以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<<第1実施形態>>
まず、本発明の第1実施形態に係る排水接続部材が適用される小便器について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、第1実施形態の排水接続部材が適用される小便器の斜視図であり、図2は、第1実施形態の排水接続部材が適用される小便器の設置状態を示す断面図である。
図1に示すように、小便器1は壁面Wに接する状態で床Fから上方に離間した位置に設置される壁掛小便であり、排泄された尿を受けるボウル部2を有している。ボウル部2の周縁端には、リップ部7が形成されており、リップ部7の最も前方側に突出した箇所にリップ部7の先端7aが形成されている。
また、図2に示すように、ボウル部2の下流となる下端部には尿や洗浄水をボウル部2の外部へと排出するための排水路3が形成されている。排水路3の壁面W側の端部には排水口4が形成されている。また、壁面Wには排水管10が設けられており、排水管10の前端には前方に向けて開口した入口部11が形成されている。排水管10の入口部11には、排水管フランジ13が接着固定されている。排水管フランジ13は、排水管10に挿入される挿入部13aと、排水管10の入口部11から外周方向に拡がるフランジ部13bを有しており、排水管10の内周面に挿入部13aを接着することで固定される。
小便器1の排水口4と排水管10の入口部11は上下方向の高さが異なっているが、排水接続部材20により互いに接続される。つまり、排水接続部材20は、小便器1の排水口4と、壁面Wに設けられた排水管10の入口部11とを接続する。このようにすることで、ボウル部2に配設された尿やボウル部2を洗浄する洗浄水は、排水路3を通り、排水接続部材20を介して、排水管10へと流れ出て行く。
また、小便器1は壁面Wに固定されているバックハンガー6によって壁面Wに取り付けられる。小便器1の後方面には、バックハンガー6を引っかけるための凹部5が形成されており、この凹部5にバックハンガー6を引っかける。そして、小便器1の下方側を排水接続部材20のボルト固定部23にボルト固定座金28を通してボルト固定ナット27で固定されたボルト22を、小便器固定穴8と小便器固定用座金26を通して、小便器固定用ナット25で締め付けることで、壁面Wに固定される。なお、排水接続部材20は壁面Wに対して壁固定ねじ24によって固定されている。
次に、第1実施形態に係る排水接続部材20について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、第1実施形態に係る排水接続部材20の分解斜視図である。図4は、図2において、排水接続部材20周辺を拡大した断面図である。
排水接続部材20は、小便器1の排水口4に接続される便器接続筒体40と、排水管フランジ13を介して排水管10の入口部11に接続される壁側接続筒体60と、で構成されている。便器接続筒体40は、小便器1の排水口4に接続される第1流入口42と、便器接続筒体40の下流側に設けられ第1流入口42よりも大きい開口面積を有する第1流出口44と、を有する第1筒部41、及び、第1筒部41の外周面側に形成されるフランジ部45を備えている。また、壁側接続筒体60は第1流出口44が接続される第2流入口62と、排水管フランジ13を介して排水管10に接続される第2流出口64と、を有する第2筒部61を備えている。
排水接続部材20を壁面Wに設けられた排水管10に取り付ける際には、まず、第1筒部41の第1挿し込み部48(図5参照。)に第2筒部61の第2流入口62を挿し込み、接着剤などで両者を固定する。そして、便器接続筒体40と壁側接続筒体60が一体となった排水接続部材20を壁面Wに設けられたネジ穴(図示せず)に壁固定ねじ24によって固定する。便器接続筒体40のフランジ部45の四隅には、この壁固定ねじ24によって排水接続部材20を壁面Wに固定するためのボルト穴47が形成されている。
また、排水接続部材20を取り付ける際に、小便器1の排水口4と便器接続筒体40の第1流入口42との間、及び、排水管フランジ13のフランジ部13bと壁側接続筒体60の第2流出口64との間には、塑性変形可能なシール部材21をそれぞれ挟み込んで取り付ける。排水接続部材20と、小便器1または壁面4との間で挟み込まれたシール部材21は、潰れるように変形して密着するので、小便器1の排水口4と便器接続筒体40の第1流入口42との間、及び、排水管フランジ13のフランジ部13bと壁側接続筒体60の第2流出口64との間から漏水しないようにすることができる。
