(本発明の基礎となった知見)
本発明者らは、前記従来の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を見出した。
本発明者らは、従来のろ過ユニットに関して考察を行った結果、特許文献1に記載されるろ過ユニットを新たに工場等に適用する場合、上述した全ての構成をそのまま新設する必要があることに着目した。そこで、本発明者らは、既存設備の構成をそのまま利用しながら、当該既存設備に対して必要な構成を備えた所定の回収ろ過ユニットを付加的に設けることで、ろ過ユニットの効率的な設営を行うことができることを見出した。上記知見によって、本発明者らは以下の発明を想到した。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態にかかる回収ろ過ユニットを備えた水処理システムの概略構成を示す。図1に示される水処理システム1は、工場等で使用される水を処理するシステムである。水処理システム1は、排水処理設備2と、回収ろ過ユニット3と、水使用機器群4と、制御部5とを備える。
排水処理設備2は、工場等で生じる有機性排水(原水W0)を生物処理して、1次処理水W1を得る設備である。排水処理設備2は、水処理システム1を備える工場等に既に設置された既存の設備として設けられる。
回収ろ過ユニット3は、排水処理設備2で得られた1次処理水W1を回収してろ過し、ろ過した水を水使用機器群4へ補給水等の各種用水として供給するユニットである。回収ろ過ユニット3は、既存の排水処理設備2および水使用機器群4に対して付加的に接続されている。
水使用機器群4は、水を使用する機器としての水使用機器を複数備えた集合体として構成される。水使用機器群4は、回収ろ過ユニット3から所定の処理水(透過水W3a等)の供給を受けるように構成される。
制御部5は、水処理システム1内の各種構成の動作を制御する部分である。制御部5は、排水処理設備2、回収ろ過ユニット3および水使用機器群4内の各構成に接続されており、所定の信号を送受信して各構成を制御可能としている。
上述した構成を備える水処理システム1は、制御部5の制御により、既存の排水処理設備2で処理された1次処理水W1を回収ろ過ユニット3で回収し、回収した水をろ過するとともに、ろ過した水(透過水W3a等)を水使用機器群4へ供給する。このようにして、工場等で生じた有機性排水(原水W0)を処理して得られた処理水を有効に再利用することができる。
また、既存の排水処理設備2(および水使用機器群4)に対して、排水処理設備2の処理水を回収してろ過する回収ろ過ユニット3を付加的に接続しているため、回収ろ過ユニット3の効率的な設営を行うことができる。
次に、これらの排水処理設備2、回収ろ過ユニット3および水使用機器群4の具体的な構成について、図2,3を用いて順に説明する。
図2に示すように、排水処理設備2は、原水槽9と、流量調整槽10と、曝気槽11と、沈降槽12と、通水ラインL1−L6と、ポンプP1−P3と、ブロワB1,B2とを備える。
通水ラインL1は、水処理システム1を備える工場等で生じた有機性排水である原水W0を原水槽9に通水するラインである。原水槽9は、通水ラインL1から供給される原水W0を貯留する槽である。ポンプP1は、原水槽9に貯留されている原水W0を吸引して、通水ラインL2を通じて流量調整槽10に送るポンプである。
流量調整槽10は、原水槽9の下流側に接続され、原水槽9から通水ラインL2を通じて供給される原水W0を貯留する槽である。流量調整槽10は、原水W0を貯留することで、後述する曝気槽11へ供給する原水W0の流量を調整する機能を有する。このような流量調整機能を有する流量調整槽10は、曝気槽11における原水W0の使用量の変動を吸収するように構成される。ブロワB1は、流量調整槽10に貯留されている原水W0を曝気するブロワである。流量調整槽10へ流入する原水W0の水質は変動するため、流量調整槽10内の原水W0が腐敗しないようにブロワB1の曝気により撹拌するものである。ポンプP2は、流量調整槽10に貯留されている原水W0を吸引して、通水ラインL3を通じて曝気槽11に送るポンプである。
曝気槽11は、流量調整槽10の下流側に接続され、流量調整槽10から供給される原水W0を生物処理するための槽である。本実施形態の曝気槽11は、生物処理の中でも特に活性汚泥(図示せず)を用いた活性汚泥処理を行う槽として設けられる。ブロワB2は、曝気槽11に貯留されている原水W0を曝気するブロワである。曝気槽11では、ブロワB2による曝気と活性汚泥を組み合わせた処理を行うことにより、原水W0の活性汚泥処理が行われる。活性汚泥処理された原水W0は、有機物等が除去されて、1次処理水W1となる。通水ラインL4は、曝気槽11で得られた1次処理水W1を沈降槽12に通水するラインである。
沈降槽12は、曝気槽11の下流側に接続され、曝気槽11から供給される1次処理水W1を貯留して不純物を沈降させる槽である。沈降槽12では、時間経過により不純物を沈降させて、不純物とそれを除く上澄み液への分離が行われる。沈降槽12で得られた上澄み液は、通水ラインL5を通じて下水放流される。
曝気槽11には、通水ラインL4とは別に、1次処理水W1を通水する通水ラインL6が接続されている。通水ラインL6は、曝気槽11内の1次処理水W1を排水処理設備2外部の回収ろ過ユニット3に通水するラインである。曝気槽11内に設けられたポンプP3は、曝気槽11内の1次処理水W1を吸引することにより、通水ラインL6を通じて、回収ろ過ユニット3に1次処理水W1を供給するポンプである。
排水処理設備2は、上述した構成により、工場等で生じる有機性排水の原水W0を生物処理(本実施形態では活性汚泥処理)して1次処理水W1を得るとともに、得られた1次処理水W1を下水放流又は回収ろ過ユニット3へ提供するように構成される。
なお、上述した排水処理設備2内のポンプP1―P3およびブロワB1,B2の運転は、水処理システム1が備える制御部5により制御および管理される。
図3に示すように、回収ろ過ユニット3は、既存の排水処理設備2に付加的に接続されるとともに、排水処理設備2から1次処理水W1の供給を受けることにより、排水処理設備2から1次処理水W1を回収するユニットである。回収ろ過ユニット3は、ろ過膜装置13と、タンク14,17,18と、薬剤供給装置15と、逆浸透膜装置16と、通水ラインL7−L15と、ポンプP4,P5と、ブロワB3と、バルブV1−V6とを備える。
ろ過膜装置13は、排水処理設備2から回収した1次処理水W1をろ過膜により膜ろ過分離して、2次処理水W2を得る装置である。本実施形態のろ過膜装置13は、膜分離槽20と、ろ過膜モジュール21と、ブロワB3とを備えて構成される。膜分離槽20は、排水処理設備2から回収した1次処理水W1を貯留する槽である。膜分離槽20内には、浸漬型のろ過膜モジュール21が備えられている。ろ過膜モジュール21は、膜分離槽20内の1次処理水W1を膜ろ過する膜である。本実施形態のろ過膜モジュール21としては、精密ろ過膜モジュール(MF膜)又は限外ろ過膜モジュール(UF膜)が用いられる。ブロワB3は、膜分離槽20に貯留されている1次処理水W1を曝気するブロワである。ポンプP4は、ろ過膜モジュール21を透過した2次処理水W2を吸引するポンプである。
