JP2016132798A - ラックバーの通電加熱装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラックバーを一回のセットで焼入れと焼戻しを連続して行うことができ、品質管理を簡単かつ高精度に行うことができると共に、設備を簡素化してコスト的に有利であり、かつラックバーの歯面の形態に応じた通電電極を択一的に使用できて、各種ラックバーの熱処理に適応可能なラックバーの通電加熱装置を提供する。
【解決手段】一対の通電電極、クランプ手段、冷却手段、焼入れ電源部と焼戻し電源部を有する電源手段等を備え、通電電極に電源手段の焼入れ電源部から所定の高周波電流を供給して歯面を焼入れし、この焼入れ後にラックバーをそのままの状態で一対の通電電極に電源手段の焼戻し電源部から所定の高周波電流を供給して歯面を焼戻しすることを特徴とする。通電電極は、ラックバークの歯面との接触面の形態が歯面の形態に応じて複数種類設定され、これらが導電板上に着脱及びまたは位置調整可能に固定される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば車両用のラックバーの歯面を、通電加熱により焼入れ及び焼戻しする際に使用されるラックバーの通電加熱装置に関する。
従来、この種の通電加熱装置は、ラックバーの長手方向に沿ってその加熱範囲内で対向配置された一対の通電電極と、該通電電極に所定周波数の電流を供給する電源装置等を備えている。そして、ラックバーの歯面を熱処理する場合には、先ずラックバーを焼入れ用の通電加熱装置にセットし、該装置の高周波電源から焼入れ用周波数の高周波電流を通電電極に所定時間供給し、その後冷却することで歯面の所定範囲を焼入れする。
次いで、この焼入れされたラックバーを焼入れ用の通電加熱装置から取り出して焼戻し用の通電加熱装置にセットし、該装置の高周波電源から焼戻し用周波数の高周波電流を通電電極に所定時間供給して、歯面を焼戻しするようにしている。なお、ラックバーの通電加熱装置に関する公報としては、例えば特許文献1に開示されている。
特許第4232973号公報
しかしながら、このような通電加熱装置にあっては、焼入れ用と焼戻し用の2台の通電加熱装置を備え、焼入れ用の通電加熱装置で焼入れしたラックバーを当該通電加熱装置から取り出し、焼戻し用の通電加熱装置にセットして焼戻しを行う必要がある。そのため、熱処理工程が別装置による2工程となり、焼戻し作業を忘れてしまう場合がある等、品質管理を簡単かつ高精度に行うことが難しい。また、各通電加熱装置に高周波電源や通電電極等がそれぞれ必要となり、設備投資費用が嵩み等、結果として熱処理の費用が高くコスト的に不利になり易い。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ラックバーを一回のセットで焼入れと焼戻しを連続して行うことができ、品質管理を簡単かつ高精度に行うことができると共に、設備を簡素化してコスト的に有利なラックバーの通電加熱装置を提供することにある。また、他の目的は、ラックバーの歯面の形態に応じた通電電極を択一的に使用できて、各種ラックバーの熱処理に適応可能なラックバーの通電加熱装置を提供することにある。
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、所定間隔を有してラックバーの歯面の軸方向両端部に下方から接触可能な一対の通電電極と、前記ラックバーの背面に上方から当接して前記歯面を下方に所定圧で押圧可能なクランプ手段と、前記一対の通電電極間に配置されて前記歯面に冷却水を噴射可能な冷却手段と、前記一対の通電電極に焼入れ用と焼戻し用の高周波電流を供給可能な焼入れ電源部と焼戻し電源部を有する電源手段と、これらを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記一対の通電電極に前記電源手段の焼入れ電源部から所定の高周波電流を供給して前記歯面を焼入れすると共に、該焼入れ後に前記ラックバーをそのままの状態で前記一対の通電電極に前記電源手段の焼戻し電源部から所定の高周波電流を供給して前記歯面を焼戻しすることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記一対の通電電極のラックバーの歯面との接触面の形態が歯面の形態に応じて複数種類設定され、これらが導電板上に着脱及びまたは位置調整可能に固定されていることを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、前記焼戻し電源部が、前記焼入れ電源部による前記歯面の焼入れ範囲より当該歯面の内部側まで焼戻しされる通電条件であることを特徴とする。