また、図4に示すように、便器接続筒体40の第1流入口42の周辺には、第1流入口42から外径方向に拡がるにつれて小便器1から離れるような傾斜面46が形成されている。この傾斜面46が形成されていることにより、シール部材21は、この傾斜面46に沿って、第1流入口42から拡がる方向へと変形し易くなる。そのため、小便器1を固定した時に、シール部材21が変形して、第1流入口42の開口内へとはみ出し、流れを阻害しないようにすることができる。
なお、壁側接続筒体60の第2流出口64の周辺にも、傾斜面72が形成されている。傾斜面72によって、便器接続筒体40の傾斜面46と同様に、排水管フランジ13のフランジ部13bと壁側接続筒体60との間に挟まれているシール部材21が変形して第2流出口64の開口内へとはみ出し、流れを阻害しないようにすることができる。
<便器接続筒体の説明>
続いて、図5を用いて第1実施形態の便器接続筒体40の構造について説明する。図5は、第1実施形態に係る排水接続部材20の便器接続筒体40の背面図および断面図であり、図5(a)は便器接続筒体40の背面図、図5(b)は図5(a)のA−A線における断面図である。
図5に示すように、便器接続筒体40の第1筒部41は、第1流入口42よりも大きい開口面積を有する第1流出口44を有している。また、第1流入口42の中心軸42aは、第1流出口44の中心軸44aに対して偏心して形成されており、第1流入口42は第1流出口44の開口面積内に収まる範囲で偏心している。つまり、第1流入口42の開口全体が、第1流出口44の開口内からはみ出さないように形成されている。言い換えると、第1流入口42の中心軸42aが第1流出口44の中心軸44aに対して偏心可能な範囲は、図5(a)の背面視において第1流入口42の開口が第1流出口44の開口に一点で重なるまでが上限であり、それ以上離れて偏心することがないように形成されている。
このようにすることで、便器接続筒体40を壁側接続筒体60に対して回転させて取り付けたときに、第1流入口42の下端部42bが第1流出口44の下端部44bよりも低くならないようにすることができる。そのため、詳細については後述するが、便器接続筒体40は、壁側接続筒体60に対して回転して取り付けたとしても、第1流入口42の下端部42bが第1流出口44の下端部44b以下の高さとならない。なお、本願明細書における下端は下方側の端部を表しており、例えば、図5(a)において、便器接続筒体40が中心軸42aを中心として回転すると、第1流入口42の下端部42b、及び、第1流出口44の下端部44bの位置は、それぞれ第1流入口42および第1流出口44に沿って変化する。
また、便器接続筒体40の第1筒部41には、第1流出口44に連続して壁側接続筒体60を挿し込むための第1挿し込み部48が形成されており、この第1挿し込み部48に壁側接続筒体60の第2流入口62を挿し込むことで、便器接続筒体40と壁側接続筒体60とが接続される。第1挿し込み部48は第1流出口44の中心軸44aを中心として、壁側接続筒体60の厚み分だけ拡径して形成されている。これにより、第1挿し込み部48に壁側接続筒体60を挿し込んだ際に、便器接続筒体40の第1流出口44の下端部44bに対して、壁側接続筒体60の第2流入口62の下端部62bが上方側に高くならないようにしている。そのため、図4の便器接続筒体40と壁側接続筒体60を組み合わせた排水接続部材20の断面図においては、第1流出口44の下端部44bと第2流入口62の下端部62bが同じ高さとなっていることが分かる。
また、第1筒部41の内周面は、第1流入口42から第1流出口64まで滑らかに連続しており、水平勾配および下り勾配で形成されている。そのため、例えば、蛇腹形状のような凹凸は形成されていない。第1筒部の内周面に蛇腹形状の凹凸が形成されていると、蛇腹の折り目部分で、上り勾配となる箇所が形成されるため、第1筒部に尿が溜る箇所が形成されてしまう。
第1実施形態の排水接続部材20における、便器接続筒体40の内周面の下端部には、このような凹凸による上り勾配も形成されないようにしているため、便器接続筒体40の第1筒部41の内部に尿が溜ることを抑制することができる。
<壁側接続筒体の説明>
続いて、図6を用いて第1実施形態の壁側接続筒体60の構造について説明する。図6は、第1実施形態に係る排水接続部材20の壁側接続筒体60の正面図および断面図であり、図6(a)は壁側接続筒体60の正面図、図6(b)は図6(a)のB−B線における断面図である。
