以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[実施の形態1]
図1はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置の全体の概要を示す構成図である。
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナーを用いて画像を形成する画像出力装置2と、記録媒体の一例としての連続シート5を供給する供給装置3と、画像出力装置2によって画像が形成された連続シート5を収容する収容装置4と、収容装置4の上部にユーザインターフェイス101と共に設けられ、画像出力装置2、供給装置3及び収容装置4を制御する制御装置100とを備えている。なお、図示例の画像形成装置1は、供給装置3、収容装置4及び制御装置100を画像出力装置2の外部に別体として配置したものであるが、画像形成装置1は、画像出力装置2、供給装置3、収容装置4及び制御装置100の少なくとも一部又は全部を一体的に配置したものであっても勿論良い。
画像出力装置2は、画像データに基づいて記録媒体に画像(未定着画像)を形成する画像形成手段の一例としての電子写真方式による画像形成部106を備えている。この画像形成部106は、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されるトナー像をそれぞれ保持して最終的に連続シート5に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の連続シート5を案内する案内装置60とを備えている。また、画像出力装置2は、中間転写装置20の二次転写位置における連続シート5の搬送方向に沿った下流側に、本実施の形態に係る定着装置40を備えている。
この画像出力装置2は、例えば、連続シート5に形成すべき原稿画像を入力する図示しない画像読取部としての画像読取装置を追加して装備させた場合にはカラー複写機として構成することができる。図中の2aは画像出力装置2の筐体を示し、この筐体2aは支持構成部材、外装カバー等で構成されている。
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。これら4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、筐体2aの内部空間において等しい間隔を隔てて一列に並べた状態となるよう配置されている。
各作像装置10は、図2に示されるように、回転する像保持体の一例としての感光体ドラム11を備えており、この感光体ドラム11の周囲に、次のような各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光体ドラム11の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置12と、感光体ドラム11の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する静電潜像形成手段としての露光装置13と、その静電潜像を対応する色の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像手段の一例としての現像装置14と、その各トナー像を中間転写装置20に転写する一次転写装置15と、一次転写後における感光体ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置16と、感光体ドラム11の表面に露光を施して残留した電荷を除去する除電装置17等である。
感光体ドラム11は、接地処理される円筒状又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。この感光体ドラム11は、図示しない回転駆動装置から動力が伝達されて矢印Aで示す方向に回転するように支持されている。
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触した状態で配置される接触型の帯電ロールで構成される。帯電装置12には帯電用電圧が供給される。帯電用電圧としては、現像装置14が反転現像を行うものである場合、その現像装置14から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧又は電流が供給される。なお、帯電装置12としては、感光体ドラム11の表面に非接触状態で配置されるスコロトロン等の非接触型の帯電装置を用いてもよい。
露光装置13は、画像出力装置2に入力される画像の情報に応じて構成される光LBを、帯電された後の感光体ドラム11の周面に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置13には、潜像形成時になると画像出力装置2に任意の手段で入力され、制御装置100内の図示しない画像処理部で処理された画像の情報(信号)が送信される。
