JP2016174487A - 振動発電装置とそれを用いた床制振構造体および振動検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高効率の発電を安定して実現し得る、新規な構造の振動発電装置と、それを用いた床制振構造体および振動検出装置を、提供すること。【解決手段】振動部材60の振動を電気に変換する振動発電装置10であって、第一の板ばね16の先端部に第一のマス部材18が取り付けられた片持ち構造の第一の振動系12を設けて、第一の振動系12によって振動部材60の振動を低減する制振部を構成する一方、第二の板ばね54の先端部に第二のマス部材56が取り付けられた片持ち構造の第二の振動系14を設けて、第二の板ばね54の基端部を第一の振動系12に取り付けると共に、第二の板ばね54に発電素子58を取り付けて、第二の振動系14によって振動入力時に電力を生じる発電部を構成する。更に、第二の板ばね54の第一の振動系12への取付位置を、第一の板ばね16の長さ方向で第一の板ばね16と第一のマス部材18の固定部分の基端よりも先端側とした。【選択図】図3
Description
本発明は、振動部材から入力される振動を発電素子によって電気エネルギーに変換する振動発電装置と、それを用いた床制振構造体および振動検出装置に関するものである。
従来から、振動部材の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電装置が知られている。この振動発電装置は、例えば、マス−バネ振動系のばねに圧電素子などの発電素子を固着した構造を有しており、ばねの弾性変形によるマスの変位に伴って発電素子に振動荷重が入力されて電気が得られるようになっている。
ところで、国際公開第2013/024848号(特許文献1)には、発電効率の向上などを目的として、二つのマス−バネ振動系を直列的に配した発電装置が提案されている。即ち、特許文献1には、第一のマス部材としての支持体が振動部材としての保持手段に第一のばね部材で弾性連結されるようにした第一の振動系と、第二のマス部材としての錘が第一の振動系に第二のばね部材で弾性連結された第二の振動系とを、直列的に備える発電装置が示されている。そして、第二の振動系の第二のばね部材に発電素子が取り付けられており、振動入力時には、第一のマス部材と第二のマス部材の相対変位によって発電素子に振動が入力されて電気が得られるようになっている。
このような特許文献1に記載の発電装置では、第二のばね部材が板ばね(振動板)であり、板ばねの表面に発電素子が固着されていることから、発電素子が装着された板ばねにおいて発電に有効な方向は板ばねに曲げ変形を生ぜしめる方向に特定される。しかしながら、第一の振動系は、第一のマス部材が入力振動に応じて様々な態様で変位し得る構造とされており、板ばねがねじれやこじれなどの変形モードを含み且つ各変形モードが相互に相殺するなどして不安定な変形態様になってしまうことから、発電に有利な変形モードが安定して惹起されなくなり、目的とする発電効果を安定して得難いという問題があった。
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、優れた発電効率で電力を安定して得ることができる、新規な構造の振動発電装置と、それを用いた床制振構造体および振動検出装置を、提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、振動部材に取り付けられる第一の振動系と該第一の振動系に支持されて発電素子を備える第二の振動系とを有しており、該振動部材の振動を電気エネルギーに変換する発電部が該第二の振動系によって構成されている振動発電装置において、前記第一の振動系が長手状の第一の板ばねの先端部に第一のマス部材を取り付けた片持ち構造とされており、該第一の板ばねの基端部が前記振動部材に取り付けられることにより該振動部材の振動を低減する制振部が該第一の振動系によって構成される一方、前記第二の振動系が長手状の第二の板ばねの先端部に第二のマス部材を取り付けた片持ち構造とされて、該第二の板ばねの基端部が該第一の振動系に取り付けられると共に、該第一の振動系と該第二のマス部材を繋ぐ該第二の板ばねに前記発電素子が取り付けられて、前記発電部が該発電素子を備える該第二の振動系によって構成されており、更に該第二の板ばねの該第一の振動系への取付位置が、該第一の板ばねの長さ方向において該第一の板ばねと該第一のマス部材の固定部分の基端部側の端よりも先端側とされていることを、特徴とする。
このような第一の態様に従う構造とされた振動発電装置では、振動部材と発電部を構成する第二の振動系との間に配される第一の振動系が、第一の板ばねによって第一のマス部材を弾性支持した片持ち構造のマス−バネ振動系とされている。これにより、振動部材から第二の振動系に伝達される振動荷重が、第一の振動系を介することで特定方向に限定されて、高い発電効率を得られる方向の振動荷重を第二の振動系に有効に入力させながら、発電に寄与し難い方向の振動荷重が第二の振動系に入力されるのを防ぐことができる。従って、発電部への振動荷重の入力による発電を有効に実現しながら、第二の振動系に不要な力が作用するのを防ぐことで発電素子の耐久性の向上などが図られる。
特に、発電部を構成する第二の振動系が、第二の板ばねによって第二のマス部材が弾性支持された片持ち構造の振動系とされている。それ故、振動部材から第一の振動系を介して入力される特定方向の振動荷重に対して、第二の板ばねの厚さ方向を略一致させることにより、第二の板ばねの弾性変形とそれに伴う第二のマス部材の変位を有効に生ぜしめて、発電素子に対して力を効率的に入力させることで優れた発電効率が実現される。
