し、ステップS37に進む。
具体的に、コントロールユニット100は、図11に示すようなマップを格納しており、このマップにタービン回転数Ntを当て嵌めることにより、ポート噴射と筒内噴射との比率を決定する。例えば、ステップS36では、Nt≧Nt2であるから、タービン回転数Ntは第2領域R2にあり、図示するように、タービン回転数Ntの増加に対してポート噴射の割合が相対的に大きい増大率(急勾配)で増大する。これに対し、ステップS35では、Nto<Nt<Nt2であるから、タービン回転数Ntは第1領域R1にあり、図示するように、タービン回転数Ntの増加に対してポート噴射の割合が相対的に小さい増大率(低勾配)で増大する。
第2実施形態において、タービン回転数Ntが基準回転数Ntoを超えている状態を「単一燃料運転限界接近時」という。
図11から明らかなように、第1領域R1及び第2領域R2においては、タービン回転数Ntが高いほどポート噴射の割合が増大し、第2領域R2は第1領域R1よりもポート噴射の割合が増大する。
コントロールユニット100は、ステップS34で、ポート噴射と筒内噴射との比率を0/100(すなわち筒内噴射のみ)とし、ステップS31にリターンする。
ステップS34では、Nt≦Ntoであるから、タービン回転数Ntは図11の第3領域R3〜第4領域R4にあり、図示するように、ポート噴射と筒内噴射との比率が0/100に維持される。
コントロールユニット100は、ステップS37で、タービン回転が上昇しているか否かを判定し、YESの場合は、ステップS32に戻り、NOの場合、つまりタービン回転が減少に転じているときは、ステップS38で、タービン回転数Ntが閾値回転数Nt1を下回ったか否かを判定する。
コントロールユニット100は、ステップS38でNOの場合、つまりタービン回転数Nt≧閾値回転数Nt1の場合(タービン回転数Ntが図11の第3領域R3〜第1領域R1〜第2領域R2にある場合)は、ステップS38に戻り、ステップS38でYESの場合、つまりタービン回転数Nt<閾値回転数Nt1の場合(タービン回転数Ntが図11の第4領域R4にある場合)は、ステップS39で、ポート噴射と筒内噴射との比率を徐々に0/100(つまり基準比率)に戻し(言い換えると徐々にポート噴射量を減じ筒内噴射のみに戻し)、ステップS31にリターンする。
図10の制御動作中のタービン回転数Ntの時間変化は第1実施形態と同様である。
すなわち、図9において、時刻t1までは、タービン回転数Ntは上昇するも基準回転数Nto以下であり(ステップS33でNO)、ポート噴射と筒内噴射との比率が0/100に維持される(ステップS34)。
時刻t1に、タービン回転数Ntが基準回転数Ntoを超えると(ステップS33でYES)、ポート噴射の割合が低勾配で増大し(ステップS35)、タービン回転数Ntの上昇速度が鈍化する。
それでも、タービン回転数Ntが上昇を続け(ステップS37でYES)、時刻t2に、設定回転数Nt2以上となると(ステップS32でYES)、ポート噴射の割合が急勾配で増大し(ステップS36)、タービン回転数Ntの上昇速度がさらに鈍化する。
その結果、タービン回転数Ntが減少に転じ(ステップS37でNO)、タービン回転数Ntの限界点である許容回転数Ntmaxを超えることが防止される。
タービン回転数Ntが減少を続け、時刻t3に、閾値回転数Nt1を下回ると(ステップS38でYES)、ポート噴射と筒内噴射との比率が徐々に0/100に戻され(ステップS39)、それに伴い、タービン回転数Ntの減少速度が鈍化し、やがてタービン回転数Ntが再び上昇に転じる。
以上のように、本実施形態では、水素及びCNGはいずれも気体燃料であり、上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218はそれぞれ燃料を吸気ポートに噴射するポート噴射及び吸気行程が行われる作動室内に直接噴射する筒内噴射が可能に構成され、上記コントロールユニット100は、通常運転中は、上記ポート噴射と筒内噴射とが0/100の比率で行われると共に(ステップS8,S9)、水素及びCNGのいずれか一方がなくなり他方のみで運転中に上記タービン回転数Ntが上記基準回転数Ntoを超えた単一燃料運転限界接近時は(ステップS33でYES)、上記ポート噴射の割合が増大し筒内噴射の割合が減少するように、上記水素用インジェクタ17,18又はCNG用インジェクタ217,218を制御する(ステップS35,S36)。