現像装置14はいずれも、開口部と現像剤の収容室が形成された筐体の内部に、現像剤を保持して感光体ドラム11と向き合う現像領域まで搬送する現像ロールと、現像剤を撹拌しながら現像ロールに供給するよう搬送する図示しない2つのスクリューオーガー等の撹拌搬送部材と、現像ロールに保持される現像剤の量(層厚)を規制する図示しない層厚規制部材などを配置して構成されたものである。この現像装置14には、その現像ロールと感光体ドラム11の間に現像用のバイアス電圧が図示しない電源装置から供給される。また、現像ロールや撹拌搬送部材は、図示しない回転駆動装置からの動力が伝達されて所要の方向に回転する。上記現像剤としては、例えば、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が使用される。
なお、図1中、符号140(Y,M,C,K)は、対応する現像装置14に供給する少なくともトナーを含む現像剤を収容した現像剤収容容器としてのトナーカートリッジをそれぞれ示している。この実施の形態では、トナーカートリッジ140の内部にトナーのみを収容している。
一次転写装置15は、感光体ドラム11の周面に中間転写ベルト21を介して接触して回転するとともに一次転写用電圧が供給される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。一次転写用電圧としては、トナーの帯電極性と逆の極性を示す直流の電圧が図示しない電源装置から供給される。
ドラム清掃装置16は、一部が開口する図示しない容器状の本体と、一次転写後の感光体ドラム11の周面に所要の圧力で接触するように配置されて残留トナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃板と、清掃板により取り除かれた付着物を回収する回収装置等で構成されている。
除電装置17は、感光体ドラム11の表面に露光を施すことで、感光体ドラム11の表面に残留した電荷を除去するLEDや発光ランプ等で構成されている。
中間転写装置20は、図1及び図2に示されるように、各作像装置10(Y,M,C,K)の下方の位置に存在するように配置される。この中間転写装置20は、感光体ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内周から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数のベルト支持ロール22〜24と、ベルト支持ロール24に支持されている中間転写ベルト21の外周面(像保持面)側に配置されて中間転写ベルト21上のトナー像を連続シート5に二次転写させる二次転写装置30と、二次転写装置30を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するブレード状の清掃部材(クリーニングブレード)26を備えたベルト清掃装置25とで構成されている。
中間転写ベルト21としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボンブラック等の抵抗調整剤などを分散させた材料で製作される無端状のベルトが使用される。また、ベルト支持ロール22は駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール23は張力付与ロールとして構成され、ベルト支持ロール24は二次転写のバックアップロールとして構成されている。
二次転写装置30は、図1に示されるように、中間転写装置20におけるベルト支持ロール24に支持されている中間転写ベルト21の外周面部分である二次転写位置において、中間転写ベルト21の周面に接触して回転するとともに二次転写用電圧が供給される二次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。また、二次転写装置30又は中間転写装置20のベルト支持ロール24には、トナーの帯電極性と逆極性又は同極性を示す直流の電圧が二次転写用電圧として供給される。
案内装置60は、連続シート5の非画像面に接触した状態で回転するよう配置された案内ロールで構成される。案内装置60は、二次転写位置に搬送される連続シート5の位置を規制しつつ案内する。
定着装置40は、表面温度が予め定められた温度に保持されるよう加熱手段によって加熱されるロール形態又はベルト形態の加熱用回転体41と、この加熱用回転体41に所要の圧力で接触して回転するロール形態の加圧用回転体42と、連続シート5の非画像面(裏面)に密着して当該連続シート5を搬送するベルト形態又はロール形態の搬送部材43などを配置して構成したものである。なお、定着装置40の詳細については後述する。