また、発電部を構成する第二の振動系が、大きな振幅を得易い第一の板ばねの先端部に取り付けられていることにより、振動荷重が第二の振動系に効率的に入力されて、振動発電を高い効率で行うことができる。特に、第一の振動系において、第一の板ばねは第一のマス部材の固定部分よりも基端側が実質的なばねとして弾性変形することから、かかる実質的なばね部分よりも先端側に第二の振動系を設けることにより、第二の振動系への入力を効率的に大きく得ることができて、高効率の発電が実現される。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された振動発電装置において、前記第一の板ばねと前記第二の板ばねの長さ方向が互いに同じとされているものである。
第二の態様によれば、振動部材からの入力が、第一の板ばねの先端部分から曲げモーメントとして第二の板ばねに及ぼされることから、第二の板ばねの曲げ変形がより効率的に生ぜしめられて、発電効率の向上が図られる。特に、以下の第三の態様に示すように、第一の板ばねと第二の板ばねの向きを設定することが、より有効である。
すなわち、本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された振動発電装置において、前記第一の板ばねと前記第二の板ばねが互いに同じ方向に向かって延びているものである。
第三の態様によれば、第一の板ばねにおける先端部および基端部の向きと、第二の板ばねにおける先端部および基端部の向きとが、互いに略同じとされていることにより、第一の板ばねの基端部に入力された上下方向の振動荷重が、第二のマス部材に対して大きなモーメントとして作用する。従って、第一の振動系から第二の振動系への入力によって、第二の振動系における第二のマス部材の変位および第二の板ばねの曲げ変形が、より効率的に生ぜしめられて、発電素子への力の伝達効率が高められることで発電効率の向上が図られる。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された振動発電装置において、前記第一のマス部材に収容空所が形成されており、該収容空所に前記発電素子を備えた前記第二の振動系が収容されて、前記第二の板ばねの基端部が該第一のマス部材に固定されているものである。
第四の態様によれば、第二の振動系が第一のマス部材の収容空所に収容されて、発電素子を備える第二の振動系が収容空所の壁部によって保護されていることから、異物の付着や他部材の緩衝などが回避されて優れた耐久性が実現される。また、第二の振動系を収容空所に収容することで、振動発電装置の小型化も図られる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載された振動発電装置において、前記振動部材が建築物の床材とされており、前記制振部が該床材の振動を低減する床用制振装置とされているものである。
第五の態様によれば、振動の入力方向が略上下に特定される建築物の床材に対して、第一の振動系と第二の振動系が何れも板ばねによる片持ち構造とされた本発明に係る振動発電装置を用いることにより、床材の振動が第一の振動系と第二の振動系に効率的に作用して、目的とする制振作用と振動発電を有効に実現することができる。しかも、床材の振動を低減するために従来から採用されている床用制振装置に代えて、制振部を有する本発明の振動発電装置を採用すれば、発電装置だけを特別に準備する必要がなく、床材への設置作業の手間も省くことができる。なお、第一の振動系として既存の床用制振装置を利用して、既存の床用制振装置の所定位置に発電素子を備えた第二の振動系を取り付けることで、本発明に係る振動発電装置を簡単に形成することも可能である。
本発明の第六の態様は、第五の態様に記載された振動発電装置において、前記第一の振動系の共振周波数が床衝撃音に相当する周波数にチューニングされていると共に、前記第二の振動系の共振周波数が該第一の振動系の共振周波数よりも低周波にチューニングされているものである。
第六の態様によれば、歩行時などに下階へ伝わる床衝撃音が、制振部を構成する第一の振動系の第一のマス部材が共振状態で変位することによって、第一の振動系の運動エネルギーとして吸収されて低減される。更に、第一の振動系の共振周波数が床材の二次共振としての床衝撃音にチューニングされている場合などには、第二の振動系の共振周波数が第一の振動系の共振周波数よりも低周波にチューニングされていることにより、床材の一次共振周波数の振動入力時にも、第二の振動系に設けられた発電素子に荷重が有効に及ぼされて、振動発電による電力の獲得が図られ得る。
本発明の第七の態様は、第五又は第六の態様に記載された振動発電装置において、前記第一のマス部材の質量が前記第二のマス部材の質量の40倍〜600倍とされているものである。
第七の態様によれば、第一のマス部材の質量を第二のマス部材の質量に対して40倍以上且つ600倍以下とすることにより、第一の振動系が構成する床用制振装置によって床材の振動に対する制振効果を有効に得ながら、発電部を構成する第二の振動系の共振周波数を実用的な周波数域にチューニングし易くなる。
また、本発明の第八の態様は、建築物の床材に複数の床用制振装置を取り付けてなる床制振構造体であって、前記床用制振装置が第五〜第七の何れか一つの態様に記載された振動発電装置の前記制振部によって構成されていると共に、少なくとも二つの該制振部は前記第一の板ばねが互いに異なる方向へ向かって延びるように前記床材に取り付けられていることを、特徴とする。
