JP2016134374A - 透明電極積層用基板及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

透明電極積層用基板及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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伸一 小松
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歩 古俣
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Rieko FUJISHIRO
理恵子 藤代
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亜紗子 京武
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Abstract

【課題】十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有することを可能とする透明電極積層用基板の提供。【解決手段】厚みが5〜100μmのガラス基板と、前記ガラス基板の表面上に積層された厚みが1〜50μmのポリイミド層とを備え、かつ、前記ポリイミド層が下記一般式(1):[式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子等を示し、R10は炭素数6〜40のアリール基を示し、nは0〜12の整数を示す。]で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなる層であることを特徴とする透明電極積層用基板。【選択図】なし

Description

本発明は、透明電極積層用基板及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子の分野や、そのような素子を用いた表示装置の分野において、透明電極積層用基板等にフレキシブルな基板を用いることが検討されており、近年では、薄いガラス基板と高分子フィルムとの積層体を用いることが提案されている。例えば、特開2007−220563号公報(特許文献1)においては、ガラス基板の第一の表面上に高分子溶液から高分子膜をキャスティング成膜する第一工程と、前記ガラス基板の前記第一の表面の裏側にある第二の表面をエッチングして前記ガラス基板の厚みを薄くする第二工程とにより得られる積層体を有機電子デバイスに利用することが提案されている。なお、特開2007−220563号公報(特許文献1)においては、前記第二工程により前記ガラス基板の厚みが1μm以上0.2mm以下になることが記載され、更に、実施例1において高分子膜の厚みが100μmであることが記載されている。また、特開2007−220563号公報(特許文献1)においては、前記高分子膜に関して、前記高分子膜が脂肪族もしくは脂環式ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱硬化性ビニルエステル樹脂、熱硬化性ビスフェノールA樹脂、カルド系樹脂、透明光硬化性樹脂、透明シリコーン樹脂のいずれかを主成分として含んでいる旨が記載されるとともに、可撓性を持った高分子膜であれば適用可能であるため、これらの高分子材料に限定されるものではないことが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載のような積層体は、特に高分子膜の耐熱性の点では必ずしも十分なものではなかった。そのため、発光素子や表示装置の分野においては、より高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有する透明電極積層用基板の出現が望まれている。
特開2007−220563号公報
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有することを可能とする透明電極積層用基板、並びに、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、透明電極積層用基板を、厚みが5〜100μmのガラス基板と、前記ガラス基板の表面上に積層された厚みが1〜50μmのポリイミド層とを備えた構成とするとともに、前記ポリイミド層を下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなる層とすることにより、その透明電極積層用基板が、十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有することが可能なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の透明電極積層用基板は、厚みが5〜100μmのガラス基板と、前記ガラス基板の表面上に積層された厚みが1〜50μmのポリイミド層とを備え、かつ、
前記ポリイミド層が下記一般式(1):
[式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、R10は炭素数6〜40のアリール基を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなる層であることを特徴とするものである。
上記本発明の透明電極積層用基板においては、前記ポリイミドが、下記一般式(2)及び(3):
[式(2)及び(3)中、R、R、R、R10、nは、それぞれ式(1)中のR、R、R、R10、nと同義である。]
で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるものであることが好ましい。
また、上記本発明の透明電極積層用基板においては、前記ポリイミド層の厚みが1〜25μmであることが好ましい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記本発明の透明電極積層用基板を備えることを特徴とするものである。
なお、本発明の透明電極積層用基板によって、十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有すること等が可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明においては、厚みが5〜100μmと非常に薄いガラス基板を用い、そのガラス基板上に厚みが1〜50μmと極めて薄いポリイミド層を積層しているため、十分に柔軟性が高く、フレキシブル性(可撓性)の高い基板となる。また、本発明においては、前記ポリイミド層を上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなる層としていることから、他のポリイミドを利用した場合と比較しても、非常に高度な耐熱性が得られるものと本発明者らは推察する。また、上記特許文献1に記載のような積層体と比較して、本発明の透明電極積層用基板は、十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有するため、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板に、より好適に利用できる。
本発明によれば、十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有することを可能とする透明電極積層用基板、並びに、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。
透明電極積層用基板の最大曲げ強さや弾性率の測定の際の支持板と試料との配置関係を模式的に示す概略縦断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の好適な一実施形態を模式的に示す概略縦断面図である。 実施例1で得られた透明電極用基板のガラス基板側の面の反射型IRスペクトルを示すグラフである。 実施例1で得られた透明電極用基板のポリイミド層側の面の反射型IRスペクトルを示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[透明電極積層用基板]
本発明の透明電極積層用基板は、厚みが5〜100μmのガラス基板と、前記ガラス基板の表面上に積層された厚みが1〜50μmのポリイミド層とを備え、かつ、
前記ポリイミド層が下記一般式(1):
[式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、R10は炭素数6〜40のアリール基を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなる層であることを特徴とするものである。
