JP2020131360A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、被覆工具の切削性能改善を目的として、従来から、数多くの提案がなされている。
また、特許文献2に示される従来被覆工具においては、層厚方向に組成変化を形成することで高温硬さと耐熱性、靱性を両立せしめることができるが、層厚方向に形成される層内の異方性によって、層厚と垂直方向のクラックの発生・伝播を十分に防止することはできないという問題がある。
また、特許文献3に示される従来被覆工具においては、合金鋼の高速断続切削加工においては、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を示すが、例えば、Ni基耐熱合金、Ti基耐熱合金、ステンレス鋼のような溶着性の高い被削材の高速断続切削加工においては、溶着が生じやすくなるため、耐チッピング性、耐欠損性等の耐異常損傷性が十分とはいえず、満足できる切削性能を発揮するとは言い難い。
さらに、特許文献4に示される従来被覆工具は、高硬度で低残留応力の皮膜を有しているとされているが、溶着性の高い被削材の高速断続切削加工に供した場合には、溶着の発生によって、工具寿命が短命である。
「WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
組成式:(TixAl1−x)N
で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有し、
(b)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、
(c)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒が前記縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、
(d)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合は、10面積%以上であり、
(e)前記TiとAlの複合窒化物層の少なくとも刃先稜線部の縦断面においては、最大長さが50nm以上の大きさを有する混入溶滴の面積の和(Sdp)が、前記刃先稜線部の縦断面の面積(Sc)に対して占める面積比率Sdp/Scは、0.100%以下であり、かつ、最大長さ10nm以上50nm未満の大きさを有する混入溶滴の面積の和(Ssdp)の前記刃先稜線部の縦断面の面積(Sc)に対する面積比率Ssdp/Scが0.001%以上0.100%以下であり、
好ましくは前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒はその結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まない、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
また、刃先稜線部のTiAlN層について、Sdp/Scの値を、0.100%以下であり、かつSsdp/Scの値を、0.001%以上0.100%以下と定めることにより、刃先に作用する高負荷に対してTiAlN層の靱性を維持することができるとともに、溶着発生を原因とする溶着チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生を抑制することができる。
したがって、本発明の被覆工具は、Ni基耐熱合金、Ti基耐熱合金、ステンレス鋼のような溶着性の高い被削材を、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する高速断続切削加工に供した場合であっても、すぐれた耐異常損傷性と耐摩耗性を発揮する。
さらに、本発明の被覆工具は、結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まない場合、結晶粒幅が100nmを超える過度に粗大なTiAlN結晶粒が存在しないので、TiAlN層全体における粒界の長さが短くならないため、切削加工時に加わる衝撃を分散しやすくなり、すぐれた耐欠損性を発揮する。
硬質被覆層は、少なくともTiAlN層を含むが、該TiAlN層の平均層厚が0.5μm未満では、TiAlN層によって付与される耐摩耗性向上効果が十分に得られず、一方、平均層厚が10.0μmを超えると、TiAlN層の中の歪みが大きくなり自壊しやすくなるため、TiAlN層の平均層厚を0.5〜10.0μmとする。
TiAlN層を、
組成式:(TixAl1−x)N
で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有することが必要である。
Ti成分の平均組成を表すxが0.10未満である場合には、六方晶構造のTiAlN結晶粒が形成されやすくなり、TiAlN層の硬度が低下し十分な耐摩耗性を得ることができない。
一方、Ti成分の平均組成を表すxが0.35を超える場合には、Al成分の組成割合が減少するため、TiAlN層の高温硬さおよび高温耐酸化性が低下する。
したがって、Ti成分の平均組成xは、0.10≦x≦0.35とする。
なお、前記組成式において、N/(Ti+Al+N)の値は、必ずしも、化学量論比である0.5である必要はなく、工具基体表面の汚染の影響などで不可避的に検出される炭素や酸素などの元素をのぞいてTi、Al、Nの含有割合の原子比を定量し、TiとAlとNの含有割合の原子比の合計に対するNの含有割合の原子比が0.45以上0.65以下の範囲であれば、本発明のTiAlN層において同等の効果が得られ特に問題は無い。
