JP2016119355A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、三重項励起子エネルギーの無輻射失活により発生する熱量を抑制し、耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。【解決手段】本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、可撓性基板上に、ガスバリアー層、第1電極、少なくとも一つの発光層を含む有機機能層及び第2電極をこの順で有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記第1電極及び前記第2電極のうち一方が透明電極、他方が反射電極であり、前記発光層が、蛍光発光性化合物及びアシストドーパントとして機能する遅延蛍光発光性化合物を含有することを特徴とする。【選択図】図1B

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。より詳しくは、発光材料由来の熱の発生が抑制された有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下「EL」と略記する。)を利用した有機EL素子(「有機電界発光素子」ともいう。)は、平面発光を可能とする新しい発光システムとして既に実用化されている技術である。有機EL素子は、電子ディスプレイはもとより、最近では照明機器にも適用され、その発展が期待されている。
近年、電子デバイス分野では、軽量化及び大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基板が採用され始めている。
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基板は、ガラス基板に対しガスバリアー性が劣るという問題がある。
ガスバリアー性が劣る基板を用いると、水蒸気や酸素が浸透してしまい、例えば、電子デバイス内の機能を劣化させてしまうという問題があることが分かっている。
そこで、フィルム基板にガスバリアー性を有する膜を形成して、ガスバリアーフィルムとして使用することが一般的に知られている。例えば、ガスバリアー性を必要とする物の包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリアーフィルムとしてはフィルム基板上に酸化ケイ素を蒸着したものが知られている。
酸化ケイ素を蒸着した場合、折り曲げに対する応力により、ひび割れが起こることが知られている。
例えば、特許文献1には、フレキシブル基板上に粘着剤を介してグラスファイバーを含有する熱膨張緩和層を設ける技術が記載されている。グラスファイバーを使用することで曲げに強く、温度変化に対しても亀裂の発生を抑制することができる一方で、成膜工程が増えるため生産性の低下やコストの増大を避けられないという問題があった。
また、ガスバリアー層の構成元素に炭素や窒素を含有させることで、応力を緩和させられることが知られている。しかし、炭素の含有量を増やすと可視光の短波長領域の光吸収量が多くなるため、一定の輝度を得るためには、発光強度を上げる必要があり、蛍光発光性化合物を用いる場合は、三重項励起子エネルギーの無輻射失活により発生する熱量が増加してしまうという問題があった。
特開2011−27822号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、三重項励起子エネルギーの無輻射失活により発生する熱量を抑制し、耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、有機EL素子の発光層に、蛍光発光性化合物とともに、アシストドーパントとして機能する遅延蛍光発光性化合物を含有させることで、三重項励起子エネルギーの無輻射失活による熱の発生を抑制することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.可撓性基板上に、ガスバリアー層、第1電極、少なくとも一つの発光層を含む有機機能層及び第2電極をこの順で有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第1電極及び前記第2電極のうち一方が透明電極、他方が反射電極であり、
前記発光層が、蛍光発光性化合物及びアシストドーパントとして機能する遅延蛍光発光性化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
2.前記有機機能層が、複数の発光層を含み、
前記蛍光発光性化合物及び遅延蛍光発光性化合物を含有する発光層が、前記複数の発光層のうち最も前記透明電極に近い位置に配置されていることを特徴とする第1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
3.前記ガスバリアー層が、ケイ素、酸素及び炭素を含有し、かつ当該ガスバリアー層の厚さ方向の組成分布に極大値及び極小値を有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記透明電極が、銀を主成分として含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明の上記手段により、三重項励起子エネルギーの無輻射失活により発生する熱量を抑制し、耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
有機EL素子の発光材料として、赤色発光材料及び緑色発光材料については、発光寿命や色度の観点からリン光発光性化合物が用いられている。一方で青色発光材料については、リン光発光性化合物の性能が十分とはいえず、実用的な観点から蛍光発光性化合物を用いられること場合が多い。
しかし、従来一般的に用いられている蛍光発光性化合物を電界励起した場合には、一重項励起子が25%の確率で、三重項励起子が75%の確率で生成するため、通常では、三重項励起子のエネルギーが、無輻射失活により、熱に変換してしまう。
特に、赤色リン光発光性化合物又は緑色リン光発光性化合物と、青色蛍光性化合物が一つのユニットに存在する有機EL素子においては、蛍光発光性化合物の最低励起一重項エネルギー状態(S)からリン光発光性化合物の最低励起一重項エネルギー状態(S)へのエネルギー移動が起こりやすい。同様に、リン光発光性化合物の励起三重項エネルギー状態(T)から蛍光発光性化合物の励起三重項エネルギー状態(T)へのエネルギー移動についても起こりやすいことから、より多くの熱が発生する。
したがって、蛍光発光性化合物を用いた有機EL素子において、可撓性基板(以下、フレキシブル基板、単に基板ともいう。)を用いると、当該基板と有機機能層の熱膨張率の違い及び有機機能層と透明電極の熱膨張率の違いから、前記無輻射失活により発生する熱によって応力差が生じる。このため、基板上に積層した層の剥離又はひび割れ等の劣化が生じやすいという問題があった。
さらに、アノード(陽極)に銀電極を用いる場合、銀が青色発光領域の光を吸収するため、発光強度を上げる必要があり、このため熱が発生しやすいという問題があった。
そこで、青色蛍光発光性化合物に加え、アシストドーパントとして機能する遅延蛍光発光性化合物(以下、TADFともいう。)を発光層に含有させることにより、青色蛍光発光性化合物の無輻射失活由来の熱の発生を抑制することができると考えられる。
熱の発生が抑制できる機構を説明すると、通常、蛍光発光性化合物を発光材料として用いる場合は、上述のように、生成した励起子のうち75%を占める三重項励起子のエネルギーは無輻射失活により熱に変換されてしまう。
しかしながら、遅延蛍光発光性化合物をアシストドーパントとして機能させる場合、当該遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態と一重項励起状態のエネルギー準位差を極めて近接させるため、三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差が起こる。
さらに、当該遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態と一重項励起状態のエネルギーを蛍光発光性化合物に移動させることにより、当該蛍光発光性化合物から蛍光発光が可能となる。そして、当初生成した励起子のうち75%を占める三重項励起子のエネルギーを無輻射失活により熱として消失させることなく、励起エネルギーを有効に利用できることになる。よって、当初生成した一重項励起子を含めた全体としては、理想的には、100%のエネルギーを蛍光として利用することが可能となる。
このように、遅延蛍光発光性化合物を青色蛍光発光性化合物と併用することで、三重項励起子の無輻射失活由来の熱の発生を抑制することができるため、有機EL素子を構成する膜の剥がれやひび割れ等の劣化の抑制につながるものと推察している。
通常の蛍光発光性化合物及びTADF化合物のエネルギーダイヤグラムを示した模式図 アシストドーパントが存在する場合のエネルギーダイヤグラムを示した模式図 本発明の有機EL素子の一例を示した概略断面図 本発明に係るガスバリアー層の形成に用いることのできる磁場を有するローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す概略図
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、可撓性基板上に、ガスバリアー層、第1電極、少なくとも一つの発光層を含む有機機能層及び第2電極をこの順で有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記第1電極及び前記第2電極のうち一方が透明電極、他方が反射電極であり、前記発光層が、蛍光発光性化合物及びアシストドーパントとして機能する遅延蛍光発光性化合物を含有することを特徴とする。
この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する特徴である。
本発明の実施態様としては、前記有機機能層が、複数の発光層を含み、前記蛍光発光性化合物及び遅延蛍光発光性化合物を含有する発光層が、前記複数の発光層のうち最も前記透明電極に近い位置に配置されている場合にも、無輻射失活由来の熱の発生を抑制できるため好ましい。
また、本発明の実施態様としては、前記ガスバリアー層が、ケイ素、酸素及び炭素を含有し、かつ当該ガスバリアー層の厚さ方向の組成分布に極大値及び極小値を有することが、有機機能層に水分やガスの浸入を抑制することができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様としては、前記透明電極が、銀を主成分として含有することが、製造プロセス及び導電性を向上させることができる点で好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
本論に入る前に、本発明の技術思想と関連する、有機ELの発光方式及び発光材料について述べる。
<有機ELの発光方式>
有機ELの発光方式としては三重項励起状態から基底状態に戻る際に光を発する「リン光発光」と、一重項励起状態から基底状態に戻る際に光を発する「蛍光発光」の二通りがある。
有機ELのような電界で励起する場合には、三重項励起子が75%の確率で、一重項励起子が25%の確率で生成するため、リン光発光の方が蛍光発光に比べ発光効率を高くすることが可能で、低消費電力化を実現するには優れた方式である。
一方、蛍光発光においても、75%の確率で生成してしまう、励起子のエネルギーが、無輻射失活により、通常では熱にしかならない三重項励起子を、高密度で存在させることによって、二つの三重項励起子から一つの一重項励起子を発生させて発光効率を向上させるTTA(Triplet−Triplet Annihilation、また、Triplet−Triplet Fusion:「TTF」と略記する。)機構を利用した方式が見つかっている。
さらに、近年では、安達らによる報告(例えば、「照明に向けた燐光有機EL技術の開発」応用物理 第80巻、第4号、2011年参照。)により一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギーギャップを小さくすることで、発光中のジュール熱及び/又は発光素子が置かれる環境温度によりエネルギー準位の低い三重項励起状態から一重項励起状態に逆項間交差がおこり、結果としてほぼ100%に近い蛍光発光を可能とする現象(熱励起型遅延蛍光又は熱励起型遅延蛍光ともいう:「TADF」)とそれを可能にする蛍光物質が見いだされている。
<リン光発光性化合物>
前述のとおり、リン光発光は発光効率的には蛍光発光よりも理論的には3倍有利であるが、三重項励起状態から一重項基底状態へのエネルギー失活(=リン光発光)は禁制遷移であり、また同様に一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差も禁制遷移であるため、通常その速度定数は小さい。すなわち、遷移が起こりにくいため、励起子寿命はミリ秒から秒オーダーと長くなり、所望の発光を得ることが困難である。
ただし、イリジウムや白金などの重金属を用いた錯体が発光する場合には、中心金属の重原子効果によって、前記の禁制遷移の速度定数が3桁以上増大し、配位子の選択によっては、100%のリン光量子収率を得ることも可能となる。
しかしながら、このような理想的な発光を得るためには、希少金属であるイリジウムやパラジウム、白金などのいわゆる白金属と呼ばれる貴金属を用いる必要があり、大量に使用されることになるとその埋蔵量や金属自体の値段が産業上大きな問題となってくる。
<蛍光発光性化合物>
一般的な蛍光発光性化合物は、リン光発光性化合物のような重金属錯体である必要性は特になく、炭素、酸素、窒素及び水素などの一般的な元素の組み合わせから構成される、いわゆる有機化合物が適用できる。さらに、リンや硫黄、ケイ素などその他の非金属元素を用いることも可能で、また、アルミニウムや亜鉛などの典型金属の錯体も活用できるなど、その多様性はほぼ無限と言える。
ただし、従来の蛍光化合物では前記のように励起子の25%しか発光に適用できないために、リン光発光のような高効率発光は望めない。
<遅延蛍光化合物>
[励起三重項−三重項消滅(TTA)遅延蛍光化合物]
蛍光発光性化合物の問題点を解決すべく登場したのが遅延蛍光を利用した発光方式である。三重項励起子同士の衝突を起源とするTTA方式は、下記のような一般式で記述できる。すなわち、従来、励起子のエネルギーが、無輻射失活により、熱にしか変換されなかった三重項励起子の一部が、発光に寄与しうる一重項励起子に逆項間交差できるメリットがあり、実際の有機EL素子においても従来の蛍光発光素子の約2倍の外部取り出し量子効率を得ることができている。
一般式: T + T → S + S
(式中、Tは三重項励起子、Sは一重項励起子、Sは基底状態分子を表す。)
しかしながら、上式からもわかるように、二つの三重項励起子から発光に利用できる一重項励起子は一つしか生成しないため、この方式で100%の内部量子効率を得ることは原理上できない。
[熱活性型遅延蛍光(TADF)化合物]
もう一つの高効率蛍光発光であるTADF方式は、TTAの問題点を解決できる方式である。
蛍光発光性化合物は前記のごとく無限に分子設計できる利点を持っている。すなわち、分子設計された化合物の中で、特異的に三重項励起状態と一重項励起状態のエネルギー準位差の絶対値(以降、ΔEstと記載する。)が極めて近接する化合物が存在する(図1A参照)。
このような化合物は、分子内に重原子を持っていないにもかかわらず、ΔEstが小さいために通常では起こりえない三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差が起こる。さらに、一重項励起状態から基底状態への失活(=蛍光発光)の速度定数が極めて大きいことから、三重項励起子はそれ自体が基底状態に熱的に失活(無輻射失活)するよりも、一重項励起状態経由で蛍光を発しながら基底状態に戻る方が速度論的に有利である。そのため、TADFでは理想的には100%の蛍光発光が可能となる。
以下において、TADF方式により蛍光発光を示す、本発明で用いられる化合物は、TADF化合物又は遅延蛍光発光性化合物ともいう。
《有機EL素子の構成》
図2は、本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
図2に示すとおり、有機EL素子100は、透明基板(基板)13上に設けられており、透明基板13側から順に、ガスバリアー層2、第1電極(透明電極)1、有機材料等を用いて構成された有機機能層3及び第2電極(反射電極)5aをこの順に積層して構成されている。図2では、有機EL素子100は、発生させた光(以下、発光光hと記す。)を、少なくとも透明基板13側から取り出すように構成されている。
