JP2016132765A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明のポリエステルフィルムは、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際に、斜め方向から見た際の干渉色とブラックアウトを抑制でき、加工性に優れたポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
下記(a)〜(c)をすべて満たすポリエステルフィルム。
(a)ポリエステルフィルムの長手方向に対する主配向軸の傾きが30°以上60°以下である
(b)フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるポリエステルフィルムのリタデーションが1500nm以下である
(c)ポリエステルフィルムの長手方向の引裂伝播抵抗と幅方向の引裂伝播抵抗が共に8N/mm以上25N/mm以下である
【選択図】図1

Description

本発明は、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際に、斜め方向から見た際の干渉色とブラックアウトを抑制でき、加工性に優れたポリエステルフィルムに関する。
熱可塑性樹脂フィルム、中でもポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、フラットパネルディスプレイやタッチパネル分野において偏光板保護フィルム(偏光子保護部材)や円偏光板位相差フィルム(円偏光板部材)、透明導電フィルム(透明電極部材)など各種光学用フィルムの需要が高まっている。その中でも、偏光板保護フィルム用途では、低コスト化を目的として従来のTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから二軸配向ポリエステルフィルムへの置き換えが盛んに検討されている(例えば、特許文献1、2)。
液晶ディスプレイから発せられる光は、偏光板を透過して出てくるため、直線偏光である。そのため、偏光サングラスを装着して液晶ディスプレイ見た場合、角度によって表示画面が暗くなる現象(以降、この現象をブラックアウトと称する)が起こる場合がある。上記問題を解決するために偏光板の外側に円偏光を目的とした位相差フィルム(円偏光板位相差フィルム)としてポリエステルフィルムを設ける方法が知られている(特許文献3)。
特開2012−032819号公報 特開2013−210598号公報 特開2013−194107号公報
特許文献1に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムでは、長手方向、幅方向の延伸倍率の比を一定範囲内にすることにより、面内の長手方向の屈折率と幅方向の屈折率の差とフィルム厚みとの積として定義される面内リタデーションを一定値以下にしており、正面からディスプレイを目視した際の干渉色は抑制される。しかしながら、上述の面内の屈折率に、厚み方向の屈折率を加味して定義される面配向係数が高く、斜め方向から見た際の干渉色抑制が不十分であった。
特許文献2に記載のポリエステルフィルムでは、主配向軸の傾きを特定の範囲とすることによりブラックアウトを抑制している。また、内層のポリエステルに共重合ポリエステルを用いることにより、ポリエステルフィルム内部のポリエステルの配向を緩和し、面配向係数を一定値以下に低減しており、斜め方向から見た際の干渉色は抑制されている。しかしながら、そのようなポリエステルフィルムは脆くなる傾向があった。また、表層と内層の剥がれも生じやすい傾向があることから、加工性が不十分となる場合があった。
特許文献3に記載のポリエステルフィルムでは、主配向軸を特定の範囲にすることでブラックアウトは抑制されているものの、配向性の高いポリエステルを用いているため面配向係数は大きくなり、斜め方向から見た際の干渉色を十分に抑制できないという課題を有していた。
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、ポリエステルフィルムでありながら、タッチパネルを含む液晶ディスプレイなどの表示装置に、偏光子保護フィルムや円偏光板位相差フィルム、透明電極フィルムとして搭載した際にブラックアウトと斜め方向から見た際の干渉色を抑制し、加工性に優れたポリエステルフィルムを提供することを目的としている。
上記課題を解決するための本発明は、以下の構成を有する。
(1)下記(a)〜(c)をすべて満たすポリエステルフィルム。
(a)ポリエステルフィルムの長手方向に対する主配向軸の傾きが30°以上60°以下である
(b)フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるポリエステルフィルムのリタデーションが1500nm以下である
(c)ポリエステルフィルムの長手方向の引裂伝播抵抗と幅方向の引裂伝播抵抗が共に8N/mm以上25N/mm以下である
(2)前記ポリエステルフィルムの長手方向の引裂伝播抵抗と幅方向の引裂伝播抵抗が下記式を満たす上記(1)に記載のポリエステルフィルム。
0.8≦(長手方向の引裂伝播抵抗)/(幅方向の引裂伝播抵抗)≦1.2
(3)前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点が200℃以上250℃以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリエステルフィルム。
(4)前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂が、ジオール構成成分の合計に対して、構成成分としてエチレングリコールを85モル%以上95モル%以下、および脂環式ジオールを5モル%以上15モル%以下含有してなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(5)前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂が、ジカルボン酸構成成分の合計に対して、構成成分としてテレフタル酸を85モル%以上95モル%以下、並びにテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸および/または脂環式ジカルボン酸を5モル%以上15モル%以下含有してなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(6)前記ポリエステルフィルムが10層以下の積層フィルムであって、融点が230℃以上250℃以下であるポリエステル樹脂から構成されるポリエステル層を少なくとも一方の表層に有しており、かつ融点が230℃未満であるポリエステル樹脂、または非晶性ポリエステル樹脂から構成される層を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(7)偏光子保護部材として用いられる上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(8)円偏光板部材として用いられる上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(9)透明電極用部材として用いられる上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
本発明のポリエステルフィルムは、液晶ディスプレイなどの表示装置に偏光子保護フィルムや円偏光板位相差フィルムとして搭載した場合に、ブラックアウトと斜め方向から見た際の干渉色を抑制し、加工性に優れた効果を奏する。
フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーション測定の概要図である。 偏光板のクロスニコル配置にて行う視認性テストの概要図である。
以下に具体例を挙げつつ、本発明のポリエステルフィルムについて詳細に説明する。
本発明はポリエステルフィルムに係るものである。
ここでいうポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分とから得られるものである。なお、本発明において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
本発明のポリエステルフィルムを構成する樹脂を構成するジカルボン酸構成成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
また、本発明のポリエステルフィルムを構成する樹脂を構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のジオールが分子間で脱水縮合して複数個連なったもの(例えば、エチレングリコール2分子が分子間で脱水縮合して得られるジエチレングリコールなど)などが例としてあげられるがこれらに限定されない。
本発明のポリエステルフィルムを構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、および/またはポリエチレンナフタレートを主成分とするポリエステル樹脂が好ましい。なお、本発明において、主成分とは、ポリエステルフィルムを構成する樹脂全体に含まれるジオール構成成分、ジカルボン酸構成成分をそれぞれ100モル%とした場合に、各構成成分に最も多くのモル分率で含まれる構成成分同士を重縮合させて得られる樹脂をいう。したがって、例えば、ジオール構成成分のうちエチレングリコールが55モル%で最も多く含まれるジオール構成成分であり、ジカルボン酸構成成分のうちテレフタル酸が85モル%で最も多く含まれるジカルボン酸構成成分であるポリエステルフィルムの場合、エチレングリコールとテレフタル酸を重縮合して得られるポリエチレンテレフタレートが主成分となる。
また、本発明において、主成分の含有率は、前記最も多く含まれるジオール構成成分のモル分率と前記最も多く含まれるジカルボン酸構成成分のモル分率のうち小さい方とし、同じモル分率の場合はそのモル分率とする。したがって、例えば、上記の例においてはエチレングリコールの55モル%とテレフタル酸の85モル%のうち、小さい方のモル分率である55モル%が主成分の含有率となる。
本発明のポリエステルフィルムを構成する樹脂がポリエチレンテレフタレート、および/またはポリエチレンナフタレートを主成分とする場合、前記主成分の特性を十分に発揮するためには前記主成分の含有量は50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの共重合体や編生体、他のポリマーとのブレンドであっても良い。特に、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルであると、機械強度、耐熱性、耐薬品性、耐久性などの観点から好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーションが1500nm以下である。フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーションを1500nm以下とすることで、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した場合に、斜め方向から見た際の干渉色(以下、干渉色と記載する場合がある)を抑制することができる。
ここで、フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させるとは、フィルム面と平行な方向を0°として、その40°上方からフィルム面に向かって前記主配向軸の方向から照射した光束を透過させることを指す。
図1に、フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーション測定の概要図を示す。光束照射装置dより照射された光束は試料ステージを通って受光機fへと入る。光束入射方向eをフィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーションは、光束入射方向と直交した状態の試料ステージaを50°傾斜回転させた、aに対して50°傾斜した状態(フィルム面に対して角度40°で光束が透過する状態)の試料ステージb上において測定したポリエステルフィルム測定試料cのリタデーションを表す。
フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーションは、斜め方向から見た際の干渉色をより抑制できる観点から、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは400nm以下、特に好ましくは300nm以下である。また、フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーションは、斜め方向から見た際の干渉色を抑制する観点からは低いほど好ましいが、耐脆性の観点からは、50nm以上が好ましい。
フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーションを1500nm以下とする具体的な方法としては、
1)本発明のポリエステルフィルムを構成する樹脂に用いられるポリエステル樹脂として、ジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分のいずれか、または両方を2種類以上含むポリエステル樹脂を用いることにより、ポリエステルフィルムの二軸配向を低下させる方法、
2)延伸倍率を低く設定したり、延伸温度を上げたりするなど、製造条件を調整してポリエステルフィルムの二軸配向を低下させる方法、
3)フィルム厚みを低減させる方法、
4)融点の異なるポリエステル層を少なくとも2層以上有する積層構成の場合に融点の低い層の厚み割合を大きくする方法、
などが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの長手方向の引裂伝播抵抗および幅方向の引裂伝播抵抗が共に8N/mm以上25N/mm以下である。長手方向、幅方向における引裂伝播抵抗の範囲の下限を8N/mmとすることで、偏光板製造時(例えば、PVA中にヨウ素を含有させて配向させて作成されたPVAシート(偏光子)と本発明のポリエステルフィルムを貼り合わせる工程や、偏光板最外層に円偏光フィルムとして貼り合わせる工程など)において、ポリエステルフィルムを裁断加工時にわずかにねじれた際のエッジ部分でのクラック発生を抑制できる効果が得られる。また、長手方向、幅方向における引裂伝播抵抗の範囲の上限を25N/mmとすることで、二軸配向を抑制して干渉色発生を抑制する効果が得られる。
ここで、引裂伝播抵抗とは、エレメンドルフ引裂試験機を用いてJIS K−7128−2(1998)に沿って、切れ込みを入れた試験片を引き裂いたときに求められる引き裂き強さの値である。本発明における引裂伝播抵抗の測定は、以下の方法で行う。ポリエステルフィルムの長手方向について測定する場合、長手方向、幅方向にそれぞれ63mm×76mmの試験片を切り出し、76mmの辺の中央部位置に、端から20mmの長さの切れ込みを入れ、残り43mmの長さを引き裂いたときの引裂伝播抵抗を求める。同様の測定を10回行い、それらの平均値をポリエステルフィルムの引裂伝播抵抗とする。ポリエステルフィルムの幅方向について測定する場合は、試験片の長手方向、幅方向の長さを入れ換える以外は、上述の長手方向について測定する場合と同様にして行う。
