本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
まず、本実施形態の電力系統安定化装置10の例について、入力と出力と処理からなる全体構成の例を図1で説明し、次に電力系統100と部分電力系統101と中央安定化装置210と電力系統安定化装置10と故障検出装置150と計測装置44aと発電機制御装置160のハード構成を図2で説明する。
図1は、本実施形態の電力系統安定化装置10の全体構成の一例を示すブロック図である。図1を参照すると、電力系統安定化装置10は、発電機位相差計算部30aと、発電機エネルギー計算部31aと、閾値判定部32と、制御指令部33を有している。また、電力系統安定化装置10は、発電機位相データD20と、発電機位相差データD2(不図示)と、発電機出力データD1と、故障データD6と、閾値および制御データD3と、判定結果データD7とを保持し、発電機110aを制御する発電機制御装置160に対して制御指令データD5を送信する。
電力系統安定化装置10における入力データは、発電機位相データD20と、発電機位相差データD2と、発電機出力データD1と、故障データD6と、閾値および制御データD3である。
電力系統安定化装置10は、故障発生前後の発電機位相データD20から発電機位相差データD2を算出し、発電機出力データD1と算出した発電機位相差データD2を用いて発電機エネルギーを計算する。ここで、閾値および制御データD3は、中央安定化装置210で計算され、電力系統安定化装置10に通知されるデータであり、故障の閾値判定を行うための閾値と、どの箇所の故障時に、どの制御をするかという情報が含まれている。どのようにして閾値を定めるかについては中央安定化装置210の説明にて後述する。電力系統安定化装置10は、閾値および制御データD3と、算出した発電機エネルギーを用いて閾値判定を行い、判定結果に基づいて、発電機110aおよびそれを含む発電所に接続する発電機制御装置160への制御指令データD5を計算し、送信する。
電力系統安定化装置10の発電機位相差計算部30aでは、故障発生前後の発電機位相データD20を用いて、発電機位相差D2を計算する。また、電力系統安定化装置10の発電機エネルギー計算部31aでは、故障データD6と発電機位相差D2と発電機出力データD1を用いて、発電機エネルギーを計算する。また、電力系統安定化装置10の閾値判定部32では、閾値および制御データD3と発電機エネルギーを用いて、発電機エネルギーが閾値を超過しているか否かを判定する。この発電機エネルギーは、発電機を加速あるいは減速させるエネルギーとなるので、加速を表す指標(加速指標)といえる。また、電力系統安定化装置10の制御指令部33では、その閾値判定結果と閾値および制御データD3から、適切な制御内容を選択し、その制御内容の制御指令データD5を発電機制御装置160に送信するとともに、判定結果データD7を生成する。例えば、制御内容が電源遮断制御(電制)であれば、前記制御指令を受けた発電機制御装置160は、前記制御指令に従い、電力系統100から遮断される。
なお、上述した発電機位相差の計算は、電力系統安定化装置10ではなく外部装置が行うことにしてもよい。
また、発電機位相データD20、発電機出力データD1、故障データD6、閾値および制御データD3の各データは、必要に応じて取得することにしてもよいし、予め所定のデータベースに保存しておくことにしてもよい。
また、ここで制御指令として電源遮断制御(電制)を例示したが、それ以外に負荷遮断制御(負制)、調相設備制御などがある。
図2は、電力系統安定化装置10のハードウェア構成と、電力系統の全体構成図の例である。図2には、電力系統100と、その部分電力系統101と、中央安定化装置210と、電力系統安定化装置10と、故障検出装置150とが示されている。ここでは計測装置44aと発電機制御装置160は部分電力系統101内部に示されている。
電力系統100は、ブランチ(線路)140aおよびノード(母線)120aを介してそれぞれ接続する、発電機110aと変圧器130aと計測装置44aと故障検出装置150と図には書いていないが負荷やその他計測装置や制御装置のいずれか又は複数で構成される。
電力系統100には1または複数の部分電力系統101が含まれている。部分電力系統101は、ノード120aを介してそれぞれ接続する、発電機110aとブランチ140aと変圧器130aとノード121aと計測装置44aと発電機制御装置160のいずれか又は複数で構成される。
ここで、前記発電機110aの例は、火力発電機などの緊急時には電力系統100から遮断してもよい発電機である。電力系統安定化装置10によって制御される発電機制御装置160は、この発電機110aを制御対象として制御することを前提としている。しかし、電力系統安定化装置10が過渡安定度のみならず、その他の電圧安定度および周波数安定度を維持するための制御を行う場合、直接または間接的に電源や負荷やバッテリーやその他の制御機器を制御対象として制御することとなってもよい。
前記負荷は、需要家において制御することを前提としない電力を消費するだけのエアーコンディショナーあるいは冷蔵庫あるいは洗濯機等の家電製品等と、制御対象とすることを前提とするヒートポンプ等の可制御負荷とを含む。前記制御することを前提としない装置も宅内エネルギー管理システム(HEMS:Home Energy Management System)などの電力を用いる機器と通信を行うホームサーバを介して制御することにしてもよい。電力系統安定化装置10が負荷を制御する場合、個々の負荷となる機器毎に制御してもよく、また個々の需要家毎にその負荷を制御してもよく、また複数の負荷の集合に対して制御を行うことにしてもよい。更に、電力系統安定化装置10は、集合住宅やビルのエネルギー管理を、委託を受けて提供するアグリゲータを介して、負荷を制御してもよい。
また、前記バッテリーの例は、充放電可能な二次電池、EVの蓄電池、フライホイール等である。
ここで、計測装置44aの例としては、ノード電圧V、ブランチ電流I、力率Φ、有効電力P、無効電力Q、のいずれか一つまたは複数を計測する装置(VT(Voltage Transformer)やPT(Potential Transformer)やCT(Current Transformer))である。この計測装置44aは、データ計測箇所識別IDや計測装置の内蔵タイムスタンプを含んだデータを送信する機能を備えたテレメータ(TM:Telemeter)などである。
なお、計測装置44aには、GPSを利用した絶対時刻付きの電力情報(電圧のフェーザ情報)を計測する装置や、位相計測装置(PMU:Phasor Measurement Units)や、他の計測機器が含まれていてもよい。
また、図2では、前記計測装置44aは、電力系統安定化装置10の外部にあるように描いたが、発電機制御装置160や電力系統安定化装置10の内部に含まれていてもよい。
ここで、故障検出装置150の例は、不足電圧リレーなどの故障検出リレーである。ここで、発電機制御装置160の例は、発電機を一台(一軸)または複数台(複数軸)制御可能な発電所に併設された制御盤である。この制御盤は電力系統安定化装置10などから制御指令を受ける端末装置であるため、端局装置とも呼ばれる。