この構成によれば、燃料が気体燃料である場合に、いずれか一方の燃料がなくなり他方の燃料のみで運転中に、タービン回転数Ntが上昇して許容回転数Ntmaxに近づいたときは、水素とCNGとの比率を変化させることに代えて、他方の燃料のポート噴射と筒内噴射との比率を変化させることにより、ウェイストゲートやスロットル弁16を用いずに、過給圧の大幅低下を回避しつつ、タービン301の過回転を確実に防止できる。具体的に、ポート噴射の割合を増大し、筒内噴射の割合を減少することにより、吸気量が減量されるので、空燃比(ないし空気過剰率)がリーン限界を超えて失火が起きることが防止され、その結果、排気エネルギひいてはタービン回転数Ntの急減、ないし過給圧の大幅低下が回避される。その上で、エンジン10への燃料噴射量が減量されるので、排気エネルギが確実に低減し、タービン回転数Ntの上昇が確実に抑制され、タービン301の過回転が確実に防止される。
本実施形態では、上記コントロールユニット100は、単一燃料運転限界接近時は(言い換えると第1領域R1及び第2領域R2においては)、上記タービン回転数Ntが高いほどポート噴射の割合が増大するように、上記水素用インジェクタ17,18又はCNG用インジェクタ217,218を制御する。
この構成によれば、タービン回転数Ntが許容回転数Ntmaxに近づくにつれて、排気エネルギがより確実に低減し、タービン回転数Ntの上昇がより確実に抑制され、タービン301の過回転がより確実に防止される。
本実施形態では、上記コントロールユニット100は、単一燃料運転限界接近時は(ステップS33でYES)、上記第1領域R1では、上記タービン回転数Ntの増加に対してポート噴射の割合が低勾配で増大し(ステップS35)、上記第2領域R2では、上記タービン回転数Ntの増加に対してポート噴射の割合が急勾配で増大するように(ステップS36)、上記水素用インジェクタ17,18又はCNG用インジェクタ217,218を制御する。
この構成によれば、タービン回転数Ntが許容回転数Ntmaxにより近い第2領域R2では第1領域R1に比べてタービン回転数Ntの増加が同じでも排気エネルギがより大きく低減される。そのため、第2領域R2では、タービン回転数Ntが確実に減少に転じ(ステップS37でNO)、タービン301の過回転がより一層確実に防止される。
本実施形態では、上記コントロールユニット100は、ステップS35,S36でポート噴射の割合が増大した結果、上記タービン回転数Ntが上記閾値回転数Nt1を下回ったときは(ステップS38でYES)、ポート噴射と筒内噴射との比率が0/100の比率に戻るように(ステップS39)、上記水素用インジェクタ17,18又はCNG用インジェクタ217,218を制御する。
この構成によれば、排気エネルギの低減によりタービン回転数Ntが低下して許容回転数Ntmaxから遠ざかったときは、ステップS35,S36で変化させたポート噴射と筒内噴射との比率を通常運転中の0/100の比率に戻すので、過剰な排気エネルギの低減が免れる。
<他の実施形態>
(1)以上、実施形態を挙げて本発明を詳しく説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、燃料は、気体燃料に限らず、液体燃料等でもよい。エンジンは、ロータリピストンエンジンに限らず、通常のレシプロエンジン等でもよい。車両は、シリーズ式ハイブリッド車両に限らず、パラレル式ハイブリッド車両でもよく、さらには、ハイブリッド車両に限らず、駆動モータを備えない、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関のみを備える、通常の車両等でもよい。上記実施形態で記述された種々の数値や材質や形状等はあくまでも例示であり、それらに限定されないことはいうまでもない。
(2)また、第1実施形態が特徴とする水素/CNGの比率の変更と共に、第2実施形態が特徴とするポート噴射/筒内噴射の比率の変更を同時に行ってもよい。
すなわち、その場合の実施形態では、排気通路15に配置されるタービン301と吸気通路14に配置されるコンプレッサ302とを有するターボ過給機300を備える過給機付きエンジン10の燃料制御装置において、水素をエンジン10に供給する水素用ポート噴射インジェクタ17及び水素用直噴インジェクタ18と、水素より燃焼熱が大きくかつリーン限界が低いCNGをエンジン10に供給するCNG用ポート噴射インジェクタ217及びCNG用直噴インジェクタ218と、上記タービン301の回転数を検出するタービン回転センサ107と、上記タービン回転センサ107で検出されるタービン回転数Ntが所定の許容回転数Ntmax以下となるように上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