上述した構成を有するろ過膜装置13では、ブロワB3による曝気とポンプP4による吸引を行うことで、膜分離槽20内において1次処理水W1の膜分離活性汚泥処理が行われる。膜分離活性汚泥処理された1次処理水W1は、有機物が生物分解されて、2次処理水W2となる。ポンプP4は、ろ過膜装置13で得られた2次処理水W2を吸引するとともに、通水ラインL7を通じて、吸引した2次処理水W2をタンク14に送る。
タンク14は、ろ過膜装置13の下流側に接続され、ろ過膜装置13から通水ラインL7を通じて供給される2次処理水W2を貯留するタンクである。タンク14は、2次処理水W2を貯留することで、後述する逆浸透膜装置16へ供給する2次処理水W2の流量を調整する機能を有する。このような流量調整機能を有するタンク14は、逆浸透膜装置16における2次処理水W2の使用量の変動を吸収するように構成される。タンク14には、2本の通水ラインL8,L9が接続されている。
通水ラインL8は、タンク14に貯留されている2次処理水W2を下流側の逆浸透膜装置16に通水するラインである。通水ラインL8の途中に設けられたポンプP5は、タンク14に貯留されている2次処理水W2を吸引して、通水ラインL8を通じて逆浸透膜装置16に送るポンプである。ポンプP5はさらに、下流側の逆浸透膜装置16における処理に必要な圧力を提供するように、2次処理水W2を逆浸透膜装置16側に対して加圧する機能を有する。
通水ラインL8の途中には、通水ラインL8中の2次処理水W2に対して所定の薬剤を供給する薬剤供給装置15が接続されている。本実施形態の薬剤供給装置15は、細胞間情報伝達物質を含む薬剤を供給する。細胞間情報伝達物質は、2次処理水W2の供給先である逆浸透膜装置16の逆浸透膜において、バイオフィルムの分散を促進する又はその形成を阻害するための化合物である。
ここで、バイオフィルムの分散を促進する細胞間情報伝達物質は、バイオフィルム分散シグナル物質とも呼ばれる。バイオフィルムの分散を促進する細胞間情報伝達物質を2次処理水W2に供給することで、バイオフィルムの内部に浸透して、フィルム内の細菌に、細菌を浮遊状態に誘導するシグナルを与えて、バイオフィルムを分散させることができる。バイオフィルムとは、細菌が分泌する細胞外多糖(EPS)により形成されたコロニーが膜面で成長したものであり、スライムとも称される。細胞間情報伝達物質(細胞間シグナル物質)とは、細胞間で情報を伝達する物質である。
バイオフィルムの形成を阻害する細胞間情報伝達物質は、バイオフィルム形成シグナル物質と類似構造の阻害物質が該当し、例えば、AHL(アシル化ホモセリンラクトン)を挙げることができる。バイオフィルム形成を阻害する細胞間情報伝達物質を2次処理水W2に供給することで、クオラムセンシングを抑制して、スライムの増殖を抑制することができる。クオラムセンシングは、細胞間伝達機構とも呼ばれ、菌体密度について細胞間情報伝達物質(細胞間シグナル物質)を用いて感知し、それに応じて物質の産生のコントロールを行う機構である。
一方で、通水ラインL9は、タンク14に貯留されている2次処理水W2を後述する水使用機器群4に通水するラインである。通水ラインL9の途中には、当該ラインの開閉を行うバルブV1が設けられている。本実施形態における通水ラインL9は、水使用機器群4のろ過装置24に接続されている。このような通水ラインL9を設けることにより、タンク14に貯留されている2次処理水W2を、水使用機器群4におけるろ過装置24に供給可能に構成されている。
通水ラインL8を通じて2次処理水W2が供給される逆浸透膜装置16は、逆浸透膜モジュール16Aにより2次処理水W2を膜分離し、3次処理水としての透過水W3aおよび濃縮水W3bを得る装置である。逆浸透膜モジュール16Aでの膜分離に必要となる圧力は、上流側のポンプP5による加圧によって提供される。
逆浸透膜装置16には、通水ラインL10と通水ラインL11が接続されている。通水ラインL10は、逆浸透膜装置16で得られた透過水W3aをタンク17へ通水するラインである。通水ラインL10の途中には、当該ラインの開閉を行うバルブV2が設けられている。
通水ラインL11は、逆浸透膜装置16で得られた濃縮水W3bをタンク18へ通水するラインである。通水ラインL11の途中には、接続点J1にて分岐する通水ラインL12が接続されている。通水ラインL12は、前述した薬剤供給装置15とポンプP5の間における通水ラインL8の途中に接続されており、濃縮水W3bの残部を通水ラインL8中の2次処理水W2に供給可能に構成される。これにより、通水ラインL12は、濃縮水W3bの残部を逆浸透膜装置16へ還流する還流ラインとして機能する。通水ラインL12の途中には、通水ラインL8の上流側に還流させる濃縮水W3bの流量を調節するバルブV3が設けられている。
上述した通水ラインL8,L10−L12、ポンプP5および逆浸透膜モジュール16Aを備える装置として、逆浸透膜装置16が構成されている。
逆浸透膜装置16の下流側に接続されるタンク17は、逆浸透膜装置16から通水ラインL10を通じて供給される3次処理水としての透過水W3aを貯留するタンクである。タンク17は、透過水W3aを貯留することで、後述する水使用機器群4へ供給する透過水W3aの流量を調整する機能を有する。このような流量調整機能を有するタンク17は、水使用機器群4における透過水W3aの使用量の変動を吸収するように構成される。タンク17には、通水ラインL13が接続されている。
通水ラインL13は、タンク17に貯留されている透過水W3aを水使用機器群4へ通水するラインである。通水ラインL13の途中には、当該ラインの開閉を行うバルブV4が設けられている。
通水ラインL13は、水使用機器群4における複数の水使用機器に対して透過水W3aを分配して供給可能なように、下流側において複数のラインに分岐している。本実施形態では、通水ラインL13から3つの通水ラインL13a、L13b、L13cが分岐している。通水ラインL13aは、後述する水使用機器群4の蒸気ボイラ装置22に透過水W3aを通水するラインであり、通水ラインL13bは、後述する水使用機器群4の冷却塔装置23に透過水W3aを通水するラインであり、通水ラインL13cは、後述する水使用機器群4のイオン交換装置25に透過水W3aを通水するラインである。このような通水ラインL13a−13cを設けることにより、タンク17に貯留されている透過水W3aを、水使用機器群4における蒸気ボイラ装置22、冷却塔装置23およびイオン交換装置25のいずれにも供給可能に構成される。