また、有機EL素子100の層構造は以下に説明する例に限定されることはなく、一般的な層構造であってもよい。ここでは、透明電極1がアノード(すなわち陽極)として機能し、反射電極5aがカソード(すなわち陰極)として機能することとする。この場合、例えば、有機機能層3は、アノードである透明電極1側から順に正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3d/電子注入層3eを積層した構成が例示されるが、このうち少なくとも有機材料を用いて構成された発光層3cを有することが必須である。正孔注入層3a及び正孔輸送層3bは、正孔輸送注入層として設けられていてもよい。電子輸送層3d及び電子注入層3eは、電子輸送注入層として設けられていてもよい。また、これらの有機機能層3のうち、例えば、電子注入層3eは無機材料で構成されているものとしてもよい。
また、有機機能層3は、これらの層の他に正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていてもよい。さらに、発光層3cは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を非発光性の補助層を介して積層させた構造としてもよい。補助層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能してもよい。さらに、カソードである反射電極5aも、必要に応じた積層構造であってもよい。このような構成においては、透明電極1と反射電極5aとで有機機能層3が挟持された部分のみが、有機EL素子100における発光領域となる。
また、以上のような層構成においては、透明電極1の低抵抗化を図ることを目的とし、透明電極1の導電性層1bに接して補助電極15が設けられていてもよい。
以上のような構成の有機EL素子100は、有機材料等を用いて構成された有機機能層3の劣化を防止することを目的として、透明基板13上において後述する封止材17で封止されている。この封止材17は、接着剤19を介して透明基板13側に固定されている。ただし、透明電極1及び反射電極5aの端子部分は、透明基板13上において有機機能層3によって互いに絶縁性を保った状態で封止材17から露出させた状態で設けられていることとする。
以下、上述した有機EL素子100を構成するための主要各層の詳細を、透明基板13、ガスバリアー層2、第1電極(透明電極)1、第2電極(反射電極)5a、有機機能層3の発光層3c、有機機能層3の他の層、補助電極15及び封止材17の順に説明する。
《可撓性基板》
本発明に係る可撓性基板13としては、透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。
透明樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を挙げることができる。
中でも、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの観点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネートが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート又は二軸延伸ポリエチレンナフタレートがより好ましい。
本発明に係る可撓性基板の層厚としては、1〜1000μmの範囲内が好ましく、更には10〜100μmの範囲内であることが好ましい。
なお、本発明でいう「透明」とは、JIS K 7361−1:1997(樹脂透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が70%以上であることをいう。
可撓性基板の表面には、当該可撓性基板上に形成されるガスバリアー層との接着性を向上させる観点から、表面処理が施されていても良いし、易接着層が設けられていても良い。表面処理や易接着層については、従来公知の技術を適用することができる。
表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
易接着層の形成材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でも良いが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしても良い。
不透明な基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子の発光の室温(25℃)における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、5%以上であるとより好ましい。
ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を、蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。
《ガスバリアー層》
本発明に係るガスバリアー層は、前記可撓性基板の少なくとも一方の面側に形成される。
本発明に係るガスバリアー層は、X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づき、当該ガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する、ケイ素原子の量の比率(「ケイ素原子比率(at%)」という。)、酸素原子の量の比率(「酸素原子比率(at%)」という。)及び炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という。)との関係を示すケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線において、下記条件(1)〜(3)を満たすことが好ましい。
(1)前記ガスバリアー層は、層厚方向で組成が連続的に変化し、前記炭素分布曲線が少なくとも一つの極値を有する。
(2)前記炭素原子比率の最大の極値と最小の極値との差が5at%以上である。
(3)前記ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の原子比率(at%)が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有する。
式(A)
(炭素原子比率)<(ケイ素原子比率)<(酸素原子比率)
式(B)
(酸素原子比率)<(ケイ素原子比率)<(炭素原子比率)
本発明においては、ケイ素、酸素及び炭素を含有し、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線として上記条件(1)〜(3)で規定する全てを満たすガスバリアー層を少なくとも1層有していれば良い。また、可撓性基板上には、本発明の目的効果を損なわない範囲で、上記条件(1)〜(3)の少なくとも一つの条件を満たさない他の構成層を有していても良い。また、本発明に係るガスバリアー層は、構成元素として、ケイ素、酸素及び炭素の他に、窒素やアルミニウムを更に含有していても良い。
ガスバリアー層が、本発明で規定する上記条件(1)〜(3)の全てを満たさない場合は、第1電極の金属細線を焼成する過程において、十分な低抵抗率が得られ、かつ素子の発光寿命に悪影響を及ぼす溶媒を除去可能な温度条件で焼成すると、後述する保存性評価及び熱衝撃評価において、ダークスポットが多数発生することがわかった。
これは、可撓性基板のガラス転移温度以上の加熱を行ったことで、可撓性基板が伸縮し、それに伴ってガスバリアー層に亀裂が入ったものと推定している。
上記条件(1)〜(3)を全て満たす本発明に係るガスバリアー層は、上述の焼成過程において必要な温度条件で焼成し、可撓性基板の伸縮が多少生じた場合でもガスバリアー層の亀裂が入らず保存性が良好であり、焼成温度の範囲を広げることが可能となる。
上記条件(3)において、本発明で規定する式(A)又は式(B)を満たす領域が、ガスバリアー層の全層厚の90%以上であることが好ましく、特に好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは100%である。
また、本発明に係るガスバリアー層は、上記条件(1)において、炭素分布曲線が少なくとも一つの極値を有することを特徴としている。更に、本発明に係るガスバリアー層では、前記炭素分布曲線が二つ以上の極値を有することがより好ましく、三つ以上の極値を有することが特に好ましい。また、少なくとも三つの極値を有する場合において、前記炭素分布曲線の隣接する極値間の層厚方向における距離が200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
なお、本発明でいう極値とは、ガスバリアー層の層厚方向において、表層面からの距離に対する元素の原子比率(at%)の極大値(凸パターン)又は極小値(凹パターン)のことをいう。
本発明でいう極大値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値(at%)が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比率の値(at%)よりも、該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置における元素の原子比率の値が3at%以上減少する点のことをいう。
また、本発明でいう極小値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値(at%)が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比率の値(at%)よりも、該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が3at%以上増加する点のことをいう。
また、本発明に係るガスバリアー層は、上記条件(2)で規定するように、前記炭素分布曲線における炭素原子比率の最大の極値と最小の極値との差が5at%以上であることが好ましい。
また、このような特性を備えたガスバリアー層においては、炭素の原子比率の最大の極値と最小の極値との差が6at%以上であることが好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。
(1)酸素分布曲線、極値
本発明に係るガスバリアー層においては、前記ガスバリアー層の酸素分布曲線が少なくとも一つの極値を有することが好ましく、少なくとも二つの極値を有することがより好ましく、少なくとも三つの極値を有することが特に好ましい。前記酸素分布曲線が極値を有する場合には、後述する評価でのダークスポット耐性が向上する傾向にある。また、このように少なくとも三つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する他の極値における前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離の差の絶対値が、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
(2)酸素分布曲線及びケイ素分布曲線における最大の極値と最小の極値との差
また、本発明に係るガスバリアー層においては、ガスバリアー層の前記酸素分布曲線における酸素の原子比率(at%)の最大の極値と最小の極値との差が5at%以上であることが好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。前記最大値及び最小値の差が5at%以上であれば、後述する評価でのダークスポット耐性が向上する傾向にある。
本発明においては、前記ガスバリアー層のケイ素分布曲線において、ケイ素の原子比率の最大の極値と最小の極値との差が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記最大の極値と最小の極値との差が5at%未満であれば、後述する評価でのダークスポット耐性が向上する傾向にある。
(3)酸素炭素分布曲線における最大の極値と最小の極値との差
また、本発明に係るガスバリアー層においては、ガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離とケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する酸素原子及び炭素原子の合計量の比率(酸素及び炭素の原子比率、at%)との関係を示す酸素炭素分布曲線において、酸素炭素分布曲線における酸素及び炭素の原子比率の合計(at%)の最大の極値と最小値の極値の差が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。上記最大の極値と最小の極値との差が5at%未満であれば、後述する評価でのダークスポット耐性が向上する傾向にある。
(4)元素分布曲線の作成
以上により説明した本発明に係るガスバリアー層のケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる元素分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。
なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は、層厚方向におけるガスバリアー層の表層から層厚方向に向かっての距離におおむね相関することから、「ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」は、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出することができる。
また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
また、本発明に係るガスバリアー層は、その表面の全領域において、特性にバラツキがなく均一で、かつ優れたガスバリアー性を備えたガスバリアー層を形成するという観点から、ガスバリアー層が膜面方向(ガスバリアー層の表面に平行な方向)において、その組成が実質的に一様(均一)であることが好ましい。
本発明に係るガスバリアー層において、膜面方向において、その組成が実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリアー層の膜面の任意の2か所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2か所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大の極値と最小の極値との差が、互いに同じであるか若しくは5at%以内の差であることをいう。
更に、本発明においては、前記炭素分布曲線は、実質的に層厚方向で連続的に変化していることが好ましい。本発明において、炭素分布曲線が実質的に連続的に変化しているとは、炭素分布曲線における炭素の原子比率が不連続に変化する部分を含まないことを意味する。具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記ガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比率(c、単位:at%)との関係において、下記式(F1)で表される条件を満たすことをいう。
式(F1):
−1.0≦(dc/dx)≦1.0
本発明においては、可撓性基板上に上記条件(1)〜(3)の全てを満たすガスバリアー層を少なくとも1層備えることが必要であるが、上記条件(1)〜(3)の全てを満たすガスバリアー層を複数層備えていても良い。
更に、本発明で規定する上記構成からなるガスバリアー層を2層以上備える場合には、複数のガスバリアー層の構成材料は同一であっても良く、異なっていても良い。
また、このようなガスバリアー層を2層以上備える場合には、ガスバリアー層は、可撓性基板の一方面側に2層以上形成されていても良く、可撓性基板の両方の面側に、それぞれ形成されていてもよい。
ガスバリアー層のケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素の原子比率、酸素の原子比率及び炭素の原子比率が、条件(3)で規定する式(A)で表される条件を満たす場合には、本発明に係るガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子の含有量の原子比率(at%)は、25〜45at%の範囲内であることが好ましく、30〜40at%の範囲内であることがより好ましい。
また、本発明に係るガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率(at%)は、33〜67at%の範囲内であることが好ましく、45〜67at%の範囲内であることがより好ましい。
更に、本発明に係るガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率(at%)は、3〜33at%の範囲内であることが好ましく、3〜25at%の範囲内であることがより好ましい。