このような第八の態様に従う構造とされた床制振構造体によれば、振動入力による床材の変形モードなどを考慮して、床材に対して振動発電装置を振動荷重がより効率的に及ぼされるように配することができて、制振効果と発電効率を何れも向上させることができる。
また、本発明の第九の態様は、振動部材の振動を検出する振動検出装置であって、第一〜第七の何れか一つの態様に記載された振動発電装置を前記振動部材に複数取り付けると共に、それら複数の振動発電装置の発電量に基づいて該振動部材に対する振動荷重の入力を検出することを、特徴とする。
このような第九の態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、特別なセンサを配することなく、各振動発電装置の発電量を検出することで、振動部材における振動入力の有無や位置、大きさ等を検出することができる。特に、振動部材が建築物の床材とされる場合には、床材に対する入力の有無や位置を検出することで、居住者の確認や不審者の侵入防止などに利用することも可能である。
本発明によれば、振動部材の振動が片持ち構造の第一の振動系を介して第二の振動系に入力されることにより、発電素子の発電効率が高い方向で荷重を第二の振動系に入力することができて、優れた発電効率と発電素子の耐久性とを安定して実現できる。しかも、第二の振動系が第一の振動系の先端部分に配されることにより、第二の振動系に対する入力を効率的に得ることができて、発電効率の向上が図られる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜4には、本発明の第一の実施形態としての振動発電装置10が示されている。振動発電装置10は、制振部を構成する第一の振動系12に、発電部を構成する第二の振動系14が取り付けられた構造を有している。なお、以下において、振動発電装置10の上下方向とは、特に説明がない限り、後述する床材60の裏面への装着状態で略鉛直上下方向となる図1中の上下方向を言う。
より詳細には、第一の振動系12は、第一の板ばね16に第一のマス部材18が取り付けられた構造とされている。第一の板ばね16は、鉄やアルミニウム合金などの金属で形成されており、長手板形状を呈して、厚さ方向の弾性変形を許容されている。なお、第一の板ばね16は、例えば、金属平板に打抜き加工とプレス加工を施すことによって、容易に得ることができる。
また、第一の板ばね16は、長さ方向中間部分に一方から他方に向かって下傾するテーパ部20を備えている。更に、テーパ部20よりも長さ方向基端(図2中、左方)側には、略水平に広がる床取付板部22が一体形成されており、床取付板部22には、厚さ方向に貫通する床取付用孔24が、相互に離隔して4つ形成されている。
更にまた、テーパ部20よりも長さ方向先端(図2中、右方)側には、床取付板部22よりも下方で略水平に広がるゴム取付板部26が一体形成されている。このゴム取付板部26には、厚さ方向に貫通するゴム取付用孔28が形成されている。ゴム取付用孔28は、幅広の挿入部分と狭幅の括れ部分とを第一の板ばね16の長さ方向に連続して有する構造とされている。
さらに、第一の板ばね16には、一対のリブ状立壁部30,30が設けられている。リブ状立壁部30は、一体形成されたテーパ部20と床取付板部22とゴム取付板部26の幅方向両端部から下方に向かって突出するように立設されている。本実施形態では、リブ状立壁部30が下方に向かって幅方向外側へ広がるように傾斜している。
更にまた、各リブ状立壁部30の下端には、それぞれマス取付板部32が一体形成されている。マス取付板部32は、リブ状立壁部30の下端から幅方向外側へ略水平に突出する略平板状とされており、テーパ部20よりも長さ方向の先端側には、マス取付用孔34が上下に貫通して形成されている。
また、第一の板ばね16のマス取付板部32には、第一のマス部材18が取り付けられている。第一のマス部材18は、全体として略円柱状乃至は円板状を有しており、幅方向両端部分には図示しない一対のねじ穴が上面に開口して形成されている。そして、第一のマス部材18は、第一の板ばね16のマス取付板部32の下面に重ね合わされており、第一の板ばね16の一対のマス取付用孔34,34に挿通されたマス取付ボルト40,40が、第一のマス部材18の一対のねじ穴の各一方に螺着されることによって、第一の板ばね16における長さ方向の基端部に第一のマス部材18が取り付けられている。
このように、第一のマス部材18が第一の板ばね16によって弾性支持されることにより、第一の板ばね16をばねとし、第一のマス部材18をマスとする、第一の振動系12が構成されている。第一の振動系12は、共振周波数が床衝撃音に相当する30Hz〜100Hz程度にチューニングされることが望ましく、本実施形態では40Hz程度にチューニングされている。
なお、第一のマス部材18は、質量を効率的に大きく確保するために、鉄等の比重の大きい材料で形成されることが望ましいが、形成材料は特に限定されない。また、第一のマス部材18の質量は、後述する床材60の質量や床材60に対する振動発電装置10の配設数などに応じて適宜に設定されるが、例えば、25kg以上且つ80kg以下、より好適には40kg以上且つ60kg以下に設定されることで、床材60に容易に装着可能としながら十分な制振効果を得ることができ、本実施形態では60kg程度とされている。更に、第一のマス部材18の形状も特に限定されるものではなく、例えば多角柱状等の外形であっても良い。
