JP2016127771A - 回転電機ロータ - Google Patents
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Abstract
【課題】回転電機ロータにおいて、永久磁石をロータコアに安定して固定することである。【解決手段】回転電機ロータ10のロータコア12は、磁石ポケット部22と磁石ポケット部22から張出して設けられる溝部24とを含む磁石挿入孔20と、磁石ポケット部22に配置される永久磁石30であって、ロータコア12の周方向に沿った両側面を有し、一方側の側面が溝部24に向かい合い溝幅よりも長い周方向長さを有する永久磁石30と、溝部24に配置されるシート状の発泡材40であって、常温状態で溝部形状よりも小さい外形を有し、加熱によって溝部を形成する溝底部、溝両壁部、及び磁石ポケット部22に配置される永久磁石30の一方側側面で規制される空間内で膨張し永久磁石30の一方側側面に押付力を与えて永久磁石30の他方側側面を磁石ポケット部22の内壁面に押し付ける発泡材と、を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、回転電機ロータに係り、特に、磁石挿入孔に永久磁石を挿入して固定する回転電機ロータに関する。
埋め込み磁石型の回転電機では、磁極を形成する複数の永久磁石がロータの周方向に沿って埋め込まれる。
例えば、特許文献1には、積層鋼板で構成されるロータにおいて、積層鋼板の製造公差によって凹凸の孔内面となる磁石挿入孔に、永久磁石と共に発泡性接着シートを挿入し、その後加熱し、発泡性接着シートを膨張させて積層鋼板の製造公差を吸収することが述べられている。ここで、発泡性接着シートは、可撓性を与える固形エポキシ樹脂、熱硬化成分である液状エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤であるアミン硬化剤を含み、さらに発泡材料として加熱すると体積が急激に膨張する膨張カプセルが含まれる。
磁石挿入孔に永久磁石とともに接着シートを挿入して固定する方法では、永久磁石を挿入するための小さな孔形状に先に接着シートを入れ、残った隙間に永久磁石を挿入することが多い。磁石挿入時にはロータコアと永久磁石と接着シートが狭い空間の中で接触するので、接着シートがずれ、あるいは擦れや剥がれ等の損傷を生じ、場合によっては磁石挿入孔から接着シートがはみ出すことが生じる。これによって、ロータコアに対する永久磁石の固定力が不足し、ばらつき、回転電機特性が低下する。特許文献1の発泡性接着シートでは、上記の課題の他に、さらに、発泡によって永久磁石を押し付ける方向以外の隙間方向にも膨張するので、押付力が安定しないことが生じる。
本発明の目的は、永久磁石がロータコアに安定して固定される回転電機ロータを提供することである。
本発明に係る回転電機ロータは、ロータコアの軸方向に沿って設けられる磁石挿入孔であって、磁石ポケット部と磁石ポケット部から張出して設けられる溝部とを含む磁石挿入孔と、磁石ポケット部に配置される永久磁石であって、ロータコアの周方向に沿った両側面を有し、一方側の側面が溝部に向かい合い溝幅よりも長い周方向長さを有する永久磁石と、溝部に配置されるシート状の発泡材であって、常温状態で溝部形状よりも小さい外形を有し、加熱によって溝部を形成する溝底部、溝両壁部、及び磁石ポケットに配置される永久磁石の一方側側面で規制される空間内で膨張し永久磁石の一方側側面に押付力を与えて永久磁石の他方側側面を磁石ポケットの内壁面に押し付ける発泡材と、を有することを特徴とする。