また、ガスバリアー層のケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素の原子比率、酸素の原子比率及び炭素の原子比率が、条件(3)で規定する式(B)で表される条件を満たす場合には、本発明に係るガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子の含有量の原子比率(at%)は、25〜45at%の範囲内であることが好ましく、30〜40at%の範囲内であることがより好ましい。
また、本発明に係るガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率(at%)は、1〜33at%の範囲内であることが好ましく、10〜27at%の範囲内であることがより好ましい。
更に、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率(at%)は、33〜66at%の範囲内であることが好ましく、40〜57at%の範囲内であることがより好ましい。
また、前記ガスバリアー層の層厚は、5〜3000nmの範囲であることが好ましく、10〜2000nmの範囲であることより好ましく、100〜1000nmの範囲であることが特に好ましい。
また、本発明に係るガスバリアー層の形成方法としては、特に制限はないが、プラズマ化学気相成長法により形成される層であることが好ましい。このようなプラズマ化学気相成長法により形成されるガスバリアー層としては、基板を前記一対の成膜ローラー上に配置し、前記一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させるプラズマ化学気相成長法により形成される層であることがより好ましい。
このような一対の成膜ローラー間に放電する際には、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。更に、このようなプラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
また、本発明においては、前記ガスバリアー層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
なお、本発明でいう「ガスバリアー性」とは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(温度:60±0.5℃、相対湿度(RH):90±2%)が3×10−3g/m・24h以下であり、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m・24h・atm以下であることを意味する。
(5)成膜装置
本発明に係るガスバリアー層を可撓性基板上に形成させる方法としては、ガスバリアー性の観点から、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD)を採用することが好ましい。なお、当該プラズマ化学気相成長法は、ペニング放電プラズマ方式のプラズマ化学気相成長法であっても良い。
また、前記プラズマ化学気相成長法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させる方法を適用することができるが、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに、可撓性基板を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。更には、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を有するローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により形成する方法が好ましい。
このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基板を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基板上にガスバリアー層を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基板上にも同時にガスバリアー層を成膜することが可能となって効率良く薄膜を製造できるばかりか、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造のガスバリアー層を成膜できるので、前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率良く、本発明で規定する上記条件(1)〜(3)の全てを満たすガスバリアー層を形成することができる。
また、生産性の観点から、ロールtoロール方式で、長尺のロール状の可撓性基板を用い、その表面上に前記ガスバリアー層を形成する方法が好ましい。また、このようなプラズマ化学気相成長法によりガスバリアー層を形成することが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図3に示す製造装置を用いた場合には、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロールtoロール方式で製造することも可能となる。
図3は、本発明に係るガスバリアー層の形成において好適に用いることができる磁場を有するローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。以下、図3を参照しながら、ガスバリアー層の形成方法について、より詳細に説明する。
図3に示す磁場を有するローラー間放電プラズマCVD装置(以下、プラズマCVD装置ともいう。)は、主には、送り出しローラー11と、搬送ローラー21、22、23及び24と、成膜ローラー31及び32と、成膜ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、成膜ローラー31及び32の内部に設置された磁場発生装置61及び62と、巻取りローラー71とを備えている。
また、このようなプラズマCVD装置においては、少なくとも成膜ローラー31及び32と、成膜ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、磁場発生装置61及び62とが、図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。更に、このようなプラズマCVD装置において、真空チャンバー(不図示)は、真空ポンプ(不図示)に接続されており、この真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このようなプラズマCVD装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)が一対の対向電極として機能することが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)に、プラズマ発生用電源51より電力を供給することにより、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間に放電することが可能となり、これにより成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間(放電空間ともいう。)にプラズマを発生させることができる。
なお、このように、成膜ローラー31と成膜ローラー32を電極として利用することになるため、電極として利用可能な材質や設計を適宜変更すれば良い。また、このようなプラズマCVD装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。
このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。
また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられていることが好ましい。
更に、成膜ローラー31及び成膜ローラー32としては、適宜公知のローラーを用いることができる。成膜ローラー31及び32としては、より効率良く薄膜を形成することができる観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。
また、成膜ローラー31及び32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が100〜1000mmφの範囲、特に100〜700mmφの範囲が好ましい。直径が100mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量がフィルムにかかることを回避でき、残留応力が大きくなりにくく好ましい。
一方、直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
また、このようなプラズマCVD装置に用いる送り出しローラー11及び搬送ローラー21、22、23及び24としては、公知のローラーを適宜選択して用いることができる。また、巻取りローラー71としても、ガスバリアー層を形成した可撓性基板13を巻き取ることが可能なものであれば良く、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
成膜ガス供給管41としては、原料ガス等の成膜ガスを所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。更に、プラズマ発生用電源51としては、従来公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ローラー31と成膜ローラー32に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率良くプラズマCVD法を実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。
また、このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率良くプラズマCVD法を実施することが可能となることから、印加電力を0.1〜10kWの範囲とすることができ、かつ交流の周波数を0.05〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61及び62としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
図3に示すようなプラズマCVD装置を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、磁場発生装置の強度、真空チャンバー内の圧力、成膜ローラーの直径、及び可撓性基板の搬送速度を適宜調整することにより、本発明に係るガスバリアー層を形成することができる。
すなわち、図3に示すプラズマCVD装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)間に、磁場を発生させながらプラズマ放電を行うことにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー31上の可撓性基板13の表面上及び成膜ローラー32上の可撓性基板13の表面上に、本発明に係るガスバリアー層がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、可撓性基板13が送り出しローラー11や成膜ローラー31等により、それぞれ搬送されることにより、ロールtoロール方式の連続的な成膜プロセスにより可撓性基板13の表面上に前記ガスバリアー層が形成される。
(5.1)原料ガス
本発明に係るガスバリアー層の形成に用いられる成膜ガスを構成する原料ガスは、形成するガスバリアー層の材質に応じて適宜選択することができるが、少なくともケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
本発明に適用可能な有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取り扱い及び得られるガスバリアー層のガスバリアー性等の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いても良い。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
前記成膜ガスにおいては、原料ガスを真空チャンバー内に供給するため、必要に応じて、キャリアガスを用いても良い。更に、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いても良い。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガス、窒素ガスを用いることができる。
成膜ガスが、原料ガスと反応ガスとを含有する場合には、原料ガスと反応ガスとの比率を、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、上記条件(1)〜(3)の全てを満たす薄膜が得られなくなってしまう。また、成膜ガスが有機ケイ素化合物と酸素とを含有する場合には、酸素量としては、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、代表例として、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物、HMDSOともいう、(CHSiO)と、反応ガスである酸素(O)の系について説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン((CHSiO)と、反応ガスである酸素(O)とを含有する成膜ガスを、プラズマCVD法により反応させてケイ素−酸素系(SixOy)の薄膜を形成する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で示される反応が起こり、二酸化ケイ素SiOからなる薄膜が形成される。
反応式(1)
(CHSiO+12O→6CO+9HO+2SiO
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対し、酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまうため、原料のガス流量比を理論比である完全反応の原料比以下の流量に制御して、非完全反応を遂行させる。すなわち、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なく設定する必要がある。
なお、実際のプラズマCVD装置のチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスである酸素は、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる。
例えば、CVD法により完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上とする場合もある。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下の量であることが好ましく、より好ましくは10倍以下の量である。
このような比率でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を供給することにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に取り込まれ、所望の元素組成プロファイルからなるガスバリアー層を形成することが可能となり、得られるガスバリアー性フィルムに優れたガスバリアー性及び屈曲耐性を付与することができる。
なお、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)が少なすぎると、酸化されなかった炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に過剰に取り込まれることになる。この場合、ガスバリアー層の透明性が低下して、ガスバリアー性フィルムは、電子デバイス、例えば、有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板には利用できなくなってしまう。このような観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
(5.2)真空度
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、おおむね0.5〜100Paの範囲内とすることが好ましい。
(5.3)ローラー成膜