壁側接続筒体60の第2筒部61は、便器接続筒体40の第1流出口44と接続される第2流入口62、及び、排水管フランジ13を介して排水管10と接続される第2流出口64を有している。第2流入口62は、便器接続筒体40の第1挿し込み部48に挿し込まれるため、その外径は第1挿し込み部48の内径とほぼ等しくなっている。
また、第2流入口62は第2流出口64よりも大きい開口面積を有しており、第2流出口64の中心軸64aは第2流入口62の中心軸62aに対して偏心している。第2流出口64は、壁側接続筒体60を排水管フランジ13を介して排水管10に接続した状態において、第2流出口64の下端部64bが、第2流入口62の下端部62b以下となるように偏心して形成されている。
そのため、第1実施形態の壁側接続筒体60では、図6(a)の正面視において、第2流入口62の下端部62bと第2流出口64の下端部64bが一点で重なるように形成されている。これにより、第2筒部61の内周面の下端部は、図6(b)に示すように、第2流入口62の下端部62bから第2流出口64の下端部64bまで等しい高さとなっている。一方で、第2流出口64は第2流入口62よりも開口面積が小さくなるので、第2筒部61の内周面の上端部は、第2流入口62から第2流出口64の途中で下方側に折れ曲がっている。
なお、第2流出口64の下端部64bは、第2流入口62の下端部62b以下となるように形成されていれば良いので、第2流出口64は図6(a)に示す位置よりも下方側に形成されていても良い。つまり、第1実施形態の排水接続部材20において、第2流出口64の中心軸64aの第2流入口62の中心軸62aに対して偏心可能な範囲は、第2流出口64の開口が第2流入口62の開口に一点で重なるまでが上限であり、それ以下の距離となることがないように形成されている。
また、壁側接続筒体60は、図6に示す状態で壁面Wに取り付けられる。すなわち、図6(b)に示す中心軸62aおよび中心軸64aが水平方向となるようにして壁面Wに取り付けられ、且つ、図6(a)に示すように、中心軸62aの方向から見た正面視において第2流入口62の中心軸62aと第2流出口64の中心軸64aとを結んだ直線が垂直となるようにして壁面Wに取り付けられる。
このようにすることで、壁側接続筒体60を排水管フランジ13を介して排水管10に取り付けたときに、壁側接続筒体60の内周面の下端部の高さを、第2流入口62の下端部62bから第2流出口64の下端部64bまで、水平勾配または下り勾配とすることができる。つまり、壁側接続筒体60の内周面の下端部の高さを、第2流入口62の下端部62bから第2流出口64の下端部64bまで、第2流入口62の下端部62b側の下端部の高さ以下となるようにすることができる。また、第2筒部61も第1筒部41と同様に、蛇腹状の凹凸などは形成されていない。そのため、壁側接続筒体60の第2筒部61の内部に尿が溜ることを抑制することができる。
なお、壁側接続体60の壁面Wに対する取り付けについては、第2流出口64の下端部64bが第2流入口62の下端部62b以下となっていれば、多少傾けて取り付けてられても構わない。
壁側接続筒体60の第2筒部61の外周面には、壁側接続筒体60に対する便器接続筒体40の回転位置を規定する凸部68が形成されている。この凸部68は、第1流出口44の上下に一つずつ形成されている第1凹部50、第2凹部52の何れか一方に係合される(図5参照。)。なお、第1凹部50および第2凹部52は第1流入口42の中心軸42aおよび第1流出口44の中心軸44aを結んだ上下方向の直線上に形成されており、第1凹部50は第1流出口44の第1流入口が近づいている側に、第2凹部52は第1流出口44の第1流入口が離れている側にそれぞれ形成されている。したがって、壁側接続筒体60に形成されている凸部68を第1凹部50または第2凹部52の何れか一方に係合することで、便器接続筒体40を壁側接続筒体60に対して180度ずつ回転させて接続することができる。
<作用の説明>
続いて、第1実施形態に係る排水接続部材20の作用について、図7を用いて説明する。図7は、便器接続筒体40の壁側接続筒体60に対する二つの接続状態について示した断面図であり、(a)は便器接続筒体40の第1凹部50に、壁側接続筒体60の凸部68を係合した場合の断面図である。また、(b)は便器接続筒体40の第2凹部52に、壁側接続筒体60の凸部68を係合した場合の断面図である。