本発明に係る回転電機ロータは、永久磁石が配置される磁石ポケット部と磁石ポケット部から張出して設けられ発泡材が配置される溝部とを含む磁石挿入孔を有する。発泡材は溝部、永久磁石は磁石ポケット孔にそれぞれ挿入することができ、磁石挿入時に接着シートがずれることも、擦れや剥がれ等の損傷を生じることも、磁石挿入孔から接着シートがはみ出すことも生じない。また、発泡材の膨張は、溝部を形成する溝底部、溝両壁部、及び磁石ポケットに配置される永久磁石の一方側側面で規制されるので、永久磁石を押し付ける方向に効果的に膨張し、安定した押付力で永久磁石を磁石ポケットの内壁面に押し付ける。これによって、永久磁石がロータコアに安定して固定される。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下に述べる寸法、形状、材質、磁極の極数等は、説明のための例示であって、回転電機ロータの仕様等により、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、車両搭載用回転電機を構成する回転電機ロータ10を示す図である。以下では、特に断らない限り、回転電機ロータ10をロータ10と呼ぶ。図1は、ロータ10の軸方向の端面から見た図である。図1には、ロータ10の周方向θ、径方向R、軸方向Zを示した。
ロータ10が用いられる回転電機は、車両が力行するときは電動機として機能し、車両が制動時にあるときは発電機として機能するモータ・ジェネレータで、三相同期型回転電機である。回転電機は、図1に示されるロータ10と、ロータ10の外周側に所定の隙間を隔てて配置され巻線コイルが巻回される円環状のステータとで構成される。図1ではステータの図示を省略した。
ロータ10は、ロータコア12と、ロータコア12に設けられる中心穴14に挿入固定されるロータ回転軸を含む。図1ではロータ回転軸の図示を省略した。ロータコア12は、所定の形状に成形された複数の積層鋼板を積層して形成される円環状の磁性体部品である。積層鋼板に代えて、磁性粉末を一体化成形したものを用いてもよい。ロータ10が回転電機に用いられるときには、ロータコア12と一体化されたロータ回転軸の軸方向の両端が軸受によって回転自在に支持され、図示されていないステータと協働してロータコア12と共にロータ回転軸が回転する。このように、回転電機においては、中心穴14に設けられるロータ回転軸がトルクを出力する出力軸となる。
ロータ10には、周方向にそって予め定められた数の磁極16が設けられる。図1の例では、極数は8である。
磁石挿入孔20は、各磁極16にそれぞれ設けられ、ロータコア12の軸方向に貫通する孔で、ロータコア12の磁極16を形成する永久磁石30と、永久磁石30を磁石挿入孔20において位置決めし固定するための発泡材40が配置される。磁石挿入孔20は、磁石ポケット部22と溝部24とを含んで構成される。図2は、磁石挿入孔20の詳細図である。
磁石ポケット部22は、磁石挿入孔20において、永久磁石30が配置される部分である。磁石ポケット部22の開口形状は、永久磁石30の外形に基づいて設定される。永久磁石30の軸方向に垂直な断面形状が矩形断面であるときは、磁石ポケット部22の開口形状は矩形形状に設定される。永久磁石30が矩形断面以外の断面形状を有するときは、その断面形状に従った開口形状に設定される。また、ロータコア12における磁路設計の観点から、永久磁石30の外形の断面形状を基本として若干の修正を加えた開口形状としてもよい。以下では、永久磁石30が矩形断面を有し、磁石ポケット部22の開口形状がθ方向にW1、R方向にD1の寸法を有する矩形形状を有するものとする。
溝部24は、磁石挿入孔20において、発泡材38が配置される部分である。ここで発泡材38は、加熱によって膨張する前の常温における外形を有するものを指す。なお、図1の発泡材40は、加熱によって膨張した後の形状のものである。溝部24は、磁石ポケット部22からR方向に張出して設けられる。R方向は、ロータ10が回転するときの遠心力が働く方向である。図1、図2では、磁石ポケット部22からロータ10の外周側に張出すものとしたが、磁石ポケット部22からロータ10の内周側に張出すものでもよい。
