JP2016123366A - 細胞評価装置、インキュベータ、細胞評価方法、プログラム、及び細胞の培養方法 - Google Patents
細胞評価装置、インキュベータ、細胞評価方法、プログラム、及び細胞の培養方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
本発明の実施形態では、一例として、iPS細胞(誘導多能性幹細胞)を培養する場合について説明する。
図1は、本発明の実施形態であるインキュベータ11の正面図である。
また、図2は、本発明の実施形態であるインキュベータ11の平面図である。
図3において、インキュベータ11は、上部ケーシング12と下部ケーシング13とを有している。インキュベータ11の組立状態において、上部ケーシング12は、下部ケーシング13の上に載置される。なお、上部ケーシング12と下部ケーシング13との内部空間は、ベースプレート14によって上下に仕切られている。
まず、上部ケーシング12の構成の概要を説明する。上部ケーシング12の内部には、細胞の培養を行う恒温室15が形成されている。この恒温室15は温度調整装置15a及び湿度調整装置15bを有している。
LED光源39は、培養容器19を照明する。
撮像装置34は、上側から透過照明された培養容器19の細胞を、顕微鏡の光学系を介して撮像することで細胞の顕微鏡画像を取得する。撮像装置34は、その細胞の顕微鏡画像を制御部50に供給する。
ここで、「細胞の状態」には、(1)容器内の細胞の集合体(コロニー)全てを含む総合的な状態、(2)容器内の細胞の集合体一個一個の状態(コロニー個々の状態)、(3)細胞の集合体を構成する細胞群の状態などが含まれる。なお、「細胞の集合体を構成する細胞群」とは、細胞1個1個の判別が無理であっても、輪郭の部分や中心部分などというような領域区分ができるレベルの細胞群を示している。また、細胞群を構成する個々の集合体がより小さな集合体で構成される、複合的な構成であってもよい。また、集合体(コロニー)には、細胞の集合の他に、1個の細胞(1個の集合)である場合も含まれる。
記憶部40は、ハードディスクや、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体などを有している。記憶部40は、ストッカー21に収納されている各培養容器19に関する管理データと、撮像装置34で撮像された顕微鏡画像のデータと、細胞の状態を評価するために用いられる各種データとを記憶する。さらに、記憶部40は、制御部50によって実行されるプログラムを記憶している。
分類モデル記憶部41は、iPS細胞の集合体であるコロニーの画像の分類を示す複数のクラスを分類するための分類モデルを記憶する。ここで、クラスとは、群又はグループの一例である。この分類モデルは、決定木のほか、様々なクラスタリング手法(k−meansクラスタリング、階層的クラスタリング等が含まれる)、又は、主成分分析などを用いて構築されている。この分類モデルは、例えば、統計的に選抜された複数のグループのうちのいずれかに分類するためのモデルである。この分類モデルは、分類モデル構築部52によって生成される。分類モデルの生成については、後述する。
特徴量算出部51は、対象画像に含まれる全てのコロニーに対して、コロニーの画像内の位置情報と、特徴量を算出する。
また、画像によっては、細胞核や、他の細胞小器官がHoleとして検出されうる。なお、特徴量算出部51は、細胞内における輝度値が閾値以上となる画素のまとまりをHoleとして検出し、このHoleの画素数に基づいて「Hole area」の値を求めればよい。
「Height」(図4の(f)参照)は、注目する細胞又はコロニーの画像縦方向(Y方向)での長さを示す値である。
「Breadth」(図4の(h)参照)は、「Length」に直交する線のうちの最大値(細胞又はコロニーの横幅)を示す値である。
Factor=Length/Breadth)であって、注目する細胞又はコロニーの細長さの度合いを示すパラメータとなる。
「Outer radius」(図4の(n)参照)は、注目する細胞又はコロニーの外接円の半径を示す値である。
「Equivalent radius」(図4の(p)参照)は、注目する細胞又はコロニーと同面積の円の半径を示す値である。この「Equivalent radius」のパラメータは、注目する細胞又はコロニーを仮想的に円に近似した場合の大きさを示している。