図7(a)に示すように、便器接続筒体40の第1凹部50に壁側接続筒体60の凸部68を係合すると、第1流入口42の中心軸42aは第1流出口44の中心軸44aに対して上方側に偏心する。また、図7(b)に示すように、図7(a)に示す状態から便器接続筒体40を中心軸42aを中心として180度回転させ、便器接続筒体40の第2凹部52に壁側接続筒体60の凸部68に係合させると、第1流入口42の中心軸42aは第1流出口44の中心軸44aに対して下方側に偏心する。また、図7(a)および図7(b)いずれの場合においても、壁側接続筒体60の状態は変わらない。そのため、図7(a)における第1流入口42の中心軸42aと第2流出口64の中心軸64aとの距離d2は、図7(b)における第1流入口42の中心軸42aと第2流出口64の中心軸64aとの距離d3に比べて大きくなっている。
このように、第1実施形態の排水接続部材20においては、壁側接続筒体60に対して便器接続筒体40を回転させて接続することで、第2流出口64に対する第1流入口42の高さを変更することができる。つまり、小便器1の排水口4が接続される第1流入口42に対して、排水管フランジ13を介して排水管10が接続される第2流出口64の高さを調整することができる。そのため、第1実施形態の排水接続部材20は、小便器1の排水口4と壁面Wに形成された排水管10との高さが異なる場合でも小便器1を設置する高さを変えずに両者を接続するといった施工対応をとることができる。
また、第1実施形態の排水接続部材20では、便器接続筒体40の第1凹部50に壁側接続筒体60の凸部68を係合した場合、及び、便器接続筒体40の第2凹部52に、壁側接続筒体60の凸部68を係合した場合の何れの場合においても、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体60第2筒部62の内周面の下端部の高さが、第1流入口42の下端部42bから第2流出口64の下端部64bまで、第1流入口42側の下端部の高さ以下となるように形成されている。
つまり、第1実施形態の排水接続部材20は、図7(a)、及び、図7(b)に示すように、いずれの場合においても、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体60の第2筒部61における内周面の下端部の高さが、第1流入口42の下端部42bから第2流出口64の下端部64bまで、水平勾配または下り勾配となるように形成されている。
これについて、まず、図7(a)について説明する。図7(a)では、第1流入口42は第1流出口44に対して上方側に偏心した状態で、壁側接続筒体60に接続されている。そのため、便器接続筒体40の第1筒部41における内周面の下端部は、第1流入口42の下端部42bから第1流出口44の下端部44bまで、水平勾配および下り勾配で形成される。
また、上述したように便器接続筒体4の第1筒部41における第1挿し込み部48は第1流出口44から拡径して形成されているため、第1筒部41の第1挿し込み部48に壁側接続筒体60の第2流入口62が挿し込まれたときに、第2流入口62の下端部62bを第1流出口44の下端部44b以下の高さとすることができる。
さらに、壁側接続筒体60は第1挿し込み部48の端部48aに接するまで挿し込まれるので、第1流出口44の下端部44bから第2流入口62の下端部62bまでは平らな状態、又は、第1流出口44の下端部44bから第2流入口62の下端部62bまで下方側に下る状態となる。そのため、便器接続筒体40の第1流出口44と、壁側接続筒体60の第2流入口62との間に小便器1から流れてきた尿が溜る凹みは形成されない。従って、便器接続筒体40の第1筒部41の第1流入口42から壁側接続筒体60の第2筒部61の第2流入口62までの内周面の下端部は、水平勾配および下り勾配で形成される。
また、壁側接続筒体60は、排水管フランジ13を介して排水管10が接続される第2流出口64の中心軸64aに対して、第2流入口62の中心軸62aが上方側に偏心した状態で取り付けられ、さらに、第2流出口64は、第2流出口の下端部64bの高さが第2流入口62の下端部62b以下となるように形成されている。
そのため、壁側接続筒体60の第2筒部61における内周面の下端部の高さは、第2流入口62の下端部62bから第2流出口64の下端部64bまで、第2流入口62側の下端部の高さ以下となるように形成されている。つまり、壁側接続筒体60の第2筒部61における内周面の下端部の高さは、第2流入口62の下端部62bから第2流出口64の下端部64bまで水平勾配および下り勾配で形成されている。
従って、以上説明したように第1実施形態の排水接続部材20では、便器接続筒体40の第1凹部50に壁側接続筒体60の凸部68を係合した場合において、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体60の第2筒部61における内周面の下端部の高さは、第1流入口42の下端部42bから第2流出口64の下端部64bまで、第1流入口42側の下端部の高さ以下となるように形成されている。
