JP2016138311A - 窒化チタンアルミニウム皮膜、硬質皮膜被覆工具、及びそれらの製造方法 - Google Patents

窒化チタンアルミニウム皮膜、硬質皮膜被覆工具、及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性及び耐熱性に優れた窒化チタンアルミニウム皮膜、硬質皮膜被覆工具、及びそれらの製造方法の提供。
【解決手段】基体上に化学蒸着法により形成された窒化チタンアルミニウム層は、(Tix1Aly1)N[但し、x1及びy1は各々原子比でx1=0.05〜0.15、及びy1=0.95〜0.85を満たす数]で表される組成を有するhcp構造のTiAlNマトリックスに、(Tix2Aly2)N[但し、x2及びy2は各々原子比でx2=0.15〜0.4、及びy2=0.85〜0.6を満たす数)で表される組成を有するとともにhcp構造とfcc構造とが混在した繊維状TiAlN粒子が分散してなる窒化チタンアルミニウム皮膜。繊維状TiAlN粒子の平均横断面径が50nm以下であり、膜厚が1〜15μmであるチタンアルミニウム皮膜。
【選択図】図2

Description

本発明は、耐摩耗性及び耐熱性に優れた窒化チタンアルミニウム皮膜、硬質皮膜被覆工具、及びそれらの製造方法に関する。
従来から耐熱合金鋼やステンレス鋼等の切削加工には、基体表面にTiAlN皮膜、TiC皮膜、TiN皮膜、Ti(CN)皮膜、及びAl2O3皮膜等を単層又は複層に被覆した切削工具が用いられている。このような硬質皮膜被覆工具は益々過酷な条件で使われるようになっている。例えば、被削材がステンレス鋼やNi基耐熱合金の場合、切削加工中に被削材が加工硬化して切削工具が切削加工の初期に破壊してしまう問題がある。また、切削熱により切削工具の刃部が高温になり、刃部の硬質皮膜の結晶構造が変化して硬度が低下し、摩耗が顕著に進行するという問題もある。このような問題を解消するために、更に耐摩耗性及び耐熱性に優れた硬質皮膜を有する切削工具が望まれている。
特開2001-341008号(特許文献1)は、原料ガスとしてチタンのハロゲン化ガス、アルミニウムのハロゲン化ガス及びNH3ガスを用い、WC基超硬合金基体の表面に、700〜900℃で熱CVD法により0.01〜2質量%の塩素を含むfcc構造の窒化チタンアルミニウム皮膜を形成した被覆切削工具を開示している。しかし、特許文献1の窒化チタンアルミニウム皮膜は準安定なfcc構造のため、高温で使用した場合に結晶構造が安定なhcp構造に変態して硬度(耐摩耗性)が大きく低下し、短寿命であることが分った。
特表2008-545063号(特許文献2)は、基体の表面に熱CVD法により組成がTi1-xAlxN(ただし、xは0.75<x≦0.93を満たす化学量論係数である。)で表わされ、格子定数が0.412〜0.405nmのfcc構造を有する窒化チタンアルミニウム皮膜、又は窒化チタンアルミニウムを主要相として別の相も有する多相の皮膜を有する硬質皮膜被覆工具を開示している。しかし、特許文献2の被覆工具も、特許文献1の被覆切削工具と同様に、fcc構造を有する窒化チタンアルミニウム相が高温でhcp構造に変態して硬度が大きく低下し、もって耐摩耗性及び耐熱性が不十分であることが分った。
特開2014-129562号(特許文献3)は、図12に示すCVD装置100を使用して製造した多層構造の窒化チタンアルミニウム皮膜被覆工具を開示している。CVD装置100は、基体102を保持する治具103と、治具103をカバーする反応容器104と、反応容器104を囲む調温装置105と、2つの導入口106、107を有する導入管108と、排気口110を有する排気管109とを具備する。この窒化チタンアルミニウム皮膜はWC基超硬合金基体の表面にTiAlN、AlN又はTiNの硬質粒子からなる第一単位層と第二単位層とが積層された構造を有する。これは、(1) 導入管8から炉内に二種類の原料ガスが正反対の方向(180°)に噴出され、かつ(2) 第2混合ガス中のNH3ガスの含有量が0.09 mol/minと非常に少ないために、原料ガスの反応速度が非常に遅いためである。積層構造を有する窒化チタンアルミニウム皮膜は、層間の組成差による熱膨張係数差により高温での使用時に層間剥離が生じ、短寿命である。
特開2001-341008号公報 特表2008-545063号公報 特開2014-129562号公報
従って、本発明の第一の目的は、優れた耐摩耗性及び耐熱性を有する長寿命の窒化チタンアルミニウム皮膜を提供することである。
本発明の第二の目的は、かかる窒化チタンアルミニウム皮膜を有する硬質皮膜被覆工具を提供することである。
本発明の第三の目的は、かかる窒化チタンアルミニウム皮膜及び硬質皮膜被覆工具を製造する方法を提供することである。
本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜は化学蒸着法により形成されたもので、(Tix1Aly1)N(ただし、x1及びy1はそれぞれ原子比でx1=0.05〜0.15、及びy1=0.95〜0.85を満たす数字である。)で表される組成を有するhcp構造のTiAlNマトリックスに、(Tix2Aly2)N(ただし、x2及びy2はそれぞれ原子比でx2=0.15〜0.4、及びy2=0.85〜0.6を満たす数字である。)で表される組成を有するとともにhcp構造とfcc構造とが混在した繊維状TiAlN粒子が分散してなることを特徴とする。
本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の等価X線回折強度比TC(002)は1.3以上であるのが好ましい。
実用性の観点から、繊維状TiAlN粒子の平均横断面径は50 nm以下であるのが好ましい。
実用性の観点から、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の膜厚は1〜15μmであるのが好ましい。
本発明の硬質皮膜被覆工具は、基体上に化学蒸着法により窒化チタンアルミニウム皮膜を形成してなり、前記窒化チタンアルミニウム皮膜は、(Tix1Aly1)N(ただし、x1及びy1はそれぞれ原子比でx1=0.05〜0.15、及びy1=0.95〜0.85を満たす数字である。)で表される組成を有するhcp構造のTiAlNマトリックスに、(Tix2Aly2)N(ただし、x2及びy2はそれぞれ原子比でx2=0.15〜0.4、及びy2=0.85〜0.6を満たす数字である。)で表される組成を有するとともにhcp構造とfcc構造とが混在した繊維状TiAlN粒子が分散してなることを特徴とする。
本発明の硬質皮膜被覆工具において、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の等価X線回折強度比TC(002)は1.3以上であるのが好ましい。
本発明の硬質皮膜被覆工具において、繊維状TiAlN粒子の平均横断面径は50 nm以下であるのが好ましい。繊維状TiAlN粒子の平均断面径が1〜50 nmの範囲内であると、繊維状TiAlN粒子が高温でhcp構造に変態しても硬度低下が抑制され、硬質皮膜の耐摩耗性が維持される。