「Compactness(稠密度)」は、細胞又はコロニーの稠密度の計測である。この「Compactness」は、「Perimeter」(周囲長)の二乗を「Total area」(面積)で除した値である。
「Texture(質感)」は、細胞又はコロニーの表面の質感を示すパラメータであり、輝度値の空間的な分布を示している。
「Low intensity(低輝度)」は、細胞又はコロニー内で計測したサンプル(画素の輝度値)の5%に相当する値である。
「Max intensity(最大輝度)」は、細胞又はコロニーの領域内で計測される最大の輝度値である。
「Mean intensity(平均輝度)」は、細胞又はコロニーの領域内で計測される平均輝度値である。平均輝度値は、後述する「Total intensity(輝度合計)」の値を細胞又はコロニーの領域の画素数で除した値である。
「Min intensity(最小輝度)」は、細胞又はコロニーの領域内で計測される最小の輝度値である。
「Standerd deviation of intensity(輝度の標準偏差)」は、細胞又はコロニーの輝度の広がりを示すパラメータである。
「Total intensity(輝度合計)」は、細胞又はコロニーの輝度値の合計である。
また、分類モデル構築部52は、例えば、教師なし学習により分類モデルを求めてもよいし、教師付き学習により分類モデルを求めてもよい。この分類モデルは、コロニーを、画像の性質が類似したクラスに分類し、そのクラスに分類した結果を出力する分類モデルである。なお、分類モデル構築部52は、分類モデルを生成する特徴量に互いの相関係数が所定の閾値以下である複数の特徴量を選択する。例えば、分類モデルに用いられる特徴量には、互いの相関係数を算出し、相関係数が“0.9”以上のものをまとめて同じものと考え、このうちの1つを選択される。
また、分類モデル構築部52は、構築した分類モデルを記憶部40の分類モデル記憶部41に記憶させる。
具体的に、評価処理部55は、例えば、クラスごとにおけるコロニーのiPS細胞の状態や、複数のコロニーを含んだiPS細胞の集団(グループ)におけるiPS細胞の状態が良い状態か否か、又は悪い状態か否かを推定する。
この評価基準情報は、以下のような手順により、予め生成されている。
図5は、コロニーの特徴量に基づくカルテ情報の一例を示す図である。
また、図5(c)は、図5(a)に示すiPS細胞の状態の良い集団の対象画像から抽出された全コロニーを示している。また、図5(d)は、図5(b)に示すiPS細胞の状態の悪い集団の対象画像から抽出された全コロニーを示している。
ここで、図5(e)における各特徴量は、図5(f)に示すように、特徴量の値が最小の場合に「白色」で表記し、特徴量の値が最大の場合に「黒色」で表記し、その中間の値を値に応じた「網掛け」で表記している。また、図5(e)において、iPS細胞の状態が良いコロニーは領域G1に対応し、iPS細胞の状態が悪いコロニーは領域B1に対応する。
図6は、本実施形態におけるクラスタリングによるコロニーのクラス分類の一例を示す図である。この図において、横軸はクラスの種類(例えば、17種類のクラス)を示し、縦軸は各クラスにおけるコロニーの数を示している。なお、ここでの各クラスにおけるコロニーの数は、ある時刻における対象画像に基づく数であり経時変化を含んでいない。また、各クラスにおいて、左側の棒グラフはiPS細胞の状態が良い集団を示し、右側の棒グラフはiPS細胞の状態が悪い集団を示している。
ここで、クラス単位の評価基準には、評価実験などにより得られた既知の評価結果に基づく「外的な評価基準」と、統計的な手法を用いてクラスごとのコロニーの数とiPS細胞の状態とを解析することによって得られる「分析結果に基づく評価基準」とを含んでいる。「外的な評価基準」は、例えば、クラスごとに遺伝子変化を測定し、この遺伝子情報(未分化マーカー等)が悪かったなどの実験結果に基づく評価基準であり、既知のサンプルによる実験結果に基づいて生成され、予め評価基準記憶部42に記憶されている。そのため、ここで、クラス解析処理部54が生成するクラス単位の評価基準は、「分析結果に基づく評価基準」のことである。
なお、「外的な評価基準」は、例えば、培養の熟練者によるヒアリングにおいて常に培養中に除去されるクラスに関しての評価値や、例えば、その後の移植後発がんの成績、その他の分化傾向の有無、遺伝子発現状態の有無に関しての状態などを基にクラスに関して生成された評価値である。「外的な評価基準」は、予め評価基準記憶部42に記憶させている。
