JP2016141749A - 保護膜形成用シート、及び保護膜形成用複合シート - Google Patents

保護膜形成用シート、及び保護膜形成用複合シート Download PDF

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Abstract

【課題】リワーク性に優れた保護膜形成用シート、及び支持シート上に当該保護膜形成用シートを有する保護膜形成用複合シートを提供する。
【解決手段】シリコンウエハに貼付され、当該シリコンウエハ上に保護膜を形成するためのシートであって、テルル化合物を用いたリビングラジカル重合により得られるアクリル系重合体(A1)を含む重合体成分(A)を含有し、厚さ200μmにおける破断伸度が300%以上である、保護膜形成用シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、保護膜形成用シート、及び支持シート上に当該保護膜形成用シートを有する保護膜形成用複合シートに関する。
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面上にバンプ等の電極を有する半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう)が用いられ、該電極が基板と接合される。このため、チップの回路面とは反対側の表面(以下、「チップの裏面」ともいう)は剥き出しとなることがある。
この剥き出しとなったチップの裏面は、有機材料からなる保護膜が形成され、保護膜付きチップとして半導体装置に取り込まれることがある。この保護膜は、ダイシング工程やパッケージングの後にクラックの発生を防止するために設けられる。
一般的に、この保護膜付きチップは、樹脂を含む組成物の溶液をスピンコート法等により、ウエハの裏面に塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥及び硬化させて、保護膜を形成し、得られた保護膜付きウエハをダイシングすることで製造される。
また、このようなチップの裏面やウエハの裏面上に設けられる保護膜を、シート状の形成材料である保護膜形成用シートをウエハ上に貼付し、硬化させて形成する方法も普及しつつある。保護膜の形成材料として、様々な保護膜形成用シートが提案されている。
例えば、特許文献1には、アクリル系共重合体からなるポリマー成分、エネルギー線硬化性成分、染料又は顔料、無機フィラー、及び光重合開始剤を含むエネルギー線硬化型保護膜形成層が2枚の剥離シートに挟持された構成を有するチップ保護用フィルムが開示されている。
特許文献1の記載によれば、当該チップ保護用フィルムは、エネルギー線の照射によって、レーザーマーキング認識性、硬度、及びウエハとの密着性を向上させた保護膜を形成することが可能であり、従来のチップ保護用フィルムに比べて、工程の簡略化が可能とされている。
また、特許文献2には、基材及び粘着剤層を有するダイシングテープと、当該ダイシングテープの粘着剤層上に、着色され、且つ所定の弾性率を有するウエハ裏面保護フィルムを有する、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムが開示されている。
特許文献2の記載によれば、当該ウエハ裏面保護フィルムは、半導体ウエハのダイシング工程において、半導体ウエハとの優れた保持力を発揮することが可能とされている。
特開2009−138026号公報 特開2010−199543号公報
ところで、特許文献1及び2に開示の保護フィルムをウエハ上に貼付する工程において、保護フィルムの貼付の位置のずれが生じたり、ウエハ上の異物に気付かないまま異物も含まれるように保護フィルムを貼付してしまった場合、保護フィルムをウエハからリワーク(再剥離)することが難しい。
特許文献1及び2に開示された保護フィルムは、貼付時のウエハとの密着性や、貼付後のウエハとの保持力の向上を目的としたものであるため、ウエハ上に一旦貼り付くと、ウエハとの密着性が高いために、リワーク性に問題がある。ウエハ上に一度貼付した保護フィルムを強引に剥がそうとすると、剥がす力によってウエハが破損したり、ウエハ上に保護フィルムの一部が残存してしまう場合がある。そのため、一度保護フィルムと貼付したウエハを再利用することは難しい。
つまり、特許文献1及び2では、記載された保護フィルムについて、貼付時のウエハとの密着性や、貼付後のウエハとの保持力の観点からの検討はされているものの、保護フィルムのリワーク性についての検討は一切なされていない。
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであって、リワーク性に優れた保護膜形成用シート、及び支持シート上に当該保護膜形成用シートを有する保護膜形成用複合シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、重合体成分として、触媒としてテルル化合物を用いたリビングラジカル重合により得られるアクリル系重合体を含み、且つ、厚さ200μmにおける破断伸度が所定値以上である保護膜形成用シートが、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔8〕を提供するものである。
〔1〕シリコンウエハに貼付され、当該シリコンウエハ上に保護膜を形成するためのシートであって、
テルル化合物を用いたリビングラジカル重合により得られるアクリル系重合体(A1)を含む重合体成分(A)を含有し、
厚さ200μmにおける破断伸度が300%以上である、保護膜形成用シート。
〔2〕さらにエポキシ化合物(B11)を含む硬化性成分(B)を含有し、
エポキシ化合物(B11)が、25℃において液状のエポキシ化合物を10質量%以上含む、上記〔1〕に記載の保護膜形成用シート。
〔3〕さらに無機充填材(C)を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の保護膜形成用シート。
〔4〕無機充填材(C)の含有量が、前記保護膜形成用シートの全量に対して、1〜70質量%である、上記〔3〕に記載の保護膜形成用シート。
〔5〕無機充填材(C)の平均粒径が5nm以上である、上記〔3〕又は〔4〕に記載の保護膜形成用シート。
〔6〕支持シート上に、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の保護膜形成用シートを有する、保護膜形成用複合シート。
〔7〕2枚の支持シートに、前記保護膜形成用シートが挟持された構成を有する、上記〔6〕に記載の保護膜形成用複合シート。
〔8〕前記2枚の支持シートのうち一方が、粘着剤層を有する粘着シートである、上記〔7〕に記載の保護膜形成用複合シート。
本発明の保護膜形成用シートは、リワーク性に優れる。そのため、本発明の保護膜形成用シートを一度シリコンウエハに貼付したとしても、貼り直しが必要と判断した際には、シリコンウエハを破損せず、且つ、シリコンウエハ上に残渣を生じることなく剥離することができ、当該保護膜形成用シートの剥離後のシリコンウエハは再利用することができる。
なお、本明細書において、「保護膜形成用シートのリワーク性」とは、シリコンウエハに貼付した後、再度剥離する際に、シリコンウエハを破損することなく、且つ、シリコンウエハ上に保護膜形成用シートの一部を残存させることなく、剥離できる性質のことを指す。
本発明の一態様の保護膜形成用複合シートの断面図である。
本明細書の記載において、各成分の質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、本明細書において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
さらに、本明細書において、「エネルギー線」とは、例えば、紫外線や電子線等を指す。
〔保護膜形成用シート〕
本発明の保護膜形成用シートは、シリコンウエハに貼付され、当該シリコンウエハ上に保護膜を形成するためのシートであって、当該保護膜形成用シートの厚さ200μmにおける破断伸度が300%以上である。
当該破断伸度が300%未満であると、保護膜形成用シートをシリコンウエハから引き剥がす力に、保護膜形成用シート自体が抗しきれなくなり、破断され、被着体に当該保護膜形成用シートの一部が残存するため、リワーク性が劣るものとなる。
リワーク性を向上させた保護膜形成用シートとする観点から、本発明の一態様の保護膜形成用シートの厚さ200μmにおける破断伸度としては、好ましくは330%以上、より好ましくは360%以上、更に好ましくは430%以上、より更に好ましくは500%以上である。
また、保護膜形成用シートとウエハとの接着性を良好に保つ観点から、本発明の一態様の保護膜形成用シートの厚さ200μmにおける破断伸度としては、好ましくは1500%以下、より好ましくは1000%以下である。
なお、本明細書において、保護膜形成用シートの厚さ200μmにおける破断伸度は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
本発明の保護膜形成用シートの上記破断伸度の値は、当該保護膜形成用シートに含まれる各成分の種類や含有量を適宜選択することで調整可能であり、詳細な調整方法は後述のとおりである。
なお、本発明の保護膜形成用シートでは、重合体成分(A)として、テルル化合物を用いたリビングラジカル重合により得られるアクリル系重合体(A1)(以下、「アクリル系重合体(A1)」ともいう)を含むことで、当該保護膜形成用シートの破断伸度の値が高く調整し易くなると共に、リワーク性を向上させることができる。
なお、本発明の一態様の保護膜形成用シートは、アクリル系重合体(A1)を含む重合体成分(A)と共に、さらに、硬化性成分(B)、無機充填材(C)、着色剤(D)、カップリング剤(E)、及び汎用添加剤(F)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
以下、本発明の一態様の保護膜形成用シートの構成成分となり得る、上記成分(A)〜(F)について説明する。
