本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、入力振動の周波数が第一の振動系の共振周波数のチューニング可能領域よりも高周波であっても、十分に高い効率で発電することができる、新規な構造の発電装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、第一のマス部材が第一のばね部材によって弾性支持された第一の振動系と、第二のマス部材が第二のばね部材によって弾性支持された第二の振動系とを備えており、該第一のマス部材と該第二のマス部材を該第二のばね部材で相互に弾性連結して多自由度振動系が構成されて、該第一のマス部材と該第二のマス部材の間には発電素子が配設されていると共に、該第一のマス部材が該第一のばね部材によって振動部材に取り付けられて、該振動部材から該第一の振動系および該第二の振動系に入力された振動エネルギーが発電素子によって電気エネルギーに変換されるようにした発電装置において、前記第一の振動系の共振周波数が前記振動部材から該第一の振動系へ入力される振動の周波数に対して1/√2倍よりも低周波とされていると共に、該第一の振動系における前記第一のばね部材の損失係数が0.01以上且つ0.2以下とされていることを、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた発電装置の第一の態様によれば、第一の振動系の共振周波数を振動部材の振動周波数に合わせることが難しい場合にも、振動エネルギーを電気エネルギーに変換して十分な電力を得ることができる。即ち、第一の振動系の共振周波数を振動部材の振動周波数に対して1/√2倍よりも低周波に設定することで、振動部材からの入力が第一の振動系に対して実質的に衝撃荷重として作用せしめられる。その結果、第一の振動系において振動部材からの入力に対する自励共振が生ぜしめられて、第一の振動系の共振現象によって第二の振動系に振動が有効に入力される。
さらに、第一の振動系における第一のばね部材の損失係数が0.2以下とされていることにより、第一のばね部材の弾性変形時のエネルギー損失に起因する第一の振動系の振動減衰が低減されて、第一の振動系の振動が比較的に長い時間に亘って持続される。その結果、第一のマス部材と第二のマス部材の間に配される発電素子に対して振動エネルギーが持続的に入力されて、荷重入力に対する発電量を大きく得ることができる。
また、第一のばね部材の損失係数が、0.2以下であるだけでなく、0.01以上とされていることにより、第一の振動系の自励振動が十分に広い周波数成分をもって生ぜしめられて、第二の振動系へ入力される振動のブロード化(十分なレベルの振動が入力される周波数の広帯域化)が図られる。これにより、部品の公差などによって第二の振動系の共振周波数に誤差が生じても、第二の振動系の共振周波数における第一の振動系から第二の振動系への入力が安定して、目的とする発電量を発電装置の個体差によるばらつきを抑えて有効に得ることができる。加えて、第一の振動系の共振倍率が必要以上に大きくなるのが回避されて、発電素子の変形量が制限されることにより、十分な発電効率を得ながら、発電素子の耐久性を確保することができる。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載の発電装置において、前記第二の振動系の共振周波数が、前記第一の振動系の共振周波数に対して90%以上且つ110%以下の範囲にチューニングされているものである。
第二の態様によれば、第一の振動系の共振周波数と第二の振動系の共振周波数を相互に近い周波数に設定することにより、第一の振動系の自励振動に対して第二の振動系が共振現象を生じて、発電素子に十分な振動エネルギーを入力することができる。それ故、第二の振動系に配される発電素子の発電効率を高めることができて、振動発電によって得られる電力量を大きく得ることができる。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された発電装置において、前記第二の振動系における前記第二のマス部材の質量が、前記第一の振動系における前記第一のマス部材の質量に対して20%以下とされているものである。
第三の態様によれば、第二のマス部材の質量が第一のマス部材の質量に対して十分に小さくされており、第二の振動系が第一の振動系に対してダイナミックダンパとして機能することで第一の振動系に及ぼされる制振効果が低減されることから、第一の振動系の自励振動が有効に惹起されて、発電素子に入力される振動エネルギーを大きく得ることができる。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された発電装置において、前記第一のばね部材が高分子弾性体とされていると共に、前記第二のばね部材が金属ばねとされているものである。