また、クラス解析処理部54は、クラスごとに培養の経過時間に対するコロニーの数を算出し、算出したクラスごとの培養の経過時間に対するコロニーの数から、図7に示すようなクラスごとのコロニーの数の経時変化を示す情報を生成する。
図7は、コロニーの良否とクラスごとにおけるコロニーの数の経時変化との関係の一例を示す図である。この図において、横軸はクラスの種類(例えば、クラスC1〜クラスC5)を示し、縦軸は各クラスにおけるコロニーの数を示し、奥行き方向軸は、iPS細胞の成長時間を示している。また、この図において、各クラスにおける左側の経時変化のグラフG11〜G15は、iPS細胞の状態が良い集団を示し、右側の経時変化のグラフB11〜B15は、iPS細胞の状態が悪い集団を示している。
例えば、クラス解析処理部54は、統計的な手法により、クラスC4のコロニーにおいて、「状態の悪い集団は、36時間(h)以降減少傾向になり、状態の良い集団は、増加傾向になる」などの経時変化のパターン情報を抽出する。クラス解析処理部54は、このような経時変化のパターン情報と評価情報とを関連付けて評価基準として評価基準記憶部42に記憶させる。
まず、インキュベータ11のiPS細胞の観察する処理の手順について説明する。
<iPS細胞の観察の例>
図8は、インキュベータ11における観察処理の一例を示すフローチャートである。この図8は、恒温室15内に搬入された培養容器19を、登録された観察スケジュールに従ってタイムラプス観察する動作例を示している。
なお、培養容器19が試料台31に載置された段階で、スタンドアーム32に内蔵されたバードビューカメラ(不図示)によって培養容器19の全体観察画像が撮像される。
<クラス分類モデルの構築処理>
図9は、本実施形態によるインキュベータ11の制御装置1が、分類モデルを生成する場合の処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、一例として、培養容器19を観察して取得した複数の顕微鏡画像を用いて、制御装置1が、培養容器19のiPS細胞のコロニーをクラスに分類する分類モデルを構築する場合について説明する。
図10(a)に示すように、分類モデル構築部52は、[第1の処理]と[第2の処理]との2つの処理を実行し、分類モデルを生成する。
このグラフにおいて、左側の縦軸は、クラスタ間の相関係数を示し、右側の縦軸は、分割後に生まれたクラスタのコロニー数(新生コロニー数)を示している。また、横軸は、クラスタリングの履歴の順番に従って分割したクラスタの分割回数を示している。
また、波形W1は、クラスタ間の相関係数の変化を示し、波形W2は、分割後に生まれたクラスタのコロニー数の変化を示している。なお、波形W2において、点D15は、15回目の分割によって発生した新生コロニー数を示し、点D16は、16回目の分割によって発生した新生コロニー数を示し、点D17は、16回目の分割によって発生した新生コロニー数を示している。
分類モデル構築部52は、[第2の処理]により生成した、クラスタを分類クラスとして分類モデルを構築する。
また、上述した例では、画像の特徴量に基づいてクラスタリングする場合について説明したが、細胞(コロニー)の画像の経時変化量などを組み合わせて用いてもよい。
<評価基準情報の生成処理>
図11は、本実施形態によるインキュベータ11の制御装置1が、評価基準情報を生成する場合の処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、一例として、図5(a)及び図5(b)のように、iPS細胞の状態(評価結果情報)が既知である集団を時系列に観察して取得した複数の顕微鏡画像(対象画像)を用いて、制御装置1が、iPS細胞のコロニーを評価する評価基準情報を生成する場合について説明する。
<コロニーの評価処理>
図12は、本実施形態による制御装置1が、iPS細胞のコロニーを評価する場合の処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、一例として、iPS細胞の状態を時系列に観察して取得した複数の顕微鏡画像(対象画像)を用いて、制御装置1が、iPS細胞のコロニーを評価する場合について説明する。
