JP5875176B2 - 軸状ワークの通電加熱装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば歯面と背面を有するラックバー等の軸状ワークの所定面を通電加熱により焼入等が可能な軸状ワークの通電加熱装置に関する。
従来、この種の通電加熱装置としては、例えば特許文献1に開示されている。この通電加熱装置は、ラックバーの長手方向に沿って所定間隔で対向配置した第1接触電極及び第2接触電極と、通電加熱したラックバーの歯面や背面を急速冷却する冷却手段と、ラックバーを上方から押圧する油圧シリンダ等を備えている。そして、ラックバーの歯面を焼入する場合に、歯面側に両接触電極を接触させて高周波電流を直接通電し、ラックバーの背面を焼入する場合には、ラックバーの上下位置を逆に設定して背面側に両接触電極を接触させて高周波電流を直接通電するようにしたものである。
特開平10−183234号公報
しかしながら、このような通電加熱装置にあっては、軸状ワークとしてのラックバーに高周波電流を通電するための第一接触電極と第2接触電極の先端部(上端部)に同一三角形状の溝が形成され、両接触電極と円柱形状のラックバーの例えば背面とが円周方向にそれぞれ二つの接触点で接触して通電されるようになっている。そのため、両接触電極間に位置するラックバーの背面において、通電時にラックバーの長手方向両端の左右の二つの接触点を結ぶ直線部分に電流が集中的に流れ、二つの直線部分の間を流れる電流との間にバラツキが発生し易く、ラックバーの背面の所定範囲に均一な通電加熱状態が得られ難く、ラックバーの背面に高精度な焼入品質を得ることが難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、左右一対の通電電極と軸状ワークの表面との接触形態を互いに異ならせることにより、軸状ワークの表面に均一な通電加熱状態を容易に得ることができて、加熱面に高精度な焼入品質等を得ることが可能な軸状ワークの通電加熱装置を提供することにある。
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、軸状ワークの長手方向に沿って所定間隔で対向配置され、前記軸状ワークの所定面にそれぞれ接触可能で当該所定面の外周面形状に対応した半円弧形状の凹部をそれぞれ有する左右一対の通電電極と、該一対の通電電極に所定周波数の電流を供給して前記軸状ワークの所定面を通電加熱する電源装置と、を備えた軸状ワークの通電加熱装置であって、前記一対の通電電極は、その少なくとも一方の通電電極の前記凹部の底面に該凹部の板厚方向に沿ってスリットを形成して前記凹部の形状を互いに異ならせることにより、前記凹部が前記軸状ワークの所定面の長手方向の二箇所に互いに異なる形態で接触可能に構成されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記一対の通電電極が、一方の通電電極の凹部に前記スリットを形成することで当該凹部が前記軸状ワークの所定面に複数点で接触し、前記スリットを有さない他方の通電電極の凹部が前記軸状ワークの所定面に一点で接触することを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、前記一対の通電電極が、両通電電極の各凹部に形状の異なる前記スリットをそれぞれ形成することで、各凹部が軸状ワークの所定面に異なる形態で接触することを特徴とする。さらに、請求項4に記載の発明は、前記電源装置が、前記一対の通電電極に、低・中周波数の電流を所定時間供給した後に高周波の電流を所定時間供給することを特徴とする。
本発明の請求項1に記載の発明によれば、軸状ワークの長手方向に沿って対向配置される左右一対の通電電極の凹部に設けられるスリットにより、軸状ワークの加熱面の長手方向の二箇所に互いに異なる形態で接触可能に構成されているため、一対の通電電極間の軸状ワークに流れる電流の所定部位への集中を抑制できて、軸状ワークの表面に均一な通電加熱状態を得ることができ、加熱面に高精度な焼入や焼鈍し品質等を容易に得ることができる。また、半円弧形状の凹部底面に板厚方向のスリットを設けることで、一対の通電電極の形状を異ならせることができるため、通電電極の形状を簡略化できて、通電加熱装置の構成を簡素にして安価に形成すること等ができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、一方の通電電極のスリットを有する凹部が軸状ワークに複数点で接触し、他方の通電電極のスリットを有さない凹部が軸状ワークに一点で接触するため、各接触点間に電流を流すことができて、軸状ワークの表面に一層均一な通電加熱状態を得ることができる。