JP2016125133A - 耐焼付性に優れた浸炭部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐焼付性の向上に必要な焼戻硬さ及び熱伝導率の両立を図る浸炭部材を提供する。【解決手段】本発明の耐焼付性に優れた浸炭部材は、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.25〜0.60%、Cr:1.00〜3.00%、Mo:0.01〜0.50%、を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、浸炭処理後の浸炭層のC濃度が質量%で0.55〜2.00%、浸炭層の表面硬さが700HV以上で、さらに浸炭層の400℃焼戻硬さが下記式(1)を満たすことを特徴とする。浸炭層の400℃焼戻硬さ≧2000−45×浸炭層の400℃熱伝導率−10×浸炭層の炭化物面積率…(1)【選択図】図7

Description

本発明は、耐焼付性に優れた浸炭部材に関する。
現在、自動車の動力伝達は歯車を用いるのが主流であるが、そのような歯車方式では歯車の噛み合いに伴う歯面摩擦による動力損失や歯部の噛み合い騒音などを低減すべきという課題がある。このような課題を解決するために、例えば下記特許文献1に記載されているように、複数設けられた対となる入力側及び出力側ローラーの転がりによる摩擦伝動変速(以下、トラクションドライブともいう)を利用したものがある。トラクションドライブによる動力伝達は、例えば図14(A)に示されるように、所定大きさの法線荷重P(面圧)で圧接されたローラー101,102間に、適切な潤滑油103を使用して油膜を形成させ、その油膜でのトラクション力T(せん断抵抗力)によって行われる。ここで、トラクション係数μ(動力伝達係数)は、法線荷重Pに対するトラクション力Tの比で定義され、例えば図14(B)に示されるように、法線荷重Pが大きいほど伝達容量は大きくなる。したがって、ローラー101,102には、トラクション係数μがほぼ一定となる法線荷重がP1以上の状態、すなわち高面圧の環境下で使用されることが望まれるため、耐転がり寿命(耐剥離性、耐陥没性)の向上が求められる。一方、トラクションドライブでは、変速時に変速前後の段間比分に相当する回転数差(周速差)が出力側ローラー間に生じる。このため、High側からLow側への切り替えに際して、変速中の入力側及び出力側ローラー間に大きな滑りが発生する。この滑りによりローラーは最大400℃の高温度の環境下に晒されることとなるので、耐滑り発熱性の確保、すなわち耐焼付性の向上も求められる。
ここで、耐焼付性の向上には、滑り発熱による温度上昇を防止するためにローラー同士の摩擦低減を図ることが有効とされている。具体的には、ローラー表面の凹凸差を小さくすることで摩擦係数を小さくすること、つまり初期表面粗さを低減することの他、摺動時に表面粗さの劣化を防ぐことが有効であり、この劣化はローラーの高温環境下での硬さを確保することで防止することが可能である。硬さを向上させることで、耐焼付性の改善を図るようにした従来技術として、例えば以下に記載のものが知られている。
下記特許文献2に記載されたトランスミッション用転動部品では、合金元素(Mo,V)を調整した合金鋼に浸炭又は浸炭窒化処理を施すことで、耐熱性(500℃焼戻し表層硬さ)を確保し、耐焼付性を向上させるようにしている。さらに内部硬さを500〜600HVにすることで耐剥離性の両立を図っている。
また、下記特許文献3に記載された転がり軸受では、マルテンサイト系ステンレス鋼に軟窒化処理を施すことで、表面窒化層硬さを1200〜1500HVとして耐焼付性を向上させるようにしている。
また、下記特許文献4に記載された転がり軸受では、セラミックコーティング処理を施すことにより、下記特許文献5に記載された摩擦伝達部材では、摩擦伝達部材の表面を覆う被膜(Ni,Co,Cr,Mo)に高エネルギービ−ム処理を施すことにより、それぞれ耐焼付性を向上させるようにしている。
他方、摺動面の温度上昇の抑制には、材料の熱伝導率の向上を図ることが有効とされている。材料の熱伝導率を向上させることで、耐焼付性の改善を図るようにした従来技術として、例えば以下に記載のものが知られている。
下記特許文献6に記載されたクランクシャフトでは、Si添加量を抑えて熱伝導率を確保し、高周波焼入れ処理により表面硬さを向上させることで、クランクシャフトと軸受との摺動界面における温度上昇の軽減を図り、焼付きの発生を抑制するようにしている。
また、下記特許文献7には、Crを18%を超えて添加すると、母材の熱伝導率の低下により耐焼付性の悪化を懸念する旨の記載がある。
特開2006−170389号公報 特開2008−025011号公報 特開2002−364648号公報 特開2007−292104号公報 特開平6−212390号公報 特許第4589885号公報 特開2004−076823号公報