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、可とう性を付与し、保護膜形成用シートの形状維持性を良好とする役割を主として担う成分である。
本明細書において、「重合体成分」とは、重合反応により得られる高分子量体であり、質量平均分子量(Mw)は2万以上であることが好ましく、少なくとも1種の繰り返し単位を有する化合物を意味する。
なお、重合体成分(A)の質量平均分子量(Mw)としては、保護膜形成用シートに可とう性及び造膜性を付与し、形状維持性を良好とする観点から、好ましくは2万〜300万、より好ましくは5万〜200万、更に好ましくは10万〜150万である。
本発明の一態様の保護膜形成用シート中の重合体成分(A)の含有量は、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは8〜50質量%、更に好ましくは10〜45質量%、より更に好ましくは15〜40質量%である。
なお、本明細書において、「保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対する、成分(A)の含有量」との記載で規定する事項は、「保護膜形成用シートの形成材料である保護膜形成用組成物の有効成分の全量(100質量%)に対する、成分(A)の含有量」と同じ事項を規定するものである。以下に説明する、他の成分の含有量に関する類似の記載についても、同様である。
さらに、上記の「有効成分」とは、保護膜形成用シートに成形した後にも当該シート中に含まれる当該保護膜形成用組成物中の成分を指し、具体的には、水及び有機溶媒を除いた成分を指す。
本発明の保護膜形成用シートは、破断伸度を上述の範囲とすると共に、リワーク性を向上させた保護膜形成シートとする観点から、重合性成分(A)として、テルル化合物を用いたリビングラジカル重合により得られるアクリル系重合体(A1)を含有する。
なお、本発明の一態様の保護膜形成用シートは、本発明の効果を損なわない範囲において、テルル化合物を用いたリビングラジカル重合以外の重合法(例えば、溶液重合等)により得られた、他のアクリル系重合体(A2)を含有してもよく、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体等の非アクリル系重合体(A3)を含有してもよい。
本発明の一態様において、重合体成分(A)は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
アクリル系重合体(A1)の含有量としては、保護膜形成用シート中に含まれる重合体成分(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
以下、アクリル系重合体(A1)、他のアクリル系重合体(A2)、及び非アクリル系重合体(A3)について説明する。
(アクリル系重合体(A1))
アクリル系重合体(A1)は、各種モノマーを、テルル化合物を用いて、リビングラジカル重合により得られる重合体である。
アクリル系重合体(A1)の質量平均分子量(Mw)は、保護膜形成用シートに可とう性及び造膜性を付与して形状維持性を良好とする観点、並びに、破断伸度を上述の範囲とすると共に、リワーク性を向上させた保護膜形成シートとする観点から、好ましくは10万〜150万、より好ましくは30万〜130万、更に好ましくは50万〜120万、より更に好ましくは65万〜100万である。
また、アクリル系重合体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)(Mn:数平均分子量)としては、破断伸度を上述の範囲とすると共に、リワーク性を向上させた保護膜形成シートとする観点から、好ましくは1.01〜4.00、より好ましくは1.01〜3.50、更に好ましくは1.01〜3.00、より更に好ましくは1.01〜2.60である。
アクリル系重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以上、より好ましくは0〜50℃、更に好ましくは0〜30℃、より更に好ましくは0〜20℃である。
なお、本明細書において、アクリル系重合体(A1)を含めた重合体成分のガラス転移温度(Tg)の値は、下記式(1)で計算した絶対温度(単位:K)で表されるガラス転移温度(Tg)を、摂氏温度(単位:℃)に換算した値である。

〔上記式(1)中、W、W、W、W・・・は、樹脂成分を構成するモノマー成分の質量分率(質量%)を示し、Tg、Tg、Tg、Tg・・・は、樹脂成分を構成する各モノマー成分のホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を示す。〕
本発明の一態様で用いるアクリル系重合体(A1)としては、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1)を有するアクリル系重合体が好ましく、当該構成単位(a1)と共に、構成単位(a1)以外の他の構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体であることがより好ましい。
本発明の一態様で用いるアクリル系重合体(A1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(構成単位(a1))
構成単位(a1)を構成するアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、保護膜形成用シートに可とう性及び造膜性を付与して形状維持性を良好とする観点から、好ましくは1〜18であり、より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8、より更に好ましくは1〜3である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
アクリル系重合体(A1)中の炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1−1)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構造単位(100質量%)に対して、好ましくは5〜99質量%、より好ましくは10〜98質量%、更に好ましくは20〜97質量%である。
アクリル系重合体(A1)中の構成単位(a1)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構造単位(100質量%)に対して、好ましくは50〜99.9質量%、より好ましくは55〜99.0質量%、更に好ましくは60〜98.5質量%、より更に好ましくは70〜98.0質量%である。
(構成単位(a2))
アクリル系重合体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の構成単位(a1)以外のその他のモノマーに由来する構成単位(a2)を有していてもよい。
構成単位(a2)を構成するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等の官能基を有する官能基含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類モノマー;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類モノマー;スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー:ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系モノマー等が挙げられる。
アクリル系重合体(A1)中の構成単位(a2)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構造単位(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1.0〜45質量%、更に好ましくは1.5〜40質量%、より更に好ましくは2.0〜30質量%である。
本発明の一態様で用いるアクリル系重合体(A1)としては、後述するエポキシ化合物(B11)を含有する場合には、重合性成分(A)とエポキシ化合物の相溶性を高める観点から、構成単位(a1)と共に、ヒドロキシ基含有モノマーに由来する構成単位(a2−1)を有するアクリル系共重合体であることが好ましい。
ヒドロキシ含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
アクリル系重合体(A1)中のヒドロキシ基含有モノマーに由来する構成単位(a2−1)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構造単位(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜25質量%、更に好ましくは1.5〜20質量%、より更に好ましくは2〜15質量部である。
本発明の一態様においては、得られる保護膜形成用シートのリワーク性向上の観点から、アクリル系重合体(A1)中のエポキシ基含有モノマーに由来する構成単位の含有量は、少ないほど好ましい。
ここでいうエポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3−エポキシシクロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等の非アクリル系エポキシ基含有モノマー;等が挙げられる。
アクリル系重合体(A1)中のエポキシ基含有モノマーに由来する構成単位の含有量としては、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜4質量%、より好ましくは0〜3質量%、更に好ましくは0〜2質量%、より更に好ましくは0質量%である。
なお、エポキシ基含有モノマーに由来する構成単位を有し、Mwが2万以上のアクリル系重合体は、熱硬化性を有しているが、当該重合体は硬化性成分(B)ではなく、重合体成分(A)の概念に含まれるものとする。