本発明の硬質皮膜被覆工具において、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の膜厚は1〜15μmであるのが好ましい。前記膜厚が1〜15μmの範囲内であると、切削加工時の前記皮膜の破壊が抑制され、長寿命になる。なお、硬質皮膜及びそれを構成する各層は完全に平坦ではないので、単に「膜厚」と呼ぶ場合でも「平均厚さ」を意味する。
本発明の硬質皮膜被覆工具において、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の下層として、柱状結晶組織を有する炭窒化チタン皮膜を有するのが好ましい。かかる構成により、さらに耐摩耗性が向上して長寿命化する。
窒化チタンアルミニウム皮膜を化学蒸着法により形成する本発明の方法は、(1) 原料ガスとして、TiCl4ガス、AlCl3ガス、及びH2ガスからなる混合ガスAと、NH3ガス、N2ガス及びH2ガスからなる混合ガスBとを使用し、(2) 30〜90°ずれて配置された第一及び第二のノズルから別々に前記混合ガスA及び前記混合ガスBを吹き出し、かつ(3) 前記第一及び第二のノズルを3〜10回転/分の速度で回転させることを特徴とする。
窒化チタンアルミニウム皮膜を有する硬質皮膜被覆工具を化学蒸着法により製造する本発明の方法は、(1) 原料ガスとして、TiCl4ガス、AlCl3ガス、及びH2ガスからなる混合ガスAと、NH3ガス、N2ガス及びH2ガスからなる混合ガスBとを使用し、(2) 30〜90°ずれて配置された第一及び第二のノズルから別々に前記混合ガスA及び前記混合ガスBを工具基体上に吹き出し、かつ(3) 前記第一及び第二のノズルを3〜10回転/分の速度で回転させることを特徴とする。
前記混合ガスA及びBの合計を100体積%として、前記混合ガスAの組成を0.1〜0.5体積%のTiCl4ガス、1〜4体積%のAlCl3ガス、及び残部H2ガスとし、前記混合ガスBの組成を3〜6体積%のNH3ガス、25体積%以下のN2ガス、及び残部H2ガスとするのが好ましい。
前記混合ガスAはさらに15体積%以下のN2ガスを含有しても良い。
本発明の製造方法において、反応圧力は2〜5 kPaであり、反応温度は800〜950℃であるのが好ましい。
本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜は、hcp構造のTiAlNマトリックス内に、hcp構造とfcc構造とが混在した繊維状TiAlN粒子が分散したミクロ組織を有するので、切削加工時に工具刃先部が高温になってもfcc構造からhcp構造への相変態が抑制され、もって顕著に優れた耐摩耗性及び耐熱性を発揮することができる。
実施例1の硬質皮膜被覆工具の断面を示すTEM写真(倍率40,000倍)である。 図1のA部を拡大したTEM写真(倍率400,000倍)である。 図2のB部を拡大したTEM写真(倍率2,000,000倍)である。 実施例1の硬質皮膜被覆工具の硬質皮膜のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例1の窒化チタンアルミニウム層におけるTiAlNマトリックス(図3のC部)のナノビーム回析(NAD)を示す写真である。 実施例1の窒化チタンアルミニウム層における繊維状TiAlN粒子(図3のD部)のナノビーム回析(NAD)を示す写真である。 ミーリング用インサートの平面形状及び側面形状を示す概略図である。 図7のインサートを装着する刃先交換式回転工具を示す概略図である。 本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の形成に使用し得る化学蒸着装置(CVD炉)の一例を示す模式図である。 第一及び第二のパイプを具備する一体的なパイプ集合体の一例を示す横断面図である。 第一及び第二のパイプを具備する一体的なパイプ集合体の別の例を示す横断面図である。 第一及び第二のパイプを具備する一体的なパイプ集合体のさらに別の例を示す横断面図である。 第一及び第二のパイプを具備する一体的なパイプ集合体のさらに別の例を示す横断面図である。 第一及び第二のパイプを具備するパイプ組立体の一例を示す横断面図である。 特開2014-129562号に記載の装置と同じ方向に原料ガス噴出ノズルを有する一体的なパイプ集合体を示す横断面図である。 特開2014-129562号に記載のCVD装置を示す概略図である。
[1] 硬質皮膜被覆工具
本発明の硬質皮膜被覆工具は、基体上に化学蒸着法により窒化チタンアルミニウム皮膜を形成したもので、前記窒化チタンアルミニウム皮膜は、(Tix1Aly1)N(ただし、x1及びy1はそれぞれ原子比でx1=0.05〜0.15、及びy1=0.95〜0.85を満たす数字である。)で表される組成を有するhcp構造のTiAlNマトリックスに、(Tix2Aly2)N(ただし、x2及びy2はそれぞれ原子比でx2=0.15〜0.4、及びy2=0.85〜0.6を満たす数字である。)で表される組成を有するとともにhcp構造とfcc構造とが混在した繊維状TiAlN粒子が分散したミクロ組織を有する。
(A) 基体
基体は化学蒸着法を適用できる高耐熱性の材質である必要があり、例えばWC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、工具鋼又は立方晶窒化ホウ素を主成分とする窒化ホウ素焼結体(cBN)、サイアロンのようなセラミックス等が挙げられる。強度、硬度、耐摩耗性、靱性及び熱安定性の観点から、WC基超硬合金、サーメット及びセラミックスが好ましい。例えばWC基超硬合金の場合、焼結したままの未加工面にも本発明の窒化チタンアルニニウム皮膜を形成できるが、工具の寸法精度を高めるために加工面(研磨加工面及び刃先処理加工面)に形成するのが好ましい。
(B) 窒化チタンアルミニウム層
(1) 組成
化学蒸着法により基体上に形成される本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜は、Ti及びAlを必須成分とする窒化物からなる。本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の組成を一般式:Ti1-xAlxN(ただし、1-x及びxはそれぞれTi及びAlの原子比である。)で表したとき、1-xは0.1〜0.5であり、xは0.9〜0.5であるのが好ましい。上記組成範囲外では本発明のミクロ組織が得られない。Nの30原子%以下をC又はBで置換しても良い。本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜は、不可避的不純物としてCaを含有しても良いが、Ca含有量は0.4原子%以下が好ましく、0.3原子%以下がより好ましい。なお、窒化チタンアルミニウム皮膜の組成はEPMAにより測定することができる。
(i) TiAlNマトリックスの組成
TiAlNマトリックスは、一般式:(Tix1Aly1)N(ただし、x1及びy1はそれぞれ原子比でx1=0.05〜0.15、及びy1=0.95〜0.85を満たす数字である。)で表される組成を有する。Tiの割合x1が0.05未満では硬度が低すぎて耐摩耗性に劣り、また0.15超ではTiAlNマトリックスがfcc構造及びhcp構造の混合構造になり、高温使用時の硬度(耐摩耗性)が低下する。
(ii) 繊維状TiAlN粒子の組成
