JP2016124925A - 単官能光重合性単量体、光重合性組成物、非水電解質二次電池用のセパレータとその製造方法、および非水電解質二次電池 - Google Patents
単官能光重合性単量体、光重合性組成物、非水電解質二次電池用のセパレータとその製造方法、および非水電解質二次電池 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】本発明の単官能光重合性単量体(M)は、1つの1価の光重合性官能基(GX)と、少なくとも1つの配位原子を含む1価の有機基からなり、金属イオンに対してキレート配位することが可能なキレート配位基(GY)と、光重合性官能基(GX)とキレート配位基(GY)とを連結する2価の有機基からなる連結基(GZ)とを含む。本発明の光重合性組成物(C)は、単官能光重合性単量体(M)と、光重合開始剤(I)と、溶媒(S)とを含む。
【選択図】なし
Description
本発明はまた、上記の光重合性組成物を用いて製造された非水電解質二次電池用のセパレータとその製造方法、およびこれを含む非水電解質二次電池に関する。
非水電解質二次電池は、一対の電極である正極および負極と、これらの間を絶縁するセパレータと、非水電解質とを備える。
非水電解質二次電池用の電極の構造としては、集電体とその上に形成された電極活物質層とを含む積層構造が知られている。
リチウムイオン二次電池では、Liイオンの移動により充放電がなされるが、電池内には充放電に寄与するLiイオン以外に微量の金属イオンが存在し得る。
Liイオン以外の微量の金属イオンとしては、正極活物質から溶出するNiイオン、CoイオンまたはMnイオン等、集電体から溶出するAlイオンまたはCuイオン等、あるいは、製造工程で混入する金属異物から溶出するCuイオンまたはFeイオン等が挙げられる。
上記のLiイオン以外の金属イオンは負極上で還元されて金属として析出し、この析出金属は内部短絡あるいは容量低下の原因となり得る。
かかる問題は、リチウムイオン二次電池に限らず、任意の非水電解質二次電池において生じ得る。
特許文献1において、上記銅イオンとキレート結合を形成する基としては、イミノジ酢酸基が挙げられている(請求項2)。
特許文献1では、グラフト重合を採用している。一般にセパレータ本体に対して充分な量のグラフト鎖を導入するには強力な電子線が必要であるが、セパレータ本体に強力な電子線を照射すると、セパレータ本体が変形してしまう恐れがある。セパレータ本体の変形の恐れのない電子線照射条件では、充分な量のグラフト鎖を安定的に付与することが難しい。したがって、特許文献1に記載の方法では、セパレータ本体の変形の恐れなく、充分な量のキレート成分を付与することが難しい。
本発明はまた、セパレータ本体に対してより多くのキレート成分が付与され、かつ、付与されたキレート成分の脱離が抑制され、不要な金属イオンに起因する容量低下を抑制することが可能な非水電解質二次電池用のセパレータとその製造方法を提供することを目的とするものである。
1つの1価の光重合性官能基(GX)と、
少なくとも1つの配位原子を含む1価の有機基からなり、金属イオンに対してキレート配位することが可能なキレート配位基(GY)と、
光重合性官能基(GX)とキレート配位基(GY)とを連結する2価の有機基からなる連結基(GZ)とを含むものである。
上記の本発明の単官能光重合性単量体(M)と、
光重合開始剤(I)と、
溶媒(S)とを含むものである。
多孔質高分子膜からなるセパレータ本体の電極接触面および/または細孔内表面に対して、上記の本発明の光重合性組成物(C)を重合コーティングしてなるものである。
上記の本発明の光重合性組成物(C)を用意する工程(1)と、
多孔質高分子膜からなるセパレータ本体の電極接触面および/または細孔内表面に対して光重合性組成物(C)を付着させる工程(2)と、
前記セパレータ本体に付着させた光重合性組成物(C)を乾燥する工程(3)と、
前記セパレータ本体に付着させた乾燥後の光重合性組成物(C)を光重合する工程(4)とを有するものである。
本発明では、単官能光重合性単量体(M)の重合体マトリクスが、セパレータ本体に対して、固着剤のように作用して強固に固着することができる。
本発明では、固着剤として作用する単官能光重合性単量体(M)の重合体マトリクスがすべてキレート成分となる。
本発明によればまた、セパレータ本体に対してより多くのキレート成分が付与され、かつ、付与されたキレート成分の脱離が抑制され、不要な金属イオンに起因する容量低下を抑制することが可能な非水電解質二次電池用のセパレータとその製造方法を提供することができる。
上記の本発明の非水電解質二次電池用のセパレータと、当該セパレータを挟持する一対の電極とを備えたものである。