図3に示すようなプラズマCVD装置等を用いたプラズマCVD法においては、成膜ローラー31及び32間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラム(図3においては、成膜ローラー31及び32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり、一概に規定することはできないが、おおむね0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクル(不正粒子)の発生も見られず、成膜時に発生する熱量も制御範囲内であるため、成膜時の基板表面温度の上昇による、可撓性基板の熱変形、熱による性能劣化や成膜時の皺の発生も防止することができる。また、熱で可撓性基板が溶けて、裸の成膜ローラー間に大電流の放電が発生することによる成膜ローラーの損傷等を防止することができる。
可撓性基板13の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が前記範囲内であれば、熱に起因する皺が基板に発生し難く、形成されるガスバリアー層の厚さも十分に制御可能となる。
《ポリシラザン層》
本発明の有機EL素子は、ガスバリアー層と第1電極との間に、ポリシラザン層を更に備えていても良い。
(1)ポリシラザン層の形成
ポリシラザン層は、ポリシラザンと、溶剤と、必要に応じて触媒、とを含むポリシラザン層形成用塗布液を公知の湿式塗布方法により基板上に塗布し、当該溶剤を蒸発させて除去することによって基板上に形成される。
ポリシラザン層形成用塗布液を基板上に塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
ポリシラザン層形成用塗布液を塗布する厚さとしては、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、当該塗布液の乾燥後の層厚が10〜10000nm程度であることが好ましく、50〜1000nm程度であることがより好ましい。ポリシラザン層の層厚が10nm以上であれば十分なガスバリアー性を得ることができ、10μm以下であれば、ポリシラザン層形成時に安定した塗布性を得ることができ、かつ高い光線透過性を実現できる。
本発明の有機EL素子において、ポリシラザン層中におけるポリシラザンの含有率としては、ポリシラザン層の全質量を100%としたとき、10質量%以上99質量以下であることが好ましく、40質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。
ポリシラザン層形成用塗布液に含有されるポリシラザンとしては、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si及び両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
また、溶剤中におけるポリシラザンの割合は、一般的には、ポリシラザン1〜80質量%、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。
本発明に用いられるポリシラザンとしては、下記一般式(X)で表される構造を有する化合物が好ましい。
一般式(X)
−(SiR−NR)n−
上記一般式(X)において、R、R及びRは、互いに同一であっても異なっていても良く、それぞれ独立に、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基及び3−(トリメトキシシリルプロピル)基からなる群から選択される基である。
ここで、一般式(X)において、nは整数であり、nは、一般式(X)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
ポリシラザン層の形成に用いるポリシラザン層形成用塗布液には、ポリシラザンとともに触媒を含有することが好ましい。本発明に適用可能な触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン又はN−複素環式化合物が好ましい。また、市販品も用いることができ、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製のアクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。添加する触媒の濃度としては、ポリシラザンを基準としたとき、通常0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜7モル%の範囲である。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体又は固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザン化合物の別の例としては、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
ポリシラザン層形成用塗布液の溶剤としては、特に、水及び反応性基(例えば、ヒドロキシ基又はアミン基等)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機系溶剤が好ましく、非プロトン性の溶剤が好適である。
ポリシラザン層形成用塗布液に適用可能な溶剤としては、非プロトン性溶剤(例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン炭化水素等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ−及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類))、又はこれらの溶剤の混合物を挙げることができる。
本発明に用いられるポリシラザン層形成用塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。
例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類(例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート等)、天然樹脂(例えば、ゴム、ロジン樹脂等)、合成樹脂(例えば、重合樹脂等)、縮合樹脂(例えば、アミノプラスト、特に尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル若しくは変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネート若しくはブロック化ポリイソシアネート、ポリシロキサン等)である。
このように構成されるポリシラザン層形成用塗布液を用いることにより、亀裂及び孔が生じることなく、ガスに対する高いガスバリアー作用を有する緻密なガラス様のポリシラザン層を形成することができる。
(2)ポリシラザン層の改質処理
本発明の有機EL素子が備えていても良いポリシラザン層は、上記説明したポリシラザン層をシリカ転化して、xが1.2以上、2.0以下であるSiOxNyとすることが好ましい。
ガスバリアー層上に上記ポリシラザン層形成用塗布液を塗布してポリシラザン層を形成した後、当該ポリシラザン層に400nm以下の紫外光を照射、好ましくは、波長が180nm未満の真空紫外光(VUV)を照射することにより、当該ポリシラザン層を改質することができる。
水分が取り除かれたポリシラザン層は、紫外光の照射による処理で改質する。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素膜又は酸化窒化ケイ素膜を形成することが可能である。なお、紫外光照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
この紫外光照射により、ポリシラザン層のSi−H、N−H結合の切断と、Si−O結合の生成が起こり、シリカ等のセラミックスに転化するが、この転化の度合はIR測定によって、以下に定義する式(1)により、半定量的に評価することができる。
式(1)
SiO/SiN比=転化後のSiO吸光度/転化後のSiN吸光度
ここで、SiO吸光度は約1160cm−1、SiN吸光度は約840cm−1の特性吸収より算出する。SiO/SiN比が大きいほどシリカ組成に近いセラミックスへの転化が進んでいることを示す。
本発明において、セラミックスへの転化度合の指標となるSiO/SiN比は0.3以上、好ましくは0.5以上とすることが好ましい。0.3未満では期待するガスバリアー性が得られないことがあるため好ましくない。
本発明に用いられるシリカ転化率(SiOxにおけるx)の測定方法としては、例えば、XPS法を用いて測定することができる。
ポリシラザン層中の金属酸化物(SiOx)の組成は、XPS表面分析装置を用いて、原子組成比を測定することで測定できる。また、ポリシラザン層を切断して切断面をXPS表面分析装置で原子組成比を測定することでも測定することができる。
《第1電極(透明電極)》
図2に示すように、透明電極1は、導電性層1bと、導電性層1bに隣接して設けられる下地層1aとを備えていることが好ましい。具体的には、透明電極1は、下地層1aと、この下地層1aの上部に導電性層1bとが積層された2層構造であり、例えば、基板13の上部に、下地層1a、導電性層1bの順に設けられていることが好ましい。
下地層1aは、例えば、国際公開第2013/141057号に記載される化合物を含有する層である。導電性層1bは、金属を主成分として構成されている層であり、金、銀又は銅が好ましく、銀を主成分とすることが最も好ましい。以下の説明において、一例として、銀を用いて説明する。
なお、導電性層1bの主成分とは、導電性層1bを構成する成分のうち、構成比率が最も高い成分をいう。導電性層1bにおける銀の構成比率としては、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
《下地層》
本発明において、下地層に使用される化合物として効果的な化合物の少なくとも一つは、窒素原子を化学構造式中に有する化合物である。この窒素原子が非共有電子対を持つ窒素原子である場合、「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」となる場合がある。「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」とは、当該非共有電子対が不飽和環状化合物の芳香族性に必須要素として直接的に関与していない窒素原子のことをいう。すなわち、共役不飽和環構造(芳香環)上の非局在化したπ電子系に、非共有電子対が、化学構造式上、芳香性発現のために必須のものとして関与していない窒素原子をいう。
このような窒素原子を有することにより、下地層に隣接して導電性層を成膜する際、導電性層を構成する銀原子が下地層に含有されている該芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子と相互作用し、下地層表面上での銀原子の拡散距離が減少し、特異箇所での銀の凝集を抑制することができたものである。
また、透明電極1の透明とは、測定光波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
また、透明電極1としてのシート抵抗値は、20Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5〜20nm、好ましくは5〜12nmの範囲で選ばれる。
次に、このような積層構造の透明電極1を構成する下地層1a及び導電性層1bの順に、詳細な構成を説明する。
《導電性層》
導電性層1bは、合金から構成されていてもよく、そのような合金としては、例えば、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)等が挙げられ、金及び銅についても同様に合金を用いることができる。
導電性層1bの成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。
湿式法により導電性層1bを成膜する場合は、例えば銀を主成分とし、かつ有機溶媒を含有する導電性インクを用いることが好ましい。有機溶媒としては、透明電極1の効果を阻害しない限りにおいて、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。
湿式法を用いて導電性層を形成する場合、金、銀及び銅の各金属を主成分とする導電性インクを用いることが好ましい。これらは本発明の目的を満たす限り特に限定はされないが、導電性層の膜厚を薄くすることで、高い光透過性を実現している本構成においては、粒径の小さい10nm前後のナノ粒子からなる導電性インクや、錯体からなる導電性インクを用いることが特に好ましい。
しかしながら、市販されている導電性インクの多くは、電気回路や光反射膜の作製等が主な用途であるため、これらを通常の使用方法により用いて、光透過性に優れた薄膜の作製をすることは困難である。そこで、該導電性インクを溶媒で希釈する方法や、薄膜形成プロセス条件を最適化させるなどの工夫が必要となる。
希釈する溶媒としては、透明電極1の効果を阻害しない限りにおいて、有機溶媒や水系溶媒等、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。
また、導電性層1bは、下地層1a上に成膜されることにより、必要に応じて、導電性層成膜後の高温アニール処理(例えば、100℃以上の加熱プロセス)等を行ってもよい。
《有機機能層》
有機機能層は、通常、発光に直接関与する発光層のほか、例えば、キャリア(正孔及び電子)の注入層、阻止層及び輸送層等の各種有機機能層を備えている。
有機機能層の好ましい積層例は以下のとおりである。なお、以下の(1)〜(6)において、通常は、先に記載された層が陽極側に設けられ、以下、記載の順番で陰極側に積層される。
(1)発光層/電子輸送層
(2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層
(3)正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層
(4)正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層(陰極バッファー層)(5)正孔注入層(陽極バッファー層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層
(6)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層
以下、各有機機能層の構成を説明するが、各種有機機能層の具体的な材料等は公知の材料等を適用することが可能であるため、その説明を省略する。
(タンデム構造)
本発明の有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
(7)陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の2層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
《発光層》
発光層は、第1電極から直接、又は正孔輸送層等を介して注入される正孔と、第2電極から直接、又は電子輸送層等を介して注入される電子とが再結合することにより、発光する層である。なお、発光する部分は、発光層の内部であっても良いし、発光層とそれに隣接する層との間の界面であっても良い。
本発明に用いられる発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に用いられる発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
発光層の層厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
また、本発明に用いられる個々の発光層の層厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
本発明に用いられる発光層には、発光ドーパント(発光性化合物、発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、単にドーパントともいう。)を含有し、さらに前述のホスト化合物(マトリックス材料、発光ホスト化合物、単にホストともいう。)を含有することが好ましい。
(1)発光ドーパント
発光ドーパントとしては、蛍光発光性ドーパント(蛍光発光性化合物、蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう。)と、リン光発光性ドーパント(リン光発光性化合物、リン光ドーパント、リン光性化合物ともいう。)が好ましく用いられる。本発明においては、少なくとも1層の発光層が、後述の遅延蛍光発光性化合物を含有することが好ましい。
本発明に係る遅延蛍光発光性化合物は異なる蛍光発光性化合物やリン光発光性化合物の発光を補助するために使用することができる。この場合、発光層には本発明に係る遅延蛍光発光性化合物に対し質量比で100%以上のホストが存在し、かつ本発明に係る遅延蛍光発光性化合物に対し質量比で0.1〜50%の範囲内で異なる蛍光発光性物質又はリン光発光性化合物が存在することが好ましい。