さらに、請求項4に記載の発明は、前記ラックバーの歯面の通電加熱時の温度を検出可能な放射温度計を備え、該放射温度計の検出温度に基づいて前記制御手段が通電状態を制御することを特徴とする。また、請求項5に記載の発明は、前記制御手段が、前記一対の通電電極とラックバーの歯面との接触状態を検知する検知手段を備え、該検知手段で所定の接触状態が検知された場合に前記焼入れ電源部から前記一対の通電電極に高周波電流を供給することを特徴とする。
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、制御手段が、一対の通電電極に電源手段の焼入れ電源部から所定の高周波電流を供給して歯面を焼入れすると共に、この焼入れ後にラックバーをそのままの状態で通電電極に電源手段の焼戻し電源部から所定の高周波電流を供給して前記歯面を焼戻しするため、ラックバーの通電電極上への一回のセットで焼入れと焼戻しを連続して行うことができ、品質管理を簡単かつ高精度に行うことができると共に、設備を簡素化してコスト的に有利なラックバーを容易に得ることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、一対の通電電極の接触面の形態がラックバーの歯面の形態に応じて複数種類設定され、これらが導電板上に着脱及びまたは位置調整整可能に固定されているため、ラックバーの歯面の形態に応じた通電電極を択一的に使用できて、各種ラックバーの熱処理に適応可能な汎用性に優れた通電加熱装置を得ることができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、焼戻し電源部が焼入れ電源部による歯面の焼入れ範囲より当該歯面の内部側まで焼戻しされる通電条件であるため、焼鈍しにより焼入れ部分の内部応力を除去できて、耐衝撃性や耐摩耗生等の品質的に優れた歯面のラックバーを容易に得ることができる。
さらに、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、ラックバーの歯面の通電加熱時の温度を検出可能な放射温度計を備え、この放射温度計の検出温度に基づいて制御手段が通電状態を制御するため、通電加熱時の焼入れ温度や焼戻し温度を所定の温度に精度良く維持できて、ラックバーの歯面に一層高精度な熱処理を行うことができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、一対の通電電極とラックバーの歯面との所定の接触状態を検知手段で検知した場合に焼入れ電源部から一対の通電電極に高周波電流を供給するため、通電電極が歯面に確実に接触している場合にのみ所定の高周波電流を供給できて、接触不良時の通電によるスパーク等の発生を防止できて、ラックバーの歯面により一層高精度な熱処理を簡単に行うことができる。
本発明に係わるラックバーの通電加熱装置の概略構成図 同その歯面の熱処理状態の一例を示す断面図 同電源装置の概略構成図 同通電電極の平面図 同通電電極とラックバーの歯面の各種形態を示す図 同熱処理を示す工程図 同他の熱処理を示す工程図
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は、本発明に係わるラックバーの通電加熱装置の一実施形態を示している。図1に示すように、ラックバーWは、長手方向(軸方向)の一方の端部に、所定長さの歯面Waと背面Wbが形成されている。
そして、通電加熱装置1は、前記ラックバーWの歯面Wa(もしくは背面Wb)の両端部分に下方から接触可能な一対の通電電極2と、この各通電電極2が電気的に接続された電源装置3と、一対の通電電極2間に配置された冷却筒4と、この冷却筒4内に冷却水を供給する冷却装置5を備えている。また、ラックバーWの背面Wbで前記各通電電極2と直径方向(図1で上下方向)に略対向する位置には、一対のクランプ装置6が設けられている。
