以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
(鉱山の採掘現場)
図1は、本実施形態に係る運搬車両が稼働する鉱山の採掘現場の一例を示す模式図である。運搬車両は、車両2及び車両2に設けられたベッセル3を有するダンプトラック1である。ダンプトラック1は、ベッセル3に積載された積荷を運搬する。積荷は、採掘された採石や土砂及び鉱石の少なくとも一方を含む。
鉱山の採掘現場において、積込場LPA、排土場DPA、及び積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方に通じる走行路HLが設けられる。ダンプトラック1は、積込場LPA、排土場DPA、及び走行路HLの少なくとも一部を走行可能である。ダンプトラック1は、走行路HLを走行して、積込場LPAと排土場DPAとの間を移動可能である。
積込場LPAにおいて、ベッセル3に積荷が積み込まれる。積込機械LMにより、ベッセル3に積荷が積み込まれる。積込機械LMとして油圧ショベルやホイールローダが用いられる。積荷が積み込まれたダンプトラック1は、積込場LPAから排土場DPAまで走行路HLを走行する。排土場DPAにおいて、ベッセル3から積荷が排出される。積荷が排出されたダンプトラック1は、排土場DPAから積込場LPAまで走行路HLを走行する。なお、ダンプトラック1は、排土場DPAから所定の待機場まで走行してもよい。
(ダンプトラック)
次に、ダンプトラック1について説明する。図2は、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す斜視図である。
ダンプトラック1は、キャブ(運転室)8に搭乗したオペレータWMに操作される有人ダンプトラックである。ダンプトラック1を、オフハイウェイトラック、と称してもよい。ダンプトラック1は、リジッド式のダンプトラックである。
ダンプトラック1は、前部2F及び後部2Rを有する車両2と、車両2に設けられるベッセル3とを備える。車両2は、走行装置4と、少なくとも一部が走行装置4の上方に配置される車体5とを有する。ベッセル3は、車体5に支持される。
走行装置4は、車輪6と、車輪6を回転可能に支持する車軸7とを備える。車輪6は、車軸7に支持されるホイールと、ホイールに支持されるタイヤとを含む。車輪6は、前輪6Fと後輪6Rとを含む。車軸7は、前輪6Fを回転可能に支持する車軸7Fと、後輪6Rを回転可能に支持する車軸7Rとを含む。
車体5は、ロアデッキ5Aと、アッパデッキ5Bと、ロアデッキ5Aの下方に配置された可動式のラダー5Cと、ロアデッキ5Aとアッパデッキ5Bとを結ぶように配置されたラダー5Dとを有する。ロアデッキ5Aは、車体5の前部の下部に配置される。アッパデッキ5Bは、車体5の前部において、ロアデッキ5Aの上方に配置される。
車両2は、キャブ8を有する。キャブ8は、アッパデッキ5B上に配置される。オペレータWMは、キャブ8に搭乗して、ダンプトラック1を操作する。オペレータWMは、ラダー5Cを使って、キャブ8に対して乗降可能である。オペレータWMは、ラダー5Dを使って、ロアデッキ5Aとアッパデッキ5Bとを移動可能である。
ベッセル3は、積荷が積載される部材である。ベッセル3は、昇降装置により、車両2に対して上下に昇降可能である。昇降装置は、ベッセル3と車体5との間に配置された油圧シリンダ(ホイストシリンダ)のようなアクチュエータを含む。昇降装置によりベッセル3の一部が上昇することによって、ベッセル3の積荷が排出される。
(キャブ)
次に、キャブ8について説明する。図3は、本実施形態に係るキャブ8の一例を示す図である。図3に示すように、キャブ8には、運転席16と、トレーナー席19と、出力操作部24と、ブレーキ操作部25と、走行方向操作部15と、速度段操作部18と、リターダ操作部17と、フラットパネルディスプレイのような表示装置20と、警報を発生する警報装置21とが設けられている。
(衝突防止システム)
次に、本実施形態に係る衝突防止システム300Sについて説明する。本実施形態において、ダンプトラック1は、ダンプトラック1とダンプトラック1の前方の物体との衝突による被害を軽減するための処理を実行可能な衝突防止システム300Sを備えている。
図4及び図5のそれぞれは、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す模式図である。なお、図5においては、図9に示した変速装置80は図示を省略している。ダンプトラック1は、ダンプトラック1(車両2)の走行状態を検出する走行状態検出装置10と、ベッセル3の積荷の積載状態を検出する積載状態検出装置11と、ダンプトラック1(車両2)の前方の物体を検出する物体検出装置12と、ダンプトラック1を制御する制御装置30とを備えている。衝突防止システム300Sは、物体検出装置12を含む。走行状態検出装置10の検出結果、積載状態検出装置11の検出結果、及び物体検出装置12の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、それらの検出結果に基づいて、ダンプトラック1が物体に衝突することを防止するための処理を実行する。
ダンプトラック1の走行状態は、ダンプトラック1の走行速度、ダンプトラック1の走行方向(前部2F又は前輪6Fの向き)、及びダンプトラック1の進行方向(前進又は後進)の少なくとも一つを含む。
ベッセル3の積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の有無、あるいは積荷の重量の少なくとも一つを含む。
ダンプトラック1は、動力を発生する動力発生装置22と、少なくとも一部が走行装置4に接続されるサスペンションシリンダ9と、走行装置4を停止させるためのブレーキ装置13とを備えている。
走行装置4は、動力発生装置22が発生した動力により駆動する。本実施形態において、動力発生装置22は、電気駆動方式により走行装置4を駆動する。動力発生装置22は、ディーゼルエンジンのような内燃機関と、内燃機関の動力により作動する発電機と、発電機が発生した電力により作動する電動機とを有する。電動機で発生した動力が走行装置4の車輪6に伝達される。これにより、走行装置4が駆動される。車両2に設けられた動力発生装置22の動力によって、ダンプトラック1は自走する。
なお、動力発生装置22は、機械駆動方式により走行装置4を駆動してもよい。例えば、内燃機関で発生した動力が、動力伝達装置を介して走行装置4の車輪6に伝達されてもよい。
走行装置4は、ダンプトラック1の走行方向(前部2Fの向き)を変えるための操舵装置14を備えている。操舵装置14は、前輪6Fの向きを変えることによって、ダンプトラック1の走行方向を変える。
動力発生装置22は、キャブ8に設けられた出力操作部24により操作される。出力操作部24は、アクセルペダルのようなペダル操作部を含む。オペレータWMは、出力操作部24を操作して、動力発生装置22の出力を調整可能である。動力発生装置22の出力が調整されることにより、ダンプトラック1の走行速度が調整される。
ブレーキ装置13は、キャブ8に設けられたブレーキ操作部25により操作される。ブレーキ操作部25は、ブレーキペダルのようなペダル操作部を含む。オペレータWMは、ブレーキ操作部25を操作して、ブレーキ装置13を作動可能である。ブレーキ装置13が作動することにより、ダンプトラック1の走行速度が調整される。
操舵装置14は、キャブ8に設けられた走行方向操作部15により操作される。走行方向操作部15は、例えば、ハンドルであって、ハンドル操作部を含む。オペレータWMは、走行方向操作部15を操作して、操舵装置14を作動可能である。操舵装置14が作動することにより、ダンプトラック1の走行方向が調整される。
また、変速装置80は、例えばトランスミッションであって、キャブ8に設けられた速度段操作部18により操作される。速度段操作部18は、シフトレバーのようなレバー操作部を含む。オペレータWMは、速度段操作部18を操作して、走行装置4の進行方向を変更可能である。速度段操作部18が操作されることにより、変速装置80は、ダンプトラック1を前進又は後進するために回転方向を切り替える。
サスペンションシリンダ9は、車輪6と車体5との間に配置される。サスペンションシリンダ9は、前輪6Fと車体5との間に配置されるサスペンションシリンダ9Fと、後輪6Rと車体5との間に配置されるサスペンションシリンダ9Rとを含む。つまり、サスペンションシリンダ9は、前後左右に配置された4つの車輪6のそれぞれに設けられている。車体5及び積荷の重量に基づく負荷が、サスペンションシリンダ9を介して車輪6に作用する。
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1の走行速度を検出する走行速度検出装置10Aと、ダンプトラック1の走行方向を検出する走行方向検出装置10Bと、ダンプトラック1が前進しているか後進しているかを検出する進行方向検出装置10Cとを含む。
走行速度検出装置10Aは、ダンプトラック1(車両2)の走行速度を検出する。走行速度検出装置10Aは、車輪6(車軸7)の回転速度を検出する回転速度センサを含む。車輪6の回転速度とダンプトラック1の走行速度とは相関する。回転速度センサの検出値(回転速度値)が、ダンプトラック1の走行速度値に変換される。走行速度検出装置10Aは、回転速度センサの検出値に基づいて、ダンプトラック1の走行速度を検出する。
走行方向検出装置10Bは、ダンプトラック1(車両2)の走行方向を検出する。ダンプトラック1の走行方向は、ダンプトラック1が前進するときの車両2の前部(前面)2Fの向きを含む。ダンプトラック1の走行方向は、ダンプトラック1が前進するときの前輪6Fの向きを含む。
