JP2016134096A - 構造体の力学的弱点を発見可能な構造体設計支援装置 - Google Patents

構造体の力学的弱点を発見可能な構造体設計支援装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 コンピュータを用いた数値解析により構造体の力学特性の解析をする場合に於いて、湾曲した部分を有する構造体に於いて荷重を与えた場合に荷重を伝達する機能が発揮されない部位の特定と変形し易いか否かについての考察のための一つの指標として荷重の方向とは別の方向に作用する力を算出する装置を提供すること。【解決手段】 本発明の数値解析装置は、構造体の数値モデルに於ける少なくとも二つの解析要素に於ける数値解析によって算出された主応力を取得する手段と、解析要素の少なくとも一つに於ける前記主応力のその対応する主軸方向について微分値を成分とする誘導力ベクトルを算出する手段と、誘導力ベクトルを出力又は表示する手段とを含む。【選択図】 図4

Description

本発明は、コンピュータを用いて構造体の力学特性の数値解析装置に係り、より詳細には、有限要素法等の数値解析を用いた構造体の応力分布の解析を通じて構造体の設計に於いて有用な情報を得ることが可能な構造体の設計支援装置に係る。
コンピュータに数値計算技術の発展により、車両のボディーを初め、種々の機械器具、建築物などの構造体の力学的又は機械的特性が、コンピュータを用いた有限要素法などによって数値的に解析され、そこで得られた情報が構造体の設計のために利用されるようになっている。かかるコンピュータによる数値解析による構造体の力学的又は機械的特性の解析手法によれば、実際の構造体を製作する前の設計段階に於いて、構造体が、要求される特性を備えているか否かの把握が可能となり、また、そのような要求される特性を構造体に備えさせるための設計変更が可能となる点で有利である。そのようなコンピュータによる構造体の力学的又は機械的特性の数値解析を行う技術としては、種々の手法が提案されている。例えば、特許文献1に於いては、位相最適化手法を用いて、所定の制約条件の下で目的関数を満足する最適な構造物の形状を求める場合に、有限要素法の構造解析の結果、構造物の剛性が制約条件より低いときには、構造物の剛性を仮想的に高く設定して余裕を持たせてから位相最適化を行い、これにより、解析にかかる工数の削減を図ることが提案されている。特許文献2では、非線形に変形する乗用車の客室構造体の衝突時の荷重経路の数値解析に於いて、線形弾性変位が支配的な部分を完全な線形弾性体に置き換え、その衝突時の線形弾性体の変形に於ける荷重データを有限要素法により算出して、荷重経路の解析を行う手法が提案されている。特許文献3は、車両構造に於ける構造物の載荷時に於ける部品の変形を定量的に評価する場合に、部品の曲率を数値解析により算出して、その結果に基づいて、補剛する部品と板厚を減らす部品を選定することを提案している。更に、特許文献4では、積層材料に対して曲げ応力を付与した載に層間に発生する応力を算出する場合に、重ねる層別に、有限要素法により得られる曲率半径と主応力とから表面の応力を計算し、それらの差し引きにより層間の最大引っ張り応力を求め、これにより、乖離しやすい部分を補強するための設計に利用することが提案されている。
特開2008−40528 特開2013−8259 特開2013−92835 特開2004−110793
ところで、湾曲した部分を有する構造体に於いて、荷重を与えた場合、その荷重の向きによっては、湾曲した部分に於いて、付与した荷重を伝達する機能が十分に発揮されていない状態の部位が生じ得る。例えば、図5(A)に例示されている如き、図中、上下の曲板の間に板面に垂直な方向に中板を介在させたH字型の梁状構造体(初めから二枚の平行な板が面の垂直な方向に湾曲した梁状構造体)に対して、図示の如く、曲げモーメントを発生する荷重を与えた場合、図5(B)に示されている如く湾曲の程度が増大する方向に変形するところ、更に、図5(C)に模式的描かれている如く、上下の曲板はその両縁が互いに近づく方向にも変形する。かかる上下の曲板の互いに近づく方向に変形した両縁の部分の変形は、図示の梁状構造体に与えた曲げモーメントを発生する荷重に起因するものであるところ、両縁の部分は、与えられた荷重を支持する機能を果たしておらず、即ち、荷重を伝達する機能を十分に発揮せずに変形する部分であるということができる。図5(B)にて、濃淡で示された(有限要素法で得られた)応力分布を見ると、両縁の部分には、殆ど応力が発生していないことが理解される。