タンク17と同様に、逆浸透膜装置16の下流側に設けられたタンク18は、通水ラインL11を通じて供給される3次処理水としての濃縮水W3bを貯留するタンクである。タンク18は、濃縮水W3bを貯留することで、後述する水使用機器群4(特にろ過装置24)へ供給する濃縮水W3bの流量を調整する機能を有する。このような流量調整機能を有するタンク18は、水使用機器群4における濃縮水W3bの使用量の変動を吸収するように構成される。タンク18には、2本の通水ラインL14、L15が接続されている。
通水ラインL14は、タンク18に貯留されている濃縮水W3bを回収ろ過ユニット3の外部に通水(排水)するラインである。通水ラインL14の途中には、外部に排水させる濃縮水W3bの流量を調節するバルブV5が設けられている。
通水ラインL14と並列に設けられた通水ラインL15は、タンク18に貯留されている濃縮水W3bを水使用機器群4へ通水するラインである。通水ラインL15の途中には、当該ラインの開閉を行うバルブV6が設けられている。本実施形態における通水ラインL15は、水使用機器群4のろ過装置24に接続されている。このような通水ラインL15を設けることにより、タンク18に貯留されている濃縮水W3bを、水使用機器群4におけるろ過装置24に供給可能に構成される。
回収ろ過ユニット3は、上述した構成により、排水処理設備2で得られた1次処理水W1を回収してろ過し、ろ過した水(透過水W3a等)を水使用機器群4へ供給するように構成される。
なお、上述した回収ろ過ユニット3のポンプP4,P5、バルブV1−V6、ブロワB3、薬剤供給装置15等の運転は、水処理システム1が備える制御部5により制御および管理される。
回収ろ過ユニット3の下流側に接続された水使用機器群4は、蒸気ボイラ装置22と、冷却塔装置23と、ろ過装置24と、イオン交換装置25とを備える。
蒸気ボイラ装置22は、蒸気を生成するボイラを備え、ボイラによって生成した蒸気を工場等に設置された蒸気の使用機器(負荷機器)へ供給する装置である。蒸気ボイラ装置22には、前述した通水ラインL13aが接続されている。蒸気ボイラ装置22は、通水ラインL13aを通じて、3次処理水としての透過水W3aの供給(ボイラ給水)を受けるように構成される。通水ラインL13aの途中には、バルブV7とポンプP6とが設けられている。バルブV7は、通水ラインL13aの開閉を行うバルブである。ポンプP6は、バルブV7が開かれた状態で、タンク17に貯留されている3次処理水としての透過水W3aを吸引して、通水ラインL13aを通じて蒸気ボイラ装置22へ送るポンプである。
蒸気ボイラ装置22に供給される透過水W3aは、後述するように、蒸気生成用のボイラ給水として使用される。
冷却塔装置23は、工場等に設置された被冷却装置(図示せず)の冷却を行う冷却塔を備えたユニットである。冷却塔装置23には、前述した通水ラインL13bが接続されている。冷却塔装置23は、通水ラインL13bを通じて、3次処理水としての透過水W3aの供給(冷却水の補給水)を受けるように構成される。通水ラインL13bの途中には、バルブV8とポンプP7とが設けられている。バルブV8は、通水ラインL13bの開閉を行うバルブである。ポンプP7は、バルブV8が開かれた状態で、タンク17に貯留されている3次処理水としての透過水W3aを吸引して、通水ラインL13bを通じて冷却塔装置23へ送るポンプである。
冷却塔装置23に供給される透過水W3aは、後述するように、冷却水の補給水として使用される。
ろ過装置24は、ろ過を行うためのろ材(図示せず)を備え、ろ材を用いて原水(工業排水等)中の懸濁物質を捕捉してろ過水を得る装置である。ろ過装置24の具体例としては、砂ろ過装置、活性炭ろ過装置、除鉄除マンガン装置など、ろ過塔に粒子状のろ材からなるろ材床を充填したもの、或いはMF膜/UF膜モジュールを搭載した膜ろ過装置が挙げられる。ろ過装置24には、前述した通水ラインL9と通水ラインL15とが接続されている。ろ過装置24は、通水ラインL9および通水ラインL15を通じて、2次処理水W2および3次処理水としての濃縮水W3bの供給を受けるように構成される。
通水ラインL9の途中には、バルブV9とポンプP8とが設けられている。バルブV9は、通水ラインL9の開閉を行うバルブである。ポンプP8は、バルブV9が開かれた状態で、タンク14に貯留されている2次処理水W2を吸引して、通水ラインL9を通じてろ過装置24へ送るポンプである。通水ラインL15の途中には、バルブV10とポンプP9とが設けられている。バルブV10は、通水ラインL15の開閉を行うバルブである。ポンプP9は、バルブV10が開かれた状態で、タンク18に貯留されている3次処理水としての濃縮水W3bを吸引して、通水ラインL15を通じてろ過装置24へ送るポンプである。
ろ過装置24に供給される2次処理水W2および濃縮水W3bは、後述するように、ろ過装置24が備えるろ材の能力再生処理における再生用水(逆洗浄用水,濯ぎ用水)として使用される。
イオン交換装置25は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂(図示せず)の併用により水中の溶存塩類を除去して純水(脱塩水)を得る装置である。イオン交換装置25の具体例としては、混床式イオン交換装置や2床2塔式イオン交換装置が挙げられる。本実施形態におけるイオン交換装置25は特に、ろ過装置24のろ過水をイオン交換処理することにより純水を製造する装置として構成される。ろ過装置24によるろ過処理は、イオン交換装置25によるイオン交換処理の前処理として行われる。イオン交換装置25により製造された純水は各種用途(製造用水等として)に用いられる。
イオン交換装置25には、前述した通水ラインL13cが接続されている。イオン交換装置25は、通水ラインL13cを通じて、3次処理水としての透過水W3aの供給を受けるように構成される。通水ラインL13cの途中には、バルブV11とポンプP10とが設けられている。バルブV11は、通水ラインL13cの開閉を行うバルブである。ポンプP10は、バルブV11が開かれた状態で、タンク17に貯留されている3次処理水としての透過水W3aを吸引して、通水ラインL13cを通じてイオン交換装置25へ送るポンプである。
イオン交換装置25に供給される透過水W3aは、後述するように、イオン交換装置25が備えるイオン交換樹脂床の能力再生処理における再生用水として使用される。
上述した構成により、水使用機器群4は、3次処理水としての透過水W3aを蒸気ボイラ装置22、冷却塔装置23およびイオン交換装置25にて供給を受け、2次処理水W2又は3次処理水としての濃縮水W3bをろ過装置24にて供給を受けるように構成される。