また、後述する硬化性成分(B)として、エポキシ系熱硬化性成分を用いる場合に、エポキシ系熱硬化性成分中のエポキシ基との反応を抑制するため、アクリル系重合体(A1)中のカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位の含有量は少ないほど好ましい。
ここでいうカルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
硬化性成分(B)としてエポキシ系熱硬化性成分を用いる場合、カルボキシ基含有モノマーに由来する構造単位の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜2質量%、より更に好ましくは0質量%である。
(アクリル系重合体(A1)の製造方法)
本発明で用いるアクリル系重合体(A1)は、上述の各種モノマーを、テルル化合物を用いて、リビングラジカル重合により得られる重合体である。
本発明の一態様で用いるテルル化合物としては、リビングラジカル重合開始剤としての機能を有する、テルル原子(Te)を含有する化合物であれば特に制限はないが、下記一般式(1)で表されるテルル化合物が好ましい。
なお、本発明において、テルル化合物は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
上記一般式(1)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、環形成炭素数3〜8のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜18の置換アリール基、又は環形成原子数5〜18のヘテロアリール基を示し、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は環形成炭素数3〜8のシクロアルキル基を示し、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。
は、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜18の置換アリール基、環形成原子数5〜18のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアシル基、−COORで表される基(Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜18の置換アリール基を示す)、又はシアノ基を示す。Rとしては、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜18の置換アリール基、又は−COORで表される基が好ましく、フェニル基、置換フェニル基、又は−COORで表される基がより好ましい。
、R、R、及びRとして選択し得るアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
なお、当該アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
がアルキル基である場合の当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
、R、及びRがアルキル基である場合の当該アルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2である。
、R、及びRとして選択し得るシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
当該シクロアルキル基の環形成炭素数としては、好ましくは3〜6である。
、R、及びRとして選択し得るアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
当該アリール基の環形成炭素数としては、好ましくは6〜15、より好ましくは6〜12である。
、R、及びRとして選択し得る置換アリール基としては、上述のアリール基に更に置換基を有するものが挙げられる。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORで示されるカルボニル含有基(Rは、炭素数1〜8のアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基を示す)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
当該置換アリール基の環形成炭素数としては、好ましくは6〜15、より好ましくは6〜12である。なお、この「環形成炭素数」は、アリール基の環構造を形成する炭素原子数を示すものであって、当該アリール基が有する置換基の炭素数は含まれない。
当該置換アリール基の中でも、置換フェニル基が好ましく、ハロゲン原子置換フェニル基、及びトリフルオロメチル置換フェニル基がより好ましい。
なお、当該置換アリール基が有する置換基の数としては、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜2である。
なお、モノ置換フェニル基である場合の置換基の結合位置は、パラ位又はオルト位が好ましい。また、ジ置換フェニル基である場合の置換基の結合位置は、メタ位が好ましい。
及びRとして選択し得るヘテロアリール基としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選ばれる1つ以上のヘテロ原子を含む基であって、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基等が挙げられる。
当該へテロアリール基の環形成原子数としては、好ましくは5〜15、より好ましくは5〜12、更に好ましくは5〜6である。
として選択し得るアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
当該アシル基の炭素数としては、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4である。
前記一般式(1)で表されるテルル化合物の中でも、下記一般式(1A)で表されるテルル化合物がより好ましい。
上記式(1A)中、R、R、及びRは、前記一般式(1)中のR、R、及びRと同じであり、好適な基も同じである。
は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜18の置換アリール基を示し、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。
前記一般式(1)で示されるテルル化合物としては、例えば、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン[1−(1−メチルテラニル−エチル)−4−トリフルオロメチルベンゼン]、1−(1−メチルテラニル−エチル)−3,5−ビス−トリフルオロメチルベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチル−2−メチルテラニル−プロパナール、3−メチル−3−メチルテラニル−2−ブタノン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル[別名:エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート]、2−(n−ブチルテラニル)−2−メチルプロピオン酸エチル[別名:エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート]、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(フェニルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−フェニルテラニル−プロピル)ベンゼン等を挙げられる。
また、これらのテルル化合物中のメチルテラニル、1−メチルテラニル、2−メチルテラニルの部分が、それぞれエチルテラニル、1−エチルテラニル、2−エチルテラニル、ブチルテラニル、1−ブチルテラニル、2−ブチルテラニルに置き換わったテルル化合物も挙げられる。
これらの前記一般式(1)で表されるテルル化合物の中でも、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン[1−(1−メチルテラニル−エチル)−4−トリフルオロメチルベンゼン]、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル[別名:エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート]、2−(n−ブチルテラニル)−2−メチルプロピオン酸エチル[別名:エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート]、1−(1−メチルテラニル−エチル)−3,5−ビス−トリフルオロメチルベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(エチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−エチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−エチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−エチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−エチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−エチルテラニルプロピオニトリル、(n−ブチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−n−ブチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−n−ブチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−n−ブチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−n−ブチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−n−ブチルテラニルプロピオニトリル、及び2−メチル−2−n−ブチルテラニルプロピオニトリルが好ましい。