上記のコンピュータによる有限要素法等を利用した数値解析の手法によれば、図5(B)の濃淡で示された応力分布の如く、構造体に力を与えた場合の構造体内の応力やひずみの分布の算出が可能となり、構造体内に荷重を伝達する機能を発揮しない部位があるとき、即ち、応力の小さい部位があるとき、応力分布を参照することで、その部位の空間上の位置や範囲は特定できる。しかしながら、従前の有限要素法等を利用した数値解析の手法の場合、構造体内に荷重を伝達する機能を発揮しない部位があるとき、そうなる理由を特定することは一般に困難である。例えば、図5(B)に示された例の場合、まず、有限要素法により応力分布を算出し、更に、変形解析を行った結果、荷重の伝達に寄与しない応力の小さい部分が変形していることは把握されるが、かかる変形が如何に生じるかの原因は、応力分布と変形の程度を参照しただけでは特定することは困難である。また、このような例に対して、荷重経路の解析を行う手法(特許文献2など)を適用した場合には、そもそも、荷重を伝達する機能を発揮しない部位は何ら表示されないこととなり、或いは、構造体の形状を自動的に最適化する手法(特許文献3など)を適用した場合には、荷重を伝達する機能を発揮しない部位は削られる一方となってしまい、適切に補強を加えて構造を改善する方向には最適化されない。更に、有限要素法による応力分布のみを行って、変形解析を行わない場合には、応力が小さいと解析された領域で予期しない変形が生ずる場合も起き得る。
上記に説明された如き湾曲した部分を有する構造体に於いて荷重を与えた場合に、荷重を伝達する機能が発揮されない部位の変形に関して、本発明の発明者は、湾曲した部分に於いて荷重が作用した場合に、荷重の向きによっては、荷重の方向とは別の方向に力が作用し、これにより、荷重を伝達する機能が発揮されない部位でも変形を生ずることがあることを見出した。後に詳細に説明される如く、かかる荷重の方向とは別の方向に作用する力の大きさは、構造体内の各部位の主応力のその方向についての変化率(微分値)で表すことができ、その分布を参照すると、荷重を伝達する機能が発揮されない部位の特定と変形し易いか否かについての考察のための一つの指標として用いることができる。
かくして、本発明の一つの課題は、コンピュータを用いた数値解析により構造体の力学特性の解析をする場合に於いて、湾曲した部分を有する構造体へ荷重を与えた場合に荷重を伝達する機能が発揮されない部位の特定と変形し易いか否かについての考察のための一つの指標として荷重の方向とは別の方向に作用する力を算出する装置を提供することである。
本発明によれば、上記の課題は、コンピュータを用いた構造体の力学的特性の数値解析装置であって、構造体の数値モデルに於ける少なくとも二つの解析要素に於ける数値解析によって算出された主応力を取得する手段と、解析要素の少なくとも一つに於ける主応力のその対応する主軸方向について微分値を成分とする誘導力ベクトルを算出する手段と、誘導力ベクトルを出力又は表示する手段とを含む装置によって達成される。上記の構成に於いて、「構造体」とは、車両のボディーを初め、種々の機械器具、建築物又はそれらを構成する任意の部材などの構造体であって、応力が定義可能な構造体であってよい。「数値解析」は、典型的には、有限要素法であってよいが、これに限定されず、構造体の任意の部位に設定される解析要素の応力を算出できる任意の解析方法であってよい。