ここで、図3を参照して、中央安定化装置210と電力系統安定化装置10と故障検出装置150と計測装置44aと発電機制御装置160の通信ネットワーク300を介して送受信する各種データについて説明する。図3は、電力系統安定化装置10と中央安定化装置210と故障検出装置150と計測装置44aと発電機制御装置160の間で送受信される情報の概略の流れの一例を示す図である。中央安定化装置210は、通信ネットワーク300を介して電力系統安定化装置10の通信部13aと接続し、情報53(閾値および制御データD3)を電力系統安定化装置10に送信し、電力系統安定化装置10から情報57(判定制御結果データD7)を受信する。
また、電力系統100に接続する故障検出装置150は、やはり通信ネットワーク300を介して電力系統安定化装置10と接続し、電力系統安定化装置10に情報56(故障データD6)を送信する。ここで、故障検出装置150が送信する故障データD6には、故障の箇所と様相が含まれる。様相は、故障の状態を示す情報であり、閾値判定が可能な値を含む。電力系統安定化装置10は、これを閾値および制御データD3と照らし合わせて閾値判定し、その判定結果に基づいて制御を実施する。
また、部分電力系統101の発電機110aと母線121aと変圧器130aと母線120aとブランチ140bを介して接続する電力系統安定化装置10には、やはり通信ネットワーク300を介して計測装置44aが接続し、電力系統安定化装置10に対して情報51(発電機出力データD1)および情報52(発電機位相データD20)を送信する。
また、部分電力系統101の発電機110aに制御指令を送る発電機制御装置160は、やはり通信ネットワーク300を介して電力系統安定化装置10と接続し、電力系統安定化装置10から情報58(制御指令データD8)を受信する。
なお、図3に示された各種データをやりとりするときには、本来のデータに加えて、データを識別するための固有番号と、タイムスタンプとを含むフォーマットでやりとりされてもよい。
図2に戻り、電力系統安定化装置10の構成について説明する。
電力系統安定化装置10は、表示部11a、キーボードやマウス等の入力部12a、通信部13a、コンピュータや計算機サーバ(CPU:Central Processing Unit)14a、メモリ15a、各種データベース(発電機位相データベース20と発電機位相差データベース22と発電機出力データベース21と故障データベース26aと閾値および制御データベース23aと判定結果データベース27aと制御指令データベース25とプログラムデータベース28a)を含んでおり、それらがバス線43aに接続されている。
表示部11aは、例えば、ディスプレイ装置として構成される。あるいは表示部11aは、例えば、ディスプレイ装置に代えて、またはディスプレイ装置と共に、プリンタ装置または音声出力装置等を用いる構成でもよい。
入力部12aは、例えば、キーボードスイッチ、マウス等のポインティング装置、タッチパネル、音声指示装置等の少なくともいずれか一つを備えて構成できる。
なお、表示部11aおよび/または入力部12aは必ずしもある必要はない。
通信部13a、通信ネットワーク300に接続するための回路及び通信プロトコルを備える。
CPU14aは、プログラムデータベース24aから所定のコンピュータプログラムを読み込んで実行する。CPU14aは、一つまたは複数の半導体チップとして構成してもよいし、または、計算サーバのようなコンピュータ装置として構成してもよい。
メモリ15aは、例えば、RAM(Random Access Memory)として構成され、プログラムデータベース28aから読み出されたコンピュータプログラムを記憶したり、各処理に必要な計算結果データ及び画像データ等を記憶したりする。メモリ15aに格納された画面データは、表示部11aに送られて表示される。表示される画面の例は後述する。
ここで、図4を参照して、プログラムデータベース28aの記憶内容を説明する。図4は、電力系統安定化装置10のプログラムデータの一例を示す図である。この例では、プログラムデータベース28aには、発電機位相差計算プログラムP10と、発電機エネルギー計算プログラムP20と、閾値判定プログラムP30と、制御指令送信プログラムP40が格納されている。
図2に戻り、CPU14aは、プログラムデータベース28aからメモリ15aに読み出された計算プログラム(発電機位相差計算プログラムP10と、発電機エネルギー計算プログラムP20と、閾値判定プログラムP30と、制御指令送信プログラムP40)を実行して、発電機電圧位相差の計算、発電機エネルギーの計算、閾値判定計算、制御指令値の計算、表示すべき画像データの指示、各種データベース内のデータの検索等を行う。
メモリ15aは、表示用の画像データ、制御データ、制御結果データ等の計算一時データ及び計算結果データを一旦格納するメモリであり、CPU14aによって必要な画像データを生成して表示部11a(例えば表示ディスプレイ画面)に表示する。なお、電力系統安定化装置10の表示部11aは、各制御プログラムやデータベースの書き換えを行うためだけの簡単な画面だけであってもよい。
図2を見て分かるように、電力系統安定化装置10には、大きく分けて8つのデータベースが格納される。プログラムデータベース28aを除く、発電機位相データベース20と、発電機出力データベース21と、発電機位相差データベース22と、閾値および制御データベース23aと、制御指令データベース25と、故障データベース26aと、判定結果データベース27aについて以下に説明する。
発電機位相データベース20には、発電機位相データD20として、電力系統100と部分電力系統101を接続するノード120aにおける電圧位相角が記憶されている。なお、電圧位相角は、PMUやGPSを利用した計測機器を利用して計測したものでもよい。
発電機出力データベース21には、発電機出力データD1として、電力系統100と部分電力系統101を接続するノード120aに接続するブランチ140aの線路潮流である、発電機または発電所の出力が記憶されている。VTやPTで計測した電流Iと電圧Vから線路潮流Pを計算することで、発電機または発電所の出力が計測される。発電機または発電所の出力は、発電機の軸毎の出力でもよいし、発電所の合計出力でもよい。
発電機位相差データベース22には、発電機位相データベース20に格納された、電力系統100と部分電力系統101を接続するノード120aにおける電圧位相角を用いて発電機位相差計算部30aによって計算される、ノード120aの発電機位相差データD2が記憶されている。
ここで、図5のデータを参照する。図5は、ノード120aの発電機位相差D2の一例である。この例では、箇所と時間断面毎に発電機位相差データD2が記憶されている。発電機位相差データD2の計算方法については、後述する。
閾値および制御データベース23aには、閾値および制御データD3が記憶されている。ここで、図6のデータを参照する。図6は、各故障箇所に対する故障様相と制御対象と閾値がそれぞれ記憶されている。なお、図6には記載されていないが、閾値は、時間が区切られて一つの故障に対して一つまたは複数が存在してもよい。また、制御の時限は予め設定されているため図6には記載していないが、制御は予め定められた時限で行われる。
また、制御対象は基本的には発電機一台(一軸)であるが、複数台であってもよい。
また、図6には記載されていないが、制御データには、後述する第一段制御データD11も記憶されている。
制御指令データベース25には、閾値超過時に発せられる制御指令データD5として、電力系統安定化装置10から発電機制御装置160に送信される、例えばCB(Circuit Breaker:遮断器)開放信号などが記憶されている。
