JP2016141643A - バルサルタンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明における粗体のバルサルタンは、一旦溶液状態とするため、その結晶形態等は特に制限されない。また、本発明の製造方法は精製効果を有するため、純度や含まれる不純物の種類等も特に制限されない。ゆえに、粗体のバルサルタンは公知の方法により製造すれば良く、例えば上記特許文献1に記載されているように、N−[(2′−シアノビフェニル−4−イル)メチル]−N−バレリル−(L)−バリンベンジルエステルをアジ化トリブチル錫を用いてテトラゾール環形成反応を行い、次いで、パラジウムカーボンを用いて脱ベンジル化反応を行うことにより、粗体のバルサルタンを製造することができる。別の方法として、特許第5575783号に記載されている、N−{[2’−(1−トリフェニルメチル−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−N−バレリル−L−バリンベンジルエステルを溶媒中で加熱することにより脱トリチル化反応を行い、次いで、パラジウムカーボンを用いて脱ベンジル化反応を行う方法が挙げられる。
本発明におけるエステル類とは、バルサルタンが溶解でき、且つ、水と混合するエステル類の液体であれば、特に制限無く使用でき、本発明の効果を得ることができる。例えば、ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ベンジル、ギ酸メチル、酢酸アミル、酢酸アリル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、酪酸イソアミル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸メチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。これらの中でも、バルサルタンの溶解性が高く、使用量を少なくすることができる点、精製効果が高い点から、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸メチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸プロピル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸メチルが好ましく、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸プロピル、酢酸メチルがさらに好ましく、酢酸エチルが最も好ましい。なお、上記エステル類は、単独で使用しても良く、2つ以上を混合して使用しても良い。
本発明において、バルサルタン溶液の調製は、粗体のバルサルタンとエステル類とを混合した後、溶液状態となるまで加熱、撹拌することが好ましい。当該操作は、容器内で実施することが好ましく、その容器としては、ガラス製容器、ステンレス製容器、テフロン(登録商標)製容器、グラスライニング容器等が挙げられる。当該容器には、温度計や温度センサーを装着することが好ましく、さらに、還流管を装着することがより好ましい。また、上記撹拌操作は、撹拌効率の点からメカニカルスターラーやマグネティックスターラー等を用いて行なうことが好ましい。
本発明において、バルサルタンとエステル類との溶液は水分量がバルサルタン1モルに対して0.10モル以下であることが最重要である。この範囲であれば、0.10モルを超える水分量を含む場合と比較して、バルサルタンの回収率を向上させることができる。中でも、回収率をより向上させることができ、且つ、バルサルタンの精製効果が同等以上である点から、0.07モル以下が好ましく、0.04モル以下がさらに好ましく、0.02モル以下が最も好ましい。
バルサルタン溶液と吸着剤とを混合する方法は、具体的には、容器内で調製されたバルサルタン溶液に吸着剤を加え、混合、撹拌した後、バルサルタン溶液と吸着剤とを固液分離することにより行われる。使用する吸着剤は、水を吸着するものであれば特に制限されないが、バルサルタン等との反応により不純物が副生しないものが好ましい。具体的に例示すると、活性炭等の有機化合物、ポリスチレン、ポリアクリルアミド等の有機高分子化合物等の有機担体、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、カルシア等の金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム、硫酸水素カルシウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ウラニル、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、亜硝酸ナトリウム等の無機塩等の無機担体、および珪藻土、滑石、方解石、苦灰石、硝石、チリ硝石、沸石、黄鉄鉱、黄銅鉱、赤銅鉱、黒銅鉱、方鉛鉱、辰砂、石英、磁鉄鉱、コランダム、岩塩、蛍石、ダイアスポア、針鉄鉱、ギブス石等の鉱物等が挙げられる。これらの中でも、水の除去効率が高い点から、活性炭、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、アルミナ、珪藻土、沸石が好ましい。