また、評価処理部55は、iPS細胞の状態の評価において、例えば、コロニーが、過去に蓄積したどのコロニーに似ているかの距離計算をして、距離が近いもの(=形や経時変化が似ているもの)をランキングしてもよい。また、評価処理部55は、距離が近いもののクラスの情報を基に、例えば、評価するコロニーが、コロニーAとコロニーBとコロニーCとに近いから、コロニーAとコロニーCとが属するクラスである可能性が90%であり、コロニーDが属するクラスである可能性20%であるというように、確率結果を返す評価(定量評価)を行ってもよい。そして、評価処理部55は、その「近いコロニー」のランキング1位が、どこのクラスにあたるのか、そして、そのクラスが「主流」として持つ過去のデータの成績を、そのコロニーの品質として提示する評価(定性評価)を行ってもよい。
これにより、本実施形態における制御装置1は、細胞のコロニーを画像の特徴を示す特徴量に基づいて、統計的に選抜された複数のクラスに分類し、分類したクラスの経時変化に基づいて、客観的に細胞の状態を非破壊で評価することができる。そのため、本実施形態における制御装置1は、研究者が感覚的(主観的)に評価する場合に比べて、適切に細胞の状態を評価することができる。したがって、本実施形態における制御装置1は、細胞の状態を評価する精度を向上させることができる。
これにより、クラスごとにおけるコロニーの数の連続的な変化を網羅して評価を行うので、本実施形態における制御装置1は、研究者が感覚的(主観的)に評価する場合に比べて、適切に細胞の状態を評価することができる。
また、コロニーの数の経時変化に基づいて細胞の状態を評価するので、本実施形態における制御装置1は、例えば、現在の状態の評価だけでなく、将来(未来)の状態の評価(事前評価)や最適な培養時間の評価を行うことができる。
これにより、予め取得されている評価基準情報(クラスごとのコロニーの数の変化情報及び細胞の評価情報)に基づいて細胞の状態を評価するので、本実施形態における制御装置1は、評価する際に随時評価基準を生成する場合に比べて、細胞の状態を評価する処理時間を短縮することができる。
なお、評価基準記憶部42が記憶する評価基準情報は、評価の際に算出したクラスごとのコロニーの数の変化情報と、制御装置1で判定した細胞の評価情報とに基づいて、追加及び更新されてもよい。これにより、本実施形態における制御装置1は、細胞の状態を評価する精度を向上させることができる。
これにより、互いに相関の低い特徴量に基づいて、コロニーのクラスを分類するので、本実施形態における制御装置1は、同じ傾向の特徴量によりクラスが分類されることにより適切にクラス分類されないことを低減することができる。
これにより、本実施形態における制御装置1は、適切な分類モデルを得ることができる。よって、本実施形態における制御装置1は、適切な分類モデルを用いて分類したクラス分類に基づいて、コロニーが適切にクラス分類されるため、細胞の状態を評価する精度を向上させることができる。
これにより、本実施形態における制御装置1は、人手を介さずに、統計的に意味のある有効な分類モデルを適切に得ることができる。すなわち、本実施形態における制御装置1は、統計的な数値情報を根拠として一義的に分類モデルを得ることができる。
(1)例えば、従来の評価方法では、染色や遺伝子導入など、かならず細胞に何かしらの影響を与えてしまう問題がある。すなわち、不安定である幹細胞などの評価は、少しでも手を加えた場合に、本来の現象を見失ってしまうリスクがある。さらに、従来の破壊的な評価である遺伝子抽出やタンパク質マーカー染色による方法は、リアルタイムに評価が不可能である。つまり、従来の評価方法では、評価したものをその後評価することもできず、染色する以前に細胞に問題があるか否かを事前察知することもできない。これに対して、本実施形態における制御装置1は、画像を解析による評価方法であるので、非破壊により評価することができる。また、これにより、本実施形態における制御装置1は、染色する以前に細胞に問題があるか否かを事前察知することができる。
本実施形態におけるインキュベータ11は、上述した制御装置1を備えているので、制御装置1と同様に、適切に細胞の状態を評価することができるという効果を奏する。
図14は、本発明の第2の実施形態によるインキュベータ11aのブロック構成図である。
なお、本実施形態におけるインキュベータ11aの正面図及び平面図は、図1及び図2と同様であるので、ここではその説明を省略する。