上述した水使用機器群4の構成において、第1の水使用機器である蒸気ボイラ装置22(又は冷却塔装置23)に透過水W3aを供給する第1の給水手段として、通水ラインL13a、バルブV7およびポンプP6(又は通水ラインL13b、バルブV8およびポンプP7)が設けられている。また、第2の水使用機器であるイオン交換装置25に透過水W3aを供給する第2の給水手段として、通水ラインL13c、バルブV11およびポンプP10が設けられている。また、第3の水使用機器であるろ過装置24に濃縮水W3bを供給する第3の給水手段として、通水ラインL15、バルブV10およびポンプP9が設けられている。また、第3の水使用機器であるろ過装置24に2次処理水W2を供給する第4の給水手段として、通水ラインL9、バルブV9およびポンプP8が設けられている。
上述した水使用機器群4の各装置、ポンプおよびバルブ等の運転は、水処理システム1が備える制御部5により制御および管理される。
本実施形態における制御部5は、前述した回収ろ過ユニット3から水使用機器群4への各種処理水の供給に関して、予め設定された時間帯に応じて、水使用機器群4内のいずれかの構成へ選択的に給水を行うように制御を行う。当該制御の詳細については、後述する水処理システム1の動作の説明にて説明する。
次に、本実施形態の水処理システム1の動作について、図1−3を参照しながら説明する。なお、上記では水処理システム1の各種構成について説明したが、説明や図示を省略した他の構成が水処理システム1に含まれてもよい。例えば、上述した通水ラインL1−L15には、図示を省略しているが、原水W0、1次処理水W1、2次処理水W2並びに3次処理水としての透過水W3aおよび濃縮水W3bを送出するポンプや、流路を開閉するバルブ等が適宜設けられている。これらのポンプやバルブ等も、水処理システム1の制御部5によって制御されている。
水処理システム1の動作例として、水処理システム1の運転形態1−3について説明する。当該運転形態1−3は、回収ろ過ユニット3で生じる各種処理水を水使用機器群4の異なる構成にそれぞれ給水する形態である。運転形態1は、3次処理水としての透過水W3aを、水使用機器群4の蒸気ボイラ装置22又は冷却塔装置23へ補給水として供給するものである。運転形態2は、3次処理水としての透過水W3aを、水使用機器群4のイオン交換装置25へ能力再生処理の再生用水として供給するものである。運転形態3は、3次処理水としての濃縮水W3bおよび2次処理水W2を、水使用機器群4のろ過装置24へ能力再生処理の再生用水(逆洗浄用水,濯ぎ用水)として供給するものである。
制御部5は、水使用機器群4の各構成における時間帯ごとの水の使用量に応じて、運転形態1−3のいずれかを選択して行うように予めプログラミングされている。これにより、予め設定された時間帯に応じて、運転形態1−3のいずれかが選択的に行われる。このような制御により、回収ろ過ユニット3で生じる各種処理水を時間帯に応じて適切に分配して、水処理システム1全体として回収ろ過ユニット3で生じる処理水を有効に利用するものである。時間帯の具体例としては、運転形態1が日中(例えば、9時―18時)であり、運転形態2が例えば、20時―22時であり、運転形態3が例えば、24時―翌2時である。
(運転形態1)
図1に示すように、まず、水処理システム1を備える工場等の設備に生じた有機性排水(原水W0)が、排水処理設備2に供給される。具体的には、図2に示すように、通水ラインL1を通じて、原水W0が原水槽9へ供給される。ここで、水処理システム1が運転されると、水処理システム1が備える制御部5の制御により、排水処理設備2において、ポンプP1―P3およびブロワB1,B2が起動される。
ポンプP1が原水槽9内の原水W0を吸引することにより、通水ラインL2を通じて、下流側の流量調整槽10に原水W0が供給される。流量調整槽10では、ブロワB1による曝気が行われる。この曝気により、流量調整槽10内の原水W0が撹拌されることで、原水W0の腐敗を防止するようにしている。ポンプP2が流量調整槽10内の原水W0を吸引することにより、通水ラインL3を通じて、下流側の曝気槽11に原水W0が供給される。曝気槽11では、活性汚泥を含んだ状態でブロワB2による曝気が行われることにより、原水W0の活性汚泥処理が行われる。原水W0の活性汚泥処理により、原水W0内の有機物が生物分解されて、1次処理水W1が生成される。生成された1次処理水W1は、通水ラインL4を通じて沈降槽12に送られる、あるいは通水ラインL6を通じて回収ろ過ユニット3に送られる。
排水処理設備2の沈降槽12では、1次処理水W1に含まれる活性汚泥の自然沈降処理が行われる。当該沈降処理により、活性汚泥とそれを除く上澄み液に1次処理水W1を分離することができる。上澄み液は、通水ラインL5を通じて下水放流され、沈降した活性汚泥は別途、曝気槽11へ返送されるか、余剰汚泥として廃棄される。
一方、通水ラインL6においては、ポンプP3が曝気槽11内の1次処理水W1を吸引することにより、排水処理設備2外部の回収ろ過ユニット3に1次処理水W1が供給される。これにより、排水処理設備2で処理された1次処理水W1を回収ろ過ユニット3に回収させることができる。なお、ポンプP3のON/OFFおよび回転数は、例えば膜分離槽20の水位に応じて、水処理システム1が備える制御部5により制御される。
図3に示すように、回収ろ過ユニット3においては、排水処理設備2からの1次処理水W1は、ろ過膜装置13の膜分離槽20に回収される。ここで、水処理システム1が運転されると、回収ろ過ユニット3において、制御部5の制御により、ポンプP4,P5、ブロワB3が起動されるとともに、バルブV2,V4,V5は開かれた状態とされる。一方で、バルブV1,V6は閉じた状態とされる。このような制御により、水使用機器群4に対して、通水ラインL9,L15を通じた給水は行わず、通水ラインL13を通じた給水のみを行うようにする。
ろ過膜装置13では、膜分離槽20内において1次処理水W1に対して、ブロワB3による曝気処理とろ過膜モジュール21による膜ろ過処理が同時に行われる。これにより、膜分離槽20内の1次処理水W1が膜分離活性汚泥処理され、2次処理水W2が生成される。膜分離槽20内における膜分離活性汚泥処理では、1次処理水W1中に未分解の有機物が残留していた場合には、更なる分解が行われる。また、1次処理水W1中に固形分(活性汚泥)が混入していた場合には、ろ過膜モジュール21によって物理的に固形分と水とが分離される。そのため、ろ過膜装置13で得られる2次処理水W2は、前述した排水処理設備2で得られる1次処理水W1に比べて浄化が進み、水質が格段に向上する。その後、ポンプP4がろ過膜モジュール21を透過した2次処理水W2を吸引することにより、通水ラインL7を通じて、下流側のタンク14に2次処理水W2が供給される。
タンク14には、2次処理水W2が貯留される。タンク14に所定量の2次処理水W2が貯留されるように、制御部5によって、ポンプP4のON/OFFおよび回転数が制御される。
制御部5の制御により、バルブV1は閉じられた状態にある。よって、タンク14に貯留されている2次処理水W2は、通水ラインL9には通水されない。通水ラインL9に2次処理水W2を通水する制御については、運転形態3の説明(2次処理水W2をろ過装置24へ再生用水(濯ぎ用水)として供給する形態の説明)にて後述する。
