JP2014173148A - 薄肉立体形状体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】強度が互いに異なる複数の領域を備えた薄肉立体形状体を製造するにあたり、薄肉立体形状を有するワークWを焼入れ処理して焼入れ領域Rhを形成し、焼入れ領域Rhの連続した表面に一対の電極11,12を接触させて通電し、焼入れ領域Rhの一部を所定の焼戻し温度範囲に加熱して焼戻し処理することで、焼戻し領域Rtを形成する。
【選択図】図2
Description
焼入れ処理では融点以下でA1又はA3変態点以上であればよいため、通電加熱によって加熱することで多少温度がばらついていても、プレス加工に伴う焼入れを行うことは可能であった。しかし焼戻し処理の場合には、焼戻し温度により性質が変動し易く、加熱温度のばらつきの許容範囲が狭い。そのため従来は通電加熱ではなく、所定温度に保たれた加熱炉により加熱して冷却することが一般的であった。
ところが、加熱炉による加熱装置は通電加熱する加熱装置に比べて装置が大きくなり易い。特に、自動車部品のように短いタクトタイムで多数個のワークを製造する場合には、より大きな加熱炉が必要であり、焼戻しのための設備が顕著に大型化していた。
ワークが筒状体からなる場合には、一対の電極がそれぞれ互いに対向する一組の対向電極を有し、一対の電極をワークの軸方向に離間させてワークを挟持するように一組の対向電極をワークの両側面に接触させるのが好適である。
この製造方法では、焼入れ領域の複数部位を互いに異なる焼戻し温度範囲に加熱して、複数の焼戻し領域を形成することができる。
また、焼入れ後にメッキ処理を施したワークに焼戻し処理を行うこともできる。
しかも一対の電極からワークに通電するため、加熱炉のような大型の設備を用いる必要もない。その結果、焼戻し領域を簡素な設備で形成できる薄肉立体形状体の製造方法を提供できる。
[第1実施形態]
第1実施形態において薄肉立体形状体を製造するには、薄肉立体形状を有するワークWを準備し、このワークWに焼入れ処理を施して焼入れ領域Rhを形成し、焼入れ領域Rhの一部に焼戻し処理を施すことで、焼戻し領域Rtを形成することで行う。
ワークWの形状は特に限定されないが、一定断面形状で一方向に連続する領域を有するものがよい。第1実施形態のワークWは、長手方向に連続する一対の側壁が略均一な厚みで一定幅に形成された角パイプ等の筒状体である。
一対の電極11,12は、それぞれ互いに対向して配置されて同極となる一組の対向電極11,11又は対向電極12,12からなる。各電極11,12のワークWと接触する面は、ワークWの表面形状に対応した形状となっており、ワークWを挟持することで、ワークWの一対の側壁の各外表面と密着できるようになっている。この第1実施形態の一対の電極11,12は、それぞれワークWの長手方向に対して交差する方向に配置されてワークWの両側壁の幅全体を横断しており、ワークWの幅全体に接触している。
焼入れ処理の方法は、加熱炉を用いて全体を加熱してもよいが、ここでは図1に示すように、ワークWの両端側に一対の電極11,12を接触させて通電することで、所定温度以上に加熱する。焼入れ処理では、ワークWを焼入れ温度範囲以上、即ちA1変態点又はA3変態点以上に加熱してオーステナイト化した後、急冷して主組織をマルテンサイト相、ベイナイト相、或いはマルテンサイト及びベイナイト相とすればよい。
急冷方法は、例えば冷却液を接触させることで行うことができる。
ここではワークWの両端側の全幅にそれぞれ電極11,12を接触させて通電することで、ワークWの略全体を加熱し、冷却液と接触させることで焼入れ処理しており、両端部に素材領域Rmを設けた状態でワークWに焼入れ領域Rhを形成している。素材領域Rmは、後工程でトリム加工、ピアス加工、溶接加工等のプレス加工や機械加工などの後加工を施すための後加工領域として使用してもよい。