滑りによりローラーが耐えられる温度が高くなればなるほど、摩擦伝動変速における変速比幅向上率をより大きな値に設定することができる。すなわち、High側とLow側との段間比の幅を大きくすることでき、加速性能、静粛性ひいては燃費を向上させることが可能となる。しかしながら、上記特許文献2〜5,7に記載されているような、合金添加により焼戻硬さを向上させることで耐熱性を確保する技術では、却って熱伝導率の低下を招き、結果として耐焼付性を低下させてしまう場合がある。具体的には、上記特許文献2〜5,7では、使用材料の熱伝導率が一切考慮されていなため、上記したような高面圧下で高速滑りを伴う転動部材に要求されるスペックを十分に満足することができない。一方、上記特許文献6では、使用材料の熱伝導率について一応考慮はされているものの、焼戻硬さとの関係で捉えられていないため、この技術によっても高面圧下で大きな滑りを伴う転動部材に要求されるスペックを十分に満足することはできなかった。
なお、上記特許文献2〜5に記載された鋼の内部硬さは高いレベルであると推定され、耐剥離性については大きな問題はないと考えられる。しかしながら、Ni,Mo,V添加量が高く、製造性の悪化や鋼材コストの上昇を招くため、その用途は限られてしまい、自動車用部材への適用としては不向きである。
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、高面圧で大きな滑りを伴う環境下において、耐焼付性の向上に必要な焼戻硬さ及び熱伝導率の両立化を図りつつ、耐転がり寿命の向上に必要な内部硬さとの両立化をも図り得る浸炭部材を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記目的を達成するために本発明の耐焼付性に優れた浸炭部材は、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.25〜0.60%、Cr:1.00〜3.00%、Mo:0.01〜0.50%、を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、浸炭処理後の浸炭層のC濃度が質量%で0.55〜2.00%、前記浸炭層の表面硬さが700HV以上で、さらに前記浸炭層の400℃焼戻硬さが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
浸炭層の400℃焼戻硬さ≧2000−45×浸炭層の400℃熱伝導率−10×浸炭層の炭化物面積率…(1)
この場合、浸炭層の400℃焼戻硬さが450HV以上、浸炭層の400℃熱伝導率が28W/mK以上、かつ浸炭層の炭化物面積率が20%以下であるように構成することができる。また、Si,Mn,Cr,Moをそれぞれ質量%で表したとき、下記式(2)を満たすように構成することもできる。
8≦4.6×Si+7.9×Mn+4.0×Cr+3.5×Mo−0.4×浸炭層の炭化物面積率≦15…(2)
また、浸炭部材の1.5mm深さの硬さが450HV以上であるように構成することができる。さらに、浸炭部材はトラクションドライブ部品としての一対のローラーに使用することができる。このとき、一対のローラーの各転走面の真円度が20μm以下及び表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2がそれぞれ0.01〜0.10μm、かつ下記式(3)で示される合成粗さσが0.07μm以下に設定されるように構成することができる。
σ=√(Rq1^2+Rq2^2)…(3)
耐焼付性を向上させるためには、浸炭層の400℃焼戻硬さ及び400℃熱伝導率を向上させることが有効である。そして、それら400℃焼戻硬さと400℃熱伝導率が互いにトレードオフの関係にあることを踏まえつつ、耐焼付性の向上を図るために所定の関係式を満足すればよいとの知見を得た。このような本発明の浸炭部材によれば、高速滑りを伴う環境下においても、焼戻硬さ及び熱伝導率の両立を図ることが可能となって、優れた耐焼付性を発揮できるようになる。
(A)は回転ラジアルスラスト試験機を示す説明図。(B)は(A)で用いる試験片の側面図。 (A)はローラーピッチング試験で使用される試験片と負荷用ローラーとを示す説明図。(B)は(A)の側面図。 図1の試験片を用いて表面硬さを測定する場合の説明図。 図2の試験片を用いて1.5mm深さの硬さを測定する場合の説明図。 深さ方向における浸炭部材の硬さ分布とせん断応力分布との関係を示すグラフ。 油膜パラメータと合成粗さとの関係を示す説明図。 浸炭層における400℃熱伝導率と400℃焼戻硬さとの関係を示すグラフ。 浸炭層における400℃焼戻硬さと焼付き限界荷重との関係を示すグラフ。 浸炭層における400℃熱伝導率と焼付き限界荷重との関係を示すグラフ。 式(2)を説明するためのグラフ。 1.5mm深さの硬さと剥離寿命との関係を示すグラフ。 1.5mm深さの硬さと陥没量との関係を示すグラフ。 真円度(20μm)及び合成粗さと焼付き限界荷重との関係を示すグラフ。 (A)はローラーによるトラクションドライブを示す説明図。(B)は法線荷重とトラクション係数との関係を示すグラフ。