進行方向検出装置10Cは、ダンプトラック1(車両2)の進行方向を検出する。進行方向検出装置10Cは、ダンプトラック1が前進するか後進するかを検出する。ダンプトラック1の前進において、車両2の前部2Fが進行方向の前方側に位置する。ダンプトラック1の後進において、車両2の後部2Rが進行方向の前方側に位置する。進行方向検出装置10Cは、車輪6(車軸7)の回転方向を検出する回転方向センサを含む。進行方向検出装置10Cは、回転方向センサの検出値に基づいて、ダンプトラック1が前進しているか後進しているかを検出する。なお、進行方向検出装置10Cは、速度段操作部18の操作状態を検出するセンサを含んでもよい。
積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の有無、積荷の重量の少なくとも一つを検出する。積載状態検出装置11は、ベッセル3の重量を検出する重量センサを含む。空荷状態のベッセル3の重量は、既知情報である。積載状態検出装置11は、重量センサの検出値と既知情報である空荷状態のベッセル3の重量値とに基づいて、ベッセル3に積み込まれた積荷の重量を求めることができる。つまり、検出値からベッセル3の重量値を減算することで積荷の重量を求めることができる。
本実施形態において、積載状態検出装置11の重量センサは、サスペンションシリンダ9の内部空間の作動油の圧力を検出する圧力センサを含む。圧力センサは、作動油の圧力を検出して、サスペンションシリンダ9に作用する負荷を検出する。サスペンションシリンダ9は、シリンダ部と、シリンダ部に対して相対移動可能なピストン部とを有する。シリンダ部とピストン部との間の内部空間に作動油が封入される。ベッセル3に積荷が積み込まれると、内部空間の作動油の圧力が高くなるようにシリンダ部とピストン部とが相対移動する。ベッセル3から積荷が排出されると、内部空間の作動油の圧力が低くなるようにシリンダ部とピストン部とが相対移動する。圧力センサは、その作動油の圧力を検出する。作動油の圧力と積荷の重量とは相関する。圧力センサの検出値(圧力値)が、積荷の重量値に変換される。積載状態検出装置11は、圧力センサ(重量センサ)の検出値に基づいて、積荷の重量を検出する。
本実施形態において、圧力センサは、複数のサスペンションシリンダ9のそれぞれに配置される。ダンプトラック1は、車輪6を4つ有する。それら4つの車輪6に設けられたサスペンションシリンダ9のそれぞれに圧力センサが配置される。積載状態検出装置11は、4つの圧力センサの検出値の合計値又は平均値に基づいて、積荷の重量を求めてもよい。積載状態検出装置11は、4つの圧力センサのうち特定の圧力センサ(例えばサスペンションシリンダ9Rに配置された圧力センサ)の検出値に基づいて、積荷の重量を求めてもよい。
なお、積載状態検出装置11の圧力センサ(重量センサ)の検出結果に基づいて、単位期間当たりにおけるダンプトラック1の積荷運搬量が管理されてもよい。例えば、圧力センサの検出結果に基づいて、1日間におけるダンプトラック1の積荷運搬量(仕事量)が、ダンプトラック1に搭載された記憶装置に記憶され管理されてもよい。
なお、積載状態検出装置11は、ベッセル3と車体5との間に配置された重量センサを用いてもよい。その重量センサは、ベッセル3と車体5との間に設けられたひずみゲージ式ロードセルを用いてもよい。積載状態検出装置11は、ベッセル3を持ち上げる油圧シリンダ(ホイストシリンダ)の油圧を検出する圧力センサを用いてもよい。
物体検出装置12は、ダンプトラック1(車両2)の前方に存在する物体を非接触で検出する。物体検出装置12は、レーダ装置(ミリ波レーダ装置)を含む。レーダ装置は、電波(又は超音波)を発信して、物体で反射した電波(又は超音波)を受信して、前方に存在する物体の有無だけでなく、物体との相対位置(相対距離及び方位)、及び物体との相対速度を検出可能である。なお、物体検出装置12が、レーザスキャナ及び3次元距離センサの少なくとも一つを含んでもよい。また、物体検出装置12を複数設けてもよい。
物体検出装置12は、車両2の前部2Fに配置される。本実施形態において、図2に示すように、物体検出装置12は、アッパデッキ5Bに配置される。なお、物体検出装置12は、ダンプトラック1の前方の物体を検出できればよい。物体検出装置12は、ロアデッキ5Aに配置されてもよい。
なお、アッパデッキ5Bに物体検出装置12が設けられることにより、車輪6が接触する路面(地面)に凹凸があっても、物体検出装置12はその凹凸を物体として誤検出してしまうことが抑制される。なお、レーダ装置から電波が発射された場合、路面の凹凸で反射した電波の強度は、検出対象の物体で反射した電波の強度よりも小さい。レーザ装置は、物体で反射した電波を受信し、路面の凹凸で反射した電波を誤検出しないように、強度が大きい電波を受信し、強度が小さい電波をカットするフィルタ装置を備えてもよい。
図6及び図7は、操舵装置14及び走行方向検出装置10Bの一例を示す模式図である。操舵装置14は、走行装置4に設けられ、走行装置4を操舵する。走行装置4は、直進状態で走行可能である。走行装置4は、非直進状態(旋回状態)で走行可能である。操舵装置14の作動により、走行装置4は、直進状態及び非直進状態の一方から他方に変化するように、走行方向を変化可能である。操舵装置14は、前輪6Fの向きを変えることによって、走行装置4(ダンプトラック1)の走行方向を変化させる。図7は、走行装置4が非直進状態(旋回状態)となっている様子を示しており、前輪6Fが実線のような向きとなっている場合、ダンプトラック1は右旋回し、前輪6Fが破線のような向きとなっている場合、ダンプトラック1は左旋回する。
操舵装置14は、走行方向操作部(ハンドル操作部)15に接続され、走行方向操作部15と一緒に回転するコラム141と、車輪6(前輪6F)と接続され、走行方向操作部15の操作量に応じて車輪6の向きを変える指向部材142とを備えている。オペレータWMによって走行方向操作部15が操作され、操舵装置14が作動することにより、ダンプトラック1の走行方向が調整される。
走行方向検出装置10Bは、操舵装置14の操作量を検出して、操舵角を検出する。走行方向検出装置10Bは、操舵装置14の操舵角を検出するステアリングセンサを含む。ステアリングセンサは、指向部材142に連動して回転し、操舵角に応じた検出信号(電気信号)を出力するポテンショメータを含む。走行方向検出装置10Bは、ステアリングセンサを使って、ダンプトラック1の走行方向を検出する。
走行方向検出装置10Bは、走行装置4の直進状態からの走行方向の変化量を検出する。直進状態において、走行装置4の操舵角が0度(基準角度)である場合、走行方向検出装置10Bは、その基準角度からの操舵角の変化量を検出する。基準角度に対する操舵角の変化量は、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量と相関する。走行方向検出装置10Bは、検出した操舵角の変化量に基づいて、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量を求めることができる。
走行方向検出装置10Bは、走行方向操作部15(又はコラム141)の回転量を検出する回転量センサ143を含んでもよい。走行方向操作部15の回転量は、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量と相関する。走行方向検出装置10Bは、検出した走行方向操作部15の回転量に基づいて、ダンプトラック1の走行方向の変化量を求めてもよい。
図8は、本実施形態に係る物体検出装置12の一例を示す模式図である。図8に示すように、物体検出装置12は、車両2の前部2Fに配置されるレーダ装置(ミリ波レーダ装置)を含む。レーダ装置は、ダンプトラック1の前方の物体を検出可能な検出領域SLを有する。検出領域SLは、図8の斜線で示すように射出部12Sから上下および左右の方向に向かって放射状に広がりをもっている。物体検出装置12は、検出領域SLに配置される物体を検出可能である。ダンプトラック1の走行方向に関して、物体検出装置12の検出領域SLの寸法はDmである。寸法Dmは、電波及び超音波の少なくとも一方を発射する物体検出装置12の射出部12Sと検出領域SLの先端部との距離である。物体検出装置12は、物体を検出したとき、その物体を検出した検出信号を制御装置30に出力する。
(制御システム)
次に、本実施形態に係るダンプトラック1の制御システム300の一例について説明する。図9は、本実施形態に係る制御システム300の一例を示す機能ブロック図である。制御システム300は、衝突防止システム300Sを含む。
図9に示すように、制御システム300は、ダンプトラック1を制御する制御装置30と、制御装置30と接続された車両制御装置29とを備えている。車両制御装置29は、ダンプトラック1の状態量を検出する状態量検出システム400と、ダンプトラック1の走行条件を調整する走行条件調整システム500とを有する。状態量検出システム400は、例えば、走行状態検出装置10及び積載状態検出装置11を含む。走行条件調整システム500は、例えば、動力発生装置22、ブレーキ装置13、走行装置4(操舵装置14)、及びリターダ28を含む。制御装置30に、物体検出装置12、表示装置20、警報装置21、及び電源装置(電源部)60が接続される。なお、ブレーキ装置13及びリターダ28は、いずれもダンプトラック1を減速或いは停止させるためのブレーキ処理を実行する制動装置である。