また、第一の板ばね16のゴム取付板部26には、減衰体としての当接ゴム42が取り付けられている。当接ゴム42は、略円錐台形状を呈するゴム弾性体であって、特に内部摩擦等によるエネルギー減衰作用に優れた材料が好適に採用される。更に、当接ゴム42には、取付突部44が一体形成されている。取付突部44は、当接ゴム42の大径側端部から突出しており、先端部分が基端部分よりも大径とされた略段付き円柱形状とされている。そして、当接ゴム42は、取付突部44をゴム取付板部26に設けられたゴム取付用孔28の大径部分に差し入れた後で小径部分にスライドさせることにより、大径とされた先端部分がゴム取付用孔28の小径部分の開口周縁部に係止されて、ゴム取付板部26に取り付けられる。かかる取付け状態において、当接ゴム42は第一の板ばね16のゴム取付板部26から上方に突出しており、当接ゴム42の突出先端面が第一の板ばね16の床取付板部22よりも上方に位置している。このように、第一の振動系12を構成する第一の板ばね16に当接ゴム42が取り付けられることにより、本実施形態の制振部である床用制振装置(ダイナミックダンパ)が、第一の振動系12を含んで構成されている。
ところで、本実施形態の第一のマス部材18は、全体として厚肉の逆向き有底円筒形状とされたマス本体46と、マス本体46の下開口部を閉塞する蓋板部材48とによって構成されており、マス本体46と蓋板部材48との間に収容空所50が形成されている。この収容空所50は、図3,4に示すように、略円柱状の空所であって、第一のマス部材18の内部に形成されている。また、収容空所50の上底壁内面には、矩形ブロック状の台座部52が固着されて、下方に向かって突出している。なお、台座部52は、収容空所50内において、第一の板ばね16の後述する床材60への取付部分に近い側へ偏倚して配されている。
また、第一のマス部材18の収容空所50には、発電部を構成する第二の振動系14が収容されている。第二の振動系14は、第二の板ばね54の先端部に第二のマス部材56が取り付けられて、第二のマス部材56が第二の板ばね54によって弾性支持された構造とされている。第二の板ばね54は、ばね鋼などで形成されて、略一定の薄肉断面で延びる長手平板形状を有しており、厚さ方向の弾性変形が許容されている。
また、第二の板ばね54の長さ方向の先端部には、第二のマス部材56が取り付けられている。第二のマス部材56は、中実ブロック形状の金属塊であって、第二の板ばね54の先端部に接着やねじ止め、溶接などの各種手段で固定されている。このように、第二のマス部材56が第二の板ばね54で弾性支持されることにより、第二の板ばね54をばねとし、第二のマス部材56をマスとする、マス−バネ振動系としての第二の振動系14が構成されている。
さらに、第二の振動系14は、共振周波数が第一の振動系12の共振周波数よりも低周波数にチューニングされており、本実施形態では、35Hz程度にチューニングされている。なお、第二のマス部材56の質量は、特に限定されるものではないが、第二の板ばね54のばね定数と第二の振動系14のチューニング周波数、後述する圧電素子58によって得ようとする電力量などを考慮して、実用上は、例えば10g以上且つ100g以下、より好適には15g以上且つ50g以下に設定され、本実施形態では20g程度とされている。また、第一のマス部材18の質量を、第二のマス部材56の質量に対して40倍以上且つ600倍以下、より好適には100倍以上且つ400倍以下に設定することにより、実用的な第一の板ばね16および第二の板ばね54のばね定数と、床材60に対して有効な制振作用を及ぼし得る第一のマス部材18の質量とを採用しながら、第二の振動系14の共振周波数を適切にチューニングし易くなる。
また、第二の板ばね54の長さ方向中間部分には、発電素子としての圧電素子58が取り付けられている。圧電素子58は、ピエゾ電気効果を発揮する一般的な素子であって、第二の板ばね54における第二のマス部材56の固着部分と台座部52への固着部分との両方を外れた長さ方向中間部分に重ね合わされて、接着などの手段で固着されている。これにより、第二の板ばね54が厚さ方向に弾性変形すると、圧電素子58が第二の板ばね54と共に厚さ方向に湾曲変形せしめられて、圧電素子58に作用する力によって電力が生じるようになっている。特に、圧電素子58が第二の振動系14に取り付けられていることから、第二の振動系14のマス−バネ共振時には、圧電素子58により大きな力が入力されて、発電効率の向上が図られるようになっている。このように圧電素子58を取り付けられた第二の振動系14によって、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する本実施形態の発電部が構成されている。
このような圧電素子58を備えた第二の振動系14(発電部)は、第一の振動系12に取り付けられている。即ち、発電部を構成する第二の振動系14は、第二の板ばね54の長さ方向他端である基端部が、第一のマス部材18の収容空所50内に突出する台座部52に固定されて、第一のマス部材18に固定されることにより、第一の振動系12に取り付けられている。また、第二の板ばね54が略水平方向に延びており、基端部の下面が台座部52に重ね合わされて固定されていると共に、先端部の上面に第二のマス部材56が重ね合わされて固定されていることにより、第二のマス部材56が第二の板ばね54によって弾性支持された第二の振動系14が片持ち構造とされている。そして、第一の振動系12の第一のマス部材18が第一の板ばね16の弾性変形によって上下に振動することにより、発電部を構成する第二の振動系14に上下方向の力が及ぼされて、圧電素子58への入力による電気が得られるようになっている。なお、圧電素子58は、第二の板ばね54における台座部52への固定部分と第二のマス部材56の固定部分とを何れも外れて配されており、第二のマス部材56と第一の振動系12を繋ぐ中間部分に設けられて、第一の板ばね16の曲げ変形時に曲げ変形が生じるようにされている。