以下、本発明の耐焼付性に優れた浸炭部材における各元素の組成限定理由および限定条件について説明する。
(1)C:0.10〜0.40%
Cは、焼入れ時のマルテンサイトの硬さを高めるために必須の元素であり、浸炭焼入れ焼戻し後の内部硬さを確保するためには、0.10%以上の添加が必要である。ただし、0.40%を超えて含有させると、硬度が上がりすぎ、内部靭性及び切削性が低下してしまうので、0.40%を上限とする。好ましくは0.15〜0.35%である。
(2)Si:0.01〜0.50%
Siは、マトリクス相(焼入れマルテンサイト)の高温焼戻し硬さを高めるために有効な元素である。この効果を得るために0.01%以上の添加が必要である。ただし、0.50%を超えて含有させると、浸炭層の400℃熱伝導率や熱間加工性の悪化を助長するため、0.50%を上限とする。好ましくは0.05〜0.30%である。
(3)Mn:0.25〜0.60%
Mnは、焼入れ性を高めるのに有効な元素であり、この効果を得るために0.25%以上の含有が必要である。一方、Mnを添加し過ぎると、浸炭層の400℃熱伝導率の悪化を招くほか、焼きなましによる硬さ低下が得られなくなるため、0.60%を上限とする。好ましくは0.35〜0.45%である。
(4)Cr:1.00〜3.00%
Crは、マトリクス相中に固溶して焼入性を高め、硬さ向上に寄与するとともに、炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる。これらの効果を得るために1.00%以上の添加が必要である。好ましくは1.40%以上である。他方、3.00%を超えて添加すると、浸炭層の400℃熱伝導率が悪化するとともに、必要以上の炭化物を形成し、焼入れ焼戻し後において靭性及び仕上げ加工等の製造性が低下してしまうので、3.00%を上限とする。好ましくは2.50%以下である。
(5)Mo:0.01〜0.50%
Moも、Crと同様にマトリクス相中に固溶して焼入性を高め、硬さ向上に寄与するとともに、炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる。あるいは、焼入れ焼戻しにおける軟化抵抗性を高めるために有効な元素である。また、高濃度浸炭を適用する場合、炭化物周辺の合金欠乏による浸炭層の焼入性を補完するためにも有効な元素である。これらの効果を得るために0.01%以上の添加が必要である。一方、Moを過度に含有させると、熱間加工性、靭性、切削性及び浸炭層の400℃熱伝導率が低下してしまうので、0.50%を上限とする。好ましくは0.10〜0.40%である。
(6)浸炭層の表面硬さが700HV以上
表面硬さとは、浸炭処理を施した試験片の表面に試験荷重を負荷したときの硬さを意味する。上述したように、トラクションドライブ部品(例えば、ローラー)に作用するトラクション力を大きくするためには、トラクションドライブ部品間の押し付け面圧を高くすることが必要となる。所定大きさの面圧(例えば3GPa)に耐えつつ、トラクションドライブ部品同士の高滑り速度条件下で、優れた耐焼付性を発揮するためには、後述する試験結果によると、室温での浸炭層の表面硬さ(表層硬さ)が700HV以上となる必要がある。より好ましくは750HV以上である。
(7)浸炭処理後の浸炭層のC濃度が質量%で0.55〜2.00%
浸炭処理後の浸炭層のC濃度(表層C濃度)が0.55%未満となると、浸炭層の表面硬さを700HV以上に設定することが困難となる。一方、浸炭層のC濃度が2.00%を超えると、浸炭層の炭化物面積率が20%を超えてしまい、マトリクス相中のCr,Moが炭化物に取り込まれることとなってマトリクスの焼入性が不足し、結果として浸炭層のC濃度が0.55%未満の場合と同様、浸炭層の表面硬さを700HV以上に設定することが困難となる。好ましくは0.70〜1.50%である。
(8)浸炭層の400℃焼戻硬さが下記式(1)を満たすこと。
浸炭層の400℃焼戻硬さ≧2000−45×浸炭層の400℃熱伝導率−10×浸炭層の炭化物面積率…(1)
ここで、浸炭層の400℃焼戻硬さとは、400℃の状態を模擬的に再現した場合の浸炭層の表面硬さを意味する。また、浸炭層の400℃熱伝導率とは、400℃の状態を模擬的に再現した場合の浸炭層の熱伝導率を意味する。高滑り速度条件下では、最大400℃の摺動温度になると考えられている。トラクションドライブ部品の表面は、400℃の環境下にトータルで3時間程度さらされると想定されており、この環境下においても表面硬さを維持し続けることが要求される。そのためには、浸炭層の400℃焼戻硬さが、所定条件に応じて一定以上なければ、表面の軟化により使用中に焼付き、あるいは塑性変形してしまう。