上記の本発明の構造体の力学的特性の数値解析装置の構成に於いては、特に、解析要素の少なくとも一つに於ける主応力のその対応する主軸方向についての微分値を成分とする「誘導力ベクトル」と称される新規な指標値が算出される。かかる「誘導力ベクトル」は、後により詳細に説明される如く、特に、構造体の湾曲した部分に於いて、その湾曲方向に沿った方向(周方向)の荷重がかかった場合に、その荷重に対して垂直な方向に発生する力(単位は、体積当たりの力となる。)に相当する。即ち、この「誘導力ベクトル」は、構造体に与えた荷重に対して、その荷重とは別の方向に作用する力の大きさの指標値として参照することができる。従って、或る解析要素に於いて「誘導力ベクトル」が大きいとき、その部位に於いては、荷重の伝達の機能が十分に発揮されず、力が「逃げている」部位(与えた荷重が期待する方向とは別の方向に作用する)部位であると判断できることとなる。
本発明の数値解析装置の実施の形態に於いては、構造体に於ける「誘導力ベクトル」の分布が調製されて、その分布が出力又はグラフィック表示等により表示されてよい。また、有限要素法等による数値解析を実行して、各解析要素の応力を算出する装置の一部として、本発明による「誘導力ベクトル」を算出する装置が組み込まれても良い。或いは、本発明による「誘導力ベクトル」を算出する装置に於いて、変形解析プログラムが実行され、構造体の数値モデルに於ける変形後の形状と「誘導力ベクトル」の分布とが対照できるようになっていてもよい。
なお、後に詳細に説明されるように、構造体が薄板又はシェル構造である場合には、「誘導力ベクトル」は、その厚さ方向の主応力の微分値をそれと等価な厚さ方向と平行な面内のせん断応力の微分値に置換して算出されてよい。また、構造体が棒状体である場合には、「誘導力ベクトル」は、その長さ方向に垂直な方向の主応力の微分値をそれと等価な長さ方向に垂直な方向と平行な面内のせん断応力の微分値に置換して算出されてよい。
また、実施の形態に於いて、或る解析要素に於ける主応力の微分値、せん断応力及びその微分値は、隣接する解析要素の主応力の成分値又は構造体の数値モデルの座標系に於ける応力の成分値を用いて算出が可能である。従って、上記の解析要素の主応力を与える「数値解析」は、好適には、構造体内の各解析要素の主応力の成分値又は構造体の数値モデルの座標系に於ける応力の成分値を与える解析法が採用される。
かくして、上記の本発明によれば、構造体の力学的特性の数値解析に於いて、荷重を与えられた構造体にて、その荷重の方向と別の方向に作用する力の一つの指標値である誘導力ベクトルが解析要素毎に算出され、出力又は表示することが可能となる。この誘導力ベクトルを参照すれば、構造体に於いて、与えられた荷重を伝達する機能が発揮されない部位又は領域が把握され、その誘導力ベクトルの大きさ又は分布の状況と、構造体の形状とを対比させることにより、或る部分が変形し易いか否か或いは変形し易い部分又は領域の推定に有用な情報となる。そして、そのような情報を利用することで、荷重を伝達する機能が発揮されない部位又は領域に対して荷重を伝達する機能が有効に発揮できるようにするため、或いは、変形を防止するため、の補強等の構造体の設計の変更がより容易になることが期待される。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
図1は、本発明による構造体の力学的特性の数値解析が実行されるコンピュータを模式的に表した図である。 図2(A)は、直線状の構造体に荷重Fを与えた様子を示した模式図であり、図2(B)は、湾曲した構造体に荷重Fを与えた様子を示した模式図である。図2(C)は、湾曲した構造体内に於いて曲率を大きくする方向に荷重を与えた場合に構造体内で発生する力の様子を模式的に表した図である。 図3(A)は、応力の数値解析が実行されるxyz軸方向に沿って要素分割された構造体の格子モデルの模式図であり、応力解析によって算出される主軸x1-x2-x3の方向を模式的に示している。図3(B)は、隣接する要素の主応力を用いて応力の微分値を算出する原理を説明する図である。 