ここにおいて、第二の振動系14の第二の板ばね54が第一の振動系12に取り付けられる位置は、第一の板ばね16の長さ方向において、第一の板ばね16と第一のマス部材18の固定部分の基端部側(床材60に取り付けられる固定端側である図3中、左側)の端(図3,4中の一点鎖線E)よりも先端側(自由端側である図3中、右側)に設定されている。本実施形態では、第二の振動系14が収容空所50内に配されており、第二の板ばね54の第一のマス部材18への取付位置が、第一の板ばね16の長さ方向において、第一の板ばね16と第一のマス部材18の固定部分の中間に位置している。
なお、第一の板ばね16と第一のマス部材18の固定部分とは、第一の板ばね16と第一のマス部材18が当接状態で重ね合わされている部分であって、本実施形態では、第一の板ばね16のマス取付板部32と第一のマス部材18の重ね合わされた部分を言う。従って、本実施形態における第一の板ばね16と第一のマス部材18の固定部分の基端部側の端(図3,4中の一点鎖線E)は、第一のマス部材18の基端部側の端よりも先端側に位置している。
さらに、図1〜4に示す振動発電装置10aでは、第二の板ばね54の第一のマス部材18に対する取付位置が、第一のマス部材18の収容空所50内で基端部側へ偏倚しており、第一の板ばね16と第二の板ばね54の長さ方向が互いに略一致していると共に、各板ばね16,54の固定端および自由端が互いに同じ側に設定されて同じ向きに延びている。更に、第一のマス部材18の重心位置に対して、第二の板ばね54の第一のマス部材18への取付位置がより基端部側に位置していると共に、第二のマス部材56の重心位置がより先端部側に位置している。
かくの如き構造とされた振動発電装置10は、図5〜7に示すように、振動部材としての建築物の床材60の裏面に取り付けられる。床材60は、例えば、上階の床と下階の天井を構成する床天井構造とされており、矩形の構造枠体に対して略水平に延びる複数の床梁などを並列に横架してなる主構造体62を備えると共に、主構造体62に合板や石膏ボードなどを重ね合わせた床板64を重ね合わせた構造を有している。更に、床板64には、床梁と直交して水平に延びる複数の固定補助部材66が取り付けられており、それら固定補助部材66が隣り合う床梁の間に差し入れられている。また、主構造体62には、下階の天井を構成する石膏ボードなどの天井板68が懸架されており、主構造体62に対して下方へ離れて配されている。なお、図6では、天井板68を透視した状態で振動発電装置10の配置が示されている。
そして、第一の板ばね16の基端部である床取付板部22が固定補助部材66の裏面に重ね合わされると共に、床取付板部22に貫通形成された複数の床取付用孔24にそれぞれ床取付ボルト70が挿通されて、それら床取付ボルト70が固定補助部材66に螺着されることにより、第一の板ばね16の床取付板部22が床材60の裏面に固定されるようになっている。なお、第一の板ばね16のテーパ部20が長さ方向で基端から先端に向かって次第に床材60の裏面から離隔するように傾斜しており、ゴム取付板部26とマス取付板部32が床材60の裏面から離れて下方に位置している。また、振動発電装置10は、床材60の振動による音(床衝撃音)が階下に伝わるのを抑える目的で採用されることが望ましく、好適には二階以上の床材60の裏面に取り付けられるが、一階の床材に取り付けることもできる。
これにより、第一の振動系12が床材60に取り付けられて、第一のマス部材18が第一の板ばね16を介して床材60に弾性支持されており、第一の板ばね16の弾性変形によって第一のマス部材18が床材60に対して上下に相対変位可能とされている。更に、第一の板ばね16は、基端部である床取付板部22が床材60に固定されて略水平に延びており、先端部に第一のマス部材18が固定されることにより、第一のマス部材18が片持ち構造の第一の板ばね16によって床材60に弾性支持されている。また、当接ゴム42が第一の板ばね16と床材60の間に配設されて、床材60の裏面に当接されており、本実施形態では第一の板ばね16の弾性によって第一の板ばね16と床材60の間で軸方向に圧縮されている。なお、当接ゴム42は、軸方向に圧縮されることなく床材60の裏面に接触(0タッチ)していても良いし、床材60の裏面に対して下方に離隔していても良い。
そして、床上を人が歩行する等して、床材60に上下方向の荷重が入力されると、床材60の振動が振動発電装置10に伝達されて、第一のマス部材18の運動に変換されると共に、振動発電装置10に入力されたエネルギーが、当接ゴム42の弾性変形などによって吸収される。これにより、床材60の振動が低減されて、階下への振動エネルギーの伝搬が低減されることから、階下に伝搬される音が低減されるようになっている。これにより、床材60の振動を低減する制振部(床用ダイナミックダンパ)が、第一の振動系12とそれに取り付けられた当接ゴム42を含んで構成されている。なお、本実施形態では、第一の振動系12のマスは、第一のマス部材18だけでなく、第一のマス部材18に内蔵された第二の振動系14を含んで構成されているが、第一のマス部材18の質量が第二の振動系14の質量に対して十分に大きくされていることから、第二の振動系14の質量が第一の振動系12の共振周波数に与える実質的な影響は殆どない。