式(1)は、図7に示されるように、焼付き限界荷重≧1000N(表1,3参照)を満たすためには、浸炭層の400℃焼戻硬さを縦軸とし、浸炭層の400℃熱伝導率を横軸とした場合に、浸炭層の400℃焼戻硬さの値を、その座標面に示される直線(炭化物面積率がゼロに近づくほど切片が大きくなる左上がりの直線)を含む図示上側領域に設定する必要があることを示している。浸炭層の400℃熱伝導率が高い材料を用いた場合には、摺動面の温度上昇を抑制することができるため、400℃焼戻硬さを低く設定することができる。これとは逆に、400℃熱伝導率が低い材料を用いた場合には、摺動面の温度が上昇して潤滑に支障が生じ、摺動面の軟化を極力避ける必要があるため、浸炭層の400℃焼戻硬さを高く設定する必要がある。
本願発明では、更に以下の条件を満たすように設定することできる。
(9)浸炭層の400℃焼戻硬さが450HV以上
図8に示されるように、焼付き限界荷重と浸炭層の400℃焼戻硬さとは、浸炭層の400℃焼戻硬さを450HV以上に設定することを条件として、焼付き限界荷重≧1000Nとなる試験データが得られることが分かった。これにより、トラクションドライブ部品の良好な焼戻し硬さを確保して、優れた耐焼付き性を得ることができる。なお、浸炭層の400℃焼戻硬さは大きい値であることが望ましいが、この値を大きくするために合金元素を添加し過ぎると、却って400℃時の熱伝導率の低下を招くため注意が必要である。
(10)浸炭層の400℃熱伝導率が28W/mK以上
図9に示されるように、焼付き限界荷重と浸炭層の400℃熱伝導率とは、浸炭層の400℃熱伝導率を28W/mK以上に設定することを条件として、焼付き限界荷重≧1000Nとなる試験データが得られることが分かった。これにより、トラクションドライブ部品の良好な熱伝導率を確保して、優れた耐焼付き性を得ることができる。なお、浸炭層の400℃熱伝導率は大きい値であることが望ましいが、Feを主たる構成元素とする合金鋼では、およそ70W/mK以上に設定することは困難である。
(11)浸炭層の炭化物面積率が20%以下
上述したように、浸炭層の炭化物面積率が20%を超えると、マトリクス相中のCr,Moが炭化物に取り込まれることとなってマトリクスの焼入性が低下するため、過剰な炭化物析出は避けた方がよい。なお、浸炭層の炭化物面積率が20%を超えるようになると、鋼材や浸炭処理のコストが高くなり、仕上げ加工等の製造性も悪化しやすくなる。
(12)Si,Mn,Cr,Moをそれぞれ質量%で表したとき、下記式(2)を満たすこと。
8≦4.6×Si+7.9×Mn+4.0×Cr+3.5×Mo−0.4×浸炭層の炭化物面積率≦15…(2)
上記式(2)は、浸炭層の表面硬さを700HV以上としつつ、浸炭層の400℃熱伝導率を28W/mK以上とするための、Si,Mn,Cr,Mo,浸炭層の炭化物面積率間の関係を規定するパラメータ式である。図10に示されるように、式(2)の計算値が8未満になると、浸炭層の400℃熱伝導率が28W/mK以上であることは満足するものの、浸炭層の焼入性が不足し、浸炭層の表面硬さが不足してしまう。これとは逆に、式(2)の計算値が上限値15を超えると、浸炭層の表面硬さが700HV以上であることは満足するものの、浸炭層の400℃熱伝導率が小さくなり、耐焼付性を確保することが困難となる。
(13)浸炭部材の1.5mm深さの硬さが450HV以上
浸炭部材の1.5mm深さの硬さとは、試験片の表面から1.5mmの深さ位置における断面に試験荷重を負荷したときの硬さを意味する。本願発明の浸炭部材を、例えばトラクションドライブ用の一対のローラーに使用する場合、トラクション力を大きくするためには、両ローラー間の押し付け最大面圧を、少なくとも3GPa程度の大きさに設定することが必要となる。このように両ローラー間に作用する面圧が3GPaの条件下では、図5にて細い実線で示されるせん断応力分布線(部品にかかる負荷の分布を示す)によれば、表面から0.8mm程度の深さの部位に最大せん断力が発生するものと推定される。したがって、このせん断応力による塑性変形を抑制し(塑性変形深さが10μm以下)、転がり寿命を確保するためには、図5にて太い破線で示される浸炭部材の硬さ分布において、せん断応力分布に基づく硬さとの差が最も小さくなる1.5mm深さ近傍位置での硬さを450HV以上とする必要がある。より好ましくは500HV以上である。なお、ローラーに塑性変形が生じると接触面圧が下がり、トラクション力が小さくなって、結果として伝達効率の低下を招来することとなる。
上記1.5mm深さ位置は、浸炭部材の硬さ分布が急な下り勾配から緩やかな下り勾配へと変化し始める部位(強度ネック部位1)であり、この強度ネック部位1での硬さの値が対応するせん断応力分布に基づく硬さの値よりも大きければ、以降のいずれの対応する深さ位置においても浸炭部材の硬さがせん断応力に基づく硬さを上回ることとなって、せん断応力による塑性変形を全深さ位置にわたって良好に抑制することができる。なお、ローラーは滑り発熱時に軟化し、この軟化に伴って図5にて細い破線で示されるように、ローラー表面(0mm深さ位置:強度ネック部位2)の硬さが低下してせん断応力分布に基づく硬さに接近するものの、その差に十分な余裕があるため、強度ネック部位2の硬さを基準として浸炭部材の硬さを設定する必要はない。
