しかしながら、上述した特許文献1から特許文献3に開示されている制御方法では、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができるとは限らないという技術的問題点が生ずる。
例えば、特許文献1に開示されている制御方法では、バッテリの充電を行った場合に内燃機関で消費される燃料を考慮して走行効率を算出している。しかしながら、実際に内燃機関を駆動させて走行する場合の動作点は、走行効率を算出した時点のものとは異なる場合がある。具体的には、例えばバッテリに充電を行った際には内燃機関が燃費率の高い動作点で運転していたとしても、実際の走行時には燃費率の低い動作点で運転してしまうことがあり得る。このため、事前に算出した走行効率にのみ基づいて走行モードを判断したのでは、適切な走行モードを実現することができないおそれがある。また、特許文献2及び3についても同様であり、走行効率が変化することを考慮しなければ、適切な制御が実施できないおそれがある。従って、特許文献1から3に開示された制御方法は、場合によっては、燃費を向上させることができるとは限らない。
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、好適に燃費を向上させるようにハイブリッド車両を制御することが可能な車両制御装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決する車両制御装置は、内燃機関と、該内燃機関の動力を用いて駆動することで、電力を蓄積可能な充電池を充電可能な回転電機とを備えるハイブリッド車両を制御する車両制御装置であって、(i)前記充電池に蓄積されている電力の単位電力量を蓄積するために要した前記内燃機関の燃料消費量を表す充電コストが、(ii)前記回転電機の動力を用いることなく前記内燃機関の動力を用いて前記ハイブリッド車両が前記単位電力量に相当する単位走行出力を出力するために要する前記内燃機関の燃料消費量を表す機関コストよりも小さいか否かを判定する判定手段と、(i)前記充電コストが前記機関コストよりも小さいと判定される場合に、前記ハイブリッド車両の走行モードが、前記内燃機関を運転することなく走行する電動モードとなり、(ii)前記充電コストが前記機関コストよりも大きいと判定される場合に、前記走行モードが、前記内燃機関の動力を用いて走行する機関モードとなるように前記ハイブリッド車両を制御する制御手段と、前記充電コストを算出するための前記内燃機関の燃料消費率が所定の閾値より大きい場合に、前記判定手段において前回の判定で用いられた前記充電コストの値を、今回の判定で用いる前記充電コストの値として設定する設定手段とを備える。
車両制御装置は、内燃機関と回転電機とを備えるハイブリッド車両を制御することができる。内燃機関は、燃料を消費することで駆動することができる。回転電機は、内燃機関の動力を用いて駆動することができる。その結果、回転電機は、充電池を充電することができる。つまり、回転電機は、実質的には発電機として機能することができる。
ハイブリッド車両は、電動モードで走行することができる。更に、ハイブリッド車両は、機関モードで走行することができる。なお、「電動モード」とは、内燃機関が運転していない(つまり、内燃機関が駆動していない又は内燃機関が燃料を消費していない)状態を維持しながらハイブリッド車両が走行する走行モードである。この場合、ハイブリッド車両は、例えば、発電機として機能する回転電機とは異なる回転電機の動力又は発電機として機能する回転電機の動力を用いて走行してもよい。「機関モード」とは、内燃機関の動力を用いて走行する走行モードである。
このようなハイブリッド車両を制御する(特に、ハイブリッド車両の走行モードを切り替える)ために、車両制御装置は、判定手段と、制御手段と、設定手段とを備えている。
判定手段は、充電コストが機関コストよりも小さいか否かを判定する。言い換えれば、判定手段は、充電コストと機関コストとを比較する。
ここで、「充電コスト」は、充電池に蓄積されている電力(言い換えれば、全電力)の単位電力量を蓄積するために要した内燃機関の燃料消費量を直接的に又は間接的に表す指標値である。言い換えれば、「充電コスト」は、充電池に蓄積されている電力(全電力)のうち単位電力量の電力を蓄積するために要した内燃機関の燃料消費量を直接的に又は間接的に表す指標値である。更に言い換えれば、「充電コスト」は、当該充電コストが算出される時点で充電池に蓄積されている電力(全電力)を蓄積するために要した“単位電力量当たりの内燃機関の燃料消費量”を直接的に又は間接的に表す指標値である。つまり、「充電コスト」とは、充電池に蓄積されている電力(全電力)を蓄積するために要した内燃機関の燃料消費量を単に表す指標値ではなく、充電池に蓄積されている電力を蓄積するために要した内燃機関の燃料消費量を、単位電力量の電力を蓄積するために要した燃料消費量(つまり、単位電力量当たりの数値)として直接的に又は間接的に表す指標値である。例えば、充電池に蓄積されている電力の総量が「X1」であり、且つ、充電池に蓄積されている「X1」の電力を蓄積するために要した内燃機関の燃料消費量が「Y1」である場合には、充電コストは、「Y1(つまり、燃料消費量)/X1(つまり、電力の総量)」という数値を直接的に又は間接的に表す指標値であってもよい。
一方で、「機関コスト」は、回転電機の動力を用いることなく内燃機関の動力を用いてハイブリッド車両が単位電力量に相当する単位走行出力を出力するために要する内燃機関の燃料消費量を直接的に又は間接的に示す指標値である。言い換えれば、「機関コスト」は、当該機関コストが算出される時点で回転電機の動力を用いることなく内燃機関の動力を用いてハイブリッド車両が走行するためにこれから要するであろうと推測される“単位走行出力当たりの内燃機関の燃料消費量”を直接的に又は間接的に示す指標値である。例えば、単位電力量に相当する単位走行出力が「X2」であり、且つ、「X2」という走行出力をハイブリッド車両が出力するためにこれから要するであろうと推測される内燃機関の燃料消費量が「Y2」である場合には、機関コストは、「Y2(つまり、燃料消費量)/X2(つまり、走行出力)」という数値を直接的に又は間接的に表す指標値であってもよい。或いは、例えば、ハイブリッド車両に要求されている走行出力が「X3」であり、且つ、「X3」という走行出力をハイブリッド車両が出力するためにこれから要するであろうと推測される内燃機関の燃料消費量が「Y3」である場合には、機関コストは、「Y3(つまり、燃料消費量)/X3(つまり、走行出力)」という数値を直接的に又は間接的に表す指標値であってもよい。