第四の態様によれば、第一のばね部材が高分子弾性体とされていることで、第一のばね部材の損失係数を調整し易くなって、目的に応じた第一のばね部材を容易に得ることができる。更に、第二のばね部材が損失係数の小さい金属ばねとされていることで、発電素子に入力される振動エネルギーが第二のばね部材の弾性変形によるエネルギー減衰効果で低減されるのを防いで、効率的な発電を実現することができる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載された発電装置において、前記第一の振動系が、該第一の振動系へ断続的な衝撃荷重を入力する前記振動部材に対して取り付けられるものである。
第五の態様のように、振動部材から第一の振動系への入力が連続ではなく断続的であっても、第一の振動系の自励振動がある程度の時間幅で生じることから、効率的な発電が可能となる。なお、衝撃荷重とは、第一の振動系への入力時に実質的に衝撃荷重とみなせる振動荷重であっても良く、例えば第一の振動系の振動周期に対して十分に短い時間で収束する高周波振動などを含む。
本発明によれば、振動部材に取り付けられる第一の振動系と、第一の振動系に取り付けられる第二の振動系とを有する発電装置において、第一の振動系の共振周波数が振動部材から第一の振動系への入力される振動周波数の1/√2倍よりも低周波とされていると共に、第一の振動系における第一のばね部材の損失係数が0.01以上且つ0.2以下とされている。これにより、第一,第二の振動系の共振周波数を振動部材の振動周波数に合わせることが難しい場合でも、第一の振動系の自励共振による十分な振動が、発電素子を備える第二の振動系にある程度の時間幅で入力されると共に、第二の振動系の共振周波数のずれに対する発電効率の差が低減されて、高効率の発電が安定して実現される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の第一の実施形態としての発電装置10が示されている。発電装置10は、図2の振動モデルにも示されているように、振動部材12に取り付けられる第一の振動系14と、第一の振動系14を介して振動部材12に取り付けられる第二の振動系16とを含む多自由度振動系を、備えている。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、上下方向とは、振動部材12の主たる振動入力方向である図1中の上下方向を言う。
より詳細には、第一の振動系14は、第一のマス部材20と第一のばね部材22を備えている。第一のマス部材20は、鉄などの比重の大きな材料で形成されており、下部マス24と上部マス26を組み合わせた中空の矩形箱状とされている。
下部マス24は、上下に延びる筒状の周壁28の下開口部が一体形成された底壁30によって閉塞された構造を有しており、全体として上方に開口する有底筒状とされている。また、下部マス24の底壁30には、上方へ突出する支持突部32が一体形成されており、支持突部32には上面に開口するねじ穴が形成されている。上部マス26は、略平板形状とされており、上面視において周壁28と略同じ外形を備えている。そして、上部マス26が下部マス24の開口部を覆うように重ね合わされて相互に固定されることにより、下部マス24と上部マス26によって中空の第一のマス部材20が形成されて、内部に収容空所34が形成されている。
また、第一のマス部材20は、第一のばね部材22によって弾性支持されている。第一のばね部材22は、ゴムや樹脂エラストマなどの高分子材料で形成された弾性体であって、本実施形態ではゴム弾性体とされており、下部マス24の周壁28の外周面に加硫接着されている。更に、第一のばね部材22は、周方向全周に亘って連続して設けられていても良いが、本実施形態では、周方向の複数箇所にそれぞれ設けられている。
さらに、第一のばね部材22は、エネルギーの損失係数が0.01以上且つ0.2以下とされている。損失係数は、第一のばね部材22の形成材料などによって調節設定可能であり、上記数値範囲の損失係数を有する第一のばね部材22は、例えば、損失係数の小さなゴムおよび樹脂エラストマや損失係数の大きな金属、更には損失係数の大きなゴムなどの高分子弾性体と損失係数の小さなばね鋼などの金属ばねとを組み合わせたものなどによって、実現され得る。本実施形態では、第一のばね部材22がゴム弾性体で形成されていることから、損失係数を上記の数値範囲に設定し易くなっている。なお、一般的なばね鋼で形成された金属ばね単体では、第一の振動系14の共振周波数f1 を実用上適切にチューニングしながら上記したエネルギー損失係数の数値範囲を実現することが難しく、第一のばね部材として金属ばねを単体で採用する場合には、マグネシウムなどの損失係数の大きな金属材料によるものが適宜に選択される。