図4(A)は、図5(A)に例示された初めから湾曲したH字型の梁状部材に曲げ荷重を与えた場合に算出された誘導力ベクトルの分布の例を示している。図4(B)、(C)は、誘導力ベクトルの分布を参考にして、H字型の梁状部材の補強を施した例を示している。 図5(A)は、数値解析に於いて曲げ荷重を与える初めから湾曲したH字型の梁状部材の模式図であり、図5(B)は、変形解析によって得られた、変形した状態のH字型の梁状部材の模式図である。図中の濃淡は、応力の大きさを示し、濃いほど応力が高いことを示している。図5(C)は、変形したH字型の梁状部材の断面の模式図であり、上下の板状部分の両縁が互いに近接する方向に湾曲する様子を示している。
1…コンピュータ本体
2…コンピュータ端末
3…モニター
4…キーボード、マウス(入力装置)
コンピュータ装置の構成
本発明による構造体の力学的特性の数値解析装置は、この分野で通常使われている形式の、図1(A)に例示されている如き、コンピュータ装置1に於けるコンピュータ・プログラムの作動により実現されてよい。コンピュータ装置1には、通常の態様にて、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、記憶装置、入出力装置(I/O)が装備され、記憶装置は、本発明の演算で使用する演算処理を実行する各プログラムを記憶したメモリと、演算中に使用されるワークメモリ及びデータメモリを含んでいる。また、実施者によるコンピュータ装置1への指示及び計算結果その他の情報の表示及び出力は、コンピュータ装置1に接続されたコンピュータ端末装置2を通じて為される。コンピュータ端末装置2には、通常の態様にて、モニター3とキーボード並びにマウスといった入力装置4が設けられ、プログラムが起動されると、実施者は、プログラムの手順に従ってモニター3上の表示に従って、入力装置4を用いてコンピュータ装置1に各種の指示及び入力を行うとともに、モニター3上にてコンピュータ装置1からの演算状態及び演算結果等を視覚的に確認することが可能となる。なお、図示していないその他の周辺機器(結果を出力するプリンタ、計算条件及び演算結果情報等を入出力するための記憶装置など)がコンピュータ装置1及びコンピュータ端末装置2に装備されていてよいことは理解されるべきである。コンピュータ装置1を用いて、以下に述べる各種の処理又は演算を実行する際には、通常の態様にて、各種の処理又は演算に必要なプログラムが起動され、実施者は、コンピュータ端末装置2に於いて、プログラムに於いて準備された入力手順に従って、演算に必要なデータ、演算時の計算条件その他の各種設定を入力し、演算が開始される。そして、演算の実行中又は終了後に、演算結果が、適宜、コンピュータ端末装置2を通じて出力可能となる。
上記のコンピュータ装置1に於いて、本発明による構造体の「誘導力ベクトル」の算出を行う場合、端的に述べれば、それに先立って、まず、構造体の数値モデルのデータ、即ち、或る座標空間、例えば、三次元空間座標の(x,y,z)方向に於いて構造体の形状を現す座標値データと構造体の弾性特性などの材料の力学的特性のデータが入力され、しかる後、典型的には、有限要素法による構造体の力学特性の数値解析が実行される。有限要素法に於いては、よく知られている如く、数値モデルとして現された構造体を複数の三角形又は四角形の要素に分割し、構造体に任意の荷重を与えた場合の各要素の応力等のデータが算出される。典型的には、ここで算出される各要素のデータは、具体的には、数値モデルの入力の際の座標空間(入力座標系)に於ける成分で表した応力値、主応力値、座標空間に対する主軸方向(主応力の方向)から成るデータ群である。そして、これらの有限要素法で得られたデータ群を用いて、後に説明される「誘導力ベクトル」の大きさと方向とが算出される。なお、誘導力ベクトルは、任意の座標系の成分で表されてよいところ、典型的には、主軸方向の座標系に於ける成分で表されてよい。また、誘導力ベクトルは、後に説明される例の如く、モニター3上にてグラフィック表示された構造体の数値モデルの各要素上にて大きさと方向を表すベクトル(矢印)にて表示されてよい。