そして、前記電源装置3、冷却装置5及びクランプ装置6は、図示しないマイクロコンピュータあるいはシーケンサー等を有する制御装置7の出力側に接続されており、この制御装置7の入力側には、ラックバーWの歯面Wa(もしくは背面Wb)の所定位置の温度を検知(測定)するための放射温度計8等が接続されている。
また、前記電源装置3は、図3に示すように、焼入れ電源部3aと焼戻し電源部3b及び図示しない切替器等を有し、制御装置7の制御信号で切替器が焼入れ電源部3a側か焼戻し電源部3b側に択一的に切り替わることにより、各通電電極2に所定周波数の高周波電流が供給(通電)されるようになっている。なお、焼入れ電源部3aと焼戻し電源部3bは、それぞれ半導体式のインバータ回路を有し、焼入れ電源部3aは40〜250KHzの高周波電流が出力可能で、焼戻し電源部3bは5〜10KHzの高周波電流が出力可能に構成されている。
前記一対の通電電極2は、図1及び図4に示すように、例えば銅板により側面視L字形状に形成されて、水平な固定部2aと垂直な電極部2bをそれぞれ有している。そして、固定部2aが複数のボルト9によって、固定部2aより大きく形成された銅板からなる各導電板10にそれぞれ着脱可能に固定されると共に、電極部2bの上面となる接触面2cには、ラックバーWの歯面Wa両端外側の外形形状に合致した略半円弧形状の凹部11がそれぞれ形成されている。
この一対の通電電極2の各凹部11は、図5(a)に示すように、ラックバーWの歯面Wa両端外側(図面では一方のみ示す)の円周面に下方から所定幅で面接触し、一対の通電電極2を介してラックバーWの歯面Waに高周波電流が流れるようになっている。なお、本発明の通電加熱装置1の場合、接触面2cに凹部12を有する前記通電電極2の他に、図5(b)(c)に示す接触面2cが平坦な通電電極2も使用可能となっている。
すなわち、図5(b)に示す通電電極2は、電極部2bの接触面2cが所定幅の平坦な平面で形成され、この接触面2cがラックバーWの歯面Waの長手方向両端部の溝12の底面に接触する。このとき、歯面Waの溝12の底面は所定幅の平面で形成されていることから、各通電電極2の平坦な接触面2cが溝12の底面にそれぞれ面接触状態で接触することになる。なお、一対の通電電極2の導電板10に対する固定位置は、例えば導電板10に設けた通電電極固定用の長孔等により、ラックバーWの歯面Waの長さ等の形態に応じて、その位置を調節しつつ固定可能となっている。
また、図5(c)に示す通電電極2も、電極部2bの接触面2cが所定幅の平坦に形成され、この平坦な接触面2cがラックバーWの歯面Waの長手方向両端外側に形成されている非歯面としての溝12の底面に接触する。このときも、溝12の底面は所定幅の平坦に形成されていることから、各通電電極2の平坦な接触面2cが各溝12の底面にそれぞれ面接触状態で接触することになる。そして、これらの3種類の通電電極2は、通電加熱装置1の付属品として準備され、熱処理するラックバーWの歯面Waや背面Wbの形態に応じて、所定の通電電極2が選択されて前記各導電板10にボルト9で固定されるようになっている。
前記冷却筒4は、一対の通電電極2間の間隔寸法と略同一長さの直方体の箱形状に形成され、その上面に多数の噴射孔が穿設されると共に、所定の側面等に設けた図示しないホースコネクタに、その基端部が前記冷却装置5に接続されたホースの他端部が接続されている。前記冷却装置5は、図示しないポンプ、冷却水タンク(もしくは水道配管等の冷却水供給源)及び開閉バルブ等を有して、制御装置7の制御信号により、ポンプが作動すると共に開閉バルブが開くことで冷却筒4内に冷却水が供給され、これが噴射孔からラックバーWの歯面Wa(もしくは背面Wb)に所定圧で噴射されるようになっている。
前記クランプ装置6は、油圧シリンダーもしくはエアーシリンダーで形成され、制御装置7の制御信号で作動することにより、シリンダー軸先端の押圧部6aがラックバーWの背面Wbを下方、すなわち通電電極2方向に所定圧で押圧して、ラックバーWを通電電極2上に押圧保持するようになっている。このとき、一対のクランプ装置6は、一対の通電電極2と上下方向で対向する位置に設けられており、背面Wbの下方への押圧でラックバーWの歯面Wa両端部と通電電極2の接触面2cとが面接触状態に設定されるようになっている。
