JP3923423B2 - 導電性ロッド状部材の通電加熱設備 - Google Patents

導電性ロッド状部材の通電加熱設備 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性ロッド状部材の通電加熱設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
導電性ロッド状部材を通電加熱し,次いで,そのロッド状部材に,それの内周面に密着するような心金を貫通させ,その後ロッド状部材を,それの両端部を把持して,内径を変化させることなく軸線方向に引張り,一端部側に存する大外径部と,他端部側に存する小外径部と,それら大,小外径部間に存するテーパ部とよりなる成形品を得る場合,ロッド状部材には,通電加熱によって,次のような温度分布を現出させることが必要である。即ち,その温度分布は,導電性ロッド状部材において,それの軸線方向の一端部側に在って小外径部に対応する第1昇温領域と,中間部に在ってテーパ部に対応する第2昇温領域と,さらに他端部側に在って大外径部に対応する第3昇温領域とよりなり,第1昇温領域の温度Tfと第3昇温領域の温度TtとはTf>Ttの関係にあり,第2昇温領域の温度は第1昇温領域側端部から第3昇温領域側端部に向って下降する,といったものである。
【0003】
従来,導電性ロッド状部材の通電加熱に用いることが可能な設備としては,例えば,被加熱部材の両側にそれぞれ複数の電極を備え,相対向する両電極を通電用電極対とするようにしたものが知られている(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−264260号公報([0014]〜[0017])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来設備はロッド状部材において,それの所定長さ範囲を一定温度に加熱するものであるから,前記のような温度分布を現出させることはできない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は,導電性ロッド状部材において前記のような温度分布を容易に現出させることが可能な前記通電加熱設備を提供することを目的とする。
【0007】
前記目的を達成するため本発明によれば,導電性ロッド状部材に現出される温度分布が,その軸線方向の一端部側に存する第1昇温領域と,中間部に存する第2昇温領域と,他端部側に存する第3昇温領域とよりなり,前記第1昇温領域の温度Tfと前記第3昇温領域の温度TtとはTf>Ttの関係にあり,前記第2昇温領域の温度は前記第1昇温領域側端部から前記第3昇温領域側端部に向って下降する,といったように前記導電性ロッド状部材を通電加熱するために用いられる通電加熱設備であって,前記ロッド状部材において,前記第1昇温領域に対応する第1被加熱領域に在るロッド状部材一端部に圧接可能な主電極と,前記第1被加熱領域の第2昇温領域側の端部に圧接可能な第1切換え電極と,前記第2昇温領域に対応する第2被加熱領域に圧接可能で,且つ前記軸線方向に並ぶ複数の第2切換え電極と,前記第3昇温領域に対応する第3被加熱領域に在るロッド状部材他端部に圧接可能な第3切換え電極と,前記主電極および前記第1〜第3切換え電極を前記ロッド状部材に圧接し,且つそのロッド状部材から離間させる作動装置とを備え,前記作動装置は,前記第1被加熱領域の昇温過程では前記主電極および前記第1切換え電極を前記ロッド状部材に圧接し,また前記第1および第2被加熱領域の昇温過程では前記主電極を前記ロッド状部材に圧接すると共に複数の前記第2切換え電極を,前記第1切換え電極側のものから1つ宛順次前記ロッド状部材に圧接し,さらに前記第1,第2および第3被加熱領域の昇温過程では前記主電極および前記第3切換え電極を前記ロッド状部材に圧接する機能を持つ,導電性ロッド状部材の通電加熱設備が提供される。
【0008】
前記設備において,主電極および第1切換え電極をロッド状部材に圧接し,両電極を介し第1被昇温領域に通電して,その領域の温度を所定の温度まで上昇させる。この温度は目標温度よりも大幅に低く設定されている。この状態では第2,第3被昇温領域の温度はほぼ室温と同じである。
【0009】