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、一対の通電電極の凹部のスリット形状を異ならせ、この各凹部が軸状ワークの長手方向の二箇所に互いに異なる形態で接触するため、通電電極の凹部の形状変更で各種加熱パターンに対応できる等、軸状ワークの表面に所望の通電加熱状態を容易に得ることができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、電源装置が、一対の通電電極に低・中周波数の電流を所定時間供給した後に高周波の電流を所定時間供給するため、低・中周波数電流の通電による予備加熱後に高周波電流で通電加熱できて、例えばラックバーの背面に、その周面に沿って拡がった最適な焼入層を容易に得ること等ができる。
本発明に係わる軸状ワークの通電加熱装置の斜視図 同その焼入治具がセットされる治具セット台の斜視図 同その平面図 同その正面図 同軸状ワークがセットされる焼入治具の縦断面図 同その平面図 同図5のA部の拡大図 同焼入治具の通電電極の斜視図 同その側面図 同焼入状態を示すラックバーの断面図 同通電電極の変形例を示す側面図 同通電電極の他の変形例を示す要部側面図
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図9は、本発明に係わる通電加熱装置の一実施形態を示している。通電加熱装置1は、図1に示すように、コラム3を有し、このコラム3の略中央前部には、焼入治具2が着脱可能にセットされる治具セット台4が配置されている。
前記焼入治具2の上方には、焼入治具2にセットされた軸状ワークとしてのラックバーWの歯面Waと背面Wbを反転させたり、あるいはラックバーWを後述する支持部材18a、18bにセットしたり取り外す等の所定の動作を行うワーク制御装置5が配置されている。また、前記コラム3の右側には、操作盤6aを有する制御装置6が配置されると共に、コラム3の所定位置には、複数の所定周波数の電流を出力可能な電源装置7と、後述する冷却ジャケット19に冷却水を供給可能な冷却水供給装置8等が配置されている。
前記治具セット台4は、図2〜図4に示すように、略直方体形状の架台10を有し、この架台10の上面後方側に焼入治具2が着脱可能に配置されている。また、架台10の上面の右側には、例えばラックバーWの上下方向の向きを検出可能なセンサ11aを有するラックバー判別装置11が配置されると共に、架台10上面の後方側にもセットされたラックバーWの位置等を検出可能なセンサ12が配置されている。さらに、架台10の焼入治具2の前方側には、焼入が完了したラックバーWを複数本の傾斜した桟13aにより前方に排出可能な自動排出装置13が配置されている。
この治具セット台4上にセットされる前記焼入治具2は、図5〜図7に示す如く構成されている。すなわち、焼入治具2は、平面視長方形状の所定板厚の例えば金属板からなり、下面の四隅に治具セット台4の位置決め孔に嵌合可能な位置決め突起15aが設けられたベース15を有している。このベース15上には、一対の通電電極16a、16bと、この通電電極16a、16bの下部を支持すると共に該通電電極16a、16bに電気的に接続された一対の導電部材17a、17bと、ラックバーWの先端側Wc及び基端側Wdを支持する先端側支持部材18a及び基端側支持部材18bと、前記通電電極16a、16b間に配置された冷却ジャケット19が、所定位置に配置されることで、これらの各部材がベース15に一体化されてユニット化されている。
前記一対の通電電極16a、16bは、図8及び図9に示すように、所定板厚の銅板により断面(正面視)略L字形状に形成されて、ラックバーWの背面Wb(もしくは歯面Wa)に接触可能な接触面としての接触部40a、40bを有している。このとき、各通電電極16a、16bの接触部40a、40bには、ラックバーWの背面Wbの外形形状に対応した半円弧形状の凹部41a、41bが形成され、各通電電極16a、16bのうち、通電電極16bの凹部41bの底面には、幅w1、深さh1の断面方形状のスリット42が接触部40bの板厚方向に沿って形成されている。また、通電電極16aの凹部41aの底面には、スリット42が形成されずそのままの状態(曲面)とされている。