誘導力ベクトルの定義と物理的な意味
図2(A)を参照して、図示の如き直線状の部材に対して、その延在する方向に荷重F(図示の場合では引っ張り荷重)を与えたとき、部材の内部では、その荷重Fと略同じ方向に力T(図示の場合では、張力)が作用することとなる。即ち、この場合には、部材は、荷重Fが伝達される構造であり、換言すると、部材内部は、荷重を伝達する機能を果たしているということができる。一方、図2(B)に描かれている如き湾曲した部材に対してその延在する方向に荷重Fを与えた場合(部材の紙面の垂直方向の位置は拘束されていると仮定する。)、部材の内部の或る点(黒点)について見ると、力Tの向きが正反対ではないために、その合力として荷重Fとは向きの異なる力Sが作用することとなる(しばしば、力が“逃げる”という表現が使われる。)。そして、力Sの作用により、部材が変形すると、その変形の方向は、荷重Fの方向とは異なるので、荷重Fの伝達には寄与しないこととなり、部材内部は、荷重を伝達する機能を果たしていない状態であるということができる。即ち、或る構造体に対して荷重を与えた場合に、上記の例の如く、荷重Fとは異なる向きに作用する力Sの大きさを参照すれば、構造体に於いて荷重を伝達する機能を果たしていない部分又は領域の位置又は大きさと、そこに於いて作用する力の向きと大きさとが特定できることとなる。なお、本発明に於いて、上記の如き付与された荷重とは向きの異なる力を「誘導力ベクトル」と称することとする。
そこで、一般的な構造体に於いて、「誘導力ベクトル」を定義する。まず、図2(C)を参照して、構造体内の一つの微小領域に於いて、その一つの主軸x1方向について、図中下面に下向きに応力σ1が作用し、上面に上向きに応力σ1+∂σ1/∂x1・dx1が作用する場合を考える。そして、微小領域には、図2(B)に描かれている如く荷重Fに起因する張力Tが両側から作用し、その力の主軸x1方向の成分即ち、誘導力ベクトルの成分を、-S/2とすると、力の釣り合いは、下記の式で表される。
σ1+∂σ1/∂x1・dx1−σ1+2・S/2=0 …(1)
従って、誘導力ベクトルの成分Sは、
S=−(∂σ1/∂x1)・dx1 …(2)
となる。更に、体積当たりの力の成分I1に換算して、
I1=−(∂σ1/∂x1) …(3)
が得られる。この式(3)の関係式は、図3に示されている如き、立体に於いて、他の二つの主軸方向にも成立するので、誘導力ベクトルIは、下記の表式により定義される。
ここに於いて、e1、e2、e3は、主軸方向x1、x2、x3のそれぞれの単位ベクトルである。また、解析される構造体がシェル構造であるとき、x3方向がシェルの面に垂直な厚さ方向とすると、σ3には厚さ方向の中央値(有限要素法では、面の表面と裏面の応力の平均値)が用いられ、σ3の微分値が算出できないので、その場合には、下記の力の釣り合い式:
を用いて、式(4)は、下記の式に書き換えられる。
ここで、τ13、τ23は、x1、x2方向を向いた面に於けるx3方向のせん断応力である。更に、解析される構造体がバー構造であるとき、x1方向を長さ方向とすると、同様に、x2、x3方向に於いて、微分値が算出できないので、下記の力の釣り合い式:
を用いて、式(4)は、下記の式に書き換えられる。
誘導力ベクトルの算出
上記の誘導力ベクトルIは、有限要素法によって得られた応力値のデータを用いて算出される。構造体が図3(A)に例示されている如き立体であり、誘導力ベクトルIの式として、式(4)が用いられる場合、誘導力ベクトルIの式の中のx1、x2、x3方向(主軸方向)の主応力の微分値は、例えば、各要素に於いて、それと隣り合う要素との差分と要素間の距離Δx,Δy,Δzから最小二乗法等の方法を用いて算出されてよい。一つの要素についての演算に於いて、隣り合う要素の数は、図示していない厚み方向も含めれば、最大26個になるところ、そのうちのいくつを計算に使用するかは任意であり、より広い範囲の要素まで含めて計算しても良い。