なお、前記放射温度計8は、例えば赤外線放射温度計等の非接触式の温度計が使用され、通電加熱によりラックバーWの歯面Wa(もしくは背面Wb)から放射される赤外線を検知して温度信号を制御装置7に出力するようになっている。
次に、前記通電加熱装置1を使用したラックバーWの熱処理作業の一例を図6の工程図に基づいて説明する。先ず、熱処理するラックバーWの歯面Waや背面Wbの形態に応じて、図5(a)から(c)に示す所定の通電電極2を導電板10上の所定位置にボルト9で固定してセット(K01)する。この状態で一対の通電電極2の接触面2c上にラックバーWを載置してセット(K02)し、クランプ装置6を作動させてラックバーWをクランプ(K03)する。
このクランプによりラックバーWの歯面Wa両端部が各通電電極2の接触面2cにそれぞれ面接触し、この状態で電源装置3の切替器を焼入れ電源部3a側として、この焼入れ電源部3aから各通電電極2に導電板10を介して例えば周波数が40〜25KHzの高周波電流を供給して焼入れ通電(K04)する。この焼入れ通電時に、通電加熱される歯面Waの加熱温度が前記放射温度計8で測定され、その信号が制御装置7に入力されて、予め設定されている焼入れ温度と比較され、設定温度となった時点で焼入れ通電を終了する。
この焼入れ通電が終了したら、制御装置7の制御信号により前記冷却装置5を作動させて冷却筒4内に冷却水を供給し、その噴射孔からラックバーWの所定温度まで通電加熱された歯面Waに下方から噴射して歯面Waを冷却(K05)する。この焼入れ通電及び冷却により、ラックバーWは、図2に示すように、例えば図のハッチングで示す範囲a、すなわち歯面Waの表面側から中心方向に所定の範囲が加熱・急速冷却されて歯面Waが焼入れされる。
焼入れが完了するとラックバーWや通電電極2のセット位置等はそのままの状態とし、制御装置7の制御信号で電源装置3の切替器を焼戻し通電部3b側に切り替える。そして、電源装置3の焼戻し通電部3bから焼戻し用の周波数である5〜10KHzの高周波電流を導電板10を介して通電電極2に供給して焼戻し通電(K06)する。この焼戻し通電時は、焼入れ通電時と同様に前記放射温度計8で歯面Waの加熱温度を測定(監視)しつつ行われ、加熱温度が予め設定した所定の焼戻し温度となった時点で焼戻し通電を終了する。
この焼戻し通電により、ラックバーWは、図2の二点鎖線で示す範囲b、すなわち歯面Waの焼入れされた範囲aよりラックバーWの中心方向に所定値広い範囲bが焼戻しされ、加熱及び急速冷却で焼入れ部位に発生している内部応力等が除去されて、歯面Waの耐衝撃性や耐摩耗性が向上することになる。つまり、比較的周波数の高い高周波電流で一旦焼入れして歯面Waに所定の硬度を確保しつつ、内部に発生もしくは残留する内部応力を比較的周波数の低い高周波電流の焼戻しで除去することで、焼入れで所謂脆くなり易い歯面Waのの特に表面側の硬度等の品質を所望の品質に容易に確保できることになる。
そして、このようにして焼入れ後に焼戻しされたラックバーWは、焼戻し状態のままで制御装置7からの制御信号により、前記焼入れ時と同様に冷却装置5を作動させて冷却筒4に冷却水を供給し、その噴射孔から冷却水を歯面Waに噴射して焼戻し温度で加熱された歯面Waを冷却(K07)する。この冷却は、前記焼入れ時のように焼入れ温度まで通電加熱された歯面Waを急速に冷却する必要はなく、所定時間を掛けて例えばゆっくり冷却することで後述するラックバーWの取り出し作業に支障をきたさない温度まで冷却すれば良い。したがって、この工程K07は、図6の二点鎖線cで示すように、工程時間に余裕がある場合あるいは後述する工程K08のラックバーWの取り出しをロボット等で行う場合等には、省略して自然冷却するようにしても良い。
前記工程K07で焼戻し通電後の冷却が終了したら、制御装置7の制御信号でクランプ装置6を作動させて、その押圧部6aを後退(上昇)させ、クランプ装置6によるラックバーWのクランプ状態をアンクランプ(K08)する。そして、アンクランプされたラックバーWを通電電極2上から取り出す(K09)ことで、ラックバーWの歯面Waの熱処理が終了する。これにより、前述したように、焼入れ部位に発生している内部応力等が除去されて耐衝撃性や耐摩耗性が優れた歯面Waを有するラックバーWが得られることになり、その際、歯面Waの焼入れと焼戻しが通電電極2上にセット状態のままで、略連続した工程で行えることになる。
