JP2016131510A - 水分電解質補給飲料用粉末組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】水分、電解質溶液を摂取し、補給することは生命活動に必要であるが、水分、電解質溶液を摂取・補給時、人体の水分量、電解質濃度を一定のバランスに保つことは必要であり、バランスが崩れた場合はバランスを戻し、恒常性を保つ。一方、飲水時の人体の水分量、電解質濃度の急激なバランスの変化とそれを戻す活動は身体にとって負担となり、また、水分、電解質の保持にも良くないと考えられる。本発明は、本発明品摂取時の急激な体内バランスが変化する問題を解決し、身体にとって負担とならない水分電解質補給飲料を提供することを目的とする。【解決手段】グァーガム酵素分解物と一定濃度のナトリウム塩とを含有する水分電解質補給飲料を提供することにより、飲水時の水分・電解質の摂取速度を緩和することで上記課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、水分電解質補給飲料用粉末組成物及び水分電解質補給飲料に関するものである。
重量比で最も多い人体の構成成分は水分であり、体重の50−70%を占める。体重の2%を超える過度の脱水が起こると持久運動能力の低下が多数報告されるなど、人体の水分含量を維持することは不可欠である。また、血漿の浸透圧は275−295mOsm/kgHOの範囲にあり、水分と電解質の割合を一定に保つことが必要である。この目的で水と電解質を同時に補給できるように、成分を組み合わせた水分電解質補給飲料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、人は水分、電解質溶液を摂取すると、人体の水分量、電解質濃度を一定のバランスに戻すために腎臓が機能する。しかし一度に多量の水分、電解質溶液を摂取すると、急激な水分・電解質の濃度変化により、それらの体内バランスが崩れるため腎臓に負担がかかるという欠点がある。
運動選手は、発汗による水分喪失を少しでも補うため、事前に体内水分、電解質を蓄えておくウォーターローディングと呼ばれる方法を取り入れることが知られているが、この場合においても、急激な水分、電解質の摂取は適切でないと考えられており、時間をかけて少量ずつ摂取する事が有用であると考えられている。また高齢者は、体内の水分保持機能が低下するため、体重あたりの水分の構成比率が低下する傾向にある。このため体内水分量が少し低下するだけでも脱水状態になりやすく、頻繁に水分、電解質補給することが望まれるが、日常的に頻繁に水分、電解質補給をすることは難しい場合も多い。この場合も、ある程度まとまった量の水分、電解質を一度に摂取しても、身体に負担をかけず、体内に水分、電解質を保持できる方法が求められている。
特開2002−125639号公報
本発明は、水分電解質補給飲料を摂取後の小腸での水分、電解質の吸収速度を緩和することにより、水分、電解質摂取時に身体へかかる負担の問題を解決し、手軽に水分、電解質を補給できる摂取品を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意努力した結果、水分電解質補給飲料用粉末に一定量のグァーガム酵素分解物と一定量のナトリウム塩を添加した本発明の水分電解質補給飲料用粉末に、加水することにより得られる水分電解質補給飲料の摂取時の小腸での水分、電解質吸収速度を緩和させ、水分摂取時の身体への負担を軽減できることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は水分電解質補給飲料用粉末組成物及び水分電解質補給飲料に関する。
本発明の水分電解質補給飲料用粉末組成物及び水分電解質補給飲料は、一度に多量の水分、電解質を摂取しても身体に負担がかかりにくいという利点がある。本発明の水分電解質補給飲料用粉末組成物及び水分電解質補給飲料を用いることにより、水分電解質摂取時に身体へかかる負担を低減し、水分・電解質を補給することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本願発明における水分電解質補給飲料用粉末組成物は、グァーガム酵素分解物を10〜55%、より好ましくは20〜30%含有し、さらに水分吸収速度に影響を与えていると考えられているナトリウム塩がナトリウム相当量として1.2〜3.5%、より好ましくは1.3〜2.7%のナトリウム塩を含有する。グァーガム酵素分解物の濃度が低いと小腸での水分、電解質の吸収速度を緩和させる効果が十分でなく、濃度が高いと飲料の粘度が高くなり、人が飲みにくいという欠点がある。さらにカルシウム相当量として0.2〜0.4%のカルシウム塩を含有させることがより好ましい。