なお、「充電コスト」は、典型的には、“単位電力量の電力を蓄積するために要した内燃機関の燃料消費量”が大きくなるほど大きくなる指標値であることが好ましい。同様に、「機関コスト」は、典型的には、“単位走行出力を出力するために要する内燃機関の燃料消費量”が大きくなるほど大きくなる指標値であることが好ましい。但し、“単位電力量の電力を蓄積するために要した内燃機関の燃料消費量”が大きくなるほど小さくなる指標値(例えば、充電効率)は、充電コストと反比例する関係にあるがゆえに、充電コストと一定の相関を有している。同様に、“単位走行出力を出力するために要する内燃機関の燃料消費量”が大きくなるほど小さくなる指標値(例えば、機関効率)は、機関コストと反比例する関係にあるがゆえに、機関コストと一定の相関を有している。従って、充電コストと機関コストとを比較する動作は、実質的には、充電コストと一定の相関を有している指標値(例えば、充電効率)と機関コストと一定の相関を有している指標値(例えば、機関効率)とを比較する動作を包含していると言える。例えば、充電コストが機関コストよりも小さいか否かを判定する動作は、実質的には、充電効率が機関効率よりも大きいか否か(言い換えれば、高いか否か)を比較する動作を包含していると言える。
制御手段は、判定手段の判定結果に基づいて、ハイブリッド車両の走行モードが所望の走行モードになるように、ハイブリッド車両を制御する。具体的には、充電コストが機関コストよりも小さいと判定される場合には、制御手段は、ハイブリッド車両の走行モードが電動モードとなるように、ハイブリッド車両を制御する。一方で、充電コストが機関コストよりも大きいと判定される場合には、制御手段は、ハイブリッド車両の走行モードが電動モードとなるように、ハイブリッド車両を制御する。
ここで、充電コストが充電池に蓄積されている単位電力量の電力を蓄積するために要した内燃機関の燃料消費量を表していることを考慮すれば、充電コストは、実質的には、充電池に蓄積されている電力を用いて駆動する回転電機の動力を用いてハイブリッド車両が単位走行出力を出力するために要する内燃機関の燃料消費量を表しているとも言える。つまり、充電コストは、ハイブリッド車両が電動モードで単位走行出力を出力するために要する内燃機関の燃料消費量を表しているとも言える。一方で、機関コストは、まさに、内燃機関の動力を用いてハイブリッド車両が単位走行出力を出力するために要する内燃機関の燃料消費量を表しているとも言える。つまり、機関コストは、ハイブリッド車両が機関モードで単位走行出力を出力するために要する内燃機関の燃料消費量を表しているとも言える。そうすると、充電コストが機関コストよりも小さいと判定される場合には、充電池に蓄積されている電力を用いて駆動する回転電機の動力を用いて単位走行出力を出力するために要する燃料消費量は、燃料を消費して駆動する内燃機関の動力を用いて単位走行出力を出力するために要する燃料消費量よりも少なくなる。つまり、充電コストが機関コストよりも小さいと判定される場合には、電動モードで単位走行出力を出力するハイブリッド車両の燃料消費量は、機関モードで単位走行出力を出力するハイブリッド車両の燃料消費量よりも少なくなる。一方で、充電コストが機関コストよりも大きいと判定される場合には、燃料を消費して駆動する内燃機関の動力を用いて単位走行出力を出力するために要する燃料消費量は、充電池に蓄積されている電力を用いて駆動する回転電機の動力を用いて単位走行出力を出力するために要する燃料消費量よりも少なくなる。つまり、充電コストが機関コストよりも大きいと判定される場合には、機関モードで単位走行出力を出力するハイブリッド車両の燃料消費量は、電動モードで単位走行出力を出力するハイブリッド車両の燃料消費量よりも少なくなる。
このような充電コスト及び機関コストの大小関係と単位走行出力を出力するために要する燃料消費量の大小関係との関係性を考慮すると、制御手段は、ハイブリッド車両の走行モードが、単位走行出力を出力するために要する燃料消費量が少なくなる所望の走行モードになるように、ハイブリッド車両を制御していると言える。つまり、制御手段は、ハイブリッド車両の走行モードが、ハイブリッド車両の走行に要する燃料消費量が少なくなる所望の走行モードになるように、ハイブリッド車両を制御していると言える。
特に、充電コストが単位電力量当たりの燃料消費量を表しているがゆえに、充電コストには、充電池に電力を蓄積するために駆動した内燃機関の駆動効率(例えば、熱効率)が反映されている。具体的には、内燃機関の駆動効率によっては、同じ量の電力が充電池に蓄積されている場合であっても、その電力を蓄積するために要した燃料消費量は同一であるとは限らない。同様に、内燃機関の駆動効率によっては、同じ量の燃料が消費されることで電力が充電池に蓄積される場合であっても、蓄積される電力の総量が同一であるとは限らない。つまり、内燃機関の駆動効率によっては、充電池に蓄積されている電力の価値が同一であるとは限らない。このように電力の価値が同一であるとは限らない場合であっても、充電コストは、充電池に蓄積されている電力の総量と当該電力の蓄積に要した燃料消費量とに応じて(例えば、電力を蓄積した際の内燃機関の駆動効率に応じて)変動するがゆえに、電力の価値を適切に表していると言える。このため、車両制御装置は、充電池に蓄積されている電力の価値(言い換えれば、充電池に電力を蓄積するために駆動した内燃機関の駆動効率)を考慮した上で、ハイブリッド車両の走行モードが、単位走行出力を出力するために要する燃料消費量が少なくなる所望の走行モードになるように、ハイブリッド車両を制御することができる。
単位走行出力を出力するために要する燃料消費量が少なくなることは、即ち、ハイブリッド車両の燃費(特に、ハイブリッド車両の走行全体で見た場合の燃費)の向上に繋がる。従って、車両制御装置は、燃費が良好になる所望の走行モードになるように、ハイブリッド車両を制御することができる。つまり、車両制御装置は、好適に燃費を向上させるようにハイブリッド車両を制御することができる。