続いて、図7(b)の便器接続筒体40の第2凹部52に壁側接続筒体60の凸部68を係合した場合について説明する。図7(b)では、第1流入口42は第1流出口44に対して下方側に偏心した状態で、壁側接続筒体60に接続されている。
壁側接続筒体60の排水管フランジ13を介して排水管10に対する取り付け方向は変わらないため、便器接続筒体40の第2凹部52に壁側接続筒体60の凸部68を係合すると、第2凹部52が上方側となり第1凹部50が下方側となる。そのため、図7(b)に示す状態では、便器接続筒体40の第1流入口42が最も下方側に偏心した状態となる。
しかしながら、上述した通り、第1流入口42は第1流出口44の開口面積内に収まる範囲で偏心しているため、第1流入口42の下端部42bは、第1流出口の下端部44bより低くならない。そのため、図7(b)に示すように、便器接続筒体40の第2凹部52に壁側接続筒体60の凸部68を係合した場合であっても、第1流入口42の下端部42bから第1流出口44の下端部44bまでは水平勾配または下り勾配で形成することができる。
従って、以上説明したように、第1実施形態の排水接続部材20では、便器接続筒体40の第2凹部52に壁側接続筒体60の凸部68を係合した場合において、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体60の第2筒部61における内周面の下端部の高さは、第1流入口42の下端部42bから第2流出口64の下端部64bまで、第1流出口42側の下端部の高さ以下となるように形成されている。
このように、第1実施形態の排水接続部材20では、壁側接続筒体60に対して便器接続筒体40を回転させて取り付け、第2流出口64に対する第1流入口42の高さを調整したとしても、便器接続筒体40の第1筒部41における第1流入口42の下端部42bから壁側接続筒体60の第2筒部61における第2流出口64の下端部64bまで、上り勾配となる箇所が形成されないので、排水接続部材20の内部の流路に尿が溜ることを抑制することができる。
また、第2流入口62は、排水管フランジ13を介して排水管10が接続される第2流出口64よりも大きい開口面積を有しているため、便器接続筒体40の第1流入口42の調整範囲をより大きくすることができる。つまり、便器接続筒体40の第1流入口42の高さは壁側接続筒体60の第2流入口62に対して回転させることで調整されるため、第2流入口62の開口面積が大きくなると、第2流入口62に対して回転する便器接続筒体40の調整範囲も大きくすることができる。
<<第2実施形態>>
続いて、本発明の第2実施形態に係る排水接続部材30について図8、及び、図9を用いて説明する。図8は第2実施形態に係る排水接続部材30の設置状態を示す拡大断面図である。図9は第2実施形態に係る排水接続部材30の壁側接続筒体80の正面図および断面図であり、図9(a)は壁側接続筒体80の正面図、図9(b)は図9(a)のC−C線における断面図である。図10は第2実施形態に係る排水接続部材30の、便器接続筒体40の壁側接続筒体80に対する二つの接続状態について示した断面図であり、(a)は便器接続筒体40の第1凹部50に、壁側接続筒体80の凸部88を係合した場合の断面図である。また、(b)は便器接続筒体40の第2凹部52に、壁側接続筒体80の凸部88を係合した場合の断面図である。
図8に示すように、第2実施形態に係る排水接続部材30は、第1実施形態の排水接続部材20と比べて、壁面Wに設けられている排水管10への接続方法が異なっている。つまり、第2実施形態の排水接続部材30では、壁面Wから所定量突出して設けられている排水管10を壁側接続筒体80に挿し込むための第2挿し込み部86が、第2流出口84よりも壁面W側に形成されている。この第2挿し込み部86に壁面Wに設けられている排水管10を挿し込むことで、壁側接続筒体80と排水管10とを接続している。
また、第2挿し込み部86の第2流入口82側の端部には段部90が形成されており、排水管10の入口部11は段部90に当接するまで挿し込まれる。また、排水接続部材30を壁面Wに取り付けた際に、排水管10の入口部11が壁側接続筒体60の段部90に当接する長さに予め加工されていることも好ましい。また、壁側接続筒体80と排水管10は、第2挿し込み部86の内周面と排水管10の外周面との間に図示しない接着剤またはシール材などを用いることで、便器接続筒体80と排水管10との間から水漏れしないように接続される。