故障データベース26aには、故障検出装置150から電力系統安定化装置10に送信される故障データD6が記憶されている。故障データD6には、故障の箇所と、様相が記憶されている。電力系統安定化装置10は、この故障データD6を閾値および制御データD3と照らし合わせて閾値判定を行い、実施する制御内容を決定する。
判定結果データベース27aには、判定結果データD7が記憶されている。ここで、図7のデータを参照する。図7には、各時刻に、どのような動作が発生したか、またその動作の具体的な内容はどのようなものかが記録されている。例えば、どの時刻に、どのような故障が発生したか、どの時刻に、どのようなデータの閾値判定の動作で閾値超過が発生したか、どの時刻にどのような制御が行われたか、などが記録されている。また、図7には記載されていないが、判定に使用された発電機エネルギーの値も記録される。なお、安定度が閾値を超過しなかった場合や、制御が失敗した場合、判定結果データD7にはその旨が記録される。また、電力系統安定化装置10は判定結果データD7を中央安定化装置210に通知する。
次に、電力系統安定化装置10の計算処理内容について図8を用いて説明する。図8は、電力系統安定化装置10の全体処理の一例を示すフローチャートである。
まずは処理の流れを簡単に説明する。
電力系統安定化装置10は、計測装置44aから受信した発電機出力データD1と発電機位相データD20を用いて発電機位相差を計算し、計算結果である発電機位相差データD2を記憶する。更に、電力系統安定化装置10は、計測装置44aから受信した発電機出力データD1と、算出した前期発電機位相差データD2を用いて、発電機エネルギーを計算してメモリ15aに蓄積する。更に、電力系統安定化装置10は、計算した発電機エネルギーを、中央安定化装置210から受信した閾値および制御データD3の閾値と比較することで、閾値より発電機エネルギーが超過したか否かの判定を行う。
超過した場合には、電力系統安定化装置10は、閾値および制御データD3と、故障検出装置150から受信する故障データD6を用いて、制御指令を選択し、発電機制御装置160に制御指令データD8を送信するとともに、中央安定化装置210に判定結果データD7を送信し、計算終了となる。その際、各種計算結果や計算途中でメモリに蓄積されるデータを中央安定化装置210に送って、その画面に逐次表示することにしてもよい。これにより、運用者が電力系統安定化装置10の運用状況を容易に把握できる。制御指令データD8は、CB開放信号などの制御指令のデータであり、端局である制御盤に送られる。
また、電力系統安定化装置10において、それらのデータを基に、監視中や閾値超過や制御実施などの運転状況を画面に表示してもよい。これにより、運用者が電力系統安定化装置10の運用状況を容易に把握できる。更に、発電機出力を表示したり、発電機エネルギーおよび/または閾値判定結果を表示したりしてもよい。
なお、制御が実施されるまで、各種データの受信から制御指令および判定結果を夫々送信するまでの状況の画面表示を繰り返す。
以上の処理の詳細を、図8を用いて詳細に説明する。
図8を参照し、まず、電力系統安定化装置10は、ステップS1では、発電機位相差計算と発電機エネルギー計算、そして、閾値判定および制御指令の選択に必要なデータの受信を行う。その際、故障データD6は故障検出装置150から自動受信する。また、発電機出力データD1と発電機位相データD20は計測装置44aから一定周期で自動受信し、自動記憶する。また、閾値および制御データD3は、中央安定化装置210から一定周期で自動受信し、自動記憶する。
次に、ステップS2では、電力系統安定化装置10は、前記ステップS1で受信した発電機位相データD20を用いて、発電機位相差計算を行い、発電機位相差データD2を計算し、記憶する。
ここで、図9を用いて、発電機位相差計算の流れを説明する。図9は、発電機位相差計算部の処理の一例を説明するためのフローチャートである。図9は、ステップS11〜S19を通して、発電機位相データD20を読込み、故障発生時には、発電機位相データD20から発電機位相差データD2を計算する方法を示している。以上の処理の流れを以下に詳細に説明する。
図9を参照し、まず、電力系統安定化装置10は、ステップS11で、ステップS1で受信した発電機位相データD20をメモリ15aに読込む。次に、ステップS12で、電力系統安定化装置10は、一定時間の位相平均値を継続的に算出してその時間変化を調べ、その結果から故障が生じたか否かを判定する。この例では、その位相平均値の時間変化が発電機位相差データD2となる。
また、故障判定では、発電機位相データD20の時間変化、その他の受信データである発電機出力データD1やノード電圧Vや電流Iなどの変化量(電圧の落ち込み)などの一つまたは複数から判断してもよい。例えば、電圧の振幅が低下し、かつ、位相が規定値よりも大きくなったことで、故障が発生したと判定してもよい。
ステップS12の故障判定で故障がないと判定された場合には、ステップS11に戻る。
故障があった場合、ステップS13では、電力系統安定化装置10は、故障によって過渡的に電圧が低下し、位相を正確に計測できていない領域を計算から除外するため、その計算除外時間を位相の変化し始めの時刻から変化終わりの時刻に基づき計算する。例えば、位相の時間に対する変化率がある閾値を一定期間上回る期間があったら、その期間を、位相の変化し始めから変化終わりとすることにしてもよい。
ステップS14では、電力系統安定化装置10は、ステップS13で計算した計算除外時間のサンプリングの一刻み前から所定数刻み前までの発電機位相の平均を計算することで、故障発生前の発電機位相を計算する。次にステップS15では、電力系統安定化装置10は、ステップS13で計算した計算除外時間の一刻み後から所定数刻み後までの発電機位相の平均を計算することで、故障発生後の発電機位相を計算する。
ここで、図10にステップS12〜S15までの計算の例を示す。図10は、故障直後の発電機位相差の計算の一例を示す図である。
ステップS12の故障判定では、電力系統安定化装置10は、図10に示すように、予め設定した一定時間Tの位相平均値が、急激に変化していることからその期間に故障が発生していると判定する。また、ステップS13の計算除外時間の計算は、障発生時間前後の位相の変化し始めから変化終わりを予め設定した余裕をもって計算する。図10に示すように、ここでは、T0が計算除外時間であり、ある閾値以上の変化が起きていない、連続の時間領域である。また、ステップS14の故障発生前の発電機位相の計算は、図10に示すように、一定時間T1における発電機電圧位相角δvを平均することによりδv1の平均値を求め、得られたδv1の一定時間T1の平均値を故障発生前の発電機位相とする。また、ステップS15の故障発生後の発電機位相の計算は、図10に示すように、一定時間T2における発電機電圧位相角δvを平均することによりδv2の平均値を求め、得られたδv2の一定時間T2の平均値を故障発生後の発電機位相とする。
図9に戻って、ステップS16では、電力系統安定化装置10は、ステップS14およびS15で求めた、故障発生前の発電機位相と故障発生後の発電機位相から、(1)式によって、発電機位相差データD2の初期ステップ分Δδv1を求め、記憶する。
次に、ステップS17では、電力系統安定化装置10は、故障発生後の発電機位相の次の周期に含まれる複数の発電機位相、すなわち、ステップS14で計算に用いた発電機位相よりも一刻み後から所定数刻み後までの発電機位相の平均を計算することにより、次の周期の発電機位相を計算する。
ステップS18では、電力系統安定化装置10は、ステップS17で算出した次の周期の発電機位相と、ステップS14で算出した故障発生後の発電機位相との差分(時間偏差)から発電機位相差データD2を計算し、メモリに格納する。
