JP2016140783A - 有機性排水の処理方法及びその処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】脱窒工程への硝化液循環比を小さな値に設定しても、膜分離工程で用いられる膜分離装置のファウリングを回避可能な有機性排水の処理方法及びその処理装置を提供する。
【解決手段】窒素を含有する有機性排水を、少なくとも脱窒工程、硝化工程、及び浸漬型膜分離装置を使用した膜分離工程の順に活性汚泥と混合された被処理水として生物処理する有機性排水の処理方法であって、少なくとも膜分離工程で膜透過水として取り出されずに残った被処理水を脱窒工程へ返送する第一返送工程と、膜分離工程で膜透過水として取り出されずに残った被処理水を脱窒工程の後の工程へ返送する第二返送工程と、有機性排水、何れかの被処理水、及び膜分離工程で膜分離した膜透過水の何れかの窒素濃度を指標として、第一返送工程で返送する被処理水の流量、及び第二返送工程で返送する被処理水の流量を調整する返送流量調整工程と、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒素を含有する有機性排水を、少なくとも脱窒工程、硝化工程、及び浸漬型膜分離装置を使用した膜分離工程の順に活性汚泥と混合された被処理水として生物処理する有機性排水の処理方法及びその処理装置に関する。
特許文献1には、原液流入部を有する脱窒素部と、処理液流出部を有する硝化部とを連通状態に設けた生物学的処理槽を備え、処理槽内または外部に酸素含有ガス送入管のあるエアリフト部を配備するとともに、脱窒素部内の脱窒素液を強制的に硝化部へ移送させる循環流路と、硝化部内の硝化液を脱窒素部内に流入させる連通流路とでリサイクル経路を構成し、脱窒素率を向上させる生物学的脱窒素装置が開示されている。硝化部でアンモニアが硝化される硝化工程が実行され、硝化液が返送された脱窒素部で硝酸態窒素が窒素ガスとして還元分離される脱窒工程が実行される。
特許文献2には、生活排水のような一般的な都市下水や産業廃水等の汚水の浄化処理のために構築された従来の標準活性汚泥法を採用した汚水処理装置の老朽化に伴って、汚水からリンや窒素等を効果的に除去するべく膜分離活性汚泥法を用いた汚水処理装置への改築が進行していることが開示されている。沈殿槽に代えて膜分離槽を備えることによりA−SRTを長くすることができ、硝化処理を促進することができるようになる。
特許文献3には、図5に示すように、嫌気槽、脱窒槽、及び分離膜が浸漬された曝気槽の順番に設置された生物処理設備の上流側の嫌気槽に廃水を流入させて生物処理する膜分離活性汚泥法を用いた廃水処理方法が開示されている。
当該廃水処理方法は、廃水を活性汚泥の存在下にリン放出工程、脱窒工程、及び曝気工程の順に通水し、該曝気工程の混合液中に浸漬された分離膜により被処理水を分離する廃水の処理方法で、曝気工程の混合液の一部を脱窒工程へ返送するとともに、脱窒工程の混合液をリン放出工程へ返送するように構成されている。
曝気工程で硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素に硝化処理された混合液の一部が脱窒工程に返送されて窒素ガスに還元されて分離除去され、脱窒工程で無酸素化された混合液がリン放出工程へ返送されてリン化合物が正リン酸として放出される。尚、放出された正リン酸は曝気工程で好気性微生物に取り込まれる。
上述の膜分離活性汚泥法を用いる場合、窒素を含有する有機性排水は、少なくとも脱窒工程、硝化工程、及び浸漬型膜分離装置を使用した膜分離工程の順に活性汚泥と混合された被処理水として生物処理され、必要に応じて脱窒工程の前段にリン放出工程が組み込まれる。
生物処理後の処理水に含まれる窒素濃度を低下するためには、硝化工程で硝化された被処理水の脱窒工程への硝化液循環比Rを大きくすればよく、通常、硝化液循環比Rは2から4の間に設定されている。
硝化液循環比Rは、被処理水の流入量を1、または処理水(膜分離活性汚泥法を用いる場合は、膜分離装置から排水される膜透過水)の流量を1とする場合の硝化液の循環量の比であり、膜透過水の窒素濃度である処理水窒素濃度は以下の数式1で求まる。尚、硝化対象窒素濃度は原水である有機性排水に含まれる全窒素から余剰活性汚泥として引き抜かれる窒素成分を除いた値である。
(処理水窒素濃度) = (硝化対象窒素濃度)/(R+1) ・・・数式1
特開昭55−45357号公報 特開2013−664号公報 特開2001−314890号公報
膜分離活性汚泥法を用いた汚水処理装置で生物処理された処理水は、必要に応じてCOD除去等の高度処理が行なわれた後に、例えば河川に放流されて海に流下するが、環境保護という観点で処理水窒素濃度を低い値に調整することが好ましいとは限らない場合もある。
例えば、海水中の栄養塩濃度、特に溶存態無機窒素が養殖海苔に影響があるとされており、海苔の育苗期となる冬季から春季に養殖海苔の色素合成に必要な溶存態無機窒素等が不足することにより、海苔の色落ち現象が発生するという問題がある。
そこで、冬季から春季にかけて、処理水窒素濃度をある程度高い値に調整するべく、数式1の硝化液循環比Rを小さくした有機性排水の処理方法が試行されている。
しかし、硝化液循環比Rを小さな値に設定すると、膜分離工程への被処理水の流入量が少なくなり、被処理水の流れに沿って配置されている膜分離装置の周囲の活性汚泥濃度の濃淡のばらつきが大きくなり、膜分離性能に支障が発生するという問題があった。