更には、車両制御装置は、充電池に蓄積されている全電力を対象とする充電コストを考慮した上で、ハイブリッド車両の走行モードが、単位走行出力を出力するために要する燃料消費量が少なくなる所望の走行モードになるように、ハイブリッド車両を制御することができる。つまり、車両制御装置は、充電池に新たに蓄積された電力のみを対象とする充電コストのみならず、充電池に既に蓄積されていた電力をも対象とする充電コストをも考慮した上で、単位走行出力を出力するために要する燃料消費量が少なくなる所望の走行モードになるように、ハイブリッド車両を制御することができる。つまり、車両制御装置は、充電池に新たに蓄積された電力のみを対象とする充電コストと機関コストとの間の大小関係に代えて、充電池に蓄積されている全電力を対象とする充電コストと機関コストとの間の大小関係に基づいてハイブリッド車両を制御する。従って、ハイブリッド車両の走行モードは、単位走行出力を出力するために要する燃料消費量が少なくなる(つまり、燃費が良好になる)走行モードになる。従って、車両制御装置は、単位走行出力を出力するために要する燃料消費量を少なくするように(つまり、好適に燃費を向上させるように)ハイブリッド車両を制御することができる。
設定手段は、充電コストを算出するための内燃機関の燃料消費率(以下、適宜「燃費率」と称する)が所定の閾値より大きいか否かを判定する。即ち、回転電機を駆動させて充電池に充電を行っている際の内燃機関の動作点に対応する燃費率が所定の閾値より大きいか否かを判定する。なお、ここでの「所定の閾値」とは、内燃機関の燃費率が特殊な運転条件等に起因して極めて大きい値になっているか否かを判定するための閾値であり、事前のシミュレーション等によって予め設定される。より具体的には、例えば内燃機関の停止直前や停車直前においてアイドリングが発生する場合には、内燃機関の回転数はモータリング等によって徐々に低下するよう制御され、その結果として、内燃機関の燃費率は一時的に極めて大きい値となる。「所定の閾値」は、このような一時的な内燃機関の燃費率の増加を判定可能な値として設定される。
設定手段は、充電コストを算出するための内燃機関の燃費率が所定の閾値より大きい場合に、判定手段において前回の判定で用いられた充電コストの値を、今回の判定で用いる充電コストの値として設定する。即ち、充電時の内燃機関の燃費率を用いて新たな充電コストを算出せずに、前回の充電コスト(即ち、前回の判定の際に算出された充電コスト)をそのまま新たな充電コストとして用いるようにする。よって、判定手段では、前回の充電コストが機関コストと比較されることになる。
ここで、充電コストは、内燃機関の燃費率が大きいほど大きくなるパラメータである。よって、仮に内燃機関の燃費率が所定の閾値よりも大きい場合に通常通り新たな充電コストを算出しようとすると、算出される充電コストは極めて大きい値となる。この場合、充電コストが機関コストより大きくなる可能性が高くなり、電動モードより機関モードとなるように車両を制御すべき状況が増加する。しかしながら、実際に機関モードとなるように車両を制御した場合には、内燃機関の動作点が変化し、内燃機関の燃費率が非常に低くなるような動作点となってしまうこともあり得る。特に、上述したような特殊な条件下で内燃機関の燃費率が一時的に増加している場合には、その後の走行時には内燃機関の燃費率が低下している可能性が高い。このような場合、算出された充電コストが大きいからと言って機関モードとなるように車両を制御してしまうと、実際の内燃機関の燃費率は低いため、かえって燃費が悪化してしまうおそれがある。
しかるに上述した車両制御装置によれば、内燃機関の燃費率が所定の閾値よりも大きくなっている場合(即ち、一時的に大きい充電コストが算出されてしまうような場合)には、前回の充電コストの値を用いて機関コストとの比較が行われる。即ち、走行モードを判定するにあたって、内燃機関の燃費率の一時的な増加の影響が排除される。この結果、燃費率が低い状態で内燃機関が駆動されるにもかかわらず、機関モードとなるようにハイブリッド車両が制御され、燃費が悪化してしまうことを防止できる。言い換えれば、一時的な充電コストの増加を判定結果に反映させないことで、より適切な走行モードを決定し、好適に燃費の向上を図ることができる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から更に明らかにされる。
以下、図面を参照して本発明の車両制御装置の実施形態について説明する。なお、以下では、本発明の車両制御装置の実施形態が適用されたハイブリッド車両10を用いて説明を進める。
(1)ハイブリッド車両の構成
はじめに、図1を参照して、本実施形態のハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、本実施形態のハイブリッド車両10の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両10は、車軸11と、車輪12と、「車両制御装置」の一具体例であるECU(Electronic Control Unit)100と、「内燃機関」の一具体例であるエンジンENGと、「回転電機」の一具体例であるモータジェネレータMG1と、モータジェネレータMG2と、動力分割機構300と、インバータ400と、「充電池」の一具体例であるバッテリ500とを備える。
車軸11は、エンジンENG及びモータジェネレータMG2から出力された動力を車輪に伝達するための伝達軸である。車輪12は、車軸11を介して伝達される動力を路面に伝達する手段である。
ECU100は、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。本実施形態では特に、ECU100は、その内部に実現される論理的な又は物理的な処理ブロックとして、「制御手段」の一具体例である走行モード制御部101と、「設定手段」の一具体例である燃費率算出部102と、「判定手段」の一具体例である燃費率比較部103とを備えている。
走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードを制御する。具体的には、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードが所望の走行モードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する。例えば、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードが、エンジンENGの動力を用いて走行するHV(Hybrid Vehicle)モードとなるように、ハイブリッド車両10を制御してもよい。例えば、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードが、エンジンENGを運転することなくモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2の少なくとも一方の動力を用いて走行するEV(Electric Vehicle)モードとなるように、ハイブリッド車両10を制御してもよい。