(ガラス基板)
このようなガラス基板は厚みが5〜100μmのものである。このような厚みが前記下限未満では薄すぎて割れやすく、取り扱いが困難となり、他方、前記上限を超えると重厚で取り扱いが困難になるとともに熱履歴で割れが生じやすくなる。また、同様の観点で、前記ガラス基板の厚みは、10〜70μmであることが好ましく、20〜50μmであることが好ましい。
また、このようなガラス基板としては、厚みが前記範囲にあればよく、他の構成は特に制限されず、ポリイミド層を積層することが可能な公知のガラス基板を適宜利用することができる。また、このようなガラス基板としては、市販のものを適宜利用してもよい。
(ポリイミド層)
本発明にかかるポリイミド層は、前記ガラス基板の表面上に積層されたものである。また、このようなポリイミド層は厚みが1〜50μmのものである。このようなポリイミド層の厚みが前記下限未満では薄すぎて破断しやすく、取り扱いが困難となり、他方、前記上限を超えると製膜時に残留溶剤が除去し難くなり気泡やボイドが生じたり、膜の均一性を調整するのが困難となる。また、同様の観点で、前記ポリイミド層の厚みは、1〜30μmであることが好ましく、1〜25μmであることが好ましい。
また、本発明にかかるポリイミド層は、上記記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなる層である。このような一般式(1)中のR、R、Rとして選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えるとガラス転移温度が低下し十分に高度な耐熱性が達成できなくなる。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
前記一般式(1)中のR、R、Rとしては、ポリイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られるという観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、中でも、原料の入手が容易であることや精製がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR、R、Rは精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。
また、前記一般式(1)中のR10として選択され得るアリール基は、炭素数が6〜40のアリール基である。また、このような炭素数としては6〜30であることが好ましく、12〜20であることがより好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、得られたポリイミドの溶媒に対する溶解性が低下する傾向にある。
また、前記一般式(1)中のR10としては、耐熱性と溶解性のバランスの観点から下記一般式(4)〜(7):
[式(6)中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基及びトリフルオロメチル基よりなる群から選択される1種を示し、式(7)中、Qは、式:−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−C−、−NHCO−C−CONH−、−CONH−C−NHCO−、−SO−、−C(CF−、−C(CH−、−CH−、−O−C−C(CH-C−O−、−O−C−SO-C−O−、−C(CH−C−C(CH−、−O−C−C−O−及び−O−C−O−で表される基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
このような一般式(6)中のR11としては、耐熱性の観点から、水素原子、フッ素原子、メチル基又はエチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
また、上記一般式(7)中のQとしては、耐熱性と溶解性のバランスという観点から、式:−O−C−O−、−O−、−C(CH−、−CH−、又は−O−C−C(CH-C−O−、で表される基が好ましく、式:−O−C−O−又は−O−で表される基が特に好ましい。
また、このようなR10として選択され得る一般式(4)〜(7)で表される基としては、より高度な耐熱性が得られるという観点から、一般式(6)又は(7)で表される基がより好ましく、一般式(7)で表される基が特に好ましい。
また、前記一般式(1)中のnは0〜12の整数を示す。このようなnの値が前記上限を超えると、精製が困難になる。また、このような一般式(1)中のnの数値範囲の上限値は、より精製が容易となるといった観点から、5であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。また、このような一般式(1)中のnの数値範囲の下限値は、製造時に利用するモノマーの安定性の観点や、モノマーの安定性に由来して、より効率よくポリイミドを製造することが可能であるとの観点、耐熱性や分解温度等の熱物性の観点、引張強度や曲げ強度等の機械的物性の観点、透明性や複屈折等の光学特性の観点等から、1であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。このように、一般式(1)中のnとしては、2〜3の整数であることが特に好ましい。
また、このような一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドとしては、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を主として含有するものが好ましい。また、このようなポリイミドにおいて、上記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して50〜100モル%(より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは98〜100モル%、最も好ましくは100モル%)であることが好ましい。このような含有量はポリイミドの製造時に利用するモノマーの種類やそれらの比率を適宜変更することで容易に上記範囲とすることができる。
さらに、このような一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドとしては、下記一般式(2)及び(3):
[式(2)及び(3)中、R、R、R、R10、nは式(1)中のR、R、R、R10、nと同義である(その好適なものも同義である)。]
で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上(更に好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは98〜100モル%、最も好ましくは100モル%)である脂環式のポリイミドがより好ましい。なお、上記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位はそれぞれ、一般式(1)で表される繰り返し単位のうちの2種の立体異性体からなる繰り返し単位である。そのため、式(2)及び(3)中のR、R、R、R10、nは式(1)中のR、R、R、R10、nと同義である(その好適なものも同義である)。
また、このような一般式(2)で表される繰り返し単位及び一般式(3)で表される繰り返し単位を含有する場合には、一般式(2)で表される繰り返し単位と一般式(3)で表される繰り返し単位との含有比率がモル比(式(2):式(3))で9:1〜6:4(より好ましくは8:2〜7:3)であることが好ましい。なお、一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を含有する場合には、より効率よくポリイミドを調製できるという観点から、前記一般式(2)及び(3)中のR10以外の置換基の構成は同じであることが好ましい。
また、このようなポリイミドは、イミド化率が90%以上のものであることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、96〜100%であることが特に好ましい。このようなイミド化率が前記下限未満では、耐熱性や分解温度等の熱物性、引張強度や曲げ強度等の機械的物性、透明性や複屈折等の光学特性が低下する傾向にある。このようなイミド化率は、ポリイミドを重クロロホルム等のNMR溶媒に溶かし、残存しているポリアミド酸の−COOHと−CONH−のプロトン(H)の積分値をNMR測定することにより求められる値を採用する。