リビングラジカル重合において、上記のテルル化合物と共に、重合促進剤として、アゾ系重合開始剤を添加してもよい。
当該アゾ系重合開始剤としては、溶液重合等に使用するアゾ系重合開始剤が挙げられ、具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)等が挙げられる。
リビングラジカル重合方法としては、特に制限はないが、例えば、不活性ガスで置換した容器に、前記モノマーの混合物、及び前記テルル化合物を添加し、また、所望によりアゾ系重合開始剤や溶媒を添加し、撹拌した後、加熱により重合反応を進行させる方法が挙げられる。
当該不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げられるが、アルゴン、又は窒素が好ましく、窒素がより好ましい。
テルル化合物の使用量は、目的とするアクリル系重合体(A1)の質量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)に応じて適宜調節すればよい。
リビングラジカル重合は、通常、無溶媒で行うが、ラジカル重合で一般に使用される溶媒を使用してもよい。
用いる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、トリフルオロメチルベンゼン等の有機溶媒や、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等の水性有機溶媒、及び水等が挙げられる。
リビングラジカル重合の反応温度及び反応時間としては、目的とするアクリル系重合体(A1)の質量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)に応じて適宜調節すればよいが、60〜150℃で、5〜100時間反応させることが好ましく、80〜120℃で、10〜30時間反応させることがより好ましい。
リビングラジカル重合は、通常、常圧下で行われるが、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
重合反応終了後、常法により使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去したり、沈殿ろ過、再沈殿したり、あるいはカラム分離等により精製してもよい。
リビングラジカル重合法においては、アクリル系重合体(A1)を構成する各モノマーの混合物を使用することにより、ブロック共重合体、交互共重合体、又はランダム共重合体のアクリル系重合体(A1)を得ることができる。
本発明においては、アクリル系重合体(A1)が、ランダム共重合体であることが好ましい。当該ランダム共重合体は、モノマーの種類に関係なく、反応させるモノマーの比率(質量比)と同じ構成比率の共重合体を得ることができる。
また、重合開始剤として、テルル化合物を用いることで、分子量制御及び分子量分布制御を非常に温和な条件下で行うことができ、得られるアクリル系重合体(A1)を含む保護膜形成用シートの前記破断伸度を前述の範囲に調整することが容易となる。
例えば、得られるアクリル系重合体(A1)の分子量を増加させるためには、モノマーの混合物の全量に対する、テルル化合物の配合量を少なくし、重合時間を増加させることで調整可能である。なお、この場合に重合時間の低減を図るために、重合温度を高く設定したり、前記アゾ系重合開始剤を適宜添加することを行ってもよい。ただし、重合温度が高すぎたり、アゾ系重合開始剤の添加量が多すぎると、得られるアクリル重合体(A1)の分子量分布を増大させることとなるので、適宜調整が必要である。
(他のアクリル系重合体(A2))
本発明の一態様の保護膜形成用シートは、本発明の効果を損なわない範囲において、テルル化合物を用いたリビングラジカル重合以外の重合法(例えば、溶液重合等)により得られた、他のアクリル系重合体(A2)を含有してもよい。
ただし、溶液重合等により得られた他のアクリル系重合体(A2)は、分子量分布(Mw/Mn)の値が大きく、得られる保護膜形成用シートの破断伸度が低くなり、リワーク性が損なわれる恐れがある。そのため、本発明の一態様の保護膜形成用シート中に含まれる他のアクリル系重合体(A2)の含有量は少ない方が好ましい。
他のアクリル系重合体(A2)の含有量は、保護膜形成用シート中に含まれる重合体成分(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜1質量%、より更に好ましくは0質量%である。
(非アクリル系重合体(A3))
本発明の一態様の保護膜形成用シートは、本発明の効果を損なわない範囲において、非アクリル系重合体(A3)を含有してもよい。
非アクリル系重合体(A3)としては、例えば、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体等が挙げられる。
これらの非アクリル系重合体は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
なお、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂は、熱硬化性を有しているが、当該樹脂は、硬化性成分(B)ではなく、非アクリル系重合体(A3)の概念に含まれるものとする。
非アクリル系重合体(A3)の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは2万以上、より好ましくは2万〜10万、更に好ましくは2万〜8万である。
非アクリル系重合体(A1)の含有量としては、保護膜形成用シート中に含まれる重合体成分(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは0〜40質量%、より好ましくは0〜30質量%、更に好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜4質量%である。
[硬化性成分(B)]
硬化性成分(B)は、保護膜形成用シートを硬化させて、硬質の保護膜を形成する役割を担う成分から、上記の重合体成分(A)に該当するものを除いた成分を指す。
本発明で用いる保護膜形成用シートは、硬化性成分(B)として、熱硬化性成分(B1)及びエネルギー線硬化性成分(B2)の少なくとも一方を含むことが好ましく、硬化反応を十分に進行させる観点、並びに、コスト低減の観点から、少なくとも熱硬化性成分(B1)を含むことがより好ましい。
熱硬化性成分(B1)としては、少なくとも加熱により反応する官能基を有する化合物を含有することが好ましく、エポキシ基を有するエポキシ化合物(B11)を含有することがより好ましい。
また、エネルギー線硬化性成分(B2)は、エネルギー線照射により反応する重合性官能基を有する化合物(B21)を含有し、エネルギー線の照射を受けると重合硬化する。
これらの硬化性成分が有する重合性官能基同士が反応し、三次元網目構造が形成されることにより硬化が実現される。
硬化性成分(B)の質量平均分子量(Mw)は、成分(A)と組み合わせて用いることで、保護膜形成用シートを形成する組成物の粘度を抑制し、取り扱い性を向上させる等の観点から、好ましくは20,000未満、より好ましくは10,000以下、更に好ましくは100〜10,000である。
(熱硬化性成分(B1))
熱硬化性成分(B1)としては、エポキシ基を有するエポキシ化合物(B11)を含有することが好ましく、エポキシ基化合物(B11)及び熱硬化剤(B12)を共に含有することがより好ましい。
エポキシ化合物(B11)は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であればよい。また、エポキシ化合物(B11)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の一態様で用いるエポキシ化合物(B11)としては、分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましく、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を共に含むことがより好ましい。
また、本発明の一態様において、エポキシ化合物(B11)が、25℃において液状のエポキシ化合物(以下、「液状エポキシ化合物」ともいう)を含むことが好ましい。
液状エポキシ化合物を含むことで、保護膜形成用シートの破断伸度の値を上昇させることができ、リワーク性に優れた保護膜形成用シートとすることができる。
本発明の一態様において、上記観点から、液状エポキシ化合物の含有量は、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物(B11)の全量(100質量%)に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上である。
一方、保護膜形成用シートを用いて製造した保護膜付きチップの信頼性向上の観点から、液状エポキシ化合物の含有量は、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物(B11)の全量(100質量%)に対して、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である。
なお、本明細書において、「液状エポキシ化合物」とは、25℃における粘度が40Pa・s以下のエポキシ化合物を意味し、エポキシ化合物の25℃における粘度は、毛細管形粘度計を用いて25℃にて測定した値である。