これにより、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物をアシストドーパントとして用いる場合、前記濃度範囲において、蛍光発光性化合物及び/又はリン光発光性化合物に効率よく蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)することができるためである。
具体的には、発光層中に、最低励起一重項エネルギー準位と最低励起三重項エネルギー準位の差の絶対値(ΔEst)が0.5eV以下である遅延蛍光発光性化合物と、蛍光発光性化合物及びリン光発光性化合物の少なくとも1種類とを含有することも、高発光効率発現の観点から好適である。当該発光層には、さらにホスト化合物が含有されていることがより好ましい。
遅延蛍光発光性化合物、発光性化合物及びホスト化合物は、発光層中に含有されるそれぞれの成分の数に制限はないが、3成分がそれぞれ少なくとも1種ずつ含有されていることがさらに好ましい。
発光層が、最低励起一重項エネルギー準位と最低励起三重項エネルギー準位の差の絶対値(ΔEst)が、0.5eV以下である本発明に係る遅延蛍光発光性化合物と、発光性化合物と、ホスト化合物を含有する場合、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物はアシストドーパントとして作用する。
効果が発現する機構としては、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物上に生成した三重項励起子を逆項間交差(RISC)で一重項励起子へと変換する点にある。
これにより、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物上に生成した理論上すべての励起子エネルギーを発光性化合物に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)することができ、高発光効率の発現を可能にする。
したがって、発光層が、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物、発光性化合物及びホスト化合物の3成分を含有する場合は、遅延蛍光発光性化合物のSとTのエネルギー準位は、ホスト化合物のSとTのエネルギー準位よりも低く、発光性化合物のSとTのエネルギー準位よりも高い方が好ましい。
図1Bに、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物がアシストドーパントとして機能する場合の模式図を示す。図1Bは一例であって、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物上に生成する三重項励起子の生成過程は電界励起のみに限定されず、発光層内又は周辺層界面からのエネルギー移動や電子移動等も含まれる。
本発明に係る遅延蛍光発光性化合物をアシストドーパントとして用いる場合、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物の発光スペクトルと発光性化合物の吸収スペクトルが重なることが好ましい。これにより、遅延蛍光発光性化合物の得たエネルギーを効率よく発光性化合物に伝えることができるようになる。
(1.1.1)遅延蛍光発光性化合物
本発明に係る遅延蛍光発光性化合物は、分子内に電子のアクセプター部位とドナー部位とを有し、当該アクセプター部位が、3環以下の縮合環で構成されており、14個以下のπ電子を含み芳香族性を有し、かつ当該縮合環が、1個又は2個の窒素原子を含む6員の芳香族複素環を含むことが好ましい。
なお、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物は、熱活性型遅延蛍光発光性化合物であることが特に好ましい。
ドナー部位は電子供与性の部位のことを指し、分子の電子遷移状態で記述すれば、HOMOはドナー部位に局在化することが多い。ここで、ドナー部位の「部位」とは、置換基又は原子群のことを指す。
ドナー部位の例としては、アリールアミン類、カルバゾール、フェノキサジン、アクリジン、フェノチアジン及びピロール類等が挙げられる。
アクセプター部位は前述の説明のとおり、電子欠乏性の電子求引性部位のことを指し、分子の電子遷移状態で記述すれば、LUMOはアクセプター部位に局在化することが多い。
芳香族性については、ヒュッケル則に従い、(4n+2)個のπ電子を有するものを、芳香族性を有すると定める。
本発明で用いられる化合物において、アクセプター部位は分子の平面性を抑制する観点から、3環以下の縮合環で構成されており、14個以下のπ電子を含む芳香族性を有することが必要である。
また、該縮合環は、1個又は2個の窒素原子を有する6員の芳香族複素環を含み、その例としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環が挙げられる。
本発明に係る遅延蛍光発光性化合物は、具体的には下記一般式(A)で表すことができる。
Figure 2016119355
式中、Aは電子のアクセプター部位を表し、lは1〜4の整数を表す。Dは電子のドナー部位を表し、mは1から4の整数を表す。Lは2価の連結基を表し、炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基等を好ましく用いることができる。これらの連結基は、下記に示す置換基によってさらに置換されていてもよい。
置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基が挙げられる。
更に、インドール環、インダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、イソインドール環、ナフチリジン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(前記カルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す。)、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環等の置換基も好適に用いることができる。これらの置換基は、電子吸引性基すなわちアクセプター部位としても好適に用いることができる。
アクセプター部位の好ましい例は、下記一般式(1)で表される部分構造を有する。
Figure 2016119355
式中、A〜Aは、各々独立に、C−R又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子である。Rは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。
複数のRが存在する場合は、各々のRは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、このRはさらに前述の置換基で置換されていてもよい。
環Bは6員の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基並びに5員の芳香族複素環基を表し、前述の芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基と同義である。
本発明に係る遅延蛍光発光性化合物の好ましい例は、下記一般式(B)で表すことができる。
Figure 2016119355
式中、A〜Aは、各々独立に、C−R又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子である。Rは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。
複数のRが存在する場合は、各々のRは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、このRはさらに前述の置換基で置換されていてもよい。 環Bは6員の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基並びに5員の芳香族複素環基を表し、前述の芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基と同義である。lは1〜4の整数を表す。
Dは電子のドナー部位を表し、mは1〜4の整数を表す。Lは2価の連結基を表し、炭化水素基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基等を好ましく用いることができる。これらの連結基は、上記に示す置換基によってさらに置換されていてもよい。なお、Lで表される2価の連結基は、A〜A及び環Bのうちのいずれかの位置で連結されればよいことを表している。
アクセプター部位である、一般式(1)で表される部分構造は、さらに好ましくは下記一般式(2)又は一般式(2a)で表される。
Figure 2016119355
Figure 2016119355
一般式(2)中、A〜Aは、各々独立に、C−R又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち2つは窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。複数のRが存在する場合は、各々のRは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、一般式(2)で表される部分構造は、合計で10個のπ電子を有している。環Bは5員の芳香族複素環基を表し、B〜Bは炭素原子、窒素原子、酸素原子又はリン原子を表し、これらの原子は各々独立に水素原子や置換基で置換されていてもよい。
一般式(2a)中、A〜Aは、各々独立に、C−R又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち2つは窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。複数のRが存在する場合は、各々のRは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、一般式(2a)で表される部分構造は、合計で10個のπ電子を有している。環Bは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環基を表し、B〜BはC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。
本発明に係る遅延蛍光発光性化合物のさらに好ましい例は、下記一般式(C)で表す構造を有する。
Figure 2016119355
式中、A〜Aは、各々独立に、C−R又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子である。Rは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。複数のRが存在する場合は、各々のRは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、このRはさらに前述の置換基で置換されていてもよい。Rは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。複数のRが存在するとき、各々のRは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、このRはさらに前述の置換基で置換されていてもよい。Dはドナー部位を表し、nは1〜4の整数を表す。環Bは、6員の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基並びに5員の芳香族複素環基を表す。なお、ドナー部位Dを有するRとの連結基は、A〜A及び環Bのうちのいずれかの位置で連結されればよいことを表している。
電子のアクセプター部位である、一般式(2)で表される部分構造の最も好ましい例として、下記一般式(3)で表される部分構造を示す。
Figure 2016119355
式中、A〜Aは、各々独立に、C−R又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち2つは窒素原子である。Rは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。複数のRが存在する場合、各々のRは同一でも異なっていてもよく、Ra及びRbは水素原子又は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換基と同義である。
以下に、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物の構成要素である電子のドナー部位及びアクセプター部位の好ましい部分構造の例を挙げるが、これらの部位はさらに置換基で置換されていたり、構造異性体などが存在する場合もあり、本記述に限定されない。
《ドナー部位》
Figure 2016119355
《アクセプター部位》
Figure 2016119355
以下に、本発明に係る遅延蛍光発光性化合物の好ましい具体例を挙げるが、これらの化合物はさらに置換基で置換されていたり、構造異性体などが存在する場合もあり、本記述に限定されない。
Figure 2016119355
Figure 2016119355
Figure 2016119355
Figure 2016119355
Figure 2016119355
Figure 2016119355
Figure 2016119355
Figure 2016119355
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Figure 2016119355
Figure 2016119355
Figure 2016119355
Figure 2016119355
(1.1.2)蛍光発光性化合物
本発明に係る遅延蛍光発光性化合物と併用することのできる蛍光発光性化合物について説明する。
本発明に係る遅延蛍光発光性化合物と併用可能な蛍光発光性化合物としては、特に制限はなく、例えば、ΔEstが0.5eVより大きい蛍光発光性化合物も好適に用いることができ、その他、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等や、レーザー色素に代表される蛍光量子収率が高い化合物が挙げられる。
(1.2)リン光発光性ドーパント
本発明に用いられるリン光発光性ドーパントについて説明する。
本発明に用いられるリン光発光性ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature,395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.,78,1622(2001)、Adv.Mater.,19,739(2007)、Chem.Mater.,17,3532(2005)、Adv.Mater.,17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.,40,1704(2001)、Chem.Mater.,16,2480(2004)、Adv.Mater.,16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.,2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.,86,153505(2005)、Chem.Lett.,34,592(2005)、Chem.Commun.,2906(2005)、Inorg.Chem.,42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0108737号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号明細書、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2009/0165846号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2006/0263635号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許出願公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew.Chem.lnt.Ed.,47,1(2008)、Chem.Mater.,18,5119(2006)、Inorg.Chem.,46,4308(2007)、Organometallics,23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.,74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号明細書、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許出願公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/098120号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許出願公開第2012/228583号明細書、米国特許出願公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特願2011−181303号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