さらに、このようなポリイミドとしては、5%重量減少温度(Td5%)が400℃以上のものが好ましく、450〜550℃のものがより好ましい。このような5%重量減少温度(Td5%)が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような5%重量減少温度(Td5%)は、窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら室温(25℃)から徐々に加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めることができる。なお、このような5%重量減少温度(Td5%)は、TG/DTA220熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min.の条件で求めることができる。
また、このようなポリイミドとしては、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上のものが好ましく、300〜500℃のものがより好ましい。このようなガラス転移温度(Tg)が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にある。なお、このようなガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「DSC7020」)を使用して測定することができる。より具体的には、このようなポリイミドのガラス転移温度は、測定装置として示差走査熱量計(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「DSC7020」)を使用し、昇温速度:10℃/分及び降温速度:30℃/分の条件で、窒素雰囲気下、30℃から500℃の間を走査することにより求められる値を採用することができる。
なお、前記ガラス転移温度は耐熱性の観点からは、より高い温度であることが好ましい。また、前記ガラス転移温度の上限値である500℃は、前述の測定法を採用した場合のガラス転移温度の測定上限付近の温度である。このように、上述の測定法を採用した場合のガラス転移温度の測定上限が500℃程度であることから、ガラス転移温度が500℃まで測定されないようなポリイミドに対しては、特に耐熱性の観点から、例えば、軟化温度の上限値を指標として好適なものを判断してもよい。なお、本発明にかかるポリイミドとしては、ガラス転移温度とは関係なく、軟化温度が後述の温度範囲にあるものを好適に利用できるが、例えば、ガラス転移温度が500℃を超える温度となって測定できない場合には、軟化温度の上限値を好適なポリイミドの指標(特に耐熱性の観点での指標)として利用して、その特性を評価してもよく、この場合には、軟化温度が後述の数値範囲の上限を超えないものであることが好ましい。また、ガラス転移温度が500℃まで測定されず、かつ、軟化温度が後述の軟化温度の上限を超えるようなポリイミドは、ポリイミドを製造する際にポリアミド酸の熱閉環縮合反応と同時に十分な固相重合反応が進行せず、フィルムを形成した場合に却って脆いフィルムになる傾向がある。
また、このようなポリイミドとしては、軟化温度が350〜550℃のものが好ましく、360〜510℃のものがより好ましい。このような軟化温度が前記下限未満では耐熱性が低下し、例えば、太陽電池や液晶表示装置の透明電極用の基板としてポリイミドフィルムを用いた場合において、その製品の製造過程における加熱工程において、かかるフィルム(基板)の品質の劣化(割れの発生等)を十分に抑制することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリイミドを製造する際にポリアミド酸の熱閉環縮合反応と同時に十分な固相重合反応が進行せず、フィルムを形成した場合に却って脆いフィルムとなる傾向にある。なお、このようなポリイミドの軟化温度は以下のようにして測定することができる。すなわち、測定試料として縦5mm、横5mm、厚み0.013mm(13μm)の大きさのポリイミドからなるフィルムを準備し、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件を採用して、30℃〜550℃の温度範囲の条件でフィルムに透明石英製ピン(先端の直径:0.5mm)を針入れすることにより測定することができる(いわゆるペネトレーション(針入れ)法により測定できる)。なお、このような測定に際しては、JIS K 7196(1991年)に記載の方法に準拠して、測定データに基づいて軟化温度を計算する。
また、このようなポリイミドとしては、熱分解温度(Td)が450℃以上のものが好ましく、480〜600℃のものがより好ましい。このような熱分解温度(Td)が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような熱分解温度(Td)は、TG/DTA220熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min.の条件で熱分解前後の分解曲線にひいた接線の交点となる温度を測定することにより求めることができる。
さらに、このようなポリイミドの数平均分子量(Mn)としては、ポリスチレン換算で1000〜1000000であることが好ましく、10000〜100000であることがより好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となるばかりか、フィルムを製膜することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリイミドの粘性が増大し、溶剤溶解性が低下することから、加工が困難となる傾向にある。
また、このようなポリイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ポリスチレン換算で5000〜5000000であることが好ましい。また、このような重量平均分子量(Mw)の数値範囲の下限値としては、10000であることがより好ましく、20000であることが更に好ましく、50000であることが特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)の数値範囲の上限値としては、5000000であることがより好ましく、500000であることが更に好ましく、50000であることが特に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリイミドの粘性が増大し、溶剤溶解性が低下することから均一製膜が難しくなり、加工が困難となる傾向にある。
さらに、このようなポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。このような分子量分布が前記下限未満では製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると均一なフィルムを得にくい傾向にある。なお、このようなポリイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)は、測定装置としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製、商品名:HLC−8020/カラム4本:東ソー株式会社製、商品名:TSK gel HXLなど)を用い、溶媒としてクロロホルムやテトラヒドロフラン(THF)を用いて測定したデータをポリスチレンで換算して求めることができる。
このようなポリイミドにおいては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。このような他の繰り返し単位としては、例えば、ポリイミドに利用可能なものであればよく、特に制限されず、公知の繰り返し単位を適宜利用することができる。
また、このようなポリイミドは、線膨張係数が1〜100ppm/Kであることが好ましく、5〜70ppm/Kであることがより好ましい。このような線膨張係数が前記上限を超えると、ガラスに積層後、カールが生じたりガラスが割れたりする傾向にある。また、前記線膨張係数が、前記下限未満では前記と同様にガラスに積層後、カールが生じたりガラスが割れたりする傾向にある。
このようなポリイミドの線膨張係数の測定方法としては、縦:75mm、横50mm、厚み13μmの大きさのポリイミドフィルムを形成した後、そのフィルムを真空乾燥(120℃で1時間)し、窒素雰囲気下で200℃で1時間熱処理して得られた乾燥フィルムを測定用試料として用い、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃〜200℃における前記試料の縦方向の長さの変化を測定して、50℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求めることにより得られる値を採用する。