次に,主電極をロッド状部材に圧接した状態に保持すると共に複数の第2切換え電極を,第1切換え電極側のものから1つ宛順次ロッド状部材に圧接し,主電極および1つの第2切換え電極を介し第1,第2被昇温領域に通電して,第1被昇温領域を前記温度よりも高い温度まで上昇させ,また第2被昇温領域に第1被昇温領域側端部から第3被昇温領域側端部に向って下り階段状に下降する温度勾配を現出させる。この状態では第3被昇温領域の温度はほぼ室温と同じである。
【0010】
主電極および第3切換え電極をロッド状部材に圧接し,両電極を介しロッド状部材全体に通電して,第1〜第3被昇温領域を目標温度まで上昇させる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は導電性ロッド状部材としてのAl合金製パイプ1を示す。Al合金には,例えばJIS A5052が該当する。このAl合金製パイプ1を通電加熱し,次いで,パイプ1に,それの内周面に密着するような心金2を貫通させ,その後パイプ1を,それの両端部を把持して,内径を変化させることなく軸線方向に引張り,図2に示すように,一端部側に存する大外径部3aと,他端部側に存する小外径部3bと,それら大,小外径部3a,3b間に存するテーパ部4とよりなる成形品5を得る。
【0012】
図3〜5は通電加熱設備6を示し,この通電加熱設備6によりAl合金製パイプ1を通電加熱して,そのパイプ1に次のような温度分布を現出させるものである。その温度分布は,図1に示すようにAl合金製パイプ1において,それの軸線方向の一端部側に在って小外径部3bに対応する第1昇温領域A1 と,中間部に在ってテーパ部4に対応する第2昇温領域A2 と,他端部側に在って大外径部3aに対応する第3昇温領域A3 とよりなり,第1昇温領域A1 の温度Tfと第3昇温領域A3 の温度TtとはTf>Ttの関係にあり,第2昇温領域A2 の温度は第1昇温領域A1 側端部から第3昇温領域A3 側端部に向って下降する,といったものである。
【0013】
通電加熱設備6は上部基板7と,それと対向する下部基板8とを有し,その下部基板8上面にAl合金製パイプ1をかけ渡す一対の支持台9が所定の間隔で立設されている。各支持台9はセラミックス等の熱および電気絶縁性材料よりなる。
【0014】
上,下基板7,8には通電加熱用銅製電極群が保持されている。その通電加熱用電極群は,主電極10と,第1切換え電極11と,複数,実施例で6つの第2切換え電極12と,第3切換え電極13とよりなり,それらの電極10〜13はAl合金製パイプ1の軸線方向に並んでいる。それらの電極10〜13は,相対向する上,下部極a,bを有し,それらの上部極aは上部基板7下面に吊持された複数の空気圧式(または油圧式)作動シリンダ14のピストンロッド15にそれぞれ取付けられ,またそれらの下部極bは下部基板8上面に立設された複数の空気圧式(または油圧式)作動シリンダ16のピストンロッド15にそれぞれ取付けられている。
【0015】
主電極10において,その上部極aの一側面にはJ字状をなす可撓性導電板17の短板部18外面がボルト止めされており,その導電板17の長板部19内面は,上部第1バスバー20の一側面にボルト止めされている。また主電極10において,その下部極bの一側面には逆J字状をなす可撓性導電板21の短板部18外面がボルト止めされており,その導電板21の長板部19内面は,下部第1バスバー22の一側面にボルト止めされている。
【0016】
第1切換え電極11,各第2切換え電極12および第3切換え電極13において,それらの上部極aの一側面には複数のJ字状をなす可撓性導電板17の短板部18外面がそれぞれボルト止めされており,それら導電板17の長板部19内面は,上部第2バスバー23の一側面にそれぞれボルト止めされている。また第1切換え電極11,各第2切換え電極12および第3切換え電極13において,それらの下部極bの一側面には複数の逆J字状をなす可撓性導電板21の短板部18外面がそれぞれボルト止めされており,それら導電板21の長板部19内面は,下部第2バスバー24の一側面にそれぞれボルト止めされている。各可撓性導電板17,21は複数の銅製薄板を積層したものである。上,下部第1,第2バスバー20,22,23,24は図示しない支持部材に固定されている。
【0017】