膜分離工程から脱窒工程へ返送される被処理水の活性汚泥浮遊物質MLSSの濃度をXmg/Lとすると、膜分離工程に流入するMLSS濃度は以下の数式2で求まる。数式2に基づけば、硝化液循環比Rを小さくするほど、膜分離工程に流入する被処理水と膜分離工程から脱窒工程へ返送される被処理水のMLSS濃度差が大きくなることが理解できる。
MLSS(mg/L) = R/(R+1)*X ・・・数式2
つまり、膜分離工程の被処理水の流れに沿う下流側でMLSS濃度が高くなり、膜分離装置の分離膜に活性汚泥が堆積して、膜分離できなくなる虞があった。
また、膜分離工程の被処理水の流れに沿う下流側でのMLSS濃度が高くなりすぎないように、処理工程全体のMLSS濃度を低くすると、特に、MLSS濃度が低い膜分離工程の上流側で未分解のアンモニア等が膜透過水に流出したり、未分解の難溶性成分や高分子の溶質等に起因する分離膜のファウリングが生じて分離膜が閉塞する虞があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、脱窒工程への硝化液循環比を小さな値に設定しても、膜分離工程で用いられる膜分離装置のファウリングを回避可能な有機性排水の処理方法及びその処理装置を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による有機性排水の処理方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、窒素を含有する有機性排水を、少なくとも脱窒工程、硝化工程、及び浸漬型膜分離装置を使用した膜分離工程の順に活性汚泥と混合された被処理水として生物処理する有機性排水の処理方法であって、前記膜分離工程で膜透過水として取り出されずに残った被処理水を前記脱窒工程へ返送する第一返送工程と、前記膜分離工程で膜透過水として取り出されずに残った被処理水を前記脱窒工程の後の工程へ返送する第二返送工程と、前記有機性排水、何れかの被処理水、及び前記膜分離工程で膜分離した膜透過水の何れかの窒素濃度を指標として、前記第一返送工程で返送する被処理水の流量、及び前記第二返送工程で返送する被処理水の流量を調整する返送流量調整工程と、を含む点にある。
上述の構成によれば、第一返送工程で返送される膜分離工程で膜透過水として取り出されずに残った被処理水の返送量に基づいて窒素の除去率を調整可能としながらも、第二返送工程で返送される膜分離工程で膜透過水として取り出されずに残った被処理水の返送量により脱窒工程の後の工程に流入する活性汚泥の濃度が調整可能になる。即ち、返送流量調整工程では、原水となる有機性排水、生物処理中の被処理水、または膜透過水の何れかの窒素濃度を指標として、第一返送工程で返送される被処理水の返送量が調整され、その返送量に応じて第二返送工程で返送される被処理水の返送量が適切な値に調整される。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記返送流量調整工程は、前記窒素濃度を指標として、前記膜透過水の窒素濃度が目標窒素濃度となるように前記第一返送工程で返送する被処理水の流量を調整するとともに、前記膜分離工程へ流入する被処理水の流量が目標流量となるように前記第二返送工程で返送する被処理水の流量を調整する工程である点にある。
返送流量調整工程では、原水となる有機性排水、生物処理中の被処理水、または膜透過水の何れかの窒素濃度を指標として、目標となる処理水窒素濃度を得るために必要な硝化液循環比Rが求められ、硝化液循環比Rに基づいて第一返送工程で返送される被処理水の返送量が調整される。さらに、その返送量に応じて第二返送工程で返送される被処理水の返送量が適切な値に調整される。そのため、処理水窒素濃度がどのような値であっても、膜分離工程で分離膜のファウリングの発生を回避することができるようになる。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記目標流量は、処理対象となる前記有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲に調整される点にある。
膜分離工程へ流入する被処理水の流量が、原水となる有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲に調整されると、膜分離槽内のMLSS濃度分布比を、1:1.2から1:1.5までの範囲に収めることができるようになる。その結果、第一返送工程で返送する被処理水の流量を減らして膜透過水の窒素濃度を高めに設定する場合でも、分離膜のファウリングの発生を効果的に抑制できるようになる。尚、1:1.2から1:1.5までの範囲のMLSS濃度分布比に対応できる分離膜は、標準的で安価に入手しやすい。さらに、前記膜分離工程へ流入する被処理水の流量の制御範囲が、処理対象となる前記有機性排水の流量の3倍以上かつ6倍以下の範囲と比較的広いため、流量制御にあまり困難を伴わない。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記目標流量は、処理対象の前記有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲の一定値に調整される点にある。