エポキシ化合物(B11)の含有量は、保護膜形成用シート中の成分(A)100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜200質量部、更に好ましくは10〜150質量部、より更に好ましくは20〜100質量部である。
(熱硬化剤(B12))
熱硬化剤(B12)は、エポキシ化合物(B11)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が好ましい。
当該官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、及び酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸無水物が好ましく、フェノール性水酸基、又はアミノ基がより好ましく、アミノ基が更に好ましい。
フェノール基を有するフェノール系熱硬化剤としては、例えば、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
アミノ基を有するアミン系熱硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)等が挙げられる。
これらの熱硬化剤(B12)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化剤(B12)の含有量は、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物(B11)100質量部に対して、好ましくは0.1〜500質量部、より好ましくは0.5〜200質量部、更に好ましくは1.0〜100質量部、より更に好ましくは1.5〜70質量部である。
(硬化促進剤(B13))
本発明の一態様の保護膜形成用シートは、当該シートの加熱による硬化速度を調整する観点から、硬化促進剤(B13)を含有してもよい。
硬化促進剤(B13)は、熱硬化性成分(B1)として、エポキシ化合物(B11)と併用することが好ましい。
硬化促進剤(B13)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
これらの硬化促進剤(B13)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤(B13)の含有量は、保護膜形成用シートから形成される保護膜のシリコンウエハに対する接着性の向上の観点から、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物(B11)及び熱硬化剤(B12)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜6質量部、更に好ましくは0.3〜4質量部である。
(エネルギー線硬化性成分(B2))
エネルギー線硬化性成分(B2)としては、エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21)を単独で用いてもよいが、化合物(B21)と共に、光重合開始剤(B22)を組み合わせて用いることが好ましい。
(エネルギー線照射により反応する重合性官能基を有する化合物(B21))
エネルギー線照射により反応する重合性官能基を有する化合物(B21)(以下、「エネルギー線反応性化合物(B21)」ともいう)としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性官能基を有する化合物であればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
これらのエネルギー線反応性化合物(B21)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、エネルギー線反応性化合物(B21)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは100〜30,000、より好ましくは300〜10,000である。
エネルギー線反応性化合物(B21)の含有量は、保護膜形成用シート中の成分(A)100質量部に対して、好ましくは1〜1500質量部含まれ、より好ましくは3〜1200質量部である。
(光重合開始剤(B22))
上述のエネルギー線反応性化合物(B21)と共に、光重合開始剤(B22)と併用することで、重合硬化時間を短くし、光線照射量を少なくても、保護膜形成用シートの硬化を進行させることができる。
光重合開始剤(B22)としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等が挙げられる。
より具体的な光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤(B22)の含有量は、保護膜形成用シートの硬化反応を十分に進行させると共に、残留物の生成を抑える観点から、保護膜形成用シート中のエネルギー線反応性化合物(B21)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
本発明の一態様の保護膜形成用シート中の硬化性成分(B)の含有量は、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%、より更に好ましくは12〜25質量%である。
なお、上記の「硬化性成分(B)の含有量」は、上述のエポキシ化合物(B11)、熱硬化剤(B12)、及び硬化促進剤(B13)を含む熱硬化性成分(B1)、並びに、エネルギー線反応性化合物(B21)、及び光重合開始剤(B22)を含むエネルギー線硬化性成分(B2)の合計含有量を指す。
本発明の一態様の保護膜形成用シート中の重合体成分(A)及び硬化性成分(B)の合計含有量としては、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上である。
[無機充填材(C)]
本発明の一態様の保護膜形成用シートには、さらに無機充填材(C)を含むことが好ましい。
保護膜形成用シート中に無機充填材(C)を含むことで、保護膜形成用シートから形成される保護膜の熱膨張係数を適度な範囲に調整することが可能となる。この保護膜を有する保護膜付きチップの熱膨張係数を最適化することができ、保護膜形成用シートから形成される保護膜の吸湿率を低減させることも可能となる。
無機充填材(C)としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維及びガラス繊維等が挙げられる。
これらの無機充填材(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、シリカ、又はアルミナが好ましく、シリカがより好ましい。
無機充填材(C)の平均粒径としては、保護膜形成用シートを用いて製造される保護膜付きチップの信頼性を良好とする観点、並びに、破断伸度を上述の範囲に調整した保護膜形成シートとする観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは30nm以上、更に好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上、より更に好ましくは150nm以上である。
一方、保護膜形成用シートの光線透過率の向上の観点、ヘイズ値を低下させる観点、並びに、破断伸度を上述の範囲に調整した保護膜形成シートとする観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5000nm以下、より好ましくは1000nm以下、更に好ましくは800nm以下、より更に好ましくは400nm以下である。
なお、本明細書において、無機充填材(C)の平均粒径は、動的光散乱式粒度分布計により測定した値である。
本発明の一態様の保護膜形成用シート中の無機充填材(C)の含有量は、破断伸度を上述の範囲に調整した保護膜形成シートとする観点、並びに保護膜形成用シートを用いて製造される保護膜付きチップの信頼性を良好とする観点から、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは2〜65質量%、更に好ましくは5〜60質量%である。
なお、保護膜形成用シート中の無機充填材(C)の平均粒径が100nm未満である場合、無機充填材(C)の含有量は、保護膜形成用シートを用いて製造される保護膜付きチップの信頼性を良好とする観点から、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは43質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
また、保護膜形成用シート中の無機充填材(C)の平均粒径が100nm以上である場合、無機充填材(C)の含有量は、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜60質量%である。
[着色剤(D)]
本発明の一態様の保護膜形成用シートには、さらに着色剤(D)を含むことが好ましい。
保護膜形成用シートに着色剤(D)を含むことで、保護膜形成用シートから形成される保護膜を有する半導体チップを機器に組み込んだ際、周囲の装置から発生する赤外線等を遮蔽して、半導体チップの誤作動を防止することができる。
着色剤(D)としては、有機又は無機の顔料及び染料を用いることができる。
染料としては、例えば、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等のいずれの染料であっても用いることが可能である。
また、顔料としては、特に制限されず、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
これらの中でも、電磁波や赤外線の遮蔽性が良好で、且つレーザーマーキング法による識別性をより向上させる観点から、黒色顔料が好ましい。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が挙げられるが、半導体チップの信頼性を高める観点から、カーボンブラックが好ましい。