繊維状TiAlN粒子は、一般式:(Tix2Aly2)N(ただし、x2及びy2はそれぞれ原子比でx2=0.15〜0.4、及びy2=0.85〜0.6を満たす数字である。)で表される組成を有する。Tiの割合x2が0.15未満ではhcp構造になり、硬度(耐摩耗性)が大きく低下する。また、Tiの割合x2が0.4超ではfcc構造になり、高温使用時にfcc構造からhcp構造へ変態して硬度(耐摩耗性)が大きく低下する。繊維状TiAlN粒子のTiの割合x2及びN含有量はそれぞれTiAlNマトリックスのTiの割合x1及びN含有量より高い。繊維状TiAlN粒子の組成は後述するEPMA及びEDSの測定結果に基づき求めることができる。
(2) 結晶構造
図2から明らかなように、hcp構造とfcc構造とが混在した高Al含有量の窒化チタンアルミニウムからなる灰色ないし黒色の繊維状TiAlN粒子は、hcp構造を有する高Al含有量の窒化チタンアルミニウムからなる薄い灰色のTiAlNマトリックス中に分散している。繊維状TiAlN粒子はhcp構造及びfcc構造を有するが、これらの比率を定量化するのは難しい。
本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜が従来の窒化チタンアルミニウム皮膜より高性能になる理由は必ずしも明確ではないが、TiAlNマトリックスに分散した繊維状TiAlN粒子によるいわゆる「繊維強化メカニズム」により、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜が強化されているものと考えられる。このような繊維強化メカニズムを有するミクロ組織は、従来の窒化チタンアルミニウム皮膜には存在しない。繊維強化メカニズムが発揮される本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜は、従来の窒化チタンアルミニウム皮膜より非常に大きな高温硬さを有するので、耐摩耗性に優れている。また、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜はAl含有量が多いので皮膜の酸化が起きにくく、耐熱性にも優れている。TiAlNマトリックス及び繊維状TiAlN粒子の結晶構造は、ナノビーム回折の測定結果(図5及び図6)に基づき求めることができる。
(3) 平均横断面径
繊維状TiAlN粒子の「平均横断面径」は、例えば図3に示すように基体表面に平行な皮膜面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(倍率:2,000,000倍)で確認できる繊維状TiAlN粒子の最大直径を測定し、算術平均することにより求めた。繊維状TiAlN粒子の平均横断面径が50 nm以下であると、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の硬度が高くなるだけでなく、高温で繊維状TiAlN粒子中のfcc構造がhcp構造に相変態しても皮膜硬度の低下が少なくなり、耐摩耗性がより高くなる。平均横断面径が50 nmを超えるとfcc構造の体積増加により高温での相変態により皮膜硬度(耐摩耗性)の低下率が大きくなる。なお、繊維状TiAlN粒子の平均横断面径の下限は特に限定されないが、1nm未満の繊維状TiAlN粒子は繊維強化効果が小さすぎる。
(4) 等価X線回折強度比
本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の等価X線回折強度比TC(002)は、1.3以上であるのが好ましく、1.3〜4.5であるのがより好ましく、2.0〜3.5であるのが特に好ましい。TC(002)を1.3以上に制御することにより、窒化チタンアルミニウム皮膜の結晶粒が基体に垂直に成長し、結晶粒の粗大化が抑制される。繊維状TiAlN粒子も基体に垂直に成長するため、窒化チタンアルミニウム皮膜の耐摩耗性が向上し、長寿命化する。TC(002)が1.3未満では窒化チタンアルミニウム皮膜の結晶粒及び繊維状TiAlN粒子が粗大化し、耐摩耗性が大きく低下する。なお、TC(002)が4.5を超えると、窒化チタンアルミニウム皮膜の結晶粒が微細化されすぎて結晶粒界が増加するため、皮膜の耐熱性は低下するおそれがある。
(5) 膜厚
基体からの剥離を抑制するとともに優れた耐摩耗性及び耐酸化性を発揮するために、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の膜厚は1〜15μmが好ましく、2〜12μmがより好ましい。膜厚が1μm未満では皮膜の効果が十分に得られない。膜厚が15μmを超えると皮膜が厚くなり過ぎて皮膜内部にクラックが発生するおそれがある。窒化チタンアルミニウム層の膜厚は成膜時間により適宜制御することができる。
(6) 硬さ
ナノインデンテーション(押込み)法により測定した本発明の硬質皮膜の硬さは27〜32 GPaであるのが好ましい。硬さが、27 GPa未満では耐摩耗性に劣り、32 GPa超では窒化チタンアルミニウム皮膜中のfcc構造の占める割合が増大して、高温でhcp構造への相変態が多く発生し、耐摩耗性が悪化する。
(C) 下層
特に限定されないが、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の下層として、柱状結晶組織を有するTi(CN)皮膜、TiN皮膜又はTiZr(CN)皮膜を化学蒸着法により設けるのが好ましい。柱状結晶組織を有する耐摩耗性に優れたTi(CN)皮膜は高温で酸化しやすく耐熱性が低いが、その上に窒化チタンアルミニウム皮膜を形成すると、耐熱性の問題が解消される。
化学蒸着法により柱状結晶組織を有するTi(CN)皮膜を成膜する温度は、750〜950℃と窒化チタンアルミニウム皮膜の成膜温度と非常に近いため、工業生産性が高い。窒化チタンアルミニウム皮膜とTi(CN)皮膜との間に、密着性を高める中間層を設けても良い。中間層としてTiN皮膜又はTiAl(CN)皮膜が好ましい。
(d)上層
特に限定されないが、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の上層として、Ti、Al、Cr、B及びZrからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素と、C、N及びOからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素とを必須とする単層又は多層の硬質皮膜を化学蒸着法により設けても良い。。上層としては、例えばTiC皮膜、CrC皮膜、SiC皮膜、VC皮膜、ZrC皮膜、TiN皮膜、AlN皮膜、CrN皮膜、Si3N4皮膜、VN皮膜、ZrN皮膜、Ti(CN)皮膜、(TiSi)N皮膜、Ti(BN)皮膜、TiZrN皮膜、TiAl(CN)皮膜、TiSi(CN)皮膜、TiCr(CN)皮膜、TiZr(CN)皮膜、Ti(CNO)皮膜、TiAl(CNO)皮膜、Ti(CO)皮膜、及びTiB2皮膜等の単層又は積層の皮膜が挙げられる。
[2] 化学蒸着装置