また、図6,7に示すように、床材60に対して複数の振動発電装置10が分散して取り付けられており、それら振動発電装置10の制振部(床用制振装置)を用いて本実施形態の床制振構造体72が構成されている。即ち、本実施形態では、図6に示すように、24個の振動発電装置10が床材60に装着されており、それら24個の振動発電装置10が、第一の板ばね16が逆向きに延びるように配された振動発電装置10a,10bの各12個によって構成されている。更に、第一の板ばね16を相互に近接した位置で床材60に取り付けた振動発電装置10a,10bが組をなしており、床材60に対して12組が設置されて、相互に離れて3×4に配列されている。このような複数の振動発電装置10が床材60に対して分散して装着された床制振構造体72によれば、床材60に対する入力位置によって制振効果がばらつくのを防いで、優れた制振効果を安定して得ることができる。
更にまた、本実施形態では、振動発電装置10aと振動発電装置10bの共振周波数が互いに異ならされている。即ち、図7に示すように、振動発電装置10aでは、振動発電装置10bに比して、第一のマス部材18と当接ゴム42が第一の板ばね16の基端部側へずれた位置に取り付けられており、振動発電装置10aの共振周波数が、振動発電装置10bよりも高周波にチューニングされている。これにより、振動発電装置10a,10bの制振作用が、より広い周波数域の振動に対して有効に発揮されるようになっている。
なお、床材60に取り付けられた複数の振動発電装置10は、第一のマス部材18の質量の総和が、床材60の質量の5〜20%程度とされることで、制振作用を効果的に得ることができる。本実施形態では、振動発電装置10aと振動発電装置10bが、互いに異なる周波数域の振動に対して制振作用を発揮することから、振動発電装置10aの第一のマス部材18の質量の総和と、振動発電装置10bの第一のマス部材18の質量の総和が、それぞれ床材60の質量の5〜20%程度とされることが望ましい。
一方、振動発電装置10は、床材60から第一の振動系12に振動荷重が入力されて、第一のマス部材18が上下に変位すると、第一のマス部材18の収容空所50に収容配置された第二の振動系14に振動が伝達されて、第二のマス部材56が収容空所50内で上下に変位せしめられる。これにより、第一のマス部材18と第二のマス部材56が相対的に変位せしめられて、それら第一のマス部材18と第二のマス部材56を繋ぐ第二の板ばね54が弾性変形することにより、第二の板ばね54に固着された圧電素子58に荷重が入力されて、圧電素子58が電気を生じるようになっている。
なお、圧電素子58において生じた電気は、振動発電装置10に設けられた機器で消費されるようになっていても良いが、例えば配線によって外部に取り出されるようになっており、蓄電池やキャパシタで蓄電されて必要に応じて利用される、或いは無線送信器やセンサなどの外部の機器に直接供給されて利用される。
ここにおいて、第二の振動系14の第二の板ばね54は、第一の振動系12の第一のマス部材18に対して、第一の板ばね16と第一のマス部材18との固着部分の基端縁Eよりも先端側で取り付けられている。これにより、第二の振動系14には、片持ち構造の第一の振動系12において振幅が大きくなる自由端に近い位置で振動荷重が伝達されて、第一の振動系12で増幅された大きな入力が第二の振動系14に及ぼされることから、第二の振動系14に設けられた圧電素子58による発電の効率が高められる。
しかも、第一の振動系12に振動荷重を入力する振動部材が、主として上下方向に振動する建築物の床材60とされていると共に、第一の振動系12が片持ち構造とされていることによって、振動入力時に第一のマス部材18の変位方向が特定されている。それ故、圧電素子58を備えた第二の振動系14には、第一の振動系12によって入力方向を限定された荷重が作用することとなって、圧電素子58による高効率な発電が安定して実現されると共に、発電に適さない力の作用による圧電素子58の損傷などが回避される。
さらに、第一の振動系12が片持ち構造とされており、床材60の上下方向の振動は、片持ち構造の第一の振動系12によって基端部を中心とするスイング入力(モーメント)に変換されて、第二の振動系14に伝達される。そして、第二の振動系14が片持ち構造とされていると共に、本実施形態では、第一の振動系12の第一の板ばね16と第二の振動系14の第二の板ばね54の長さ方向が互いに略一致していることから、第一の振動系12から第二の振動系14に入力されるモーメントによって、第二のマス部材56がより効率的に変位する。従って、圧電素子58により大きな力が及ぼされて、発電効率の更なる向上が図られる。
特に本実施形態では、第一の板ばね16の自由端と第二の板ばね54の自由端が、各固定端に対する方向を相互に同じとされて、第一の板ばね16と第二の板ばね54が各基端部(固定端)から同じ向きに延びていることから、第一の振動系12から伝達されるモーメントによって第二の振動系14の第二のマス部材56がより効果的に変位し、より効率的な発電が実現される。