本発明のポリエステルフィルムは、斜め方向から見た際の干渉色抑制とポリエステルフィルムの加工性とを両立できる点から、フィルムの長手方向および幅方向における引裂伝播抵抗の範囲の下限は10N/mmであることが好ましく、12N/mmであることがより好ましい。また、フィルムの長手方向および幅方向における引裂伝播抵抗の範囲の上限は22N/mmであることが好ましく、20N/mmであることがより好ましい。
長手方向、幅方向におけるポリエステルフィルムの引裂伝播抵抗を8N/mm以上25N/mm以下とするための具体的な方法としては、
1)ポリエステルフィルムの製造プロセスにおいて、フィルム厚みを厚くすることで引裂時の抵抗を増加させる方法、
2)ポリエステルフィルムを構成する樹脂の固有粘度を0.65以上0.90以下とすることで分子鎖を長くし、引裂伝播抵抗を高める方法、
3)ポリエステルフィルムを融点の異なる積層構成とし、各層の積層厚み比を特定の範囲にすることで引裂時の抵抗を増加させる方法、
4)ポリエステルフィルムを融点の異なる積層構成とし、熱固定温度を最も融点の低いポリエステル層の融点以上に設定することにより、配向を緩和させる方法、
のいずれか、またはそれらの方法の組み合わせが好ましい。本発明においては、斜め方向から見た際の干渉色抑制とポリエステルフィルムの引裂伝播抵抗との両立の観点から、上記3)融点の異なる積層構成とし、熱固定温度を最も低い融点のポリエステル層の融点以上に設定することにより、配向を緩和させる方法がより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、ブラックアウトの抑制、偏光板製造時の破断しにくさの両立の観点から、ポリエステルフィルムの長手方向の引裂伝播抵抗と幅方向の引裂伝播抵抗が下記式(i)を満たすことが好ましい。
(i)0.80≦(長手方向の引裂伝播抵抗)/(幅方向の引裂伝播抵抗)≦1.20
本発明において、(長手方向の引裂伝播抵抗)/(幅方向の引裂伝播抵抗)が上記式(i)の範囲となることは、長手方向と幅方向の引裂伝播抵抗がバランス化されていることを示す。長手方向、幅方向の引裂伝播抵抗に偏りがある場合、引裂伝播抵抗が小さい方向に裂けやすくなることから加工性が低下しやすくなる。それに対して、本発明のポリエステルフィルムでは、主配向軸に長手方向や幅方向に対しての傾きを持たせることにより、長手方向と幅方向の引裂伝播抵抗のバランスを向上させ、ブラックアウト抑制と加工性を両立させることが可能となる。(長手方向の引裂伝播抵抗)/(幅方向の引裂伝播抵抗)の範囲の下限は0.85がより好ましく、0.90がさらに好ましい。(長手方向の引裂伝播抵抗)/(幅方向の引裂伝播抵抗)の範囲の上限は1.15がより好ましく、1.10がさらに好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおいては、主配向軸がフィルムの長手方向に対して30°以上60°以下の範囲であることが必要である。フィルムの長手方向に対する主配向軸の傾きが上記の範囲内であると、円偏光板部材や偏光子保護部材として液晶ディスプレイに実装した際、また、透明電極基板部材としてタッチパネルに実装した際に、ブラックアウトを抑制することが可能となり視認性が向上する。ここでいう主配向軸は、フィルム表面において屈折率が最も大きくなる方向をさし、光学的手法にて計測されるものである。具体的には、王子計測機器株式会社から販売されている位相差測定装置KOBRAシリーズにて後述する測定条件により計測された値を用いるものとする。本発明においてフィルム長手方向とは、ロール上の二軸配向ポリエステルフィルムであれば、ロールの巻き方向をフィルム長手方向とし、ロールの幅方向がフィルム幅方向に相当する。一方、カットされたシート状である場合には、フィルムの長辺方向をフィルム長手方向とみなし算出する。フィルムの形状が略正方形である場合は、各辺に平行な方向の任意の一方向を長手方向とみなし算出する。
主配向軸の傾きが上記の範囲内のポリエステルフィルムは、例えば
1)ポリエステルフィルムにおいて主配向軸が斜めになるようにカットする方法、
2)ポリエステルフィルムにおいて、製膜時の幅方向中央部から離れた端部のフィルムを用いる方法、
3)斜め延伸法を用いてフィルムを製造する方法(例えば、国際公開第2007/111313号に記載の方法など)、
により得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムでは、フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーションを特定の範囲に制御することにより、ポリエステルフィルム全体としての配向結晶性を抑えることができるため、1)、2)の方法で主配向軸が30〜60°傾いたフィルムを得た場合に、製膜時のフィルム中央部から離れた位置においても、斜め方向から見た際の干渉色を抑制することができる。そのため、当該フィルムを円偏光板部材や偏光子保護部材として貼りあわせて用いた際に干渉色の発生を抑制することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、特に2)の方法で得られるポリエステルフィルムにおいて、ブラックアウトと斜め方向から見た際の干渉色を抑制するという効果が顕著に得られる。また、本発明のポリエステルフィルムにおける、ポリエステルフィルム全体としての配向結晶性を抑え、かつ、引裂伝播抵抗を特定の範囲とすることで斜め方向から見た際の干渉色の抑制、製膜性や加工性を向上させるという効果は、3)の方法で得られるポリエステルフィルムにおいても当然得ることができる。
ポリエステルフィルムの長手方向に対する主配向軸の傾きの範囲の下限は、35°がより好ましく、40°がさらに好ましい。ポリエステルフィルムの長手方向に対する主配向軸の傾きの範囲の上限は55°がより好ましく、50°がさらに好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、斜め方向から見た際の干渉色の抑制と加工性の両立の観点から、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点が200℃以上250℃以下であることが好ましい。200℃以上であると、分子鎖の柔軟性が高くなりすぎず、加工時の応力で変形しにくいため、ブラックアウトが起こりにくくなる。また、250℃以下であると、結晶性が高くなりすぎないことで、面内の配向が抑制され、斜め方向から見た際の干渉色が生じにくくなる。ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点の範囲の下限は210℃がより好ましく、220℃がさらに好ましい。ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点の範囲の上限は240℃がより好ましく、230℃がさらに好ましい。
ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点を上記範囲とする方法としては、ポリエステルフィルムを構成する樹脂において、2種類以上のジオール構成成分から構成して結晶性を低下させることが好ましい。ポリエステルフィルムを構成するジオール構成成分全体を100モル%として、構成成分としてエチレングリコールを85モル%以上95モル%以下、および、その他のジオールを5モル%以上15モル%以下含有することが好ましい。その他のジオールとして、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノールなどの飽和脂環式1級ジオール、2,6−ジヒドロキシ−9−オキサビシクロ[3.3.1]ノナン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スピログリコール)、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、イソソルビドなどの環状エーテルを含む飽和ヘテロ環1級ジオール、その他シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタジオール、4−シクロペンテン−1,3−ジオール、アダマンジオールなどの各種脂環式ジオールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。その中でも、脂環式ジオールが好ましく、反応性、干渉色抑制の観点から、シクロヘキサンジメタノールおよび/またはスピログリコールが最も好ましい。
また、ポリエステルフィルムを構成する樹脂において、2種類以上のジカルボン酸構成成分から構成して結晶性を低下させることが好ましい。ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸構成成分全体を100モル%として、構成成分としてテレフタル酸を85モル%以上95モル%以下、および、その他のジカルボン酸を5モル%以上15モル%以下含有することが好ましい。その他のジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、ベンジルマロン酸などが挙げられる。鎖状脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、3−メチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸などが挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸、1,5−デカリンジカルボン酸、1,6−デカリンジカルボン酸、2,7−デカリンジカルボン酸、2,3−デカリンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3,4−ジカルボン酸などの飽和脂環式ジカルボン酸や、cis−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、エキソ−3,5−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロヒタル酸などの不飽和脂環式ジカルボン酸が例示できる。その中でも、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸および/または脂環式ジカルボン酸が好ましく、反応性、干渉色抑制の観点から、イソフタル酸および/またはシクロヘキサンジカルボン酸が最も好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、10層以下の積層フィルムであって、融点が230℃以上250℃以下であるポリエステル樹脂から構成されるポリエステル層(以下ポリエステルA層)を少なくとも一方の表層に有しており、融点が230℃未満であるポリエステル樹脂、または非晶性ポリエステル樹脂から構成される層(以下ポリエステルB層)を有することが好ましい。
なお、本発明でいう非晶性ポリエステル樹脂とは、JIS K7121(1999)に準じ、20℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで昇温を行って、示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得た場合に、10J/gを超える融点に相当する吸熱ピークを持たないポリエステル樹脂をあらわす。
本発明のポリエステルフィルムが10層以下の積層ポリエステルフィルムであって、一方の表層にポリエステルA層を有し、A層とは反対側にポリエステルB層を有する場合、延伸時において、ポリエステル表層の配向結晶性を高めつつ、ポリエステルフィルム全体としての配向結晶性を抑えることができ、また、フィルム積層間の剥がれを抑えることができ加工性を向上することができる。
ポリエステルA層を構成するポリエステル樹脂の融点を230℃以上250℃以下にする具体的な方法としては、ポリエステルフィルムを構成する樹脂において、2種類以上のジオール構成成分および/またはジカルボン酸構成成分から構成して結晶性を落とすことが好ましい。
前記ポリエステルA層を構成するポリエステル樹脂の融点の範囲の下限は、235℃がより好ましく、240℃がさらに好ましい。前記ポリエステルA層を構成するポリエステル樹脂の融点の範囲の上限は250℃が好ましい。
ポリエステルA層を構成するポリエステル樹脂は、ジオール構成成分全体に対して、構成成分としてエチレングリコールを95モル%以上99モル%以下、および、その他のジオールおよび/またはジカルボン酸を1モル%以上5モル%以下含有することが好ましい。
ポリエステルB層を構成するポリエステル樹脂の融点を230℃未満、または、非晶性ポリエステル樹脂にする具体的な方法としては、ポリエステルB層を構成するジオール構成成分、およびB層を構成するジカルボン酸構成成分のうちそれぞれ最も多い成分に対し、それ以外の構成成分を増やしていく方法が挙げられる。
本発明においては、ポリエステルA層とポリエステルB層を構成する樹脂のジオール構成成分およびジカルボン酸構成成分は同種のものが好ましい。なお、ここで同種とは、ジオール構成成分、ジカルボン酸構成成分の種類が同じであればよく、共重合比まで同じである必要はない。同種の場合、積層界面における密着性が向上し加工性があがる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムにおいては、ポリエステルB層を構成する樹脂は非晶性ポリエステル樹脂からなる事がより好ましい。結晶性樹脂と比較して非晶性樹脂は二軸延伸フィルムを製造する際に配向が生じにくいため、ポリエステルB層の斜め方向のリタデーションの増加を抑制でき、ひいてはポリエステルフィルムのリタデーションの不均一を抑制する事が容易となる。特に、二軸延伸フィルムを製造する際に熱処理工程を設けた場合にこの効果は顕著となり、フィルム長手方向及び幅方向への延伸工程で非晶性ポリエステル樹脂からなるポリエステルB層に生じた配向を熱処理工程で完全に緩和させることができ、ポリエステルA層に起因するリタデーションのみが積層フィルムとしてのリタデーションに影響を与えるようになるため好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルB層を構成する樹脂が融点を有する場合、ポリエステルA層を構成する樹脂の融点(TmA)はポリエステルB層を構成する樹脂の融点(TmB)より20℃以上高い融点をもつ樹脂とする事が好ましい。この場合、後述の熱処理工程において、TmB℃以上TmA℃以下の温度で熱処理を実施する事により、ポリエステルB層のみ配向を緩和させる事ができ、リタデーションを抑制する事が容易となる。