ここで、図11にステップS17〜S18までの計算の例を示す。図11は、発電機位相差の計算の一例を示す図である。
ステップS17の次の周期の発電機位相の計算は、図11に示すように、一定時間T3における発電機電圧位相角δvを平均することによりδv3の平均値を求め、得られたδv3の一定時間T3の平均値を次の周期の発電機位相とする。なお、次々周期の発電機位相の計算も、同様にして、一定時間T4における発電機電圧位相角δvを平均することによりδv4の平均値を求め、得られたδv4の一定時間T4の平均値を次々周期の発電機位相とする。
また、ステップS18では、電力系統安定化装置10は、ステップS17で求めた、故障発生後の発電機位相と次の周期の発電機位相の対、次の周期の発電機位相と次々周期の発電機位相の対、それぞれから、(2)式および(3)式によって、発電機位相差データD2の次のステップ分Δδv2および次々ステップ分Δδv3を求め、メモリに記憶する。
なお、図10および図11の発電機電圧位相角δvは、発電機電圧位相角δvの過渡的変化から高調波を取り除くために、フィルタなどを通すため、フィルタによる時間遅れが考慮され計算される。
図9に戻って、ステップS19では、電力系統安定化装置10は、発電機位相差データD2の計算の開始から一定期間経つまでであれば、ステップS17に戻り、一定期間経った後であれば、終了となりステップS11に戻る。なお、発電機位相差データD2は故障と判定されない場合も、計算され、一定周期分メモリに保持され、更新されている。また、発電機位相差データD2の計算は、計測装置44aで実施してもよいし、電力系統安定化装置10で実施してもよい。また、ここでは発電機の位相によって故障判定を行ったが、発電機の電圧または電流、あるいは故障リレーから発せられる信号など他の指標により故障判定を行ってもよい。
ここで図8に戻り、ステップS3では、電力系統安定化装置10は、前記ステップS2で計算した発電機位相差データD2と、発電機出力データD1と、閾値および制御データD3とを用いて、発電機エネルギー計算を行い、算出した発電機エネルギーをメモリに記憶する。
ここで、図12を用いて、発電機エネルギー計算の流れを説明する。図12は、発電機エネルギー計算部の処理の一例を示すフローチャートである。
図12は、ステップS20〜S22を通して、発電機出力データD1と発電機位相差データD2を用いて、発電機出力の発電機電圧位相角の時間偏差を積分し、発電機エネルギーを計算する方法を示している。以上の処理の流れの詳細を以下に説明する。なお、以下、発電機位相差データD2を電圧位相角時間偏差Δδvとも呼ぶ。
まずステップS20では、電力系統安定化装置10は、ステップS1で受信した発電機出力データD1、およびステップS2で計算した発電機位相差データD2をメモリ15aに読込む。次に、ステップS21では、電力系統安定化装置10は、積分計算として、一定の時間刻み毎に発電機出力の発電機電圧位相角時間偏差でなす短冊面積を積算し、発電機エネルギーを計算する。
ここで、図13を用いてステップS20〜S21までの計算の一例について説明する。図13は、発電機エネルギーの計算の一例を説明するための図である。
ステップS20における各データの読込みは、図13に示すように、発電機出力Pg=発電機初期出力Pg0で電圧位相角時間偏差Δδv=0の点から始まり、所定の監視打ち切り時間が経過するまで行われる。なお、この監視打ち切り時間は事前に設定される。
また、ステップS21の発電機出力を発電機電圧位相角時間偏差で積分し発電機エネルギーを計算するステップでは、図13に示すように、積分計算として、一定の時間刻み毎に、その一定の時間と発電機出力の発電機電圧位相角時間偏差とでなす短冊の面積を積算していく。発電機出力Pgが発電機初期出力Pg0よりも低い領域では、面積は加速エネルギーとして計算され、発電機出力Pgが発電機初期出力Pg0よりも高い領域では、面積は減速エネルギーとして計算される。なお、発電機エネルギーの計算は、短冊面積を積算する積分ではなく、台形面積を積算する積分などで行ってもよい。
図13に示すような発電機出力Pgと電圧位相角時間偏差Δδvの場合の加速エネルギーおよび減速エネルギーを(4)式および(5)式によって求めることができる。なお、発電機出力Pgは発電所に含まれる複数の発電機の出力の合計である発電所出力でもよい。また、ここでは、電圧位相角時間偏差として発電機の母線の電圧位相角の時間偏差を用いているが、電圧位相角時間偏差は、発電所母線の電圧位相角の時間偏差でもよい。また、距離と伝達遅延時間の関係を考慮し、電圧位相角時間偏差として、発電機または発電所の母線の電圧位相と、その発電機から所定距離にある母線の電圧位相との差を用いてもよい。
なお、ここでは加速エネルギーをEA’とし、減速エネルギーをED’とした。
図12に戻って、ステップS22では、電力系統安定化装置10は、本発電機エネルギー計算の処理を開始してから一定期間経つまでであればステップS20に戻り、一定期間経った後であれば、終了となりステップS4に移行する。
ここで図8に戻り、ステップS4では、電力系統安定化装置10は、前記ステップS3で計算した発電機エネルギーと、閾値および制御データD3を用いて、閾値判定を行い、発電機エネルギーが閾値を超過するか否かを判定する。なお、発電機エネルギーElimit’は(6)式で算出される。(7)式のように、閾値Elimitよりも、発電機エネルギーElimit’が小さければ、安定と判定される。
ここで、発電機エネルギーはElimit’とした。
なお、ここで、閾値はElimitとした。
ここで、図14および図15を用いて、閾値判定の流れを説明する。図14および図15は、閾値判定部32の処理の一例を説明するための図であり、図14は、発電機エネルギーが閾値を超過する場合、図15は、発電機エネルギーが閾値を超過しない場合の例である。図14、15では、実線が閾値、破線が、算出した発電機エネルギーEである。
図14は、時間と共に変化する閾値に対し、三つの時限が設定されている例である。一つ目の時限(時限(1))は、故障除去後、従来の中央安定化装置210および電力系統安定化装置10も備えている制御機能により故障発生で即実施される第一段制御が実施されたた時点から、予め設定された閾値超過判定タイミング1までの時限である。時限(1)では、第一段制御の実施後、その第一段制御の効果を確認できるように実施からΔtだけ経過したタイミングに、閾値超過の判定が一度行われる。なお、Δtは計測されたデータの演算にかかる時間を見込んだ値に予め設定される。
二つ目の時限(時限(2))は、閾値超過判定タイミング1から次の閾値超過判定タイミング2までの時限である。時限(2)の時限幅は予め設定される。この時限(2)でも、閾値超過判定タイミング1からΔtだけ経過したタイミングに閾値超過判定が一度行われる。時限(2)におけるΔtと、時限(1)のΔtは同じである必要はない。
三つ目の時限(時限(3))は、閾値超過判定タイミング2から監視打止時間までの時限である。時限(3)の時限幅も予め設定される。この時限(3)でも、閾値超過判定タイミング2からΔtだけ経過したタイミングに閾値超過判定が一度行われる。この時限(1)と時限(2)のΔtと時限(3)のΔtは同じである必要はない。
図14には、上記閾値および時限に対して、発電機エネルギーが点線のように変化した場合の超過判定の様子が示されている。