一方、タンク14に貯留されている2次処理水W2をポンプP5が吸引することにより、通水ラインL8を通じて、下流側の逆浸透膜装置16に2次処理水W2が供給される。このとき、通水ラインL8の途中に設けられた薬剤供給装置15から、2次処理水W2に細胞間情報伝達物質を含む薬剤が供給される。このような薬剤が供給された2次処理水W2が逆浸透膜装置16に供給される。
通水ラインL8を通じて2次処理水W2が供給される逆浸透膜装置16では、2次処理水W2に対して、上流側のポンプP5による加圧とともに逆浸透膜モジュール16Aによる処理が行われる。逆浸透膜モジュール16Aにおいては、逆浸透膜によって2次処理水W2に含まれる溶存塩類が分離される。これにより、溶存塩類が除去された純度の高い透過水W3aと、溶存塩類が濃縮された濃縮水W3bとを、3次処理水としてそれぞれ生成することができる。透過水W3aは、通水ラインL10に通水され、濃縮水W3bは、通水ラインL11に通水される。ここで、逆浸透膜装置16に供給される2次処理水W2には、薬剤供給装置15から細胞間情報伝達物質を含む薬剤が添加されている。よって、2次処理水W2を利用して膜分離を行う逆浸透膜装置16の逆浸透膜モジュール16Aにおいて、バイオフィルムの形成を阻害したり、分散を促進したりすることができる。
制御部5の制御により、バルブV2は開かれた状態にある。この状態では、通水ラインL10を通じて、下流側にあるタンク17に透過水W3aが供給される。タンク17には、透過水W3aが貯留される。
一方で、3次処理水としての濃縮水W3bは、通水ラインL11を通じて、タンク18に供給される。タンク18には、濃縮水W3bが貯留される。ここで、通水ラインL11から分岐する通水ラインL12に設けられたバルブV3については、制御部5によって適宜その開度を調節するように制御される。例えば、バルブV3の開度を調節することにより、通水ラインL11中の濃縮水W3bを、通水ラインL12を通じて、通水ラインL8中の2次処理水W2に還流することができる。
本実施形態では、制御部5は、逆浸透膜装置16においてフラッシング運転を行うように制御することができる。当該フラッシング運転は、透過水W3aを貯留するタンク17に十分な量の透過水W3aが貯留されているとき等に、逆浸透膜モジュール16Aの一次側膜面に付着した堆積物を洗い流す運転である。本実施形態のフラッシング運転では、制御部5がバルブV2,V3を開いた状態のまま、ポンプP5の回転数を下げるように制御する。このような制御により、透過水W3aの流量を減少させながら、濃縮水W3bの流量を維持することで、濃縮水W3bのタンク18への流入および還流を主な流路とすることができる。これにより、逆浸透膜モジュール16Aの一次側膜面の堆積物を洗い流すことができる。なお、濃縮水W3bの流量を維持する以外に、濃縮水W3bの流量を増加させるように制御してもよい。また、バルブV3を開いたまま、バルブV2を閉じるように制御することで、透過水W3aを流すことなく濃縮水W3bのみを通水するようにして、フラッシング運転を行ってもよい。
一方、制御部5の制御により、バルブV4は開かれた状態にある。これにより、タンク17に貯留されている透過水W3aは、通水ラインL13に通水可能な状態となっている。すなわち、通水ラインL13を通じて、回収ろ過ユニット3外部である水使用機器群4に対して透過水W3aを供給可能な状態にある。当該運転形態1では特に、通水ラインL13から分岐する通水ラインL13a又は通水ラインL13bを通じて、水使用機器群4の蒸気ボイラ装置22又は冷却塔装置23に透過水W3aを供給する制御を行う。
本実施形態では、水処理システム1の制御部5は、水使用機器群4で必要とされる透過水W3aの量などに基づいて、逆浸透膜装置16の運転のON/OFFを適宜切り替えるように制御している。この逆浸透膜装置16の運転のON/OFFに合わせて、ブロワB3による曝気運転のON/OFFも切り替えるように制御している。具体的には、逆浸透膜装置16の運転の停止(OFF)に応じて、ろ過膜装置13のブロワB3の運転を停止させるように制御する。このように、ブロワB3の運転を逆浸透膜装置16の運転と連動させることによって、ブロワをより適切なタイミングで運転させることができる。なお、逆浸透膜装置16の運転の停止に応じて、ろ過膜装置13のブロワB3の運転を間欠運転するように制御してもよい。
次に、タンク18に戻ると、タンク18に接続された通水ラインL14においては、制御部5の制御により、バルブV5の開閉を切り替えるように制御される。バルブV5の開閉を切り替えることにより、タンク18に貯留されている濃縮水W3bを、通水ラインL14を通じて回収ろ過ユニット3外部へ適宜排出することができる。
一方、通水ラインL15の途中に設けられたバルブV6は、制御部5の制御により閉じられた状態にある。よって、タンク18に貯留されている濃縮水W3bは、通水ラインL15には通水されず、排水されるのみである。通水ラインL15に濃縮水W3bを通水する制御については、運転形態3の説明(濃縮水W3bをろ過装置24へ再生用水(逆洗浄用水)として供給する形態の説明)において後述する。
回収ろ過ユニット3の下流側に設けられた水使用機器群4においては、水処理システム1が運転されると、バルブV7を開くとともに、ポンプP6を起動させる一方で、バルブV8−11を閉じ、ポンプP7−P10を停止するように制御される。
バルブV7が開かれた状態で、ポンプP6が吸引を行うことにより、回収ろ過ユニット3のタンク17に貯留されている透過水W3aが、通水ラインL13aを通じて、水使用機器群4の蒸気ボイラ装置22へ供給される。蒸気ボイラ装置22においては、透過水W3aをボイラ給水として用いながら蒸気の生成が行われる。このように溶解塩類、特にスケール形成の原因となるカルシウムイオン、並びに腐食を促進する塩化物イオンおよび硫酸イオンが除去された水質の良好な透過水W3aをボイラ給水として用いることにより、蒸気ボイラ装置22のボイラ効率を高めると共に、耐久性や寿命を向上させることができる。
バルブV8−V11については閉じられた状態にあり、ポンプP7−P10も起動されていないため、水使用機器群4の冷却塔装置23、ろ過装置24およびイオン交換装置25には給水は行われない。
上述の説明では、蒸気ボイラ装置22にのみ透過水W3aの供給を行う場合について説明したが、このような場合に限らず、蒸気ボイラ装置22ではなく冷却塔装置23にのみ、透過水W3aの供給を行う場合も運転形態1に含まれる。これを実現するために、制御部5は、バルブV8を開くとともに、ポンプP7を起動させる一方で、バルブV7,V9−V11を閉じ、ポンプP6,P8−P10を停止するように制御する。このように溶解塩類、特にスケール形成の原因となるカルシウムイオン、並びに腐食を促進する塩化物イオンおよび硫酸イオンが除去された水質の良好な透過水W3aを冷却水の補給水として用いることにより、冷却塔装置23の冷却効率を高めると共に、耐久性や寿命を向上させることができる。