<壁側接続筒体の説明>
第2実施形態の排水接続部材30における、壁側接続筒体80について図9を用いて説明する。図9に示すように、第2実施形態に係る壁側接続筒体80は、便器接続筒体40の第1流出口44と接続される第2流入口82、及び、第2流入口82に対して偏心して形成される第2流出口84を有する第2筒部81、並びに、排水管10が挿し込まれる第2挿し込み部86を備えている。第2流入口82は、便器接続筒体40の第1挿し込み部48に挿し込まれるため、その外径は第1挿し込み部48の内径とほぼ等しくなっている。また、第2挿し込み部86は、排水管10が挿し込まれるため、第2挿し込み部86の内径と、排水管10の外径はほぼ等しくなっている。
また、図9(b)に示すように、側面視において段部90が形成される位置、つまり、壁側接続筒体80の第2筒部81と第2挿し込み部86との境界部には、第2流入口よりも小さい開口面積を有する第2流出口84が形成されている。図9に示すように、第2挿し込み部86の中心軸86aは第2流入口82の中心軸82aに対して下方側に偏心して形成されており、さらに、第2挿し込み部86の下端部86bは第2流入口82の下端部82bよりも低い位置となっている。そのため、図9(a)に示すように、第2筒部81と第2挿し込み部86の境界部に形成される第2流出口84も、第2流入口82に対して偏心して形成されており、第2流出口84の開口形状は、上側が第2挿し込み部86の内径となっており、下側は第2流入口の内径で形成されている。つまり、第2流出口84は、壁側接続筒体80を排水管10に取り付けた状態において、第2流出口84の下端部84bが、第2流入口82の下端部82b以下となるように偏心して形成されている。
なお、第2実施形態の壁側接続筒体80における第2流出口84の形状は上述した形状に限定されるものではなく、例えば、円形状や楕円形状などであってもよい。また、第2流出口84の開口形状は上述したように2つの円の重複部分を抜き出した形状となっている。
第2流出口84の下端部84bが第2流入口82の下端部82b以下となるように形成されるために、第2挿し込み部86の中心軸86aが第2流入口82の中心軸82aに対して偏心可能な範囲は、図9(a)の正面視において、第2挿し込み部86の下端部86bと第2流入口82の下端部82bとの上下方向の距離が排水管10の厚みd1と等しくなるまでが下限であり、正面視における中心軸82aと中心軸86aとの距離がそれ以下となることがないように形成されている。また、壁側接続筒体80は、壁面Wに設けられている排水管10に対して、図9(a)の正面視において第2流入口82の中心軸82aと第2挿し込み部86の中心軸86aを結ぶ直線が垂直方向となるように取り付けられる。
このようにすることで、壁側接続筒体80を壁面Wに設けられた排水管10に取り付けたときに、壁側接続筒体80の内周面の下端部の高さを、第2流入口82の下端部82bから第2流出口84の下端部84bまで、水平勾配および下り勾配とすることができる。つまり、壁側接続筒体80の内周面の下端部の高さを、第2流入口82の下端部82bから第2流出口84の下端部84bまで、第2流入口82の下端部82b側の下端部の高さ以下となるようにすることができる。そのため、壁側接続筒体80の内部に尿が溜ることを抑制することができる。
また、壁側接続筒体80の第2挿し込み部86の、第2流入口82側の端部には、排水管10の厚みd1以上の高さを有する段部90が形成されている。第2実施形態の壁側接続筒体80では、図8に示すように、第2挿し込み部86の内側に排水管10を挿し込むため、排水管10を挿し込んだ状態においては、壁側接続筒体80の内周面の下端部の高さは排水管10の厚みd1だけ高くなる。
しかし、この排水管10の厚みd1以上の高さを有する段部90を形成することによって、第2挿し込み部86に排水管10を挿し込んだとしても、排水管10の内周面の下端部11bの高さは、段部90の上端部90bの高さ以下とすることができる。そのため、壁側接続筒体80の第2流入口82の下端部82bから排水管10の内周面の下端部11bまで、水平勾配および下り勾配とすることができる。
また、壁側接続筒体80の外周面には、壁側接続筒体80に対する便器接続筒体40の回転位置を規定する凸部88が形成されている。この凸部88は、第1流出口44の上下に一つずつ形成されている第1凹部50、第2凹部52の何れか一方に係合される。なお、第1凹部50および第2凹部52は第1流入口42の中心軸42aおよび第1流出口44の中心軸44aを結んだ上下方向の直線状に形成されており、第1凹部50は第1流出口44の第1流入口が近づいている側に、第2凹部52は第1流出口44の第1流入口が離れている側にそれぞれ形成されている。