ところで、供給装置3は、図1に示されるように、画像出力装置2の連続シート5の搬送方向に沿った上流側に別体として離間した状態で配置されている。供給装置3は、記録媒体の一例である長尺に連続して形成された連続シート5をロール状に巻き付けた供給ロール61を備える。連続シート5としては、例えば、加熱により変形(収縮又は延伸)するPS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、SBR(スチレン−ブタジエン−ブロックコポリマー)等の合成樹脂からなる厚さ10〜100μm程度の薄いフィルムやシートを挙げることができる。連続シート5は、その全面あるいは一部に画像(背景部の着色等を含む)を形成することにより、例えば、ペットボトル等の被包装物としての包装容器を被覆する包装用フィルムとして用いられる。ただし、連続シート5としては、他の用途に使用するものであっても勿論よい。
連続シート5は、必要に応じて、その表面又は裏面に画像が形成された後、ペットボトル等の包装容器の外周面に巻き付けた状態で固定し、熱風等を当てたり高温環境に置くことで加熱することにより包装容器の外形に倣った形状に変形(収縮)させて、包装容器を被覆する加熱収縮(シュリンク)加工処理がなされる。そのため、連続シート5には、一軸延伸(搬送方向と交差する方向である幅方向などの一方向に延伸)や二軸延伸(幅方向及び搬送方向などの二方向に延伸)処理などが予め施されている。この実施の形態では、連続シート5として一軸延伸(搬送方向と交差する方向である幅方向に延伸)処理された厚さ50μmのPS(ポリスチレン)製フィルムを用いている。この連続シート5は、所要温度の温水に10秒間浸漬することにより、70℃の温水では、縦方向(搬送方向)に−1.0%、横方向(幅方向)に10.5%、80℃の温水では、縦方向に−1.5%、横方向に33.0%、100℃の温水では、縦方向に9.5%、横方向に73.0%それぞれ変形する(シーアイ化成株式会社製の機能フィルム“EPS45TD”の物性表)。ここで、変形率を示す符号のうち、プラスは、連続シート5が収縮することを意味し、マイナスは、連続シート5が延伸することを意味している。上述した値は一例であり、連続シート5の材質や厚さ等に応じて変形率が異なることは勿論である。なお、変形率は、例えば、次の式で求められる。
変形率={((変形前の長さ)−(変形後の長さ))/(変形前の長さ)}×100(%)
供給装置3は、図示しない駆動手段によって時計回りC方向に回転駆動される供給ロール61に加え、供給ロール61の回転に伴って供給される連続シート5に張力を付与する張力付与部62を備える。張力付与部62は、連続シート5を搬送する搬送ロール62a、62bと、これら搬送ロール62a、62bの間において当該搬送ロール62a、62bから離間する方向に弾性力が付与された張力付与ロール62cとから構成されている。
また、画像出力装置2の下流側には、画像出力装置2により画像が形成された連続シート5を収容する収容装置4が、画像出力装置2から離間した位置に別体として配置されている。この収容装置4は、連続シート5に張力を付与する張力付与部65と、図中時計回りC方向に回転可能に配置され連続シート5をロール状に巻き取る巻取ロール66を備えている。張力付与部65は、連続シート5を搬送する搬送ロール65a、65bと、これら搬送ロール65a、65bの間において当該搬送ロール65a、65bから離間する方向に弾性力が付与された張力付与ロール65cとから構成されている。なお、収容装置4の入口部には、必要に応じて連続シート5を裁断する裁断装置67が備えられる。
<画像形成装置の基本的な動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
ここでは、前記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するときの画像形成動作を説明する。なお、連続シート5は、画像形成動作の開始に先立って、供給装置3の供給ロール61から画像出力装置2内の搬送経路を介して収容装置4の巻取ロール66に予め巻き付けた状態とされる。
画像形成装置1は、画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、4つの作像装置10(Y,M,C,K)、中間転写装置20、二次転写装置30、定着装置40等が始動する。
そして、各作像装置10(Y,M,C,K)においては、まず各感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置12が各感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位に帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて発光される光LBを照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