なお、EVモードでは、エンジンENGが運転していない(言い換えれば、エンジンENGが駆動していない、更に言い換えれば、エンジンENGが燃料を消費していない)。このため、EVモードでの走行頻度が多くなるほど、ハイブリッド車両10の燃費が向上する。
本実施形態では特に、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードが燃費率比較部103の比較結果に基づいて決定される走行モードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する。なお、燃費率比較部103の比較結果に基づいて決定される走行モードについては、後に詳述する(図2等参照)。
燃費率算出部102は、ハイブリッド車両10の走行モードが決定される際に、燃費率比較部103による比較対象となる燃費率(具体的には、後述するバッテリ燃費率F及び走行時エンジン燃費率H)を算出する。また、本実施形態に係る燃費率算出部102は特に、所定の条件下において、新たなバッテリ燃費率Fを算出せずに、前回算出されたバッテリ燃費率をそのまま新たなバッテリ燃費率として設定する(即ち、バッテリ燃費率を維持する)ことが可能とされている。なお、燃費率算出部102によるバッテリ燃費率F及び走行時エンジン燃費率Hの算出方法の詳細については、後に詳述する(図2等参照)。
燃費率比較部103は、燃費率算出部102が算出したバッテリ燃費率Fと走行時エンジン燃費率Hとを比較する。具体的には、燃費率比較部103は、バッテリ燃費率Fと走行時エンジン燃費率Hとの大小関係を判定する。燃費率比較部103は、比較結果(つまり、大小関係の判定結果)を走行モード制御部101に伝える。
エンジンENGは、ガソリンや軽油等の燃料を燃焼することで駆動する。エンジンENGは、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能する。加えて、エンジンENGは、後述するモータジェネレータMG1の回転軸を回転させる(言い換えれば、駆動する)ための動力源として機能する。
モータジェネレータMG1は、バッテリ500を充電するための発電機として機能する。モータジェネレータMG1が発電機として機能する場合には、モータジェネレータMG1の回転軸は、エンジンENGの動力によって回転する。但し、モータジェネレータMG1は、バッテリ500に蓄積された電力を用いて駆動することで、ハイブリッド車両10の動力を供給する電動機として機能してもよい。
モータジェネレータMG2は、バッテリ500に蓄積された電力を用いて駆動することで、ハイブリッド車両10の動力を供給する電動機として機能する。加えて、モータジェネレータMG2は、バッテリ500を充電するための発電機として機能してもよい。モータジェネレータMG2が発電機として機能する場合には、モータジェネレータMG2の回転軸は、車軸11からモータジェネレータMG2に伝達される動力によって回転する。
動力分割機構300は、図示せぬサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。サンギアの回転軸はモータジェネレータMG1の回転軸に連結されている。リングギアの回転軸は、モータジェネレータMG2の回転軸に連結されている。サンギアとリングギアの中間にあるプラネタリキャリアの回転軸はエンジンENGの回転軸(つまり、クランクシャフト)に連結されている。エンジンENGの回転は、プラネタリキャリア及びピニオンギアによって、サンギア及びリングギアに伝達される。つまり、エンジンENGの動力は、2系統に分割される。ハイブリッド車両10において、リングギアの回転軸は、ハイブリッド車両10における車軸11に連結されており、この車軸11を介して車輪12に駆動力が伝達される。
インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給する。更に、インバータ400は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給する。なお、インバータ400は、所謂PCU(Power Control Unit)の一部として構成されていてもよい。
バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2が駆動するための電力をモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給する電力供給源である。バッテリ500は、充電可能な充電池である。
なお、バッテリ500は、ハイブリッド車両10の外部の電源から電力の供給を受けることで充電されてもよい。つまり、ハイブリッド車両10は、いわゆるプラグインハイブリッド車両であってもよい。
(2)ハイブリッド車両10の動作
続いて、図2を参照しながら、ハイブリッド車両10の動作(特に、ハイブリッド車両10の走行モードを制御する動作)について説明する。図2は、ハイブリッド車両10の動作(特に、ハイブリッド車両10の走行モードを制御する動作)の流れの一例を示すフローチャートである。
図2に示すように、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jの夫々の初期値を設定する(ステップS11)。以下、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jについて順に説明を進める。なお、バッテリ燃費率Fは、「充電コスト」の一具体例に相当する。
バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている電力(全電力)を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表す指標値である。言い換えれば、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている電力のうち単位電力量の電力を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量を表す。更に言い換えれば、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている電力を蓄積する際に、単位電力量の電力を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量を表す。例えば、バッテリ500に「X4(但し、Xは0以上)」という量の電力が蓄積されており且つこの「X4」という量の電力を蓄積するために「Y4」という量の燃料がエンジンENGによって消費された場合には、バッテリ燃費率Fは、「Y4/X3」という数式によって特定される数値を表す指標値であってもよい。一例として、例えば、バッテリ500に「2kWh」の電力が蓄積されており且つ当該2kWhの電力を蓄積するために「560g」の燃料がエンジンENGによって消費された場合には、バッテリ燃費率Fは、560÷2=280g/kWhとなる。以下では、説明の便宜上、バッテリ燃費率Fの単位が「g/kWh」であるものとして説明を進める。
燃費率算出部102は、ハイブリッド車両10の車種又は仕様毎に予め定められた任意の固定値を、バッテリ燃費率Fの初期値に設定してもよい。この場合、固定値として、ハイブリッド車両10が特定の走行経路を走行したと仮定した場合のシミュレーションから算出されるバッテリ燃費率(例えば、280g/kWh)が採用されてもよい。或いは、燃費率算出部102は、図2に示す動作が前回終了した時点でのバッテリ燃費率Fを、バッテリ燃費率Fの初期値に設定してもよい。この場合、燃費率算出部102は、図2に示す動作が前回終了した時点でのバッテリ燃費率Fを内部パラメータとして記憶しておくことが好ましい。
バッテリ電力積算量aは、バッテリ500に蓄積されている電力の総量を表す。例えば、バッテリ電力積算量aは、SOC(State Of Charge)が100%となる場合にバッテリ500に蓄積可能な電力の総量に対して、実際のSOCを掛け合わせることで算出される値に相当していてもよい。以下では、説明の便宜上、バッテリ電力積算量aの単位が「kWh」であるものとして説明を進める。
燃費率算出部102は、SOCが一定値となる場合にバッテリ500に蓄積されている電力量に相当する固定値を、バッテリ電力積算量aの初期値に設定してもよい。というのも、バッテリ500の劣化を抑制するために、バッテリ500に対する電力の入力(つまり、充電)及び出力(つまり、放電)は、SOCが一定値(例えば、65%)を維持するように制御されることが多い。このため、バッテリ500のSOCが一定値となっている可能性が高い(つまり、バッテリ電力積算量aも固定値となっている可能性が高い)からである。或いは、燃費率算出部102は、図2に示す動作が前回終了した時点でのバッテリ電力積算量aを、バッテリ電力積算量aの初期値に設定してもよい。この場合、燃費率算出部102は、図2に示す動作が前回終了した時点でのバッテリ電力積算量aを内部パラメータとして記憶しておくことが好ましい。或いは、燃費率算出部102は、不図示のSOCセンサから出力されるSOCを参照することでバッテリ500に蓄積されている電力の総量を算出又は推測すると共に、当該算出又は推測した電力の総量を、バッテリ電力積算量aの初期値に設定してもよい。
バッテリ燃料消費量Jは、バッテリ500に蓄積されている電力(全電力)を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量(いわば、総量)を表す指標値である。バッテリ燃料所費量Jは、バッテリ燃費率F×バッテリ電力積算量aという数式から算出される。従って、燃費率算出部102は、上述した態様で設定されたバッテリ燃費率Fの初期値に対して上述した態様で設定されたバッテリ電力積算量aの初期値を掛け合わせることで算出される値を、バッテリ燃料消費量Jの初期値に設定してもよい。以下では、説明の便宜上、バッテリ燃料消費量Jの単位が「g」であるものとして説明を進める。
続いて、燃費率算出部102は、新たなバッテリ燃費率F’の算出を行う前に、発電時エンジン燃費率Gが、閾値Aより大きいか否かを判定する(ステップS12)。
ここで、発電時エンジン燃費率Gは、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表す指標値である。言い換えれば、発電時エンジン燃費率Gは、バッテリ入力電力量dの電力のうち単位電力量の電力をバッテリ500に蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量を表す。更に言い換えれば、発電時エンジン燃費率Gは、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積する際に、単位電力量の電力をバッテリ500に蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量を表す。例えば、バッテリ入力電力量dの電力を蓄積するために「Y5」という量の燃料がエンジンENGによって消費された場合には、発電時エンジン燃費率Gは、「Y5/d」という数式によって特定される数値を表す指標値であってもよい。一例として、バッテリ入力電力量dが「0.5kWh」であり且つ当該0.5kWhの電力をバッテリ500に新たに蓄積するために「100g」の燃料がエンジンENGによって消費された場合には、発電時エンジン燃費率Gは、100÷0.5=200g/kWhとなる。以下では、説明の便宜上、発電時エンジン燃費率Gの単位が「g/kWh」であるものとして説明を進める。
燃費率算出部102は、エンジンENGの動作点(例えば、エンジンENGのトルク及びエンジンENGの回転数によって特定される動作点)とエンジン燃費率との対応関係を表すマップを参照することで、発電時エンジン燃費率Gを算出することが好ましい。
一方で、閾値Aは、発電時エンジン燃費率Gが特殊な運転条件等に起因して極めて大きい値になっているか否かを判定するための閾値であり、事前のシミュレーション等によって予め設定される。
発電時エンジン燃費率Gが閾値Aより大きくないと判定された場合(ステップS12:No)、燃費率算出部102は、新たなバッテリ燃費率F’の算出を行う(ステップS13)。バッテリ燃費率F’の算出は、ハイブリッド車両10における各種条件に応じてリアルタイムに変動する値であるため、バッテリ燃費率F’は都度算出される。