従って、壁側接続筒体80に形成されている凸部88を第1凹部50または第2凹部52の何れか一方に係合することで、便器接続筒体40を壁側接続筒体80に対して180度ずつ回転させて接続することができる。
<作用の説明>
続いて、第2実施形態に係る排水接続部材30の作用について、図10を用いて説明する。図10は、便器接続筒体40の壁側接続筒体80に対する二つの接続状態について示した断面図であり、(a)は便器接続筒体40の第1凹部50に、壁側接続筒体80の凸部88を係合した場合の断面図である。また、(b)は便器接続筒体40の第2凹部52に、壁側接続筒体80の凸部88を係合した場合の断面図である。
図10(a)に示すように、便器接続筒体40の第1凹部50に壁側接続筒体80の凸部88を係合すると、第1流入口42の中心軸42aは第1流出口44の中心軸44aに対して上方側に偏心する。また、図10(b)に示すように、図10(a)に示す状態から便器接続筒体40を180度回転させて、便器接続筒体40の第2凹部52に壁側接続筒体80の凸部88に係合させると、第1流入口42の中心軸42aは第1流出口44の中心軸44aに対して下方側に偏心する。また、図10(a)および図10(b)いずれの場合においても、壁側接続筒体80の状態は変わらない。そのため、図10(a)における第1流入口42の中心軸42aと第2挿し込み部86の中心軸86aとの距離d4は、図10(b)における第1流入口42の中心軸42aと第2挿し込み部86の中心軸86aとの距離d5に比べて大きくなっている。
このように、第2実施形態の排水接続部材30においては、壁側接続筒体80に対して便器接続筒体40を回転させて接続することで、第2流出口84に対する第1流入口42の高さを変更することができる。つまり、小便器1の排水口4が接続される第1流入口42に対して、排水管10が接続される第2流出口84の高さを調整することができる。
また、第2実施形態の排水接続部材30では、便器接続筒体40の第1凹部50に壁側接続筒体80の凸部88を係合した場合、及び、便器接続筒体40の第2凹部52に、壁側接続筒体80の凸部88を係合した場合の何れの場合においても、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体80の第2筒部81における内周面の下端部の高さが、第1流入口42の下端部42bから第2流出口84の下端部84bまで、第1流入口42側の下端部の高さ以下となるように形成されている。
つまり、第2実施形態の排水接続部材30は、図10(a)、図10(b)に示すいずれの場合においても、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体80の第2筒部81における内周面の下端部の高さが、第1流入口42の下端部42bから第2流出口84の下端部84bまで、水平勾配または下り勾配となるように形成されている。
これについて、まず図10(a)について説明する。図10(a)では、第1流入口42は第1流出口44に対して上方側に偏心した状態で、壁側接続筒体80に接続されている。そのため、便器接続筒体40の第1筒部41における内周面の下端部は、第1流入口42の下端部42bから第1流出口44bまで、水平勾配または下り勾配となる。
また、上述したように便器接続筒体40の第1筒部41の第1挿し込み部48は第1流出口44から拡径して形成されているため、便器接続筒体40の第1筒部41の第1挿し込み部48に壁側接続筒体80の第2流入口82が挿し込まれたときに、第2流入口82の下端部82bを第1流出口44の下端部44b以下の高さとすることができる。
さらに、壁側接続筒体80は第1挿し込み部48の第1流入口42側の端部に接するまで挿し込まれるため、便器接続筒体40の第1流出口44と、壁側接続筒体80の第2流入口82との間に小便器1から流れてきた尿が溜る凹みは形成されない。
そのため、便器接続筒体40の第1流入口42から壁側接続筒体80の第2流入口82までの内周面の下端部は、水平勾配または下り勾配で形成される。
また、壁側接続筒体80は、排水管10が接続される第2挿し込み部86の中心軸86aに対して、第2流入口82の中心軸82aが上方側に偏心した状態で取り付けられ、さらに、第2流出口84は、第2流出口84の下端部84bの高さが第2流入口82の下端部82b以下となるように形成されている。そのため、壁側接続筒体80の内周面の下端部の高さは、第2流入口82の下端部82bから第2流出口84の下端部84bまで、第2流入口82側の下端部の高さ以下となるように形成されている。つまり、壁側接続筒体80の内周面の下端部の高さは、第2流入口82の下端部82bから第2流出口84の下端部84bまで水平勾配、または、下り勾配で形成されている。