このように、水処理システム1の運転形態1においては、通水ラインL13a、L13b等の第1の給水手段を使用して、水使用機器群4の中でも特に蒸気ボイラ装置22又は冷却塔装置23に透過水W3aの供給を行うように制御している。蒸気ボイラ装置22による蒸気の生成や、冷却塔装置23による冷却は、特に日中(例えば、9時―18時)に行われることが多い。これを受けて、運転形態1では、当該時間帯においては、回収ろ過ユニット3からの透過水W3aを、蒸気ボイラ装置22へのボイラ給水又は冷却塔装置23への補給水として選択的に供給している。このような制御により、回収ろ過ユニット3で生成した透過水W3aを時間帯に応じて適切に分配することができ、水処理システム1全体として透過水W3aを有効に利用することができる。
(運転形態2)
次に、水処理システム1の運転形態2について説明する。運転形態2は、3次処理水としての透過水W3aを、水使用機器群4のイオン交換装置25へ能力再生処理の再生用水として供給する運転である。当該運転形態2は、運転形態1の稼働時間とは異なる時間帯(例えば、20時―22時)に行われるように制御部5によって制御される。
運転形態2においては、水処理システム1が運転されると、排水処理設備2および回収ろ過ユニット3では、運転形態1と同様の制御が行われる。一方で、水使用機器群4においては、運転形態1と異なる制御が行われる。
具体的には、水使用機器群4において、制御部5の制御により、バルブV11を開くとともに、ポンプP10を起動させる一方で、バルブV7−10を閉じ、ポンプP6−P9を停止するように制御される。
バルブV11が開かれた状態で、ポンプP10が回収ろ過ユニット3のタンク17に貯留されている透過水W3aを吸引することにより、通水ラインL13cを通じて、水使用機器群4のイオン交換装置25へ透過水W3aが供給される。イオン交換装置25においては、透過水W3aを再生用水として用いながら、イオン交換樹脂床のイオン交換能力の再生処理が行われる。
ここで、イオン交換装置25の能力再生処理について説明する。イオン交換装置25においては、ろ過装置24からのろ過水等に対するイオン交換処理が行われるにつれて、イオン交換装置25が備えるイオン交換樹脂床のイオン交換能力が低下する。これを受けて、所定のタイミングにてイオン交換装置25の能力再生処理を行う。
本実施形態におけるイオン交換装置25の能力再生処理は、通薬工程と、押出工程と、濯ぎ工程とを行う。
通薬工程は、イオン交換樹脂床に再生剤溶液を通液する工程である。具体的には、陽イオン交換樹脂床には2次側から1次側に向けて、塩酸などの薬品を所定の再生用水で希釈した再生剤溶液を通液し、陰イオン交換樹脂床には2次側から1次側に向けて、水酸化ナトリウム溶液などの薬品を所定の再生用水で希釈した再生剤溶液を通液する。これにより、イオン交換装置25で行われる通常のイオン交換処理(脱塩処理)とは逆方向に反応が進むことで、それぞれのイオン交換樹脂の交換基を元の状態に戻すことができる。
通薬工程において必要量の再生剤溶液の供給を行った後、押出工程を行う。押出工程は、イオン交換樹脂床に導入された再生剤溶液を、所定の再生用水により押し出してイオン交換樹脂床の再生を完了させる工程である。具体的には、陽イオン交換樹脂床または陰イオン交換樹脂床の2次側から1次側に向けて、回収ろ過ユニット3のタンク17に貯留されている透過水W3aを通水することで、再生剤溶液を透過水W3a(押出水)で置換する。透過水W3aが陽イオン交換樹脂床または陰イオン交換樹脂床の2次側から1次側に向けて通水されることで、再生に必要とされる再生剤溶液の全量が樹脂床を通過し、再生が完了する。樹脂床を通過した再生排水は、図示しない通水ラインを通じて、水使用機器群4外部へ排水される。
ここで、イオン交換装置25が備える陽イオン交換樹脂床および陰イオン交換樹脂床においては、溶存塩類を含む水を押出水として通水した場合には、再生中に溶存塩類がイオン交換樹脂に吸着してしまい、所望のレベルの能力再生を実現できないおそれがある。溶存塩類によりイオン交換樹脂が汚染されると、純水の純度の悪化を招く。これを受けて、溶存塩類をほとんど含まない透過水W3aのような純度の高い水を用いることで、イオン交換樹脂を溶存塩類で汚染させることなく、効果的に再生することができる。これとは別の方法として、イオン交換装置25で生成した純水を押出水として能力再生処理用に用いることも考えられるが、この場合にはイオン交換装置25から供給できる製造用水の総量が減ってしまう。よって、本実施形態のように回収ろ過ユニット3からの透過水W3aを再生用水として用いることで、イオン交換装置25による純水の供給能力を高いレベルにて維持することができる。
押出工程を所定時間行った後、濯ぎ工程を行う。濯ぎ工程は、イオン交換樹脂床に所定の再生用水を通水して、樹脂床に残留する再生剤溶液を洗い流す工程である。具体的には、陽イオン交換樹脂床または陰イオン交換樹脂床の1次側から2次側に向けて、前述の押出工程と同様に、回収ろ過ユニット3のタンク17に貯留されている透過水W3aを通水することで、それぞれのイオン交換樹脂床の空隙部分および表面を濯ぐ。透過水W3aが各イオン交換樹脂床の1次側から2次側に向けて通水されることで、樹脂床に残留する再生剤溶液が洗い流され、純水を再び製造可能な状態になる。樹脂床を通過した再生排水は、図示しない通水ラインを通じて、水使用機器群4外部へ排水される。前述した押出工程と同様に、濯ぎ工程において、溶存塩類をほとんど含まない透過水W3aのような純度の高い水を再生用水として用いることで、イオン交換装置25による純水の供給能力を高いレベルにて維持することができる。
イオン交換装置25における能力再生処理は、運転形態1の稼働時間とは異なる時間帯(例えば、20時―22時)に実施されることが多い。これを受けて、運転形態2では、当該時間帯において、イオン交換装置25の再生用水(希釈水,押出水,濯ぎ水)として、回収ろ過ユニット3からの透過水W3aを選択的に供給している。すなわち、制御部5は、予め設定された時間帯に応じて、通水ラインL13a、L13b等の第1の給水手段を使用して給水を行う運転形態1と、通水ラインL13c等の第2の給水手段を使用して給水を行う運転形態2のうちのいずれかを択一的に稼働させている。このような制御により、透過水W3aをともに用いる運転形態1,2に関して、時間帯に応じて選択的にいずれかを実施することで、水処理システム1全体として透過水W3aを有効に利用することができる。
なお、バルブV7−V10については閉じられた状態にあり、ポンプP6−P9も起動されていないため、水使用機器群4の蒸気ボイラ装置22、冷却塔装置23およびろ過装置24には給水は行われない。
(運転形態3)