飲食品中の水分は環境や温度湿度の変化で容易に移動や蒸発がおこる自由水と、飲食品の成分であるタンパク質や糖質と強く結合した結合水とに分かれる。その性質から、自由水に比べ、結合水は摂取時に小腸での吸収がゆっくりとなると考えられる。水と結合する糖質とは、例えば本発明品に含まれるグァーガム酵素分解物が挙げられる。自由水、結合水の割合は飲食品中の水分含量が低い場合は、水分活性を測定することにより推測が出来る。しかし、本発明品のような水分含量が高い飲料の場合は、飲料の核磁気共鳴をNMRやMRIにより測定し、水拡散係数を計測することにより推測ができる。水分電解質補給飲料中の水拡散係数は特に限定するものではないが、純水を100%とした場合に、75−95%であることが望ましく、80−90%であることがさらに望ましい。水拡散係数の測定方法は、特に限定されるものではないが、通常、MRI法、NMR法が用いられ、複数成分を含む水溶液の測定ではMRI法が好ましい。
本発明の飲料摂取時の水分、電解質の吸収速度は、水分電解質補給飲料の浸透圧も関係する。浸透圧の測定方法は特に限定されないが、自動浸透圧計により簡便に測定することができ、水分電解質補給飲料の浸透圧は180−250mOsm/kgHOが望ましく、200−230mOsm/kgHOであることがより望ましい。
電解質の吸収速度の測定方法は特に限定するものではないが、動物などを用いてポリエチレングリコール(PEG)などの非吸収性・非発酵性の化学物質を指標とすることで測定できる。例えば、ポリエチレングリコールを添加しておいた水分電解質補給飲料を、経口ゾンデにより胃内注入した後、一定時間後に胃、小腸内容物を回収して、その中に含まれるPEG量、電解質量を測定し、胃内注入したPEG、電解質の量から胃、小腸に残存するPEG、電解質の量を差し引くことにより、小腸での吸収量が測定出来る。SD系雄性ラットを用いた場合、小腸での水分吸収速度が2.0〜3.0g/8分となることが望ましく、2.2〜2.7g/8分となることがより望ましい。同様の方法で、小腸でのナトリウムイオンの吸収速度が45〜75μg/8分となることが望ましく、55〜70μg/8分となることがより望ましい。本方法で測定すると、市販の一般的な水分電解質補給飲料では、小腸での水分吸収速度が約5−8g/8分、ナトリウムイオンの吸収速度が約150−190μg/8分となる。
本発明の水分電解質補給飲料用粉末組成物の調製方法としては、グァーガム酵素分解物、ナトリウム塩、その他の成分を混合していく順番など、特に限定されない。望ましくは20−80部、より望ましくは35−65部の調製した水分電解質補給飲料用粉末組成物を、1000部の水に溶解し、水分電解質補給飲料として調製する。
本発明品は他の成分として、カリウム、カルシウム、塩素、マグネシウム、クエン酸、及びリンなどの無機物を含有することができる。電解質成分の濃度は、水分電解質補給飲料の味、及び身体へかかる負担の軽減という観点から、相当量としてカリウム1.2〜2.4%、カルシウム0.2〜0.4%、塩素3.5〜4.5%、マグネシウム0.05〜0.15%、クエン酸4.8〜9.6%、及びリン0.05〜0.2%を含有することが望ましい。さらに水分電解質補給飲料の味の観点から、糖質を含有することが望ましく、アスコルビン酸を含有することがさらにより望ましい。糖質は特に限定されるものではないが、スクロース、グルコースが入手しやすさの観点から好ましい。
グァーガム酵素分解物は、グァーガムをアスペルギルス属菌又はリゾープス属菌由来のβ−ガラクトマンナナーゼ、より好ましくはアスペルギルス属菌由来のβ−ガラクトマンナナーゼにより酵素分解し、精製・粉末化して製造したものである。
ナトリウム塩は特に限定するものではないが、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられ、水分電解質補給飲料の味へ与える影響の観点から、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウムが好ましい。
カリウム、カルシウム、塩素、マグネシウム、クエン酸、及びリンの原料は、食品原料であれば特に限定するものではないが、入手のし易さから、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、リン酸三カルシウムなどが望ましい。
他の併用できる成分としては、例えば、人工甘味料であるアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、また香料などが挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜3