動力発生装置22に出力操作部24が接続される。ブレーキ装置13にブレーキ操作部25が接続される。操舵装置14に走行方向操作部15が接続される。走行装置4に速度段操作部18が接続される。リターダ28にリターダ操作部17が接続される。なお、本実施形態においては、リターダ28による制動装置とブレーキ装置13による制動装置は、共通の制動装置機構であり、オペレータWMがブレーキ操作部25を操作しても、リターダ操作部17を操作しても、その共通の制動装置が動作し制動することができる。なお、リターダ28は、坂道を降りるような場合、一定の速度でダンプトラック1が走行できるように制動力を制御する。坂道を降りる際、オペレータWMがリターダ操作部17を操作しリターダ28を作動させることで、制動装置は所定の制動力を出すが、さらにリターダ28は、走行速度検出装置10Aにより検出された走行速度に応じて制動装置の制動力を調整する。なお、リターダ28は、ブレーキ装置13の制動装置とは異なるものであってもよく、例えば流体式リターダや電磁式リターダなどをの制動装置を備えたものであってもよい。
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)などの数値演算装置やメモリなどの記憶装置を含む。制御装置30は、ダンプトラック1とダンプトラック1の前方の物体との衝突の可能性を判断する衝突判断部31と、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量に関する判定値SVを設定する判定値設定部33と、衝突防止システム300Sの少なくとも一部の処理(機能)を無効化する無効化部32と、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを出力する制御部35とを含む。
制御装置30は、衝突の可能性の判断に用いられる情報を記憶する記憶部34を含む。記憶部34は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含む。
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1の走行状態を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の積載状態を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。物体検出装置12は、ダンプトラック1の前方の物体を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。
本実施形態において、衝突防止システム300Sは、物体検出装置12、衝突判断部31、制御部35、及び電源装置60を含む。物体検出装置12は、ダンプトラック1の前方の物体を検出して、その検出信号S2を衝突判断部31に出力する。衝突判断部31は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、ダンプトラック1と物体との衝突の可能性を判断する。本実施形態において、衝突判断部31は、走行状態検出装置10の検出結果と、積載状態検出装置11の検出結果と、物体検出装置12の検出結果とに基づいて、ダンプトラック1と物体との衝突の可能性を判断する。制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを出力する。電源装置60は、衝突防止システム300Sの少なくとも一部を作動させるための電力Pを出力する。
走行方向検出装置10Bは、ダンプトラック1の走行方向の変化量を検出して、その検出信号S1を出力する。無効化部32は、走行方向検出装置10Bによって検出された、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量の検出値DVと、判定値設定部33において設定された判定値SVとに基づいて、衝突防止システム300Sの少なくとも一部の処理を無効化する。無効化部32は、衝突防止システム300Sからの出力の少なくとも一部を無効化する。本実施形態における衝突防止システム300Sは、衝突防止システム300Sを構成するいずれかの装置が、検出信号S2、制御信号C、及び電力Pを出力する。無効化部32は、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量の検出値DVと判定値SVとに基づいて、物体検出装置12から出力される検出信号S2、制御部35から出力される制御信号C、及び電源装置60から出力される電力Pの少なくとも一つを無効化する。
ダンプトラック1は、物体との衝突による被害を軽減するために作動する処理システム600を有する。処理システム600は、ダンプトラック1と物体との衝突による被害を軽減するための異なる処理を実行可能な複数の処理装置を有する。本実施形態において、処理システム600の処理装置は、例えば、ブレーキ装置13、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、及び警報装置21の少なくとも一つを含む。ブレーキ装置13、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、リターダ28、及び警報装置21は、衝突による被害を軽減するための異なる処理をそれぞれ実行可能である。処理システム600は、制御装置30に制御される。
ブレーキ装置13は、走行装置4に対するブレーキ処理(停止処理)を実行して、ダンプトラック1の走行速度を低減又はダンプトラック1の走行を停止させることができる。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
動力発生装置22は、走行装置4に対する出力(駆動力)を低減する出力低減処理を実行して、ダンプトラック1の走行速度を低減させることができる。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
操舵装置14は、後述する制御部(走行方向制御部)35からの制御信号C3、あるいは、走行方向操作部15からの操作信号R3に応じてダンプトラック1の走行方向変更処理を実行して、ダンプトラック1の進路上に物体が存在しないようにダンプトラック1の走行方向を変更する。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
表示装置20は、例えば、オペレータWMに対する注意喚起のための表示処理を実行することができる。表示装置20は、警告画像を表示してオペレータWMに警告を行うことができる。警告画像は、例えば前方に存在する物体との衝突の可能性を知らせる旨の警告マークやメッセージの表示とすることができる。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作、例えば、出力操作部24、ブレーキ操作部25、走行方向操作部15のいずれか一つに対しての操作が実行され、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
警報装置21は、オペレータWMに対する注意喚起のための警報発生処理を実行することができる。警報装置21は、例えばスピーカーやランプを用い、前方に存在する物体との衝突の可能性を知らせる旨の音又は光を発生してオペレータWMに警告することができる。警報装置21は、走行方向操作部15及び運転席16の少なくとも一方を振動させてオペレータWMに警告可能な振動発生装置を含んでもよい。警報装置21は、運転席16に搭乗しているオペレータWMを保護するためのシートベルトの締め付け力を変更してオペレータWMに警告可能なシートベルト調整装置を含んでもよい。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作が実行され、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを、処理システム600(ブレーキ装置13、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、リターダ28、及び警報装置21の少なくとも一つ)に出力する。制御部35から制御信号Cが供給された処理システム600は、ダンプトラック1と物体との衝突による被害を軽減するための処理を実行する。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(出力制御部)35は、出力低減処理が実行されるように、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。動力発生装置22は、制御部35から供給された制御信号C1に基づいて出力を低減して、走行装置4に対する駆動力を低減させる。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(ブレーキ制御部)35は、ブレーキ処理が実行されるように、ブレーキ装置13に制御信号C2を出力してもよい。ブレーキ装置13は、制御部35から供給された制御信号C2に基づいて作動する。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減又はダンプトラック1の走行が停止され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(走行方向制御部)35は、走行方向変更処理が実行されるように、操舵装置14に制御信号C3を出力してもよい。操舵装置14は、制御部35から供給された制御信号C3に基づいて作動する。これにより、ダンプトラック1の進路に物体が配置されないようにダンプトラック1の走行方向が変更され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(警報制御部)35は、警報発生処理が実行されるように、警報装置21に制御信号C6を出力してもよい。上述のように、警報装置21は、制御部35から供給された制御信号C6に基づいて作動する。警報装置21は、オペレータWMに注意喚起するための音又は光を発生する。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するためのいずれかの操作が実行され、その操作により発生した操作信号R(R1、R2、R3、R4)が処理システム600に供給される。