バルサルタン溶液を濃縮する方法は、具体的には、容器内で調製されたバルサルタン溶液からエステル類を留去し濃縮することにより行われる。エステル類と水は共沸するため、当該方法によりバルサルタン溶液中の水を除去することができる。濃縮するエステル類の量は、水分量が本発明の範囲内となるように決定すれば良い。濃縮操作は、空気、窒素或いはアルゴン等の雰囲気下、これらの通気下、或いは減圧下で実施することができるが、加熱温度が低く、異性化を抑制できることや濃縮効率が高いことから、減圧下で実施することが好ましい。また、濃縮する温度は、0℃以上還流温度(約77℃)以下であるが、異性化を抑制できる点から、35℃以上65℃以下が好ましく、40℃以上55℃以下がより好ましい。なお、当該温度は、バルサルタン溶液の調製温度と同じであっても良く、異なっても良い。
以上のようにして得られた、バルサルタンの溶液からバルサルタンを再結晶する方法としては、精製効果が十分に得られ、結晶形態を安定的に制御できる点から、溶液を冷却させる方法が好ましい。このとき、溶液の冷却速度があまり速いと得られるバルサルタンの純度が低下する傾向があり、あまり遅いと効率的ではないため、1℃/時間以上100℃/時間以下とすることが好ましく、5℃/時間以上50℃/時間以下、さらには5℃/時間以上30℃/時間以下とすることが特に好ましい。
実施例、比較例におけるバルサルタン、エステル類、バルサルタンの溶液の水分量は、カールフィッシャー法により測定した。該測定に使用した装置、測定の条件は、以下のとおりである。なお、バルサルタン及びエステル類の水分量は、検出された水の質量を総質量を基準として質量%で表した。一方、バルサルタン溶液の水分量は、検出された水の質量をモル換算し、溶解しているバルサルタン1モルに対するモル数として表した。
装置:三菱化学社製自動水分測定装置CA−100
方式:カールフィッシャー容量滴定方式
滴定試薬:三菱化学製アクアミクロン滴定剤SS−Z 3mg
溶媒:無水メタノール。
実施例、比較例におけるバルサルタンの結晶形態は、XRD、DSCにより評価した。各測定に使用した装置、測定の条件は、以下のとおりである。
(XRD)
装置:Rigaku社製RINT1200X線粉末回折計
(1.541858オングストロームの波長を有するCuKα放射線を使用)
電圧:40kV
電流:30mA
サンプリング幅:0.05°
スキャンスピード:1.0°/min
スキャン範囲:5°〜35°
(DSC)
装置:Rigaku社製DSC8230示差走査熱量計
雰囲気:窒素(50mL/min.)
昇温スピード:10℃/min
昇温範囲:20℃〜150℃
バルサルタンの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。HPLC測定に使用した装置、測定の条件は、以下のとおりである。なお、バルサルタンの純度とは、得られたクロマトグラムにおけるバルサルタンのピーク面積値の、全てのピークの面積値の合計に対する百分率で示した値である。また、該条件によるHPLC分析における、検出限界は0.003%であり、バルサルタンの保持時間は13.5分付近である。
装置:ウォーターズ社製2695
検出器:紫外吸光光度計(ウォーターズ社製2489)
検出波長:225nm
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルが充填されたもの
移動相:アセトニトリル500mL、水500mLと酢酸1mLの混合溶液
流速:1mL/min.
カラム温度:35℃付近の一定温度
攪拌翼、温度計を取り付けた500mLの三つ口フラスコに、N−{[2’−(1−トリフェニルメチル−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−N−バレリル−L−バリンベンジルエステル65g、メタノール110gを加え撹拌した。次いで、加熱し還流温度で7時間反応した。得られた反応液を冷却した後、パラジウムカーボン7.5g(3質量%、50%含水)を加え、さらに水素雰囲気下(0.1MPa)、40℃で15時間反応を行った。加圧ろ過により反応液からパラジウムカーボンを除去した後、濃縮し得られた残渣にイソプロピルアルコール18g及びイオン交換水80gを加え、10質量%水酸化カリウム水溶液でpHを8に調整した。トルエン70gを用いて2回洗浄した後、酢酸エチル110gを加え、濃塩酸20gでpH=1へ調整した。有機層を分離した後、水層を酢酸エチル55gで抽出した。有機層を混合し、水25gで2回洗浄した後、有機層を50℃で減圧下濃縮し、溶媒を除去した。さらに、得られた残渣を50℃で減圧下乾燥し粗体のバルサルタン355gを得た。その純度は95.43%であり、水分量は1.0%であった。
攪拌翼、温度計を取り付けた200mLの三つ口フラスコに、製造例1で得られた粗体のバルサルタン20.0g(45.9mmol)、酢酸エチル(試薬特級グレード、水分量0.03%)90.0gを加え、45℃に加熱した後、同温度付近で10分間撹拌し、バルサルタンの溶液を得た(水分量0.27モル)。次いで、バルサルタンの溶液に沸石2.5gを加え、45℃で1時間撹拌した。加圧ろ過により沸石を除去し、バルサルタンの溶液を得た(水分量0.09モル)。バルサルタンの溶液を15℃/時間で5℃付近まで冷却し、同温度付近で20時間撹拌した後、加圧ろ過により析出した結晶をろ別した。ろ別した結晶を、酢酸エチル4.5gで洗浄し、バルサルタンの湿体を得た。
沸石との混合操作を2回実施したこと以外、実施例1と同様にして実施した。すなわち、沸石との混合操作を2回実施して得た、水分量がバルサルタン1モルに対して、0.04モルであるバルサルタンの溶液を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン17.8g(回収率89.2%)を得た。その純度は99.53%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表1に示した。