本発明によればまた、セパレータ本体に対してより多くのキレート成分が付与され、かつ、付与されたキレート成分の脱離が抑制され、不要な金属イオンに起因する容量低下を抑制することが可能な非水電解質二次電池用のセパレータとその製造方法を提供することができる。
本発明の単官能光重合性単量体(M)は、
1価の光重合性官能基(GX)と、
金属イオンに対してキレート配位することが可能な1価のキレート配位基(GY)と、
光重合性官能基(GX)とキレート配位基(GY)とを連結する2価の有機基からなる連結基(GZ)とを含む。
(GX)−(GZ)−(GY)・・・(M)
光重合性官能基(GX)としては、(メタ)アクリロイル基またはアリル基等が好ましく、反応性が高いことから、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、メタクリロイル基およびアクリロイル基を意味する。
(メタ)アクリロイル基およびアリル基等の光重合性官能基(GX)は、置換基を有していてもよい。
配位原子としては、窒素原子(N)および酸素原子(O)等が挙げられる。
1つの金属イオンに対して複数の配位原子が配位して、金属イオンが捕捉される。
金属イオンが銅イオンであり、配位原子が窒素原子である場合、銅イオンの周りを4つの窒素原子が取り囲んで配位して銅イオンを捕捉する状態が、最も安定的な捕捉状態である。したがって、金属イオンが銅イオンであり、配位原子が窒素原子である場合、1つの単官能光重合性単量体(M)が4以上の窒素原子を含むことが特に好ましい。ただし、1つの単官能光重合性単量体(M)に含まれる窒素原子の数は4以上でなくても、捕捉効果は発現する。
窒素原子は、銅イオン以外の金属イオンに対しても配位して、捕捉することができる。
捕捉効果が効果的に発現することから、キレート配位基(GY)は、炭素原子数が3以上であり、配位原子の数が3以上であることが好ましい。キレート配位基(GY)の配位原子の数はより好ましくは4以上である。
−(R−NH)n−・・・(LPA)
上記式(LPA)中、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基である。なお、n個の−R−NH−基は、Rの炭素原子数が同一でも非同一でもよい。
nは、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
なお、上記直鎖ポリアミンの両末端は、非置換の場合、−NH2である。
環状ポリアミン(RPA)についても、直鎖ポリアミン(LPA)と同様、n個の−R−NH−基は、Rの炭素原子数が同一でも非同一でもよい。
環状ポリアミン(RPA)についても、直鎖ポリアミン(LPA)と同様、nは好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
置換基としては特に制限されず、公知の任意の置換基を適用できる。
例えば、少なくとも1つの−R−NH−基において、窒素原子に結合している水素原子がアルキル基等に置換されていてもよい。
その他のキレート配位基(GY)としては、イミノ二酢酸等の窒素原子含有ジカルボン酸が連結基(GZ)に連結する結合手を有した構造を有する1価の有機基が挙げられる。
連結基(GZ)の炭素原子数は特に制限されない。ただし、連結基(GZ)の炭素原子数が多い程、連結基(GZ)の柔軟性(分子運動性)が増す。そのため、単官能光重合性単量体(M)を光重合した後、キレート配位基(GY)が柔軟に動いて、金属イオンを捕捉しやすくなる。
連結基(GZ)の炭素原子数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
酸素原子等の負電荷を有する原子は、Liイオン等の正の伝導イオンとイオン結合できる。そのため、Liイオン等の正の伝導イオンのいわゆるホッピングを可能とし、電池のイオン伝導性を高め、電池性能を向上することができる。
したがって、連結基(GZ)としては、少なくとも1つのアルキレンオキシド基(AO)を含む基が好ましい。
かかる連結基(GZ)としては、下記式で表される(ポリ)アルキレングリコール構造(PAG)を含む基が挙げられる。
−(AO)n−・・・(PAG)
上記式(PAG)中、Aは置換基を有していてもよいアルキレン基であり、Oは酸素原子であり、(AO)はアルキレンオキシド基である。
nはアルキレンオキシド基(AO)の数であり、nは1以上、好ましくは2以上である。
(ポリ)アルキレングリコール構造(PAG)中の炭素原子数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
アルキレンオキシド基(AO)としては、エチレンオキシド基(−CH2CH2O−)等が挙げられる。この場合、nは1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは3〜20である。