これにより、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(表示制御部)35は、上述のように、表示処理が実行されるように、表示装置20に制御信号C5を出力してもよい。表示装置20は、制御部35から供給された制御信号C5に基づいて作動する。表示装置20は、オペレータWMに注意喚起するための画像を表示する。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するためのいずれかの操作が実行され、その操作により発生した操作信号R(R1、R2、R3、R4)が処理システム600に供給される。これにより、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作は、動力発生装置22の出力を低減させるための出力操作部24の操作、ブレーキ装置13を作動させるためのブレーキ操作部25の操作、リターダ28を作動させるためのリターダ操作部17の操作及び操舵装置14によりダンプトラック1の走行方向を変更させるための走行方向操作部15の操作の少なくとも一つを含む。出力操作部24が操作されることにより、操作信号R1が生成される。出力操作部24により生成された操作信号R1に基づいて、動力発生装置22の出力が低減される。ブレーキ操作部25が操作されることにより、操作信号R2が生成される。ブレーキ操作部25により生成された操作信号R2に基づいて、ブレーキ装置13は作動し、ダンプトラック1は減速する。走行方向操作部15が操作されることにより、操作信号R3が生成される。走行方向操作部15により生成された操作信号R3に基づいて、操舵装置14は作動する。リターダ操作部17が操作されることにより、操作信号R4が生成される。リターダ操作部17により生成された操作信号R4に基づいて、リターダ28は作動し、ダンプトラック1は減速する。
動力発生装置22は、出力制御部35及び出力操作部24のそれぞれと接続される。出力操作部24は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R1を生成して、動力発生装置22に供給する。動力発生装置22は、操作信号R1に基づく出力を発生する。出力制御部35は、動力発生装置22を制御するための制御信号C1を生成して、動力発生装置22に供給する。動力発生装置22は、制御信号C1に基づく出力を発生する。
リターダ28は、リターダ操作部17及びブレーキ制御部35のそれぞれと接続される。リターダ操作部17は、オペレータWMによる操作に応じた操作信号R4を生成して、リターダ28に供給する。リターダ28は、操作信号R4に基づく制動力を発生する。ブレーキ制御部35は、リターダ28を制御するための制御信号C4を生成して、リターダ28に供給する。リターダ28は、制御信号C4に基づく制動力を発生する。
ブレーキ装置13は、ブレーキ操作部25及びブレーキ制御部35のそれぞれと接続される。ブレーキ操作部25は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R2を生成して、ブレーキ装置13に供給する。ブレーキ装置13は、操作信号R2に基づく制動力を発生する。ブレーキ制御部35は、リターダ28あるいはブレーキ装置13を制御するための制御信号C4あるいは制御信号C2を生成して、リターダ28あるいはブレーキ装置13に供給する。リターダ28は、制御信号C4に基づく制動力を発生する。ブレーキ装置13は、制御信号C2に基づく制動力を発生する。以下の説明では、ダンプトラック1の前方に物体が存在して、ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合に、ブレーキ制御部35が、リターダ28に対して制御信号C4のみを生成する場合について説明する。
操舵装置14は、走行方向操作部15及び走行方向制御部35のそれぞれと接続される。走行方向操作部15は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R3を生成して、操舵装置14に供給する。操舵装置14は、操作信号R3に基づいて走行装置4の走行方向が変化するように前輪6Fの向きを変える。走行方向制御部35は、操舵装置14を制御するための制御信号C3を生成して、操舵装置14に供給する。操舵装置14は、制御信号C3に基づいて走行装置4の走行方向が変化するように前輪6Fの向きを変える。
(衝突の可能性の判断方法)
次に、ダンプトラック1と物体との衝突の可能性の判断方法の一例について説明する。本実施形態においては、ダンプトラック1と、そのダンプトラック1の前方に存在する物体とダンプトラック1との衝突の可能性の判断方法の一例について主に説明する。以下の説明においては、物体が、ダンプトラック1の前方に存在する他のダンプトラック1Fであることとする。本実施形態においては、ダンプトラック1がそのダンプトラック1の前方のダンプトラック1Fに追突する可能性の判断方法の一例について主に説明する。以下の説明においては、ダンプトラック1の前方のダンプトラック1Fを適宜、前方ダンプトラック1F、と称する。
積載状態検出装置11により、ベッセル3の積荷の積載状態が検出される。積載状態検出装置11の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、積載状態検出装置11の検出結果を取得する。本実施形態において、ベッセル3の積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の有無を含む。制御装置30は、ベッセル3に積荷が有るか否かを判断する。
次に、制御装置30により、ベッセル3の積荷の積荷状態に基づいてダンプトラック1(車両2)の減速度aが設定される。ダンプトラック1の減速度aとは、リターダ28が作動した場合におけるダンプトラック1の減速度(負の加速度)である。本実施形態において、ダンプトラック1の減速度aとは、リターダ28を含む制動装置の最大制動能力が発揮されるように制動装置が作動したときの、ダンプトラック1の減速度をいう。なお、ダンプトラック1の減速度aは、ダンプトラック1のスリップ等の発生を抑制できる範囲で制動能力が発揮できる減速度であってもよい。一般に、ダンプトラック1の重量が大きい場合、減速度aは小さい。ダンプトラック1の重量が小さい場合、減速度aは大きい。減速度aが小さいと、走行するダンプトラック1は停止し難い。減速度aが大きいと、走行するダンプトラック1は停止し易い。以下の説明において、リターダ28の最大制動能力が発揮されるようにリターダ28が作動される状態を適宜、フルブレーキ状態、と称する。
ダンプトラック1の重量とその重量のダンプトラック1の減速度aとの関係に関する情報は、実験又はシミュレーションにより事前に求めることができる。記憶部34には、実験又はシミュレーションによって求められた、積荷の重量とダンプトラック1の減速度aとの関係に関する情報が記憶されている。本実施形態において、記憶部34には、積荷状態のダンプトラック1の減速度a1と、空荷状態のダンプトラック1の減速度a2とが記憶されている。減速度a2は、減速度a1よりも大きい。
ベッセル3に積荷が有ると判断された場合、減速度a1が設定される。ベッセル3に積荷が無いと判断された場合、減速度a2が設定される。
走行状態検出装置10により、ダンプトラック1の走行状態が検出される。走行速度検出装置10Aにより、ダンプトラック1の走行速度Vtが検出される。走行方向検出装置10Bにより、ダンプトラック1の走行方向が検出される。進行方向検出装置10Cにより、ダンプトラック1の進行方向が検出される。走行状態検出装置10の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、走行状態検出装置10の検出結果を取得する。
次に、走行状態検出装置10の検出結果に基づいて、物体との衝突の可能性の判断に用いられる時間情報が算出される。本実施形態においては、所要停止距離Dsが算出される。また、走行速度Vtと所要停止距離Dsとに基づいて、停止距離通過時間Tsが算出される。
図10は、所要停止距離Ds及び停止距離通過時間Tsを説明するための図である。所要停止距離Dsについて説明する。図10に示すように、走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1の走行速度がVtであり、設定された減速度がaである場合において、ダンプトラック1が第1地点P1に位置するときにフルブレーキ状態になるようにリターダ28が作動された場合、ダンプトラック1は、第1地点P1の前方の第2地点P2で停止する。所要停止距離Dsは、リターダ28がフルブレーキ状態になるように作動された第1地点P1と、ダンプトラック1が停止可能な第2地点P2との距離である。第2地点P2では、当然ながら走行速度は0である。走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1の走行速度がVtであり、設定された減速度がaである場合、所要停止距離Dsは、以下の(1)式に基づいて導出される。
Ds=Vt(Vt/a)−(1/2)a(Vt/a)2
=(1/2a)Vt2 …(1)
したがって、減速度a1が設定された場合、
Ds=(1/2a1)Vt2 …(1A)
である。減速度a2が設定された場合、
Ds=(1/2a2)Vt2 …(1B)
である。
このように、本実施形態においては、走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1(車両2)の走行速度Vtと、設定された減速度aとに基づいて、第1地点P1とダンプトラック1が停止可能な第2地点P2との所要停止距離Dsが算出される。