また、このようなポリイミドとしては、フィルムを形成した場合に透明性が十分に高いものであることが好ましく、全光線透過率が80%以上(更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上)であるものがより好ましい。このような全光線透過率は、ポリイミドの種類等を適宜選択することにより容易に達成することができる。なお、このような全光線透過率としては、本発明のポリイミドを用いて縦:75mm、横50mm、厚み13μmの大きさのポリイミドフィルムを形成して試料とし、測定装置として、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用いて測定した値を採用することができる。
このようなポリイミド層の製造方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、国際公開第2011/099518号、国際公開第2014/034760号に記載の方法)を採用して適宜製造することができる。
また、ガラス基板上にポリイミド層を積層する方法としては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(8):
[式(8)中、R、R、R、nは前記一般式(1)中のR、R、R、nと同義である。]
で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーと、下記一般式(9):
[式(9)中、R10は前記一般式(1)中のR10と同義である。]
で表される芳香族ジアミンとを反応させて、ポリアミド酸を形成した後、該ポリアミド酸を含有するポリアミド酸溶液を、前記ガラス基板上に塗布し、イミド化せしめて、前記一般式(1)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を有するポリイミドからなる層を形成して、ガラス基板上にポリイミド層を積層する方法を採用してもよい。なお、上記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上となるポリイミドからなるポリイミド層を積層する場合には、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーとして、下記一般式(10)及び(11):
[式(10)及び(11)中、R、R、R、nは前記一般式(1)中のR、R、R、nと同義である。]
で表される化合物の総量が90モル%以上である脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーを用いればよい。なお、このような脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーや前記芳香族ジアミン、これらを反応させる方法、イミド化の方法等の具体的な方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、国際公開第2011/099518号に記載の方法や国際公開第2014/034760号に記載の方法等を適宜採用すればよい。
なお、このようなポリイミドの製造に用いることが可能な、前記ポリアミド酸の固有粘度[η]は、0.05〜3.0dL/gであることが好ましく、0.1〜2.0dL/gであることがより好ましい。このような固有粘度[η]が0.05dL/gより小さいと、これを用いてフィルム状のポリイミドを製造した際に、得られるフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、3.0dL/gを超えると、粘度が高すぎて加工性が低下し、例えばフィルムを製造した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる。また、このような固有粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドを用い、そのN,N−ジメチルアセトアミド中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解させて、測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC−252」)を用いる。
また、ガラス基板上にポリイミド層を積層する方法としては、前記ポリアミド酸溶液を用いて別途ポリイミドフィルムを作成しておき、かかるポリイミドフィルムをガラス基板の表面上に接着剤等を用いて接着して、ガラス基板上にポリイミド層を積層する方法を採用してもよい。なお、このようなガラス基板上にポリイミド層を積層する方法の中でも、平滑性、作業性、接着性、耐熱性(接着剤の耐熱性)等の観点からは、前記ポリアミド酸溶液をガラス基板上に塗布し、イミド化せしめて、ガラス基板上にポリイミド層を直接積層する方法を採用することが好ましい。
本発明の透明電極積層用基板は総厚みが6〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。このような総厚みが前記下限未満では薄すぎて割れやすく、取り扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重厚で取り扱いが困難になるとともに熱履歴で割れが生じやすくなる傾向にある。
また、このような透明電極積層用基板は、透明性が十分に高いものであることが好ましく、全光線透過率が80%以上(更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上)であるものがより好ましい。このような全光線透過率は、ポリイミド層を形成するポリイミドの種類等を適宜選択することにより容易に達成することができる。なお、このような全光線透過率としては、測定装置として、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用いて測定した値を採用することができる。
また、本発明の透明電極積層用基板は最大曲げ強さが100〜10000MPaのものが好ましく、500〜5000MPaであることがより好ましい。このよう最大曲げ強さが前記下限未満では割れやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると加工が困難となる傾向にある。
また、本発明の透明電極積層用基板は弾性率(曲げ弾性率)が1000〜10000000MPaのものが好ましく、10000〜1000000MPaであることがより好ましい。このよう弾性率が前記下限未満では割れやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると加工が困難となる傾向にある。
なお、このような透明電極積層用基板の最大曲げ強さや弾性率は、以下のような測定方法により測定される値を採用する。すなわち、このような透明電極積層用基板の最大曲げ強さや弾性率の測定方法としては、透明電極積層用基板の試料として、長さ80mm、幅20mmの大きさの面(表面)を有し、かつ、総厚みが63μmとなる試料(ガラス基板の厚みを50μm、ポリイミド層の厚みを13μmとする。)を調製して利用し、測定装置としてINSTRON社製の商品名「静的材料試験機5943(ロードセルの定格容量:100N)」を用い、該装置の3点曲げ試験用治具(支持板)を利用し、該試験用治具(支持板)を支点間の距離が6mmとなるように配置して、3点曲げ試験を実施して、最大曲げ強さや弾性率を測定する方法を採用することができる。ここで、支持板(3点曲げ試験用治具)と試料との配置関係を模式的に図1に示す。図1に示すように、このような測定に際しては、先ず、2枚の支持板100(前記3点曲げ試験用治具)間の距離(支点間の距離)Lが6mmとなるように間隔を空けて、2枚の支持板100を平行に配置する。なお、各支持板100は、それぞれ、長さが20mmでかつ幅Wが1mmの面(支持面)Sを有する板である。このような2枚の支持板100は、その支持面Sが地面と水平となるようにそれぞれ配置するとともに、各板100どうしの長さ方向が平行となるようにして配置する。次いで、2枚の支持板100の各支持面S上に、該2枚の板100の幅Wが1mmの辺と、試料110の表面の長さXが80mmの辺とが同じ向きとなるようにして(試料110の幅20mmの方向と、2枚の板100の幅Wの方向が垂直となるようにして)、かつ、試料110の長さXが80mmでかつ幅が20mmの表面が、地面と水平になるようにして(試料110の厚みTの方向が地面と垂直となるようにして)、試料110を配置する。なお、このような試料110の配置に際して、試料110の中心が、平行に置かれた板100と板100の間(平行板間)の中心線上であって、かつ、平行板間の中心に配置されるようにして試料110を配置する。この際に、前記平行板上に、試料110のガラス面側が上を向くようにして、試料110を配置する(支持面Sにポリイミド層が接するように試料110を配置する。)。このように配置した後、最大曲げ強さや弾性率を測定する際には、前記測定装置の圧子(先端部の形状は半径0.25mmの半球状)120で、試料110の中心部をガラス面側から下向きに1.27mm/分の速度で押圧し、試料110が破断するまでの最大荷重、針入長さを測定する。そして、得られた測定値(測定データ)から計算して、最大曲げ強さや弾性率を求めることができる。なお、このような透明電極積層用基板の最大曲げ強さや弾性率の測定方法は、JIS K 7171(2008年発行)に準じる方法である。