第一のばね部材22は、振動部材12にボルトなどで固定された取付部材36に固着されて、振動部材12と第一のマス部材20を弾性連結している。取付部材36は、第一のマス部材20に対して外周側に離隔した縦壁構造をもって形成されており、第一のマス部材20の外周面が、取付部材36に対して、主たる振動入力方向に略直交する方向で対向位置せしめられている。そして、第一のばね部材22が第一のマス部材20の外周面と取付部材36との対向面間に配設されることにより、第一のマス部材20が取付部材36によって弾性支持されており、取付部材36が振動部材12にボルト固定されることで、第一の振動系14が振動部材12に取り付けられるようになっている。なお、主たる振動入力方向(図1中、上下方向)の入力に対して、第一のばね部材22が剪断変形するようになっており、第一のばね部材22の剪断ばね成分が第一の振動系14の主たるばねとして作用するようになっている。
また、第一のマス部材20の収容空所34には、第二の振動系16が収容配置されている。第二の振動系16は第二のマス部材38と第二のばね部材40を備えており、第一のマス部材20の収容空所34において第二のマス部材38が第二のばね部材40を介して支持突部32に弾性連結されている。
第二のマス部材38は、好適には鉄などの高比重材料で形成されており、中実の柱状乃至はブロック状とされている。第二のばね部材40は、ばね鋼などで形成された板ばねであって、厚さ方向上下に弾性変形可能とされている。更に、第二のばね部材40の損失係数は、第一のばね部材22よりも小さくされており、より好適には0.01よりも小さくされている。そして、第二のばね部材40の基端部が第一のマス部材20の支持突部32にねじ等で固定されると共に、第二のばね部材40の先端部には第二のマス部材38が接着や溶接、ねじ止め、機械的な係止などの手段によって固定されて、第二のマス部材38が上下変位を許容された状態で第一のマス部材20に連結されている。これにより、第二の振動系16が第一の振動系14に取り付けられて、二自由度の振動系が構成されている。
なお、第二の振動系16が第一の振動系14に取り付けられた状態において、第二のマス部材38は、第一のマス部材20の下部マス24の底壁30と上部マス26との両方に対して上下に離隔して対向配置されている。そして、第二のマス部材38と第一のマス部材20の上下対向面間には、ストッパゴム42がそれぞれ配設されている。これにより、第二のばね部材40の過大な弾性変形時にも、第二のマス部材38が第一のマス部材20に直接的に打ち当てられるのが防止されて、打音の発生が回避されるようになっている。
また、第一のマス部材20と第二のマス部材38を繋ぐ第二のばね部材40には、発電素子44が固着されている。発電素子44は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換可能な各種素子を採用可能であり、例えば、圧電素子や磁歪素子などが採用され得る。本実施形態では、発電素子44として圧電素子が採用されており、圧電素子が第二のばね部材40の上面に重ね合わされて固着されることで、第二のばね部材40の厚さ方向への曲げ変形に伴って変形して、圧電の正効果によるエネルギー変換作用を発揮するようになっている。なお、発電素子44として圧電素子を採用する場合には、形成材料として、例えば、セラミック材料や単結晶材料などが採用される。より具体的には、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどが、圧電素子の形成材料として何れも好適に採用され得る。
この発電素子44は、電気回路46に接続されており、電気回路46によって整流回路や蓄電装置、各種センサ、無線通信装置などの電力使用機器であるデバイス48に電気的に接続されており、後述する発電素子44の発電電力がデバイス48に供給されるようになっている。