具体的には、燃費率算出部102は、先ず加速後のバッテリ燃料消費量J’[g]を算出する。加速後のバッテリ燃料消費量J’は、加速前のバッテリ燃料消費量J[g]、発電時のエンジン燃費率G[g/kwh]、エンジン発電電力d[kw]、加速前のバッテリ燃費率F[g/kwh]、MG2アシスト電力量c[kwh]、及びEV走行電力量e[kwh]を用いて、以下の数式(1)で求めることができる。
J’=J+G×d−F×(c+e) ・・・(1)
燃費率算出部102は更に、加速後のバッテリ電力積算量a’ [kwh]を算出する。加速後のバッテリ電力積算量a’は、加速前のバッテリ電力積算量a[kwh]、エンジン発電電力d[kw]、回生エネルギーr[kw]、MG2アシスト電力量c[kwh]、及びEV走行電力量e[kwh]を用いて、以下の数式(2)で求めることができる。
a’=a+(d+r)−(c+e) ・・・(2)
その後、燃費率算出部102は、加速後のバッテリ燃料消費量J’を、加速後のバッテリ電力積算量a’で除算することで、加速後のバッテリ燃費率F’を算出する。つまり、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F’を以下の数式(3)を用いて算出する。
F’=J’/a’ ・・・(3)
一方、発電時エンジン燃費率Gが閾値Aより大きいと判定された場合(ステップS12:Yes)、燃費率算出部102は、前回の判定で用いられたバッテリ燃費率Fを、そのまま新たなバッテリ燃費率F’とする(ステップS14)。即ち、燃費率算出部102は、新たにバッテリ燃費率F’を算出することなく、前回の判定の際に算出されたバッテリ燃費率Fを維持する。
その後、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jを更新する(ステップS15)。具体的には、燃費率算出部102は、ステップS13で算出したバッテリ燃費率F’、又はステップS14で前回の値のまま維持されたバッテリF’を、新たなバッテリ燃費率Fに設定する。燃費率算出部102は、ステップS13で算出したバッテリ電力積算量a’を、新たなバッテリ電力積算量aに設定する。燃費率算出部102は、ステップS13で算出したバッテリ燃料消費量J’を、新たなバッテリ燃料消費量Jに設定する。
バッテリ燃費率Fが更新された後、燃費率比較部103は、バッテリ燃費率Fが、燃費率算出部102によって算出される走行時エンジン燃費率Hよりも大きいか否かを判定する(ステップS21)。なお、走行時エンジン燃費率Hは、「機関コスト」の一具体例である。
走行時エンジン燃費率Hは、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行するために要するであろうと推測される単位走行出力当たりのエンジンENGの燃料消費量を表す指標値である。言い換えれば、走行時エンジン燃費率Hは、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が単位電力量(言い換えれば、バッテリ燃費率Fを規定する単位電力量)に相当する単位走行出力を出力するために要するであろうと推測されるエンジンENGの燃料消費量を表す。例えば、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行する際の走行出力が「X6」であり且つ当該「X6」という走行出力を出力するために「Y6」という量の燃料がエンジンENGによって消費されるであろうと推測される場合には、走行時エンジン燃費率Hは、「Y6/X6」という数式によって特定される数値を表す指標値であってもよい。一例として、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行する際の走行出力が「0.5kWh」であり且つ当該0.5kWhの走行出力を出力するために「100g」の燃料がエンジンENGによって消費されるであろうと推測される場合には、走行時エンジン燃費率Hは、100÷0.5=200g/kWhとなる。以下では、説明の便宜上、走行時エンジン燃費率Hの単位が「g/kWh」であるものとして説明を進める。但し、走行時エンジン燃費率Hの単位は、バッテリ燃費率Fの単位と同一であることが好ましい。
ステップS21の判定の結果、バッテリ燃費率F’が走行時エンジン燃費率Hよりも大きいと判定される場合(ステップS21:Yes)、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードがHVモードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する(ステップS31)。
他方、ステップS21の判定の結果、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きいと判定される場合(ステップS21:No)、燃費率比較部103は、バッテリ500のSOCが過度に低下しているか否か(例えば、所定閾値よりも小さいか否か)を判定する(ステップS22)。そして、バッテリ500のSOCが所定閾値よりも小さくない場合(ステップS22:No)、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードがEVモードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する(ステップS32)。一方で、バッテリ500のSOCが所定閾値よりも小さい場合(ステップS22:Yes)、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードがHVモードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する(ステップS31)。このようにすれば、EVモードで走行するのに十分なSOCが確保されていないにもかかわらず、EVモードとなるようにハイブリッド車両10が制御されてしまうことを回避できる。