このような本発明の透明電極積層用基板は、ガラス基板と上記一般式(1)で表されるポリイミド(脂環式のポリイミド)からなるポリイミド層とを有するものであることから、透明性が十分に高いばかりか、十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有するものとなる。また、本発明の透明電極積層用基板は、ガラス基板を備えるため、水蒸気やガス(空気など)の透過を十分に防止することが可能である。このように、本発明の透明電極積層用基板を用いる場合には、その基板自体が水蒸気やガス(空気など)の透過を十分に防止することが可能なものであるため、ガスバリア層を別途設ける必要もない。そのため、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス照明、太陽電池、有機半導体、有機トランジスタ、有機メモリー等の透明電極を積層させるための基板として特に有用である。
[有機エレクトロルミネッセンス素子]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記本発明の透明電極積層用基板を備えることを特徴とするものである。
このような有機エレクトロルミネッセンス素子としては、透明電極積層用の基板として上記本発明の透明電極積層用基板を備える以外、他の構成は特に制限されず、公知の構成のものを適宜利用することができる。以下、このような本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)として好適な一実施形態を図面を参照しながら簡単に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図2は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の好適な一実施形態の概略縦断面図である。図2に示す有機EL素子は、ガラス基板11と、ポリイミド層12と、透明電極層13と、有機層14と、金属電極層15とを備えるものである。
このような有機EL素子中のガラス基板11とポリイミド層12からなる構成部分10は、上記本発明の透明電極積層用基板からなるものである。このようなガラス基板11とポリイミド層12は、上記本発明の透明電極積層用基板において説明したガラス基板及びポリイミド層と同様のものである。なお、上記本発明の透明電極積層用基板は、ガラス基板11を備えるため、水蒸気やガス(空気など)の透過を十分に防止することが可能なものである。
透明電極層13は有機EL素子の透明電極として利用する層である。このような透明電極層13の材料としては、有機EL素子の透明電極に利用可能なものであればよく、特に制限されず、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、金、白金、銀、銅が用いられる。これらの中でも、透明性と導電性の兼ね合いの観点から、ITOが好ましい。
また、透明電極層13の厚みは20〜500nmの範囲であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、導電性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、透明性が不十分となり発光したEL光を十分に外部に取り出せなくなる傾向にある。
なお、ポリイミド層12と透明電極層13との間に、いわゆる薄膜トランジスタ(TFT)層を形成してもよい。このようにTFT層を設けることで、TFTに接続された透明電極を有する装置(TFT素子)を形成することも可能となる。このようなTFT層の材料や構成は特に制限されず、公知のTFTの構成に基づいて適宜設計することができる。また、透明電極積層用基板10のポリイミド層12上にTFT層を設けた場合には、これらの積層体を、いわゆるTFT基板として利用することも可能である。なお、このようなTFT層の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、低温ポリシリコン法、高温ポリシリコン法、アモルファスシリコン法、酸化物半導体法、有機トランジスタ法などの製造方法を採用してもよい。
有機層14は、有機EL素子を形成するために用いることが可能なものであればよく、その構成は特に制限されず、公知の有機EL素子の有機層に利用可能なものを適宜利用することができる。また、このような有機層14の構成も特に制限されず、公知の構成を適宜採用でき、例えば、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層からなる積層体を有機層としてもよい。
このような正孔輸送層の材料としては、正孔輸送層を形成させることが可能な公知の材料を適宜用いることができ、例えば、ナフチルジアミン(α−NPD)、トリフェニルアミン、トリフェニルジアミン誘導体(TPD)、ベンジジン、ピラゾリン、スチリルアミン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、カルバゾール等の誘導体等を用いることができる。
また、発光層は、電極層等から注入される電子及び正孔が再結合して発光する層であり、かかる発光層の材料としては特に制限されず、有機EL素子の発光層を形成させることが可能な公知の材料を適宜用いることができ、例えば、4,4’−N,N’−dicarbazole−biphenyl(CBP)にトリスフェニルピリジナトイリジウム(III)錯体(Ir(ppy))をドープした材料や、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq、green、低分子)、bis−(8−hydroxy)quinaldine aluminum phenoxide(Alq’OPh、blue、低分子)、5,10,15,20−tetraphenyl−21H,23H−porphine(TPP、red、低分子)、poly(9,9−dioctylfluorene−2,7−diyl)(PFO、blue、高分子)、poly[2−methoxy−5−(2’−ethylhexyloxy)−1,4−(1−cyanovinylene)phenylene](MEH−CN−PPV、red、高分子)、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる材料などの電圧の印加によって発光する公知の材料を適宜利用することができる。
さらに、電子輸送層の材料としては特に制限されず、電子輸送層を形成させることが可能な公知の材料を適宜用いることができ、例えば、アルミニウムキノリノール錯体(Alq)、フェナンスロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェニルキノキサリン誘導体、シロール誘導体を用いることができる。
また、有機層14が、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層からなる積層体である場合、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の各層の厚みは特に制限されないが、それぞれ1〜50nmの範囲(正孔輸送層)、5〜200nmの範囲(発光層)、及び5〜200nmの範囲(電子輸送層)であることが好ましい。また、有機層14の全体の厚みとしては20〜600nmの範囲であることが好ましい。
金属電極層15は金属からなる電極である。このような金属電極の材料としては、仕事関数の小さな物質を適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、MgAg、MgIn、AlLiが挙げられる。また、金属電極層15の厚みは50〜500nmの範囲であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、導電性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、剥離し易くなったりクラックが発生し易くなる傾向にある。