単官能光重合性単量体(ML−1)は、光重合性官能基(GX)としてアクリロイル基を有し、キレート配位基(GY)として直鎖ポリアミン構造(LPA)を有し、連結基(GZ)としてポリアルキレングリコール構造(PAG)を有する。
単官能光重合性単量体(MR−1)は、光重合性官能基(GX)としてアクリロイル基を有し、キレート配位基(GY)として環状ポリアミン構造(RPA)を有し、連結基(GZ)としてポリアルキレングリコール構造(PAG)を有する。
なお、本明細書の化学式中の高分子構造部分において、主鎖の炭素原子以外にNに結合している原子は特に明記しない限り、水素原子である。
化合物(1−5)は、光重合性官能基(GX)としてアクリロイル基を有し、キレート配位基(GY)として直鎖ポリアミン(LPA)構造を有し、連結基(GZ)としてアルキル基を有する。
化合物(2−6)は、光重合性官能基(GX)としてアクリロイル基を有し、キレート配位基(GY)として環状ポリアミン(RPA)構造を有し、連結基(GZ)としてポリアルキレングリコール構造(PAG)を有する。
Bn:ベンジル基、
Boc2O:二炭酸ジ-tert-ブチル、
Boc:tert-ブトキシカルボニル基、
MsCl:メタンスルホニルクロリド、
Ms:メシル基、
Ts:トシル基、
Me:メチル基、
TFA:トリフルオロ酢酸。
本発明の単官能光重合性単量体(M)の用途は特に制限されない。
本発明の単官能光重合性単量体(M)は、多孔質高分子膜からなる非水電解質二次電池用のセパレータ本体の改質用として好適である。
本発明の光重合性組成物(C)は、
上記の本発明の単官能光重合性単量体(M)と、
光重合開始剤(I)と、
溶媒(S)とを含む。
本発明の光重合性組成物(C)は、多孔質高分子膜からなる非水電解質二次電池用のセパレータ本体の改質用として好適である。
光重合開始剤(I)としては特に制限されず、公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤(I)としては、
メチルフェニルグリオキシレート、および9,10−フェナンスレンキノン等のα−ジケトン類;
ベンゾイン等のアシロイン類;
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、およびイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;
ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;
アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASFジャパン(株)社製「IRGACURE907」)、および2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類;
アントラキノン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノン、および1,4−ナフトキノン等のキノン類;
2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、および4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル等のアミノ安息香酸類;
フェナシルクロライド、およびトリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物;
アシルホスフィンオキシド類;
ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物;
1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、アセチルオキシム等のオキシムエステル類;
トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、およびジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族アミン類;
並びに、
2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,4−ブタノールビス(3−メルカプトブチレート)、トリス(2−メルカプトプロパノイルオキシエチル)イソシアヌレート、およびペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等のチオール化合物等が挙げられる。
架橋剤(B)としては、公知の架橋剤を用いることができる。
架橋剤(B)としては、2つ以上の光重合性官能基を有する光重合性単量体等が挙げられる。
ここで、光重合性官能基としては、単官能光重合性単量体(M)中の光重合性官能基(GX)と同様、(メタ)アクリロイル基またはアリル基等が好ましく、反応性が高いことから、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