制御装置1aは、温度調整装置15aと、湿度調整装置15bと、観察ユニット22と、容器搬送装置23とそれぞれ接続されている。この制御装置1aは、所定のプログラムに従ってインキュベータ11aの各部を統括的に制御する。
本実施形態では、iPS細胞のコロニーごとのクラスの経時変化に基づいて、細胞の状態を評価する処理が追加されている点が第1の実施形態と異なる。
履歴記憶部43は、予め取得されている複数のコロニーの成長過程の履歴情報と、成長過程ごとの細胞の評価情報とを関連付けて記憶する。ここで、コロニーの成長過程の履歴情報とは、後述する図14に示すような、コロニーを分類するクラスが、成長時間(経過時間)に応じて、どのように変化しながら成長するかの履歴(経路)である。また、成長過程ごとの細胞の評価情報は、例えば、「細胞の状態が良い」、「細胞の状態が悪い」、「細胞の状態が判定できない(判定保留)」などの情報である。なお、履歴記憶部43が記憶するこのコロニーの履歴情報は、クラス解析処理部54aによって生成される。コロニーの履歴情報の生成については、後述する。
また、制御部50aは、特徴量算出部51と、分類モデル構築部52と、クラス分類処理部53と、クラス解析処理部54aと、評価処理部55aとを備えている。なお、制御部50aは、記憶部40に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、特徴量算出部51と、分類モデル構築部52と、クラス分類処理部53と、クラス解析処理部54aと、評価処理部55aとの各部の機能を実現してもよい。
また、評価処理部55aは、コロニーの成長過程の種類の判定結果に基づいて、現在の細胞の状態を判定する。また、評価処理部55aは、コロニーの成長過程の種類の判定結果に基づいて、将来(未来)の細胞の状態を推定し、推定した将来(未来)の細胞の状態に基づいて、細胞の状態を評価する。すなわち、評価処理部55aは、コロニーの成長過程の種類の判定結果に基づいて、例えば、現在の細胞の状態及び将来の細胞の状態が、「良い状態」であるか、「悪い状態」であるかを評価する。
この評価基準情報は、以下のような手順により、予め生成されている。
図15は、本実施形態におけるコロニーごとのクラスの経時変化の一例を示す図である。この図において、図15(a)〜図15(h)は、コロニーごとのクラスの経時変化(各コロニーの成長過程を示す履歴情報)をそれぞれ示し、横軸は、コロニー(iPS細胞)の成長時間を示している。また、コロニーの成長過程の範囲G1及びG2は、iPS細胞の状態が良い世代のコロニーを示している。また、コロニーの成長過程の範囲B1〜B4は、iPS細胞の状態が悪い世代のコロニーを示している。
クラス解析処理部54aは、時系列に撮像したサンプル画像に基づいて、コロニーの特徴量を特徴量算出部51に抽出させ、さらに、抽出した特徴量に基づいて、各コロニーをクラスに分類する。なお、ここでのサンプル画像は、細胞の状態が既知である細胞の集団(グループ)を含む対象画像である。
例えば、成長過程の分類クラスTC1は、範囲G1において状態の良い世代が、成長過程の分類クラスTC2に比べて短期間であり、この短期間により状態の悪い世代(範囲B1)に変化してしまうことを示している。また、成長過程の分類クラスTC2は、状態の良い世代(範囲G2)が成長過程の分類クラスTC1に比べて長期間であり、状態の悪い世代(範囲B2)が短いことを示している。また、成長過程の分類クラスTC3は、長期間、状態の悪い世代(範囲B3)を維持し、成長過程の分類クラスTC4は、短期間に劣化(範囲B4)して消滅してしまうことを示している。
本実施形態における「iPS細胞の観察処理」及び「クラス分類モデルの構築処理」は、図8及び図9に示される第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
図16は、本実施形態によるインキュベータ11aの制御装置1aが、iPS細胞のコロニーごとのクラスの経時変化に基づく評価基準情報を生成する場合の処理の一例を示すフローチャートである。
図16において、ステップS501〜ステップS503までの処理は、図10に示す第1の実施形態におけるステップS301〜ステップS303の処理と同様であるので、その説明を省略する。
<コロニーの評価処理>
図17は、本実施形態による制御装置1aが、iPS細胞のコロニーを評価する場合の処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、一例として、iPS細胞の状態を時系列に観察して取得した複数の顕微鏡画像(対象画像)を用いて、制御装置1aが、iPS細胞のコロニーを評価する場合について説明する。