図9に示すように、化学蒸着装置(CVD炉)1は、チャンバー2と、チャンバー2の壁内に設けられたヒータ3と、チャンバー2内で回転する複数の棚(治具)4,4と、棚4,4を覆う反応容器5と、棚4,4の中央開口部4aを垂直に貫通する第一及び第二のパイプ11,12と、各パイプ11,12に設けられた複数のノズル11a,12aとを具備する。多数のインサート基体20が載置された棚4,4は、チャンバー2内で回転する。第一のパイプ11と第二のパイプ12は、一体的に回転し得るようにチャンバー2の底部を貫通し、回転自在に外部の配管(図示せず)に接続されている。チャンバー2の底部には、第一及び第二のパイプ11,12から噴出した原料ガスのうちのキャリアガス及び未反応ガスを排出するためのパイプ13を有する。
[3] 製造方法
本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜は、熱化学蒸着装置又はプラズマ支援化学蒸着装置(単に「CVD炉」と言う。)を用いた化学蒸着法により形成することができる。以下、熱化学蒸着法の場合を例にとって本発明を説明するが、勿論本発明はそれに限定されず、他の化学蒸着法にも適用できる。
(A) 下層(炭窒化チタン皮膜)の形成
基体をセットしたCVD炉内にH2ガス、N2ガス及び/又はArガスを流し、成膜温度まで昇温した後、TiCl4ガス、N2ガス、CH3CNガス又はCH3CNガスとC2H6ガス、及びH2ガスからなる原料ガスをCVD炉内に流し、下層の炭窒化チタン皮膜を形成する。
(1) l-Ti(CN)皮膜用の原料ガス
l-Ti(CN)皮膜用の原料ガス組成は、合計を100体積%として、0.8〜3体積のTiCl4ガス、10〜30体積%のN2ガス、0.1〜1.2体積%のCH3CNガス、及び残部H2ガスからなるのが好ましい。TiCl4ガス、N2ガス、CH3CNガス及びH2ガスの含有量が上記範囲外であると、得られる炭窒化チタン皮膜中の炭素濃度が高すぎたり、柱状結晶粒が粗大化して上層の窒化チタンアルミニウム皮膜との密着力が低下する。
(2) 平均横断面径が0.01〜0.2μmの微細柱状多結晶体からなるTi(CN)皮膜用の原料ガス
合計を100体積%として、1〜3体積のTiCl4ガス、10〜30体積%のN2ガス、0.2〜2体積%のCH3CNガス、0.5〜2.5体積%のC2H6ガス、及び残部H2ガスからなるのが好ましい。TiCl4ガス、N2ガス、CH3CNガス、C2H6ガス及びH2ガスの含有量が上記範囲外であると、得られる炭窒化チタン皮膜中の炭素濃度が高すぎたり、平均横断面径が0.2μm超になり、高性能な硬質皮膜被覆工具が得られない。
(B) 窒化チタンアルミニウム皮膜の形成
(1) 窒化チタンアルミニウム皮膜の原料ガス
窒化チタンアルミニウム皮膜を形成する原料ガスとして、TiCl4ガス、AlCl3ガス、及びH2ガスからなる混合ガスAと、NH3ガス、N2ガス及びH2ガスからなる混合ガスBとを使用する。TiCl4ガス、AlCl3ガス、NH3ガス、N2ガス及びH2ガスの合計を100体積%として、混合ガスAの組成は0.1〜0.5体積%のTiCl4ガス、1〜4体積%のAlCl3ガス、及び残部H2ガスからなるのが好ましく、混合ガスBの組成は3〜6体積%のNH3ガス、25体積%以下のN2ガス、及び残部H2ガスからなるのが好ましい。混合ガスAはさらに15体積%以下のN2ガスを含有しても良い。混合ガスA、Bにおいて、キャリアガスであるH2ガスをArガスで代替しても良い。混合ガスAの組成は、0.2〜0.3体積%のTiCl4ガス、1〜3体積%のAlCl3ガス、及び残部H2ガスからなるのがより好ましい。また混合ガスBの組成は、4〜6体積%のNH3ガス、25体積%以下のN2ガス、及び残部H2ガスからなるのがより好ましい。
(a) 混合ガスA
TiCl4ガスが0.1体積%未満であると混合ガスA中のAlが過多となり、繊維状TiAlN粒子が析出しない。一方、TiCl4ガスが0.5体積%を超えると窒化チタンアルミニウム皮膜のfcc構造が過多になり、高温でのfcc構造からhcp構造への変態により、皮膜の耐摩耗性は低下する。
AlCl3ガスが1体積%未満であると窒化チタンアルミニウム皮膜中のfcc構造が過多になり、またAlCl3ガスが4体積%を超えると、混合ガスA中のAlが過多になって繊維状TiAlN粒子が析出しない。
N2ガスが15体積%超であると、原料ガスの反応速度が変わり、炉内に載置された基体上に形成される窒化チタンアルミニウム皮膜の膜厚分布が悪くなる。
(b) 混合ガスB
混合ガスBにおいて、NH3ガスが3体積%未満であると、反応速度が著しく遅くなる。一方、NH3ガスが6体積%を超えると、窒化チタンアルミニウム皮膜中のfcc構造が過多になる。
N2ガスが25体積%超であると、原料ガスの反応速度が変わり、炉内に載置された基体上に形成される窒化チタンアルミニウム皮膜の膜厚分布が悪くなる。
(2) 原料ガスの導入方法
反応性の高い混合ガスA及び混合ガスBの混合により反応速度を制御し、hcp構造のTiAlNマトリックス内にhcp構造とfcc構造とが混在した繊維状TiAlN粒子が分散したミクロ組織を形成するために、混合ガスA及び混合ガスBをCVD炉1内に非接触の状態で送入しなければならない。このために、図9に示すようにパイプ11,12を具備するCVD炉1を用いる。
混合ガスA及び混合ガスBを別々にCVD炉1内に導入するにあたり、ノズルから噴出される混合ガスA,Bの流れを阻害しないように、混合ガスA,Bを噴出する第一及び第二のノズル11a,12aの中心角を30〜90°に設定する必要がある。両ノズル11a,12aの中心角が90°を超えると、上記ミクロ組織を有する窒化チタンアルミニウム皮膜が得られない。一方、中心角が30°未満では混合ガスA及び混合ガスBの反応が急速に進みすぎ、やはり上記ミクロ組織を有する窒化チタンアルミニウム皮膜が得られない。
混合ガスA,Bを導入するノズル11a,12aは、3〜10回転/分の速度で回転する必要がある。第一及び第二のノズル11a,12aの回転方向は限定的でない。第一及び第二のノズル11a,12aの回転速度が3回転/分未満であると、第一及び第二のノズル11a,12aから別々に噴出された混合ガスAと混合ガスBが接触するまでに時間がかかりすぎ、上記ミクロ組織を有する窒化チタンアルミニウム皮膜が得られない。一方、第一及び第二のノズル11a,12aの回転速度が10回転/分超であると、第一及び第二のノズル11a,12aから別々に噴出された混合ガスAと混合ガスBが短時間で接触してしまうので、やはり上記ミクロ組織を有する窒化チタンアルミニウム皮膜が得られない。
図10(a) は混合ガスA及び混合ガスBをCVD炉1内に非接触の状態で導入する一体的なパイプ集合体30を示す。このパイプ集合体30では、一本の円柱体10に、2本の第一のパイプ11,11と2本の第二のパイプ12,12とが交互に90°ずれて軸線方向に延在している。すなわち、一対の第一のパイプ11,11は中心Oを通る第一の直径D1上に(180°の角度で)配置されており、一対の第二のパイプ12,12は中心Oを通る第二の直径D2上に(180°の角度で)配置されており、第一の直径D1と第二の直径D2は直交している。各第一のパイプ11の複数の第一のノズル11a,11aは第一の直径D1に沿って外方に向いており、各第二のパイプ12の複数の第二のノズル12a,12aは第二の直径D2に沿って外方に向いている。従って、第一のノズル11a及び第二のノズル12aの開口部の中心角θは90°である。そのため、混合ガスA及び混合ガスBは非接触状態のまま別々に第一及び第二のノズル11a,11a,12a,12aから90°異なる方向に噴出される。
