JP2016138208A - 樹脂ガラス用ハードコート層 - Google Patents

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悟 早崎
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Abstract

【課題】 耐候性および耐摩耗性を向上させるとともに、工程の短縮化およびコスト低減を実現させることが可能な、樹脂ガラス用コート層を提供する。【解決手段】 粒径5nm以上300nm未満のナノシリカを0.1重量%以上20重量%未満の範囲内で含むウレタンアクリル系樹脂層が、厚み12μm以上30μm未満の範囲で形成されていることを特徴とする、樹脂ガラス用ハードコート層。【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂ガラス用ハードコート層に関する。
樹脂ガラスの材料としては、耐衝撃性の観点よりポリカーボネートが一般的に使用されている。しかし、ポリカーボネートは、耐候性および耐摩耗性に劣るため、ハードコート処理等の表面処理が必要である。樹脂ガラス用のハードコートとしては、コーティングと焼付を2回ずつ行う「2コート2ベーク」方式で形成されることが一般的である。例えば、アクリル系のコート剤を塗布して80℃×60分間焼付を行い、次いで、シリコン系コート剤を塗布して80℃×60分間焼付を行うという方式である。しかし、「2コート2ベーク」方式では、工程が長く、また、コストも要する。そこで、樹脂ガラスのハードコート層形成を、真空蒸着重合による有機高分子薄膜の形成によって行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−116182号公報
しかし、真空蒸着を使用する技術の場合、真空蒸着の工程は、減圧して蒸着し、蒸着後に常圧に戻すというプロセスに時間を要し、また、設備も過大になりがちである。そのため、工程の短縮や、コストの低減の点では十分とはいえなかった。
本発明は上記問題点を解決するものであり、耐候性および耐摩耗性(耐傷付性)を向上させるとともに、工程の短縮化およびコスト低減を実現させることが可能な、樹脂ガラス用ハードコート層を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の樹脂ガラス用ハードコート層は、粒径5nm以上300nm未満のナノシリカを0.1重量%以上20重量%未満の範囲内で含むウレタンアクリル系樹脂層が、厚み12μm以上30μm未満の範囲で形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、耐候性および耐摩耗性を向上させるとともに、工程の短縮化およびコスト低減を実現させることが可能な、樹脂ガラス用コート層を提供することができる。
以下、この発明の実施の形態を、詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定および制限されない。
本発明の樹脂ガラス用ハードコート層は、粒径5nm以上300nm未満のナノシリカを0.1重量%以上20重量%未満の範囲内で含むウレタンアクリル系樹脂層から形成されており、その厚みは12μm以上30μm未満の範囲である。
ハードコート層は、従来、上述したように2層から形成されている場合が多かった。この場合、1層目のアクリル系コート層によって耐候性を付与し、シリコン系コート層によって耐摩耗性を確保していた。本発明は、ウレタンアクリル系樹脂中に特定範囲の粒径のナノシリカを特定範囲の割合で含有させ、さらに、形成するハードコート層の厚みを特定の範囲とすることで、1層の構成であっても耐候性および耐摩耗性を両立可能なハードコート層が得られることを見出したものである。
本発明の樹脂ガラス用ハードコート層のコーティング対象となる樹脂ガラス(基材)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート樹脂、透明アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂、透明ポリスチレン樹脂、透明エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、透明ナイロン樹脂、透明ポリブチレンテレフタレート、透明フッ素樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、透明フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂および透明フェノール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有してなるものであることが好ましく、ポリカーボネート樹脂からなるものであることがより好ましい。