(2)ホスト化合物
本発明に用いられるホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
ホスト化合物は、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
以下に、本発明において好ましく用いられるホスト化合物について述べる。
本発明で用いられる蛍光発光性化合物とともに用いられるホスト化合物としては特に制限はないが、逆エネルギー移動の観点から、本発明で用いられる蛍光発光性化合物の励起一重項エネルギー準位より高い励起エネルギー準位をもつものが好ましく、さらに本発明で用いられる蛍光発光性化合物の励起三重項エネルギーより高い励起三重項エネルギー準位をもつものがより好ましい。
ホスト化合物は、発光層内においてキャリアの輸送及び励起子の生成を担う。そのため、カチオンラジカル状態、アニオンラジカル状態、及び励起状態の全ての活性種の状態において安定に存在でき、分解や付加反応などの化学変化を起こさないこと、さらに、層中において通電経時でホスト分子がオングストロームレベルで移動しないことが好ましい。
また、特に併用する発光ドーパントがTADF発光を示す場合には、TADF化合物の三重項励起状態の存在時間が長いことから、ホスト化合物自体のTエネルギー準位が高いこと、さらにホスト化合物同士が会合した状態で低T状態を作らないこと、TADF化合物とホスト化合物とがエキサイプレックスを形成しないこと、ホスト化合物が電界によりエレクトロマーを形成しないことなど、ホスト化合物が低T化しないような分子構造の適切な設計が必要となる。
このような要件を満たすためには、ホスト化合物自体が電子のホッピング移動性が高いこと、かつ正孔のホッピング移動が高いこと、三重項励起状態となったときの構造変化が小さいことが必要である。このような要件を満たすホスト化合物の代表格としてカルバゾール骨格、アザカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格又はアザジベンゾフラン骨格などの、高Tエネルギー準位を有し、かつ14π電子系の拡張π共役骨格を部分構造として有するものが好ましく挙げられる。特に、発光層が、カルバゾール誘導体を含有することにより、発光層内における適度なキャリアホッピングや発光材料の分散を促すことができ、素子の発光性能や薄膜の安定性を向上させる効果が得られることから、好ましい。
さらに、これらの環がビアリール及び/又はマルチアリール構造を取った化合物などが代表例として挙げられる。ここでいう「アリール」とは、芳香族炭化水素環だけでなく芳香族複素環も含む。
より好ましくは、カルバゾール骨格と、カルバゾール骨格とは異なる分子構造を持つ14π電子系の芳香族複素環化合物とが直接結合した化合物であり、さらに14π電子系の芳香族複素環化合物を分子内に二つ以上持つカルバゾール誘導体が好ましい。特に、前記カルバゾール誘導体が、14π電子以上の共役系構造部分を二つ以上有する化合物であることが、本発明の効果を一層高めるために好ましい。
また、本発明に用いられるホスト化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物も好ましい。これは、下記一般式(I)で表される化合物は、縮環構造を有するためにπ電子雲が広がっておりキャリア輸送性が高く、高いガラス転移温度(Tg)を有するためである。さらに、一般に縮合芳香族環は三重項エネルギー準位(T)が低い傾向があるが、一般式(I)で表される化合物は高いTを有しており、発光波長の短い(すなわちT及びSの大きい)発光材料に対しても好適に用いることができる。
Figure 2016119355
上記一般式(I)において、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102103又はSiR102103を表す。y〜yは、各々CR104又は窒素原子を表す。
101〜R104は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。
Ar101及びAr102は、各々芳香族環を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
n101及びn102は各々0〜4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1〜4の整数を表す。
一般式(I)におけるR101〜R104は水素又は置換基を表し、ここにいう置換基は本発明に用いられるホスト化合物の機能を阻害しない範囲で有してもよいものを指し、例えば、合成スキーム上置換基が導入されてしまう場合で、本発明の効果を奏する化合物は本発明に包含される旨を規定するものである。
101〜R104で各々表される置換基としては、例えば、直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいう。例えば、ベンゼン環、ビフェニル、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−ターフェニル環、m−ターフェニル環、p−ターフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、インデン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環、テトラリン等から導出される基)、芳香族複素環基(例えば、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ジベンゾチオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環等から導出される基。また、カルボリン環とジアザカルバゾール環を合わせて「アザカルバゾール環」と呼ぶ場合もある。)、非芳香族炭化水素環基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、非芳香族複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、重水素原子等が挙げられる。
これらの置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(I)におけるy〜yとしては、好ましくは、y〜yの内の少なくとも三つ、又はy〜yの内の少なくとも三つがCR102で表され、より好ましくはy〜yが全てCR102である。このような骨格は、正孔輸送性又は電子輸送性に優れ、陽極・陰極から注入された正孔・電子を効率よく発光層内で再結合・発光させることができる。
中でも、LUMOのエネルギー準位が浅く、電子輸送性に優れる構造として、一般式(I)中でX101が、NR101、酸素原子又は硫黄原子である化合物が好ましい。より好ましくは、X101及びy〜yとともに形成される縮合環が、カルバゾール環、アザカルバゾール環、ジベンゾフラン環又はアザジベンゾフラン環である。
さらに、ホスト化合物を剛直にすることが好ましいという目的から考え、X101がNR101の場合においては、R101は前述で挙げられた置換基の内、π共役系骨格である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基であることが好ましい。また、これらのR101は更に前述のR101〜R104で表される置換基で置換されていてもよい。
一般式(I)において、Ar101及びAr102により表される芳香族環としては、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が挙げられる。該芳香族環は単環でも縮合環でもよく、更に未置換でも、前述のR101〜R104で表される置換基と同様の置換基を有してもよい。
一般式(I)において、Ar101及びAr102により表される芳香族炭化水素環としては、例えば、前述のR101〜R104で表される置換基の例として挙げられた芳香族炭化水素環基と同様の環が挙げられる。
一般式(I)で表される部分構造において、Ar101及びAr102により表される芳香族複素環としては、例えば、前述のR101〜R104で表される置換基の例として挙げられた芳香族複素環基と同様の環が挙げられる。
一般式(I)で表されるホスト化合物が大きなTを有するという目的を考えた場合には、Ar101及びAr102で表される芳香族環自身のTが高いことが好ましく、ベンゼン環(ベンゼン環が複数連結したポリフェニレン骨格(ビフェニル、テルフェニル、クォーターフェニル等)も含む。)、フルオレン環、トリフェニレン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環、ジベンゾフラン環、アザジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、インドロインドール環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イミダゾール環又はトリアジン環等が好ましい。より好ましくはベンゼン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環、ジベンゾフラン環である。
Ar101及びAr102がカルバゾール環又はアザカルバゾール環の場合は、N位(又は9位ともいう)又は3位で結合していることがより好ましい。
Ar101及びAr102がジベンゾフラン環の場合は、2位又は4位で結合していることがより好ましい。
また、上記の目的とは別に、有機EL素子を車内に積載して使用する用途などを考えた場合においては、車内の環境温度が高くなることが想定されるため、ホスト化合物のTgが高いことも好ましい。そこで、一般式(I)で表されるホスト化合物を高Tg化するという目的から、Ar101及びAr102により表される芳香族環としては、各々3環以上の縮合環が好ましい一態様である。
3環以上が縮合した芳香族炭化水素縮合環としては、具体的には、ナフタセン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、ベンゾアズレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、アセナフテン環、アセナフチレン環、トリフェニレン環、コロネン環、ベンゾコロネン環、ヘキサベンゾコロネン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フルオランテン環、ペリレン環、ナフトペリレン環、ペンタベンゾペリレン環、ベンゾペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環、コロネン環、ナフトコロネン環、オバレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。なお、これらの環は、更に上記の置換基を有していてもよい。
また、3環以上が縮合した芳香族複素環としては、具体的には、アクリジン環、ベンゾキノリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、カルボリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭素原子の任意の一つが窒素原子で置き換わったものを表す。)、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、チオファントレン環(ナフトチオフェン環)等が挙げられる。なお、これらの環は更に置換基を有していてもよい。
一般式(I)において、n101及びn102は各々0〜2の整数であることが好ましく、より好ましくはn101+n102が1〜3の整数である。また、R101が水素原子の場合にn101及びn102が同時に0であると、一般式(I)で表されるホスト化合物の分子量が小さく低いTgしか達成できないため、R101が水素原子の場合にはn101は1〜4の整数を表す。
本発明で用いられるホスト化合物として、カルバゾール誘導体が、一般式(II)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。このような化合物は、特にキャリア輸送性に優れる傾向があるためである。
Figure 2016119355
一般式(II)において、X101、Ar101、Ar102、n102は、前記一般式(I)におけるX101、Ar101、Ar102、n102と同義である。
n102は好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。
一般式(II)において、X101を含んで形成される縮合環は、Ar101及びAr102以外にも本発明に用いられるホスト化合物の機能を阻害しない範囲でさらに置換基を有してもよい。
さらに、一般式(II)で表される化合物が下記一般式(III−1)、(III−2)又は(III−3)で表されることが好ましい。
Figure 2016119355
一般式(III−1)〜(III−3)において、X101、Ar102、n102は、前記一般式(II)におけるX101、Ar102、n102と同義である。また、一般式(III−2)において、R104は、前記一般式(I)におけるR104と同義である。
一般式(III−1)〜(III−3)において、X101を含んで形成される縮合環、カルバゾール環及びベンゼン環は、本発明に用いられるホスト化合物の機能を阻害しない範囲でさらに置換基を有してもよい。
以下に、本発明に用いられるホスト化合物として、一般式(I)、(II)、(III−1)〜(III−3)で表される化合物及びその他の構造からなる化合物例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2016119355
本発明に用いられる好ましいホスト化合物は、昇華精製が可能な程度の分子量をもった低分子化合物であっても、繰り返し単位を有するポリマーであってもよい。
低分子化合物の場合、昇華精製が可能であるため精製が容易で、高純度の材料を得やすいという利点がある。分子量としては、昇華精製が可能な程度であれば特に制限はないが、好ましい分子量としては3000以下、より好ましくは2000以下である。
繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーの場合は、ウェットプロセスで成膜しやすいという利点があり、また一般にポリマーはTgが高いため耐熱性の点でも好ましい。
本発明に用いられるホスト化合物として用いられるポリマーは、所望の素子性能が達成可能であれば特に制限はないが、好ましくは一般式(I)、(II)、(III−1)〜(III−3)の構造を主鎖若しくは側鎖に有するものが好ましい。分子量としては特に制限はないが、分子量5000以上が好ましく、若しくは繰り返し単位数が10以上のものが好ましい。
また、ホスト化合物は、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、かつ発光の長波長化を防ぎ、さらに、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121−2012に準拠した方法により求められる値である。
《電子輸送層》
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明で用いられる電子輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総層厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の層厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という。)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明で用いられる電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