218を制御するコントロールユニット100とを備え、水素及びCNGはいずれも気体燃料であり、上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218はそれぞれ燃料を吸気ポートに噴射するポート噴射及び吸気行程が行われる作動室内に直接噴射する筒内噴射が可能に構成され、上記コントロールユニット100は、通常運転中は、水素とCNGとが50/50の比率で併用され、空気過剰率λがリーン限界に近い1.8に設定され、かつ上記ポート噴射と筒内噴射とが0/100の比率で行われると共に(ステップS6)、上記タービン回転数Ntが上記許容回転数Ntmaxより低い所定の基準回転数Ntoを超えた限界接近時は(ステップS23でYES)、水素の割合が増大しCNGの割合が減少する(ステップS25,S26)と共に、上記ポート噴射の割合が増大し筒内噴射の割合が減少するように、上記水素用インジェクタ17,18及びCNG用インジェクタ217,218を制御する。
この構成によれば、燃料が気体燃料である場合は、水素とCNGとの比率を変化させること以外に、燃料のポート噴射と筒内噴射との比率を変化させることによっても、ウェイストゲートやスロットル弁16を用いずに、過給圧の大幅低下を回避しつつ、タービン301の過回転を確実に防止できる。具体的に、ポート噴射の割合を増大し、筒内噴射の割合を減少することにより、吸気量が減量されるので、空燃比(ないし空気過剰率)がリーン限界を超えて失火が起きることが防止され、その結果、排気エネルギひいてはタービン回転数Ntの急減、ないし過給圧の大幅低下が回避される。その上で、エンジン10への燃料供給量が減量されるので、排気エネルギが確実に低減し、タービン回転数Ntの上昇が確実に抑制され、タービン301の過回転が確実に防止される。
(3)さらに、水素とCNGとを併用しながら、第2実施形態が特徴とするポート噴射/筒内噴射の比率の変更だけを行ってもよい。
すなわち、その場合の実施形態では、排気通路15に配置されるタービン301と吸気通路14に配置されるコンプレッサ302とを有するターボ過給機300を備える過給機付きエンジン10の燃料制御装置において、第1燃料をエンジン10に供給する第1燃料用インジェクタ17,18と、第2燃料をエンジン10に供給する第2燃料用インジェクタ217,218と、上記タービン301の回転数を検出するタービン回転センサ107と、上記タービン回転センサ107で検出されるタービン回転数Ntが所定の許容回転数Ntmax以下となるように上記インジェクタ17,18,217,218を制御するコントロールユニット100とを備え、第1燃料及び第2燃料はいずれも気体燃料であり、上記インジェクタ17,18,217,218はそれぞれ燃料を吸気ポートに噴射するポート噴射及び筒内に直接噴射する筒内噴射が可能に構成され、上記コントロールユニット100は、通常運転中は、第1燃料と第2燃料とが所定の比率で併用され、空気過剰率λがリーン限界に近い所定の空気過剰率に設定され、かつ上記ポート噴射と筒内噴射とが所定の比率で行われると共に、上記タービン回転数Ntが上記許容回転数Ntmaxより低い所定の基準回転数Ntoを超えた限界接近時は、上記ポート噴射の割合が増大し筒内噴射の割合が減少するように、上記インジェクタ17,18,217,218を制御する。
(4)さらには、もともと単一の燃料のみ用いつつ、第2実施形態が特徴とするポート噴射/筒内噴射の比率の変更を行ってもよい。
すなわち、その場合の実施形態では、排気通路15に配置されるタービン301と吸気通路14に配置されるコンプレッサ302とを有するターボ過給機300を備える過給機付きエンジン10の燃料制御装置において、燃料をエンジン10に供給するインジェクタと、上記タービン301の回転数を検出するタービン回転センサ107と、上記タービン回転センサ107で検出されるタービン回転数Ntが所定の許容回転数Ntmax以下となるように上記インジェクタを制御するコントロールユニット100とを備え、燃料は気体燃料であり、上記インジェクタは燃料を吸気ポートに噴射するポート噴射及び筒内に直接噴射する筒内噴射が可能に構成され、上記コントロールユニット100は、通常運転中は、空気過剰率λがリーン限界に近い所定の空気過剰率に設定され、かつ上記ポート噴射と筒内噴射とが所定の比率で行われると共に、上記タービン回転数Ntが上記許容回転数Ntmaxより低い所定の基準回転数Ntoを超えた限界接近時は、上記ポート噴射の割合が増大し筒内噴射の割合が減少するように、上記インジェクタ17,18,217,218を制御する。