膜分離工程へ流入する被処理水の流量が、原水となる有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲の一定値に調整されると、膜分離槽内のMLSS濃度分布比を、1:1.2から1:1.5までの範囲の好ましい一定値に収めることができるようになる。その結果、第一返送工程で返送する被処理水の流量を減らして膜透過水の窒素濃度を高めに設定する場合でも、分離膜のファウリングの発生をより一層効果的に抑制できるようになる。
本発明による有機性排水処理装置の第一特徴構成は、同請求項5に記載した通り、窒素を含有する有機性排水を、活性汚泥と混合された被処理水として生物処理する少なくとも脱窒槽、硝化槽、及び浸漬型膜分離装置が配設された膜分離槽を備えている有機性排水処理装置であって、前記膜分離槽中の被処理水を前記脱窒槽へ返送する第一返送機構と、前記膜分離槽中の被処理水を前記脱窒槽より後段へ返送する第二返送機構と、前記有機性排水、何れかの被処理水、及び前記浸漬型膜分離装置により取り出される膜透過水の何れかの窒素濃度を測定する窒素濃度測定装置と、前記窒素濃度測定装置により取得された窒素濃度を指標として、前記第一返送機構を介して返送する被処理水の流量、及び前記第二返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整する制御部と、を備えている点にある。
同第二の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記制御部は、前記窒素濃度測定装置により取得された窒素濃度を指標として、前記膜透過水の窒素濃度が目標窒素濃度となるように前記第一返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整するとともに、前記膜分離槽へ流入する被処理水の流量が目標流量となるように前記第二返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整する点にある。
同第三の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記目標流量は、処理対象となる前記有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲に調整される点にある。
同第四の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記目標流量は、処理対象の前記有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲の一定値に調整される点にある。
同第五の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記膜分離槽内の被処理水のMLSS濃度を測定するMLSS濃度測定装置をさらに備え、前記制御部は、前記窒素濃度測定装置により取得された窒素濃度を指標として、前記膜透過水の窒素濃度が目標窒素濃度となるように前記第一返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整するとともに、前記MLSS濃度測定装置により取得されたMLSS濃度が所定の範囲に入るように、前記第一の返送機構を介して返送される被処理水の流量に応じて前記第二返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整する点にある。
膜分離槽内の被処理水のMLSS濃度を直接監視して、その値が所定の範囲に入るように第二返送機構を介して返送する被処理水の流量が調整されるので、第一返送工程で返送する被処理水の流量を減らして膜透過水の窒素濃度を高めに設定する場合でも、分離膜のファウリングの発生をより一層効果的に抑制できるようになる。しかも、取得したMLSS濃度に基づいて分離膜のファウリングの虞が間接的に検知でき、予防できるようになるので、分離膜のファウリングによる定期的なメンテナンスまでの時間を長くすることができる。
同第六の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記膜分離槽は、被処理水の流下方向に沿って前記浸漬型膜分離装置が複数配置され、前記第一の返送機構は、前記膜分離槽の下流側の被処理水を前記脱窒槽へ返送する返送路を備えている点にある。
上述の構成によれば、被処理水の流下方向に沿って浸漬型膜分離装置が複数配置されるような、膜分離槽内を流れる被処理水の流路が長い形状であっても、被処理水の流下方向に沿ったMLSS濃度勾配を小さくできるので、膜分離槽の上流側から下流側にかけてほぼ均一な膜分離処理が行なえるようになる。
以上説明した通り、本発明によれば、脱窒工程への硝化液循環比を小さな値に設定しても、膜分離工程で用いられる膜分離装置のファウリングを回避可能な有機性排水の処理方法及びその処理装置を提供することができるようになった。
本発明による有機性排水処理装置及び処理方法の説明図 別実施形態を示す有機性排水処理装置及び処理方法の説明図 別実施形態を示す有機性排水処理装置及び処理方法の説明図 別実施形態を示す有機性排水処理装置及び処理方法の説明図 従来の排水処理装置及び処理方法の説明図
以下、本発明による有機性排水の処理方法及びその処理装置の実施形態を説明する。
図1に示すように、当該有機性排水処理装置1は、原水となる窒素を含有する有機性排水を、活性汚泥と混合された被処理水として順に生物処理する装置であり、少なくとも脱窒槽20、硝化槽21、及び浸漬型膜分離装置23を備えた膜分離槽22を備えている。