より好ましくは、TmAとTmBの差が30℃以上であり、この場合、熱処理工程での温度の選択幅が広くなるためにポリエステルB層の配向緩和の促進やポリエステルA層の配向の制御が容易にできるようになり、斜め方向から見た際の干渉色を制御しやすい。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、4μm〜250μmの範囲でフィルムの用途に応じて適宜調整できる。偏光子保護用途では、10μm〜35μmが好ましく、その他の各種用途、例えば、円偏光板用途では、4μm〜10μm、透明電極用途では、35μm〜100μmが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム長手方向10mかつフィルム幅方向300mmに渡ってリタデーションを測定したとき、面内のリタデーションの最大値が400nm以下であることが好ましい。リタデーションとは、フィルムの面内における直交する2方向の屈折率差の最大値とフィルム厚みの積として定義されるものであり、光学的手法を用いて計測できる。本発明において、面内のリタデーションとは、後述する測定方法において、位相差測定装置KOBRAシリーズにて計測される。リタデーションの最大値が400nm以下であると、円偏光板部材や偏光子保護部材として貼りあわせて用いる場合、液晶ディスプレイに実装した際に干渉色を生じにくくなり、品位が向上しやすくなる。面内のリタデーションの最大値は、より好ましくは300nm以下であり、更に好ましくは200nm以下である。また、面内のリタデーションの最小値は、好ましくは100nm以上である。
本発明のポリエステルフィルムは、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、すべり剤、ブロッキング防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などを、ポリエステルフィルムの特性を損なわない程度に添加してもよい。
次に、本発明のポリエステルフィルムの好ましい製造方法の例を以下に説明する。本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
本発明のポリエステルフィルムの製造には、必要に応じて乾燥した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、原料を溶媒に溶解させて溶液を調製し、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状として膜層を得、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
ポリエステルフィルムを溶融キャスト法により製造する場合、ポリエステルA層に用いるポリエステルAと、ポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層に用いるポリエステルBをそれぞれ別々の押出機に供給し溶融押出する。この際、押出機内を流通窒素雰囲気下にして酸素濃度を0.7体積%以下とし、樹脂温度は265℃〜295℃に制御することが好ましい。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点−20℃〜ガラス転移点にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得ることができる。これらのキャスト法の中でも、ポリエステル樹脂を使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
本発明のポリエステルフィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより、延伸を行うことで得ることができる。
かかる延伸方法における長手方向の延伸倍率としては、主配向軸を特定の範囲とするために長手方向に、好ましくは、2.8倍以上4.0倍以下が採用される。長手方向の延伸倍率の範囲の下限は、3倍がより好ましく、3.2倍がさらに好ましい。長手方向の延伸倍率の範囲の上限は3.8倍がより好ましく、3.6倍がさらに好ましい。
長手方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが好ましい。
長手方向の延伸温度としてはフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
幅方向の延伸倍率としては、主配向軸を特定の範囲に制御させるために、長手方向の延伸倍率に対して80%以上120%以下であることが好ましい。幅方向の延伸倍率の範囲の下限は、90%であることがより好ましく、長手方向の延伸倍率に揃えることがさらに好ましい。幅方向の延伸倍率の範囲の上限は、110%であることがより好ましく、長手方向の延伸倍率にそろえることがさらに好ましい。
幅方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが好ましい。
幅方向の延伸温度としてはフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおいては、主配向軸を制御するために横延伸速度に差を設ける事が好ましい。なお、本発明において、横延伸とは幅方向の延伸を指す。具体的には、横延伸区間を2分割した場合、横延伸区間中間点におけるフィルムの延伸量(計測地点でのフィルム幅−延伸前フィルム幅)が、横延伸区間終了時の延伸量の60%以上である事が好ましく、より好ましくは70%以上である。このように横延伸区間での延伸比率を変える事により、フィルム幅方向における「主配向軸の傾きを30°〜60°とすることができる範囲」をより広くすることが可能となる。その結果、ポリエステルフィルムを液晶ディスプレイに実装した際にブラックアウトのない高品位な液晶ディスプレイが得られやすくなる。
さらに、本発明のポリエステルフィルムにおいては、横延伸時の温度を段階的に変化させることも好ましく用いられる。具体的には、横延伸区間を2分割した場合、横延伸区間中間点より前を前半区間、横延伸区間中間点より後を後半区間としたとき、後半区間の雰囲気温度を前半区間の雰囲気温度よりも20℃以上高くすることが好ましい。ここでいう雰囲気温度とは、横延伸区間の前半部分の一部ならびに後半部分の一部の温度にて上記を満たす部分があればよいものである。このように横延伸区間での延伸温度を段階的に変える事により、フィルム幅方向でのリタデーションのばらつきを抑制することができ、また、「主配向軸の傾きを30°〜60°とすることができる範囲」をより広くすることが可能となる。その結果、ポリエステルフィルムを液晶ディスプレイに実装した際に斜め方向の干渉色やブラックアウトのない高品位な液晶ディスプレイが得られやすくなる。
本発明においては、延伸後の熱固定を温度の異なる2段以上の工程で行うことが好ましい。上記の熱固定処理を行うことで、熱処理による配向を制御し、配向結晶を促進させることが可能となり、斜め方向から見た際の干渉色の抑制と加工性を向上させることができる。
上記の熱固定処理を行う場合の熱固定温度としては、前段熱固定温度Ths1(℃)が150以上200℃以下、最終段の熱固定温度Ths2(℃)が200℃を超えて245℃以下であることが好ましい。
なお、本発明でいう前段とは、2段以上の工程で実施する熱固定処理工程の最終段を除いた工程のことを表す。例えば3段の工程からなる熱固定処理工程を有する場合、1段目と2段目が前段に該当し、3段目が最終段に該当する。