米国特許第6528187号明細書、米国特許第7230107号明細書、米国特許出願公開第2005/0025993号明細書、米国特許出願公開第2004/0036077号明細書、米国特許出願公開第2009/0115316号明細書、米国特許出願公開第2009/0101870号明細書、米国特許出願公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.,75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.,79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.,81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.,81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.,79,156(2001)、米国特許第7964293号明細書、米国特許出願公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、欧州特許出願公開2311826号明細書、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
本発明で用いられるより好ましい電子輸送材料としては、少なくとも一つの窒素原子を含む芳香族複素環化合物が挙げられ、例えばピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、アザジベンゾフラン誘導体、アザジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体などが挙げられる。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《正孔阻止層》
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明で用いられる正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明で用いられる正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
《電子注入層》
本発明で用いられる電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記のごとく陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその層厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な層(膜)であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、8−ヒドロキシキノリネートリチウム(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
《正孔輸送層》
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明で用いられる正孔輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT/PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPD(4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)に代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
さらに不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらにIr(ppy)に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、Appl.Phys.Lett.,69,2160(1996)、J.Lumin.,72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.,78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.,90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.,90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.,51,913(1987)、Synth.Met.,87,171(1997)、Synth.Met.,91,209(1997)、Synth.Met.,111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.,3,319(1993)、Adv.Mater.,6,677(1994)、Chem.Mater.,15,3148(2003)、米国特許出願公開第2003/0162053号明細書、米国特許出願公開第2002/0158242号明細書、米国特許出願公開第2006/0240279号明細書、米国特許出願公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号明細書、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、EP650955、米国特許出願公開第2008/0124572号明細書、米国特許出願公開第2007/0278938号明細書、米国特許出願公開第2008/0106190号明細書、米国特許出願公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号明細書等である。
正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《電子阻止層》
電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明で用いられる電子阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明で用いられる電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物も電子阻止層に好ましく用いられる。
《正孔注入層》
本発明で用いられる正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう。)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記のごとく陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《添加物》
前述した本発明における有機機能層は、更に他の添加物が含まれていてもよい。
添加物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
添加物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
《有機機能層の形成方法》
本発明に係る有機機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
本発明に係る有機機能層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、かつ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロールtoロール方式適性の高い方法が好ましい。
本発明に用いられる有機EL材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
更に層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層(膜)厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
本発明に係る有機機能層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
《陰極》
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、金、銀、銅、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適であり、透明電極とする場合は前述のとおり、導電性の観点から銀を主成分とするものが好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることで作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、金、銀、銅等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられ、製造プロセス及び導電性の観点から銀を主成分とするものが最も好ましい。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
または、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。
《その他の構成》
本発明に用いることができる封止手段、保護膜、保護板、光取り出し効率を向上させる技術及び集光シートとしては、特開2014−152151号公報等に記載の公知の技術を用いることができる。
[用途]
本発明の有機EL素子は、電子機器、例えば、表示装置、ディスプレイ、各種発光装置として用いることができる。
発光装置として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
<表示装置>
本発明の有機EL素子を具備する表示装置は単色でも多色でもよいが、ここでは多色表示装置について説明する。
多色表示装置の場合は発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法又は印刷法等で膜を形成できる。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、スピンコート法及び印刷法である。
表示装置に具備される有機EL素子の構成は、必要に応じて上記の有機EL素子の構成例の中から選択される。
また、有機EL素子の製造方法は、上記の本発明の有機EL素子の製造の一態様に示したとおりである。
このようにして得られた多色表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ又は各種発光光源として用いることができる。表示デバイス又はディスプレイにおいて、青、赤及び緑発光の3種の有機EL素子を用いることによりフルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス又はディスプレイとしては、テレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示及び自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
発光装置としては、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
<照明装置>
本発明の有機EL素子は、照明装置に用いることもできる。
本発明の有機EL素子は、共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
また、本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、パッシブマトリクス方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
また、本発明に用いられる遅延蛍光発光性化合物は、実質的に白色の発光を生じる有機EL素子を具備する照明装置に適用できる。例えば、複数の発光材料を用いる場合、複数の発光色を同時に発光させて、混色することで白色発光を得ることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色及び青色の3原色の三つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した二つの発光極大波長を含有したものでもよい。
本発明の有機EL素子や本発明に用いられる化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図3.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。
白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
本発明の有機EL素子における白色とは、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
また、本発明の有機EL素子の形成方法は、発光層、正孔輸送層又は電子輸送層等の形成時のみマスクを設け、マスクにより塗り分ける等単純に配置するだけでよい。他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法及び印刷法等で、例えば、電極膜を形成でき、生産性も向上する。
この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が白色発光である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
《有機EL素子1−1の作製》
1.基板
基板として、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚さ:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を用いた。
2.ガスバリアー層の形成
図3に示すような、コベルコ社製プラズマCVDロールコーターW35シリーズ装置に上記基板を装着して、下記成膜条件(プラズマCVD条件)にて、基板上にガスバリアー層を、層厚300nmとなる条件で成膜した。
(プラズマCVD条件)
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン;HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
基板の搬送速度:0.8m/min
形成したガスバリアー層について、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、ガスバリアー層の層厚方向の表面からの距離における、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線が得られた。その結果から、炭素分布曲線が複数の明確な極値を有していること、炭素の原子比の最大値及び最小値の差が5at%以上であること、並びに、ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素の原子比率、酸素の原子比率及び炭素の原子比率が、前記式(A)で示された条件を満たしていることが確認された。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
ガスバリアー層と第1電極との間に、下記に示す方法でポリシラザン層を形成した。
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液を、ポリシラザン層形成用塗布液とした。
上記ポリシラザン層形成用塗布液を、ワイヤーバーにて、乾燥後の(平均)層厚が300nmとなるように塗布し、温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間処理して乾燥させ、更に温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン層を形成した。
次いで、上記形成したポリシラザン層に対し、下記の紫外線照射装置を用いて、露点温度が−8℃以下の条件下で、真空紫外光を照射し、改質処理(シリカ転化処理)を実施した。
(紫外線照射装置)
装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
ポリシラザン層が形成された基板を、上記紫外線照射装置の稼動ステージ上に固定し、以下の改質処理条件でポリシラザン層の改質処理を行った。
(改質処理条件)
エキシマランプ光強度:130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:5秒
3.第1電極(アノード電極)の形成
上記ガスバリアー層が形成された基板を50mm角に切り出したものに、アノード電極としてITOを100nm成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
4.有機機能層の形成
第1電極が形成された基板を市販の真空蒸着装置内にセットし、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量で充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
以下の手順で有機機能層(正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層)を設けた。
まず、真空蒸着装置内を真空度1×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で第1電極上に蒸着し、層厚30nmの正孔輸送層を設けた。