なお、このような有機EL素子の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、以下のような方法(A)を採用することができる。このような方法(A)は、先ず、上記本発明の透明電極積層用基板を準備した後、上記本発明の透明電極積層用基板のポリイミド層が形成されている面上に前記透明電極、前記有機層及び前記金属電極を順次積層する方法である。
前記ポリイミド層が形成されている面上に透明電極層13を積層する方法としては、蒸着法、スパッター法等の公知の方法を適宜採用することができ、中でも、周密な膜とするための観点から、スパッター法を採用することが好ましい。
また、透明電極層13の表面上に有機層14を積層する方法も特に制限されず、例えば、有機層を、前述のように、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層からなる積層体とする場合には、これらの層を透明電極層13上に順次積層すればよい。なお、このような有機層14中の各層を積層する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、蒸着法、スパッター法、塗布法等を採用することができる。これらの方法の中でも、有機層の分解、劣化及び変性を十分に防止するという観点から、蒸着法を採用することが好ましい。
さらに、有機層14上に金属電極層15を積層する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、蒸着法、スパッター法等を採用することができる。これらの方法の中でも、先に形成した有機層14の分解、劣化および変性を十分に防止するという観点から、蒸着法を採用することが好ましい。
以上、本発明の有機EL素子の好適な一実施形態について説明したが、本発明の有機EL素子は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、有機層14は、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の積層体からなるものを例示しているが、有機層の形態は特に制限されるものではなく、公知の有機層の構成を適宜採用することができ、例えば、正孔注入層と発光層との積層体からなる有機層;発光層と電子注入層との積層体からなる有機層;正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体からなる有機層;又は、バッファー層と正孔輸送層と電子輸送層との積層体からなる有機層等とすることができる。なお、このような有機層の他の形態における各層の材料は特に制限されず、公知の材料を適宜用いることができる。例えば、電子注入層の材料としては、ペリレン誘導体等を用いてもよく、正孔注入層の材料としてはトリフェニルアミン誘導体等を用いてもよく、陽極バッファー層の材料としては銅フタロシアニン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等を用いてもよい。また、上記実施形態においては配置されていない層であっても、有機EL素子に利用することが可能な層であれば適宜配置してもよく、例えば、有機層14への電荷注入又は正孔注入を容易にするという観点から、透明電極層13上或いは有機層14上に、フッ化リチウム(LiF)、Li等の金属フッ化物、Ca、Ba、Cs等の活性の高いアルカリ土類金属、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。
また、上記実施形態においては、前記透明電極積層用基板のポリイミド層が形成されている面上に、前記透明電極、前記有機層及び前記金属電極からなる有機EL素子部が積層されているが、本発明の有機EL素子としては、かかる有機EL素子部が前記透明電極積層用基板のガラス基板上に積層されていてもよい。なお、ポリイミド層による平滑性向上によるピンホール防止やダークスポット防止の観点からは、本発明の有機EL素子としては、前記透明電極積層用基板のポリイミド層が形成されている面上に前述のような有機EL素子部が積層されていることが好ましい。また、ガラスの両面にポリイミド層を形成しても良い。さらに本発明の有機EL素子においては、封止層等の公知の層を必要に応じて適宜利用してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<分子構造の同定>
各実施例及び各比較例で用いたポリイミドの分子構造の同定は、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−460、FT/IR−4100)及びNMR測定機(VARIAN社製、商品名:UNITY INOVA−600を用いて、IR及びNMRスペクトルを測定することにより行った。
<固有粘度[η]の測定>
各実施例及び各比較例において中間体として得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は、前述のように、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC−252」)を用い、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒とした濃度0.5g/dLの測定試料を用いて30℃の温度条件下において測定した。
<ポリイミドの線膨張係数の測定>
実施例1で形成された各層のポリイミドの線膨張係数は、以下のようにして調製された測定用試料をそれぞれ用いて、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃〜200℃における前記試料の長さの変化を測定して、50℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求めることにより測定した。
〈線膨張係数の測定用試料の調製〉
先ず、後述の実施例1において調製されたポリアミド酸溶液をガラス基板(縦:75mm、横50mm、厚み1.3mm)上に加熱硬化後の塗膜の厚みが13μmとなるようにスピンコートして、塗膜を形成した。次に、前記塗膜の形成されたガラス基板を60℃のホットプレート上に載せて2時間静置することで溶媒を蒸発させた。その後、前記塗膜(溶媒を蒸発させた後の塗膜)の形成されたガラス基板を3L/分の流量で窒素が流れている250mm角イナートオーブン中に投入して、窒素雰囲気下、25℃の温度条件において0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、更に370℃の温度条件で1時間加熱し、塗膜を硬化せしめることにより、ガラス基板上にポリイミドフィルムを積層した。次いで、該ポリイミドフィルム付のガラス基板を90℃のお湯に浸漬し、ガラス基板からポリイミドフィルム(縦:75mm、横50mm、厚み13μm)を剥離して回収した。次いで、得られたポリイミドフィルムに対して真空乾燥(120℃、1時間(Hr))を行った後、窒素雰囲気下、200℃で1時間(Hr)熱処理して、ポリイミドフィルムを乾燥フィルムとし、かかる乾燥フィルムを線膨張係数の測定用試料とした。
<三点曲げ試験による特性の測定>
各実施例及び各比較例で調製した透明電極積層用基板の最大曲げ強さ、最大荷重、弾性率を以下のようにして測定した(なお、以下に説明する測定方法は、前述の透明電極積層用基板の最大曲げ強さや弾性率の測定方法と同様の方法である。)。
すなわち、透明電極積層用基板の最大曲げ強さ、最大荷重、弾性率の測定に際しては、先ず、実施例1で調製した透明電極積層用基板に関しては、その透明電極積層用基板を長さ80mm、幅20mm、厚み63μmの大きさに切断したものを測定用の試料として利用した。また、各比較例においては調製したガラス基板をそのまま測定用の試料として利用した。また、測定装置としては、INSTRON社製の商品名「静的材料試験機5943(ロードセルの定格容量:100N)」を用い、該装置の3点曲げ試験用治具(支持板)を利用し、図1に示すような配置関係で、3点曲げ試験用治具(支持板)及び試料を配置した。ここにおいて、先ず、図1に示すように、支点間の距離Lが6mmとなるように間隔を空けて平行に置かれた2枚の支持板100(長さ:20mm、幅W:1mmの支持面Sを有する板:前記3点曲げ試験用治具)の支持面S上に、該板100の長さ20mmの辺と前記試料の長さXが80mmの辺とが垂直となるようにして(試料110の幅20mmの方向と、2枚の板100の幅Wの方向が垂直となるようにして)、試料110を配置する。なお、このような配置に際して、試料100の中心が、前記平行に置かれた板と板の間(平行板間)の中心線上であって、かつ、平行板間の中心に配置されるようにして試料100を配置した。また、試料100は、図1に示すように、前記平行板の面S上において、試料110のガラス面側が上を向くようにして配置した(試料110の厚みTの方向が地面と垂直となるように配置した)。次いで、前記測定装置の圧子(先端部の形状は半径0.25mmの半球状)120で、試料100の中心部をガラス面側から下向きに1.27mm/分の速度で押圧し、試料100が破断するまでの最大荷重、針入長さを測定し、次いで、その測定値データに基づいて計算して透明電極積層用基板の最大曲げ強さや弾性率を求めた。そして、このようにして求められた最大曲げ強さ、最大荷重、弾性率の値を、透明電極積層用基板の最大曲げ強さ、最大荷重、弾性率として採用した。