次に、停止距離通過時間Tsについて説明する。停止距離通過時間Tsとは、ダンプトラック1が第1地点P1に存在する第1時点t1から、所要停止距離Dsを走行速度Vtで走行したときに第2地点P2に到達する第2時点t2までの時間をいう。すなわち、停止距離通過時間Tsとは、第1地点P1(第1時点t1)において走行速度Vtで走行するダンプトラック1が、ブレーキ装置13の作動なく、一定の走行速度Vtで所要停止距離Dsを走行したときの、その所要停止距離Dsを走行するのに要する時間をいう。停止距離通過時間Tsは、以下の(2)式に基づいて導出される。
Ts=Ds/Vt …(2)
以上により、所要停止距離Ds及び停止距離通過時間Tsのそれぞれが算出される。
物体検出装置12は、例えば、前方ダンプトラック1Fを検出する。物体検出装置12の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、物体検出装置12の検出結果を取得する。
物体検出装置12は、レーダ装置を含み、前方ダンプトラック1Fを検出可能である。物体検出装置12は、その物体検出装置12が設けられているダンプトラック1と、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを検出可能である。物体検出装置12は、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを検出し、その検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを取得する。
物体検出装置12の検出結果に基づいて、衝突の可能性の判断に用いられる時間情報が算出される。ダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達するまでの物体到達時間Taが算出される。
図11は、物体到達時間Taを説明するための図である。物体到達時間Taとは、ダンプトラック1が第1地点P1に存在するときの、そのダンプトラック1の物体検出装置12で検出された第1地点P1(第1時点t1)におけるダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの相対距離Drと相対速度Vrとに基づいて、第1時点t1から相対距離Drを相対速度Vrで走行したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する第3時点t3までの時間をいう。すなわち、相対距離Dr及び相対速度Vrを検出した時点を第1時点t1とし、その第1時点t1において検出された相対距離Drを相対速度Vrで相対移動したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する時点を第3時点t3としたとき、物体到達時間Taとは、第1時点t1から第3時点t3までの時間をいう。物体到達時間Taは、以下の(3)式に基づいて導出される。
Ta=Dr/Vr …(3)
このように、物体検出装置12で検出された第1時点t1におけるダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの相対距離Drと相対速度Vrとに基づいて、第1時点t1から相対距離Drを相対速度Vrで走行したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する第3時点t3までの物体到達時間Taが算出される。
衝突判断部31により、停止距離通過時間Tsと物体到達時間Taとに基づいて、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性が判断される。
衝突判断部31は、停止距離通過時間Tsと物体到達時間Taとを比較し、その比較の結果に基づいて、衝突の可能性を判断する。本実施形態において、衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」を実行する。演算「Ta−Ts」の結果に基づいて、第1時点t1からダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突するか否かが推定される。その推定された時間に基づいて、衝突の可能性が判断される。
演算の結果が「Ta−Ts≦0」である場合、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsと等しい時間あるいは停止距離通過時間Tsより短い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性が最も高いレベル1であると判断する。
演算の結果が「α≧Ta−Ts>0」である場合(ステップSA13、Yes)、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsよりも僅かに長い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性がレベル1に次いで高いレベル2であると判断する。数値αは、事前に定められた正の値である。
演算の結果が「Ta−Ts>α」である場合(ステップSA13、No)、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsよりも十分に長い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性が最も低いレベル3であると判断する。
このように、演算「Ta−Ts」の結果に基づいて、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突するか否かが推定され、その推定の結果に基づいて、衝突の可能性が判断される。また、推定の結果に基づいて、衝突の可能性(危険度)が複数のレベルに分類される。本実施形態においては、衝突の可能性が、レベル1、レベル2、及びレベル3に分類される。レベル1、レベル2、及びレベル3のうち、レベル1は、衝突の可能性が最も高いレベルであり、レベル2は、レベル1に次いで衝突の可能性が高いレベルであり、レベル3は、衝突の可能性が最も低いレベルである。
(ダンプトラックの制御方法)
次に、ダンプトラック1の制御方法の一例について説明する。本実施形態においては、ダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害を軽減するための制御方法の一例について主に説明する。
図12は、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す模式図である。図12は、直進状態で走行路HLを走行するダンプトラック1の一例を示す。ベッセル3に積荷が積み込まれる鉱山の積込場LPA及びベッセル3の積荷が排出される鉱山の排土場DPAの少なくとも一方から出発したダンプトラック1は、鉱山の走行路HLを走行する。走行路HLのダンプトラック1の走行において、オペレータWMにより、走行方向操作部15が操作される。操舵装置14は、走行方向操作部15の操作により生成された操作信号R3に基づいて、ダンプトラック1が走行路HLに沿って走行するように、ダンプトラック1の走行方向を調整する。
ダンプトラック1の衝突防止システム300Sによる衝突による被害を軽減するための処理は、走行路HLにおいて前方ダンプトラック1Fとの追突による被害を軽減するための処理を含む。図12に示すように、ダンプトラック1が直進状態において、前方ダンプトラック1Fが物体検出装置12によって検出され、衝突の可能性が高いと判断された場合、衝突防止システム300Sは、前方ダンプトラック1Fとの追突による被害を軽減するための処理を実行する。
ダンプトラック1が直進状態において、前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性が高い(レベル1である)と判断された場合、制御装置30は、前方ダンプトラック1Fとの衝突(追突)による被害を軽減するために、制御部35より制御信号Cを出力する。
制御部35は、リターダ28を作動させるために、ブレーキ装置13に制御信号C4を出力する。制御部35は、フルブレーキ状態でリターダ28が作動するように、リターダ28に制御信号C4を出力する。制御部35から供給された制御信号C4に基づいて、リターダ28のブレーキ処理が実行される。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減又はダンプトラック1が停止される。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
なお、衝突の可能性がレベル1であると判断された場合、制御部35は、動力発生装置22の出力が低減されるように、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C1に基づいて、動力発生装置22の出力低減処理が実行される。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減される。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
なお、衝突の可能性がレベル1であると判断された場合、制御部35は、リターダ28に制御信号C4を出力するとともに、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。すなわち、リターダ28のブレーキ処理と並行して、動力発生装置22の出力低減処理が行われてもよい。