次いで、ホスト化合物DPVBi及び青色蛍光ドーパントとしてBDAVBiの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、ホスト化合物及び遅延蛍光発光材料及び青色蛍光ドーパントが、それぞれ99質量%、1質量%になるように、ホスト化合物の蒸着速度0.1nm/秒に合わせて青色蛍光ドーパント材料の速度を調整し、正孔輸送層上に共蒸着することで層厚15nmの青色蛍光発光層(第1発光層)を形成した。
その後、BAlqを青色蛍光発光層上に蒸着し、層厚5nmの正孔阻止層を形成し、更に、CsFを層厚比で10%になるようにAlqと正孔阻止層上に共蒸着し、層厚45nmの電子輸送層を形成した。
Figure 2016119355
5.第2電極(カソード電極)の形成
形成した電子輸送層の上に、第1電極を陽極とした陽極外部取り出し端子を形成するとともに、陰極形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にて15mm×15mmでマスク蒸着し、層厚100nmの陰極を形成した。
6.封止
更に、第1電極及び第2電極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き第1電極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基板としAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機EL素子1−1を作製した。
《有機EL素子1−2の作製》
有機EL素子1−2の作製においては、有機EL素子1−1と同様の基板を使用し、ガスバリアー層の形成においては、プラズマCVD条件のプラズマ発生用電源からの印加電力を2.0kWに変更してガスバリアー層を形成した。第1電極についても同様に作製した。
4.有機機能層の形成
第1電極が形成された基板上に、有機EL素子1−1と同様に正孔輸送層を設けた。
次いで、ホスト化合物DPVBi及び青色蛍光ドーパントとしてBDAVBiの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、ホスト化合物及び遅延蛍光発光材料及び青色蛍光ドーパントが、それぞれ99質量%、1質量%になるように、ホスト化合物の蒸着速度0.1nm/秒に合わせて青色蛍光ドーパント材料の速度を調整し、正孔輸送層上に共蒸着することで層厚15nmの青色蛍光発光層(第1発光層)を形成した。
次いで、DPVBiの入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蛍光発光層上に蒸着し、層厚5nmの中間層を形成した。
次いで、Ir−1及びH4の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層上に共蒸着し、層厚10nmの緑色リン光発光層を形成した。
その後、有機EL素子1−1と同様に電子輸送層を形成した。
更に、有機EL素子1−1と同様に第2電極を形成し、封止を行い、有機EL素子1−2を作製した。
《有機EL素子1−3の作製》
有機EL素子1−3の作製において、有機EL素子1−2のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を700sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−3を作製した。
《有機EL素子1−4の作製》
有機EL素子1−4の作製において、有機EL素子1−2のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を500sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−4を作製した。
《有機EL素子1−5の作製》
有機EL素子1−5の作製において、有機EL素子1−2のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を300sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−5を作製した。
《有機EL素子1−6の作製》
有機EL素子1−6の作製においては、有機EL素子1−1と同様の基板を使用し、ガスバリアー層の形成においては、プラズマCVD条件のプラズマ発生用電源からの印加電力を2.0kWに変更してガスバリアー層を形成した。第1電極についても同様に作製した。
4.有機機能層の形成
第1電極が形成された基板上に、有機EL素子1−1と同様に正孔輸送層を設けた。
次いで、ホスト化合物DPVBi及び遅延蛍光発光材料T−41及び青色蛍光ドーパントとしてBDAVBiの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、ホスト化合物及び遅延蛍光発光材料及び青色蛍光ドーパントが、それぞれ84質量%、15質量%、1質量%になるように、ホスト化合物の蒸着速度0.1nm/秒に合わせて遅延蛍光発光材料及び青色蛍光ドーパント材料の速度を調整し、正孔輸送層上に共蒸着することで層厚15nmの青色蛍光発光層(第1発光層)を形成した。
その後、有機EL素子1−1と同様に電子輸送層を形成した。
更に、有機EL素子1−1と同様に第2電極を形成し、封止を行い、有機EL素子1−6を作製した。
《有機EL素子1−7の作製》
有機EL素子1−7の作製において、有機EL素子1−6のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を700sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−7を作製した。
《有機EL素子1−8の作製》
有機EL素子1−8の作製において、有機EL素子1−6のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を500sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−8を作製した。
《有機EL素子1−9の作製》
有機EL素子1−9の作製において、有機EL素子1−6のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を300sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−9を作製した。
《有機EL素子1−10の作製》
有機EL素子1−10の作製において、有機EL素子1−6の第1発光層の形成後に、有機EL素子1−2と同様の第2発光層を形成した以外は、有機EL素子1−6と同様にして有機EL素子1−10を作製した。
《有機EL素子1−11の作製》
有機EL素子1−11の作製において、有機EL素子1−10のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を700sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−11を作製した。
《有機EL素子1−12の作製》
有機EL素子1−12の作製において、有機EL素子1−10のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を500sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−12を作製した。
《有機EL素子1−13の作製》
有機EL素子1−13の作製において、有機EL素子1−10のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を300sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−13を作製した。
《有機EL素子1−14の作製》
有機EL素子1−14の作製において、有機EL素子1−2のアノード電極をITOからAg(薄銀)電極に変更した以外は、有機EL素子1−2と同様にして有機EL素子1−14を作製した。具体的な形成方法を以下に示す。
3.第1電極(アノード電極)の形成
有機EL素子1−1の形成で使用した基板と同様の基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空蒸着装置の真空槽に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を充填し、当該真空槽内に取り付けた。次に、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、基板上に層厚8nmの銀からなる第1電極を形成した。
《有機EL素子1−15の作製》
有機EL素子1−15の作製において、有機EL素子1−14のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を700sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−15を作製した。
《有機EL素子1−16の作製》
有機EL素子1−16の作製において、有機EL素子1−14のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を500sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−16を作製した。
《有機EL素子1−17の作製》
有機EL素子1−17の作製において、有機EL素子1−14のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を300sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−17を作製した。
《有機EL素子1−18の作製》
有機EL素子1−18の作製において、アノード電極を有機EL素子1−14と同様にITOからAg(薄銀)電極に変更した以外は、有機EL素子1−14と同様にして有機EL素子1−18を作製した。
《有機EL素子1−19の作製》
有機EL素子1−19の作製において、有機EL素子1−18のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を700sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−19を作製した。
《有機EL素子1−20の作製》
有機EL素子1−20の作製において、有機EL素子1−18のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を500sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−20を作製した。
《有機EL素子1−21の作製》
有機EL素子1−21の作製において、有機EL素子1−18のガスバリアー層の形成におけるプラズマCVD条件の酸素ガス(O)の供給量を300sccmに変更した以外は同様にして有機EL素子1−21を作製した。
(評価)
有機EL素子1−1から1−21について、下記の評価を行った。
《ひび割れ・膜剥がれ》
23℃、50%RHの環境下で、10mA/cmの定電流条件による連続発光を行い、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて、初期輝度の半分の輝度になるまで(半減期:τ1/2)駆動させ、クロスカット法(JIS K5600:2014)を利用した方法により3mm間隔で切り込みをいれ、セロハンテープを強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、膜の耐性(ひび割れ・膜剥がれ)を評価した。
ひび割れについては、3.5cm×4.5cmの基板10枚の1枚当たりに発生した0.5mm以上のひび割れを目視で観察した。評価の基準を以下に示した。
A:ひび割れが全く生じていない
B:5個未満
C:5個以上10個未満
D:10個以上15個未満
E:15以上
膜剥がれについても同様に、3.5cm×4.5cmの基板10枚の1枚当たりに発生した4.5mm以上の膜剥がれを目視で観察した。評価の基準を以下に示した。
A:膜剥がれが全く生じていない
B:5個未満
C:5個以上10個未満
D:10個以上15個未満
E:15以上
ひび割れ及び膜剥がれについては、A及びBの評価が実用に耐えるものであり、C〜Eの評価は実用上問題がある。
《熱衝撃耐性の評価(ダークスポット数による評価)》
85℃30分/−40℃30分の熱衝撃試験を500サイクル実施した後、発光画像を確認しダークスポット(DS)の発生状況を「バリアー性DS個数」として下記の基準で評価した。
A:DSの発生なく問題無し
B:微小DSが5個未満発生しているが、目視では視認できないレベル
C:微小DSが5個以上10個未満発生しているが、実用上問題ないレベル
D:微小DSが10個以上発生しており、実用上問題があるレベル
結果を表1に示す。なお、表1及び表2中の極大値及び極小値については、ガスバリアー層中のケイ素、酸素又は炭素の少なくともいずれか一つが極大値及び極小値を有する場合は、「あり」として示し、極大値及び極小値を一つも有しない場合は、「なし」として示す。
Figure 2016119355
以上より、本発明の有機EL素子は、比較例の有機EL素子と比べて耐久性に優れていることがわかった。なお、本発明の有機EL素子においては、第2発光層に赤色リン光発光性化合物(例えば、Ir−9等)を使用することもできる。
[実施例2]
実施例1の有機EL素子1−20と同様の手順で、発光層1に用いるTADF化合物を、T−1、T−37、T−119、T−145に変更して有機EL素子を作製し、実施例1と同様に評価を行った(有機EL素子2−1〜2−4)。
表2に示すとおり、有機EL素子1−20と同様の評価が得られることが確認できた。これにより、具体例として示した遅延蛍光発光性化合物についても同様に有機EL素子に使用できることがわかった。
Figure 2016119355
[実施例3]
実施例1の有機EL素子1−1〜1−21と同様の手順で、第1発光層と第2発光層の位置を入れ替えて有機EL素子を作製し、実施例1と同様に評価を行った(有機EL素子3−1〜3−21)。
表3に示す通り、遅延蛍光発光性化合物を含まない、実施例1の有機EL素子1−1〜1−5及び1−14〜1−17と実施例3の有機EL素子3−1〜3−5及び3−14〜3−17を比較すると、ひび割れ・膜剥がれについての評価については、有機EL素子1−1〜1−5及び1−14〜1−17の方が劣化の程度が大きいことがわかった。一方、遅延蛍光発光性化合物を含んだ、実施例1の有機EL素子1−6〜1−13及び1−18〜1−21と実施例3の有機EL素子3−6〜3−13及び3−18〜3−21では同等の評価が得られた。
これにより、遅延蛍光発光性化合物を含む発光層を透明電極(アノード電極)に最も近い配置とした(すなわち透明電極が熱の影響を受けやすい)場合に、遅延蛍光発光性化合物を用いた効果がより大きいことがわかった。
Figure 2016119355
1 透明電極
1a 下地層
1b 導電性層
2 ガスバリアー層
3 有機機能層
3a 正孔注入層
3b 正孔輸送層
3c 発光層
3d 電子輸送層
3e 電子注入層
5a 反射電極
13 透明基板(可撓性基板)
13a 光取り出し面
15 補助電極
17 封止材
19 接着剤
100 有機EL素子
h 発光光
11 送り出しローラー
21、22、23、24 搬送ローラー
31、32 成膜ローラー
41 成膜ガス供給管
51 プラズマ発生用電源
61、62 磁場発生装置
71 巻取りローラー

Claims (4)

  1. 可撓性基板上に、ガスバリアー層、第1電極、少なくとも一つの発光層を含む有機機能層及び第2電極をこの順で有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記第1電極及び前記第2電極のうち一方が透明電極、他方が反射電極であり、
    前記発光層が、蛍光発光性化合物及びアシストドーパントとして機能する遅延蛍光発光性化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記有機機能層が、複数の発光層を含み、
    前記蛍光発光性化合物及び遅延蛍光発光性化合物を含有する発光層が、前記複数の発光層のうち最も前記透明電極に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記ガスバリアー層が、ケイ素、酸素及び炭素を含有し、かつ当該ガスバリアー層の厚さ方向の組成分布に極大値及び極小値を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記透明電極が、銀を主成分として含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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