(メタ)アクリロイル基およびアリル基等の光重合性官能基は、置換基を有していてもよい。
(GX1)−(GM)−(GX2)・・・(BI)
上記式(BI)中、(GX1)および(GX2)はそれぞれ独立に1価の光重合性官能基である。
(GM)は任意の2価の有機基である。
上記したように、(GX1)および(GX2)はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基またはアリル基等であることが好ましく、反応性が高いことから、(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。反応性が高いことから、(GX1)および(GX2)はアクリロイル基であることが特に好ましい。(GX1)および(GX2)がアクリロイル基である場合、二官能光重合性単量体(BI)はジアクリレート化合物である。
架橋剤(B)としては、単官能光重合性単量体(M)と同様、(ポリ)アルキレングリコール構造(PAG)を含むものが挙げられる。
かかる架橋剤(B)としては、下記式で表される二官能光重合性単量体(BI−a)が挙げられる。
(GX1)−(AO)n-(GX2)・・・(BI−a)
上記式(BI−a)中、(GX1)および(GX2)は上記と同様である。
Aは置換基を有していてもよいアルキレン基であり、Oは酸素原子であり、(AO)はアルキレンオキシド基である。
nはアルキレンオキシド基(AO)の数であり、nは1以上、好ましくは2以上である。
(ポリ)アルキレングリコール構造(PAG)中の炭素原子数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
アルキレンオキシド基(AO)としては、エチレンオキシド基(−CH2CH2O−)等が挙げられる。この場合、nは1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは3〜20である。
CH2=CH−CO−O(AO)n−OC−CH=CH2(n≧1)・・・(BI−a1)
また、架橋剤(B)を用いる場合、セパレータ本体の細孔内の壁面に沿って重合体を薄く生成することができ、細孔が生成される重合体によって閉塞されることを抑制できる。
溶媒(S)としては特に制限されず、水等の無機溶媒でもよいし、エタノール等の各種アルコール等の有機溶媒でもよい。
溶媒(S)は、複数種の混合溶媒でもよい。
光重合性組成物(C)は上記成分の他、必要に応じて、1種または2種以上の任意成分を含むことができる。
ただし、セパレータ本体に対して、より多くのキレート配位基(GY)を導入できることから、光重合性組成物(C)中の単官能光重合性単量体の総量に対して、キレート配位基(GY)を含む単官能光重合性単量体(M)の割合が多く、キレート配位基(GY)を含まない単官能光重合性単量体(N)の割合が少ない方が好ましい。
単官能光重合性単量体(M)と同様の理由から、単官能光重合性単量体(N)は、酸素原子等の負電荷を有する原子を含むことが好ましく、少なくとも1つのアルキレンオキシド基(AO)を含むことが好ましい。
単官能光重合性単量体(N)としては、単官能光重合性単量体(M)と同様、(ポリ)アルキレングリコール構造(PAG)を含むものが挙げられる。
かかる単官能光重合性単量体(N)としては、下記式で表される光重合性単量体(NI)が挙げられる。
(GX)−(AO)n-(GE)・・・(NI)
上記式(NI)中、(GX)は単官能光重合性単量体(M)中の光重合性官能基(GX)と同様の基である。
Aは置換基を有していてもよいアルキレン基であり、Oは酸素原子であり、AO(OAの場合もある。)はアルキレンオキシド基である。
nはアルキレンオキシド基(AO)の数であり、nは1以上である。
(GE)は、キレート配位機能を有さない任意の1価の有機基である。
CH2=CH−CO−(OA)n-OR(n≧1)・・・(NI−a)
式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基である。
好ましい配合比は、以下の通りである。
単官能光重合性単量体(M)と溶媒(S)との合計100質量部に対して、単官能光重合性単量体(M)の量は1〜50質量部であり、溶媒(S)の量は99〜50質量部であることが好ましい。
単官能光重合性単量体(M)100質量%に対して、架橋剤(B)の添加量は0〜5質量%であることが好ましい。
単官能光重合性単量体(M)100質量%に対して、光重合開始剤(I)の添加量は0.1〜5質量%であることが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池用のセパレータは、