図10(b) に示す一体的なパイプ集合体31では、一本の円柱体10に、1本の第一のパイプ11と1本の第二のパイプ12が180°ずれて軸線方向に延在している。第一のパイプ11の1本のノズル11aは第一の直径D1に沿って外方に向いており、第二のパイプ12の2本のノズル12a,12aは第二の直径D2の位置に開口している。そのため、両ノズル11a,12aの開口部の中心角θは90°である。
図10(c) に示す一体的なパイプ集合体32では、一本の円柱体10に、2本の第一のパイプ11,11が第一の直径D1に沿って配置されており、2本の第二のパイプ12,12が第二の直径D2に沿って配置されている。第一の直径D1と第二の直径D2との交差角は60°である。各第一のパイプ11のノズル11aは第一の直径D1に沿って外方に向いており、第二のパイプ12のノズル12aは第二の直径D2に沿って外方に向いている。そのため、両ノズル11a,12aの開口部の中心角θは60°である。
図10(d) に示す一体的なパイプ集合体33では、一本の円柱体10に、2本の第一のパイプ11,11が第一の直径D1に沿って配置されており、2本の第二のパイプ12,12が第二の直径D2に沿って配置されている。第一の直径D1と第二の直径D2との交差角は30°である。各第一のパイプ11のノズル11aは第一の直径D1に沿って外方に向いており、第二のパイプ12のノズル12aは第二の直径D2に沿って外方に向いている。そのため、両ノズル11a,12aの開口部の中心角θは30°である。
第一及び第二のパイプ11,12は一体的である必要はなく、例えば図10(e) に示すように、一本の軸40に2本の第一のパイプ11,11及び2本の第二のパイプ12,12が支持部材41により固定された組立体構造でも良い。このパイプ組立体34では、第一のパイプ11,11は第一の直径D1に沿って配置されており、2本の第二のパイプ12,12は第二の直径D2に沿って配置されている。各第一のパイプ11のノズル11aは第一の直径D1に沿って外方に向いており、第二のパイプ12のノズル12aは第二の直径D2に沿って外方に向いている。そのため、両ノズル11a,12aの開口部の中心角θは90°である。
(3) 成膜温度
窒化チタンアルミニウム皮膜の成膜温度は800〜950℃が好ましく、840〜920℃がより好ましい。成膜温度が800℃未満では、アモルファス状の窒化チタンアルミニウム相が多くなり、耐摩耗性に劣る。一方、成膜温度が950℃を超えると反応が促進されすぎて繊維状TiAlN粒子が粗大化し、窒化チタンアルミニウム皮膜中のfcc構造が多くなりすぎる。
(3) 反応圧力
窒化チタンアルミニウム皮膜の反応圧力は2〜5 kPaが好ましい。反応圧力が2 kPa未満であると、窒化チタンアルミニウム皮膜中のfcc構造が過多になる。一方、反応圧力が5 kPaを超えると繊維状TiAlN粒子が粒状化し、耐摩耗性が低下する。
(C)上層(硬質皮膜)の形成
特に限定されないが、公知の化学蒸着法により窒化チタンアルミニウム皮膜の上層を形成することができる。成膜温度は700〜1050℃で良い。上層を形成するのに用いる原料ガスの例は下記の通りである。
1. TiC皮膜 TiCl4ガス、CH4ガス及びH2ガス。
2. CrC皮膜 CrCl3ガス、CH4ガス及びH2ガス。
3. SiC皮膜 SiCl4ガス、CH4ガス及びH2ガス。
4. VC皮膜 VClガス、CH4ガス及びH2ガス。
5. ZrC皮膜 ZrCl4ガス、CH4ガス及びH2ガス。
6. TiN皮膜 TiCl4ガス、N2ガス及びH2ガス。
7. AlN皮膜 AlCl3ガス、NH4ガス及びH2ガス。
8. CrN皮膜 CrCl3ガス、NH4ガス及びH2ガス。
9. Si3N4皮膜 SiCl4ガス、NH4ガス及びH2ガス。
10. VN皮膜 VCl3ガス、NH4ガス及びH2ガス。
11. ZrN皮膜 ZrCl4ガス、N2ガス及びH2ガス。
12. Ti(CN)皮膜 TiCl4ガス、CH4ガス、N2ガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、CH3CNガス、N2ガス及びH2ガス。
13. (TiSi)N皮膜 TiCl4ガス、SiCl4ガス、N2ガス及びNH3ガス。
14. (TiB)N皮膜 TiCl4ガス、N2ガス及びBCl3ガス。
15. TiZr(CN)皮膜 TiCl4ガス、ZrCl4ガス、N2ガス、CH4ガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、ZrCl4ガス、N2ガス、CH3CNガス及びH2ガス。
16. TiAl(CN)皮膜 TiCl4ガス、AlCl3ガス、N2ガス、CH4ガス、NH3ガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、AlCl3ガス、N2ガス、CH3CNガス及びH2ガス。
17. TiSi(CN)皮膜 TiCl4ガス、SiCl4ガス、N2ガス、CH4ガス、NH3ガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、SiCl4ガス、N2ガス、CH3CNガス及びH2ガス。
18. TiCr(CN)皮膜 TiCl4ガス、CrCl3ガス、N2ガス、CH4ガス、NH3ガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、CrCl3ガス、N2ガス、CH3CNガス及びH2ガス。
19. TiV(CN)皮膜 TiCl4ガス、VCl3ガス、N2ガス、CH4ガス、NH3ガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、VCl3ガス、N2ガス、CH3CNガス及びH2ガス。
20. TiZr(CN)皮膜 TiCl4ガス、ZrCl3ガス、N2ガス、CH4ガス、NH3ガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、ZrCl4ガス、N2ガス、CH3CNガス及びH2ガス。
21. Ti(CNO)皮膜 TiCl4ガス、N2ガス、CH4ガス、COガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、N2ガス、CH3CNガス、COガス及びH2ガス。
22. TiAl(CNO)皮膜 TiCl4ガス、AlCl3ガス、N2ガス、CH4ガス、COガス及びH2ガス、又はTiCl4ガス、AlCl3ガス、N2ガス、CH3CNガス、COガス及びH2ガス。
23. Ti(CO)皮膜 TiCl4ガス、N2ガス、CH4ガス、COガス、CO2ガス及びH2ガス。
24. TiB2皮膜 TiCl4ガス、BCl3ガス、H2ガス。
(D) 硬質皮膜被覆後の刃先処理
基体上に本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜等の硬質皮膜を被覆した後に硬質皮膜をブラシ、バフ、又はブラスト等により機械加工することにより、硬質皮膜の表面が平滑化されて耐チッピング性に優れた表面状態になる。特に、投射材にアルミニウム、ジルコンおよびシリコン等のセラミック粉末粒子の少なくとも一種を用い、湿式及び/又は乾式のブラスト法を用いた硬質皮膜の刃先処理を行うと、硬質皮膜の表面が平滑化されるとともに硬質皮膜の引張残留応力が解放され、好ましくは低下し、耐チッピング性に優れるため好ましい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、勿論本発明はそれらに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、流量(ml/分)は1気圧及び25℃における毎分のmlであり、また厚さは平均値である。