(14)浸炭部材をトラクションドライブ部品としての一対のローラーに使用した場合、一対のローラー(以後、ローラー対ともいう)の各転走面の真円度が20μm以下及び表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2がそれぞれ0.01〜0.10μm、かつ下記式(3)で示される合成粗さσが0.07μm以下を満たすこと。
σ=√(Rq1^2+Rq2^2)…(3)
ローラー対の各転走面の真円度は20μm以下とする。局所的な過大負荷(面圧)を抑制し、耐焼付き及び耐転がり寿命低下を軽減するためである。真円度は20μmに対して小さければ小さいほどよい。また、ローラー対の各転走面の表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2は0.01〜0.10μmとし、それら表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2で規定される合成粗さσは0.07μm以下とする。優れた耐焼付き及び耐転がり寿命を確保するためである。合成粗さσを小さく設定すれば、摺動中の油膜をより確保できるようになる。つまり、図6に示されるように、油膜パラメータΛ(ローラー対の各転走面間の油膜厚さhと各転走面の合成粗さσとの比)の値が大きなって、油膜が確保されることとなる。
(鋼種、試験片形状)
まず、表1に示す合金組成(残部はFe及び不可避不純物)の鋼を真空溶解炉を用いて溶製し、インゴットに鋳造した。次に、このインゴットを圧延してバー材にした後、耐焼付性を評価するための試験片10を複数作成した。試験片10は、試験内容に応じて図1に示されるような円環状(例えば外径φ70×内径φ40×厚さ18mm)に形成した。
Figure 2016125133
(浸炭方法(共析浸炭))
上記試験片10に対し、以下の条件で熱処理を施した。930℃で均熱保持後、そのままの温度で浸炭処理(アセチレンガス雰囲気で圧力1500Pa)を行ない、続いて拡散処理(窒素雰囲気)を行った。このとき、浸炭処理の平衡C濃度、拡散処理の拡散時間を変えることで、浸炭層のC濃度分布を変化させた。その後850℃で30分間保持し、油焼入れを行った。焼戻し処理は140℃で2時間行った。焼戻し処理後、試験片10の外周面(試験面)を片肉50μm研磨し、表面粗さ(算術平均)RaがRa≦0.04μmとなるようなラップ仕上げ加工を施した。
(浸炭方法(高濃度浸炭))
炭化物を析出させることを目的として、上記浸炭・拡散処理(第1浸炭処理)に続いて、次の条件で浸炭・拡散処理(第2浸炭処理)を行う熱処理も実施した。すなわち、上記浸炭・拡散処理後に850℃に再加熱し、そのままの温度で浸炭処理(アセチレンガス雰囲気で圧力1500Pa)を行ない、続いて拡散処理(窒素雰囲気)を行った。その後850℃で30分間保持し、油焼入れを行った。焼戻し処理は140℃で2時間行った。焼戻し処理後、試験片10の外周面(試験面)を片肉50μm研磨し、表面粗さ(算術平均)RaがRa≦0.04μmとなるようなラップ仕上げ加工を施した。
(浸炭層のC濃度測定)
浸炭層のC濃度分布をEPMAによるライン分析で測定した。
(浸炭層の表面硬さ測定)
ビッカース硬さ(HV)は、「JIS Z2244」に規定されたビッカース硬さ試験法に従って測定したものであり、装置はマイクロビッカース硬さ試験機を用いた。圧子は「JIS B7725」に規定されている対面角が136°のダイヤモンド四角錘圧子を用い、破壊されない程度の試験荷重で試験片10の鏡面研磨された所定の面に窪みをつける。そして、この窪みの対角線長さd[mm]と試験荷重F[N]とから次式によって計算した値をビッカース硬さとした。
HV=0.189×(F/d^2)
この場合、例えば図3に示されるように、浸炭層が形成された円環状の外周面を含みつつ内周面に達しない程度の深さ位置(例えば、表面から10mm程度)が下側となるように、試験片10からビッカース硬さ試験用ブロック11を切り出した。試験荷重は50gで負荷時間は15秒とし、測定位置はビッカース硬さ試験用ブロック11の外周面11a(試験片10の転走面に相当する)とした(表面直打ち)。
(浸炭層の400℃焼戻硬さ測定)
試験片10の表面の脱炭及び酸化を防止するため、真空雰囲気にて処理温度400℃で3時間の追加焼戻し処理を実施した。表面硬さの測定は、上記試験片10の場合と同じである(ビッカース硬さ試験用ブロック11を切り出してその外周面11aを直打ち)。
(浸炭層の400℃熱伝導率の測定)