前段の熱固定温度(以下、Ths1と略すことがある)を、ポリエステルA層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)と融解温度(Tm)の間の温度とすると、結晶化が促進されやすく、かつ配向緩和が進みにくい温度となるため、主配向軸の構造を固定できるため好ましい。
具体的には、上述したように150℃以上200℃以下であることが好ましい。前段の熱固定温度の範囲の下限は、165℃がより好ましい。前段の熱固定温度の範囲の上限は190℃がより好ましい。
最終段の熱固定温度(以下、Ths2と略すことがある)をポリエステルB層の融点以上の温度とすることで、ポリエステルB層の配向を緩和させ斜め方向から見た際の干渉色を抑制できる点で好ましい。具体的には、200℃を超えて245℃以下が好ましい。最終段の熱固定温度の範囲の下限は、210℃がより好ましく、220℃がさらに好ましい。最終段の熱固定温度の範囲の上限は、240℃がより好ましい。
本発明においては、前段の熱固定処理をポリエステルA層の結晶化とは配向緩和が起こりにくい温度範囲とすることで、主配向軸の構造が固定される。続いて最終段の熱固定処理でポリエステルB層の配向を緩和することで斜め方向から見た際の干渉色が低減できる。つまり、主配向軸の制御と斜め方向のリタデーションを低減させ、ブラックアウトと干渉色を抑制しやすくなる。
本発明において、熱固定処理を3段以上で実施するときは、熱固定温度は、上述したThs1、Ths2の好ましい温度範囲の中で、1段目、2段目、3段目と徐々に温度を上げることが好ましい。
熱固定の時間は、前段の熱固定各段が1秒〜1000秒間であることが好ましく、より好ましくは1秒〜60秒、更に好ましくは1秒〜30秒である。また、最終段の熱固定の時間は1秒〜1000秒間であることが好ましく、より好ましくは1秒〜60秒、更に好ましくは1秒〜10秒である。
また、熱固定全体の時間は2000秒を超えないことが好ましく、より好ましくは120秒、更に好ましくは30秒、特に好ましくは20秒を超えないようにする。
本発明において、熱固定処理工程は2段以上の工程であることが好ましいが、熱固定全体の時間を考慮すると、2段以上3段以下であることがより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、偏光子との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、易接着層をコーティングさせることができる。
コーティング層をフィルム製造工程内のインラインで設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際、易接着層厚みとしては0.01μm以上1μm以下とすることが好ましい。
また、易接着層中に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機粒子、帯電防止剤、核剤などを添加してもよい。
易接着層に好ましく用いられる樹脂としては、接着性、取扱い性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
さらに、140〜200℃条件下でオフアニールすることも好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムは、大画面の液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した場合に、ディスプレイの変形によっても干渉色を呈することがないため、PVA中にヨウ素を含有させて配向させて作成されたPVAシート(偏光子)と貼り合せて偏光子保護部材や円偏光板部材として好ましく用いられる。
[特性の評価方法]
A.主配向軸の傾き
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いる。サンプルを35mm×50mmで切り出し、フィルム長手方向が本測定装置にて定義されている角度0°方向となるように装置に設置し、測定試料ステージが光束の入射方向と直交する(図1中のa)角度(フィルム面に対して角度90°)における波長590nmでの主配向軸を測定する。主配向軸は、測定試料のフィルム長手方向を本測定装置の角度0°方向にセットし、測定により得られる遅相軸の方向とフィルム長手方向のなす角のうち、小さい方の角の角度として求める。測定サンプル4枚の平均値を主配向軸の傾きとする。ここで遅相軸とは、複屈折を起こす結晶内を光が伝播するとき、位相が遅れ光の進行速度が最も遅くなる軸である。
B.フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるリタデーション
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いて測定する。30mm×50mm(長手方向×幅方向)のサンプルを切り出し、位相差測定装置に設置する。光束の入射方向と直交する測定試料ステージ(図1中のa)角度を0°の面とした場合、この0°面と測定試料ステージが成す角度が50°となるように、すなわち、フィルム面と光束の入射方向の成す角度が40°となるように試料ステージを上記Aで測定した主配向軸の方向に傾斜(図1中のb)させ、波長590nmのリタデーションを測定する。
C.引裂伝播抵抗
フィルム面内の長手方向をMD方向、長手方向に直交する方向である幅方向をTD方向として、63mm×76mm(TD方向×MD方向)の矩形に切り出してサンプルとする。軽荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて、JIS K−7128−2(1998)に沿って測定する。サンプルの76mmの辺の中央部の位置に端から20mmの深さの切れ込みを入れ、残り43mmを引き裂いたときの指示値を読みとる。なお、測定は各方向に10回ずつ行い、その平均値を求める。63mm×76mm(MD方向×TD方向)の矩形に切り出してサンプルを作製し、TD方向における引裂伝播抵抗も同様に求める。
D.融点
JIS K7121(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンに試料を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷する。直ちに引き続いて、再度25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って測定を行い、2ndRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。2ndRUNのDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点の算出において、吸熱ピークが2つ以上検出される場合は最も高温側の吸熱ピークを、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点として算出する。なお、積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の融点を測定することができる。
E.ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出する。
F.フィルムの総厚み、各層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出す。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルムの総厚みおよびポリエステル各層の厚みを求める。
G.視認性テスト
図2に偏光板のクロスニコル配置にて行う視認性テストの概要図を示す。