図18は、本実施形態におけるコロニーの成長過程の種類を判定する処理の一例を示す図である。この図において、分類クラスTC1〜TC4は、成長過程の分類クラスを示しており、横軸は、iPS細胞の成長時間を示している。
図18に示すように、コロニーのクラスC10〜C12は、コロニーが小さいために、評価処理部55aが成長過程の分類クラスを判定できない状態を示している。評価処理部55aは、コロニーのクラスC13又はC14に至る成長過程のパターンと、評価基準記憶部42aが記憶する評価基準情報における成長過程のパターンとを比較して、成長過程の分類クラス(TC1〜TC4)を判定する。例えば、コロニーがクラスC10→クラスC11→クラスC14と経時変化した場合に、評価処理部55aは、評価基準記憶部42aが記憶する評価基準情報に基づいて、当該コロニーを成長過程の分類クラスを分類クラスTC2と判定する。また、例えば、コロニーがクラスC10→クラスC13と経時変化した場合に、評価処理部55aは、評価基準記憶部42aが記憶する評価基準情報に基づいて、当該コロニーを成長過程の分類クラスを分類クラスTC4と判定する。
また、評価処理部55aは、成長過程の分類クラスの判定結果によって、判定したコロニーが将来どのように変化するのか推定することが可能である。そのため、評価処理部55aは、現在のiPS細胞の状態を評価するだけでなく、将来のiPS細胞の状態を評価してもよい。この場合、評価処理部55aは、評価に必要な期間を短縮することが可能となる。
このように、評価処理部55aは、コロニーごとのクラスの経時変化に基づいて、iPS細胞の状態を評価し、処理を終了する。
これにより、本実施形態における制御装置1aは、第1の実施形態と同様に、研究者が感覚的(主観的)に評価する場合に比べて、適切に細胞の状態を評価することができる。したがって、本実施形態における制御装置1aは、細胞の状態を評価する精度を向上させることができる。
これにより、本実施形態における制御装置1aは、コロニーの経時変化を考慮した上で、正確に細胞の状態を評価することができる。また、クラスの経時変化に基づいて、本実施形態における制御装置1aは、コロニーの成長過程の種類を判定するので、一点でコロニーを分類する場合に比べて、分類の偶発性を低減することができる。
これに対して、本実施形態における制御装置1aは、コロニーの成長過程の種類を判定し、判定した当該判定結果に基づいて、コロニーごとに細胞の状態を評価するので、例えば、上述の成長過程の分類クラスTC11のコロニーと、成長過程の分類クラスTC14のコロニーとを同一の状態であると評価することがない。そのため、本実施形態における制御装置1aは、正確に細胞の状態を評価することができる。
これにより、過去の成長過程を考慮して、現在の細胞の状態を判定するので、本実施形態における制御装置1aは、正確に細胞の状態を評価することができる。
これにより、本実施形態における制御装置1aは、評価に必要な期間を短縮することができる。
図20(a)は、コロニーを含む対象画像の経時変化を示し、図20(b)〜図20(d)は、対象画像に含まれるコロニーの経時変化をそれぞれ示している。また、図20において、横軸はiPS細胞の培養時間を示している。また、時刻T1〜T4のそれぞれは、対象画像の撮像した時刻を示している。なお、本実施形態における制御装置1aは、同一のコロニーについて、成長過程の履歴情報を生成する。
また、時刻T3において、図20(b)の示すコロニーは、「悪い状態」を示し、図20(c)及び(d)の示すコロニーは、「良い状態」を示している。
また、時刻T4において、各コロニーは、「悪い状態」を示している。
このような場合に、本実施形態における制御装置1aは、コロニーの成長過程の種類の判定結果に基づいて、将来の細胞の状態を推定し、推定した将来の細胞の状態に基づいて、細胞の状態を評価する。そのため、時刻T3においても、本実施形態における制御装置1aは、予め「悪い状態」になることが判明している各コロニーを「悪い状態」と判定することが可能である。このように、本実施形態における制御装置1aは、正確に細胞の状態を評価することができる。