続いて、各現像装置14(Y,M,C,K)が、感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーをそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21に対して順番に重ね合わせるような状態で一次転写させる。
また、一次転写が終了した各作像装置10では、ドラム清掃装置16が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃し、最後に、除電装置17が清掃後の感光体ドラム11の表面を除電する。これにより、各作像装置10は次の作像動作が可能な状態にされる。
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、供給装置3では、作像動作に合わせて供給ロール61から連続シート5を転写時期に合わせて案内装置60を介して二次転写位置に送り出して供給する。なお、連続シート5は、二次転写位置において中間転写ベルト21に接触しているため、中間転写ベルト21の駆動に伴い画像形成前から収容装置4へ向けて搬送される。
二次転写位置においては、二次転写装置30が、中間転写ベルト21上のトナー像を連続シート5に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した後の中間転写装置20では、ベルト清掃装置25が、二次転写後の中間転写ベルト21の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
続いて、トナー像が二次転写された連続シート5は、中間転写ベルト21と二次転写装置30から剥離された後に定着装置40まで搬送される。定着装置40では、回転する加熱用回転体41と加圧用回転体42との間のニップ部に二次転写後の連続シート5を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)を施して未定着のトナー像を連続シート5に定着させる。定着が終了した後の連続シート5は、収容装置4の巻取ロール66に巻き取られる。
以上の動作により、4色のトナー像を組み合わせて形成されるフルカラー画像が形成された連続シート5が出力される。
<定着装置の構成>
図3はこの実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
定着装置40は、大別して、加熱により変形する連続シート5上の未定着トナー像を加熱することにより定着する加熱手段(加熱用回転体)の一例としての加熱ロール41と、連続シート5を加熱ロール41に加圧する加圧手段(加圧用回転体)の一例としての加圧ロール42と、連続シート5の非画像面に密着して当該連続シート5を搬送する無端ベルト状の搬送部材の一例としての搬送ベルト43と、連続シート5の搬送方向に沿って加熱ロール41よりも下流側に配置され、搬送ベルト43を介して連続シート5の非画像面と接触することで当該連続シート5を冷却する冷却手段の一例としてのヒートシンク44とで構成されている。この定着装置40では、加熱ロール41と加圧ロール42が搬送ベルト43を介して接触(圧接)する接触部が連続シート5を加熱する加熱工程を含む所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着処理部N(ニップ部)となる。
加熱ロール41は、図3に示されるように、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等の金属によって円筒形状に形成された芯金部材411と、芯金部材411の表面に予め定められた厚さに被覆されたシリコーンゴム等の耐熱弾性体からなる弾性体層412と、弾性体層412の表面に被覆されたPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等からなる離型層413とから構成されている。また、加熱ロール41は、その内部に当該加熱ロール41の表面を予め定められた温度(例えば、約150℃〜180℃)に加熱する加熱源としての単数又は複数本(図示例では1本)のハロゲンヒータ414を備えている。さらに、加熱ロール41の表面には、必要に応じて、当該加熱ロール41の表面温度を検知して制御するための図示しない温度センサが接触配置される。加熱ロール41は、搬送ベルト43を介して加圧ロール42に従動して回転する。
加圧ロール42は、例えば、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等の金属からなる円筒状又は円柱状ロールからなる。加圧ロール42は、必要に応じて円筒状又は円柱状ロールの外周面にシリコーンゴムからなる図示しない弾性体層を被覆して構成してもよい。加圧ロール42は、定着装置40の図示しないフレームに取り付けられており、図示しない駆動手段により矢印D方向に沿って所要の速度で回転駆動される。また、加圧ロール42は、加熱ロール41に対して図示しない移動手段によって接触及び離間する方向に移動可能に配置されている。加圧ロール42の加熱ロール41に対する加圧力は、所要の値に設定されている。