溝部24は、磁石ポケット部22の開口形状に接続する矩形形状の開口を有する。図2では、R方向に沿った溝両壁部26,27、θ方向に沿った溝底部28で形成される部分が、磁石ポケット部22のθ方向に沿った両側面のうち、R方向の外周側の一方側側面に接続する。接続部分で溝部24と磁石ポケット部22は空間的に一体化する。接続部分は、磁石ポケット部22の一方側側面のθ方向に沿ったほぼ中央部に配置される。
溝部24の溝底部28のθ方向に沿った長さW2は、磁石ポケット部22のW1よりも短く設定される。また、溝両壁部26,27のR方向に沿った長さD2は、磁石ポケット部22のD1よりも短く設定される。一例を上げると、W2はW1の1/2程度で、D2はD1の1/4から1/6程度である。これは一例であって、これ以外の設定でも構わない。
永久磁石30は、各磁極16の磁石挿入孔20の磁石ポケット部22にそれぞれ配置され、ロータコア12の磁極を形成する磁石である。図1では、永久磁石30が配置される磁極16の隣の磁極16に配置されるものをそれぞれ永久磁石29,31として示した。
永久磁石29,30,31はR方向に沿って着磁され、隣り合う磁極16では、永久磁石29,30、31の着磁方向は互いに逆方向である。例えば、永久磁石30においてロータコア12の外周側がN極、内周側がS極に着磁されるとすると、永久磁石29,30においては、ロータコア12の外周側がS極、内周側がN極に着磁される。かかる永久磁石30の材質としては、ネオジムと鉄とホウ素を主成分とするネオジム磁石、サマリウムとコバルトを主成分とするサマリウムコバルト磁石等の希土類磁石が用いられる。これ以外にフェライト磁石、アルニコ磁石等を用いてもよい。
永久磁石29,30,31はR方向に沿って着磁され、隣り合う磁極16では、永久磁石29,30、31の着磁方向は互いに逆方向である。例えば、永久磁石30においてロータコア12の外周側がN極、内周側がS極に着磁されるとすると、永久磁石29,30においては、ロータコア12の外周側がS極、内周側がN極に着磁される。かかる永久磁石30の材質としては、ネオジムと鉄とホウ素を主成分とするネオジム磁石、サマリウムとコバルトを主成分とするサマリウムコバルト磁石等の希土類磁石が用いられる。これ以外にフェライト磁石、アルニコ磁石等を用いてもよい。
永久磁石30の外形寸法は、溝部24のθ方向の寸法W2よりも大きく、磁石ポケット部22の開口形状の寸法よりも一回り小さく設定される。永久磁石30の外形寸法をθ方向にWM、R方向にDMとする(図3(b)参照)と、W1>WM>W2であり、D1>DMである。(W1−WM),(D1−DM)は、永久磁石30を磁石ポケット部22に挿入するときの余裕隙間である。これらの大きさは、寸法公差を考慮し、挿入作業が滑らかに行える最小寸法に設定することがよい。
発泡材38は、溝部24に配置され、軸方向に延びるシート状の発泡材で、常温状態で溝部形状よりも小さい外形を有し、加熱によって膨張する材料で構成される。発泡材38のシート状の軸方向に垂直な断面寸法は、溝部24の開口形状の寸法よりも一回り小さく設定される。常温状態の発泡材38の断面寸法をθ方向にWS、R方向にDSとする(図3(a)参照)と、W2>WSであり、D2>DSである。(W2−WS),(D2−DS)は、発泡材38を溝部24に挿入するときの余裕隙間である。これらの大きさは、寸法公差を考慮し、挿入作業が滑らかに行える最小寸法に設定することがよい。
かかる発泡材38としては、樹脂シートに膨張カプセルを含ませたものを用いることができる。樹脂シートとしては耐熱性と絶縁性を有する樹脂材料をシート状に成形したものを用いる。例えば、固形エポキシ樹脂シートを用いることができる。膨張カプセルは、加熱によって急激に体積が膨張するカプセルで、発泡性ウレタン樹脂カプセル等を用いることができる。発泡材38は液体状の熱硬化性樹脂ではないので、溝部24への挿入作業性がよい。