なお、これらの着色剤(D)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
着色剤(D)の平均粒径としては、好ましくは10〜400nm、より好ましくは15〜300nm、更に好ましくは20〜200nm、より更に好ましくは25〜100nmである。
本発明の一態様の保護膜形成用シート中の着色剤(D)の含有量は、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜25質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%、より更に好ましくは0.15〜5質量%である。
[カップリング剤(E)]
本発明の一態様の保護膜形成用シートには、さらにカップリング剤(E)を含むことが好ましい。
カップリング剤(E)を含むことで、得られる保護膜形成用シートから形成される保護膜の耐熱性を損なうことなく、耐水性を向上させることもできる。また、シリコンウエハとの貼付後の端部密着性の向上にも寄与する。
カップリング剤(E)としては、成分(A)や成分(B)が有する官能基と反応する化合物が好ましく、シランカップリング剤がより好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
これらのカップリング剤(E)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カップリング剤(E)としては、オリゴマータイプのカップリング剤が好ましい。
オリゴマータイプのカップリング剤も含めたカップリング剤(E)の分子量としては、好ましくは100〜15000、より好ましくは150〜10000、より好ましくは200〜5000、更に好ましくは250〜3000、より更に好ましくは350〜2000である。
本発明の一態様の保護膜形成用シート中のカップリング剤(E)の含有量は、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.05〜2.5質量%、更に好ましくは0.10〜1.5質量%、より更に好ましくは0.15〜0.9質量%である。
[汎用添加剤(F)]
本発明の一態様で用いる保護膜形成用シートには、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の成分(A)〜(E)の他に、必要に応じて、汎用添加剤(F)を含有してもよい。
汎用添加剤(F)としては、例えば、架橋剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
本発明の一態様の保護膜形成用シート中のこれらの汎用添加剤(F)のそれぞれの含有量は、保護膜形成用シートの全量(100質量%)に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜2質量%である。
<保護膜形成用シートの破断伸度の調整方法の一例>
本発明の保護膜形成用シートでは、重合体成分(A)として、テルル化合物を用いたリビングラジカル重合により得られるアクリル系重合体(A1)を含むことで、当該保護膜形成用シートの破断伸度の値を比較的高く調整することができる。
しかしながら、当該破断伸度の値を上述の範囲に調整するには、他の成分の種類や含有量も適宜調整する必要がある。
保護膜形成用シートの破断伸度を上述の範囲に調整するには、主に、以下の(a)〜(e)の事項を考慮すると、容易に調整できる。なお、以下の(a)〜(e)の事項は、破断伸度の調整方法の主な一例であり、保護膜形成用シートの破断伸度の値は、これら以外の事項も考慮して調整することができる。
(a)アクリル系重合体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)が小さい程、シートの破断伸度の値は高くなる傾向がある。
(b)重合体成分(A)中のアクリル系重合体(A1)の含有割合が多い程、シートの破断伸度の値は高くなる傾向がある。
(c)エポキシ化合物(B11)中の液状エポキシ化合物の含有割合が多い程、シートの破断伸度の値は高くなる傾向がある。
(d)無機充填材(C)の含有量が少ない程、シートの破断伸度の値は高くなる傾向がある。
(e)無機充填材(C)の平均粒径を上述の範囲に調整することで、シートの破断伸度の値を調整することができる。
<保護膜形成用シートの製造方法>
本発明の一態様の保護膜形成用シートの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、保護膜形成用シートの形成材料となる、上述の各成分を含む保護膜形成用組成物を調製した後、適宜有機溶媒を加えて希釈し、保護膜形成用組成物の溶液を得る。そして、当該保護膜形成用組成物の溶液を、支持シート上に公知の塗布方法により塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることで、保護膜形成用シートを製造することができる。
保護膜形成用組成物の溶液の調製に用いる有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
有機溶媒を配合した場合の保護膜形成用組成物の溶液の固形分濃度は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、更に好ましくは30〜65質量%である。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
本発明の一態様の保護膜形成用シートの厚さは、用途に応じて適宜設定されるが、好ましくは3〜300μm、より好ましくは5〜250μm、更に好ましくは7〜200μmである。
<保護膜形成用シートの用途>
本発明の一態様の保護膜形成用シートは、フェースダウン方式のチップ用半導体ウエハや半導体チップ等のシリコンウエハ等のワークの裏面に貼付され、ワーク上に保護膜を形成することができる。この保護膜は、半導体ウエハや半導体チップ等のワークの裏面を保護する保護膜としての機能を有する。例えば、半導体ウエハに貼付した場合には、保護膜がウエハを補強する機能を有するためにウエハの破損等を防止し得る。
つまり、本発明の一態様の保護膜形成用シートは、シリコンウエハ上に保護膜を形成するための保護膜形成用シートであることが好ましい。
〔保護膜形成用複合シートの構成〕
本発明の保護膜形成用複合シート(以下、単に「複合シート」ともいう)は、支持シート上に、本発明の一態様の保護膜形成用シートを有するものである。
なお、本発明の一態様の複合シートの形態については、特に制限は無く、例えば、長尺テープ状、単葉のラベル等の形態であってもよい。
図1は、本発明の一態様の保護膜形成用複合シートの断面図である。
本発明の一態様の複合シートとしては、図1(a)に示すような、支持シート11上に、保護膜形成用シート10が直接積層した構成を有する複合シート1aが挙げられる。
本発明の一態様の複合シートの保護膜形成用シート10の形状としては、被着体であるシリコンウエハと略同一形状もしくはシリコンウエハの形状を含むことのできる形状であればよい。
図1(a)の複合シート1aは、支持シート11と保護膜形成用シート10とが略同一の形状であるが、図1(b)に示すように、保護膜形成用シート10の形状が、支持シート11の形状よりも小さい複合シート1bであってもよい。
また、本発明の一態様の複合シートとしては、図1(c)に示すように、リング状の治具接着層12を有する複合シート1cが挙げられる。
リング状の治具接着層12は、リングフレーム等の治具と接着する際に、当該治具に対する接着力を向上させる目的で設けられるものであり、基材(芯材)を有する両面粘着シートや、粘着剤から形成することができる。
なお、図1(c)に示された複合シート1cでは、図1(a)の複合シート1aに対して、さらに治具接着層12を設けた構成を示しているが、本発明の一態様の複合シートとしては、図1(b)の複合シート1bの支持シート11の面上に、治具接着層12を設けた構成の複合シートも挙げられる。
図1に示された複合シート1a、1b、1cの構成において、支持シート11は、粘着剤層を有する粘着シートであってもよい。
本発明の一態様の複合シートとしては、図1(d)に示すように、2つの支持シート11、11’に、本発明の一態様の保護膜形成用シート10が挟持された構成を有する複合シート1dとしてもよい。なお、2つの支持シート11、11’のうち一方が、粘着剤層を有する粘着シートであってもよい。
なお、複合シート1dの構成と同様に、図1(b)の複合シート1bの表出している保護膜形成用シート10の面上に、支持シート11とは別の支持シートを設けてもよい。
また、同様に、図1(c)に示す複合シート1cの保護膜形成用シート10の面上及び治具接着層12の面上に、支持シート11とは別の支持シートを設けてもよい。
<支持シート>
本発明の一態様の複合シートが有する支持シートは、保護膜形成用シートの表面にホコリ等の付着を防止する剥離シート、もしくは、ダイシング工程等で保護膜形成用シートの表面を保護するためのダイシングシート等の役割を果たすものである。
本発明で用いる支持シートは、樹脂フィルムを有する構成であることが好ましい。
当該樹脂フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムや直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、エチレン・プロピレン共重合体フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が挙げられる。
本発明の一態様で用いる基材は、1種類の樹脂フィルムからなる単層フィルムであってもよく、2種以上の樹脂フィルムを積層した積層フィルムであってもよい。
また、上記の樹脂フィルムは、架橋フィルムであってもよい。
また、これらの樹脂フィルムを着色したもの、又は印刷を施したもの等も使用できる。
さらに、樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を押出形成によりシート化したものであってもよく、延伸されたものであってもよく、硬化性樹脂を所定手段により薄膜化及び硬化してシート化したものが使われてもよい。