窒素を含有する有機性排水とは、代表的には都市下水や固形分が除去されたし尿、さらには食品工場等から排出される有機性成分及びアンモニア成分を含有する排水である。脱窒槽20の前段には、有機性排水に含まれる夾雑物を除去するスクリーン機構や有機性排水に含まれる固形分を除去する前処理槽等が通常設けられているが、本実施形態では説明を省略する。
脱窒槽20には撹拌機構20aが設けられ、原水である有機性排水が嫌気条件下で活性汚泥と混合処理されるように構成されている。脱窒槽20内で被処理水が活性汚泥に含まれる通性嫌気性微生物(ここでは脱窒素菌)によって嫌気処理され、被処理水に含まれる硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素が窒素ガスに還元つまり脱窒される。還元された窒素は大気中に放出される。
当該硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素は、原水に含まれるアンモニア成分が硝化槽21や膜分離槽22で活性汚泥に含まれる好気性微生物により好気処理され、硝酸や亜硝酸に酸化された被処理水で、後述する第一返送機構Aを介して返送される被処理水に含まれている。
硝化槽21には曝気装置25が設けられ、被処理水を曝気するように構成されている。曝気された被処理水に含まれるアンモニアが好気性条件下で活性汚泥に含まれる亜硝酸菌によって亜硝酸態窒素に酸化され、硝酸菌によって亜硝酸が硝酸態窒素に酸化される硝化処理が行なわれる。また、被処理水に含まれる有機性成分は好気性微生物によって分解処理される。
膜分離槽22には複数の浸漬型膜分離装置23が被処理水の流下方向に沿って複数台浸漬配置され、浸漬型膜分離装置23によって被処理水から汚泥等の固形物が分離された膜透過水が得られるように構成されている。被処理水は上流側の処理槽から下流側の処理槽にポンプにより送水され、或いは隣接配置された処理槽の上流側から下流側に被処理水がオーバーフローするように構成されている。
浸漬型膜分離装置23には、平膜形状の精密濾過膜でなる分離膜を採用した膜ユニット24が複数組み込まれ、各膜ユニット24の排水管にヘッダー管31aが接続されている。ヘッダー管31aに接続された吸引ポンプ31によって膜透過水が吸引され、必要に応じて高度処理が行なわれた後に河川に放流される。
浸漬型膜分離装置23に採用可能な分離膜として、精密濾過膜以外に限外濾過膜やナノ濾過膜等が挙げられ、分離膜の形態として平膜以外に中空糸膜、チューブラー膜等が挙げられる。図1では、膜分離槽22の底部に散気装置25が配置されているように示されているが、実際には各浸漬型膜分離装置23に収容された膜ユニット24の下部に散気装置25が設けられ、各散気装置25から散気される気泡により形成される被処理水の上向流によって膜ユニット24の表面への汚泥の付着が防止されるとともに付着した汚泥が除去され、さらに被処理水が好気処理される。
有機性排水処理装置1には、さらに第一返送機構A、第二返送機構B、窒素濃度測定装置33及び制御部30が設けられている。
第一返送機構Aは、膜分離槽22の下流側で膜分離処理されずに残った被処理水を脱窒槽20の上流に返送する第一の返送路28と、第一の返送路28に膜分離槽22内の被処理水を送水する循環ポンプ(以下、「硝化液循環ポンプ」と記す。)26と、第一の返送路28を流れる被処理水の流量を測定する流量計32aを備えて構成されている。尚、硝化液循環ポンプ26として、電動機等で駆動される羽根車を備えた水中ポンプや陸上ポンプとブロワーから供給される空気の上向流により揚水するエアリフトポンプの何れを採用してもよい。
第二返送機構Bは、膜分離槽22の下流側で膜分離処理されずに残った被処理水を硝化槽21の上流に返送する第二返送路29と、第二返送路29に膜分離槽22内の被処理水を送水する循環ポンプ(以下、「内部循環ポンプ」と記す。)27と、第二返送路29を流れる被処理水の流量を測定する流量計32bを備えて構成されている。尚、内部循環ポンプ27も、硝化液循環ポンプ26と同様に、水中ポンプや陸上ポンプとエアリフトポンプの何れを採用してもよい。
本実施形態では、窒素濃度測定装置33によって原水に含まれる窒素濃度が測定されるように構成されている。尚、後述するように、窒素濃度測定装置は、図1中に破線で示すように、脱窒槽20に備えてもよく(符号33a参照)、硝化槽21に備えてもよく(符号33b参照)、及び浸漬型膜分離装置23に備えてもよく(符号33c参照)、さらには膜透過水の窒素濃度を測定可能に配置してもよい(符号33d参照)。
制御部30は、例えばパーソナルコンピュータ装置、或いはマイクロコンピュータやFPGA等で構成され、窒素濃度測定装置33により取得された窒素濃度データや、流量計32a,32bにより取得された流量を入力する入力部と、硝化液循環ポンプ26及び内部循環ポンプ27を駆動する出力部と、入力部に入力された窒素濃度及び各流量に基づいて硝化液循環ポンプ26及び内部循環ポンプ27を介した被処理水の循環量を算出する演算部とを備えて構成されている。
演算部は、入力部を介して入力された窒素濃度を指標として、第一返送機構Aで返送する被処理水の流量、及び第二返送機構Bで返送する被処理水の流量を算出する目標流量算出部と、入力部を介して入力された各被処理水の流量が目標流量算出部で算出された被処理水の流量となるように硝化液循環ポンプ26及び内部循環ポンプ27を調整する返送流量調整部を備えている。