多孔質高分子膜からなるセパレータ本体の電極接触面および/または細孔内表面に対して、上記の本発明の光重合性組成物(C)を重合コーティングしてなるものである。
本発明の非水電解質二次電池用のセパレータの製造方法は、
上記の本発明の光重合性組成物(C)を用意する工程(1)と、
多孔質高分子膜からなるセパレータ本体の電極接触面および/または細孔内表面に対して光重合性組成物(C)を付着させる工程(2)と、
セパレータ本体に付着させた光重合性組成物(C)を乾燥する工程(3)と、
セパレータ本体に付着させた乾燥後の光重合性組成物(C)を光重合する工程(4)とを有する。
セパレータ本体の収縮を抑制するために、乾燥温度は100℃以下が好ましい。
本発明では、セパレータ本体を変形する恐れのある強力な電子線は不要である。
セパレータ本体の電極接触面および/または細孔内表面に対して光重合性組成物(C)を付着させた後、本発明の単官能光重合性単量体(M)を光重合することで、セパレータ本体の少なくとも一方の電極接触面、より好ましくはセパレータ本体の少なくとも一方の電極接触面および細孔内に対して、キレート配位基(GY)を含む高分子キレート剤(P)を重合コーティングすることができる。したがって、単にセパレータ本体を高分子キレート剤(P)溶液に浸漬させる方法に比して、セパレータ本体に対してより強固に高分子キレート剤(P)を固着させることができる。その結果、高分子キレート剤(P)の脱離が高レベルに抑制される。
本発明では、単官能光重合性単量体(M)の重合体マトリクスが、セパレータ本体に対して、固着剤のように作用して強固に固着する。
本発明では、固着剤として作用する単官能光重合性単量体(M)の重合体マトリクスがすべてキレート成分となる。
リチウムイオン二次電池では、Liイオンの移動により充放電がなされるが、電池内には充放電に寄与するLiイオン以外に微量の金属イオンが存在し得る。
Liイオン以外の微量の金属イオンとしては、正極活物質から溶出するNiイオン、CoイオンまたはMnイオン等、集電体から溶出するAlイオンまたはCuイオン等、あるいは、製造工程で混入する金属異物から溶出するCuイオンまたはFeイオン等が挙げられる。
本発明によればまた、セパレータ本体に対してより多くのキレート成分が付与され、かつ、付与されたキレート成分の脱離が抑制され、不要な金属イオンに起因する容量低下を抑制することが可能な非水電解質二次電池用のセパレータとその製造方法を提供することができる。
図1及び図2に、本発明に係る一実施形態の非水電解質二次電池の構成を示す。図1は模式全体図、図2は電極積層体の模式断面図である。
図2に示すように、電極積層体20は、正極21と負極22とがこれらを絶縁するセパレータ23を介して積層されたものである。
外装体11の外面には、外部接続用の2個の外部端子(一方はプラス端子、他方はマイナス端子)12が設けられている。
以下、リチウムイオン二次電池を例として、主な構成要素について説明する。
正極は、公知の方法により、アルミニウム箔などの正極集電体に正極活物質を塗布して、製造することができる。
公知の正極活物質としては特に制限なく、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNixCo(1−x)O2、およびLiNixCoyMn(1−x−y)O2等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる(式中、0<x<1、0<y<1)。
正極活物質として金属リチウムおよび/またはリチウム合金を用いる場合、集電体を用いずに、正極活物質をそのまま負極として用いることができる。
負極活物質としては特に制限なく、Li/Li+基準で2.0V以下にリチウム吸蔵能力を持つものが好ましく用いられる。負極活物質としては、黒鉛等の炭素、金属リチウム、リチウム合金、リチウムイオンのド−プ・脱ド−プが可能な遷移金属酸化物/遷移金属窒化物/遷移金属硫化物、および、これらの組合わせ等が挙げられる。
例えば、水等の分散剤を用い、負極活物質と、変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス等の結着剤と、必要に応じてカルボキシメチルセルロースNa塩(CMC)等の増粘剤とを混合して、ペーストを得、このペーストを銅箔等の集電体上に塗布し、乾燥し、プレス加工して、負極を得ることができる。
非水電解質としては公知のものが使用でき、液状、ゲル状もしくは固体状の非水電解質が使用できる。
例えば、プロピレンカーボネ−トあるいはエチレンカーボネ−ト等の高誘電率カーボネート溶媒と、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の低粘度カーボネート溶媒との混合溶媒に、リチウム含有電解質を溶解した非水電界液が好ましく用いられる。