実施例1
(1) 硬質皮膜の形成
図7に概略的に示すWC基超硬合金(11.5質量%のCo、2.0質量%のTaC、0.7質量%のCrC、残部WC及び不可避的不純物からなる)製のミーリング用インサート基体(RPMT1204M0EN-C8)と、WC基超硬合金(7質量%のCo、0.6質量%のCrC、2.2質量%のZrC、3.3質量%のTaC、0.2質量%のNbC、残部WC及び不可避的不純物からなる)製の物性評価用インサート基体(SNMN120408)とを図9に示すCVD炉1内にセットし、H2ガスを流しながらCVD炉1内の温度を850℃に上昇させた。その後、850℃及び8 kPaで、83.1体積%のH2ガス、15.0体積%のN2ガス、1.5体積%のTiCl4ガス、0.4体積%のCH3CNガスからなる原料ガスを6700 ml/分の流量でCVD炉1に流した。こうして、化学蒸着法により、各基体上に厚さ3μmの炭窒化チタンTi(CN)層を形成した。
H2ガスを流しながらCVD炉1内の温度を900℃に上昇させた後、4回転/分の速度で回転する図10(a) に示すパイプ集合体30を用いて、CVD炉1(900℃及び4 kPa)に、第一のパイプ11,11の第一のノズル11a,11aから0.2体積%のTiCl4ガス、1.3体積%のAlCl3ガス、及び57.2体積%のH2ガスからなる混合ガスAを導入し、第二のパイプ12,12の第二のノズル12a,12aから26.9体積%のH2ガス、9.6体積%のN2ガス、4.8体積%のNH3ガスからなる混合ガスBを導入した。混合ガスA及びBの合計流量は5800 ml/分であった。こうして、各炭窒化チタン層上に化学蒸着法により厚さ4μmの窒化チタンアルミニウムTiAlN層を形成し、本発明の硬質皮膜被覆工具(ミーリング用インサート)を製作した。
(2) 膜厚の測定
硬質皮膜被覆工具のTi(CN)層及びTiAlN層の平均厚さ(膜厚)は、皮膜面に対して5°の角度で斜めに研磨することにより得たラップ面の任意5箇所を1,000倍の光学顕微鏡で観察することにより各層の膜厚を測定し、算術平均することにより求めた。結果を表6に示す。
(3) 結晶構造の測定
結晶構造を測定するため、X線回折装置(PANalytical社製のEMPYREAN)により、管電圧45 kV及び管電流40 mAでCuKα1線(波長λ:0.15405 nm)を物性評価用インサート(SNMN120408)のすくい面の硬質皮膜表面に照射した。2θが20〜80°の範囲で得られたX線回折パターンを図4に示す。このX線回折パターンでは、WC基超硬合金基体のWCの回折ピークとともに、Ti(CN)皮膜の回折ピーク、hcp構造の窒化チタンアルミニウム皮膜の回折ピーク、及び弱いfcc構造の窒化チタンアルミニウム皮膜の回折ピークが観察された。図4のX線回折パターンから、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜はhcp構造が主構造であることが分かる。
(4) 等価X線回折強度比の測定
hcp構造が主構造である本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の(100)面から(103)面までの配向を定量的に評価するため、等価X線回折強度比TC(hkl)を下記式(1) で定義する。
TC(hkl)={I(hkl)/Io(hkl)}/[Σ{I(hkl)/Io(hkl)}/6]・・・(1)
[但し、(hkl)は(100)、(002)、(101)、(102)、(110)及び(103)である。]
TC(hkl)について、I(hkl)は(hkl)面からの実測X線回折強度比であり、表1のIo(hkl)はJCPDSファイル00-008-0262に記載されている標準X線回折強度であり、表1のdは面間隔である。TC(hkl)は窒化チタンアルミニウム皮膜の(hkl)面からの実測X線回折ピーク強度の相対強度を示す。
図4の2θ=36.0°付近において、hcp構造のTiAlNの(002)面、Ti(CN)、及びWCの各X線回折ピークが重なって観察されているため、下層のTi(CN)層を形成しただけの物性評価用インサート(SNMN120408)[窒化チタンアルミニウム皮膜を形成していない]のすくい面について、上記と同じ条件でX線回折測定を行い、2θ=36.0°付近における窒化チタンアルミニウム皮膜の(002)面のX線回折ピーク[Ti(CN)及びWCのX線回折ピークを除外]の強度を求めた。図4のhcp構造の各(hkl)面のX線回折ピーク強度の測定値及びTC(hkl)を表2に示す。
(002)面のX線回折ピーク強度が4961で、式(1) からTC(002)が2.77であるので、実施例1の窒化チタンアルミニウム皮膜は(002)面に配向していることが分かった。これは、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の結晶粒の(002)面が基体に対して垂直方向に成長していること、すなわち、結晶粒が一部繊維状になっていることを示す。かかる繊維状結晶粒により、結晶粒の粗大化が抑制され、更に繊維状TiAlN粒子も基体に対して垂直方向に成長するから、本発明の窒化チタンアルミニウム皮膜の耐摩耗性が従来より顕著に向上する。
(5) 窒化チタンアルミニウム皮膜のミクロ組織(TiAlNマトリックスと繊維状TiAlN粒子)の観察
硬質皮膜及び窒化チタンアルミニウム皮膜の観察は、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM、株式会社日本電子製JEM-2010F型)を用いて行った。図1は物性評価用インサート(SNMN120408)のすくい面の硬質皮膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(倍率:40,000倍)であり、図2は図1のA部を拡大したTEM写真(倍率:400,000倍)である。後述する図5及び図6から、図2における黒色繊維状部分は、fcc構造とhcp構造とが混在する繊維状TiAlN粒子であることが分かる。繊維状TiAlN粒子はTiAlNマトリックスに分散している。図3は図2のB部を拡大したTEM写真(倍率:2,000,000倍)である。図5は図3のC部(TiAlNマトリックス)のナノビーム回折(NAD)を示し、図6は図3のD部(繊維状TiAlN粒子)のナノのビーム回折(NAD)を示す。
図5は図3のC部(TiAlNマトリックス)がhcp構造のみを有することを示し、図6は図3のD部(繊維状TiAlN粒子)がhcp構造とfcc構造の混合構造を有することを示す。図6において、200の直上の輝点はhcp構造の回折斑点であり、そのhcp構造の回折斑点の直上にfcxc構造の回折斑点が観察されている。これらの構造解析の結果から、繊維状TiAlN粒子はhcp構造とfcc構造の混合構造を有し、hcp構造を有するTiAlNマトリックス内に繊維状TiAlN粒子が分散したミクロ組織を有することが分かる。また、図3において繊維状TiAlN粒子の平均横断面径Davを測定した結果、3 nmであった。