この凹部41a、41bの底面形状(スリット42の有無)により、両通電電極16a、16bのラックバーWの背面Wbに対する接触形態が互いに異なり、通電電極16aの場合は、凹部41aの底面の最深部の一点で背面Wbに接触し、通電電極16bの場合は、凹部41bの底面のスリット42の両側の二点(すなわち凹部41bの周面に沿ったスリット42両側の二箇所)で背面Wbに接触するようになっている。なお、前記通電電極16a、16bは、その水平な固定部が対応する導電部材17a、17bにボルト20(図5参照)により着脱可能に固定されて、接触部40a、40b間の間隔が該接触部40a、40b上に載置されるラックバーWの背面Wbの焼入長さ等に対応するように設定されている。
前記一対の導電部材17a、17bは、図5に示すように、所定板厚の銅板により形成されて、絶縁部材21を介して積層配置されると共に、その一方の端部に前記通電電極16a、16bの固定部が前記ボルト20により固定されている。また、各導電部材17a、17bは、複数個(図では6個)のネジ22(図3及び図6参照)により前記ベース15に固定されると共に、一対の導電部材17a、17bの他方の端部は、ベース15の長手方向の略中間位置から側方(ベース15の後方側)に突出して、該突出部分が端子部23a、23b(図6参照)を形成している。この端子部23a、23bに、図示しない銅板等からなる導体の一方の端部が接続され、この導体の他方の端部が前記電源装置7の出力端子に接続されている。
前記先端側支持部材18aは、図5及び図6に示すように、ベース15の左端部に固定されたブロック25上に図6の矢印イ方向に移動可能な移動板26と、この移動板26の先端に固定されラックバーWの先端側Wcに嵌合可能な嵌合支持部27を有している。また、移動板26には、位置調整ボルト28が挿通される2条の長孔が設けられており、この長孔に対応してブロック25に設けたネジ孔に位置調整ボルト28を螺合することで移動板26が所定位置に固定されて、ラックバーWの先端側Wcが所定位置に設定支持されるようになっている。
また、前記基端側支持部材18bは、図5に示すように、ベース15の右端部に固定されたブロック29上にボルト30により連結された支持部31を有し、この支持部31内には、ボルト30の先端側に嵌装されたスプリング32が内蔵されている。このスプリング32によって、支持部31がブロック29に対して弾性支持され、ラックバーWの外周面形状に対応した支持部31の円弧面からなる上面で、ラックバーWの基端側Wdの所定位置が下方から所定位置に設定支持されるようになっている。
前記冷却ジャケット19は、前記一対の通電電極16a、16b間に配置され、内部に冷却水流路33aが形成された箱形状のジャケット本体33を有している。このジャケット本体33の上面には、図7に示すように、ラックバーWの歯面Wa等の形状に対応した多数の噴射孔33bが形成され、この噴射孔33bから前記冷却水供給装置8からホースやホースコネクタ34を介して供給される冷却水が、上方に向けて所定圧で噴射されるようになっている。
なお、焼入治具2の前記ベース15の左右端部には、取手35が側方であるベース15の長手方向に突出する状態で固定されており、この取手35を作業者が手で持ったり、あるいはクレーンやロボット等で持つことにより、焼入治具2が持ち運び(運搬)可能となっている。また、前記ベース15の適宜位置には、焼入治具2を自動識別もしくは目視識別可能な識別マーク36が付与されている。さらに、前記電源装置7は、例えばインバータ回路等を有して、低・中周波の電流から高周波の電流までの少なくとも2種類の周波数の電流を、一対の通電電極16a、16bに出力可能に構成されている。
次に、前記通電加熱装置1の動作の一例を、ラックバーWの背面Wbを焼入する場合を例にして説明する。先ず、通電加熱装置1で焼入されるラックバーWの背面Wbの焼入長さ等の形態に応じた焼入治具2を予め準備し、このとき、焼入治具2の一対の通電電極16a、16b間の対向距離や、冷却ジャケット19のジャケット本体33の噴射孔33bの位置や内径、先端側支持部材18aの移動板26の位置、基端側支持部材18bの支持部31の上面形状等は、対応するラックバーWの形態(ラックバーW自体の形状や背面Wbの焼入パターン等)に応じて予め所定に設定されている。
そして、焼入するラックバーWに対応した焼入治具2を治具セット台4にセットし、焼入治具2の支持部材18a、18bで例えば歯面Waが焼入された(もしくは未焼入の)ラックバーWの背面Wbを支持する。この支持状態において、ラックバーWの背面Wbの長手方向の両端部に前記通電電極16a、16bの接触部40a、40bを接触させる。このとき、通電電極16aの接触部40aは、凹部41aの最深部が背面Wbに一点で接触し、通電電極16bの接触部40bは、凹部41bのスリット42の両側で背面Wbに二点、すなわち合計三点でラックバーWの背面Wbに接触した状態となる。