なお、本実施形態において、振動発電装置10aは、第一の板ばね16と第二の板ばね54が各基端部(固定端)から互いに同じ向きに延びている一方、振動発電装置10bは、第一の板ばね16と第二の板ばね54が各基端部(固定端)から互いに逆向きに延びている。即ち、振動発電装置10bは、台座部52が収容空所50内で第一の板ばね16の先端側へ偏倚して配置されて、台座部52に固定された第二の板ばね54が第一の板ばね16の基端側へ延び出しており、第二のマス部材56が固定される第二の板ばね54の先端部が、台座部52に固定される第二の板ばね54の基端部に対して、第一の板ばね16の基端部側に位置している。本実施形態では、振動発電装置10aの第一の振動系12と振動発電装置10bの第一の振動系12が互いに異なる周波数にチューニングされており、入力振動に対するそれら振動発電装置10a,10bの応答特性に違いがあることなどを考慮して、第一の板ばね16と第二の板ばね54の相対的な向きが設定されている。即ち、第一のマス部材18が第一の板ばね16のより先端側に配されることで第一のマス部材18の最大振幅が大きくなる振動発電装置10bにおいて、第一の板ばね16と第二の板ばね54をあえて逆向きに配することにより、目的とする発電量を確保しながら、過大な入力による圧電素子58の損傷が回避されている。
また、振動発電装置10では、発電部を構成する第二の振動系14の共振周波数が、床衝撃音に相当する第一の振動系12の共振周波数よりも低周波に設定されている。これにより、例えば、第一の振動系12が床材60の二次共振による床衝撃音にチューニングされている場合において、第一の振動系12のチューニング周波数よりも低周波数の振動である床材60の一次共振振動に対しても、第二の振動系14(発電部)の振動による発電が有効に生ぜしめられる。
このように第二の振動系14の共振周波数を第一の振動系12の共振周波数よりも低周波に設定することで発電量が増すことは、実験結果を示す図8のグラフからも明らかである。即ち、図8は、共振周波数を40Hzに設定された第一の振動系12に対して、共振周波数の異なる複数種類の第二の振動系14を取り付けて、それぞれの発電量を測定した結果であって、40Hzよりも低周波にチューニングされた第二の振動系14を採用した場合に、発電量が最も大きくなっていることが明らかである。
また、上述したように複数の振動発電装置10が床材60に分散して取り付けられて床制振構造体72が構成されており、それら分散配置された複数の振動発電装置10で構成された床制振構造体72によって、本実施形態の振動検出装置が構成されている。
すなわち、本実施形態では、床材60の振動時に各振動発電装置10の発電部で得られた電力は、図示しない無線送信器を作動させて、かかる無線送信器が同じく図示しない処理装置へ発電量の検出信号を送信するために使用される。処理装置の具体的な構成は特に限定されないが、例えば本実施形態では、中央演算装置(CPU)やRAM,ROMなどの記憶装置を備えており、各振動発電装置10の発電量を各別に記憶するようになっている。そして、処理装置は、各振動発電装置10の発電量に基づいて、床材60に対する入力荷重の有無や大きさ、入力位置などを検出し、それによって、床上における人の有無や位置などを検出できるようになっている。
このような振動検出装置によれば、建築物の居住者の移動を検出することで居住者に異常がないかを離れた場所で確認できる他、居住者の不在時に床材60の振動を検出した場合に不審者の侵入を検知することなどが可能になる。なお、居住者の移動が長時間に亘って検出されない場合に外部に通知する装置や、不審者の侵入を検知した場合に作動する警報器や報知器などを、振動発電装置10によって発電された電力を利用して作動させることもできる。
さらに、床材60に対する荷重の入力を検出する振動検出装置が、特別なセンサを要することなく、振動発電装置10の発電部を利用して構成されることから、特別な取付作業を必要とされることもない安価且つ簡単な構造によって、床材60に対する荷重の入力を検出することができる。
なお、チューニングが相互に異なる振動発電装置10aと振動発電装置10bにおいて、同じ振動入力に対する発電量が異なっている場合には、例えば検出された発電量を処理装置において補正することにより、荷重の入力位置を発電量に基づいて高精度に特定することができる。尤も、振動発電装置10aだけ或いは振動発電装置10bだけについて発電量を検出しても良いし、近接して配された振動発電装置10aと振動発電装置10bの組について、それら振動発電装置10aと振動発電装置10bの発電量の和を各組ごとに検出するようにしても良い。
また、本実施形態では、各振動発電装置10の振動発電量を検出して、それらの検出値を比較して最も大きな電力を発生した振動発電装置10の位置を特定し、振動荷重の入力点とする。尤も、このような入力点の検出方法は、あくまでも例示であって、例えば、検出された各振動発電装置10の発電量に基づいて床材60に作用した荷重の分布を算出し、かかる荷重分布から荷重の入力中心をより正確に推定するようにしても良い。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、発電素子は圧電素子に限定されず、磁歪素子などを採用することもできる。この場合には、振動入力時に磁歪素子の透磁率の変化によってコイルに電流が流れる構造を採用することにより、振動エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すことができる。
また、第一のマス部材18と第二のマス部材56の各質量およびそれらの質量比などは、あくまでも例示であって、限定的に解釈されるものではない。更に、第一,第二の板ばね16,54および第一,第二のマス部材18,56の具体的な形状や大きさの比なども、特に限定されない。
また、第一の板ばね16と第二の板ばね54は、振動発電装置10aのように互いに同じ向きで配されることで、優れた発電効率を実現できるが、想定される入力振動の振幅が大きい場合などには、振動発電装置10bのように互いに逆向きで配される場合もあり得る。なお、第一の板ばね16と第二の板ばね54は、少なくとも長さ方向が略同じになるように配されることが望ましいが、長さ方向が互いに異なって相対的に傾斜するようにも配され得る。