本発明のTiAlN層では、工具基体表面と平行な方向に測定したTiAlN結晶粒の幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、前記微細結晶粒が前記TiAlN層の縦断面に占める面積割合は10〜70面積%とし、好ましくは結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まない。
ここで、微細結晶粒の結晶粒幅を30〜100nmと定め、好ましくは結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含めなかったのは、次の理由による。
結晶粒幅が100nmを超える過度に粗大なTiAlN結晶粒が存在すると、TiAlN層全体における粒界の長さが短くなるために、切削加工時に加わる衝撃を分散しにくくなるため、耐欠損性が低下する。
一方、微細結晶粒の結晶粒幅が30nm未満になると粒界が増えるため、切削加工時に被削材と粒界部との接触確率が高くなった結果、結晶粒の脱粒が起きやすくなるため、微細結晶粒による耐摩耗性の確保ができなくなるという理由による。
また、微細結晶粒の面積割合を、10〜70面積%と定めたのは、次の理由による。
微細結晶粒の面積割合が10面積%未満になると、TiAlN層中の超微粒結晶粒の割合が増加して粒界が増えるため、切削加工時に、粒内より相対的にもろい粒界部分での破壊が生じやすくなり、耐摩耗性が低下する。
一方、微細結晶粒の面積割合が70面積%を超えると、切削加工時の衝撃を分散化する役割を担う超微粒結晶粒の減少によって、耐欠損性が低下する。
これは、耐摩耗性に優れる[001]方位を有する立方晶構造の微細結晶粒のうち、工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下となるような[001]方位を有する立方晶構造の微細結晶粒が多く存在する(10面積%以上)ことによって、切削加工時にTiAlN結晶粒の表面と被削材が接触した際に、いずれのTiAlN結晶粒も同一方向に均一に削られるため、偏摩耗の発生が抑えられ、その結果[001]方位を有する立方晶構造の微細結晶粒の耐摩耗性の効果を向上することができるからである。
仮に、工具基体表面の法線と、立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒の、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合が10面積%未満であるような場合には、切削加工時に、各結晶粒がそれぞれ異なる方向に削られるため、切削加工の進展につれ偏摩耗が発生し、耐摩耗性の低下を招くことになる。
2層以上の積層構造として構成された硬質被覆層にあっては、該積層構造を構成する層のうちの少なくとも一つの層として前記TiAlN層を形成することもできる。
本発明のTiAlN層の微細結晶粒の結晶粒幅、結晶構造、面積割合及び工具基体表面に対する結晶方位の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡に付属する結晶方位解析装置を用いて、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を観察、測定することにより求めることができる。
なお、本発明における「硬質被覆層の縦断面」とは、硬質被覆層と工具基体の界面(工具基体表面)に対して垂直方向の断面のことをいう。
透過型電子顕微鏡で、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を観察する方法は以下の通りである。まず、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を切り出した後、結晶粒径と同程度の厚さ(30nm)以下に研磨した切片をセットし、200kVに加速された電子線を前記切片の表面(すなわちTiAlN層を含む硬質被覆層に相当する表面)に照射することで観察を行う。
まず、硬質被覆層の縦断面の観察画像における、硬質被覆層と工具基体との界面上の2点を任意で選定する。その際、2点間を線分でつないだ長さは1000nmになるよう選定する。結晶方位の解析範囲は、前記線分と平行方向に1000nm(この方向を以下「解析範囲の横方向」と定義する)、垂直方向に400nm(この方向を以下「解析範囲の縦方向」と定義する)の長方形の範囲とする。その際、前記の範囲には全てTiAlN層の縦断面のみ含める(工具基体、ならびにTiAlN層以外の硬質被覆層は含めない)。
なお、超微粒結晶粒(結晶粒幅30nm未満)ならびに粗大結晶粒(結晶粒幅100nmより大)の面積割合に関しても、微細結晶粒の面積割合と同様の方法で算出する。
混入溶滴とは、例えば、AIP装置により成膜された硬質皮膜に一般的に存在し、ドロップレットあるいはパーティクルともいわれるものであって、アーク放電により溶融したターゲット成分が液滴として飛散し、硬質被覆層中に取り込まれた粒のことである。
本発明では、混入液滴について、次のように定義する。
すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDS)(以下、「SEM−EDS」という)および、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたエネルギー分散型X線分析法(以下、「TEM−EDS」という)のマッピング分析により刃先稜線部のTiAlN層の縦断面のAl、Ti、N成分の組成を測定したときに、Alおよび/またはTiが検出され、かつN成分が検出されない領域であると定義する。
図3に示される本発明被覆工具において、図3のA−B−C−Dで囲まれたTiAlN層の領域を「刃先先端部」と定義する。
ここで、Aは、刃先ホーニング部のすくい面からの起点を示し、直線ABは、起点Aからすくい面に垂直に引いた線分である。