焼戻し処理では、図2に示すように、焼入れ領域Rhの連続した表面のうちの予め設定した領域を挟むように、一対の電極11,12を位置調整して接触させる。ワークWの長手方向と直交する断面が、長手方向に沿って略均等な厚みで略一定形状で連続しているため、一対の電極11,12をこの領域の互いに離間した位置に接触させて通電すると、焼入れ領域Rhの一部に略均等な電流密度で通電でき、略均一に加熱することができる。そして、加熱後に冷却することで焼戻し処理を施す。
また、一対の電極11,12がそれぞれ互いに対向する一組の対向電極11,11又は対向電極12,12を有しており、対向電極11,11又は対向電極12,12が、ワークWの軸方向に離間した位置でワークWを挟持するように両側面に接触している。そのため、対向電極11,11又は対向電極12,12が接触する上側の面の電位と下側の面の電位とを等しくして加熱できる。さらに電極11,12が接触していない側面側も加熱することができる。
このようにして、焼戻し温度範囲に加熱した後、急冷或いは空冷することにより焼戻し領域Rtを形成する。
そして、焼入れ領域Rhに複数の焼戻し領域Rtを形成し、その後、必要に応じて後加工を施すことで、薄肉立体形状体の製造を終了する。
単一の薄肉立体形状体の任意の位置に、強度が異なる部位が設けられるため、強度を確保しつつ変形し易い部位を所望の位置に設けるなど、用途に応じた適切な強度分布を実現できる。例えば、薄肉立体形状体をこのまま或いは被覆材により被覆して車両のバンパーとして用いれば、効率よく衝撃吸収性能を確保することが可能である。
特に、一対の電極11,12によりワークWに通電することで焼戻し処理を行うと、極めて短時間で焼戻し処理を行うことが可能である。その結果、多数個の薄肉立体形状体を製造する際、タクトタイムが短くても焼戻し処理を行うことができ、薄肉立体形状体の製造設備のコンパクト化を図ることができる。
実施形態では、一定断面形状が長手方向に連続したワークWを熱処理した例について説明したが、例えば長手方向に沿って幅や厚みが徐々に変化するなど、形状が一方向に単調変化するワークWであっても、本発明を適用可能である。この単調変化とは、断面積が一方向に沿って増加又は減少して途中に変曲点がないような形状である。
上記では焼入れ処理と焼戻し処理とにおいて同じ電極を使用したが、例えば焼戻し処理時に長さが短い電極を使用することにより、焼入れ領域Rhと焼戻し領域Rtとの幅を異ならせることができる。
第2実施形態は、焼入れ処理と焼戻し処理とをワークWの中間部分の同じ領域に施し、両端側に熱処理を施さない例である。
第2実施形態で使用する加熱装置は、図3に示すように、一対の電極11,12に隣接する位置に抜熱部材14を備える他は、第1実施形態と同様である。
ここで、対応した形状とは、昇温を抑制する領域が発熱する場合には該領域の全体に接触可能な形状としてもよく、昇温を抑制する領域が隣接する他の領域からの伝熱により加熱される場合には、昇温を抑制する領域のうち、他の領域に隣接する部位にだけ接触可能な形状としてもよい。
加熱時には、一対の電極11,12間の領域から伝達される熱が抜熱部材14に吸収されることで、抜熱部材14に対応する領域の昇温が抑制され、ワークWの両端側の領域が焼入れ温度範囲未満の温度に保たれる。この焼入れ処理により、一対の電極11,12間に焼入れ領域が形成されると共に両端側に素材領域Rmが形成される。
焼戻し処理の加熱時においても、一対の電極11,12間の領域から伝達される熱が抜熱部材14に吸収されることで、抜熱部材14に対応する領域の昇温が抑制され、素材領域Rmが焼戻し温度範囲未満の温度に保たれる。
そのため、この焼戻し処理により、両端側の素材領域Rmを維持して一対の電極11,12間に焼戻し領域Rtが形成される。
焼戻し処理後、素材領域Rmや焼戻し領域Rtにトリム加工、ピアス加工、溶接加工等のプレス加工や機械加工などを施すことにより、薄肉立体形状体を製造する。