偏光板gに二軸配向ポリエステルフィルムkを張り合わせてテストピースiとした。テストピースiを別の偏光板hにクロスニコルの配置にて重ね合わせLED光源j(トライテック製A3−101)上においた場合の視認性を、図2の測定者lの方向から確認する。
視認性(i)
A:ブラックアウトはほとんどみられない。
B:ブラックアウトが若干みられるものの実用に問題ない。
C:ブラックアウトがみられ、全体が若干暗くなるが、実用できる。
X:ブラックアウトがはっきりみられるため、実用には適さない。
視認性(ii)
A:干渉色はほとんど見られない
B:干渉色が若干見られるものの実用に問題ない。
C:干渉色が全体に見られるが、実用できる。
X:干渉色がはっきりみられるため、実用には適さない。
H.加工性
加工性について下記基準で評価する。
AA:引裂伝播抵抗が長手方向、幅方向ともに12N/mm以上20N/mm以下であり、試験後のフィルムに白化や割れは見られない。
A:AAに該当せず、引裂伝播抵抗が長手方向、幅方向ともに10N/mm以上22N/mm以下であり、試験後のフィルムに白化や割れは見られない
B:AAに該当せず、引裂伝播抵抗が長手方向、幅方向ともに10N/mm以上22N/mm以下であり、試験後のフィルムに若干割れが見られた。
C:AA、A、Bのいずれにも該当せず、引裂伝播抵抗が長手方向、幅方向ともに8N/mm以上25N/mm以下であり、試験後のフィルムに若干割れが見られた。
X:引裂伝播抵抗が長手方向、幅方向の少なくとも一方が8N/mm未満、25N/mmを超える、または白化や大きな割れが発生する。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
(ポリエステルA)
ジカルボン酸構成成分としてテレフタル酸100モル%、ジオール構成成分としてエチレングリコール100モル%をエステル交換反応装置に仕込み、内容物を加熱し溶解させた。その後、内容物を撹拌しながら、酢酸マグネシウム四水和物および三酸化アンチモンを加え、エステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を添加した。リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を添加すると、反応内容物の温度が低下する。そこで、余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃の温度に復帰するまで撹拌を継続した。このようにして、エステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃の温度に達した後、反応内容物を重合装置へ移行し、圧力と温度を掛け重合反応を開始した。その後、反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングして、ポリエステルAを得た。
(ポリエステルB)
非晶性ポリエステル樹脂である三菱ガス化学社製“ALTESTER(登録商標)”20(ジカルボン酸構成成分として、テレフタル酸100モル%、ジオール構成成分として、エチレングリコール80モル%、スピログリコール20モル%含む)を、ポリエステルBとして使用した。
(ポリエステルC)
ポリエステルAとポリエステルBを質量分率が50/50となるように混合し120℃の真空乾燥機で8時間乾燥した、その後、これらのチップをベント式の二軸混練押出機に供給し280℃にて溶融押出して、繊維焼結ステンレス製金属フィルター内を通過させた後、直径3mm、長さ10mmのダイスから押出して冷却後、カッターで切断してスピログリコールがジオール構成成分として10モル%含まれるスピログリコール共重合ポリエチレンテレフタレートのポリエステルCを得た。
(ポリエステルD)
ジカルボン酸構成成分としてテレフタル酸100モル%、ジオール構成成分としてエチレングリコール67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール33モル%を含む共重合ポリエステル樹脂(イーストマン・ケミカル社製 GN001)を、ポリエステルDとして使用した。
(ポリエステルE)
ジカルボン酸構成成分としてテレフタル酸85モル%、イソフタル酸15モル%を含む以外はポリエステルAと同様の方法でポリエステルEを得た。
(実施例1)
ポリエステルA層としてポリエステルA70質量%、ポリエステルC30質量%を混合したものを、ポリエステルB層としてポリエステルB100質量%を、それぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々の押出機に供給した。A層押出機シリンダー温度を280℃、B層押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、合流装置でA層/B層/A層の3層構成になるよう合流させた。積層比がA層厚み:B層厚み:A層厚みが1:4:1となるように調整し、合流後の短管温度を280℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。
続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.3倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムをテンターに導き、85℃の熱風で予熱後、フィルム幅方向に3.3倍延伸した。ここでの延伸は、延伸区間前半で90℃の温度で最大延伸量の70%である2.3倍まで延伸するように調整し、延伸区間後半で140℃の温度で延伸量が3.3倍になるように調整した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで1段目の熱固定を170℃の温度で5秒間の熱処理を施し、2段目の熱固定を230℃で5秒間施し、さらに210℃の温度で2%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、フィルムエッジ部を断裁後、搬送ロールにて搬送後に巻き取り1000mm幅、厚さ30μmの中間製品を得た。
中間製品をスリッターにて幅300mm×3本となるように切断しながらコアに巻きつけ、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。中間製品の中央部に位置していたフィルムを参考例1−0、中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例1−1、得られたフィルムの各特性を表に示す。なお、各特性の測定は、前記中間製品を切断して得られた各二軸延伸ポリエステルフィルムのロールの中央部からサンプリングして行った。実施例1−1のフィルムは、ブラックアウト抑制と干渉色抑制、加工性がかなり優れる特性を有していた。
(実施例2)
幅方向の延伸後の熱処理の1段目の温度を200℃とした以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。中間製品の中央部に位置していたフィルムを参考例2−0、中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例2−1とし得られたフィルムを評価したところ実施例2−1のフィルムは斜め方向から見た際の干渉色抑制と加工性に優れる特性を有していた。
(実施例3)
原料供給量を調節し、厚みを50μmとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例3−1とし得られたフィルムを評価したところブラックアウト抑制と加工性に優れる特性を有していた。