表1に示す重量比に従って塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸三カルシウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸、硫酸マグネシウム、グルコース、スクロース、スクラロース、アセスルファムカリウム、ゆずフレーバーを添加したプレミックスAを調製した。
Figure 2016131510
プレミックスAは、30gを1Lの水に溶解した場合、電解質成分として、ナトリウムイオン35.3mEq/L、カリウムイオン15.3mEq/L、カルシウムイオン5.4mEq/L、クロライドイオン37.2mEq/L、マグネシウムイオン2.0mEq/L、クエン酸イオン44.5mEq/L及びリンを2.7mmol/L含有するように設計されている。
プレミックスA30gと、グァーガム酵素分解物を表2に示す重量比で混合して、実施例1〜3記載の粉末組成物を調製した。
Figure 2016131510
比較例1
表3の組成に従って各成分を混ぜ、比較例1の粉末組成物を調製した。これを1Lの水に溶解し、一般的な市販電解質飲料を模倣した飲料を作成した。電解質成分として、ナトリウムイオン50mEq/L、カリウムイオン20mEq/L、クロライドイオン50mEq/L、マグネシウムイオン2.0mEq/L、乳酸イオン31mEq/L及びリンを5mmol/L含有する。
Figure 2016131510
試験例1
実施例1〜3、及び比較例1で調製した粉末組成物について、実施例1 34g、実施例2 40g、実施例3 60g、比較例1 30gを1Lの水に溶解し、磁気共鳴画像(MRI、Hitachi)の手法により水拡散係数を測定した。比較のために純水を測定した。
実施例1−3、比較例1の粉末組成物を同様に水に溶解し、自動浸透圧計により浸透圧を測定した。
実施例1−3、比較例1の粉末組成物を同様に溶解した各飲料にポリエチレングリコール(以下PEG)を2g/Lの濃度で溶かし試験液として、ラットによる動物試験により水分、ナトリウムイオンの吸収速度を比較した。
8週齢SD系雄性ラットを6群(各群6匹)に分け、意識下で各試験液約9mlを経口ゾンデ経由で注入した。注入8分後、胃と小腸の内容物を採取した。胃と小腸の内容物中の重量及びPEG濃度を基に胃と小腸での水分の残存量、消失量(水分吸収量)を計算した。ナトリウムイオン濃度はイオンクロマトグラフ(761 Compact IC、Metrohm)を用いて測定し、PEG濃度はMalawerの方法に従って測定した。
小腸での水分・ナトリウム吸収速度は、比較例1と比較を行ってスチューデントtテストにより有意差検定を行い、危険率5%以下を有意な差とした。
実施例1〜3、比較例1の水拡散係数、浸透圧及び小腸での水分吸収速度(g/8分)、ナトリウムイオン吸収速度(μg/8分)の結果を表4に示す。
Figure 2016131510
表4の結果から明らかなように、水拡散係数は実施例1〜3では純水と比べて90%以下にまで減少した。
浸透圧は、実施例1〜3で、比較例1と比べて低い値となった。
実施例1〜3で、比較例1と比べて有意に小腸での水分吸収速度が減少し、危険率が1%以下の有意差を示した。また、実施例1〜3は、比較例1と比べて有意に小腸でのナトリウム吸収速度を減少させた(危険率、1%以下)。
実施例1〜3は、危険率1%以下の水準で有意に小腸での水分とナトリウムの吸収速度を穏やかにすることから、飲水時の身体への負担が低いと考えられる。
本発明の水分電解質補給飲料により、スポーツ選手や高齢者など水分、電解質の補給が必要な人に、身体への負担を少なく多量に飲むことのできる飲料を提供することが可能となり、産業上貢献大である。

Claims (4)

  1. グァーガム酵素分解物10−55%と、ナトリウム相当量として1.2−3.5%のナトリウム塩とを含有することを特徴とする水分電解質補給飲料用粉末組成物。
  2. 請求項1記載の水分電解質補給飲料用粉末組成物を水に溶解して調製した水分電解質補給飲料中のグァーガム酵素分解物濃度が0.2−5%、ナトリウムイオン濃度が30−60mEq/Lである水分電解質補給飲料用粉末組成物。
  3. 請求項1又は2記載の水分電解質補給飲料用粉末組成物20−80部を水1000部に溶解し調製することを特徴とする水分電解質補給飲料。
  4. 請求項2又は3記載の水分電解質補給飲料の水拡散係数が、純水に比べて95%以下であることを特徴とする水分電解質補給飲料。
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