衝突の可能性がやや高い(レベル2である)と判断された場合、制御部35は、警報装置21が警報を発生するように、警報装置21に制御信号C6を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C4に基づいて、警報装置21の警報発生処理が実行される。警報装置21は、音又は光を発生して、オペレータWMに注意喚起する。これにより、オペレータWMにより、衝突による被害の軽減のための操作が行われる。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
なお、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御部35は、表示装置20に制御信号C5を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C5に基づいて、表示装置20の表示処理が実行される。これにより、オペレータWMにより、衝突による被害の軽減のための操作が行われる。
なお、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御部35は、リターダ28が作動するように、制御信号C4を出力してもよい。例えば、制御部35から供給された制御信号C4に基づいて、フルブレーキ状態の制動力よりも小さい制動力が発生するように、リターダ28のブレーキ処理が実行されてもよい。
なお、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御部35は、動力発生装置22の出力が低減されるように、制御信号C1を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C1に基づいて、動力発生装置22の出力低減処理が実行される。
衝突の可能性が低い(レベル3である)と判断された場合、衝突による被害の軽減のための処理システム600の処理は行われない。
なお、ダンプトラック1が後進している場合、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突する可能性は低い。そのため、進行方向検出装置10Cの検出結果に基づいて、ダンプトラック1が後進していると判断された場合、衝突による被害の軽減のための処理システム600の処理が行われなくてもよい。
図13は、ダンプトラック1(走行装置4)が走行路HLのカーブを走行している状態の一例を示す模式図である。図13に示すように、鉱山の走行路HLにおいては、走行路HLの外側の領域(路肩)に土手HLSが設けられる場合が多い。以下の説明においては、走行路HLの路肩に設けられた土手HLSを適宜、路肩壁HLS、と称する。
路肩壁HLSの高さは、路面の凹凸の凸部の高さよりも高い。検出領域SLに路肩壁HLSが含まれるような場合、物体検出装置12は、その路肩壁HLSを障害物(物体)として認識する。物体検出装置12は、前方の物体の有無を検出するが、その物体が具体的に何であるのかについて具体的に判別することが難しいからである。
図13に示すように、走行路HLのカーブに路肩壁HLSが設けられている場合、ダンプトラック1が、路肩壁HLSに衝突することなく走行路HLのカーブに沿って走行しても、そのカーブを走行しているダンプトラック1の物体検出装置12の検出領域SLに路肩壁HLSが含まれる可能性がある。ダンプトラック1がカーブを走行するとき、ダンプトラック1と路肩壁HLSとの相対距離Drは短いことがある。このような場合、ダンプトラック1と路肩壁HLSとが衝突する可能性が低いにもかかわらず、衝突判断部31は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、ダンプトラック1と路肩壁HLSとの衝突の可能性が高い(レベル1又はレベル2である)と誤判断してしまう可能性がある。衝突判断部31が誤判断すると、衝突防止システム300Sによる衝突による被害の軽減のための処理の必要が無いにもかかわらず、衝突防止システム300Sによる衝突による被害の軽減のための処理が実行されてしまう。例えば、リターダ28および/またはブレーキ装置13を作動する必要が無いにもかかわらず、制御部35からブレーキ処理を実行させるための制御信号C4および/または制御信号C1が、リターダ28および/またはブレーキ装置13に出力されてしまう。プレーキ処理により、ダンプトラック1の走行が過度に制限されることとなり、ダンプトラック1の作業効率が低下する可能性がある。また、警報装置21が警報発生処理する必要が無いにもかかわらず、制御部35から警報発生処理を実行させるための制御信号C6が警報装置21に出力されてしまう。警報発生処理により、オペレータWMの作業に支障をきたす可能性がある。過度なブレーキ処理や警報発生処理は、オペレータWMにとって煩わしいと感じることも考えられる。
本実施形態においては、路肩壁HLSが設けられた走行路HLのカーブをダンプトラック1が走行するとき、物体検出装置12の検出領域SLに路肩壁HLSが配置され、その物体検出装置12の検出結果に基づいて衝突判断部31により衝突の可能性が高いと判断された場合でも、ダンプトラック1の走行が過度に制限されないように、又はオペレータWMの作業に支障をきたさないように、無効化部32によって、衝突防止システム300Sの少なくとも一部の処理が無効化される。
無効化部32は、直進状態からのダンプトラック1(走行装置4)の走行方向の変化量の検出値DVと、判定値設定部33で設定された判定値SVとに基づいて、衝突防止システム300Sの少なくとも一部の処理を無効化する。すなわち、ダンプトラック1のカーブの曲がり具合(旋回具合)に基づいて、ダンプトラック1が、走行路HLの曲率が大きいカーブを走行(旋回)しているとき、衝突防止システム300Sの少なくとも一部の処理が無効化される。換言すれば、直進状態におけるダンプトラック1の走行方向と、非直進状態におけるダンプトラック1の走行方向との差(角度)が大きい場合、衝突判断部31の誤判断による過度な走行の制限がされないように、衝突防止システム300Sの機能の少なくとも一部が発揮されないようにする。
判定値SVは、走行路HLのカーブの曲率に基づいて定められてもよい。鉱山の走行路HLが複数のカーブを有する場合、それら複数のカーブのうち、曲率が最も小さいカーブ(曲がり具合が最も緩いカーブ)に基づいて判定値SVが定められてもよい。直進状態から走行方向を所定量(所定角度)変化させた非直進状態において、ダンプトラック1がそのカーブを円滑に走行できるとき、その所定量(変化量)が判定値SVとして定められてもよい。なお、判定値SVは、走行路HLのカーブの曲率に代えて、カーブの半径に基づいて定められてもよい。つまり、判定値SVは、カーブの大きさに基づいて定められてもよい。
直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量(カーブの曲がり具合)は、ステアリングセンサを含む走行方向検出装置10Bによって検出される。無効化部32は、走行方向検出装置10Bの検出値DVと判定値SVとを比較して、検出値DVが判定値SVよりも大きいとき、衝突防止システム300Sの機能が発揮されないように、衝突防止システム300Sからの出力の少なくとも一部を無効化する。検出値DVは、基準角度に対する相対角度(操舵角)の値を含む。
鉱山の走行路HL(カーブ)の曲率(例えば、複数のカーブが存在するときには曲がり具合が最も緩いカーブの曲率)に基づいて判定値SVが定められることにより、そのカーブを含む走行路HLを走行するダンプトラック1において、カーブの路肩壁HLSが物体検出装置12の検出領域SLに含まれたり、衝突判断部31が誤判断したりした場合でも、衝突防止システム300Sの機能の少なくとも一部が無効化されるため、ダンプトラック1の作業効率の低下が抑制される。あるいは、過度なブレーキ処理や警報発生処理により、オペレータWMが煩わしいと感じることを抑制できる。
次に、本実施形態に係るダンプトラック1の制御方法の一例について、図14のフローチャートを参照して説明する。積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方から出発したダンプトラック1は、鉱山の走行路HLを走行する。走行路HLダンプトラック1が走行路HLを走行する際、オペレータWMにより、走行方向操作部15が操作される。操舵装置14は、走行方向操作部15の操作により生成された操作信号R3に基づいて、ダンプトラック1が走行路HLに沿って走行するように、ダンプトラック1の走行方向を調整する。
走行方向検出装置10Bは、ダンプトラック1の走行方向を検出する。ダンプトラック1の走行方向は、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量を含む。走行方向検出装置10Bの検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、走行方向検出装置10Bの検出結果を取得する(ステップSA1)。
判定値設定部33により、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量に関する判定値SVが設定される。無効化部32は、走行方向検出装置10Bで検出されたダンプトラック1の走行方向の変化量の検出値DVと判定値SVとに基づいて、衝突防止システム300Sによる衝突による被害の軽減のための処理の少なくとも一部を無効化するか否かを判断する。本実施形態においては、走行方向の変化量の検出値DVが判定値SVよりも大きいか否かが判断される(ステップSA2)。
ステップSA2において、検出値DVが判定値SV以下であると判断された場合(ステップSA2、No)、無効化部32は、衝突防止システム300Sの無効化を行わず、衝突防止システム300Sの機能を有効化する(ステップSA3)。
衝突判断部31は、積載状態検出装置11の検出結果と走行状態検出装置10の検出結果と物体検出装置12の検出結果とに基づいて、衝突の可能性を判断する(ステップSA4)。