ここまで説明したように、本実施形態のハイブリッド車両10では、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きいか否かの判定結果に基づいてハイブリッド車両10の走行モードが決定される。その結果、ハイブリッド車両10は、好適に燃費を向上させることが可能な走行モードを選択しながら走行することができる。以下、図3を参照しながら、その理由について説明する。図3は、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きいか否かの判定結果に基づいて決定される走行モードを示すタイミングチャートである。
図3において、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表している。従って、バッテリ燃費率Fは、実質的には、バッテリ500に蓄積されている電力を用いてEVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量を表しているとも言える。言い換えれば、バッテリ燃費率Fは、実質的には、EVモードで単位走行出力を出力するハイブリッド車両10の燃料消費量を表しているとも言える。一方で、走行時エンジン燃費率Hは、まさに、エンジンENGの動力を用いてHVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量を表している。言い換えれば、走行時エンジン燃費率Hは、HVモードで単位走行出力を出力するハイブリッド車両10の燃料消費量を表しているとも言える。
従って、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きい場合には、EVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量(具体的には、単位走行出力当たりの燃料消費量)は、HVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量(具体的には、単位走行出力当たりの燃料消費量)よりも大きいと想定される。ここで、単位走行出力当たりの燃料消費量が大きくなることは、即ち、ハイブリッド車両10の燃費(特に、ハイブリッド車両10の走行全体で見た場合の燃費)の悪化に繋がる。従って、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きい場合には、EVモードで走行するハイブリッド車両10の燃費は、HVモードで走行するハイブリッド車両10の燃費よりも悪化していると想定される。
一方で、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きい場合には、HVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量(具体的には、単位走行出力当たりの燃料消費量)は、EVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量(具体的には、単位走行出力当たりの燃料消費量)よりも大きいと想定される。従って、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きい場合には、HVモードで走行するハイブリッド車両10の燃費は、EVモードで走行するハイブリッド車両10の燃費よりも悪化していると想定される。
そこで、本実施形態では、図3に示すように、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きい場合には、ハイブリッド車両10は、単位走行出力当たりの燃料消費量が相対的に小さくなるHVモードで走行する。一方で、図3に示すように、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きい場合には、ハイブリッド車両10は、単位走行出力当たりの燃料消費量が相対的に小さくなるEVモードで走行する。その結果、本実施形態では、ハイブリッド車両10は、単位走行出力当たりの燃料消費量が相対的に小さくなる走行モードを適宜決定しながら走行することができる。ここで、単位走行出力当たりの燃料消費量が小さくなることは、即ち、ハイブリッド車両10の燃費(特に、ハイブリッド車両10の走行全体で見た場合の燃費)の向上に繋がる。従って、ハイブリッド車両10は、好適に燃費を向上させることが可能な走行モードを適宜決定しながら走行することができる。
特に、本実施形態では、バッテリ燃費率Fは、単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表しているがゆえに、バッテリ燃費率Fには、バッテリ500に電力を蓄積するために駆動したエンジンENGの駆動効率(例えば、熱効率であり、以下“エンジン効率”と称する)が反映されている。
例えば、エンジン効率が相対的に悪い状態でエンジンENGが駆動することで所定量の電力がバッテリ500に蓄積された場合には、燃料消費量の総量が相対的に多くなるがゆえに、バッテリ燃費率Fが相対的に大きくなる。一方で、エンジン効率が相対的に良好な状態でエンジンENGが駆動することで同一の所定量の電力がバッテリ500に蓄積された場合には、燃料消費量の総量が相対的に少なくなるがゆえに、バッテリ燃費率Fが相対的に小さくなる。このように、同じ量の電力がバッテリ500に蓄積されている場合であっても、その電力を蓄積するために要した燃料消費量は同一であるとは限らない。つまり、同じ量の電力がバッテリ500に蓄積されている場合であっても、バッテリ500に蓄積されている電力の価値が同一であるとは限らない。このように、バッテリ燃費率Fは、同じ量の電力がバッテリ500に蓄積されている場合であっても、その電力を蓄積するために要した燃料消費量(言い換えれば、電力を蓄積した際のエンジンENGのエンジン効率)に応じて変動するがゆえに、電力の価値を適切に表していると言える。
同様に、例えば、バッテリ500に電力を蓄積するためにエンジン効率が相対的に悪い状態でエンジンENGが所定量の燃料を消費する場合には、バッテリ500に蓄積される電力の総量が相対的に少なくなるがゆえに、バッテリ燃費率Fが相対的に大きくなる。一方で、バッテリ500に電力を蓄積するためにエンジン効率が相対的に良好な状態でエンジンENGが同一の所定量の燃料を消費する場合には、バッテリ500に蓄積される電力の総量が相対的に多くなるがゆえに、バッテリ燃費率Fが相対的に小さくなる。このように、エンジンENGが同じ量の燃料を消費することで電力がバッテリ500に蓄積される場合であっても、蓄積される電力の総量が同一であるとは限らない。つまり、エンジンENGが同じ量の燃料を消費することで電力がバッテリ500に蓄積される場合であっても、バッテリ500に蓄積されている電力の価値が同一であるとは限らない。このように、バッテリ燃費率Fは、エンジンENGが同じ量の燃料を消費することで電力がバッテリ500に蓄積される場合であっても、バッテリ500に蓄積される電力の総量(言い換えれば、電力を蓄積した際のエンジンENGのエンジン効率)に応じて変動するがゆえに、電力の価値を適切に表していると言える。