(6) 組成の測定
電子プローブマイクロ分析装置(EPMA、日本電子株式会社製JXA-8500F)を用いて、加速電圧10 kV、照射電流0.05 A、及びビーム径0.5μmの条件で、物性評価用インサート(SNMN120408)の断面における窒化チタンアルミニウム皮膜の膜厚方向中心の任意の5箇所で測定し、算術平均することにより、窒化チタンアルミニウム皮膜の組成を求めた。結果を表4に示す。
FE-TEM(JEM-2010F)に搭載のエネルギー分散型X線分光器(EDS、NORAN社製UTW型Si(Li)半導体検出器、ビーム径:約1 nm)を用いて、物性評価用インサート(SNMN120408)の硬質皮膜の断面における各層の膜厚方向中心の任意の5箇所で、窒化チタンアルミニウム皮膜のTiAlNマトリックス及び繊維状TiAlN粒子の組成を分析し、算術平均した。結果を表5に示す。
(7) 硬さの測定
Si単結晶を標準試料とする超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス製ENT-1100)を用いて、4900 mNの最大負荷、49 mN/秒の負荷速度、及び1秒の保持時間の条件でナノインデンテーション(押込み)法により、硬質皮膜の表面の硬さを5回測定し、算術平均した。結果を表6に示す。
(8) 性能評価
得られたミーリング用インサート60を、図8に示す刃先交換式回転工具(ARV4050RM-5)70の工具本体71の先端部72に止めねじ73で装着し、下記ミーリング条件で硬質皮膜の工具寿命を評価した。硬質皮膜の逃げ面摩耗幅は、倍率100倍の光学顕微鏡で観察することにより測定した。工具寿命は、逃げ面の最大摩耗幅が0.350 mmを超えたときの総切削長さとした。結果を表6に示す。
被削材: 硬さ35HRCのSUS630
加工方法: ミーリング加工
インサート形状: RPMT1204M0EN-C8
切削速度: 200 m/分
回転数:毎分1273回転
一刃当たりの送り: 0.40 mm/tooth
送り速度:509 mm/分
軸方向の切り込み量: 2.0 mm
径方向の切り込み量:34 mm
切削方法: 単一刃による乾式切削
実施例2〜10
窒化チタンアルミニウム皮膜の成膜条件を表3及び表4に示すように変更した以外、実施例1と同様にして、硬質皮膜被覆工具(ミーリング用インサート)を製作し、物性及び性能を評価した。結果を表4〜表6に示す。表4〜表6より、実施例2〜10の各硬質皮膜被覆工具の窒化チタンアルミニウム皮膜は実施例1と同じミクロ組織を有し、実施例1に近い良好な工具寿命を有することが分かる。
実施例11
実施例1と同じWC基超硬合金製のミーリング用インサート基体(RPMT1204M0EN-C8)及び物性評価用インサート基体(SNMN120408)をCVD炉1内にセットし、H2ガスを流しながらCVD炉1内温度を900℃に上昇させた後、900℃及び12 kPaで、82.0体積%のH2ガス、18.5体積%のN2ガス、1.5体積%のTiCl4ガスからなる原料ガスを4500 ml/分の流量でCVD炉1に流し、化学蒸着法により厚さ3μmの窒化チタン層を形成した。その後、窒化チタンアルミニウム層を実施例1と同じ条件で形成し、実施例1と同様に物性及び性能を評価した。結果を表4〜表6に示す。表4〜表6より、実施例11の硬質皮膜被覆工具の窒化チタンアルミニウム皮膜は、実施例1と同じミクロ組織を有し、実施例1に近い良好な工具寿命を有することが分かる。
実施例12
実施例1と同じWC基超硬合金製のミーリング用インサート基体(RPMT1204M0EN-C8)及び物性評価用インサート基体をCVD炉1内にセットし、H2ガスを流しながらCVD炉1内温度を900℃に上昇させた後、900℃及び5 kPaで、1.5体積%のTiCl4ガス、0.5体積%のCH3CNガス、1.5体積%のZrCl4ガス、18.5体積%のN2ガス、及び78.0体積%のH2ガスからなる原料ガスを7000 ml/分の流量でCVD炉に流し、化学蒸着法により厚さ3μmの炭窒化チタンジルコニウムTiZr(CN)皮膜を形成した。その後、窒化チタンアルミニウムTiAlN皮膜を実施例1と同じ条件で形成し、物性及び性能を評価した。結果を表4〜表6に示す。表4〜表6より、実施例12の硬質皮膜被覆工具のTiAlN皮膜は実施例1と同じミクロ組織を有し、実施例1に近い良好な工具寿命を有することが分かる。
比較例1
実施例1と同様に炭窒化チタン皮膜を形成した後、H2ガスを流しながらCVD炉内温度を900℃に上昇させた。その後、ノズル11a,12aの中心度θを20°とした以外図10(d) と同じ構造のパイプ集合体33が2回転/分の速度で回転するCVD炉1(900℃及び6 kPa)に、第一のノズル11a、11aから0.4体積%のTiCl4ガス、1.3体積%のAlCl3ガス、及び57.0体積%のH2ガスからなる混合ガスAを導入し、第二のノズル12a,12aから4.8体積%のNH3ガス、9.6体積%のN2ガス、及び26.9体積%のH2ガスからなる混合ガスBを、合計で5800 ml/分の流量で導入し、実施例1と同様にして化学蒸着法により厚さ4μmのTiAlN皮膜を形成した。得られた硬質皮膜被覆工具(ミーリング用インサート)の物性及び性能を実施例1と同様に評価した。結果を表4〜表6に示す。
比較例2
実施例1と同様に炭窒化チタン皮膜を形成した後、図11に示すようにノズル11a,12aのなす角度θが180°で、回転速度が2回転/分のCVD炉1(900℃及び6 kPa)に、表3に示す混合ガスA及びBを実施例1と同様に導入し、TiAlN皮膜を形成した。得られた硬質皮膜被覆工具(ミーリング用インサート)の物性及び性能を実施例1と同様に評価した。結果を表4〜表6に示す。
比較例3及び比較例4
実施例1と同様に炭窒化チタン皮膜を形成した後、図11に示すようにノズル11a,12aのなす角度θが180°で回転速度が2回転/分のCVD炉1(900℃及び6 kPa)に、表3に示す混合ガスA及びBを実施例1と同様に導入し、TiAlN皮膜を形成した。得られた硬質皮膜被覆工具(ミーリング用インサート)の物性及び性能を実施例1と同様に評価した。結果を表4〜表6に示す。
比較例5
特許文献3の段落[0051]〜[0054]に記載の方法により炭窒化チタン皮膜を形成した後、図11に示すようにノズル11a,12aのなす角度θが180°で、回転速度が2回転/分のCVD炉1(900℃及び6 kPa)に、表3に示す混合ガスA及びBを実施例1と同様に導入し、TiAlN皮膜を形成した。得られた硬質皮膜被覆工具(ミーリング用インサート)の物性及び性能を実施例1と同様に評価した。結果を表4〜表6に示す。
表5に示すように、比較例1〜5のTiAlN皮膜はいずれも繊維状TiAlN粒子を含有していなかった。比較例1〜3のTiAlN皮膜はいずれもfcc構造であった。比較例4のTiAlN皮膜はfcc構造のTiAlN相内にhcp構造のTiAlN相が混在していた。比較例5のTiAlN皮膜は、fcc構造のTiAlN層と、fcc構造とhcp構造とが混在するTiAlN層との積層構造になっていた。
注:(1) 該当なし。
注:(1) 平均横断面径。