ステップSA4において、衝突の可能性が高い(有る)と判断された場合(ステップSA4、Yes)、衝突による被害の軽減のための処理が実行される(ステップSA5)。例えば、衝突の可能性がレベル1であると判断された場合、制御部35から制御信号C1及び制御信号C2、制御信号C4の少なくとも一つが出力される。これにより、ブレーキ装置13のブレーキ処理、リターダ28のブレーキ処理、及び動力発生装置22の出力低減処理の少なくとも一つが実行される。衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御部35から制御信号C5及び制御信号C6の少なくとも一方が出力される。これにより、警報装置21の警報発生処理及び表示装置20の表示処理の少なくとも一方が実行される。なお、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御部35から制御信号C5と制御信号C6の両者を出力し、警報装置21の警報発生処理及び表示装置20の表示処理の両者が実行されるようにしてもよい。
ステップSA4において、衝突の可能性が低い(無い)と判断された場合(ステップSA4、No)、ステップSA1に戻り、上述の処理が実行される。
ステップSA2において、変化量の検出値DVが判定値SVよりも大きいと判断された場合(ステップSA2、Yes)、無効化部32は、衝突防止システム300Sからの出力の少なくとも一部を無効化する(ステップSA6)。
無効化部32は、物体検出装置12から出力される検出信号S2、制御部35から出力される制御信号C、及び電源装置60から出力される電力Pの少なくとも一つを無効化する。
検出信号S2が無効化されることにより、衝突判断部31に物体検出装置12の検出信号S2が出力されない。衝突判断部31は、ダンプトラック1と物体との衝突の可能性を判断しない。そのため、衝突判断部31の判断結果に基づく制御部35からの制御信号Cの出力は行われない。これにより、ダンプトラック1の走行が過度に制限されたり、警報が発生されたりすることがない。
制御部35から出力される制御信号Cが無効化されることにより、ダンプトラック1の走行が過度に制限されたり、警報が発生されたりすることがない。例えば、制御部35からリターダ28に出力される制御信号C4が無効化されることにより、不必要なブレーキ処理が行われない。制御部35から動力発生装置22に出力される制御信号C1が無効化されることにより、不必要な出力低減処理が行われない。制御部35から警報装置21に出力される制御信号C6が無効化されることにより、不必要な警報発生処理が行われない。
電源装置60から物体検出装置12に出力される電力Pが無効化されることにより、物体検出装置12から検出信号S2が出力されない。電力Pの無効化は、電力Pの供給停止を含む。電源装置60から制御部35に出力される電力Pが無効化されることにより、制御部35から制御信号Cが出力されない。
(作用)
以上説明したように、本実施形態によれば、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量の検出値DVと判定値SVとに基づいて、衝突防止システム300Sの少なくとも一部の処理(機能)を無効化するようにしたので、カーブにおいて非直進状態(旋回状態)で走行するダンプトラック1の物体検出装置12が物体を検出したとき、衝突防止システム300Sの少なくとも一部の処理が無効化されることにより、物体とダンプトラック1との衝突の可能性が低いにもかかわらず、ダンプトラック1の走行が過度に制限されたり、警報が発生されることが抑制される。直進状態で走行するダンプトラック1の物体検出装置12が物体を検出したとき、衝突防止システム300Sの処理が有効化されることにより、ダンプトラック1の走行が制限されたり、オペレータWMに対する警報が発生され、物体とダンプトラック1との衝突による被害が軽減される。これにより、前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害を軽減しつつ、ダンプトラック1の作業効率の低下を抑制することができる。
本実施形態においては、物体検出装置12の検出結果に基づいて衝突判断部31により衝突の可能性が高いと判断された場合においても、検出値DVが判定値SVよりも大きいときに無効化部32により衝突防止システム300Sの機能の少なくとも一部が無効化される。これにより、衝突判断部31の誤判断に基づく衝突防止システム300Sの不必要な処理の実行が抑制される。
本実施形態においては、ダンプトラック1は、ベッセル3に積荷が積み込まれる鉱山の積込場LPA及びベッセル3の積荷が排出される鉱山の排土場DPAの少なくとも一方から出発して鉱山の走行路HLを走行する。衝突防止システム300Sによる衝突による被害の軽減のための処理は、走行路HLにおいてダンプトラック1の前方を走行する前方ダンプトラック1Fとの追突による被害の軽減のための処理を含む。ダンプトラック1は、路肩壁HLSが設けられた走行路HLのカーブを走行する。判定値SVは、走行路HLのカーブの曲率に基づいて定められるため、鉱山の採掘現場において、ダンプトラック1は、過度な走行制限を受けることなく、あるいは、オペレータWMに過度な警報の発生を示すことなく、走行路HLを円滑に走行することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図15及び図16のそれぞれは、走行方向検出装置10Bによる走行方向の変化量の検出値(操舵角)DVと、無効化部32による無効化との関係の一例を示す模式図である。
本実施形態において、判定値SVは、第1判定値SV1と、第1判定値SV1よりも大きい第2判定値SV2と、を含む。判定値設定部33により、第1判定値SV1及び第2判定値SV2が設定される。検出値(操舵角)DVが基準値(基準角度)の場合、走行装置4は直進状態で走行する。操舵角が基準角度のときの検出値DVは0値である。検出値DVが基準値より大きい場合、走行装置4は非直進状態で走行する。第1判定値SV1及び第2判定値SV2は、基準値よりも大きい。検出値DVが第2判定値SV2の場合、検出値DVが第1判定値SV1の場合よりも、走行装置4は、大きい曲率で旋回することを示す。
走行方向操作部15によって操舵装置14が操作され、ダンプトラック1の走行方向が調整される。走行方向操作部15の操作により、走行方向の検出値DVが変化する。走行方向操作部15は、走行装置4が直進状態から非直進状態に変化するように、操舵装置14を操作することができる。走行方向操作部15は、走行装置4が非直進状態から直進状態に変化するように、操舵装置14を操作することができる。オペレータWMが走行方向操作部(ハンドル操作部)15を回して、ハンドルを切ることによって、走行装置4が直進状態から非直進状態に変化する。オペレータWMが走行方向操作部15を回して、ハンドルを戻すことによって、走行装置4が非直進状態から直進状態に変化する。
以下の説明においては、検出値DVが、基準値よりも大きく第1判定値SV1以下の値を適宜、低角度値、と称し、第1判定値SV1よりも大きく第2判定値SV2以下の値を適宜、中角度値、と称し、第2判定値SV2よりも大きい値を適宜、高角度値、と称する。
検出値DVが低角度値のとき、衝突防止システム300Sは有効化される(無効化されない)。検出値DVが高角度値のとき、衝突防止システム300Sは無効化される。以下の説明においては、衝突防止システム300Sからの出力が有効化された状態(無効化されない状態)を適宜、有効化状態、と称し、衝突防止システム300Sからの出力が無効化された状態を適宜、無効化状態、と称する。
図15に示すように、検出値DVが低角度値であり有効化状態において、その検出値DVが中角度値に変化した場合、有効化状態が維持される。検出値DVが中角度値であり有効化状態において、その検出値DVが高角度値に変化した場合、図15中に矢印で示すように無効化状態に変化する。すなわち、衝突防止システム300Sからの出力は、図15のラインL1で示すように変化する。
図16に示すように、検出値DVが高角度値であり無効化状態において、その検出値DVが中角度値に変化した場合、無効化状態を維持される。検出値DVが中角度値であり無効化状態において、その検出値DVが低角度値に変化した場合、図16中に矢印で示すように有効化状態に変化する。すなわち、衝突防止システム300Sからの出力は、図16のラインL2で示すように変化する。
走行装置4を直進状態から非直進状態に変化させるとき、図15のラインL1で示したように、検出値DVが低角度値から中角度値を経て高角度値に変化するように、走行方向操作部15が操作される。この場合、低角度値及び中角度値においては有効化状態であり、高角度値においては無効化状態である。
走行装置4を直進状態から非直進状態に変化させるとき、検出値DVが中角度値及び高角度値の一方から他方へ頻繁に切り替わる(振動する)可能性がある。例えば、オペレータWMによる走行方向操作部15の操作状況などに起因して、検出値DVが中角度値及び高角度値の一方から他方へ頻繁に切り替わる可能性がある。
図15及び図16に示すように、本実施形態においては、検出値DVが第2判定値SV2よりも大きくなってから第1判定値SV1以下になるまで、衝突防止システム300Sが無効化された状態が維持される。すなわち、検出値DVが高角度値になって無効化状態になった後、検出値DVが低角度値になるまで無効化状態が維持される。これにより、検出値DVが高角度値になって無効化状態になった後、その検出値DVが中角度値になっても無効化状態は維持される。したがって、検出値DVが中角度値及び高角度値の一方から他方に頻繁に切り替わる状況が発生しても、衝突防止システム300Sが無効化状態及び有効化状態の一方から他方へ頻繁に切り替わってしまうことが抑制される。例えば、走行方向操作部15の操作中に、制御部35からの制御信号C4に基づいてリターダ28のブレーキ処理が実行される状態と実行されない状態とが頻繁に切り替わったり、制御部35からの制御信号C6に基づいて警報装置21の警報発生処理が実行される状態と実行されない状態とが頻繁に切り替わったりすることが抑制される。