搬送ベルト43は、その内周から所望の状態に保持して回転自在に支持する加圧ロール42と、複数のベルト支持ロール45,46とによって予め定められた張力(例えば、15kgf)で張り渡されている。搬送ベルト43は、図4に示されるように、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の合成樹脂からなる基材層431と、基材層431の表面に硬化した状態で一様な厚さに被覆された液状エラステックポリマー(信越化学工業株式会社製:商品名“SIFEL”)等からなる弾性層432とを備えている。なお、弾性層432を構成する材料としては、シリコーンゴム等を用いても良い。弾性層432は、搬送ベルト43の基材層431よりも連続シート5に対する密着力が大きく設定されている。弾性層432の密着力は、当該弾性層432を構成する材料、及び弾性層432の表面形状等によって決定される。弾性層432の表面は、鏡面状態に形成されている。加圧ロール42は、搬送ベルト43を駆動する駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール45は搬送ベルト43から連続シート5を剥離させる剥離ロールとして構成され、ベルト支持ロール46は搬送ベルト43に張力を付与する張力付与ロールとして構成される。
更に説明すると、弾性層432の密着力は、摩擦力(静止摩擦力)と粘着力からなる。摩擦力は、弾性層432の表面に働く垂直荷重に比例する。摩擦力を垂直荷重で除した値は、静止時においては静止摩擦係数として定義される。一方、連続シート5の裏面と弾性層432の表面との間には、摩擦力以外にファンデルワールス力などに起因する粘着力が作用する。垂直荷重を減少させながら金属(銅)と合成樹脂(シリコン)を摩擦させたときの摩擦力と垂直荷重の関係を測定すると、垂直荷重がゼロとなっても摩擦力が作用し続ける。このことは、粘着力が静止中だけでなく摩擦中にも作用していることを示している。このような実験から、連続シート5の裏面と弾性層432の表面とが密着する密着力は、摩擦力と粘着力からなり、次の関係式で表すことができる。
F=μ(Fa+Ln)
ここで、Fは密着力、μは係数、Faは粘着力、Lnは垂直荷重である。
このように、本実施の形態における密着力とは、粘着力Faと摩擦力とを加算したものである。
加熱ロール41よりも連続シート5の移動方向に沿った下流側であって、加圧ロール42とベルト支持ロール45との間に張り渡された搬送ベルト43の裏面(内面)には、図3に示されるように、当該搬送ベルト43を介して連続シート5を冷却する冷却手段の一例としてのヒートシンク44が接触した状態で配置されている。ヒートシンク44は、ニップ部Nの出口から所要の距離Lだけ離れた位置からベルト支持ロール45の近傍にわたり、且つ搬送ベルト43の略全幅にわたり存在するよう配置されている。また、搬送ベルト43の冷却効果を高めるため、ヒートシンク44と共に又はヒートシンク44に代えて当該ヒートシンク44を冷却する図示しない送風ファン等からなる送風装置を配置してもよい。
ところで、この実施の形態では、上述したように、連続シート5が加熱により変形(収縮)する特性を有しているため、加熱ロール41を通過する連続シート5を搬送ベルト43に密着させた状態で搬送することにより、加熱ロール41の加熱によって連続シート5に生じる変形力に対抗して密着力を作用させるよう構成している。さらに望ましくは、この定着装置40では、連続シート5の搬送ベルト43に対する密着力が連続シート5に生じる当該連続シート5の表面に沿った方向(幅方向)の変形力より大きくなるよう設定している。
連続シート5の搬送ベルトに対する密着力は、JIS K 7125に規定された「プラスチック‐フィルム及びシート‐摩擦係数試験方法」における試験板に対する0°引き剥がし(剥離)粘着力の測定方法に準じて、次のように測定し評価した。
図5に示されるように、図示しない平板上に固定された搬送ベルト43の表面に位置する弾性層432に、記録媒体として30mm×30mmの正方形状に形成された厚さ50μmのPS(ポリスチレン)製フィルム5を、定着装置40の加熱ロール41と加圧ロール42の加圧力と等しい圧力を付加して密着させた測定装置50を準備した。この測定装置50は、フィルム5の表面にエポキシ樹脂等の接着などによる手段で固定した平板状又はシート状の細長い連結治具51を介して、フィルム5の表面に平行な方向(0°引き剥がし方向)に沿った引っ張り力Fを作用させ、フィルム5を搬送ベルト43表面の弾性層432から引きはがす(剥離する)のに要する力(密着力)を、デジタル方式の応力センサ52(デジタルフォースゲージ)により測定した。フィルム5が搬送ベルト43表面の弾性層432から剥離したときの応力センサ52の読み値(N)を密着力(剥離力)とした。同一の測定を複数回繰り返して、フィルム5が搬送ベルト43表面の弾性層432から剥離するときの密着力の平均値を測定値として求めた。その際、搬送ベルト43表面の温度をそれぞれ40℃、60℃、80℃に変化させた。搬送ベルト43の弾性層432としては、信越化学株式会社製の液状エラステックポリマーである商品名“SIFEL”(2000シリーズ)を弾性層432として塗布硬化させたものを用いた。