つまり、制御部30は、窒素濃度測定装置33により取得された窒素濃度を指標として、第一返送機構Aを介して返送する被処理水の流量、及び第二返送機構Bを介して返送する被処理水の流量を調整するように構成されている。その結果、膜透過水の窒素濃度と、膜分離槽22内の活性汚泥の濃度であるMLSS濃度が好ましい値に調整される。
以下、制御部30によって調整される膜透過水の窒素濃度及び膜分離槽22のMLSS濃度について詳述する。
膜分離槽22内の被処理水の一部は第一返送機構Aを介して脱窒槽20に返送される。本願明細書では、この被処理水の流れを硝化液循環と呼ぶ。さらに、膜分離槽22内の被処理水の一部は第二返送機構Bを介して硝化槽21に返送される。本願明細書では、この被処理水の流れを内部循環と呼ぶ。
脱窒槽20に流入する原水の流入量1に対する硝化液循環する被処理水の流量の比を硝化液循環比R、同じく原水の流入量1に対する内部循環する被処理水の流量の比を内部循環比rとする。
原水に含まれている窒素は主にアンモニア態窒素として存在し、硝化槽21で硝化処理されて硝酸態窒素等に形を変える。硝化処理により被処理水に含まれる窒素の量が大きく変化することはない。原水が活性汚泥処理される過程で被処理水中の窒素の量に変化が生じるのは、脱窒槽20で硝酸態窒素が還元処理されて窒素ガスとなって大気に放出されるときと、膜分離槽22で亜硝酸態窒素や硝酸態窒素等が余剰汚泥として引き抜かれるときである。
除去される窒素分のうち、余剰汚泥として引き抜かれる窒素分は少量であるため、原水に含まれる窒素濃度のうち硝化脱窒処理によって除去すべき窒素濃度を硝化対象窒素濃度、膜透過水の窒素濃度を処理水窒素濃度とした場合、処理水窒素濃度は、既述したように以下の数式1により算出できる。
(処理水窒素濃度) = (硝化対象窒素濃度)/(R+1) ・・・数式1
処理水窒素濃度、硝化対象窒素濃度、硝化液循環比Rの何れか二値が既知であれば残りの値も判明する。膜透過水の窒素濃度の計測値が処理水窒素濃度となり、原水の窒素濃度の計測値が硝化対象窒素濃度となり、膜透過水の流量と第一返送機構Aを介した被処理水返送量の比が硝化液循環比Rとなる。
尚、原水の窒素濃度の計測値である硝化対象窒素濃度と目標とする処理水窒素濃度から、設定すべき硝化液循環比Rが求まる。また、膜透過水の窒素濃度の計測値である処理水窒素濃度とその時点での硝化液循環比Rから、原水の窒素濃度である硝化対象窒素濃度を算出することで、目標とする処理水窒素濃度とするための硝化液循環比Rが求まる。また、脱窒工程、硝化工程、及び膜分離工程の何れかの工程での被処理水の窒素濃度と、そのときの硝化液循環比Rが既知であれば、統計的に処理水窒素濃度または硝化対象窒素濃度が求まる。
従って、上述したように、窒素濃度測定装置33は、原水である有機性排水の窒素濃度を測定するように配置されていてもよく、脱窒槽20、硝化槽21及び膜分離槽22の何れかの被処理水の窒素濃度を測定するように配置されていてもよく、膜分離槽22で膜分離した膜透過水の窒素濃度を測定するように配置されていてもよく、原水と膜透過水の両方の窒素濃度を測定するように配置されていてもよい。
窒素濃度測定装置33は、トータル窒素濃度を計測可能なTN計、アンモニア態窒素濃度を計測可能なNH−N計、硝酸態窒素を計測可能なNO−N計を用いることができ、原水に対してNH−N計、膜透過水に対してNO−N計を用いることが好ましい。
処理水窒素濃度の目標値が定まれば、目標流量算出部によってその目標値に向けた硝化液循環比Rが算出され、返送流量調整部で第一返送機構Aを介した返送流量が調整される。
しかし、例えば海水中の栄養塩の一つである溶存態無機窒素が低下する冬季から春季に硝化液循環比Rを小さくして、処理水窒素濃度を高くすると、膜分離槽22への被処理水の流入量つまり原水と活性汚泥の混合液の流入量が少なくなり、被処理水の流れに沿って配置されている浸漬型膜分離装置23の周囲の活性汚泥濃度の濃淡の勾配が大きくなり、膜分離性能に支障が発生する虞がある。
既に説明したが、膜分離工程の被処理水の流れに沿う下流側でのMLSS濃度が高くなりすぎないように、処理工程全体のMLSS濃度を低くすると、特に、MLSS濃度が低い膜分離工程の上流側で未分解のアンモニア等が膜透過水に流出したり、未分解の難溶性成分や高分子の溶質等に起因する分離膜のファウリングが生じて分離膜が閉塞する。
被処理水の流下方向に長い流路を備え、浸漬型膜分離装置23が被処理水の流下方向に複数台設置された膜分離槽22では、MLSS濃度の流路内の位置による差はより顕著となる。
そのような場合に備えて、本発明による有機性排水の処理装置は、第二返送機構Bを介して膜分離槽22内の被処理水の一部を硝化槽21に返送するように構成されている。
膜分離槽22の最下流側のMLSS濃度をXとすると、膜分離槽22に流入する被処理水のMLSS濃度は、以下の数式3で求まる。Rは硝化液循環比であり、rは内部循環比である。浸漬型膜分離装置23で濾過される膜透過水の流量と原水の流量は略同値を前提としている。
MLSS濃度 = (R+r)/(R+r+1)*X ・・・数式3
数式3によれば、膜分離槽22の上流部に流入するMLSS濃度は、硝化液循環比Rと内部循環比rにより定まり、処理水窒素濃度を上げるために硝化液循環比Rを小さくしても、内部循環比rを大きくすると、膜分離槽22の上流部に流入する被処理水のMLSS濃度と膜分離槽22の下流部から流出する被処理水のMLSS濃度の差の増大を抑制することができることが明らかである。R+rの値を総合循環比という。