実施例1と同様にして、バルサルタンの溶液(水分量0.27モル)を得た。次いで、45℃で減圧下濃縮し、酢酸エチル75.0gを留去した。酢酸エチル(試薬超脱水グレード、水分量0.001%)75.0gを加え、45℃で撹拌しバルサルタンの溶液を得た。その水分量は、バルサルタン1モルに対して、0.07モルであった。次いで、バルサルタンの溶液を15℃/時間で冷却したところ、32℃付近で結晶が析出した。さらに、5℃付近まで冷却し、同温度付近で20時間撹拌した後、加圧ろ過により結晶をろ別した。ろ別した結晶を、酢酸エチル4.5gで洗浄し、バルサルタンの湿体を得た。得られたバルサルタンの湿体を60℃で20時間減圧下乾燥し、白色結晶としてバルサルタン17.1g(回収率85.7%)を得た。その純度は99.53%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表1に示した。
濃縮操作を2回実施したこと以外、実施例3と同様にして実施した。すなわち、濃縮操作を2回実施して得た、水分量がバルサルタン1モルに対して、0.02モルであるバルサルタンの溶液を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン18.2g(回収率90.9%)を得た。その純度は99.50%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表1に示した。
製造条件として、エステル類の種類及び水分量及び使用量、バルサルタン溶液の水分量の調整実施回数、吸着剤の種類及び使用量を変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。製造条件及び製造結果を表1に示した。
濃縮操作を3回実施したこと以外、実施例3と同様にして実施した。すなわち、濃縮操作を3回実施して得た、水分量がバルサルタン1モルに対して、0.02モルであるバルサルタンの溶液を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン18.2g(回収率91.0%)を得た。その純度は99.50%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表1に示した。
沸石での処理を行わなかったこと以外、実施例1と同様にして実施した。すなわち、バルサルタンの溶液(水分量バルサルタン1モルに対して、0.27モル)を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン15.5g(回収率77.6%)を得た。その純度は99.53%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表2に示した。
硫酸ナトリウムでの処理を行わなかったこと以外、実施例5と同様にして実施した。すなわち、水分量がバルサルタン1モルに対して、0.24モルであるバルサルタンの溶液を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン15.7g(回収率78.7%)を得た。その純度は99.54%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表2に示した。
沸石0.9gを使用したこと以外、実施例2と同様にして実施した。すなわち、水分量がバルサルタン1モルに対して、0.13モルであるバルサルタンの溶液を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン16.0g(回収率79.9%)を得た。その純度は99.53%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表2に示した。
沸石での処理を行わなかったこと以外、実施例7と同様にして実施した。すなわち、水分量がバルサルタン1モルに対して、0.24モルであるバルサルタンの溶液を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン11.8g(回収率59.2%)を得た。その純度は99.56%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表2に示した。
沸石での処理を行わなかったこと以外、実施例8と同様にして実施した。すなわち、水分量がバルサルタン1モルに対して、0.25モルであるバルサルタンの溶液を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン7.4g(回収率37.0%)を得た。その純度は99.56%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表2に示した。
沸石での処理を行わなかったこと以外、実施例9と同様にして実施した。すなわち、水分量がバルサルタン1モルに対して、0.31モルであるバルサルタンの溶液を冷却して再結晶を実施し、白色結晶としてバルサルタン10.7g(回収率53.7%)を得た。その純度は99.44%であり、結晶形態は非晶質であった。製造条件及び製造結果を表2に示した。
Claims (2)
- 非晶質のバルサルタンの製造方法であって、水分量がバルサルタン1モルに対して0.10モル以下であるバルサルタンとエステル類との溶液を用いて再結晶することを特徴とする非晶質のバルサルタンの製造方法。
- エステル類が酢酸エチルである請求項1に記載の非晶質のバルサルタンの製造方法。
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