試験片10から直径φ10mm×厚さ1mmの円板形状の試料を切り出し、その試料の表裏面にカーボンスプレーを塗布し、測定温度が400℃、測定雰囲気が真空中の条件下で、レーザーフラッシュ法により比熱、熱拡散率を測定した。そして、次式(4)により熱伝導率を算出した。
熱伝導率(W/mK)=熱拡散率(m/S)×比熱(J/(kgK))×密度(kg/m)
…(4)
(浸炭層の炭化物面積率の測定)
第1浸炭処理又は第2浸炭処理を行った試験片10の横断面を研磨し、ピラクルで腐食をした後、最表面から30μmまでの位置をSEMで写真撮影し(観察倍率3000倍)、画像解析をすることにより面積率の測定を行った。
(耐焼付性評価方法)
図1(A)に示されるような回転ラジアルスラスト試験機を用いて、試験片10に対して回転ラジアルスラスト試験を行った。回転ラジアルスラスト試験では、一対の試験片10のうち一方を固定側、他方を回転側とし、油潤滑下にて回転側の試験片10を介して固定側の試験片10にラジアル荷重を負荷した。固定側の試験片10の接触面の曲率半径を30mm、回転側の試験片10の回転数を2500rpmとし、試験片10間に焼付きが発生するまでラジアル荷重を、例えば60秒で100Nずつ段階的に増加させた。潤滑油はトラクションドライブ用オイルを用い、油温323K、流量1L/minで試験を行った。焼付き判定は、回転側の試験片10に設置した接触温度計の温度が急上昇した時点とした。
表1に各鋼種における測定結果を示す。ここでは、回転ラジアルスラスト試験において焼付きが発生したときの焼付き限界荷重が1000N以上であれば、耐焼付性を良とした。
表1及び図8に示されるように、浸炭層の400℃焼戻硬さが450HV以上であると、1000N以上の焼付き限界荷重が得られることが分かる。また、表1及び図9に示されるように、浸炭層の400℃熱伝導率が28W/mK以上であると、1000N以上の焼付き限界荷重が得られることが分かる。
発明鋼1〜13は、式(1)及び式(2)の条件を満たし、更に浸炭層の表面硬さが700HV以上、浸炭層の400℃焼戻硬さが450HV以上、浸炭層の400℃熱伝導率が28W/mK以上の条件をすべて満たしている。
一方、比較鋼1は、浸炭層のC濃度が下限値に満たないため、浸炭層の表面硬さ及び400℃焼戻硬さが不足し、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。比較鋼2は、Siが上限値を超えているため、浸炭層の400℃焼戻硬さが式(1)の計算値よりも小さくなり、必要とされる400℃焼戻硬さが得られないこととなって、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。
比較鋼3は、Mnが下限値に満たないため、式(2)の計算値が下限値よりも小さくなり、浸炭層の表面硬さ及び400℃焼戻硬さが不足し、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。比較鋼4は、Mnが上限値を超えているため、浸炭層の400℃焼戻硬さが式(1)の計算値よりも小さくなり、必要とされる400℃焼戻硬さが得られないこととなって、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。
比較鋼5は、Crが下限値に満たないため、式(2)の計算値が下限値よりも小さくなり、浸炭層の表面硬さ及び400℃焼戻硬さが不足し、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。比較鋼6は、Crが上限値を超えているため、浸炭層の400℃熱伝導率が不足し、必要とされる400℃焼戻硬さが得られないこととなって、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。比較鋼7は、Moが上限値を超えているため、浸炭層の400℃焼戻硬さが式(1)の計算値よりも小さくなり、必要とされる400℃焼戻硬さが得られないこととなって、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。
比較鋼8は、式(2)の計算値が下限値よりも小さくなり、浸炭層の表面硬さ及び400℃焼戻硬さが不足し、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。比較鋼9〜11は、浸炭層の400℃熱伝導率が不足し、必要とされる400℃焼戻硬さが得られないこととなって、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。
比較鋼12は、浸炭層のC濃度が上限値を超えているため、浸炭層の炭化物面積率が20%を超えてしまい、浸炭層の表面硬さが不足することとなって、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。比較鋼13は、式(2)の計算値が下限値よりも小さくなり、浸炭層の表面硬さ及び400℃焼戻硬さが不足し、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。