かくの如き構造とされた発電装置10は、振動部材12への装着状態において振動部材12から振動が入力されるようになっており、入力された振動エネルギーを発電素子44で電気エネルギーに変換して取り出すようになっている。本実施形態では、振動部材12から発電装置10へ入力される振動は、周波数f0 が500Hz程度とされており、所定の時間間隔で断続的に入力されるようになっている。なお、このような断続的な振動としては、例えば、振動部材12が所定の長さ毎に区切られたユニットを連結してなる道路や橋梁、線路などの場合に、それらの継ぎ目部分を車両が通過する際に入力される荷重などが考えられる。
また、図3に示すように、第一の振動系14の共振周波数f1 が、振動部材12から第一の振動系14へ入力される振動の周波数f0 に対して、1/√2倍よりも低周波とされており、本実施形態では100Hz程度に設定されている。第一の振動系14の共振周波数f1 は、一般的に知られているように、第一のマス部材20の質量と第一のばね部材22のばね定数を調節することで設定される。なお、図3では、振動レベルと周波数の特性が、第一の振動系14について実線で、第二の振動系16について一点鎖線で、振動部材12からの入力振動について破線で、それぞれ示されている。
さらに、本実施形態では、第一の振動系14の共振周波数f1 と、第二の振動系16の共振周波数f2 とが、略同じ周波数に設定されている。より具体的には、第二の振動系16の共振周波数f2 が、第一の振動系14の共振周波数f1 に対して0.9倍〜1.1倍の範囲となるように設定されて、第一の振動系14の自励振動において振動レベルが十分に大きく得られる周波数域で、第二の振動系16の共振現象が発生するようにされている。本実施形態では、第一の振動系14の共振周波数f1 が100Hz程度にチューニングされていることから、第二の振動系16の共振周波数f2 は、90Hz〜110Hzの範囲でチューニングされることが望ましい。第二の振動系16の共振周波数f2 は、一般的に知られているように、第二のマス部材38の質量と第二のばね部材40のばね定数を調節することで設定される。
加えて、第二の振動系16における第二のマス部材38の質量は、第一の振動系14における第一のマス部材20の質量に対して20%以下とされて、第一のマス部材20に比して軽量とされている。なお、より好適には、第二のマス部材38の質量は、第一のマス部材20の質量に対して5%以上とされることにより、第二の振動系16の共振周波数を第一の振動系14の共振周波数に対して近い周波数域にチューニングし易くなる。
ここにおいて、振動部材12から発電装置10へ入力される500Hzの高周波振動は、入力振動よりも十分に低い周波数にチューニングされた第一の振動系14の振動周期に対して著しく短時間で収束することから、第一の振動系14に対して実質的に衝撃荷重として作用する。これにより、第一の振動系14は、振動部材12からの入力によって自励振動を生じて、第一のマス部材20が共振状態で変位する。そして、第一の振動系14の自励振動が第二の振動系16に伝達されて入力されることにより、第二の振動系16のマス−バネ共振が生ぜしめられて、第二の振動系16の第二のばね部材40に取り付けられた発電素子44が厚さ方向に変形する。その結果、発電素子44の圧電変換作用の正効果によって振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電が生じて、電気回路46によりデバイス48に供給されるようになっている。
さらに、第一のばね部材22の損失係数が0.2以下と十分に小さくされていることから、発電素子44に入力される振動エネルギーが、第一のばね部材22の弾性変形時に生じるエネルギー減衰作用によって低減されるのを抑えることができる。それ故、図4に示すように、第一の振動系14において一度の入力に対する振動状態が入力時間に対してより長く持続して、振動エネルギーが発電素子に効率的に入力される。なお、本実施形態において、第二のばね部材40は、一般的なばね鋼で形成された金属ばねとされており、損失係数が極めて小さいことから、第二のばね部材40のエネルギー減衰作用による振動エネルギーの低減も回避されて、発電素子44への入力が有利に得られるようになっている。
このように、本発明に係る発電装置10によれば、振動部材12から発電装置10への入力振動の周波数が、発電装置10における振動系14,16の共振周波数を一致させることが難しいほどに高周波の場合などにも、第一の振動系14の自励振動によって振動エネルギーを発電素子44に有効に作用させて、十分に高効率での発電が実現可能となる。特に、振動部材12から発電装置10への入力振動が、それぞれ衝撃荷重とみなすことができる短時間の入力を断続的に繰り返すものである場合に、各入力に対する第一の振動系14の振動状態が入力時間に比して十分に長く持続することから、優れた発電効率が実現される。具体的には、例えば前述の道路における橋梁や高架の継ぎ目などに繰り返し及ぼされる通過車両の衝撃荷重により、道路構造物の大きな剛性のもとで高周波振動が断続的に惹起される場合でも、かかる高周波振動の入力により発電装置10の第二の振動系16の振動に基づく発電作用が有効に発揮され得るのである。