混合溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/エチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(S)が好ましく用いられる。
リチウム含有電解質としては例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPFn{CkF(2k+1)}(6−n)(n=1〜5の整数、k=1〜8の整数)等のリチウム塩、及びこれらの組合わせが挙げられる。
セパレータとしては、上記の本発明のセパレータを用いる。
すなわち、多孔質高分子膜からなるセパレータ本体の電極接触面および/または細孔内表面に対して、上記の本発明の光重合性組成物(C)を重合コーティングしてなる非水電解質二次電池用のセパレータを用いる。
セパレータ本体としては、PP(ポリプロピレン)製多孔質フィルム、PE(ポリエチレン)製多孔質フィルム、あるいは、PP(ポリプロピレン)−PE(ポリエチレン)の積層型多孔質フィルム等のポリオレフィン製多孔質フィルムが好ましく用いられる。
外装体としては公知のものが使用できる。
二次電池の型としては、円筒型、コイン型、角型、あるいはフィルム型(ラミネート型)等があり、所望の型に合わせて外装体を選定することができる。
実施例1、2において、以下の材料を用意した。
単官能光重合性単量体(MR−1)は、[化6]に示した合成反応スキームと同様の合成反応スキームにて、合成した。
CH2=CH−CO−O(CH2−CH2O)n−OC−CH=CH2(n=9)
表1中、架橋剤(B)および光重合開始剤(I)の添加量は、単官能光重合性単量体(M)100質量%に対する添加量である。
比較例1〜3において、以下の材料を用意した。
CH2=CH−CO−(OCH2−CH2)n-OCH3(n=9)
CH2=CH−CO−O(CH2−CH2O)n−OC−CH=CH2(n=9)
比較例2、3においては、上記材料<5>〜<9>を用い、表2に示す組成で、比較用の組成物(G)を調製した。
表2中、架橋剤(B)、光重合開始剤(I)、および高分子キレート剤(P)の添加量は、単官能光重合性単量体(N)100質量%に対する添加量である。
表2には比較例1についても、配合組成を記載してある。
実施例1、2および比較例1〜3の各例において、セパレータ本体として共通の市販のポリエチレン製セパレータを用意した。
比較例2、3の各例においては、セパレータ本体を各例において得られた比較用の光重合性組成物(G)に5分間浸漬させ、光重合性組成物(G)から取り出したセパレータ本体を100℃で熱風乾燥させた後、セパレータ本体に対してピーク波長365nmの紫外光(UV)を3000mJ照射して光重合させて、比較用のセパレータを得た。
実施例1、2の各例においては、セパレータ本体を各例において得られた光重合性組成物(C)に5分間浸漬させ、光重合性組成物(C)から取り出したセパレータ本体を100℃で熱風乾燥させた後、セパレータ本体に対してピーク波長365nmの紫外光(UV)を3000mJ照射して光重合させて、本発明のセパレータを得た。
セパレータ本体として市販のポリエチレン製セパレータを用意した。
上記のセパレータ本体に対して、ピーク波長172nm、2000mW/cm2の紫外光(UV)を照射した。紫外光(UV)照射直後のセパレータ本体を、10質量%のメタクリル酸グリシジルと0.5質量%のエチレングリコールジメタクリレートとを含むエタノール溶液に浸漬させて、グラフト共重合を行った。
別途、ジメチルスルホキシドの50質量%水溶液に、10質量%のポリエチレンイミン(PEI)(質量平均分子量300)を溶解したポリエチレンイミン溶液を用意した。
上記グラフト共重合後のセパレータ本体を上記ポリエチレンイミン(PEI)溶液に浸漬させて、グラフト共重合後のセパレータ本体に対して高分子キレート剤(P)(ポリエチレンイミン(PEI))を付着させた。その後、エタノール洗浄および乾燥を実施して、比較用のセパレータを得た。
主な製造条件を表3に示す。
実施例1、2および比較例1〜4の各例においては、各例において得られたセパレータを用い、セパレータを変える以外は同条件として、評価用リチウムイオン二次電池を製造した。
正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を用いた。
分散剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用い、上記の正極活物質と、導電剤であるアセチレンブラックと、結着剤であるPVDFとを混合および混練して、ペーストを得た。得られたペーストを集電体であるアルミニウム箔上にドクターブレード法で塗布し、乾燥し、プレス加工して、正極を得た。
正極のサイズは、30mm×30mmとした。
負極活物質として、黒鉛を用いた。