図6は上記測定結果を示すグラフである。
このグラフから明らかなように、搬送ベルト43の弾性層432に対するフィルム5の密着力は、搬送ベルト43の表面温度が40℃のとき約39(N)、60℃のとき約36(N)、80℃のとき約26(N)であり、温度の低下とともに密着力が上昇する傾向が見られた。搬送ベルト43の温度が40℃未満の室温に近い温度まで冷却された状態では、搬送ベルト43の弾性層432に対するフィルム5の密着力が約39(N)から図6に破線で示されるように急激に上昇するものと考えられる。
一方、加熱によりフィルム5に生じる変形力(収縮応力)は、厚さ50μm厚のポリスチレン製フィルム(シーアイ株式会社製のEPS45TD)の場合、85℃の熱風中において最大値4.8(N/mm2)(シーアイ株式会社 機能フィルムの物性表)であると報告されている。ここで、フィルム5に生じる変形力(収縮力)FSは、図7に示されるように、フィルム5が加熱されることにより収縮することに伴ってフィルム5の内部に生じる応力である。このことを考慮すると、上記密着力の測定に使用した30mm四方の厚さ50μmのポリスチレン製フィルム5に作用する変形力(収縮力)FSは、4.8(N/mm2)×30mm×0.05mm=7.2Nとなる。この変形力(収縮力)FSは、フィルム5の表面に平行な方向に作用する。
なお、本発明者らは、ポリスチレン製フィルム以外の材質であるポリエチレンテレフタレート製フィルムの加熱(65〜75℃)によって生じる最大収縮応力を、応力測定装置(島津製作所社製:TMA−60)を用いて測定した。その結果、厚さ80μm厚のポリエチレンテレフタレート製フィルムの最大収縮応力は約2.6(N/mm2)、厚さ40μm厚のポリエチレンテレフタレート製フィルムの最大収縮応力は約5.0(N/mm2)、厚さ25μm厚のポリエチレンテレフタレート製フィルムの最大収縮応力は約5.6(N/mm2)であった。このことから、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの加熱による最大収縮応力は、ポリスチレン製フィルムと略同程度の値であることが判る。
その結果、温度が80℃における搬送ベルト43に対するフィルム5の密着力FCである上述した約26(N)と比較すると、測定温度が80℃と85℃であり両者間に5℃の温度差が存在するが、図6に示される特性から、5℃の温度差で搬送ベルト43の弾性層432に対するフィルム5の密着力FCが急激に低下することはないため、連続シートとしてのフィルム5が搬送ベルト43の弾性層432に密着する密着力FCの方がフィルム5に生じる変形力FSより大きい(FC>FS)ことが判る。
したがって、定着装置40では、フィルムからなる連続シート5を搬送ベルト43に密着させて搬送することにより、加熱により連続シート5に生じる変形力に対抗して、当該変形力よりも大きな密着力が連続シート5に対して作用する。
<画像形成装置の特徴部分(定着装置)の動作>
定着装置40では、制御装置100が画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、予め定められたタイミングで定着装置40が始動する。
定着装置40は、画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、加熱ロール41のハロゲンヒータ414に通電され、加熱ロール41の表面温度が所要の温度となるように加熱される。加熱ロール41の表面温度が所要の温度と達すると、加圧ロール42が加熱ロール41に圧接されるとともに、加圧ロール42及び搬送ベルト43の回転駆動が開始される。
図8に示されるように、画像形成装置1の画像形成部106により連続シート5上に形成されたトナー像が定着装置40のニップ部Nに到達すると、連続シート5上の未定着トナー像は、ニップ部Nを通過する際に、加熱ロール41からの熱及び加圧ロール42の加圧力を受けて連続シート5上に定着される。
その際、連続シート5は、定着装置40のニップ部Nに導入されると、加圧ロール42の加圧力により当該加圧ロール42に巻き掛けられた搬送ベルト43の弾性層432の表面に非画像面(裏面)5aが密着する。連続シート5がニップ部Nに位置する間、連続シート5には、加熱に伴う収縮応力が作用する。ところが、連続シート5は、加熱ロール41と加圧ロール42の圧接力によって搬送ベルト43の弾性層432に密着しており物理的に拘束されている。