樹脂ガラスは、射出成形、または、板ガラス状の原材料からの打ち抜きプレス加工などを経て製造される。樹脂ガラスの厚みは、用途に応じて作製することができるが、例えば、自動車用樹脂ガラスの場合、厚みが2.5mm〜4.5mmの範囲であると好ましい。
本発明の樹脂ガラス用ハードコート層の主成分は、ウレタンアクリル系樹脂であり、紫外線照射によって硬化するものであることが好ましい。紫外線硬化型樹脂は、一般に、熱硬化型の樹脂に比べて、硬化に要する時間を短くすることが可能である。そのため、紫外線硬化型樹脂を用いると、工程(タクトタイム)の短縮化を実現することができる。
紫外線の照射量は、基材である樹脂ガラスやハードコート層の特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、好ましくは1000mJ/cm〜5000mJ/cmであり、より好ましくは、2500mJ/cm〜4000mJ/cmである。紫外線の照射量を前記の範囲内とすることにより、劣化させることなく十分に重合を進めることができる。紫外線の照射量が少なすぎると、十分に重合が進まない(重合率が低くなる)おそれがあり、紫外線の照射量が多すぎると、劣化の原因となるおそれがある。
本発明の樹脂ガラス用ハードコート層に含有されるナノシリカは、粒径5nm以上300nm未満であり、10nm以上50nm以下であることが好ましい。ナノシリカの粒径が前記下限未満であると、耐摩耗性が十分ではなくなる。また、ナノシリカの粒径が前記上限以上であると、ハードコート層の透明性が低下し、ガラスとしての外観が不十分なものとなる。前記ナノシリカとしては、市販のものを用いてもよく、例えば、「アドマナノ YA010C−SM1」(株式会社アドマテックス製)などを好適に用いることができる。
前記ナノシリカの含有量は、0.1重量%以上20重量%未満の範囲内であり、0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。ナノシリカの含有量が前記下限未満であると、耐摩耗性が十分ではなくなる。また、ナノシリカの含有量が前記上限以上であると、ハードコート層の樹脂ガラスに対する付着性が劣ったものとなるとともに、透明性も低下し、ガラスとしての外観が不十分なものとなる。
本発明の樹脂ガラス用ハードコート層の厚みは12μm以上30μm未満の範囲であり、17μm以上23μm以下であることが好ましい。樹脂ガラス用ハードコート層の厚みが前記下限未満であると、耐候性が十分ではなくなる。また、樹脂ガラス用ハードコート層の厚みが前記上限以上であると、材料のコストが増加してしまうとともに、紫外線硬化に要する時間も増加してしまう。また、ハードコート層を形成した樹脂ガラスの重量が大きくなり、実用性に乏しくなる場合がある。
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3および比較例1〜7)
樹脂ガラスとして、ポリカーボネートからなる基板を用いた。使用した樹脂ガラスのサイズは、縦15cm、横7.5cm、厚み3.0mmである。
前記基板に、表1に記載のナノシリカ粒径およびナノシリカ含有量のウレタンアクリル系樹脂層を形成した。ウレタンアクリル系樹脂としては、UV硬化型樹脂を使用し、表1に記載の条件(厚み、UV照射量)で樹脂層を形成して、ハードコート層とした。ハードコート層を形成したハードコート層形成樹脂ガラスについて、以下の評価を行った。
〈付着性(初期付着性)〉
実施例および比較例で得られたハードコート層形成樹脂ガラスに対してテープ剥離試験を行い、初期付着性を評価した。すなわち、テープ剥離試験として、各ハードコート層形成樹脂ガラスのハードコート層にカッターナイフでクロスカットを入れた後、クロスカットした部分にニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)CT−24を貼り付け、これを引き剥がしてハードコートの剥れの有無で初期付着性を評価した。なお、評価基準を以下に示す。
[付着性の評価基準]
◎:ハードコートが全く剥れなかった(合格)。
○:ハードコートの剥がれは、外観で見る限りなかった(合格)。
×:ハードコートが剥れた(不合格)。
〈耐候性〉
実施例および比較例で得られたハードコート層形成樹脂ガラスの耐候性を評価した。すなわち、下記に示す促進耐候性試験を行い、耐候性を評価した。このような促進耐候性試験には、試験機として光源にメタルハライドランプを用いた促進耐候性試験機(ダイプラ・ウインテス株式会社製の商品名「KU−R5C1−A」)を用い、光の照射、暗黒、結露の3条件を連続で負荷した後、試験前後の色差ΔEを測定した。なお、前記照射の条件は、照度90mW/cm、ブラックパネル温度63℃、相対湿度70%の条件下で4時間光を照射するものであり、前記暗黒の条件は光を照射せずにブラックパネル温度70℃、相対湿度90%の条件下で4時間保持するものであり、前記結露の条件は、光を照射せずに相対湿度98%の条件下でブラックパネル温度を70℃から30℃に自然冷却させて4時間保持するものである。評価基準を以下に示す。