分散剤として水を用い、上記の負極活物質と、結着剤である変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(SBR)と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースNa塩(CMC)とを混合および混練して、ペーストを得た。得られたペーストを集電体である銅箔上に塗布し、乾燥し、プレス加工して、負極を得た。
負極のサイズは、32mm×32mmとした。
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=1/1/1(体積比)の混合溶液を溶媒(S)とし、リチウム塩であるLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解した。さらに、意図的に電解液中にCu2+イオンを含有させるために、Cu塩を1質量%添加した。Cu塩のアニオンとしては、リチウムイオン二次電池の電位に耐えるものを選定した。
以上のようにして、評価用の非水電界液(Cuイオンあり)を調製した。
負極とセパレータと正極とを1層ずつ重ねて電極積層体を得た。この電極積層体とフィルム外装体と非水電解液とを用い、公知方法により、フィルム型(ラミネート型)の評価用リチウムイオン二次電池(Cuイオンあり)を製造した。
実施例1、2および比較例1〜4の各例において得られた評価用リチウムイオン二次電池(Cuイオンあり)について、室温(20〜25℃)にて、充放電レート1Cの条件で、3V−4V間の充放電を500サイクル繰り返し、下記式に基づいて、容量維持率を算出した。
[容量維持率(%)]=[サイクル後の電池容量]/[初期の電池容量]×100
評価結果を表1〜表3に示す。
11 外装体(電池容器)
12 外部端子
20 電極積層体
21 正極
22 負極
23 セパレータ
Claims (14)
- 1つの1価の光重合性官能基(GX)と、
少なくとも1つの配位原子を含む1価の有機基からなり、金属イオンに対してキレート配位することが可能なキレート配位基(GY)と、
光重合性官能基(GX)とキレート配位基(GY)とを連結する2価の有機基からなる連結基(GZ)とを含む、
単官能光重合性単量体。 - 光重合性官能基(GX)は、置換基を有していてもよい(メタ)アクリロイル基または置換基を有していてもよいアリル基である、
請求項1に記載の単官能光重合性単量体。 - キレート配位基(GY)は、炭素原子数が3以上であり、前記配位原子の数が3以上である、
請求項1または2に記載の単官能光重合性単量体。 - 前記配位原子は、窒素原子または酸素原子である、
請求項1〜3のいずれかに記載の単官能光重合性単量体。 - キレート配位基(GY)は、直鎖ポリアミン、環状ポリアミン、およびポリエチレンイミンからなる群より選択され、前記配位原子として窒素原子を含む炭素原子数3以上の窒素原子含有高分子の1つの窒素原子が連結基(GZ)に連結する結合手を有した構造を有する1価の有機基である、
請求項1〜4のいずれかに記載の単官能光重合性単量体。 - 連結基(GZ)は少なくとも1つのアルキレンオキシド基を含む、
請求項1〜5のいずれかに記載の単官能光重合性単量体。 - 連結基(GZ)の炭素原子数が3以上である、
請求項1〜6のいずれかに記載の単官能光重合性単量体。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の単官能光重合性単量体(M)と、
光重合開始剤(I)と、
溶媒(S)とを含む、
光重合性組成物。 - さらに架橋剤(B)を含む、
請求項8に記載の光重合性組成物。 - 架橋剤(B)は2つ以上の光重合性官能基を含む光重合性単量体である、
請求項9に記載の光重合性組成物。 - 多孔質高分子膜からなる非水電解質二次電池用のセパレータ本体の改質用である、
請求項8〜10のいずれかに記載の光重合性組成物。 - 多孔質高分子膜からなるセパレータ本体の電極接触面および/または細孔内表面に対して、請求項8〜11のいずれかに記載の光重合性組成物(C)を重合コーティングしてなる、
非水電解質二次電池用のセパレータ。 - 請求項8〜11のいずれかに記載の光重合性組成物(C)を用意する工程(1)と、
多孔質高分子膜からなるセパレータ本体の電極接触面および/または細孔内表面に対して光重合性組成物(C)を付着させる工程(2)と、
前記セパレータ本体に付着させた光重合性組成物(C)を乾燥する工程(3)と、
前記セパレータ本体に付着させた乾燥後の光重合性組成物(C)を光重合する工程(4)とを有する、
非水電解質二次電池用のセパレータの製造方法。 - 請求項12に記載の非水電解質二次電池用のセパレータと、当該セパレータを挟持する一対の電極とを備えた、
非水電解質二次電池。
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