なお、以上の説明において、図6の二点鎖線dで示すように、例えば焼入れ通電の前に、一対の通電電極2の接触面2cがラックバーWの歯面Wa両端部に面接触しているか否かを検知して、面接触している場合にのみ焼入れ通電を行うようにしても良い。このとき、通電電極2と歯面Wa両端部の接触状態の検知は、例えば焼入れ電源部3aから所定の検知電流を供給しこれが所定量流れていることを検知することで行ったり、あるいは接触検知用の一対の検知電極を導電板10(もしくは通電電極2)とラックバーWの所定位置に接触させることで検知するようにすれば良い。
さらに、前記説明においては、ラックバーWの歯面Waを熱処理(焼入れ及び焼戻し)する場合について説明したが、例えばラッバーWの歯面Waと直径方向の対向面となる背面Wbを熱処理(焼入れ)する場合は、図7に示すようにして行えば良い。
すなわち、熱処理する背面Wbの形状に対応した一対の通電電極2を導電板10上に固定してセット(K10)し、この通電電極2上にラックバーWの背面Wbを載置してセット(K11)する。そして、制御装置7の制御信号でクランプ装置6を作動させてラックバーをクランプ(K12)し、この状態で制御装置7の制御信号で電源装置3の切替器を焼入れ電源部3a側として、所定の高周波電流を通電電極2に供給して背面Wbを焼入れ通電(K13)する。
そして、前記放射温度計8により加熱温度を監視しつつ所定の加熱温度になった時点で焼入れ通電を停止し、通電電極2にラックバーWをセットした状態のままで、制御装置7の制御信号で冷却装置5を作動させて加熱された背面Wbを冷却(K14)する。この焼入れ通電及び急速冷却でラックバーWの背面Wbの例えば図2に示す範囲eが所定の硬度に焼入れされ、この状態でクランプ装置6を作動させてラックバーWをアンクランプ(K15)する。そして、この焼入れ処理されたラックバーWを通電電極2上で軸回りに180度回転させて、図6の工程K01に移行し、歯面Waの焼入れ及び焼戻しを実行する。これにより、ラックバーWの背面Wbと歯面Waの両方に所定の熱処理が施されることになる。
このように、前記通電加熱装置1によれば、制御装置7が、一対の通電電極2に電源装置3の焼入れ電源部3aから所定の高周波電流を供給してラックバーWの歯面Waを焼入れし、この焼入れ後にラックバーWをそのままの状態で一対の通電電極2に電源装置3の焼戻し電源部3bから所定の高周波電流を供給して歯面Waを焼戻しするため、ラックバーWを各通電電極2上に一回のセットで焼入れと焼戻しを連続して行うことができ、品質管理を簡単かつ高精度に行うことができると共に、設備を簡素化してコスト的に有利なラックバーWを容易に得ることができる。
また、一対の通電電極2の接触面2cの形態がラックバーWの歯面の形態に応じて複数種類設定され、これらが導電板10上に着脱かつ位置調整可能に固定されているため、ラックバーWの歯面の形態に応じた通電電極2を択一的に使用できて、各種ラックバーWの熱処理に適応可能な汎用性に優れた通電加熱装置1を得ることができる。また、焼戻し電源部3bが焼入れ電源部3aによる歯面Waの焼入れ範囲aよりその内部側まで焼戻しされる通電条件であるため、焼鈍しにより焼入れ部分全域の内部応力等を除去できて、耐衝撃性や耐摩耗性等の品質的に優れた歯面のラックバーWを容易に得ることができる。
さらに、ラックバーWの歯面Waの通電加熱時の温度を検出可能な放射温度計8を備え、この放射温度計8の検出温度に基づいて制御装置7が通電状態を制御するため、通電加熱時の焼入れ温度や焼戻し温度を所定の温度に精度良く維持できて、ラックバーWの歯面Waに一層高精度な熱処理を行うことができる。また、一対の通電電極2とラックバーWの歯面Waとの接触状態を検知手段で検知した場合に、焼入れ電源部3aから一対の通電電極2に高周波電流を供給するようにすれば、通電電極2が歯面Waに確実に接触している場合にのみ所定の高周波電流を供給できて、接触不良時の通電によるスパーク等の発生を防止できて、ラックバーWの歯面Waにより一層高精度な熱処理を簡単に行うことができる。