そして、この接触状態で、制御装置6の制御により、電源装置7が作動して通電電極16a、16bの接触部40a、40bを介してラックバーWの背面Wbに所定周波数の電流が通電される。この通電は、先ず低周波(もしくは中周波)の電流を通電電極16a、16bに供給して所定時間の予備通電加熱を行い、この予備通電加熱でラックバーWの温度を所定温度まで上昇させた後に、高周波の電流を通電電極16a、16bに所定時間供給することで行われる。この通電加熱時に、通電電極16a、16b間を流れる電流は、通電電極16aによる一つの接触点と、通電電極16bによる二つの接触点間を流れ、従来例のように左右の二つの接触点間を直線的に流れて該部分に電流が集中すること等がなくなり、一対の通電電極16a、16bの接触点間に均一な(バラツキの少ない)通電状態が得られることになる。
なお、実験によれば、ラックバーWの背面Wbに、最初は低・中周波数の電流を通電して予備通電加熱し、その後に高周波の電流を通電すると、図10(a)に示すような背面Wbの周面に沿って拡がり、背面Wbの焼入としては極めて好ましい焼入層43が得られ、また、最初から高周波の電流を通電した場合は、図10(b)に示すような周面に沿って拡がらず水平な底面44aを有する焼入層44が得られることが確認されている。この焼入層43、44の形状が異なる理由は、予備通電加熱により背面Wbの温度を上昇させておくことで、高周波通電時の温度が歯面Wa方向に向かって上昇することによるものと考えられる。
そして、所定時間の通電加熱が終了したら、冷却ジャケット19から冷却水が所定時間噴射され、冷却水の噴射による急速冷却でラックバーWの背面Wbが焼入される。この背面Wbが焼入されたラックバーWは、支持部材18a、18bによる支持が解除されて、例えばラックバーWの下方に位置する自動排出装置13の桟13aの先端が上昇することで、傾斜している桟13aに沿って治具セット台4の前方に排出されて、焼入作業が終了する。
なお、ラックバーWの歯面Waの焼入は、例えば前記通電電極16a、16bもしくは前記スリット42を有さない一対の通電電極、あるいは前記スリット42や凹部41a、41bを有さない一対の通電電極を、焼入治具2にセットして行うことができる。また、所定形態の全てのラックバーWの背面Wb等の焼入作業が終了し、他の異なるラックバーWを焼入する場合は、治具セット台4にセットされている焼入治具2を、所定の焼入治具2に交換することによって行うことができる。
なお、以上の例では、通電電極16a、16bの接触部40a、40bに半円弧形状の凹部41a、41bを設け、一方の凹部41bの底面に方形状のスリット42を設けることで、各接触部40a、40bのラックバーWの背面Wbに対する接触形態を互いに異ならせるように構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば図11に示すように構成することもできる。すなわち、各通電電極16a、16bの凹部41a、41bに断面方形状のスリット42をそれぞれ設け、各スリット42の幅w1を互いに異ならせるように構成する。この場合は、各凹部41a、41bにそれぞれ二つの接触点が得られることになるが、スリット42の幅w1の大小により、接触点の凹部41a、41bの周方向における位置が両通電電極16a、16bで異なることになる。
このように、前記実施形態の通電加熱装置1においては、ラックバーWの長手方向に沿って対向配置される左右一対の通電電極16a、16bの接触部40a、40bが、ラックバーWの背面Wbの長手方向の二箇所に互いに異なる形態で接触するため、一対の通電電極16a、16b間のラックバーWの背面Wbに流れる電流の所定部位への集中を抑制できて、ラックバーWの背面Wbに均一な通電加熱状態を得ることができ、背面Wbに高精度な焼入品質を容易に得ることができる。
特に、一方の通電電極16aの接触面40aがラックバーWの背面Wbに一点で接触し、他方の通電電極16bの接触面40bがラックバーWの背面Wbに二点で接触するため、各接触点間に例えば略交差するような電流を流すことができる等、ラックバーWの背面Wbに一層均一な通電加熱状態を得ることができる。また、一対の通電電極16a、16b−の接触部40a、40bの凹部41a、41bにおける、スリット42の有無やスリット42の幅w1の大小により、接触部40a、40bの形状を互いに異ならせているため、通電電極16a、16bの接触部40a、40bの形状変更で各種加熱パターンに対応できる等、ラックバーWの背面Wbに所望の焼入状態を容易に得ることができると共に、通電電極16a、16bの形状を簡略化できて、通電加熱装置1の構成を簡素にして安価に形成すること等ができる。