(実施例4)
原料供給量を調節し、厚みを6μmとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例4−1とし得られたフィルムを評価したところ干渉色抑制と加工性に優れる特性を有していた。
(実施例5)
ポリエステルA層の原料として、ポリエステルAを85質量%、ポリエステルDを15質量%混合した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例5−1とし、得られたフィルムを評価したところブラックアウト抑制に優れる特性を有していた。
(実施例6)
ポリエステルA層の原料をポリエステルA100質量%とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例6−1とし、得られたフィルムを評価したところブラックアウト抑制に優れる特性を有していた。
(実施例7)
ポリエステルB層の原料をポリエステルC100質量%とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例7−1とし、得られたフィルムを評価したところブラックアウト抑制に優れる特性を有していた。
(実施例8)
ポリエステルB層の原料をポリエステルE100質量%とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例9−1とし得られたフィルムを評価したところブラックアウト抑制と加工性に優れる特性を有していた。
(実施例9)
ポリエステルA層の原料をポリエステルE100質量%とし、ポリエステルB層を用いず1層とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを実施例9−1とし、得られたフィルムを評価したところブラックアウト抑制と優れる特性を有していた。
(比較例1)
幅方向の延伸後の熱処理の1段目の温度を230℃とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部に位置していたフィルムを比較例1−0、中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを比較例1−1とし得られたフィルムの各特性を表に示す。中間製品の中央部に位置していたフィルムだけでなく、中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムも長手方向に対する主配向軸の傾きが30°以上60°以下の範囲から外れており、ブラックアウト抑制に劣っていた。
(比較例2)
ポリエステルA層の原料としてポリエステルA20質量%、ポリエステルC80質量%を混合した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを比較例2−1とし得られたフィルムを評価したところ、得られたフィルムは加工性に劣る特性を有していた。
(比較例3)
ポリエステルA層の原料としてポリエステルA100質量%、ポリエステルB層の原料としてポリエステルA50質量%、ポリエステルC50質量%を混合した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを比較例3−1とし得られたフィルムを評価したところ、得られたフィルムは干渉色抑制と加工性に劣る特性を有していた。
(比較例4)
ポリエステルA100質量%のみでフィルムとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。中間製品の中央部の両側に位置していたフィルムを比較例4−1とし得られたフィルムを評価したところ、得られたフィルムは干渉色抑制と加工性に劣る特性を有していた。
Figure 2016132765
Figure 2016132765
本発明のポリエステルフィルムは、ブラックアウトと斜め方向から見た際の干渉色が抑制され、加工性に優れる。そのため、偏光子保護部材、円偏光板部材、および透明電極基材の用途に好適に用いられる。
a:光束入射方向と直交した状態の試料ステージ
b:フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させるときの試料ステージ
c:ポリエステルフィルム測定試料
d:光束照射装置
e:光束入射方向
f:受光機
g:偏光板
h:別の偏光板
i:テストピース
j:LED光源
k:二軸配向ポリエステルフィルム
l:測定者

Claims (9)

  1. 下記(a)〜(c)をすべて満たすポリエステルフィルム。
    (a)ポリエステルフィルムの長手方向に対する主配向軸の傾きが30°以上60°以下である
    (b)フィルム面に対して角度40°で主配向軸の方向から光束を透過させたときの波長590nmにおけるポリエステルフィルムのリタデーションが1500nm以下である
    (c)ポリエステルフィルムの長手方向の引裂伝播抵抗と幅方向の引裂伝播抵抗が共に8N/mm以上25N/mm以下である
  2. 前記ポリエステルフィルムの長手方向の引裂伝播抵抗と幅方向の引裂伝播抵抗が下記式を満たす請求項1に記載のポリエステルフィルム。
    0.80≦(長手方向の引裂伝播抵抗)/(幅方向の引裂伝播抵抗)≦1.20
  3. 前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点が200℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
  4. 前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂が、ジオール構成成分の合計に対して、構成成分としてエチレングリコールを85モル%以上95モル%以下、および脂環式ジオールを5モル%以上15モル%以下含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. 前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂が、ジカルボン酸構成成分の合計に対して、構成成分としてテレフタル酸を85モル%以上95モル%以下、並びにテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸および/または脂環式ジカルボン酸を5モル%以上15モル%以下含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. 前記ポリエステルフィルムが10層以下の積層フィルムであって、融点が230℃以上250℃以下であるポリエステル樹脂から構成されるポリエステル層を少なくとも一方の表層に有しており、かつ融点が230℃未満であるポリエステル樹脂、または非晶性ポリエステル樹脂から構成される層を有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. 偏光子保護部材として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  8. 円偏光板部材として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  9. 透明電極用部材として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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