比較鋼14,15は、Mnが上限値を超えているため、浸炭層の400℃焼戻硬さが式(1)の計算値よりも小さくなり、必要とされる400℃焼戻硬さが得られないこととなって、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達していない。なお、比較鋼15は比較鋼14に比して炭化物面積率が大きく設定されていることから、浸炭層の表面硬さも不足した結果となっている。
以上の説明からも明らかなように、上記実施例1によれば、高速滑りを伴う環境下においても、焼戻硬さ及び熱伝導率の両立を図ることができるので、トラクションドライブに適用した場合においても優れた耐焼付性を発揮することができる。
上記実施例1では、表1に示す各種合金組成の鋼から耐焼付性を評価するための試験片10を作成したが、以下に述べる実施例2では、実施例1の発明鋼2を使用し、浸炭処理の平衡C濃度、拡散処理の拡散時間などを変えることで、1.5mm硬さが450HV以上となる実施例としての鋼と、450HV未満となる比較例としての鋼とをそれぞれ複数個作成し、各鋼から耐転がり寿命を評価するための試験片20を作成した。各試験片20は、図2に示されるようなローラー部21と軸部22が一体の段付き円柱状(例えば、ローラー部21の外径φ26×軸部22の軸長130mm)に形成した。この場合、試験片20に対して転走面の表面粗さ(算術平均)RaがRa≦0.04μmとなるようなラップ仕上げ加工を施した。
また、試験片20において、例えば図4に示されるように、ローラー部21を軸部22の軸線と直交する向きに切断した。試験荷重は300gで負荷時間は15秒とし、測定位置はローラー部21の転走面21aから1.50mmの深さ位置における断面21bとした。
(耐剥離性評価方法)
耐転がり寿命の評価方法の一つとして、図2に示されるようなローラーピッチング試験により、剥離寿命を評価することとした。ローラーピッチング試験では、負荷用ローラー30と試験片20を油潤滑下にて一定面圧で接触させ、滑りを与えながら回転させた。試験条件は面圧3.0GPa、滑り率10%、回転数1850rpmとした。潤滑油はトラクションドライブ用オイルを用い、油温323K、流量4L/minで試験を行った。負荷用ローラー30は、軸受鋼SUJ2を焼入れ・焼戻し後に表面研削したもの(例えば、直径130mm、曲率半径20mmのクラウニング加工を施したもの)を用いた。上記条件におけるピッチングが発生するまでの寿命を評価した。
(陥没量評価方法)
耐転がり寿命の評価方法の一つとして、更に陥没量を評価することとした。上記のローラーピッチング試験において、試験前及び試験後の試験片20における未剥離部の形状プロファイルを測定し、初期面からの深さを陥没深さと定義した。試験片20におけるローラー部21の転走面21aについて、表面粗さ測定器(東京精密株式会社製:SURFCOM 1500SD-13)を用いて軸方向の形状プロファイルを測定した。この場合、測定長さ21mm、カットオフ波長0.8mmとした。
表2に測定結果を示す。ここでは、ローラーピッチング試験において剥離寿命が5×10^6回以上で、かつ、陥没量が10μm以下であれば、耐転がり寿命特性を良とした。
Figure 2016125133
実施例に示されるように1.5mm深さの硬さが450HV以上であると、表2、図11及び図12に示されるように、5×10^6回以上の剥離寿命が得られ、陥没量が10μm以下となることが分かる。一方、比較例に示されるように1.5mm深さの硬さが450HVに満たないと、剥離寿命が5×10^6回に達することなく、陥没量も10μmを超えることとなった。
上記実施例2によれば、上記実施例1の条件に加えて、更に1.5mm深さの硬さを450HV以上に設定することで、耐焼付性を向上させつつも、転がり寿命を良好に向上させることができる。
以下に述べる実施例3では、実施例1の発明鋼2を使用し、かつ実施例1の発明鋼2の場合と同様な熱処理を施して対となる試験片10を作成し、その試験片10の固定側と回転側とで、それぞれ表面仕上げ加工の程度を変えることで、転走面10aの真円度が20μm以下、表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2が0.01〜0.10μm、かつ合成粗さσが0.07μm以下となる実施例としての試験片10と、真円度、表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2及び合成粗さσの少なくとも一つが上記条件を満たさない比較例としての試験片10とをそれぞれ複数個作成した。
(真円度測定方法)
各試験片10の転走面10aについて、真円度・円筒形状測定機(東京精密株式会社製:ロンコム76A)を用いて各転走面10aの円周方向の真円度を測定した。測定スピードは6rpmとした。
(表面粗さ測定方法)