走行装置4を非直進状態から直進状態に変化させるとき、検出値DVが低角度値及び中角度値の一方から他方へ頻繁に切り替わる(振動する)可能性がある。例えば、オペレータWMによる走行方向操作部15の操作状況などに起因して、検出値DVが低角度値及び中角度値の一方から他方へ頻繁に切り替わる可能性がある。
図15及び図16に示すように、本実施形態においては、検出値DVが第1判定値SV1以下になってから第2判定値SV2よりも大きくなるまで、衝突防止システム300Sが無効化されない状態(有効化された状態)が維持される。すなわち、検出値DVが低角度値になって有効化状態になった後、検出値DVが高角度値になるまで有効化状態が維持される。これにより、検出値DVが低角度値になって有効化状態になった後、その検出値DVが中角度値になっても有効化状態が維持される。したがって、検出値DVが低角度値及び中角度値の一方から他方に頻繁に切り替わる状況が発生しても、衝突防止システム300Sが無効化状態及び有効化状態の一方から他方に頻繁に切り替わってしまうことが抑制される。例えば、走行方向操作部15の操作中に、制御部35からの制御信号C4に基づいてリターダ28のブレーキ処理が実行される状態と実行されない状態とが頻繁に切り替わったり、制御部35からの制御信号C6に基づいて警報装置21の警報発生処理が実行される状態と実行されない状態とが頻繁に切り替わったりすることが抑制される。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1判定値SV1及び第2判定値SV2が設定され、検出値DVが第2判定値SV2よりも大きくなってから第1判定値SV1以下になるまで、衝突防止システム300Sからの出力が無効化された状態が維持され、検出値DVが第1判定値SV1以下になってから第2判定値SV2よりも大きくなるまで、衝突防止システム300Sからの出力が無効化されない状態が維持されるようにすることで、オペレータWMによって走行方向操作部(ハンドル操作部)15が微操作されることなどにより、走行装置4が直進状態から非直進状態に変化するとき、又は非直進状態から直進状態に変化するときにおいて、検出値DVが中角度値と高角度値との間又は中角度値と低角度値との間で頻繁に切り替わる状況が発生しても、衝突防止システム300Sが無効化状態と有効化状態との間で頻繁に切り替わることが抑制される。これにより、ダンプトラック1の走行が円滑に行われ、オペレータWMが煩わしさを感じることも抑制される。
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図17は、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す図である。図17に示すように、ダンプトラック1の位置が、全方位測位システム(Global Positioning System:GPS)50を用いて検出される。全方位測位システム50は、GPS衛星50Sを有し、緯度、経度、及び高度を規定する座標系(GPS座標系)における位置を検出する。全方位測位システム50により、鉱山におけるダンプトラック1の位置が検出される。ダンプトラック1は、GPS受信機49を有する。制御装置30は、GPS受信機49の検出結果に基づいて、ダンプトラック1の位置を取得する。
制御装置30は、GPS受信機49の検出結果に基づいて、ダンプトラック1の走行方向を求めることができる。制御装置30は、GPS受信機49の検出結果に基づいて、ダンプトラック1が直進状態で走行しているか非直進状態で走行しているかを求めることができる。制御装置30は、GPS受信機40の検出結果に基づいて、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量を求めることができる。
以上説明したように、全方位測位システム50を使って、ダンプトラック1の走行方向を検出することができる。
なお、ダンプトラック1の走行方向(直進状態からの走行方向の変化量)を検出する走行方向検出装置が、ダンプトラック1に設けられたジャイロセンサを含んでもよい。ジャイロセンサは、ダンプトラック1の方位を検出可能である。走行方向検出装置が、ダンプトラック1の方位を検出するジャイロセンサと、ダンプトラック1の走行速度を検出する速度センサとを有し、ジャイロセンサの検出結果と速度センサの検出結果とに基づいて、鉱山の基準位置に対するダンプトラック1の相対位置を求めてもよい。
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図18は、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す図である。上述の実施形態と同様、ダンプトラック1が走行路HLに存在するときにおいて、検出値DVが判定値SV以下のときに衝突防止システム300Sは無効化されず、検出値DVが判定値SVよりも大きいときに衝突防止システム300Sは無効化される。
図18に示すように、ダンプトラック1が積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方に存在すると判断される場合、検出値DVが判定値SV以下のとき及び判定値SVよりも大きいときの両方で衝突防止システム300Sは無効化される。
積込場LPA及び排土場DPAに土手(壁)DWが設けられている場合が多い。ダンプトラック1の物体検出装置12は、その土手DWを物体(障害物)として認識する。ダンプトラック1は、積込場LPA及び排土場DPAにおいて、例えばスイッチバック動作など、大きい曲率で旋回したり、土手DWに沿って非直進状態で走行したりする場合がある。積込場LPA及び排土場DPAにおいて衝突防止システム300Sが有効化されていると、物体検出装置12が土手DWを検出することにより、ダンプトラック1のリターダ28にブレーキ処理を実行するための制御信号C4が制御部35から頻繁に出力されたり、ダンプトラック1の警報装置21に警報発生処理を実行するための制御信号C6が制御部35から頻繁に出力されたりする可能性がある。積込場LPA及び排土場DPAにおいてブレーキ処理が頻繁に実行されたり、警報発生処理が頻繁に実行されたりすると、ダンプトラック1の作業に支障をきたす可能性がある。
本実施形態においては、ダンプトラック1が積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方に存在するとき、検出値DVが判定値SV以下のとき及び判定値SVよりも大きいときの両方で、衝突防止システム300Sは無効化される。これにより、積込場LPA及び排土場DPAにおける作業が円滑に行われる。
積込場LPAの位置情報は既知情報である。制御装置30は、既知情報である積込場LPAの位置情報と、GPS受信機49の検出結果とに基づいて、ダンプトラック1が積込場LPAに存在するか否かを判断することができる。制御装置30は、ダンプトラック1が積込場LPAに存在すると判断したとき、ダンプトラック1の走行方向の変化量の検出値DVの大小にかかわらず、衝突防止システム300Sからの出力を無効化する。
排土場DPAの位置情報も既知情報である。制御装置30は、既知情報である排土場DPAの位置情報と、GPS受信機49の検出結果とに基づいて、ダンプトラック1が排土場DPAに存在するか否かを判断することができる。制御装置30は、ダンプトラック1が排土場DPAに存在すると判断したとき、ダンプトラック1の走行方向の変化量の検出値DVの大小にかかわらず、衝突防止システム300Sからの出力を無効化する。
なお、ダンプトラック1が、積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方に存在するかどうかを判断するために、全方位測位システム50を用いずに、以下のような無線通信システムを用いてもよい。例えば、積込場LPA及び排土場DPAの入り口等に、その場所が積込場LPAあるいは排土場PDAであることを示す無線信号(特定箇所を示す無線信号)を発する発信装置を設置する。ダンプトラック1には、その無線信号を受信可能な受信装置を搭載する。このようにして、ダンプトラック1が、積込場LPAあるいは排土場DPAに侵入する際、設置されている発信装置から、受信装置が特定箇所を示す無線信号を受信したならば、ダンプトラック1の走行方向の変化量の検出値DVの大小にかかわらず、衝突防止システム300Sからの出力を無効化する。このような無線通信システムを用いれば、全方位測位システム50を使用できない地域や場所においても、衝突防止システム300Sを搭載したダンプトラック1による、積込場LPA及び排土場DPAにおける作業を円滑に行うことができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方において衝突防止システム300Sの機能を無効化することにより、積込場LPA及び排土場DPAでの作業が円滑に行われる。
なお、上述の第1実施形態から第4実施形態において、ダンプトラック1は、車体5が前部と後部に分割され、それら前部と後部とが自由関節で結合されたアーティキュレート式のダンプトラックでもよい。
なお、上述の各実施形態において、ダンプトラック1が、自車の周囲の地形などを認識しながら自律走行可能なものや、走行路HLに関する位置情報を保持して自車の位置をGPS受信機等で確認しながら、その位置情報に沿って自動走行するものであってもよい。
なお、上述の各実施形態において、ダンプトラック1は、鉱山の採掘現場のみならず、例えば、ダムの建設現場等で用いられてもよい。