次に、水処理システム1の運転形態3について説明する。運転形態3は、3次処理水としての濃縮水W3bおよび2次処理水W2を、水使用機器群4のろ過装置24へ能力再生処理の再生用水(逆洗浄用水,濯ぎ用水)として供給する運転である。当該運転形態3は、運転形態1,2とは異なる時間帯(例えば、24時―翌2時)に行われるように制御部5によって制御される。
運転形態3においては、水処理システム1が運転されると、排水処理設備2では、運転形態1,2と同様の制御が行われる。一方で、回収ろ過ユニット3および水使用機器群4では、運転形態1,2とは異なる制御が行われる。
具体的には、回収ろ過ユニット3においては、制御部5の制御により、ポンプP4,P5、ブロワB3が起動されるとともに、バルブV1,V2,V5,V6は開かれた状態とされる一方で、バルブV4は閉じた状態とされる。
運転形態1、2と異なり、バルブV4が閉じた状態とされることにより、タンク17に貯留されている透過水W3aは、通水ラインL13には通水されない。これにより、水使用機器群4の蒸気ボイラ装置22、冷却塔装置23およびイオン交換装置25には、透過水W3aは供給されない。一方で、バルブV1,V6は開かれた状態とされているため、タンク14に貯留されている2次処理水W2は通水ラインL9に通水可能であるとともに、タンク18に貯留されている3次処理水としての濃縮水W3bは通水ラインL15に通水可能となっている。このような制御により、水使用機器群4のろ過装置24に対して、3次処理水としての濃縮水W3bおよび2次処理水W2をそれぞれ供給可能な状態としている。
次に、回収ろ過ユニット3の下流側に接続された水使用機器群4においては、制御部5の制御により、バルブV10を開くとともに、ポンプP9を起動させる一方で、バルブV7―V9,V11を閉じ、ポンプP6―P8,P10を停止するように制御される。
バルブV10が開かれた状態で、ポンプP9が吸引を行うことにより、回収ろ過ユニット3のタンク18に貯留されている濃縮水W3bが、通水ラインL15を通じて、水使用機器群4のろ過装置24へ供給される。ろ過装置24においては、濃縮水W3bを再生用水(逆洗浄用水)として用いながら、ろ過装置24が備えるろ材のろ過能力の再生処理が行われる。
ここで、ろ過装置24の能力再生処理について説明する。ろ過装置24においては、ろ材によるろ過が行われるにつれて、ろ過される原水(工業排水等)に含まれていた濁質成分がろ材の空隙に捕捉されて堆積する。濁質成分の捕捉量が増加すると、ろ材のろ過能力(濁質成分の捕捉能力)が低下する。これを受けて、所定のタイミングにてろ過装置24の能力再生処理を行う。
本実施形態におけるろ過装置24の能力再生処理は、2つの工程として、前工程の逆洗浄工程(逆洗浄動作)と、後工程の濯ぎ工程(濯ぎ動作)とを行う。
逆洗浄工程では、ろ材床に対して、所定の逆洗浄用水を通水することで、ろ材床に堆積した濁質成分を剥離させて、逆洗浄を行う。具体的には、ろ過装置24のろ材床の2次側から1次側に向けて、回収ろ過ユニット3のタンク18に貯留されている濃縮水W3bを通水して、逆洗浄を行う。
濃縮水W3bがろ材床の2次側から1次側に向けて通水されることで、ろ材床に堆積した濁質成分が剥離される。剥離された濁質成分を含む洗浄排水は、図示しない通水ラインを通じて水使用機器群4外部へ排水される。このように、ろ材床の逆洗浄用水は、濁質成分を含まない清浄な水であれば十分な洗浄効果が得られるので、塩分濃度は問われない。よって、濃縮水W3bのような塩分濃度の高い水を逆洗浄用水に適用することで、濃縮水W3bを有効に再利用することができる。
逆洗浄工程を所定時間行った後、濯ぎ工程を行う。濯ぎ工程では、逆洗浄工程が行われて濁質成分が除去されたろ材床に所定の濯ぎ用水を通水することで、逆洗展開されたろ材床を押し固めると共に、ろ材床に残留した濁質成分を洗い流すものである。具体的には、ろ材床の1次側から2次側に向けて、回収ろ過ユニット3のタンク14に貯留されている2次処理水W2を濯ぎ用水として通水する。
前述した逆洗浄工程では、通水ラインL15を通じて濃縮水W3bをろ過装置24へ供給したが、濯ぎ工程に移行したときに、ろ過装置24からの指令信号に応じて、制御部5が、バルブV10を閉じてポンプP9を停止させるとともに、バルブV9を開き、ポンプP8を起動するように制御する。バルブV9が開かれた状態で、ポンプP8が回収ろ過ユニット3のタンク14に貯留されている2次処理水W2を吸引することにより、通水ラインL9を通じて、水使用機器群4のろ過装置24へ2次処理水W2が供給される。
2次処理水W2がろ材床の1次側から2次側に向けて通水されることで、逆洗展開されたろ材床を圧密化させ、ろ材床を濯ぐことができる。ここで用いられる水は、ろ材床を速やかにろ過水の製造を開始できる状態に持っていくため、高い清浄度を有する水の使用が求められる。よって、濃縮水W3bよりも濁度の低い水である2次処理水W2を用いることで、ろ材床に残留した濁質成分を効果的に洗い流しながら、2次処理水W2を有効に再利用することができる。
ろ過装置24における能力再生処理は、運転形態1、2の稼働時間とは異なる時間帯(例えば、24時―翌2時)に実施されることが多い。これを受けて、運転形態3では当該時間帯において、回収ろ過ユニット3からの濃縮水W3bおよび2次処理水W2を、通水ラインL15等の第3の給水手段および通水ラインL9等の第4の給水手段を用いて、ろ過装置24へ再生用水(逆洗浄用水,濯ぎ用水)として選択的に供給している。このような制御により、回収ろ過ユニット3からの濃縮水W3bおよび2次処理水W2を時間帯に応じて適切に分配することができる。
以上、本実施形態における水処理システム1においては、時間帯に応じて運転形態1−3を択一的に稼働させるようにして、回収ろ過ユニット3により製造した各種処理水(透過水W3a、濃縮水W3b又は2次処理水W2)を水使用機器群4に供給している。このように、水使用機器群4への処理水の供給を時間帯に応じて適切に分配することで、水処理システム1全体において各種処理水を有効に利用することができる。
上述の通り、本実施形態の水処理システム1について、例示的な構成および運転方法を説明したが、本発明はこれに限らない。
上述の説明では、時間帯に応じて運転形態1−3を択一的に稼働させる場合について説明したが、このような場合に限らない。変形例として、時間帯に応じて運転形態1,2を択一的に稼働させながら、運転形態2と運転形態3を略同期して稼動させることもできる。すなわち、イオン交換装置25の能力再生処理を行う時間帯と、ろ過装置24の能力再生処理を行う時間帯とを、重複する時間帯に設定することもできる。この場合、イオン交換装置25の能力再生処理を行う時間帯と、ろ過装置24の能力再生処理を行う時間帯とを完全に一致させてもよいし(例えば、両者とも20時―22時に設定)、時間帯を部分的に重複させてもよい(例えば、前者を20時―22時に設定し、後者を21時−23時に設定)。ろ過装置24とイオン交換装置25は、使用する再生用水の種類が異なるため、両装置の能力再生処理を同時期に行うように稼動させることにより、純水製造の休止時間を短縮することができる。