また、Dは、刃先ホーニング部の逃げ面からの起点を示し、直線CDは、起点Dから逃げ面に垂直に引いた線分である。
そして、上記A−B−C−Dで囲まれたTiAlN層の領域が、本発明でいう「刃先稜線部」である。
前記混入溶滴に関して、刃先稜線部のTiAlN層の縦断面をSEM−EDSマッピング分析により倍率50000倍で観察し、混入液滴の最大長さが50nm以上である粒の面積の和をSdpとし、前記刃先稜線部のTiAlN層の縦断面の面積をScとした場合に、SdpのScに対する比Sdp/Scが0.100%以下、かつ、TEM−EDSマッピング分析により倍率100000倍で観察し、最大長さ10nm以上50nm未満の大きさを有する混入溶滴の面積の和をSsdpとした場合に、SsdpのScに対する比Ssdp/Scが0.001%以上0.100%未満を満足することが好ましい。
なお、ここでいう混入液滴の最大長さとは、混入液滴の輪郭線上の任意の2点間の最大値を指す。
したがって、少なくとも刃先稜線部のTiAlN層の縦断面における最大長さが50nm以上の大きさを有する混入溶滴の面積の和Sdpと、刃先稜線部の縦断面の面積Scとの面積比率Sdp/Scは、0.100%以下とする。
また、Ssdp/Scが0.100%を超えると刃先稜線部のTiAlN層全体に対する混入液滴の含有比率が高くなるため、AlOxによる被覆効果より前記混入溶滴と被削材との溶着性による影響が支配的となり、溶着チッピング、欠損、剥離が発生しやすくなり、耐異常損傷性が低下するためである。
したがって、少なくとも刃先稜線部のTiAlN層の縦断面における最大長さが10nm以上50nm未満の大きさを有する混入溶滴の面積の和Ssdpと、刃先稜線部の断面積の面積Scとの面積比率Ssdp/Scは、0.001%以上0.100%未満とする。
本発明のTiAlN層は、例えば、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMS)装置とアークイオンプレーティング(AIP)装置を併設した物理蒸着装置(以下、「HiPIMS/AIP装置」という)を用い、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングによって成膜することができる。
図4(a)、(b)に、本発明のTiAlN層を成膜するための、HiPIMS/AIP装置の概略図を示す。
図4(a)、(b)に示すHiPIMS/AIP装置の相対向する壁面に、アークイオンプレーティング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)を対向配置するとともに、同じく前記HiPIMS/AIP装置の他の相対向する壁面には、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)を対向配置し、装置中央に設けられたテーブル上には、前記各Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)からほぼ等距離となる位置(例えば、図4(a)に示されるような4箇所)に、工具基体を載置する。
次いで、テーブル上で工具基体を自転させながら、工具基体を所定の温度範囲に加熱し、反応ガスを装置内に導入し、アークイオンプレーティングによる工具基体の表面ボンバード洗浄を行い、ついで、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングを行うことにより、本発明のTiAlN層を成膜することができる。
≪高出力インパルスマグネトロンスパッタリング条件≫
ターゲット(カソード電極):TixAl1−x (但し、皮膜組成が0.10≦x≦0.35の範囲となる)のTi−Al合金
投入電力:1000〜1500(W)
ピーク電流:100(A)
パルス周波数:500〜800(Hz)
パルス印加時間:75〜100(μs)
バイアス電圧:80〜90(−V)
≪共通する条件≫
N2ガス圧力:0.5(Pa)
Arガス圧力:0.5(Pa)
工具基体温度:450(℃)
なお、Sdp/Scの値については、後記実施例で述べるように、バイアス電圧、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング条件である投入電力、ピーク電流、パルス周波数、パルス印加時間をコントロールすることによって、所定の数値範囲に収めることができる。
なお、具体的な説明としては、WC基超硬合金を工具基体とする被覆工具について説明するが、TiCN基サーメットあるいは立方晶窒化硼素焼結体を工具基体とする被覆工具についても同様である。
HiPIMS/AIP装置内には、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒータで工具基体を400℃に加熱した後、前記テーブル上で自転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)に100Aのアーク電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄した。
ついで、前記装置内に反応ガスとしてアルゴンガスをと窒素ガスを導入して表2に示す圧力にするとともに、前記テーブル上で自転する工具基体の温度を表2に示す温度範囲に加熱維持し、工具基体と高出力インパルスマグネトロンスパッタリング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)に表2に示すバイアスを印加するとともに、Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)に表2に示す電流を印加することにより、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングを行った。