また、ラックバーWの背面Wbの焼入時に、電源装置7から一対の通電電極16a、16bに、低・中周波数の電流を所定時間供給した後に高周波の電流を所定時間供給するため、低・中周波数電流の通電による予備加熱後に高周波電流で通電加熱できて、ラックバーWの背面Wbに、その周面に沿って拡がった焼入層43を得ることができ、ラックバーWの背面Wbに最適な焼入品質を容易に得ることができる。
さらにまた、一対の通電電極16a、16b、一対の導電部材17a、17b、先端側支持部材18aと基端側支持部材18b及び冷却ジャケット19からなる各部材が、平面視略長方形状の平板状のベース15上に一体的に配置されてユニット化されているため、各種ラックバーWの焼入にユニット化されて識別化された所定の焼入治具2を使用することで各種ラックバーWの焼入に的確に対応することができる。その結果、焼入作業の段取り時間の短縮化が図れたり、ラックバーWの種類に係わらず、同一形態の各ラックバーWの焼入精度の均一化や、異なる形態のラックバーWにおける焼入精度の均一再現性を図り、常に安定した焼入品質の各種ラックバーWを容易に得ることができる。
なお、前記実施形態においては、通電電極16bの接触部40bの凹部41bに断面方形状のスリット42を形成することで、両通電電極16a、16bの背面Wbへの接触形態を異ならせたが、スリット42の形状は方形状に限らず、例えば図12(a)に示すように円弧形状としたり、図12(b)に示すように三角形状とする等、適宜の形状を採用できるし、スリット42の数も1本に限定されず、複数本設けることも可能である。また、前記実施形態においては、治具セット台4上に焼入治具2が着脱可能にセット可能な構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば通電電極16a、16bがコラム3の所定位置に着脱可能にセット可能な適宜構成の通電加熱装置1であっても良い。
本発明は、ラックバーの背面を通電加熱で焼入する通電加熱装置への適用に限らず、軸状ワークの所定の面を焼入したり焼鈍し(焼戻し)する全ての通電加熱装置に利用できる。
1・・・通電加熱装置、2・・・焼入治具、4・・・治具セット台、5・・・ワーク制御装置、6・・・制御装置、7・・・電源装置、8・・・冷却水供給装置、13・・・自動排出装置、15・・・ベース、16a、16b・・・通電電極、17a、17b・・・導電部材、18a・・・先端側支持部材、18b・・・基端側支持部材、19・・・冷却ジャケット、33・・・ジャケット本体、35・・・取手、40a、40b・・・接触部、41a、41b・・・凹部、42・・・スリット、43・・・焼入層、W・・・ラックバー、Wa・・・歯面、Wb・・・背面、Wc・・・先端側、Wd・・・基端側、w1・・・スリットの幅。

Claims (4)

  1. 軸状ワークの長手方向に沿って所定間隔で対向配置され、前記軸状ワークの所定面にそれぞれ接触可能で当該所定面の外周面形状に対応した半円弧形状の凹部をそれぞれ有する左右一対の通電電極と、該一対の通電電極に所定周波数の電流を供給して前記軸状ワークの所定面を通電加熱する電源装置と、を備えた軸状ワークの通電加熱装置であって、
    前記一対の通電電極は、その少なくとも一方の通電電極の前記凹部の底面に該凹部の板厚方向に沿ってスリットを形成して前記凹部の形状を互いに異ならせることにより、前記凹部が前記軸状ワークの所定面の長手方向の二箇所に互いに異なる形態で接触可能に構成されていることを特徴とする軸状ワークの通電加熱装置。
  2. 前記一対の通電電極は、一方の通電電極の凹部に前記スリットを形成することで当該凹部が前記軸状ワークの所定面に複数点で接触し、前記スリットを有さない他方の通電電極の凹部が前記軸状ワークの所定面に一点で接触することを特徴とする請求項1に記載の軸状ワークの通電加熱装置。
  3. 前記一対の通電電極は、両通電電極の各凹部に形状の異なる前記スリットをそれぞれ形成することで、各凹部が軸状ワークの所定面に異なる形態で接触することを特徴とする請求項1に記載の軸状ワークの通電加熱装置。
  4. 前記電源装置は、前記一対の通電電極に、低・中周波数の電流を所定時間供給した後に高周波の電流を所定時間供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の軸状ワークの通電加熱装置。
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