さらにまた、一対の通電電極2の接触面2cとラックバーWの歯面Waや背面Wbとを所定面積の面接触状態とすることができるため、通電状態を安定化させ、通電時のスパーク等の発生を確実に抑えて、ラックバーWの歯面Waや背面Wbに一層高精度な焼入れや焼戻し品質を容易に得ることができる。また、一対の通電電極2の接触面2cを半円弧形状とすれば、より広い面積での面接触が可能になり、一層高精度な熱処理品質を得ることができる。
また、通電電極2の接触面2cを、図5(b)(c)に示すように、ラックバーWの歯面Waの溝12内に接触するようすうにすれば、通電電極2と歯面Waとの位置決めが確実となり、通電時の位置関係の変化等を確実に規制して、通電状態をより一層安定化させ、ラックバーWの歯面Waにより一層高精度な焼入れや焼戻し品質を容易に得ることができる。
なお、前記実施形態における、各通電電極2の接触面2cの形態は図示した3つの形態に限定されず、所定の面積で面接触可能な適宜形態の通電電極を使用することができるし、冷却筒4の形態や電源装置3から出力される高周波電流の周波数等も一例であって、例えば焼戻し時に焼入れ時の周波数と略同一もしくはそれに近い周波数を使用する等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
本発明は、自動車等の車両のラックバーへの利用に限定されず、所定形態の歯面を有する各種ラックバーにも利用できる。
1・・・通電加熱装置、2・・・通電電極、2a・・・固定部、2b・・・電極部、2c・・・接触面、3・・・電源装置、3a・・・焼入れ電源部、3b・・・焼戻し電源部、4・・・冷却筒、5・・・冷却装置、6・・・クランプ装置、6a・・・押圧部、7・・・制御装置、8・・・放射温度計、10・・・導電板、11・・・凹部、12・・・溝、W・・・ラックバー、Wa・・・歯面、Wb・・・背面。

Claims (5)

  1. 所定間隔を有してラックバーの歯面の軸方向両端部に下方から接触可能な一対の通電電極と、前記ラックバーの背面に上方から当接して前記歯面を下方に所定圧で押圧可能なクランプ手段と、前記一対の通電電極間に配置されて前記歯面に冷却水を噴射可能な冷却手段と、前記一対の通電電極に焼入り用と焼鈍し用の高周波電流をそれぞれ供給可能な焼入れ電源部と焼鈍し電源部を有する電源手段と、これらを制御する制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記一対の通電電極に前記電源手段の焼入れ電源部から所定の高周波電流を供給して前記歯面を焼入れし、該焼入れ後に前記ラックバーをそのままの状態で前記一対の通電電極に前記電源手段の焼鈍し電源部から所定の高周波電流を供給して前記歯面を焼鈍しすることを特徴とするラックバーの通電加熱装置。
  2. 前記一対の通電電極は、そのラックバーの歯面との接触面の形態が歯面の形態に応じて複数種類設定され、これらが導電板上に着脱及びまたは位置調整可能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のラックバーの通電加熱装置。
  3. 前記焼鈍し電源部は、前記焼入れ電源部による前記歯面の焼入れ範囲より当該歯面の内部側まで焼鈍しされる通電条件であることを特徴とする請求項1または2に記載のラックバーの通電加熱装置。
  4. 前記ラックバーの歯面の通電加熱時の温度を検出可能な放射温度計を備え、該放射温度計の検出温度に基づいて前記制御手段が通電状態を制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のラックバーの通電加熱装置。
  5. 前記制御手段は、前記一対の通電電極とラックバーの歯面との接触状態を検知する検知手段を備え、該検知手段で所定の接触状態が検知された場合に前記焼入れ電源部から前記一対の通電電極に高周波電流を供給することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のラックバーの通電加熱装置。
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