(2) 該当なし。
注:(1) TiAlNマトリックス内に繊維状TiAlN粒子が分散していた。
(2) fcc構造とhcp構造が混在していた。
(3) Al含有量が異なる積層構造を有していた。
実施例1〜12の硬質皮膜工具(ミーリング用インサート)の工具寿命(切削距離)はいずれも4 m以上であり、比較例1〜5の工具寿命の2倍以上であった。長寿命になった理由は、実施例1〜12の各硬質皮膜被覆工具(ミーリング用インサート)の炭窒化チタンアルミニウム層が上記ミクロ組織を有し、耐摩耗性及び耐熱性が改善されたためである。これに対して、窒化チタンアルミニウム皮膜がfcc構造のみからなる比較例1〜3では、高温でhcp構造に変態して硬度(耐摩耗性)が低下し、短寿命であった。比較例4では高温でfcc構造が変態し、硬度(耐摩耗性)が低下し、短寿命であった。比較例5では高温でfcc構造がhcp構造に変態して硬さが低下するとともに、積層皮膜内で剥離が発生し、短寿命であった。
1:CVD炉
2:チャンバー
3:ヒータ
4:棚
4a:棚の中央開口部
5:反応容器
11:第一のパイプ
11a:第一のパイプのノズル
12:第二のパイプ
12a:第二のパイプのノズル
13:排出パイプ
20:インサート基体
70:刃先交換式回転工具
71:工具本体
72:先端部
73:止めねじ

Claims (17)

  1. 化学蒸着法により形成された窒化チタンアルミニウム皮膜であって、(Tix1Aly1)N(ただし、x1及びy1はそれぞれ原子比でx1=0.05〜0.15、及びy1=0.95〜0.85を満たす数字である。)で表される組成を有するhcp構造のTiAlNマトリックスに、(Tix2Aly2)N(ただし、x2及びy2はそれぞれ原子比でx2=0.15〜0.4、及びy2=0.85〜0.6を満たす数字である。)で表される組成を有するとともにhcp構造とfcc構造とが混在した繊維状TiAlN粒子が分散してなることを特徴とする窒化チタンアルミニウム皮膜。
  2. 請求項1に記載の窒化チタンアルミニウム皮膜において、繊維状TiAlN粒子の平均横断面径が50 nm以下であることを特徴とする窒化チタンアルミニウム皮膜。
  3. 請求項1又は2に記載の窒化チタンアルミニウム皮膜において、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の等価X線回折強度比TC(002)が1.3以上であることを特徴とする窒化チタンアルミニウム皮膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の窒化チタンアルミニウム皮膜において、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の膜厚が1〜15μmであることを特徴とする窒化チタンアルミニウム皮膜。
  5. 基体上に化学蒸着法により窒化チタンアルミニウム皮膜を形成してなる硬質皮膜被覆工具であって、前記窒化チタンアルミニウム皮膜は、(Tix1Aly1)N(ただし、x1及びy1はそれぞれ原子比でx1=0.05〜0.15、及びy1=0.95〜0.85を満たす数字である。)で表される組成を有するhcp構造のTiAlNマトリックスに、(Tix2Aly2)N(ただし、x2及びy2はそれぞれ原子比でx2=0.15〜0.4、及びy2=0.85〜0.6を満たす数字である。)で表される組成を有するとともにhcp構造とfcc構造とが混在した繊維状TiAlN粒子が分散してなることを特徴とする硬質皮膜被覆工具。
  6. 請求項5に記載の硬質皮膜被覆工具において、繊維状TiAlN粒子の平均横断面径が50 nm以下であることを特徴とする硬質皮膜被覆工具。
  7. 請求項5又は6に記載の硬質皮膜被覆工具において、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の等価X線回折強度比TC(002)が1.3以上であることを特徴とする硬質皮膜被覆工具。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の硬質皮膜被覆工具において、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の膜厚が1〜15μmであることを特徴とする硬質皮膜被覆工具。
  9. 請求項5〜8のいずれかに記載の硬質皮膜被覆工具において、前記窒化チタンアルミニウム皮膜の下層として、柱状結晶組織を有する炭窒化チタン皮膜を有することを特徴とする硬質皮膜被覆工具。
  10. 化学蒸着法により窒化チタンアルミニウム皮膜を形成する方法において、
    (1) 原料ガスとして、TiCl4ガス、AlCl3ガス、及びH2ガスからなる混合ガスAと、NH3ガス、N2ガス及びH2ガスからなる混合ガスBとを使用し、
    (2) 30〜90°ずれて配置された第一及び第二のノズルから別々に前記混合ガスA及び前記混合ガスBを吹き出し、
    (3) 前記第一及び第二のノズルを3〜10回転/分の速度で回転させることを特徴とする方法。
  11. 請求項10に記載の窒化チタンアルミニウム皮膜の製造方法において、前記混合ガスA及びBの合計を100体積%として、前記混合ガスAの組成を0.1〜0.5体積%のTiCl4ガス、1〜4体積%のAlCl3ガス、及び残部H2ガスとし、前記混合ガスBの組成を3〜6体積%のNH3ガス、25体積%以下のN2ガス、及び残部H2ガスとすることを特徴とする方法。
  12. 請求項11に記載の窒化チタンアルミニウム皮膜の製造方法において、前記混合ガスAがさらに15体積%以下のN2ガスを含有することを特徴とする方法。
  13. 請求項10〜12のいずれかに記載の窒化チタンアルミニウム皮膜の製造方法において、反応圧力が2〜5 kPaであり、反応温度が800〜950℃であることを特徴とする方法。
  14. 窒化チタンアルミニウム皮膜を有する硬質皮膜被覆工具を化学蒸着法により製造する方法において、
    (1) 原料ガスとして、TiCl4ガス、AlCl3ガス、及びH2ガスからなる混合ガスAと、NH3ガス、N2ガス及びH2ガスからなる混合ガスBとを使用し、
    (2) 30〜90°ずれて配置された第一及び第二のノズルから別々に前記混合ガスA及び前記混合ガスBを工具基体上に吹き出し、
    (3) 前記第一及び第二のノズルを3〜10回転/分の速度で回転させることを特徴とする。
  15. 請求項14に記載の硬質皮膜被覆工具の製造方法において、前記混合ガスA及びBの合計を100体積%として、前記混合ガスAの組成を0.1〜0.5体積%のTiCl4ガス、1〜4体積%のAlCl3ガス、及び残部H2ガスとし、前記混合ガスBの組成を3〜6体積%のNH3ガス、25体積%以下のN2ガス、及び残部H2ガスとすることを特徴とする方法。
  16. 請求項15に記載の硬質皮膜被覆工具の製造方法において、前記混合ガスAがさらに15体積%以下のN2ガスを含有することを特徴とする方法。
  17. 請求項14〜16のいずれかに記載の硬質皮膜被覆工具の製造方法において、反応圧力が2〜5 kPaであり、反応温度が800〜950℃であることを特徴とする方法。
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