これらの樹脂フィルムの中でも、耐熱性に優れ、且つ、適度な柔軟性を有するためにエキスパンド適性を有し、ピックアップ適性も維持されやすいとの観点から、ポリプロピレンフィルムを含む基材が好ましい。
なお、ポリプロピレンフィルムを含む基材の構成としては、ポリプロピレンフィルムのみからなる単層構造であってもよく、ポリプロピレンフィルムと他の樹脂フィルムとからなる複層構造であってもよい。
保護膜形成用シートが熱硬化性である場合、基材を構成する樹脂フィルムが耐熱性を有することで、基材の熱によるダメージを抑制し、半導体装置の製造プロセスにおける不具合の発生を抑制できる。
支持シートを保護膜形成用シートの表面にホコリ等の付着を防止する剥離シートとして用いる場合、当該支持シートとしては、シリコンウエハとの貼付時やダイシング工程時に容易に保護膜形成用シートから剥離できる樹脂フィルムが好ましい。
また、当該支持シートとしては、上述の樹脂フィルムの表面に、剥離処理を施こした樹脂フィルムを用いてもよい。
当該剥離処理の方法としては、上述の樹脂フィルムの表面上に、剥離剤から形成した剥離膜を設ける方法が好ましい。
当該剥離剤としては、例えば、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ワックス系樹脂等から選ばれる樹脂を含む剥離剤等が挙げられる。
支持シートをダイシング工程等で保護膜形成用シートの表面を保護するためのダイシングシートとして用いる場合、当該支持シートが、上述の樹脂フィルム上に粘着剤から形成された粘着剤層を有する粘着シートであることが好ましい。
当該粘着剤に含まれる粘着性樹脂としては、粘着性樹脂の構造に着目した場合、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂等が挙げられ、機能に着目した場合、例えば、エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。
本発明の一態様において、ピックアップ性を良好とする観点から、エネルギー線硬化型樹脂を含む粘着剤が好ましい。
なお、エネルギー線硬化型樹脂を含む粘着剤から形成された粘着剤層を樹脂フィルム上に設ける場合、当該粘着剤層は、エネルギー線を照射し硬化した粘着剤層であってもよく、エネルギー線を照射する前の未硬化の粘着剤層であってもよい。なお、エネルギー線を照射する前の未硬化の粘着剤層を有する支持シートを用いる場合、ピックアップ工程前に、エネルギー線を照射して当該粘着剤層を硬化させてもよい。
支持シートの厚さとしては、用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜350μm、更に好ましくは30〜200μmである。
なお、上記の支持シートの厚さには、支持シートを構成する樹脂フィルムの厚さだでなく、粘着剤層又は剥離膜を有する場合には、当該粘着剤層又は剥離膜の厚さも含む。
<治具接着層>
治具接着層は、基材(芯材)を有する両面粘着シートや、粘着剤を含む粘着剤組成物から形成することができる。
当該基材(芯材)としては、上述の基材として使用できる樹脂フィルムが挙げられ、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
また、上記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。
治具接着層の厚さは、好ましくは1〜80μm、より好ましくは5〜60μm、更に好ましくは10〜40μmである。
〔シリコンウエハの再生方法〕
本発明の保護膜形成用シートは、リワーク性に優れている。
そのため、シリコンウエハと本発明の一態様の保護膜形成シートとが貼付された積層体から当該保護膜形成シートを剥離して、シリコンウエハを容易に再生することができる。
上記積層体からシリコンウエハの再生方法としては、例えば、下記工程(1)〜(2)を有する方法が挙げられる。
工程(1):基材及び粘着剤層を有する粘着シートの当該粘着剤層を、前記積層体の保護膜形成用シートの表面上に貼付する工程
工程(2):工程(1)で貼付した前記粘着シートを引っ張って、前記シリコンウエハに貼付された前記保護膜形成用シートを剥離する工程
<工程(1)>
工程(1)では、基材及び粘着剤層を有する粘着シートの当該粘着剤層を、前記積層体の保護膜形成用シートの表面上に貼付する工程である。
本工程で用いる粘着シートとしては、基材及び粘着剤層を有するものであり、汎用の粘着シートを用いることができる。
当該基材としては、特に制限は無いが、樹脂フィルムが好ましく、上述の支持シートの項目で例示した樹脂フィルムが挙げられる。
当該粘着剤層としては、特に制限は無いが、例えば、ブチルアクリレート及びアクリル酸に由来する構成単位を含み、質量平均分子量が60万〜100万であるアクリル系樹脂100質量部と、架橋剤0.01〜10質量部とを含む粘着剤から形成された厚さ10〜50μmの粘着剤層が好ましい。
当該粘着シートの形状としては、特に限定は無いが、次の工程(2)での操作性の観点から、保護膜形成用シートと同じ形状、もしくは保護膜形成用シートよりも大きい形状の粘着シートが好ましい。
本工程における、保護膜形成シートの表面と粘着シートの粘着剤層との貼付方法としては、機械を用いて貼付してもよく、手作業で行ってもよい。
なお、上述の本発明の一態様の複合シートが有する保護膜形成用シートの一方の表面とシリコンウエハとを貼付し、他方の表面側に、既に支持シートとしてダイシングシート等の粘着剤層を有するものが積層されている場合には、当該ダイシングシート等を本工程の粘着シートとして利用することもできる。
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で貼付した前記粘着シートを引っ張って、前記シリコンウエハに貼付された前記保護膜形成用シートを剥離する工程である。
本工程においては、粘着シートを引っ張ることで、保護膜形成用シートも一緒に引き摺られ、前記保護膜形成用シートをシリコンウエハから剥離することができる。
粘着シートの剥離速度及び剥離角度としては、特に制限はなく、適宜設定することができる。
また、本工程において、機械を用いて粘着シートを引っ張ってもよいが、操作性の観点から、手作業で粘着シートを引っ張って、前記保護膜形成用シートをシリコンウエハから剥離することが好ましい。
なお、本工程において、保護膜形成用シートの剥離後、必要に応じて、エタノール等の有機溶媒で、シリコンウエハの表面を洗浄してもよい。
以上の工程を経ることで、一度保護膜形成用シートが貼付したシリコンウエハを再生することができる。
実施例で使用した各成分の質量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)の測定法は、以下のとおりである。
<質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8220GPC」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−L」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
・検出器:示差屈折計
実施例1〜9、比較例1〜4
表1に示す種類及び配合量の各成分を添加し、メチルエチルケトンで希釈して、有効成分濃度61質量%の保護膜形成用組成物の溶液をそれぞれ調製した。
そして、第1の支持シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3811」、厚さ:38μm、剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の剥離処理面上に、上記の保護膜形成用組成物の溶液を塗布し、乾燥して、厚さ40μmの保護膜形成用シートを形成した。
その上で、更に、保護膜形成用シートの表出している表面と、第2の支持シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3811」、厚さ:38μm、剥離処理が施されたPETフィルム)の剥離処理面とを貼り合わせ、第1の支持シート/保護膜形成用シート/第2の支持シートから構成された、保護膜形成用複合シートを作製した。
なお、保護膜形成用組成物の調製に使用した、表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<重合体成分>
・(A−1):メチルアクリレート(MA)95質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)5質量部からなる原料混合物を、エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いてリビングラジカル重合して得られたアクリル系共重合体(MA/HEA=95/5(質量%)、Mw=90万、Mw/Mn=2.5、Tg=8℃)。
・(A−2):メチルアクリレート(MA)95質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)5質量部からなる原料混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のみを用いて溶液重合して得られたアクリル共重合体(MA/HEA=95/5(質量%)、Mw=42万、Mw/Mn=4.2、Tg=8℃)。
<硬化性成分>
・(B−1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名「jER828」、エポキシ当量=184〜194g/eq、分子量=370、25℃における粘度=120〜150P(12〜15Pa・s)、液状エポキシ化合物)。
・(B−2):ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名「エピクロンHP−7200HH」、エポキシ当量=255〜260g/eq、Mwが2万未満の化合物、固体エポキシ化合物)。