上記の工程で、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングを行うことにより、本発明のTiAlN層を成膜した表4に示す本発明被覆工具1〜10(以下、本発明工具1〜10という)を製造した。
また、本発明工具1〜10、比較例工具1〜13のTiAlN層におけるAlとTiの合量に対するTiの平均組成(原子比)を電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)を用いて測定した。TiAlN層の縦断面を研磨した試料の表面に電子線を照射し、発生した特性X線の解析結果からTiの平均組成を算出し、10点の平均値を求めた。
表4、表5に、それぞれの値を示す。
具体的には、以下のとおりである。
結晶粒幅は以下のように算出する。まず、測定点の隣接点同士の結晶方位が5度以上離れている場合、粒界に属する測定点と判断した。次に、粒界に属する測定点同士を線分でつなぎ合わせることで、前記線分に囲まれている部分を結晶粒と定義した。ただし、この線分が表面、または基体となす界面と接する場合は、この表面または界面の粒界とみなす。そして解析範囲の横方向に平行な方向における粒界と粒界との距離から結晶粒幅を測定した。
微細結晶粒の面積割合は、結晶粒幅が30nm以上かつ100nm以下の結晶粒を微細粒部とし、微細粒部内に含まれる測定点の全数を、結晶粒の測定点の全数で割ることにより、微細結晶粒の面積割合を算出した。なお、1つの測定点が占める面積は一定のため、測定点数の割合から面積割合が求められる。なお、超微粒結晶粒は結晶粒幅を30nm未満、粗大結晶粒は100nmより大きい結晶粒として微細結晶粒と同様の方法で面積割合を求めた。
微細粒部の結晶構造は、微細粒部の電子回折像から立方晶か六方晶かを判断した。
工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度は、工具基体表面1aの法線L1(工具基体表面1aに垂直な方向)に対して、微細粒部に含まれる測定点での結晶面である(001)面の法線L2がなす傾斜角(図1A、1B参照)を測定した。
表4、表5に、それぞれの値を示す。
すなわち、図3で示される刃先稜線部A−B−C−CのTiAlN層に属する1つの観察視野において、倍率50000倍のSEM−EDSにより観察して、当該観察視野における最大長さが50nm以上である混入溶滴の面積の総和を求め、当該観察視野のTiAlN層の面積に対する面積比率を算出した。
そして、5つの観察視野で算出した面積比率の値を平均し、この値を、刃先稜線部のTiAlN層の面積(Sc)に対する、最大長さが50nm以上である混入溶滴の面積の総和(Sdp)の面積比率Sdp/Scとして求めた。
さらに、図2で示される刃先稜線部A−B−C−CのTiAlN層に属する1つの観察視野において、倍率100000倍のTEM−EDSにより観察して、当該観察視野における最大長さが10nm以上50nm未満である混入溶滴の面積の総和を求め、当該観察視野のTiAlN層の面積に対する面積比率を算出した。
そして、5つの観察視野で算出した面積比率の値を平均し、この値を、刃先稜線部のTiAlN層の面積(Sc)に対する、最大長さが10nm以上50nm未満である混入溶滴の面積の総和(Ssdp)の面積比率Ssdp/Scとして求めた。
表4、表5に、それぞれの値を示す。
カッタ径: 125 mm、
被削材: JIS・SUS440Aからなる幅100mm、長さ350mmのブロック材、
切削速度:220m/min、
切り込み:2.5mm、
一刃送り量:0.2mm/刃、
切削時間:13分、
上記の切削試験について、逃げ面摩耗幅を測定するとともに、刃先の損耗状況を観察した。
表6に、試験結果を示す。
Claims (2)
- WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
組成式:(TixAl1−x)N
で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有し、
(b)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、
(c)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒が前記縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、
(d)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合は、10面積%以上であり、
(e)前記TiとAlの複合窒化物層の少なくとも刃先稜線部の縦断面においては、最大長さが50nm以上の大きさを有する混入溶滴の面積の和(Sdp)が、前記刃先稜線部の縦断面の面積(Sc)に対して占める面積比率Sdp/Scは、0.100%以下であり、かつ、最大長さ10nm以上50nm未満の大きさを有する混入溶滴の面積の和(Ssdp)の前記刃先稜線部の縦断面の面積(Sc)に対する面積比率Ssdp/Scが0.001%以上0.100%以下である、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒はその結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まないことを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
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