時限(1)における閾値判定では、発電機エネルギーが閾値未満であり、安定と判定されたが、時限(2)における閾値判定では、発電機エネルギーが閾値超過であり、不安定と判定され、制御が実施されている。この制御により発電機エネルギーが低下し、時限(3)における閾値判定では、発電機エネルギーが閾値未満であり、安定と判定されている。なお、閾値判定は、時限(2)で不安定と判定された場合には即制御が実施されるため、時限(3)における閾値判定はなくてもよい。
次に、図15は、図14と異なり、時限(1)〜時限(3)のいずれの時限においても発電機エネルギーが閾値未満であり、安定と判定されたため、制御が不要であった場合の例である。なお、ここで時限数および監視打止時間は、制御によって安定となる限界の時間と第一波終了時間とのいずれか一方または両方に基づいて、事前に決定しておけばよい。
ここで図8に戻り、ステップS5では、電力系統安定化装置10は、前記ステップS4で発電機エネルギーが閾値を超過したと判定された場合に、故障データD6と閾値および制御データD3を用いて、故障と判定した条件に関連した制御指令を選択し、故障が発生した旨の判定結果を記憶するとともに、選択した制御指令の内容を記憶する。なお、ここで判定結果と共に制御指令も記憶することとしたが、制御指令は記憶しなくてもよい。
ステップS6では、電力系統安定化装置10は、ステップS5で選択された制御指令および記憶された判定結果を、夫々発電機制御装置160と中央安定化装置210に送信して処理を終了し、ステップS1に戻る。
なお、通信量が増加している場合などには、通信量を低減し、通信ネットワーク300が過負荷となるのを防止するために、判定結果のリアルタイムでの送信を行わなくてもよい。
また、ステップS4において、監視打止時間まで閾値判定で発電機エネルギーが閾値を超過しない場合には、電力系統安定化装置10は演算を終了し、ステップS1に戻る。
なお、これまで説明した閾値判定後の制御(補正制御)は、従来から行われている第一段制御を補正する制御である。
次に、中央安定化装置210の計算処理内容について説明する。
図16〜18は、中央安定化装置210の構成例を説明するための図である。図19は、中央安定化装置210の全体プロセスを説明するためのフローチャートである。全体プロセスの概要としては、まず、手動入力あるいは自動受信した系統データD9と想定故障データD6’と探索範囲データD10と判定結果データD7を用いて、状態推定と潮流計算を行い、それらしい系統状態を計算し、記憶する。系統データD9は、系統のトポロジー、有効電力、無効電力、電圧、インピーダンス、対地容量、変電所なら変圧比タップなどである。想定故障データD6’は、起こりうる故障のうち制御対象となる故障のリストである。探索範囲データD10は、変電所で対象箇所に流れ得る潮流の範囲であり、安定限界の探索で負荷値を振る範囲がこれによって決まる。続いて、想定故障データD6’に対する安定度計算を行うことで、想定故障データD6’における、電力系統に発生しうる故障それぞれに対する第一段制御内容を決定する。その後、安定限界を探索して、さらに安定限界における発電機エネルギーを計算し、それを閾値とし、それに対応する補正制御内容を計算する。得られた結果を第一段制御データD11、閾値および制御データD3として電力系統安定化装置10に送信する。実際に故障が生じて第一段制御を実施し、その後、閾値判定をして得られる制御効果および判定制御結果データD7は画面に表示される。以上の処理の流れを以下に詳しく説明する。なお、図1〜図15で説明した電力系統安定化装置10の内容と重複する説明については省略する。
図16は、本実施形態の中央安定化装置210の全体構成図の例である。中央安定化装置210は、制御内容決定部34と、各種データベースとを有している。制御内容決定部34は、状態推定・潮流計算部35と、安定度計算部36と、第一段制御内容計算部37と、安定限界探索部38と、発電機位相差計算部30bと、発電機エネルギー計算部31bと、閾値および補正制御内容計算部39とを有している。中央安定化装置210が備えるデータベースは、系統データD9を格納した系統データベース29と、想定故障データD6’を格納する想定故障データベース26bと、探索範囲データD10を格納する探索範囲データベース40と、判定結果データD7を格納する判定結果データベース27bと、第一段制御データD11を格納する第一段制御データベース41と、安定限界データD12を格納する安定限界データベース42と、閾値および制御データD3を格納する閾値および制御データベース23bである。
中央安定化装置210が扱うデータは、系統データD9と、想定故障データD6’と、探索範囲データD10と、判定結果データD7と、第一段制御データD11と、安定限界データD12と、閾値および制御データD3と、判定制御結果データD7である。
制御内容決定部34の状態推定・潮流計算部35では、系統データD9を用いて、それらしい系統状態を計算し、記憶する。それらしい系統状態は、例えば、想定される所定の関数の係数を実測データから最小二乗法で求めることにより得られる。また、制御内容決定部34の第一段制御内容計算部37が、系統データD9と状態推定結果と想定故障データD6’と安定度計算部36を用いて、第一段制御の制御内容を決定する。また、制御内容決定部34の安定限界探索部38では、系統データD9と、上記それらしい系統状態である状態推定結果と、探索範囲データD10と、想定故障データD6’と安定度計算部36を用いて、安定限界を探索する。また、制御内容決定部34の発電機位相差計算部30bでは、安定度計算結果から発電機位相差を計算する。また、制御内容決定部34の発電機エネルギー計算部31bでは、発電機位相差と安定度計算結果から発電機エネルギーを計算する。また、制御内容決定部34の閾値および補正制御内容計算部39では、前記発電機エネルギーを閾値として時限毎に算出するとともに、安定限界探索結果と系統データD9と想定故障データD6’と安定度計算部36を用いて、補正制御内容を決定する。また、制御内容決定部34では、第一段制御データD11と閾値および制御データD3を電力系統安定化装置10に送信するとともに、判定結果データD7を電力系統安定化装置10から受信する。前記第一段制御データD11と閾値および制御データD3を受けた電力系統安定化装置10は、閾値判定を実施する。
図17は、中央安定化装置210のハード構成と電力系統の全体構成の一例を示すブロック図である。図17では、中央電力安定化装置210と、電力系統安定化装置10と、電力系統100と、そこに含まれる部分電力系統101と、発電機110bとが通信ネットワーク300に接続されている。
電力系統100は、ブランチ140a、140bと、ノード120a、120bと、ノード121a、121bとを介して、発電機110a、110bと、変圧器130a、130bと、計測装置44a、44bとが接続されている。更に、図示していないが、故障検出装置150と、負荷やその他計測装置や制御装置のいずれか又は複数が存在する。なお、発電機110a、110bは、本例のような発電機の他、複数の発電機を含む発電所、また複数の発電所を有する発電事業者の発電設備であってもよい。
中央安定化装置210のハード構成としては、電力系統安定化装置10と同様の表示部11b、入力部12b、通信部13b、CPU14b、メモリ15b、と、電力系統安定化装置10と異なる各種データベース(系統データベース29と想定故障データベース26bと探索範囲データベース40と判定結果データベース27bと第一段制御データベース41と安定限界データベース42と閾値および制御データベース23bおよびプログラムデータベース28b)がバス線43bに接続されている。