電源25の(−)側端子はリード線26を介して上部第1バスバー20に接続され,その上部第1バスバー20はリード線27を介して下部第1バスバー22に接続されている。電源25の(+)側端子はリード線28を介して上部第2バスバー23に接続され,その上部第2バスバー23はリード線29を介して下部第2バスバー24に接続されている。
【0018】
Al合金製パイプ1において,主電極10は第1昇温領域A1 に対応する第1被加熱領域B1 (図1参照)に在るAl合金製パイプ一端部(ロッド状部材一端部)cに圧接可能である。第1切換え電極11は第1被加熱領域B1 の第2昇温領域A2 側の端部に圧接可能である。各第2切換え電極12は第2昇温領域A2 に対応する第2被加熱領域B2 (図1参照)に圧接可能である。第3切換え電極13は第3昇温領域A3 に対応する第3被加熱領域B3 (図1参照)に在るAl合金製パイプ他端部(ロッド状部材他端部)dに圧接可能である。
【0019】
主電極10および第1〜第3切換え電極11〜13は,各作動シリンダ14,16により,各導電板17,21の可撓性を利用してAl合金製パイプ1に圧接させられ,且つそのパイプ1から離間させられるものであり,したがってそれら作動シリンダ14,16は電極用作動装置を構成する。
【0020】
次に,通電加熱設備6によるAl合金製パイプ1の加熱作業の一例について説明する。
【0021】
この加熱作業開始前においては,図3,4に示すように各作動シリンダ14,16のピストンロッド15は収縮していて,主電極10,第1〜第3切換え電極11〜13の上,下部極a,bはそれぞれ後退位置にある。Al合金製パイプ1は,図4において各第2切換え電極12等の上,下部極a,bの側方からその上,下部極a,b間に挿入され,両支持台9間に位置決め架設される。この場合,Al合金製パイプ1の温度は20℃とする。またAl合金製パイプ1において,1回の通電加熱による昇温量は20℃とする。
【0022】
〔1〕図5,図6(a)に示すように,第1被加熱領域B1 の昇温過程では,各作動シリンダ14.16の作動により,主電極10および第1切換え電極11の上,下部極a,bをそれぞれAl合金製パイプ1に圧接させ,次いで電源25より主電極10および第1切換え電極11を介し第1被加熱領域B1 に通電してそれを加熱し,その領域B1 を40℃に昇温する。この場合,第2被加熱領域B2 の第1被加熱領域B1 との境界部分には温度勾配が生じる。
【0023】
〔2〕図5,図6(b)に示すように,第1および第2被加熱領域B1 ,B2 の昇温過程では,各作動シリンダ14,16の作動により第1切換え電極11をAl合金製パイプ1から離間させると共に,先ず,第1切換え電極11に最も近い第1番目の第2切換え電極12の上,下部極a,bをそれぞれAl合金製パイプ1に圧接させ,次いで電源25より主電極10および第1番目の第2切換え電極12を介し第1被加熱領域B1 および第2被加熱領域B2 のほぼ6分の1に通電してそれぞれ加熱し,その第1被加熱領域B1 を60℃に昇温し,また第2被加熱領域B2 に40℃昇温域を現出させる。この場合,40℃昇温域の両側には温度勾配を有する部分が存する。
【0024】
次いで,図7(a)に示すように,各作動シリンダ14,16の作動により第1番目の第2切換え電極12をAl合金製パイプ1から離間させると共に,第1切換え電極11から第2番目の第2切換え電極12の上,下部極a,bをそれぞれAl合金製パイプ1に圧接させ,次いで電源25より主電極10および第2番目の第2切換え電極12を介し第1被加熱領域B1 および第2被加熱領域B2 のほぼ6分の2に通電してそれらを加熱し,その第1被加熱領域B1 を80℃に昇温し,また第2被加熱領域B2 に40℃昇温域および60℃昇温域をそれぞれ現出させる。この場合,各昇温域の両側には温度勾配を有する部分が存する。
【0025】
その後,図7(b),図8(a),(b),図9(a)に示すように,第3番目から第6番目の第2切換え電極12を順次Al合金製パイプ1に圧接させると共に各第2切換え電極12と主電極10を介して第1被加熱領域B1 および第2被加熱領域B2 のほぼ6分の3から6分の6に順次通電してそれらを加熱する。
【0026】
これにより,第1被加熱領域B1 は160℃に昇温し,また第2被加熱領域B2 には,40℃昇温域,60℃昇温域,80℃昇温域,100℃昇温域,120℃昇温域,140℃昇温域が現出する。この場合,各昇温域の両側には温度勾配を有する部分が存する。
【0027】