連続シート5は、ニップ部Nを通過した後、搬送ベルト43とともに当該連続シート5の搬送方向に沿った下流側に所要のベルト移動速度で移動する。連続シート5は、ニップ部Nを通過すると、加熱ロール41からの熱が断たれる。連続シート5は、その厚さが50μmと普通紙に比較して大幅に薄く、かつ熱伝導率も普通紙に比較して大きいため、空気中及び搬送ベルト43側に放熱して温度が急激に低下する。このとき、連続シート5の非画像面5aと搬送ベルト43の弾性層432の表面との間には、図7に示されるように、ニップ部Nを通過した後も密着力FCが継続して作用する。
連続シート5が搬送ベルト43の弾性層432の表面に対して密着する密着力FCは、上述したように温度依存性を有しているが、連続シート5の温度は、ニップ部Nを通過した後は急激に低下する。そのため、連続シート5には、ニップ部Nを通過した後においても、搬送ベルト43の弾性層432の表面に対して、30mm×30mmの面積当たり約10〜30(N)程度の密着力FCが作用している。この密着力FCは、同じ面積当たりの連続シート5に作用する加熱による変形力(収縮力)FSである7.2N(概算値)よりも大きい。したがって、連続シート5は、ニップ部Nを通過した後も、搬送ベルト43の弾性層432の表面に密着した状態を維持し、搬送ベルト43の弾性層432から剥離することがなく、連続シート5の搬送方向に沿った下流側へと搬送ベルト43により搬送される。
連続シート5の搬送方向に沿った下流側には、ヒートシンク44が設けられているため、搬送ベルト43及び当該搬送ベルト43に密着した連続シート5は、ヒートシンク44によって強制的に冷却される。普通紙等の記録媒体に比較すれば熱容量が小さいが、連続して搬送される長尺な連続シート5にトナー像を定着する場合においても、ヒートシンク44を設けることにより、搬送ベルト43が蓄熱することが回避される。
連続シート5は、剥離ロール45により搬送ベルト43から剥離され、トナー画像の定着処理が終了する。
このように、上記実施の形態における定着装置40では、加熱により連続シート5に生じる変形が防止乃至抑制される。
[実施の形態2]
図9は、この発明の実施の形態2に係る定着装置を示すものである。
実施の形態2に係る定着装置40は、図9に示されるように、加熱手段の一例としての加熱ベルトモジュール41Mと、加熱ベルトモジュール41Mに対して接触又は離間可能に配置された加圧手段の一例としての加圧ロール42と、連続シート5の非画像面5aに密着して当該連続シート5を搬送する搬送部材の一例としての無端状の搬送ベルト43とを備えている。加熱ベルトモジュール41Mと加圧ロール42との間には、未定着トナー像を保持した連続シート5を加熱加圧して未定着トナー像を連続シート5に定着させる定着処理部としてのニップ部Nを形成している。
加熱ベルトモジュール41Mは、無端ベルト状に形成された加熱ベルト47と、加熱ベルト47の内周面に接触するように固定した状態で配置され、加熱ベルト47を内側から加圧ロール42に圧接させる加熱ロール41と、加熱ベルト47を張架した状態で回転可能に支持する複数の支持ロール48,49,47a,47bとを備えて構成されている。なお、この実施の形態では、複数の支持ロール48,49,47a,47bのうち一部の支持ロールが加熱ベルト47を加熱する加熱手段としての加熱ロールを兼ねている。
複数の支持ロール48,49,47a,47bは、加熱ベルト47を張架した状態で加熱ベルト47を外側から加熱する外部加熱ロール48と、加熱ベルト47を張架した状態で加熱ベルト47を内側から加熱する内部加熱ロール49と、加熱ベルト47を介して外部加熱ロール48に接触するように配置された第1の従動ロール47aと、加熱ロール41と内部加熱ロール49との間に配置され加熱ベルト47を所望の状態に保持する第2の従動ロール(ニップ前ロール)47bとから構成されている。
加熱ベルト47は、図10に示されるように、可撓性を有する無端状ベルトからなり、例えば、ポリイミド樹脂で形成されたベース(基材)層471と、ベース層471の表面側(外周面側)に積層されたシリコーンゴムからなる弾性体層472と、この弾性体層472の表面に被覆されたPFA(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)からなる離型層473とを備えている。加熱ベルト47の構成は、使用目的や使用条件等の定着装置40に要求される条件に応じて、材質や厚さ、あるいは硬度等を適宜選択することができる。この実施の形態では、カラー画像の画質を向上させる目的で、ベース層471の表面側に弾性体層472を設けている。加熱ベルトモジュール41Mと加圧ロール42が圧接する圧接領域であるニップ部Nは、粉体からなる各色のトナーが積層された連続シート5が通過するため、連続シート5上のトナー像に合わせて加熱ベルト47の弾性体層472が変形することにより、トナー像の全体に熱を供給することが可能となる。