また、本実施形態の発電装置10では、第二の振動系16の共振周波数f2 が、第一の振動系14の共振周波数f1 に対して、略一致するように設定されており、第一の振動系14の自励振動が第二の振動系16の共振によって効率的に増幅されるようになっている。従って、第一の振動系14からの入力振動に対して、第二の振動系16の振動倍率を大きく得ることができて、高い発電効率を実現することができる。
なお、第二の振動系16の共振周波数f2 を第一の振動系14の共振周波数f1 から離すに従って、第二の振動系16における振動倍率が小さくなることから、第二のばね部材40の変形量が小さくなる。従って、第二のばね部材40の過大な変形による損傷を回避して耐久性を確保しながら、発電効率を十分に確保できるように、第二の振動系16の共振周波数f2 と第一の振動系14の共振周波数f1 との差を適宜に調節することが望ましい。上記の説明からも明らかなように、第二のばね部材40の耐久性が確保され難い場合などには、第二の振動系16の共振周波数f2 を、第一の振動系14の共振周波数f1 の0.9〜1.1倍の範囲から外れた高い周波数に設定することも可能である。また、発電量が必要以上に大きい場合などには、同様に第二の振動系16の共振周波数f2 を第一の振動系14の共振周波数f1 から離すことにより、第二のばね部材40への入力を低減して、第二のばね部材40の小型化などを実現することもできる。
更にまた、第二の振動系16における第二のマス部材38の質量が、第一の振動系14における第一のマス部材20の質量に対して20%以下とされていることにより、第二の振動系16から第一のマス部材20に及ぼされる制振効果が十分に低減される。それ故、第一の振動系14の自励振動が第二の振動系16によって低減されることなく十分に生ぜしめられて、第二の振動系16の発電素子44に振動エネルギーが効率的に入力される。
図5には、本発明の第二の実施形態としての発電装置50が示されている。発電装置50では、第一の振動系14を構成する第一のばね部材52が圧縮ばねとされている。なお、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
すなわち、第一のばね部材52は、第一のマス部材20を構成する下部マス24の底壁30下面に加硫接着されていると共に、底壁30と対向して配された取付部材54に加硫接着されており、それら第一のマス部材20と取付部材54を上下に弾性連結している。この取付部材54が振動部材12にボルト固定されることにより、第一の振動系14が振動部材12に取り付けられて、発電装置50が振動部材12に取り付けられるようになっている。
このような本実施形態に従う構造とされた発電装置50においても、第一の実施形態の発電装置10と同様に、振動部材12から入力される高周波振動が、第一の振動系14の自励振動によって増幅されて、ある程度の時間に亘って持続的に第二の振動系16に伝達されることから、効率的な発電が実現される。
しかも、振動部材12からの振動入力に対して、第一のばね部材52が主として圧縮および引張方向に変形することから、剪断変形が支配的となる場合に比して、耐久性の確保が容易になる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、発電素子は、前記実施形態で示された圧電素子に限定されるものではなく、例えば磁歪素子なども採用され得る。
前記実施形態では第一の振動系14と第二の振動系16を有する二自由度振動系を例示したが、3自由度以上の多自由度振動系に本発明を適用することも可能である。
また、前記実施形態において例示した第一のばね部材22と第二のばね部材40は、何れもあくまで例示であって、例えば、第一のばね部材22を金属ばねとすることもできるし、第二のばね部材40を高分子弾性体で構成しても良い。
また、第二の振動系16が第一のマス部材20の収容空所34に収容配置された構造に必ずしも限定されるものではなく、第二の振動系16は第一のマス部材20の外部に取り付けられていても良い。この場合には、第一のマス部材20は中空構造である必要はなく、中実構造とすることで必要なマス質量を確保しながらコンパクト化が図られ得る。