従って、以上説明したように第2実施形態の排水接続部材30では、便器接続筒体40の第1凹部50に壁側接続筒体80の凸部88を係合した場合において、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体80の第2筒部81における内周面の下端部の高さは、第1流入口42の下端部42bから第2流出口84の下端部84bまで、第1流入口42側の下端部の高さ以下となるように形成されている。
さらに、第2実施形態の排水接続部材30では、排水管10を挿し込んだときに、第2流出口84の下端部84bから排水管10の厚みd1だけ排水接続部材30の内周面の下端部が高くなったとしても、第1流入口42の下端部42bから排水管10の下端部11bまで、第1流入口42の下端部42bの高さ以下となるようにするために段部90が形成されている。
そのため、壁側接続筒体80の第2挿し込み部86に排水管10を挿し込んだとしても、排水管10の内周面の下端部11dの高さを、第2流出口84の下端部84b以下とすることができる。
従って、第2実施形態の排水接続部材30では、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体80の第2筒部81における内周面の下端部の高さは、第1流入口42の下端部42bから排水管10の内周面の下端部11bまで、第1流入口42側の下端部の高さ以下となるように形成されている。つまり、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体80の第2筒部81における内周面の下端部の高さは、第1流入口42の下端部42bから排水管10の内周面の下端部11bまで、水平勾配または下り勾配で形成されている。
また、第2実施形態に係る排水接続部材30の便器接続筒体40は、第1実施形態に係る排水接続部材20の便器接続筒体40と同形状である。そのため、図10(b)に示すように、便器接続筒体40の第2凹部52に壁側接続筒体80の凸部88を係合させた場合でも、第1流入口42の下端部42bから、第2流入口82の下端部82bまでの、内周面の下端部の高さは水平勾配または下り勾配で形成することができる。
そのため、図10(b)に示す、便器接続筒体40の第2凹部52に壁側接続筒体80の凸部88を係合させた場合でも、便器接続筒体40の第1筒部41、及び、壁側接続筒体80の第2筒部81における内周面の下端部の高さは、第1流入口42の下端部42bから排水管10の内周面の下端部11bまで、水平勾配または下り勾配で形成されている。
従って、第2実施形態の排水接続部材30では、壁側接続筒体80に対して便器接続筒体40を回転させて取り付けたとしても、便器接続筒体40の第1流入口42から排水管10の入口部11まで上り勾配となる箇所が形成されないため、排水接続部材30の内部の流路に尿が溜ることを抑制することができる。
<<変形例>>
以上、本願の開示する技術の実施形態について説明したが、本願の開示する技術は上記に限定されるものではない。
例えば、図4において、便器接続筒体40の内側に壁側接続筒体60が挿入されると説明したが、本発明の排水接続部材20はこれに限定されるものではなく、便器接続筒体40が壁側接続筒体60の内部に挿入されるように構成されていても良い。
また、例えば、図8において、壁側接続筒体80の第2挿し込み部86に壁面Wから突出して設けられた排水管10が挿入されると説明したが、本発明の排水接続部材はこれに限定されるものではない。そのため、例えば、壁側接続管80の第2挿し込み部86が、排水管10の内周面に対して挿し込まれるように形成されているものであっても良い。
また、例えば、図4などにおいて、小便器1の排水口4と壁側接続筒体40の第1流入口42との間はPシール21によって水密に接続されていると説明したが、本発明の排水接続部材20における排水口4と第1流入口42との接続方法はこれに限定されるものではない。そのため、例えば、壁側接続筒体40の第1流入口42にゴムパッキンなどを設け、ゴムパッキンに小便器1の排水口4を挿し込むようにして接続するものであっても良い。
なお、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。