上記構成の作用について図3を用いて説明する。最初に、磁石挿入孔20の溝部24に、シート状の発泡材38が挿入される。以後の工程で溝部24から発泡材38がずれないように仮接着等を行ってもよい。図3(a)は、溝部24に発泡材38が挿入された状態を示す図である。
次に、磁石挿入孔20の磁石ポケット部22に永久磁石30が挿入される。磁石ポケット部22は、永久磁石30が滑らかに挿入できる大きさに設定されているので、永久磁石30の挿入時に、永久磁石30と発泡材38が接触することはほとんどなく、したがって、発泡材38の位置がずれることもなく、擦れが生じることもなく、損傷を生じることがない。図3(b)は、磁石ポケット部22に永久磁石30が挿入された状態を示す図である。図3(a)の手順と(b)の手順は、場合によって逆にしてもよい。あるいは、永久磁石30の一方側側面に位置決めを行って予め発泡材38を貼付してもよい。
磁石挿入孔20に永久磁石30と発泡材38が挿入されると、その状態のロータコア12を加熱する。加熱温度は、発泡材38に含まれる発泡カプセルの膨張温度以上とする。発泡カプセルの仕様によるが、加熱温度は例えば、100℃から150℃程度である。
発泡材38は加熱により膨張し、溝部24を形成する溝底部28、溝両壁部26,27と、及び磁石ポケット部22に配置されている永久磁石30の一方側側面32で規制される空間内で膨張する。永久磁石30の一方側側面32とは、発泡材38に向かい合う側面である。これにより、膨張した発泡材40は、永久磁石の一方側側面32に押付力Fを与えて、永久磁石30の他方側側面34を磁石ポケットの内壁面に押し付ける。この押付力Fによって、永久磁石30は磁石挿入孔20の中に固定される。なお、磁石ポケット部22の一方側内壁と永久磁石30の一方側側面32との隙間(D1−DM)にも膨張した発泡材40が侵入し、その隙間を埋める。これにより、永久磁石30を磁石挿入孔20の内部でがたつかない。
上記構成によれば、永久磁石30の挿入時に発泡材38を損傷することもなく、膨張した発泡材40は、溝部24のθ方向の全幅に渡って永久磁石30を磁石挿入孔20の他方側内壁に効果的に押し付けるので、永久磁石を安定的にロータコア12に固定することができる。
10 (回転電機)ロータ、12 ロータコア、16 磁極、20 磁石挿入孔、
22 磁石ポケット部、24 溝部、26,27 溝両壁部、28 溝底部、29,30,31 永久磁石、32 一方側側面、34 他方側側面、38 (常温状態の)発泡材、40 (加熱後の)発泡材。
22 磁石ポケット部、24 溝部、26,27 溝両壁部、28 溝底部、29,30,31 永久磁石、32 一方側側面、34 他方側側面、38 (常温状態の)発泡材、40 (加熱後の)発泡材。
Claims (1)
- ロータコアの軸方向に沿って設けられる磁石挿入孔であって、磁石ポケット部と磁石ポケット部から張出して設けられる溝部とを含む磁石挿入孔と、
磁石ポケット部に配置される永久磁石であって、ロータコアの周方向に沿った両側面を有し、一方側の側面が溝部に向かい合い溝幅よりも長い周方向長さを有する永久磁石と、
溝部に配置されるシート状の発泡材であって、常温状態で溝部形状よりも小さい外形を有し、加熱によって溝部を形成する溝底部、溝両壁部、及び磁石ポケットに配置される永久磁石の一方側側面で規制される空間内で膨張し永久磁石の一方側側面に押付力を与えて永久磁石の他方側側面を磁石ポケットの内壁面に押し付ける発泡材と、
を有することを特徴とする回転電機ロータ。
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