つまり、本発明による有機性排水の処理装置によれば、脱窒槽20への硝化液循環比Rを小さな値に設定しても、膜分離槽22で用いられる膜分離装置23のファウリングを回避できるようになる。
総合循環比を調整することにより、膜透過水の窒素濃度(処理水窒素濃度)及び膜分離槽22のMLSS濃度分布がどのように変化するのかについて、硝化対象窒素濃度を30mg/L、膜分離槽22の最下流のMLSS濃度を10,000mg/Lで固定した場合を例に具体的に説明する。
R=3、r=0とする場合
この場合、処理水窒素濃度は7.5mg/L、膜分離槽22の上流部に流入する被処理水のMLSS濃度は7,500mg/Lとなり、膜分離槽22の上流部と下流部でのMLSS濃度分布比は1:1.3に抑えられた状態となる。
R=1、r=0とする場合
処理水窒素濃度を上昇させるために硝化液循環比Rのみ小さくする場合である。この場合、処理水窒素濃度は数式1より15mg/Lに上昇するが、膜分離槽22の上流部に流入する被処理水のMLSS濃度は5,000mg/Lとなり、膜分離槽22の上流部と下流部でのMLSS濃度分布比は1:2となり、被処理水の流下方向に沿う膜分離槽22のMLSS濃度勾配が大きくなりすぎる。また、原水中の未分解成分の膜分離槽22への流入に起因する分離膜のファウリングが発生する虞がある。
R=1、r=2とする場合
処理水窒素濃度を上昇させるために硝化液循環比Rを小さくするとともに、内部循環比rを大きくする場合である。この場合、処理水窒素濃度は15mg/Lに上昇し、膜分離槽22に流入する被処理水のMLSS濃度は7,500mg/Lとなり、膜分離槽22の上流部と下流部でのMLSS濃度分布比は1:1.3となり、被処理水の流下方向に沿う膜分離槽22のMLSS濃度勾配は、〈R=3、r=0とする場合〉と同じにまで抑制できる。
また、他の例として、硝化対象窒素濃度を30mg/L、硝化槽21のMLSS濃度を8,000mg/Lで固定した場合を例に、膜分離槽22のMLSS濃度分布がどのように変化するのか、具体的に説明する。
R=4、r=0とする場合、及びR=1、r=3とする場合
これらの場合、膜分離槽22の上流部の被処理水のMLSS濃度は8,000mg/Lとなり、膜分離槽22の最下流の被処理水のMLSS濃度は10,000mg/Lとなり、膜分離槽22の上流部と下流部でのMLSS濃度分布比は1:1.25に抑えられた状態となる。
R=1、r=0とする場合
この場合、膜分離槽22の最下流の被処理水のMLSS濃度は16,000mg/Lまで上昇し、分離膜への汚泥の堆積に伴い膜分離が停止する虞がある。
尚、処理水窒素濃度については、前例と同様である。
本実施形態のように、平膜形状の精密濾過膜でなる分離膜を採用した膜ユニット24では、MLSS濃度が6,000〜15,000mmg/Lの範囲に維持されることが好ましい。上述したように硝化液循環比Rを小さくしても、内部循環比rを大きくすることにより、処理水窒素濃度を上昇させながらも膜分離槽22のMLSS濃度分布の範囲を好ましい範囲に調整できるのである。
即ち、制御部30は、窒素濃度測定装置33により取得された窒素濃度を指標として、膜透過水の窒素濃度が目標窒素濃度となるように第一返送機構Aを介して返送する被処理水の流量を調整するとともに、膜分離槽22へ流入する被処理水の流量が目標流量となるように第二返送機構Bを介して返送する被処理水の流量を調整するように構成されている。
膜分離槽22内のMLSS濃度分布が上流部と下流部との間で1.5倍を超えると、上流部での未分解成分によるファウリング、または、下流部での活性汚泥の堆積により、膜分離ができなくなる虞がある。よって、数式3から導出される最上流と最下流のMLSS濃度比(R+r+1)/(R+r)を1.5以下とする必要がある。つまり、R+r+1≧3にしなければならない。
また、総合循環比や硝化液循環比の増大は、循環に要するエネルギーの増大や、被処理水中の溶存酸素の脱窒槽20への持ち込みによる脱窒処理不良を招くため、最上流と最下流のMLSS濃度比(R+r+1)/(R+r)を1.2以上とする必要がある。つまり、R+r+1≦6にしなければならない。
以上より本実施形態では、R+r+1の目標値を3〜6の範囲に設定することが好ましい。つまり、窒素濃度を指標として、硝化液循環比Rを調整し、かつR+r+1が上記のような考慮から定めた目標値となるように、内部循環比rを調整するのである。
上述したように、R+r+1の目標値を3〜6に設定する場合、膜分離槽22へ流入する被処理水の流量の目標流量が、処理対象となる有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲であるということになる。
このとき膜分離槽22内の最上流と最下流のMLSS濃度分布比は、1:1.2から1:1.5までの範囲に収めることができ、分離膜のファウリングの発生を抑制できる。また、1:1.2から1:1.5までの範囲のMLSS濃度分布比に対応できる分離膜は、標準的で安価に入手しやすい。さらに、膜分離槽22へ移送する活性汚泥と混合された被処理水の流量の制御範囲が、処理対象の前記有機性排水の流量の3倍以上かつ6倍以下の範囲と比較的広いため、流量制御にあまり困難を伴わない。