なお、発電機110b、表示部11b、入力部12b、通信部13b、CPU14b、メモリ15bなどの構成は、発電機110a、表示部11a、入力部12a、通信部13a、CPU14a、メモリ15aなどと同様である。
ここで、図18を参照して、プログラムデータベース28bの記憶内容を説明する。図18は、電力系統安定化装置210のプログラムデータの構成例を示す図である。プログラムデータベース28bには、例えば、状態推定・潮流計算プログラムP50と、安定度計算プログラムP60と、第一段制御内容計算プログラムP70と、安定限界探索プログラムP80と、発電機位相差計算プログラムP10bと、発電機エネルギー計算プログラムP20bと、閾値および補正制御内容計算プログラムP90が格納されている。なお、第一段制御内容計算プログラムP70と、閾値および補正制御内容計算プログラムP90は、制御内容と閾値を電力系統安定化装置10に送信する機能をもつ。ここに示したプログラム群は、最小限ではないが、基本的な一構成例をなすプログラム群の一例である。他の例として、判定結果に基づいて、閾値および/または制御内容を調整するプログラムが更に備えられていてもよい。
図17に戻り、CPU14bは、プログラムデータベース28bからメモリ15bに読み出された計算プログラム(状態推定・潮流計算プログラムP50と安定度計算プログラムP60と第一段制御内容計算プログラムP70と安定限界探索プログラムP80と発電機位相差計算プログラムP10bと発電機エネルギー計算プログラムP20bと閾値および補正制御内容計算プログラムP90)を実行し、状態推定・潮流計算、安定度計算、第一段制御内容計算、安定限界探索、発電機位相差計算、発電機エネルギー計算、閾値および補正制御内容計算、表示すべき画像データの指示、各種データベース内のデータの検索等の各処理を行う。メモリ15bは表示用の画像データ、制御データ、制御結果データ等の計算一時データ及び計算結果データを一旦格納するメモリである。CPU14bによって生成された画像データが表示部11b(例えば表示ディスプレイ画面)に表示される。
中央安定化装置210には、大きく分けて8つのデータベースが格納される。ここでは、プログラムデータベース28bと、判定結果データベース27bと、閾値および制御データベース23bを除く、系統データベース29と、想定故障データベース26bと、探索範囲データベース40と、第一段制御データベース41と、安定限界データベース42について説明する。
系統データベース29の系統データD9には、系統構成、線路インピーダンス、系統計測データ(P、Q、V、I、Φ、時刻スタンプ付きデータやPMUデータでもよい)、系統構成と状態推定に必要なデータ(バットデータの閾値など)、発電機データ、その他の潮流計算・状態推定・安定度計算に必要なデータが含まれる。例えば、発電機データには時間の概念が含まれており、時系列に発電機出力および発電機位相が蓄積されていてもよい。なお、計測値は、中央給電指令所やEMS(Energy Management System:電力系統需給管理サーバ)から入手してもよいし、系統全体の各箇所に配置された計測装置から直接入手してもよい。また、手動でデータを入力する場合、データを入力部12bから手動で入力し、記憶する。なお、手動入力の際はCPU14bによって所定の画像データを生成して表示部11bに表示してもよい。また、手動入力の際、操作者の操作を補助する補完機能を利用して、大量のデータを容易に設定できるように半手動にしてもよい。
想定故障データベース26bの想定故障データD6’には、図30に示すような、電力系統において想定される故障ケースとして故障箇所と故障様相および故障除去タイミングなどの一覧が含まれる。例えば、想定故障データD6’の想定故障はその過酷度順に並べておくことにしてもよい。あるいは、系統の運用によっては、過酷故障ケースのみを想定故障データD6’に含めることにしてもよい。また、例えば、過酷度によってスクリーニングし、想定故障データD6’を複数のリストに分けておいてもよい。
探索範囲データベース40の探索範囲データD10には、図22に示すような系統データに対して、図29に示すような、エリア毎の潮流変動範囲の上下限値が含まれる。図29に示すような潮流変動範囲は、例えば、所定の周期の間に変化する電源および/または負荷の潮流変動の計測結果に基づいて設定すればよい。
第一段制御データベース41の第一段制御データD11には、図6に示した閾値および制御データD3において閾値を含まないデータが含まれる。
安定限界データベース42の安定限界データD12には、探索過程における全ての各エリアの潮流変動量と発電機内部相差角第一波ピーク値の関係と、安定限界位置が含まれる。
以上説明したように、本実施形態では、事前演算では想定されていない潮流変動に対して、事前演算による第一段制御と、発電機の加速に基づく事後演算による補正的な安定化制御とを組み合わせることにより、少ない労力で自動で電力系統の安定度を維持することができる。
また、本実施形態では、発電機または発電所の母線の電圧位相の時間偏差を用いるので、
発電機または発電所の正確な安定化制御が可能である。
また、本実施形態の上述した変形例のように、電圧位相角時間偏差として、発電機または発電所の母線の電圧位相と、そこから所定距離にある母線の電圧位相との差を用いた場合、それらの母線の電圧位相の差から比較的単純な演算で時間偏差に相当する情報が得られる。
また、本実施形態では、故障発生直前と直後を除いた時間において、一定時間毎に算出した、その一定時間における発電機の出力の位相角の平均値同士の偏差を発電機位相差データとすることで、平均化により計測誤差などによる計測値の変動を除去し、安定化制御の精度を高めることができる。
また、本実施形態では、発電機出力と発電機位相差データを用いて算出されるエネルギー値を発電機の加速を示す指標として用いるので、加速エネルギーおよび減速エネルギーから発電機の加速を正確に把握することが可能である。また、発電機出力と発電機位相差データに基づく積分演算で正確に加速の指標を得ることができる。
次に中央安定化装置210の計算処理内容について図19を用いて説明する。図19は、中央安定化装置210の全体処理の一例を示すフローチャートである。以下、処理の流れを説明する。
まず、ステップS31では、中央安定化装置210は計測装置44a、44bから系統データD9を受信する。また、入力部12bを使用して手入力で設定された系統データD9を受信する。例えば、中央安定化装置210は、所定の周期で周期的に系統データD9を受信する。
ステップS32では、中央安定化装置210は、系統データD9を用いて、系統の接続情報や潮流情報などから系統モデルを作成する。ステップS33では、中央安定化装置210は、状態推定・潮流計算部35で状態推定を行い、それらしい系統状態を計算・記憶する。ステップS34では、中央安定化装置210は、想定故障を想定故障データD6’から選定する。その際、計算量を削減するために、全ての想定事故を順次選択するのではなく、所定の条件に従って、対象とする想定事故を絞り込むスクリーニングを行ってもよい。ステップS35では、中央安定化装置210は、系統データD9と状態推定結果と安定度計算部36を用いて、第一段制御内容計算部37で第一段制御の制御内容を計算する。第一段制御の内容は、例えば、想定故障の過渡安定度を計算し、脱調が起きた場合、閾値に最も早く達した電制対象の発電機を選択し、電制した状態での過渡安定度を計算するという処理を、所望の系統状態となるまで、例えば、脱調が起こらず安定化するまで、繰り返すというものである。その際、発電機位相の計算は、計測装置44aで行ってもよく、また電力系統安定化装置10で行ってもよい。所望の系統状態の例として、系統電圧無効電力が安定な系統状態、託送可能電力が最大の系統状態、送配電損失が最小の系統状態などがあり、これらは系統の制約から計算することができる。