このため、本実施形態に係るハイブリッド車両10は、このようなバッテリ500に蓄積されている電力の価値を考慮した上で、燃費が相対的に良好になる(或いは、最適となる)走行モードを適宜決定しながら走行することができる。従って、ハイブリッド車両10は、好適に燃費を向上させることが可能な走行モードを適宜決定しながら走行することができる。
加えて、本実施形態では、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている全電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表している。つまり、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に新たに蓄積された電力のみ(言い換えれば、バッテリ500に蓄積されている全電力のうちの一部のみ)を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表していない。従って、ハイブリッド車両10は、バッテリ500に新たに蓄積された電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量のみならず、バッテリ500に既に蓄積されていた電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量をも考慮した上で、燃費が相対的に良好になる(或いは、最適となる)走行モードを適宜決定しながら走行することができる。
上述した走行モードを制御する一連の処理は、ハイブリッド車両10の動作が終了したと判定されると終了する(ステップS41:Yes)。一方で、ハイブリッド車両10の動作が終了したと判定されない場合には(ステップS41:No)、ステップS12以降の各処理が繰り返し実行される。
以上説明したように、本実施形態では、バッテリ燃費率Fとエンジン燃費率Hの比較結果に基づいてハイブリッド車両10の走行モードが決定される。また、本実施形態では特に、走行モードの判定に用いられるバッテリ燃費率Fが、所定の条件下で前回の値のまま維持される(ステップS14参照)。このようなバッテリ燃費率Fを維持する動作によって得られる効果については、以下で詳細に説明する。
(3)バッテリ燃費率Fを維持することによる効果
以下では、図4及び図5を参照して、エンジン動作点を考慮してハイブリッド車両10の走行モードを決定することによる効果について詳細に説明する。図4は、バッテリ燃費率が急上昇する状況の一例を示すタイムチャートである。図5は、アイドリング時のエンジン燃費率の変動を示すタイムチャートである。
図4に示す例では、破線で示すタイミングにおいて発電時エンジン燃費率Gが一時的に著しく増加している。ここで、数式(1)を見ても分かるように、発電時エンジン燃費率Gが大きくなると、算出されるバッテリ燃料消費量J’も大きくなる。そして、数式(3)を見ても分かるように、バッテリ燃料消費量J’が大きくなると、算出されるバッテリ燃費率F’も大きくなる。このため、破線で示すタイミングでは、バッテリ燃費率Fが急上昇している。
図5に示す例では、時刻T1においてエンジンONフラグがオフとなっている(即ち、エンジンENGを停止させることが決定している)。この場合、エンジン回転数Neは、モータリングしながら徐々に低下されるため、エンジンENGは一時的に(例えば1秒程度)アイドリング状態となる。このような場合に、エンジン燃費率は著しく増加する。この結果、バッテリ燃費率Fも一時的に極めて大きい値となる。
バッテリ燃費率Fが急上昇すると、バッテリ燃費率Fとエンジン燃費率Hとの比較において、バッテリ燃費率Fの方が高いと判定される可能性が高くなる。即ち、バッテリ燃費率Fとエンジン燃費率Hとの比較結果だけを見れば、HVモードで走行すべきと判定される可能性が高くなる。
しかしながら、実際にハイブリッド車両10をHVモードとなるように制御した場合のエンジンENGの動作点は、バッテリ500の充電時とは違ったものとなる。このため、バッテリ燃費率Fを算出する際に利用する燃費率と、実際に実現される燃費率には差異が生じてしまう。この結果、発電時エンジン燃費率Gを用いて算出したバッテリ燃費率Fとエンジン燃費率Hとの比較結果だけに基づいてハイブリッド車両10を制御しても、適切に燃費を向上させることができない可能性がある。
このような問題点を解消するため、本実施形態では、発電時エンジン燃費率Gが閾値Aよりも大きい場合に、前回のバッテリ燃費率Fが維持される。即ち、バッテリ燃費率Fが一時的に大きい値として算出されてしまうような場合には、前回のバッテリ燃費率Fの値を用いて走行時エンジン燃費率Hとの比較が行われる。これにより、ハイブリッド車両10の走行モードを判定するにあたって、発電時エンジン燃費率Gの一時的な増加の影響が排除される。この結果、燃費率が低い状態でエンジンENGが駆動されるにもかかわらず、HVモードとなるようにハイブリッド車両10が制御され、燃費が悪化してしまうことを防止できる。言い換えれば、一時的なバッテリ燃費率Fの増加を判定結果に反映させないことで、より適切な走行モードを決定し、好適に燃費の向上を図ることができる。
なお、上述の説明では、ハイブリッド車両10が、いわゆるスプリット(動力分割)方式のハイブリッドシステム(例えば、THS:Toyota Hybrid System)を採用する例について説明している。しかしながら、ハイブリッド車両10がパラレル方式のハイブリッドシステムを採用する場合であっても、上述した態様で走行モードが制御されてもよい。その結果、ハイブリッド車両10がパラレル方式のハイブリッドシステムを採用する場合であっても、上述した各種効果が好適に享受される。
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置もまた本発明の技術思想に含まれる。