また、上述の説明では、回収ろ過ユニット3が、排水処理設備2における曝気槽11から1次処理水W1を回収する場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、排水処理設備2の沈降槽12から1次処理水W1を回収してもよい。
また、上述の説明では、排水処理設備2において、有機性排水の原水W0を好気性の活性汚泥処理により処理して、1次処理水W1を生成する場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、活性汚泥処理以外の好気性の生物処理や嫌気性の生物処理を含む、各種生物処理により原水W0を処理してもよい。
また、上述の説明では、水処理システム1が備える制御部5の制御により、水処理システム1全体の各構成の動作を制御する場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、排水処理設備2、回収ろ過ユニット3および水使用機器群4のそれぞれが制御部5とは異なる独自の制御装置を備え、当該制御装置により動作が制御されるようにしてもよい。
上述したように、本実施形態の水処理システム1は、有機性排水(原水W0)を生物処理して1次処理水W1を得る排水処理設備2を備える。水処理システム1はさらに、回収ろ過ユニット3を備え、回収ろ過ユニット3は、排水処理設備2に接続され、排水処理設備2から回収した1次処理水W1をろ過膜モジュール21により膜ろ過して2次処理水W2としてのろ過水を得るろ過膜装置13と、ろ過膜装置13の2次処理水W2を逆浸透膜モジュール16Aにより膜分離して3次処理水としての透過水W3a及び濃縮水W3bを得る逆浸透膜装置16と、を備える。水処理システム1はさらに、逆浸透膜装置16で得られた3次処理水としての透過水W3aを第1の水使用機器に供給する第1の給水手段(通水ラインL13a,L13b、バルブV7,V8、ポンプP6,P7)と、逆浸透膜装置16で得られた3次処理水としての透過水W3aを第2の水使用機器に供給する第2の給水手段(通水ラインL13c、バルブV11、ポンプP10)とを備える。水処理システム1はさらに、予め設定された時間帯に応じて、第1の給水手段及び第2の給水手段のうちのいずれかを択一的に作動させる制御部5を備える。このように、既存の排水処理設備2に回収ろ過ユニット3を接続して、排水処理設備2の処理水を高度浄化して水使用機器群4へ補給しているため、既存の排水処理設備2における処理水をより効率的に再利用することができる。また、既存の排水処理設備2をそのまま利用しながら、パッケージ化された回収ろ過ユニット3の付加的な設営を行うことができるため、処理水を再利用できるようになるまでの工期を短縮することができる。また、第1の給水手段と第2の給水手段による給水を時間帯に応じて選択的に行うことで、3次処理水としての透過水W3aを有効に再利用することができる。
さらに、本実施形態の水処理システム1では、第1の水使用機器は、蒸気ボイラ装置22又は冷却塔装置23であり、第1の給水手段は、3次処理水としての透過水W3aを、蒸気ボイラ装置22のボイラ給水、又は冷却塔装置23の補給水として供給するものである。また、第2の水使用機器は、イオン交換装置25であり、第2の給水手段は、3次処理水としての透過水W3aを、イオン交換装置25におけるイオン交換樹脂の再生用水として供給するものである。蒸気ボイラ装置22および冷却塔装置23では、ボイラ給水および補給水がそれぞれ日中に使用されることが多いのに対して、イオン交換装置25では、再生用水が日中とは異なる時間帯に使用されることが多い。このような事情に鑑みて、第1の給水手段と第2の給水手段による給水を時間帯に応じて選択的に行うことで、3次処理水としての透過水W3aを有効に再利用することができる。
さらに、本実施形態の水処理システム1は、逆浸透膜装置16で得られた3次処理水としての濃縮水W3bを第3の水使用機器に供給する第3の給水手段(通水ラインL15、バルブV10、ポンプP9)と、ろ過膜装置13で得られた2次処理水W2としてのろ過水を第3の水使用機器に供給する第4の給水手段(通水ラインL9、バルブV9、ポンプP8)と、を更に備える。さらに、制御部5は、予め設定された時間帯に応じて、第1の給水手段、第2の給水手段及び第3の給水手段のうちのいずれかを択一的に作動させると共に、第3の水使用機器からの指令信号に応じて、第3の給水手段の作動を第4の給水手段の作動に切り替える。このように、第1の給水手段および第2の給水手段だけでなく、3次処理水としての濃縮水W3bを供給する第3の給水手段と、2次処理水W2を供給する第4の給水手段をさらに設けて選択的に給水を行っている。これにより、透過水W3aの給水だけでなく、濃縮水W3bと2次処理水W2の給水についても時間帯に応じて分配を行うことができるため、水処理システム1全体として水をより有効に利用することができる。
さらに、本実施形態の水処理システム1は、逆浸透膜装置16で得られた3次処理水としての濃縮水W3bを第3の水使用機器に供給する第3の給水手段(通水ラインL15、バルブV10、ポンプP9)と、ろ過膜装置13で得られた2次処理水W2としてのろ過水を第3の水使用機器に供給する第4の給水手段(通水ラインL9、バルブV9、ポンプP8)と、を更に備える。さらに、制御部5は、予め設定された時間帯に応じて、第1の給水手段及び第2の給水手段のうちのいずれかを択一的に作動させながら、第3の給水手段を第2の給水手段と略同期させて作動させると共に、第3の水使用機器からの指令信号に応じて、第3の給水手段の作動を第4の給水手段の作動に切り替える。このように、第1の給水手段および第2の給水手段だけでなく、3次処理水としての濃縮水W3bを供給する第3の給水手段と、2次処理水W2を供給する第4の給水手段をさらに設けて選択的かつ一部同期して給水を行っている。これにより、透過水W3aの給水だけでなく、濃縮水W3bと2次処理水W2の給水についても時間帯に応じて分配を行うことができるため、水処理システム1全体として水をより有効に利用することができる。
さらに、本実施形態の水処理システム1では、第3の水使用機器は、ろ過装置24であり、第3の給水手段は、3次処理水としての濃縮水W3bを、ろ過装置24におけるろ材の逆洗浄用水として供給するものであり、第4の給水手段は、2次処理水W2としてのろ過水を、ろ過装置24における逆洗浄後のろ材の濯ぎ用水として供給するものである。このように、ろ過装置24の能力再生処理において、2次処理水W2および濃縮水W3bをその水質に応じて利用することで、これらの水を有効に再利用することができる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。