構造体がシェル構造又はバー構造であり、誘導力ベクトルIの式として、式(6)又は式(9)が用いられる場合、式から理解される如く、せん断応力の微分値を演算する必要がある。この点に関し、コンピュータ装置に於いて実行される一般的な有限要素法のプログラムでは、せん断応力は、陽には算出されない。そのようなせん断応力が算出されない場合には、せん断応力の微分値は、有限要素法で得られた垂直応力又は主応力のデータから算出されてよい。
せん断応力の微分値を算出する例として、図3(B)を参照して、図示の如く隣り合っている要素A、Bのうちの要素Aに於いて、その主軸のx1方向が要素A→Bの方向に一致しているとする。ここに於いて、有限要素法によって、要素Aのx1方向の応力σa1、要素Bのその主軸x1'方向の応力σb1'が算出される。なお、要素A、Bに於いて、それぞれの主面に於けるせん断応力τa13、τ'b13は、定義により0である。一方、要素Aの主軸方向の座標系に於いて、要素Bの垂直応力σb1とせん断応力τb13は、
σb1=cos2θ・σb1'
τb13=cosθsinθ・σb1'
により表される。要素Aに於けるせん断応力の微分値∂τ13/∂x1は、要素Bのせん断応力と要素Aに於けるせん断応力の差分(τb13−τa13)を距離Δxで除したものであるので、即ち、
∂τ13/∂x1=(τb13-τa13)/Δx=cosθsinθ・σb1'/Δx …(10)
によって算出される。なお、x2方向のせん断応力の微分値の算出、周囲のより多くの要素を計算に含めるよう拡張すること、要素の応力の代わりに接点応力を元に算出することは、当業者に於いて、上記と同様に算出可能であることは理解されるべきである。更に、一般に、要素の並ぶ方向と主軸方向とは一致しないところ、その場合にもせん断応力の微分値の表式は、やや複雑になるが、要素Aに於ける主応力のデータから算出されたせん断応力τa13とその隣接する要素のせん断応力τb13との差分(τb13−τa13)を要素間距離Δxで除することにより与えられる。
誘導力ベクトルの算出例
図4(A)は、図5(A)のH字型の梁状部材に曲げ荷重を与えた場合に算出された誘導力ベクトルの分布の例を示している。同図を参照して、誘導力ベクトルが上下の板部材に於いて互いに向かっており、また、上下の板部材の中心線とそれと平行な両縁の中間辺りで大きさが増大していることが理解される。この誘導力ベクトルの分布と図5(B)の変形解析のグラフィック表示を対照すると、既に触れた如く、上下の板部材は、両縁が互いに向かう方向に湾曲しており、誘導力ベクトルの向きと一致することが理解される。かくして、誘導力ベクトルを参照することで、上下の板部材の中心線とそれと平行な両縁の中間辺りで荷重とは別の方向の力が作用し、かかる領域では付与した荷重(曲げモーメント)の伝達の寄与が小さく、又、付与した荷重とは別の方向の湾曲が生じるという理由を考察することが可能となる。
また、図4(A)の結果を参照すると、H字型の梁状部材の上下板をつなぐ中板から離れた上下板の両縁にかけての領域が荷重の伝達の機能を果たしていないことが誘導力ベクトル分布を参照することにより考察ができることから、構造体の設計者は、上下板が曲げ変形を起こさず、荷重の伝達の機能を発揮するように、上下板の肉厚を十分に厚くする(図4(B))、或いは、リブを追加する(図4(C))といった設計改善を容易に思いつくことが可能となるであろう。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。

Claims (1)

  1. コンピュータを用いた構造体の力学的特性の数値解析装置であって、
    前記構造体の数値モデルに於ける少なくとも二つの解析要素に於ける数値解析によって算出された主応力を取得する手段と、
    前記解析要素の少なくとも一つに於ける前記主応力のその対応する主軸方向について微分値を成分とする誘導力ベクトルを算出する手段と、
    前記誘導力ベクトルを出力又は表示する手段と
    を含む装置。
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