また、床材60に対する振動発電装置10の配置や配設方向などは、床材60の構造や床上の動線(荷重の入力位置)などに応じて適宜に変更され得るものであり、特に限定されない。具体的には、例えば、床材60において、入力振動の振幅が大きくなり易い部分に振動発電装置10を装着する他、床材60のたわみが大きくなる側に向かって第一の振動系12の自由端が位置するように振動発電装置10を配置することもできる。第一の振動系12の自由端が撓み量の大きい側となるように振動発電装置10を床材60に対して配置すれば、床材60の撓み変形を伴うモーメントが、第一の振動系12に対して第一の板ばね16を厚さ方向で曲げ変形させるように作用することから、発電効率の向上が図られる。なお、3つ以上の振動発電装置10が設けられる場合には、それら振動発電装置10の第一の板ばね16の長さ方向が、互いに異なる3方向以上に設定されていても良い。
また、第二の振動系14は必ずしも第一のマス部材18の内部に収容されていなくても良く、例えば、第一のマス部材18が質量を大きくし易い中実構造とされて、第二の板ばね54が第一のマス部材18の表面に取り付けられていても良い。更に、前記実施形態では、マス本体46の凹所の開口部が蓋板部材48で覆われて、マス本体46の内部に収容空所50が形成されており、第二の振動系14の周囲が全体に亘って第一のマス部材18に囲まれていたが、収容空所50は、第一のマス部材18の内部に閉じた空間として形成されるものに限定されない。即ち、例えば、蓋板部材48を省略した構造で、収容空所50がマス本体46に形成された凹所状の開いた空間とされて、第二の振動系14がマス本体46によって上方と外周を囲まれて保護されていると共に、第二の振動系14が下方において外部に露出していても良い。
また、本発明に係る振動発電装置は、建築物の床材用の振動発電装置にのみ適用されるものではなく、第一の振動系が装着される振動部材として、エンジンや路面などから振動が入力される自動車のボデーや、電動モータやコンプレッサなどから振動が入力される家電の筐体などを採用することもできる。自動車や家電製品などでは、各方向の振動荷重が複合的に生じる場合も少なくないが、本発明に係る振動発電装置を採用すれば、発電素子に対して発電効率の高い方向の荷重を選択的に作用させることができることから、安定して高い効率での発電が実現されると共に、発電素子などの耐久性の向上も図られ得る。
10:振動発電装置、12:第一の振動系、14:第二の振動系、16:第一の板ばね、18:第一のマス部材、50:収容空所、54:第二の板ばね、56:第二のマス部材、58:圧電素子(発電素子)、60:床材(振動部材)
Claims (9)
- 振動部材に取り付けられる第一の振動系と該第一の振動系に支持されて発電素子を備える第二の振動系とを有しており、該振動部材の振動を電気エネルギーに変換する発電部が該第二の振動系によって構成されている振動発電装置において、
前記第一の振動系が長手状の第一の板ばねの先端部に第一のマス部材を取り付けた片持ち構造とされており、該第一の板ばねの基端部が前記振動部材に取り付けられることにより該振動部材の振動を低減する制振部が該第一の振動系によって構成される一方、
前記第二の振動系が長手状の第二の板ばねの先端部に第二のマス部材を取り付けた片持ち構造とされて、該第二の板ばねの基端部が該第一の振動系に取り付けられると共に、該第一の振動系と該第二のマス部材を繋ぐ該第二の板ばねに前記発電素子が取り付けられて、前記発電部が該発電素子を備える該第二の振動系によって構成されており、
更に該第二の板ばねの該第一の振動系への取付位置が、該第一の板ばねの長さ方向において該第一の板ばねと該第一のマス部材の固定部分の基端部側の端よりも先端側とされていることを特徴とする振動発電装置。 - 前記第一の板ばねと前記第二の板ばねの長さ方向が互いに同じとされている請求項1に記載の振動発電装置。
- 前記第一の板ばねと前記第二の板ばねが互いに同じ方向に向かって延びている請求項2に記載の振動発電装置。
- 前記第一のマス部材に収容空所が形成されており、該収容空所に前記発電素子を備えた前記第二の振動系が収容されて、前記第二の板ばねの基端部が該第一のマス部材に固定されている請求項1〜3の何れか一項に記載の振動発電装置。
- 前記振動部材が建築物の床材とされており、前記制振部が該床材の振動を低減する床用制振装置とされている請求項1〜4の何れか一項に記載の振動発電装置。
- 前記第一の振動系の共振周波数が床衝撃音に相当する周波数にチューニングされていると共に、前記第二の振動系の共振周波数が該第一の振動系の共振周波数よりも低周波にチューニングされている請求項5に記載の振動発電装置。
- 前記第一のマス部材の質量が前記第二のマス部材の質量の40倍〜600倍とされている請求項5又は6に記載の振動発電装置。
- 建築物の床材に複数の床用制振装置を取り付けてなる床制振構造体であって、
前記床用制振装置が請求項5〜7の何れか一項に記載された振動発電装置の前記制振部によって構成されていると共に、
少なくとも二つの該制振部は前記第一の板ばねが互いに異なる方向へ向かって延びるように前記床材に取り付けられていることを特徴とする床制振構造体。 - 請求項1〜7の何れか一項に記載された振動発電装置を前記振動部材に複数取り付けると共に、それら複数の振動発電装置の発電量に基づいて該振動部材に対する振動荷重の入力を検出することを特徴とする振動検出装置。
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