さらにこの実施形態では、焼入れ処理時及び焼戻し処理時に、ワークWのうちの予め設定された後加工領域に抜熱部材14を配置するという比較的簡単な手法により、熱処理組織が生じることを防止することができ、後加工を容易に行うことが可能である。
また抜熱部材14を接触した状態で加熱を開始するため、通電加熱により短時間で昇温させる場合であっても、効率よくワークWの両端側の昇温を抑制することができる。そのため装置構成を複雑にすることなく、焼入れ処理及び焼戻し処理の処理時間を短縮できる。
第3実施形態は、ワークWの中間部分に焼入れ処理を施し、その一部に焼戻し処理を施すと共に、両端側に熱処理を施さない例である。
第3実施形態で使用する加熱装置は、図4に示すように、一対の電極11,12間における一対の側壁に接触可能な抜熱部材16を備える他は、第2実施形態と同様に構成されている。
その後、一対の電極11,12を接触させない一対の対向した側壁に、一対の電極11,12間の位置となるように抜熱部材16を配置して接触させ、抜熱部材14,16に冷却液を通液しつつ、一対の電極11,12間に通電して加熱し冷却することで、焼戻し処理を行う。
よってこの焼戻し処理では、焼入れ処理で形成された焼入れ領域Rhのうち、電極11,12が接触した一対の側壁が焼戻し処理されて焼戻し領域Rtが形成され、電極11,12が接触しない他の一対の側壁が焼戻し領域Rtのようには焼戻しされず、焼入れ領域Rhが残留する。
その他は第2実施形態と同様にすることで、第3実施形態における薄肉立体形状体が製造される。
さらにこの実施形態では、焼入れ処理時に抜熱部材14をワークWの両端側に配置して昇温を抑制して処理し、焼戻し処理時に抜熱部材16を電極11,12間の一対の側壁に配置して昇温を抑制して処理することで、両端側に素材領域Rmが形成され、素材領域Rm間の一対の側壁に焼入れ領域Rhが形成され、他の一対の側壁に焼戻し領域Rtが形成された多数の領域を有する立体形状部材を製造することが可能である。
Rh 焼入れ領域
Rt 焼戻し領域
11,12 電極
14,16 抜熱部材
15 電源設備
Claims (7)
- 強度が互いに異なる複数の領域を備えた薄肉立体形状体の製造方法であって、
薄肉立体形状を有するワークを焼入れ処理して焼入れ領域を形成し、
該焼入れ領域の連続した表面に一対の電極を接触させて通電し、上記焼入れ領域の少なくとも一部を所定の焼戻し温度範囲に加熱して焼戻し処理することで焼戻し領域を形成する、薄肉立体形状体の製造方法。 - 前記一対の電極を前記ワークの一定断面形状で連続する領域に接触させて前記焼戻し処理を行う、請求項1に記載の薄肉立体形状体の製造方法。
- 前記ワークが筒状体からなり、前記一対の電極がそれぞれ互いに対向する一組の対向電極を有し、上記一対の電極を上記ワークの軸方向に離間させてワークを挟持するように上記一組の対向電極を該ワークの両側面に接触させる、請求項1又は2に記載の薄肉立体形状体の製造方法。
- 前記焼入れ領域の複数部位を互いに異なる焼戻し温度範囲に加熱して複数の焼戻し領域を形成する、請求項1乃至3の何れかに記載の薄肉立体形状体の製造方法。
- 前記焼入れ後にメッキ処理を施した前記ワークに、前記焼戻し処理を行う、請求項1乃至4の何れかに記載の薄肉立体形状体の製造方法。
- 前記焼入れ処理及び前記焼戻し処理の少なくとも一方で、前記ワークの表面に抜熱部材を配置して加熱することで、該抜熱部材に対応する領域の昇温を抑制して後加工領域を形成する、請求項1乃至5の何れかに記載の薄肉立体形状体の製造方法。
- 前記抜熱部材に対応する領域の温度を、前記焼入れ処理では焼入れ温度範囲未満、前記焼戻し処理では前記焼戻し温度範囲未満に保つ、請求項6に記載の薄肉立体形状体の製造方法。
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