次に、ステップS36では、中央安定化装置210は、状態推定結果の潮流断面において、探索範囲データD10内で、想定故障データD6’と系統データD9を用いて、安定限界探索部38と安定度計算部36を用いて、安定限界を探索する。
ここで、図20を参照する。図20は、安定限界の探索処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS41では、中央安定化装置210は、状態推定結果を用いて潮流計算によって得た潮流のデータを初期潮流断面として設定する。初期潮流断面は、故障前の運転点での潮流断面である。
ステップS42では、中央安定化装置210は、過渡安定度悪化方向の探索を行う。
ここで、図21を参照する。図21は、過渡安定度悪化方向を探索する処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、図22に示すように電力系統100を分割したエリアA〜Cのそれぞれに対する、ステップS51〜S64までの処理の例を示す。なお、分割されたエリア数は予め定めておくものとする。各エリアの負荷170c〜170eの負荷量を変動させることにより、安定限界の探索を行う。
まずステップS51では、中央安定化装置210は全エリアの潮流を増加方向に変更する。なお、このときの変更幅および以下の変更幅としては、予め設定した一定の刻み幅を用いる。ステップS52では、中央安定化装置210は過渡安定度計算を行う。なお、ここでの安定度計算では、発電機内部相差角の第一波ピーク値さえ分かればよいので、短時間の解析を行えばよい。
ステップS53では、中央安定化装置210は、エリアAの潮流を減少方向に変更し、ステップS54で再び過渡安定度計算を行う。次に、ステップS55で、中央安定化装置210は、潮流を変更する前と後のそれぞれの過渡安定度計算で得た安定度を比較し、安定度が悪化しているか否かを確認する。
安定度が悪化している場合には、中央安定化装置210は、次のステップS56において、エリアAの潮流を増加方向に修正しておく。一方、安定度が改善されている場合は、中央安定化装置210は、エリアAの潮流を減少方向のままにする。
次に、ステップS57では、中央安定化装置210は、エリアBの潮流を減少方向に変更し、ステップS58で再び過渡安定度計算を行う。次に、ステップS59で、中央安定化装置210は、潮流を変更する前と後の安定度を比較し、安定度が悪化しているか否かを確認する。
安定度が悪化している場合には、中央安定化装置210は、次のステップS60において、エリアBの潮流を増加方向に修正しておく。一方、安定度が改善されている場合は、中央安定化装置210は、エリアBの潮流を減少方向のままにする。
次に、ステップS61では、中央安定化装置210は、エリアCの潮流を減少方向に変更し、ステップS62で再び過渡安定度計算を行う。次に、ステップS63で、中央安定化装置210は、潮流を変化させる前と後の安定度を比較し、安定度が悪化しているか否かを確認する。
安定度が悪化している場合には、中央安定化装置210は、次のステップS64において、エリアCの潮流を増加方向に修正しておく。一方、安定度が改善されている場合は、中央安定化装置210は、エリアCの潮流を減少方向のままにする。
以上のように過渡安定度が悪化する方向を探索する処理によって各エリアの潮流の変化方向が安定度悪化する方向に自動的に設定され、それにより以降の調整労力を減らすことができる。なお、図23は、過渡安定度の悪化方向を探索する処理における各エリア潮流変動を示す例である。全エリアの潮流を増加方向(図23の右上)に変更した後、各エリアの潮流をそれぞれ減じて安定度が悪化する方向(過渡安定度悪化方向)を確認している。
図20に戻り、ステップS43では、中央安定化装置210は、ステップS42で求めた過渡安定度悪化方向に対する潮流変動幅(安定限界探索の最初に用いる値)を設定する。なお、この潮流変動幅を設定する際には、安定度悪化方向の探索の際に求めた初期潮流断面(事故前の運転点)と、安定度を悪化した断面での選択エリアにおける潮流変動と、発電機内部相差角ピーク値(第一波)との関係式から、脱調判定閾値に到達する選択エリアの潮流変動値を計算し、設定する。ここでは関係式として近似式を用いる。近似は線形近似でもよいし、二次近似でもよい。
ステップS44では、中央安定化装置210は、ステップS43で設定した潮流変動が発生した場合の潮流断面を作成し、保存する。
ステップS45では、中央安定化装置210は、ステップS44で作成した潮流断面において、過渡安定度計算を実施する。そして、前回と今回の過渡安定度を比較し、過渡不安定から過渡安定へ、あるいは過渡安定から過渡不安定へと変化していたら、探索方向を反転しておく。
次にステップS46において、中央安定化装置210は、それまでの処理過程で過渡不安定な潮流断面が登場したか否か判定する。過渡不安定の潮流断面があった場合、中央安定化装置210は、ステップS44で設定した潮流変動幅を半分に設定し直し、次のステップへ進む。一方、過渡不安定な潮流断面がなかった場合、中央安定化装置210は、ステップS44で設定した潮流変動幅を二倍に設定し直し、次のステップへ進む。
ステップS48では、中央安定化装置210は、このときに設定する潮流変動幅を閾値と比較し、潮流変動幅が閾値以上ならば、ステップS44へ戻る。一方、潮流変動幅が閾値以下ならば、中央安定化装置210は、ステップS49において、最後に計算した潮流断面を安定限界として保存する。また、安定限界として潮流断面を保存した際に、一つまたは二つ前の探索条件における不安定な潮流断面についても保存しておく。
以上のようにして安定限界を探索する。なお、探索においては、探索範囲データD10の制約のもと上記フローで探索する。
ここでは二分探索によって潮流変動幅を設定しながら安定限界を探索したが、他の例として、潮流変動幅を最大の変動範囲内で乱数で設定し、モンテカルロ法により安定限界を探索してもよい。また、安定限界の探索には、例えばPSO(Practice Swarm Optimization)と最適潮流計算を組み合わせた探索法を用いてもよい。また、その他の探索法によって安定限界を探索してもよい。
図19に戻り、ステップS37では、中央安定化装置210は、閾値と補正制御内容とを決定する。
ここで、図24を参照する。図24は、電制の対象となる発電機(制御対象発電機)の決定から、発電機エネルギーの算出および閾値の時限毎の計算までの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS71では、中央安定化装置210は、上記ステップS49にて保存した、安定限界探索中に算出した安定限界に最も近い不安定潮流断面の過渡安定度の計算結果をメモリ15bに読込む。この不安定潮流断面は、安定限界として潮流断面を保存した際に、一つまたは二つ前の探索条件における不安定な潮流断面として保存した潮流断面である。
ステップS72では、中央安定化装置210は、ステップS71で読込んだ不安定潮流断面を用いた安定度解析を行い、その結果から、制御対象となる発電機を決定する。その際、第一段制御の対象とする発電機の選定方法と同様に、不安定潮流断面において脱調判定閾値に最も早く達した発電機を制御対象の発電機に選定する。例えば電制の対象とする発電機の台数を増加する、あるいは電制の対象とする発電機を容量の大きなものに選択し直す。