・(B−3):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名「jER1055」、エポキシ当量=800〜900g/eq、Mn=1600、固体エポキシ化合物)。
・(B−4):ジシアンジアミド(ADEKA(株)製、商品名「アデカハードナー3636AS」、アミン系硬化剤、活性水素量=21g/eq、熱硬化剤(B12)に該当)。
・(B−5):2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「キュアゾール2PHZ」、硬化促進剤(B13)に該当)。
<無機充填材>
・(C−1):シリカフィラー(アドマテックス社製、商品名「YA050C−MJE」、平均粒径=50nm)。
・(C−2):シリカフィラー(アドマテックス社製、商品名「SC1050−MLQ」、平均粒径=300nm)。
・(C−3):シリカフィラー(アドマテックス社製、商品名「SC2050−MNU」、平均粒径=500nm)。
<着色剤>
・(D−1):混合顔料(フタロシアニン系青色色素(Pigment Blue 15:3)38質量部と、イソインドリノン系黄色色素(Pigment Yellow 139)18質量部と、ジケトピロロピロール系赤色色素(Pigment Red264)44質量部とを混合し、色素成分/スチレンアクリル樹脂=1/3(質量比)となるように顔料化したもの)。
<シランカップリング剤>
・(E−1):シランカップリング剤(エポキシ基及びメチル基含有メトキシシランオリゴマー、信越化学工業社製、商品名「X−41−1056」、メトキシ当量=17mmol/g)。
実施例及び比較例で作製した複合シートが有する保護膜形成用シートについて、破断伸度の測定法、並びに、リワーク性及び信頼性の評価方法は、以下のとおりである。これらの結果を表2に示す。
<保護膜形成用シートの破断伸度>
実施例及び比較例で作製した複合シートが有する保護膜形成用シートのみを5枚積層して、厚さ200μmの保護膜形成用シートのみからなる積層体を作製した。
当該積層体を幅5mm×長さ50mmの大きさに切断した後、精密万能試験機((株)島津製作所製、製品名「オートグラフAG−1S」)を用いて、当該積層体の長さ方向における両端部の10mmの部分をチャックで挟み、チャックで挟まれた両端部間の30mmの部分の当該積層体に対して、引っ張り速度50mm/分にて引張り試験を行い、破断伸度を測定した。
<評価(1):保護膜形成用シートのリワーク性>
実施例及び比較例で作製した複合シートの一方の支持シートを除去し、表出した保護膜形成用シートの表面と、#2000研磨したシリコンウエハ(直径:200mm、厚さ:280μm)の研磨面とを、テープマウンター(リンテック(株)製、製品名「Adwill RAD−3600 F/12」)を用いて、70℃に加熱しながら貼付した。
貼付後に、室温(25℃)にて、複合シートの他方の支持シートを除去して、表出した保護膜形成用シートの表面に、市販の汎用ダイシングテープ(リンテック(株)製、商品名「Adwill D−510T」)の粘着面を貼り付けた。
そして、貼り付け後に、手作業で当該汎用ダイシングテープを引っ張ることで、一緒に保護膜形成用シートをシリコンウエハから剥離できたか否か、及び、剥離後のシリコンウエハの表面の残存物の有無を観察し、以下の基準により、保護膜形成用シートのリワーク性を評価した。
A:保護膜形成用シートをシリコンウエハから剥がすことができた。また、剥離後のシリコンウエハには、目視で確認できる保護膜形成用シートの残存物は見られなかった。
F:剥離中にシリコンウエハが破損してしまう、もしくは、シリコンウエハを破損せずに剥離したとしても、剥離後のシリコンウエハには、エタノールで拭き取ることが難しい程の保護膜形成用シートの残存物が確認された。
<評価(2):保護膜形成用シートの信頼性>
実施例及び比較例で作製した複合シートの一方の支持シートを除去し、表出した保護膜形成用シートの表面と、#2000研磨したシリコンウエハ(直径:200mm、厚さ:280μm)の研磨面とを、テープマウンター(リンテック(株)製、製品名「Adwill RAD−3600 F/12」)を用いて、70℃に加熱しながら貼付した。さらに、複合シートの他方の支持シートも除去した後、130℃で2時間加熱し、保護膜形成用フィルムを硬化させ、保護膜付きシリコンウエハを作製した。
作製した保護膜付きシリコンウェハを3mm×3mmの保護膜付半導体チップにダイシングして、25個の保護膜付き半導体チップを得た。そして、この25個の保護膜付き半導体チップを冷熱衝撃装置(ESPEC(株)製、製品名「TSE−11A」)内に設置し、「−65℃で10分間保持した後、150℃で10分間保持する」という1サイクルを、1000サイクル繰り返した。
1000サイクル終了後、冷熱衝撃装置から取り出した保護膜付き半導体チップについて、走査型超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、製品名「HYE−FOCUS」)を用いて、半導体チップの断面を観察し、以下の基準で、信頼性を評価した。
A:作製した保護膜付き半導体チップについて、チップと保護膜との接合部での浮きや剥がれ、並びに、クラック発生は見られなかった。
F:作製した保護膜付き半導体チップについて、チップと保護膜との接合部での浮きや剥がれ、もしくは、クラック発生が見られた。
表1により、本発明の一態様である実施例1〜7で作製した保護膜形成用シートは、比較例1〜4の保護膜形成用シートに比べて、リワーク性に優れる結果となった。
さらに、実施例1、8及び9で作製した保護膜形成シートは、保護膜付き半導体チップの保護膜形成材料としての信頼性にも優れる結果となった。
なお、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物の全量に対する液状エポキシ化合物の含有量の割合を一定に保ち、保護膜形成用シート中の平均粒径が50nmの無機充填材(C−1)の含有量を変化させた実施例1〜3の破断伸度を比較すると、保護膜形成用シート中の無機充填材(C)の含有量が増えるにつれて破断伸度は高くなることが分かる。
同様に、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物の全量に対する液状エポキシ化合物の含有量の割合が近く、保護膜形成用シート中の平均粒径が50nmの無機充填材(C−1)の含有量が異なる実施例5と比較例4の破断伸度を比較すると、保護膜形成用シート中の無機充填材(C)の含有量が少ない実施例5の方が破断伸度が高くなることが分かる。
また、保護膜形成用シート中の平均粒径が50nmの無機充填材(C−1)の含有量をおおむね一定に保ち、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物の全量に対する液状エポキシ化合物の含有量の割合を変化させた実施例3〜5の破断伸度を比較すると、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物の全量に対する液状エポキシ化合物の含有量の割合が増加するにつれて破断伸度は高くなることが分かる。
同様に、保護膜形成用シート中の平均粒径が50nmの無機充填材(C−1)の含有量が同程度であり、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物の全量に対する液状エポキシ化合物の含有量の割合が異なる実施例7と比較例4の破断伸度を比較すると、保護膜形成用シート中のエポキシ化合物の全量に対する液状エポキシ化合物の含有量の割合が多い実施例7の方が破断伸度が高くなることが分かる。
つまり、比較例4の保護膜形成用シートは、平均粒径が50nmの無機充填材(C−1)の含有量が多く、且つ、エポキシ化合物の全量に対する液状エポキシ化合物の含有量が少ないため、実施例5及び7と比べて、破断伸度が低くなったと思われる。
これらの結果から、平均粒径が50nmの無機充填材(C−1)を用いる場合に、得られる保護膜形成用シートの破断伸度を向上させるには、無機充填材(C−1)の含有量を少なくするか、もしくは、エポキシ化合物の全量に対する液状エポキシ化合物の含有量を多くすることで、調整が可能といえる。
なお、これらの事項に限らず、保護膜形成用シートの破断伸度は、上述の(a)〜(e)等の事項を考慮することで調整可能である。
本発明の一態様の保護膜形成用シートは、半導体チップの裏面を保護する保護膜の形成材料として好適である。
1a、1b、1c、1d 保護膜形成用複合シート
10 保護膜形成用シート
11、11’ 支持シート
12 治具接着層

Claims (8)

  1. シリコンウエハに貼付され、当該シリコンウエハ上に保護膜を形成するためのシートであって、
    テルル化合物を用いたリビングラジカル重合により得られるアクリル系重合体(A1)を含む重合体成分(A)を含有し、
    厚さ200μmにおける破断伸度が300%以上である、保護膜形成用シート。
  2. さらにエポキシ化合物(B11)を含む硬化性成分(B)を含有し、
    エポキシ化合物(B11)が、25℃において液状のエポキシ化合物を10質量%以上含む、請求項1に記載の保護膜形成用シート。
  3. さらに無機充填材(C)を含む、請求項1又は2に記載の保護膜形成用シート。
  4. 無機充填材(C)の含有量が、前記保護膜形成用シートの全量に対して、1〜70質量%である、請求項3に記載の保護膜形成用シート。
  5. 無機充填材(C)の平均粒径が5nm以上である、請求項3又は4に記載の保護膜形成用シート。
  6. 支持シート上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護膜形成用シートを有する、保護膜形成用複合シート。
  7. 2枚の支持シートに、前記保護膜形成用シートが挟持された構成を有する、請求項6に記載の保護膜形成用複合シート。
  8. 前記2枚の支持シートのうち一方が、粘着剤層を有する粘着シートである、請求項7に記載の保護膜形成用複合シート。
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