同様に、R+r+1の目標値を3〜6の範囲のある値に設定してもよい。つまり、膜分離槽22へ流入する被処理水の流量の目標流量を、処理対象となる有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の一定値としてもよい。MLSS濃度分布比を、使用する分離膜の性能を引き出しやすい値に設定できるため、分離膜のファウリングの発生の抑制をより効果的に行えるからである。
尚、好ましいMLSS濃度比(R+r+1)/(R+r)の範囲は、上述の数値範囲に限るものではなく、膜分離装置23に使用される分離膜の特性により適宜設定可能である。
以下、別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、第二の返送機構Bが膜分離槽22で膜分離処理されずに残った被処理水を硝化槽21の上流に返送するように構成された例を説明したが、第二の返送機構Bは膜分離槽22で膜分離処理されずに残った被処理水を脱窒槽20より後段へ返送するように構成されていればよく、硝化槽21の下流に返送し、或いは膜分離槽22の上流に返送するように構成してもよい。
尚、膜分離槽22の上流に返送するように構成すると、硝化槽21のMLSS濃度が脱窒槽20と同じになるため、硝化槽21の必要酸素量が減り、省エネルギーとなる。
以上説明した有機性排水の処理装置1によって、窒素を含有する有機性排水を、少なくとも脱窒工程、硝化工程、及び浸漬型膜分離装置を使用した膜分離工程の順に活性汚泥と混合された被処理水として生物処理する有機性排水の処理方法が実行される。
詳述すると、膜分離工程を経た被処理水を脱窒工程へ返送する第一返送工程と、膜分離工程を経た被処理水を脱窒工程の後の工程へ返送する第二返送工程と、有機性排水、何れかの被処理水、及び膜分離工程で膜分離した膜透過水の何れかの窒素濃度を指標として、第一返送機構Aを用いた第一返送工程で返送する被処理水の流量、及び第二返送機構Bを用いた第二返送工程で返送する被処理水の流量を調整する返送流量調整工程とを含む有機性排水の処理方法が実行される。
当該返送流量調整工程は、窒素濃度を指標として、膜透過水の窒素濃度が目標窒素濃度となるように第一返送工程で返送する被処理水の流量を調整するとともに、膜分離工程へ流入する被処理水の流量が目標流量となるように第二返送工程で返送する被処理水の流量を調整する工程である。
また、当該目標流量は、処理対象となる有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲に調整され、或いは目標流量は、処理対象の有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲の一定値に調整される。
更に別実施形態を説明する。
上述した何れかの有機性排水処理装置に、膜分離槽22内の被処理水のMLSS濃度を測定するMLSS濃度測定装置をさらに備え、制御部30は、第一の返送機構Aを介して返送される被処理水の流量を、窒素濃度測定装置33により取得された窒素濃度を指標として調整し、第二の返送機構Bを介して返送される被処理水の流量を、MLSS濃度測定装置により取得したMLSS濃度が所定の範囲内となるように、第一の返送機構Aを介して返送される被処理水の流量に応じて調整するように構成することが好ましい。MLSS濃度の目標値は排水の性状や分離膜の仕様に応じて適宜設定すればよい。
上述した実施形態では、膜分離槽22が被処理水の流下方向に沿って膜分離装置23が複数浸漬配置され、第一の返送機構Aが膜分離槽22の下流側から被処理水を脱窒槽20へ返送する返送路を備えている例を説明したが、被処理水の流下方向長さが膜分離槽22の横幅の十倍以上の長い膜分離槽22である場合に特に好適である。
大規模な汚水処理施設では、膜分離槽22内に被処理水が流れる長い流路が確保されている。例えば、細長い形状の押し出し流れ反応タンク躯体構造がそれに当たる。こうした施設において、膜分離槽22内に、処理対象となる有機性排水の流下方向に沿って、浸漬型の膜分離装置23が複数浸漬配置され、第一の返送機構が、膜分離槽22の下流側から被処理水を脱窒槽20へ返送する返送路を備えているため、分離膜のファウリングの問題が抑制されると同時に、窒素除去効率のさらなる向上が見込める。
被処理水の流下方向と交差する方向に沿って膜分離装置23が多段に浸漬配置され、膜分離槽22内でMLSS濃度勾配が大きくなるような膜分離槽22にも本発明を好適に用いることができる。
上述した実施形態では、第一返送機構A及び第二返送機構Bのそれぞれにポンプ26,27を備え、個別の返送路28,29を備えた例を説明したが、第一返送機構A及び第二返送機構Bの構成はこのような態様に制限されるものではない。
例えば、図2に示すように、1台の硝化液循環ポンプ26を膜分離槽22に備え、共通の返送路を三方バルブ36を介して個別の第一返送路28及び第二返送路29に分岐供給するように構成してもよい。
上述した実施形態では、硝化槽21と膜分離槽22は独立して構成された例を説明したが、図3に示すように、硝化槽21と膜分離槽22が一体に構成され、被処理水の上流側が硝化槽21として機能し、下流側が膜分離槽22として機能するように構成してもよい。
図4に示すように、脱窒槽20の上流側に嫌気槽37をさらに備えて原水に含まれるリン成分を除去するように構成してもよい。脱窒槽20に脱窒液循環ポンプ38を設置し、脱窒液循環ポンプ38及び脱窒液循環ポンプ38に接続された第三返送路39を介して、脱窒槽20内の被処理水の一部が嫌気槽37へ返送されるように構成すればよい。