また、外部加熱ロール48は、例えば、アルミニウムやステンレスあるいは鉄で形成された円筒状の芯金部材481を備えている。外部加熱ロール48の表面には、シリコーンゴム等の耐熱弾性体からなる弾性体層482とフッ素樹脂からなる離型層483が形成されている。そして、内部に配置された加熱源としての例えば単数又は複数本のハロゲンヒータ484により、外部加熱ロール48は、その表面が予め定められた温度(例えば、190℃)に加熱される。また、外部加熱ロール48の軸方向に沿った両端部には、加熱ベルト47を内側に押圧する図示しないバネ部材が配置され、加熱ベルト47全体の張力を例えば15kgfに設定している。
内部加熱ロール49は、例えば、アルミニウムやステンレスあるいは鉄で形成された円筒状の芯金部材491を備えている。内部加熱ロール49の表面には、シリコーンゴム等の耐熱弾性体からなる弾性体層492とフッ素樹脂からなる離型層493が形成されている。内部加熱ロール49は、内部に配置された加熱源として例えば単数又は複数本のハロゲンヒータ494により、その表面が予め定められた温度(例えば、190℃)に加熱される。また、内部加熱ロール49には、加熱ベルト47の蛇行を制御する蛇行制御手段としての図示しない蛇行制御装置が設けられている。蛇行制御装置は、加熱ベルト47の幅方向に沿った端部の位置を検知する図示しない検知手段(端部センサ)を備え、検知手段によって検知された加熱ベルト47の端部位置の情報に基づいて内部加熱ロール49の軸方向に沿った一方の端部を軸方向と交差する方向に移動させることにより、加熱ベルト47の蛇行を制御するものである。
なお、この実施の形態では、加熱ロール41と、外部加熱ロール48と、内部加熱ロール49とによって加熱ベルト47を加熱するように構成したが、これに限定されるものではなく、加熱ベルト47を加熱する加熱ロールの数は、任意に設定することが可能である。
このように、加熱ベルト47は、無端ベルト状に形成された部材であり、ロール状の加熱部材に比べて熱容量が小さく、加熱ロール41、外部加熱ロール48及び内部加熱ロール49を通過する間にその表面温度が予め定められた温度まで加熱される。そのため、連続シート5の搬送速度が速い高速機においても、加熱ベルト47が1周する間に当該加熱ベルト47の温度を定着温度まで復帰させることが可能となる。また、加熱ロール41、外部加熱ロール48及び内部加熱ロール49は、加熱ベルト47と広い面積(大きな巻き付け角度)で接触するように配置されており、加熱ベルト47の内周面及び外周面は、効率良く加熱される。
[実施の形態3]
図11は、実施の形態3に係る定着装置を示すものである。
実施の形態3に係る定着装置40は、図11に示されるように、加熱手段が加熱ロール又は加熱ベルトからなる接触方式ではなく、加熱手段の一例としてのレーザ光やフラッシュ光などの光線IRを照射することにより加熱を行う非接触方式の加熱源410を用いている。
また、この定着装置40では、連続シート5を搬送ベルト43に密着させるため、加熱源410よりも連続シート5の搬送方向に沿った上流側に加圧ロール42に圧接する補助加圧ロール420を備えている。
この実施の形態3では、連続シート5が透明フィルムである場合、連続シート5上のトナー像を選択的に加熱することができるため、連続シート5自体の温度上昇を抑制することができ、連続シート5と搬送ベルト43の温度上昇に伴う密着力FCの低下が抑制される。
[実施の形態4]
図12は、実施の形態4に係る定着装置を示すものである。
実施の形態4に係る定着装置40は、図12に示されるように、加圧ロール42の下方であって、連続シート5の搬送方向に沿った上流側に連続シート5を加圧ロール42に圧接する補助搬送ロール61を配置することで、補助加圧ロールを不要としており、定着装置40の構成が簡略化されている。
[実施の形態5]
図13は、実施の形態5に係る定着装置を示すものである。
実施の形態5に係る定着装置40は、図13に示されるように、搬送部材として無端状のベルトではなく円筒状の搬送ロール430を用いている。搬送ロール430は、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等の金属によって円筒形状に形成された芯金部材431と、芯金部材431の表面に予め定められた厚さに被覆された弾性体層432を備えている。搬送ロール430の弾性体層432としては、信越化学株式会社製の液状エラステックポリマーである商品名“SIFEL”(2000シリーズ)を塗布硬化させたものを用いている。
連続シート5は、搬送ロール430に折り返すように巻き付けられている。搬送ロール430は、搬送ベルトに比較して熱容量が大きく、搬送ロール430には、加熱ロール41が接触しているため、搬送ロール430を強制的に冷却する冷却効果の高い冷却ファン等の空冷手段440を備えている。
この実施の形態では、搬送部材が搬送ロール430からなり、定着装置40が小型となる。