なお、このとき他の例として、ステップS71で安定限界の潮流断面を不安定潮流断面としてもよい。その場合、ステップS72では発電機内部相差角第一波ピーク値が最も大きな発電機を選定する。
ステップS73では、中央安定化装置210は、同じ不安定潮流断面において、系統データD9と想定故障データD6’とを用いた安定度計算部36による過渡安定度計算を行い、ステップS74で、その計算結果である過渡安定度が安定であるか否かの判別を行う。不安定な場合は、中央安定化装置210は、安定化するまで電制の対象とする発電機の台数を増加させる。その際、電制対象の発電機の台数は、予め設定した台数を上限とする。一方、過渡安定度が安定であった場合は、中央安定化装置210は、選定した制御対象発電機を本決定し、ステップS75で、制御対象発電機のデータを保存する。
ここで、図25を参照する。図25では、安定限界探索部38の処理を説明するため図である。図25には、各エリアの潮流変動量と発電機内部相差角第一波ピーク値の関係図における安定限界探索の様子の一例と、探索と安定限界および制御対象発電機の選定時における不安定な潮流断面のイメージと、制御対象発電機の決定方法および補正制御内容の決定のイメージが示されている。
安定限界の探索が二分探索法によって行われる様子が破線矢印で示されている。また、発電機内部相差角第一波ピーク値が脱調判定閾値以上の領域の潮流断面のイメージとして、発電機内部相差角が脱調判定閾値を超える過渡状態の様子が示されている。発電機内部相差角第一波ピーク値が脱調判定閾値以下の領域の潮流断面のイメージでは、発電機内部相差角が脱調判定閾値を超えずに収束する過渡状態の様子が示されている。
次に、ステップS76では、中央安定化装置210は、安定限界の潮流断面および過渡安定度の計算結果をメモリ15bに読込む。ステップS77では、中央安定化装置210は、安定限界の潮流断面の過渡安定度の計算結果において、発電機位相差計算部30bで、ステップS75で保存した制御対象発電機の発電機位相差を計算する。その際の発電機位相差の計算および発電機エネルギーの計算は、電力系統安定化装置10と同様の処理により行う。発電機位相差を第一波ピーク値まで計算しておき、時限毎に積分によって発電機エネルギーを計算し、閾値を求める。ステップS78では、中央安定化装置210は、発電機エネルギー計算部31bで発電機エネルギーを計算する。
ここで、図26を参照する。図26は、発電機出力Pg−時間tの波形と、電圧位相角時間偏差Δδv−時間tの二つの時系列波形から描かれる、発電機出力Pg−電圧位相角時間偏差Δδvの波形を示す図である。
図26において、発電機出力Pgが初期発電機出力Pg0よりも小さい領域におけるハッチング部分が加速エネルギーを表し、発電機出力Pgが初期発電機出力Pg0よりも大きい領域におけるハッチング部分が減速エネルギーを表している。なお、図26中で[1]〜[6]の同じ数字が描かれた箇所がそれぞれのグラフにおける対応箇所を示している。図26の右上のように、発電機出力Pgを電圧位相角時間偏差Δδvで積分することで、発電機エネルギーを計算することができる。
なお、発電機出力Pgと電圧位相角時間偏差Δδvの加速エネルギーおよび減速エネルギーは、(8)式および(9)式によって求めることができる。発電機出力Pgは、発電所に含まれる複数の発電機の出力の合計であってもよい。電圧位相角時間偏差は、発電所母線電圧位相角時間偏差であってもよい。
ここで、加速エネルギーはEA、減速エネルギーはEDとした。
図24に戻り、ステップS79では、中央安定化装置210は、また閾値および補正制御内容計算部39により、発電機エネルギーを時限毎に算出し、閾値とする。その際、閾値は、加速エネルギーおよび減速エネルギーの和によって求められるため、(10)式により求めることができる。
ここで、閾値はElimitとした。
ここで、図27を参照する。図27は、閾値および補正制御内容計算部39の処理を説明するための図である。図27には、各時限(1)〜(3)に対する閾値を算出するための発電機エネルギーの時間分割イメージが示されている。図27には、時限(1)〜(3)の閾値を算出する様子が上から順に示されている。各時限の閾値は、故障を除去してから各時限までの積分演算により求まる発電機エネルギーに基づいて定められる。発電機エネルギーを時間分割して算出することで、各時限での閾値を設けることができる。これにより、厳しい故障に対しても閾値を設定することができる。なお、故障によっては第一段制御から補正制御まで時間的な余裕があまりないため、時限を短く設定する必要がある。
図24に戻り、ステップ79では、中央安定化装置210は、以上のように発電機エネルギーを閾値として時限毎に算出し、保存する。
図19に戻って、ステップS38では、中央安定化装置210は、全ての想定される故障に対して、ステップS33〜S37が終了し、第一段制御データD11と閾値および制御データD3が決定されたか否か判定する。全ての想定される故障について処理が終わっていなければ、中央安定化装置210は、ステップS34に戻る。全ての想定される故障に対して処理終了し、第一段制御データD11と閾値および制御データD3が決定していれば、中央安定化装置210は、次にステップS39に進む。
ステップS39では、中央安定化装置210は、決定した第一段制御データD11と閾値および制御データD3を電力系統安定化装置10に送信する。この送信周期は例えば予め定めた一定周期とする。
なお、中央安定化装置210では監視中や閾値超過や制御実施などの運転状況を画面に表示してもよい。これにより、運用者が電力系統安定化装置10の運用状況を容易に把握できる。なお、その場合、制御が実施されるまで、各種データの受信から制御指令および判定結果を夫々送信するまでの状況を繰り返し画面に表示してもよい。更に、発電機出力、発電機エネルギー、閾値判定結果を表示することで、制御判断の正しかったかどうかを後刻に検証することも可能になる。
ここで、図28を参照する。図28は、電力系統安定化装置10の故障発生から各制御までのタイミングを示すタイムチャートの例である。これは、第一段制御に加え、閾値超過判定タイミング2の判定により補正制御を実施する例である。図28のようなタイムチャートを中央安定化装置210の画面に表示することにしてもよい。それにより、制御タイミングやそれに対する動作を運用者が把握し易いというメリットがある。
ここで、図31を参照する。図31は、発電機電圧位相角δvの時間変化を示すグラフである。図31のようなグラフを中央安定化装置210の画面に表示することにしてもよい。運用者が電力系統安定化装置10の制御効果を一目で把握できる。また、過去の想定事故に対する安定化対策を保存し、表示することで、系統計画を立案する時に参考にすることができる。
以上説明したように、本実施形態では、電力系統に発生しうる故障毎に、安定な状態から安定度が悪化するように電力系統の潮流を変化させたとき、それ以上、電力系統の潮流を変化させると不安定な状態となる安定限界を判定し、その安定限界における加速指標の値を閾値とするので、故障毎に適切な閾値を決定することができる。
また、本実施形態では、故障発生からの経過時間に対して複数の閾値を定めてもよく、そうすれば、加速指標が閾値を超過するか否かを時間経過に伴って複数回判定し、時間経過に伴う適切な判定結果を得ることが可能となる。
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。