〔3〕図9(b)に示すように,第1〜第3被加熱領域B1 〜B3 の昇温過程では,各作動シリンダ14,16の作動により第6番目の第2切換え電極12をAl合金製パイプ1から離間させると共に,第3切換え電極13の上,下部極a,bをそれぞれAl合金製パイプ1に圧接させ,次いで電源25より主電極10および第3切換え電極13を介し第1から第3被加熱領域B1 〜B3 ,つまりAl合金製パイプ1全体に通電して加熱し,500℃(Tf)の第1昇温領域A1 と,500℃以下,360℃以上の階段状温度勾配を有する第2昇温領域A2 と,360℃(Tt)の第3昇温領域A3 とを現出させるものである。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば前記のように構成することによって,導電性ロッド状部材において前記のような温度分布を容易に現出させることが可能な通電加熱設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al合金製パイプの斜視図である。
【図2】成形品の斜視図である。
【図3】通電加熱設備の斜視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】通電時における断面図で,図4に対応する。
【図6】通電加熱の第1,第2段階の説明図である。
【図7】通電加熱の第3,第4段階の説明図である。
【図8】通電加熱の第5,第6段階の説明図である。
【図9】通電加熱の第7,第8段階の説明図である。
【符号の説明】
1……………Al合金製パイプ(導電性ロッド状部材)
10…………主電極
11…………第1切換え電極
12…………第2切換え電極
13…………第3切換え電極
14,16…作動シリンダ(電極用作動装置)
1 …………第1昇温領域
2 …………第2昇温領域
3 …………第3昇温領域
1 …………第1被加熱領域
2 …………第2被加熱領域
3 …………第3被加熱領域
c……………Al合金パイプ一端部(ロッド状部材一端部)
d……………Al合金パイプ他端部(ロッド状部材他端部)

Claims (1)

  1. 導電性ロッド状部材(1)に現出される温度分布が,その軸線方向の一端部側に存する第1昇温領域(A1 )と,中間部に存する第2昇温領域(A2 )と,他端部側に存する第3昇温領域(A3 )とよりなり,前記第1昇温領域(A1 )の温度Tfと前記第3昇温領域(A3 )の温度TtとはTf>Ttの関係にあり,前記第2昇温領域(A2 )の温度は前記第1昇温領域(A1 )側端部から前記第3昇温領域(A3 )側端部に向って下降する,といったように前記導電性ロッド状部材(1)を通電加熱するために用いられる通電加熱設備であって,前記ロッド状部材(1)において,前記第1昇温領域(A1 )に対応する第1被加熱領域(B1 )に在るロッド状部材一端部(c)に圧接可能な主電極(10)と,前記第1被加熱領域(B1 )の第2昇温領域(A2 )側の端部に圧接可能な第1切換え電極(11)と,前記第2昇温領域(A2 )に対応する第2被加熱領域(B2 )に圧接可能で,且つ前記軸線方向に並ぶ複数の第2切換え電極(12)と,前記第3昇温領域(A3 )に対応する第3被加熱領域(B3 )に在るロッド状部材他端部(d)に圧接可能な第3切換え電極(13)と,前記主電極(10)および前記第1,第2および第3切換え電極(11,12,13)を前記ロッド状部材(1)に圧接し,且つそのロッド状部材(1)から離間させる電極用作動装置(14,16)とを備え,前記電極用作動装置(14,16)は,前記第1被加熱領域(B1 )の昇温過程では前記主電極(10)および前記第1切換え電極(11)を前記ロッド状部材(1)に圧接し,また前記第1および第2被加熱領域(B1 ,B2 )の昇温過程では前記主電極(10)を前記ロッド状部材(1)に圧接すると共に複数の前記第2切換え電極(12)を,前記第1切換え電極側(11)のものから1つ宛順次前記ロッド状部材(1)に圧接し,さらに前記第1,第2および第3被加熱領域(B1 ,B2 ,B3 )の昇温過程では前記主電極(10)および前記第3切換え電極(13)を前記ロッド状部材(1)に圧接する機能を持つことを特徴とする導電性ロッド状部材の通電加熱設備。
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