予め取得されているコロニーの成長過程の履歴情報及び細胞の評価情報に基づいて細胞の状態を評価するので、本実施形態における制御装置1aは、評価する際に随時評価基準を生成する場合に比べて、細胞の状態を評価する処理時間を短縮することができる。
所定期間経過後、ステップS702において、制御部50(50a)は、記憶部40から読み出した本発明の実施形態の細胞評価プログラムを実行し、細胞の状態を評価する。
一方、制御部50(50a)は培養を中止すると判定しなかった場合(ステップS709:NO)、処理をステップS710に進める。
一方、制御部50(50a)が現在の培養条件で培養を続行すると判定した場合(ステップS710:NO)、制御部50(50a)は処理をステップS702に進める。
また、本実施形態における細胞の培養方法は、制御装置1(1a)によって評価された細胞の状態に基づいて、細胞の使用時期、細胞の使用方法、又は細胞の使用基準を判定する。
これにより、本実施形態における細胞の培養方法は、目的に応じて、所望の細胞を容易に培養させることができる。
例えば、上記の各実施形態において、細胞の一例としてiPS細胞を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、細胞は、MUSE(Multilineage-differentiating stress-enduring)細胞、ES細胞、3次元培養のがん細胞などでもよい。特に、上記の各実施形態は、細胞の増殖時に集合体(コロニー)を形成する細胞に適用するのに好適であり、例えば、皮膚の角化細胞、網膜細胞等に適用できる。
また、クラスを分類するための特徴量は、上記のものに限定されるものではなく、他の特徴量を用いてもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
Claims (16)
- 培養中の時間の経過に伴って撮像された細胞の集合体を含む複数の画像において、前記集合体の画像の特徴を示す特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量算出部によって算出された前記特徴量に基づいて、前記画像に含まれる前記集合体を、前記集合体の画像の分類を示す複数のグループであって、統計的に選抜された複数のグループのうちのいずれかに分類する分類処理部と、
前記分類処理部によって分類される前記グループの経時変化に基づいて、前記細胞の状態を評価する評価処理部と
を備えることを特徴とする細胞評価装置。 - 前記グループの経時変化には、前記グループごとの前記集合体の数の経時変化が含まれ、
前記評価処理部は、
前記グループごとに培養の経過時間に対する前記集合体の数を算出し、算出した前記グループごとの前記集合体の数の経時変化に基づいて、前記細胞の状態を評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞評価装置。 - 前記グループごとに予め取得されている前記グループごとの前記集合体の数の変化情報と前記細胞の評価情報とを関連付けて記憶する評価基準記憶部を備え、
前記評価処理部は、
算出した前記グループごとの前記集合体の数の経時変化情報と、前記評価基準記憶部に記憶されている前記グループごとの前記集合体の数の経時変化情報と、前記集合体の数の経時変化情報に関連付けられている前記細胞の評価情報とに基づいて、前記細胞の状態を評価する
ことを特徴とする請求項2に記載の細胞評価装置。 - 前記グループの経時変化には、前記複数の画像において対応づけられている各集合体の成長過程を示す前記集合体ごとの前記グループの経時変化が含まれ、
前記評価処理部は、
前記分類処理部によって分類された分類結果に基づいて得られる前記集合体ごとの前記グループの経時変化に基づいて、前記細胞の状態を評価する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 前記評価処理部は、
前記分類結果に基づいて前記集合体ごとの前記グループの経時変化を抽出し、抽出した前記集合体ごとの前記グループの経時変化に基づいて、前記集合体の成長過程の種類を判定し、当該判定結果に基づいて、前記集合体ごとに前記細胞の状態を評価する
ことを特徴とする請求項4に記載の細胞評価装置。 - 前記評価処理部は、
前記集合体の成長過程の種類の判定結果に基づいて、現在の細胞の状態を判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の細胞評価装置。 - 前記評価処理部は、