<全光線透過率の測定>
各実施例及び各比較例で調製した透明電極積層用基板の全光線透過率は、各透明電極積層用基板をそれぞれ用いて、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用いてJIS K7361−1に準拠した測定を行うことにより求めた。
<ガラス転移温度の測定>
実施例1で得られた透明電極積層用基板に用いたポリイミドのガラス転移温度は以下のようにして測定した。すなわち、測定用試料として、実施例1で得られたガラス基板とポリイミド層との積層体の一部を90℃のお湯に浸漬し、ガラス基板から剥離したポリイミド膜を取得し、これを窒素雰囲気下、150℃の条件で乾燥した後、縦5mm、横5mm、厚み0.013mm(13μm)の大きさに裁断し、ポリイミドからなるフィルムを準備した。次いで、該測定用試料(ポリイミドからなるフィルム)を用い、測定装置として示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「DSC7020」)を使用し、走査温度を30℃から500℃に設定し、昇温速度:10℃/分及び降温速度:30℃/分の条件で、窒素雰囲気下において、ポリイミドのガラス転移温度を測定した。
<軟化温度の測定>
実施例1で得られた透明電極積層用基板に用いたポリイミドの軟化温度は、上記ガラス転移温度の測定用試料の調製方法と同様の方法を採用して調製した測定用試料を用いて、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分、30℃〜550℃の温度範囲の条件でフィルムに透明石英製ピン(先端の直径:0.5mm)を500mN圧で針入れすることにより測定した(いわゆるペネトレーション(針入れ)法による測定)。このような測定に際しては、上記測定試料を利用する以外は、JIS K 7196(1991年)に記載の方法に準拠して、測定データに基づいて軟化温度を計算した。
<5%重量減少温度(Td5%)の測定>
5%重量減少温度(Td5%)は、上記ガラス転移温度の測定用試料の調製方法と同様の方法を採用して調製した測定用試料を用いて、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA220熱重量分析装置」を測定装置として使用し、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min.の条件で求めた。
(実施例1)
<脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーの準備工程>
国際公開第2014/034760号の実施例1のモノマー合成工程に準拠して、下記一般式(12):
で表されるトランス、エンド、エンド−ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物及び下記一般式(13):
で表されるシス、エンド、エンド−ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物の混合物(脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー:上記一般式(12)及び(13)で表される化合物の含有比率が99モル%(残りの成分はノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物のトランス−エンド−エンド異性体及びシス−エンド−エンド異性体以外の他の異性体である。)であり、上記一般式(12)で表される化合物と上記一般式(13)で表される化合物のモル比([式(12)]:[式(13)])が63:37である混合物)を準備した。
なお、化合物中の異性体の同定はHPLC測定により行った値を採用した。このようなHPLC測定は、測定装置としてアジレントテクノロジー株式会社製の商品名「1200 Series」を用い、カラムとしてアジレントテクノロジー株式会社製の商品名「Eclipse XDB−C18(5μm、直径4.6mm、長さ150mm)」を用い、溶媒としてアセトニトリルと蒸留水との混合物(アセトニトリル/蒸留水=70ml/30ml)を用い、溶媒の流速を1ml/min.とし、ダイオードアレイ検出器(DAD)の検出波長を210nmに設定し、温度を35℃とし、試料として測定する化合物を溶媒1.5mlに対して1mg添加して調製したものを用いて行った。そして、トランス−エンド−エンド異性体及びシス−エンド−エンド異性体の総量(含有比率:純度)、及び、トランス−エンド−エンド異性体とシス−エンド−エンド異性体とのモル比は、HPLCの面積比より検量線(標準試料:ナフタレン)を用いて算出することにより求めた。
<ポリアミド酸溶液の調製工程>
先ず、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱して十分に乾燥させた。次に、十分に乾燥させた前記三口フラスコ内の雰囲気ガスを窒素で置換して、前記三口フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、前記三口フラスコ内に、4,4’−ジアミノベンズアニリド0.2045g(0.90mmol:日本純良薬品株式会社製:4,4’−DABAN)を添加した後、更に、N,N−ジメチルアセトアミドを2.7g添加して、撹拌することにより、前記N,N−ジメチルアセトアミド中に4,4’−ジアミノベンズアニリド(芳香族ジアミン化合物:4,4’−DABAN)を溶解させて溶解液を得た(なお、4,4’−DABANは一部溶解)。
次に、前記溶解液を含有する三口フラスコ内に、窒素雰囲気下、上記一般式(12)及び(13)で表される化合物の混合物(脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー)を0.3459g(0.90mmol)添加した後、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間撹拌して、ポリアミド酸を形成し、反応液としてポリアミド酸溶液を得た。このようにして溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド)中においてポリアミド酸を形成して、反応液(ポリアミド酸溶液)を得た。
なお、このようにして形成されたポリアミド酸の固有粘度[η]を、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC−252」)を用い、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒として、濃度0.5g/dLのポリアミド酸の測定試料を調整して、30℃の温度条件下において測定した。すなわち、前記ポリアミド酸溶液(I)(前記反応液[溶媒:N,N−ジメチルアセトアミド])の一部を利用して、ポリアミド酸の濃度が0.5g/dLとなるN,N−ジメチルアセトアミド溶液を調製して、上記条件でポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.91dL/gであった。
<透明電極用基板の調製工程>