嫌気槽37に流入した原水に含まれるリン化合物が、無酸素状態で微生物により正リン酸として被処理水中に溶解放出される。放出された正リン酸は硝化槽21及び膜分離槽22で好気性微生物に取り込まれ、余剰汚泥として引き抜かれる。
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。また、上述した複数の実施形態の何れかまたは複数を適宜組み合わせてもよい。
1:有機性排水処理装置
20:脱窒槽
20a:撹拌機構
21:硝化槽
22:膜分離槽
23:浸漬型の膜分離装置
24:膜ユニット
25:散気装置(曝気装置)
26:硝化液循環ポンプ
27:内部循環ポンプ
28:第一返送路
29:第二返送路
30:制御部
31:吸引ポンプ
31a:ヘッダー管
32a,32b:流量計
33:窒素濃度測定装置
34:原水流入路
35:放流路
36:三方バルブ
37:嫌気槽
38:脱窒液循環ポンプ
39:第三返送路
A:第一返送機構
B:第二返送機構

Claims (10)

  1. 窒素を含有する有機性排水を、少なくとも脱窒工程、硝化工程、及び浸漬型膜分離装置を使用した膜分離工程の順に活性汚泥と混合された被処理水として生物処理する有機性排水の処理方法であって、
    前記膜分離工程で膜透過水として取り出されずに残った被処理水を前記脱窒工程へ返送する第一返送工程と、
    前記膜分離工程で膜透過水として取り出されずに残った被処理水を前記脱窒工程の後の工程へ返送する第二返送工程と、
    前記有機性排水、何れかの被処理水、及び前記膜分離工程で膜分離した膜透過水の何れかの窒素濃度を指標として、前記第一返送工程で返送する被処理水の流量、及び前記第二返送工程で返送する被処理水の流量を調整する返送流量調整工程を含む有機性排水の処理方法。
  2. 前記返送流量調整工程は、前記窒素濃度を指標として、前記膜透過水の窒素濃度が目標窒素濃度となるように前記第一返送工程で返送する被処理水の流量を調整するとともに、前記膜分離工程へ流入する被処理水の流量が目標流量となるように前記第二返送工程で返送する被処理水の流量を調整する工程である請求項1記載の有機性排水の処理方法。
  3. 前記目標流量は、処理対象となる前記有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲に調整される請求項2記載の有機性排水の処理方法。
  4. 前記目標流量は、処理対象の前記有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲の一定値に調整される請求項2記載の有機性排水の処理方法。
  5. 窒素を含有する有機性排水を、活性汚泥と混合された被処理水として生物処理する少なくとも脱窒槽、硝化槽、及び浸漬型膜分離装置が配設された膜分離槽を備えている有機性排水処理装置であって、
    前記膜分離槽中の被処理水を前記脱窒槽へ返送する第一返送機構と、
    前記膜分離槽中の被処理水を前記脱窒槽より後段へ返送する第二返送機構と、
    前記有機性排水、何れかの被処理水、及び前記浸漬型膜分離装置により取り出される膜透過水の何れかの窒素濃度を測定する窒素濃度測定装置と、
    前記窒素濃度測定装置により取得された窒素濃度を指標として、前記第一返送機構を介して返送する被処理水の流量、及び前記第二返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整する制御部と、
    を備えている有機性排水処理装置。
  6. 前記制御部は、前記窒素濃度測定装置により取得された窒素濃度を指標として、前記膜透過水の窒素濃度が目標窒素濃度となるように前記第一返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整するとともに、前記膜分離槽へ流入する被処理水の流量が目標流量となるように前記第二返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整する請求項5記載の有機性排水処理装置。
  7. 前記目標流量は、処理対象となる前記有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲に調整される請求項6記載の有機性排水処理装置。
  8. 前記目標流量は、処理対象の前記有機性排水の流入量の3倍以上かつ6倍以下の範囲の一定値に調整される請求項6記載の有機性排水処理装置。
  9. 前記膜分離槽内の被処理水のMLSS濃度を測定するMLSS濃度測定装置をさらに備え、
    前記制御部は、前記窒素濃度測定装置により取得された窒素濃度を指標として、前記膜透過水の窒素濃度が目標窒素濃度となるように前記第一返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整するとともに、前記MLSS濃度測定装置により取得されたMLSS濃度が所定の範囲に入るように、前記第一の返送機構を介して返送される被処理水の流量に応じて前記第二返送機構を介して返送する被処理水の流量を調整する請求項5記載の有機性排水処理装置。
  10. 前記膜分離槽は、被処理水の流下方向に沿って前記浸漬型膜分離装置が複数配置され、
    前記第一の返送機構は、前記膜分離槽の下流側の被処理水を前記脱窒槽へ返送する返送路を備えている請求項5から9の何れかに記載の有機性排水処理装置。
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