前記集合体の成長過程の種類の判定結果に基づいて、将来の細胞の状態を推定し、推定した前記将来の細胞の状態に基づいて、前記細胞の状態を評価する
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の細胞評価装置。 - 予め取得されている複数の前記集合体の成長過程の履歴情報と前記成長過程ごとの前記細胞の評価情報とを関連付けて記憶する履歴記憶部を備え、
前記評価処理部は、
前記集合体ごとの前記グループの経時変化と、前記履歴記憶部が記憶する前記集合体の成長過程の履歴情報及び前記細胞の評価情報とに基づいて、前記細胞の状態を評価する
ことを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 前記分類処理部は、
前記特徴量に基づくクラスタリング処理により構築された分類モデルに基づいて、前記集合体を分類し、
前記クラスタリング処理には、
複数の前記集合体を前記特徴量に基づいてクラスタリングを行い、クラスタリングの履歴を生成する第1の処理と、
前記クラスタリングの履歴に基づいてクラスタを分割し、前記クラスタ間の関係を示す第1の指標と、分割によって生成されたクラスタ内の関係を示す第2の指標とに応じて、前記クラスタの分割を終了する第2の処理と
が含まれることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 前記第2の指標には、分割によって生成されたクラスタが含む前記集合体の数を示す新生集合体数が含まれ、
前記第2の処理は、
前記第1の指標が所定の閾値に達した後に、前記新生集合体数が、前記集合体の全体数における所定の割合以上になる直前の分割により、前記クラスタの分割を終了する
ことを特徴とする請求項9に記載の細胞評価装置。 - 前記画像が、光の位相のズレをコントラストとして検出した位相差画像である
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 前記特徴量には、互いの相関係数が所定の閾値以下である複数の特徴量が含まれ、
前記分類処理部は、前記複数の特徴量に基づいて、前記画像に含まれる前記集合体を、前記複数のグループのうちのいずれかに分類する
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 細胞を培養する培養容器を収納するとともに、所定の環境条件に内部を維持可能な恒温室と、
前記恒温室内で前記培養容器に含まれる前記細胞の画像を撮像する撮像装置と、
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の細胞評価装置と、
を備えることを特徴とするインキュベータ。 - 特徴量算出部が、時間の経過に伴って撮像された細胞の集合体を含む複数の画像において、前記集合体の画像の特徴を示す特徴量を算出する特徴量算出手順と、
分類処理部が、前記特徴量算出手順によって算出された前記特徴量に基づいて、前記画像に含まれる前記集合体を、前記集合体の画像の分類を示す複数のグループであって、統計的に選抜された複数のグループのうちのいずれかに分類する分類処理手順と、
評価処理部が、前記分類処理手順によって分類される前記グループの経時変化に基づいて、前記細胞の状態を評価する評価処理手順と
を含むことを特徴とする細胞評価方法。 - コンピュータに、
特徴量算出部が、培養中の時間の経過に伴って撮像された細胞の集合体を含む複数の画像において、前記集合体の画像の特徴を示す特徴量を算出する特徴量算出ステップと、
分類処理部が、前記特徴量算出ステップによって算出された前記特徴量に基づいて、前記画像に含まれる前記集合体を、前記集合体の画像の分類を示す複数のグループであって、統計的に選抜された複数のグループのうちのいずれかに分類する分類処理ステップと、
前記分類処理ステップによって分類される前記グループの経時変化に基づいて、前記細胞の状態を評価する評価処理手順と
を実行させるためのプログラム。 - 請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の細胞評価装置によって評価された前記細胞の状態に基づいて、前記細胞の使用時期、前記細胞の使用方法、又は前記細胞の使用基準を判定することを特徴とする細胞の培養方法。
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