ガラス基板として超薄板ガラス板(日本電気硝子社製の商品名「G−Leaf」、縦:80mm、横80mm、厚み50μm)を準備し、上述のようにして得られた反応液(ポリアミド酸溶液)を前記ガラス基板の表面上に加熱硬化後の塗膜の厚みが13μmとなるようにスピンコートして、前記ガラス基板(超薄板ガラス板)上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス基板を60℃のホットプレート上に載せて2時間静置して、前記塗膜から溶媒を蒸発させて除去した(溶媒除去処理)。かかる溶媒除去処理後、前記塗膜の形成されたガラス基板を3L/分の流量で窒素が流れているイナートオーブンに投入し、イナートオーブン内で、窒素雰囲気下、25℃の温度条件で0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、更に370℃の温度条件で1時間加熱して、前記塗膜を硬化せしめ、前記ガラス基板(超薄板ガラス板)上にポリイミドからなる塗膜がコートされた積層体(ガラス基板とポリイミド層との積層体)を得た。このようにして得られた積層体を室温に冷却して、透明電極用基板とした。なお、この際、得られたガラス基板とポリイミド層との積層体において、カールは見られなかった。このようにして形成された積層体中のポリイミド層を形成する成分の分子構造の同定をIRを用いて行ったところ、該層は確かにポリイミドからなる層であることが確認された。また、このような透明電極用基板(ガラス基板とポリイミド層との積層体)を用いた三点曲げ試験により測定された最大曲げ強さ、最大荷重、弾性率の結果を表1に示す。
なお、かかる積層体のガラス面側及びポリイミド層側から反射IR測定を行った結果を図3(ガラス基板側の反射型IRスペクトル)及び図4(ポリイミド層側の反射型IRスペクトル)に示す。図3に示す結果からも明らかなように、得られたガラス基板とポリイミド層との積層体のガラス基板側においては、1000cm−1付近にガラスのSi−O−Si伸縮振動が確認された。他方、図4に示す結果からも明らかなように、ポリイミド層側にはイミドカルボニルのC=O伸縮振動1696.6cm−1が確認された。このような反射IR測定の結果からも、得られた積層体がガラス基板とその基板上に積層されたポリイミド層とからなることが確認された。
また、かかるポリイミド層を形成する化合物(ポリイミド)のガラス転移温度を、測定装置として示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「DSC7020」)を使用し、走査温度を30℃から500℃に設定し、昇温速度:10℃/分及び降温速度:30℃/分の条件で、窒素雰囲気下において測定したところ、明確なガラス転移温度は確認できなかった。そこで、ポリイミド層を形成する化合物(ポリイミド)の軟化温度を熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分、30℃〜550℃の温度範囲の条件でフィルムに透明石英製ピン(先端の直径:0.5mm)を500mN圧で針入れするペネトレーション法で測定した結果、軟化温度は502℃であった。
また、かかるポリイミド層を形成する化合物(ポリイミド)の5%重量減少温度(Td5%)を測定装置として熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA220」)を使用し、窒素雰囲気下、走査温度を30℃から550℃に設定し、昇温速度10℃/min.の条件で5%重量減少温度(Td5%)を測定した結果、501℃であった。
なお、このような透明電極用基板(ガラス基板とポリイミド層との積層体)に関しては、前述の三点曲げ試験とは別に、支点間の距離(間隔)Lを40mm〜6mmまで徐々に狭めながら測定を行った以外は、前述の三点曲げ試験による特性の測定と同様の方法を採用して三点曲げ試験を行った。その結果、前述の条件では、支点間の距離Lが6mm超〜40mmの範囲にある場合には、試料に破断が確認されなかった。このような結果から、得られた透明電極用基板(ガラス基板とポリイミド層との積層体)は十分なフレキシブル性を有することが分かった。
(比較例1)
実施例1で用いたガラス基板(超薄板ガラス板:日本電気硝子社製、商品名「G−Leaf」縦:80mm、横80mm、厚み50μm)と同様のガラス基板を準備した後、該ガラス基板を幅20mm、長さ80mm、厚み50μmの大きさに切断し、切断後のガラス基板を3L/分の流量で窒素が流れているイナートオーブンに投入し、イナートオーブン内で25℃の温度条件で0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、更に370℃の温度条件で1時間加熱して、比較のための透明電極用基板(加熱後のガラス基板)とした。このような透明電極用基板(加熱後のガラス基板)を用いた三点曲げ試験により測定された最大曲げ強さ、最大荷重、弾性率の結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1で用いたガラス基板(超薄板ガラス板:日本電気硝子社製、商品名「G−Leaf」縦:80mm、横80mm、厚み50μm)と同様のガラス基板を準備した後、該ガラス基板を幅20mm、長さ80mm、厚み50μmの大きさに切断し、そのまま比較のための透明電極用基板(ガラス基板)とした。このような透明電極用基板(ガラス基板(加熱なし))を用いた三点曲げ試験により測定された最大曲げ強さ、最大荷重、弾性率の結果を表1に示す。
表1に示した結果から明らかなように、本発明の透明電極用基板(実施例1)においては、ガラス基板に対して曲げ耐性が十分に向上し、曲げ耐性が非常に高度なものとなっていることが分かった。このような結果から、本発明の透明電極用基板(実施例1)がフレキシブル性(可撓性)に優れた基板であることが分かった。また、本発明の透明電極用基板(実施例1)においては、ガラス基板(比較例1〜2)と同程度の光透過性が確認され、透明性が非常に優れたものとなることが確認された。なお、本発明の透明電極用基板(実施例1)においては、前記ポリイミド層を形成するポリイミドは、軟化温度が502℃となっていることから、軟化温度を尺度とする耐熱性が十分に高度なものとなることも分かった。更に、本発明の透明電極用基板(実施例1)においては、前記ポリイミド層の線膨張係数がガラスの線膨張係数(8〜10ppm/K)と、ほぼ同等の値(11ppm/K)となっており、高温処理(370℃)から室温(25℃)への冷却時に前記ガラス層とポリイミド層のサイズ変化が生じることが十分に抑制されカール等の現象が見られなかった。かかる観点からも、透明電極用基板として十分に高度なものであることが分かる。
以上説明したように、本発明によれば、十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有することを可能とする透明電極積層用基板、並びに、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。
したがって、本発明の透明電極積層用基板は、十分に高度な耐熱性と十分に高度なフレキシブル性とを有するものとなるため、フレキシブル性が要求される素子に用いるための透明電極用の基板(例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子の透明電極用の基板)等として有用である。
1…有機EL素子、11…ガラス基板、12…ポリイミド層、13…透明電極層、14…有機層、15…金属電極層、100…支持板、110…試料、120…測定装置の圧子
、T…試料の厚み、X…試料の長さ、W…支持板の幅、L…支点間の距離(支持板間の距離)、S…支持面(支持板の面)。

Claims (4)

  1. 厚みが5〜100μmのガラス基板と、前記ガラス基板の表面上に積層された厚みが1〜50μmのポリイミド層とを備え、かつ、
    前記ポリイミド層が下記一般式(1):
    [式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、R10は炭素数6〜40のアリール基を示し、nは0〜12の整数を示す。]
    で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなる層であることを特徴とする透明電極積層用基板。
  2. 前記ポリイミドが、下記一般式(2)及び(3):
    [式(2)及び(3)中、R、R、R、R10、nは、それぞれ式(1)中のR、R、R、R10、nと同義である。]
    で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるものであることを特徴とする請求項1に記載の透明電極積層用基板。
  3. 前記ポリイミド層の厚みが1〜25μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明電極積層用基板。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の透明電極積層用基板を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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