[耐候性の評価基準]
◎:外観上、変退色なし(ΔE<1.0)
○:外観上少し変退色はあるが問題ないレベル(1.0≦ΔE≦3.0)
×:外観上問題があるレベル(ΔE>3.0)
〈耐摩耗性〉
実施例および比較例で得られたハードコート層形成樹脂ガラスの耐摩耗性を評価するためにテーバー摩耗試験を行った。すなわち、各ハードコート層形成樹脂ガラスに対して、テーバー試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着し、片輪500g荷重で500回転テーバー摩耗試験を行い、テーバー摩耗試験後のヘイズとテーバー摩耗試験前のヘイズとの差ΔHを測定して耐擦傷性を評価した。評価基準を以下に示す。
[耐摩耗性の評価基準]
◎:外観上全くわからないレベル(ΔH<1.0)
○:外観上殆どわからないレベル(1.0≦ΔH<3.0)
△:外観上若干白濁しているが問題ないレベル(3.0≦ΔH≦4.0)
×:外観上違和感あるレベル(ΔH>4.0)
〈外観(透明性)〉
実施例および比較例で得られたハードコート層形成樹脂ガラスの外観(透明性)を以下の方法で評価した。規定の水準で塗布したハードコート付き樹脂ガラスに対し、外観が良くわかる環境下(例:側面、上部に蛍光灯設置)において、外観の透明度(曇り度)について5名で目視確認を実施した。評価基準を以下に示す。
[外観(透明性)の評価基準]
◎:外観上全く問題なし(5名とも問題なしと判断)。
○:外観上問題なし(5名中4名が問題なしと判断)。
×:外観上問題あり(5名中3名以下が問題なしと判断)。
Figure 2016138208
表1に示すように、実施例1では耐摩耗性が最良ではなかったものの問題のないレベルであった。このように、粒径10nmのナノシリカを0.1重量%添加した、厚み20μmの層とすることで、付着性、耐候性、外観に優れた樹脂ガラス用ハードコート層が得られていることがわかる。実施例1の条件からナノシリカの添加量を増やして10重量%とした実施例2については、さらに、良好な耐摩耗性も得ることができた。実施例3は、実施例1および2と比較して、耐候性と耐摩耗性が若干劣るものの、好適に使用可能なものであった。
比較例1〜7においては、いずれかの評価項目において問題が生じていた。ハードコート厚みが5μmである比較例1、比較例2および比較例3では、耐候性が満足できるものではなかった。ナノシリカの含有量が20重量%である比較例3、比較例4および比較例5では、付着性および外観(透明性)に問題があった。ナノシリカの粒径が300nmである比較例3、比較例6および比較例7では、外観(透明性)に問題があった。
このように、ウレタンアクリル系樹脂中に特定範囲の粒径のナノシリカを特定範囲の割合で含有させ、さらに、形成するハードコート層の厚みを特定の範囲とすることで、1層の構成(「1コート」方式)であっても耐候性および耐摩耗性を両立可能なハードコート層を得ることができた。このような「1コート」方式とすることで、ハードコート剤のコストを、約30%削減することが可能となり、また、「1コート」かつUV硬化方式とすることで、ハードコートの塗布工程に要する時間を、約三分の一に短縮することが可能であった。
以上のように、本発明によると、耐候性および耐摩耗性を向上させるとともに、工程の短縮化およびコスト低減を実現させることが可能な、樹脂ガラス用コート層が得られていることがわかる。本発明の樹脂ガラス用コート層を有している樹脂ガラスは、上記の特性を備えることができるため、例えば、自動車用のガラス部材として好適に使用できる。

Claims (1)

  1. 粒径5nm以上300nm未満のナノシリカを0.1重量%以上20重量%未満の範囲内で含むウレタンアクリル系樹脂層が、厚み12μm以上30μm未満の範囲で形成されていることを特徴とする、樹脂ガラス用ハードコート層。
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JP2019055366A (ja) * 2017-09-21 2019-04-11 株式会社小糸製作所 車両用の樹脂製複合モジュール及びその製造方法
WO2019202942A1 (ja) * 2018-04-19 2019-10-24 フクビ化学工業株式会社 反射防止板

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