各試験片10の転走面10aについて、表面粗さ測定機(東京精密株式会社製:SURFCOM1500SD-13)を用いて軸方向の表面粗さを測定した。測定長さ8mm、カットオフ波長0.8mm、傾斜補正は最小二乗曲線補正とした。この場合、対となる一方の転走面10aの表面粗さをRq1とし、他方の転走面10aの表面粗さをRq2とした。表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2を用いた合成粗さσは次式(3)で算出される。
σ=√(Rq1^2+Rq2^2)…(3)
表3に測定結果を示す。実施例に示されるように転走面10aの真円度が20μm以下、表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2が0.01〜0.10μm、かつ合成粗さσが0.07μm以下であると、表3及び図13に示されるように、1000N以上の焼付き限界荷重が得られることが分かる。一方、比較例に示されるように真円度は20μm以下であるが、合成粗さσが0.07μmを超える場合や、これとは逆に合成粗さσは0.07μm以下であるが、一方の真円度が20μmを超える場合も、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達しないこととなった。また、表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2のいずれかが0.10μmを超えることにより、合成粗さσが0.07μmを超える場合も、焼付き限界荷重が規定の1000Nに達しないこととなった。
Figure 2016125133
上記実施例3によれば、上記実施例1の条件に加えて、更に転走面10aの真円度を20μm以下、表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2を0.01〜0.10μm、かつ合成粗さσを0.07μm以下に設定することで、耐焼付性をより一層向上させることができる。また、上記実施例2の条件に加えて、転走面10aの真円度を20μm以下、表面粗さ(二乗平均平方根)Rq1,Rq2を0.01〜0.10μm、かつ合成粗さσを0.07μm以下に設定するようにすれば、耐焼付性をより一層向上させつつ、転がり寿命を向上させることができる。
10 試験片
10a 転走面
11 ビッカース硬さ試験用ブロック
11a 外周面
20 試験片
21 ローラー部
21a 転走面
21b 断面
30 負荷用ローラー
30a 転走面

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.40%、
    Si:0.01〜0.50%、
    Mn:0.25〜0.60%、
    Cr:1.00〜3.00%、
    Mo:0.01〜0.50%、
    を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
    浸炭処理後の浸炭層のC濃度が質量%で0.55〜2.00%、前記浸炭層の表面硬さが700HV以上で、さらに前記浸炭層の400℃焼戻硬さが下記式(1)を満たすことを特徴とする耐焼付性に優れた浸炭部材。
    浸炭層の400℃焼戻硬さ≧2000−45×浸炭層の400℃熱伝導率−10×浸炭層の炭化物面積率…(1)
  2. 前記浸炭層の400℃焼戻硬さが450HV以上、前記浸炭層の400℃熱伝導率が28W/mK以上、かつ前記浸炭層の炭化物面積率が20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐焼付性に優れた浸炭部材。
  3. Si,Mn,Cr,Moをそれぞれ質量%で表したとき、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項2に記載の耐焼付性に優れた浸炭部材。
    8≦4.6×Si+7.9×Mn+4.0×Cr+3.5×Mo−0.4×浸炭層の炭化物面積率≦15…(2)
  4. 前記浸炭部材の1.5mm深さの硬さが450HV以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の耐焼付性に優れた浸炭部材。
  5. 入力された駆動力を転がり摩擦により出力側に伝達する、複数の対となる入力側及び出力側ローラーに用いられ、前記複数の対となる入力側及び出力側ローラーの各転走面の真円度が20μm以下及び表面粗さRq1,Rq2がそれぞれ0.01〜0.10μm、かつ下記式(3)で示される合成粗さσが0.07μm以下に設定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の耐焼付性に優れた浸炭部材。
    σ=√(Rq1^2+Rq2^2)…(3)
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