以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の建物は、複数の建物ユニットが互いに組み合わされてなる二階建てのユニット式建物となっている。図1はその建物の外観を示す正面図であり、図2は建物の概要を示す斜視図である。図3は(a)が建物の一階部分の間取りを示す平面図であり、(b)が二階部分の間取りを示す平面図である。
図1及び図2に示すように、建物10は、基礎11上に配設された建物本体12と、建物本体12の上方に配設された屋根13とを備えて構成されている。建物本体12は、一階部分14(下階部)と二階部分15(上階部)とからなる二階建てであり、複数の建物ユニット20が互いに連結されることで構成されている。また、屋根13は、陸屋根により構成されている。
図3(a)に示すように、建物10の一階部分14には、一階居室31が設けられている。一階居室31は、一階部分14を構成する複数の建物ユニット20に跨がって形成されている。また、一階部分14には、一の建物ユニット20(以下、この建物ユニット20の符号にAを付す)にアルコーブ32が形成されている。アルコーブ32は、建物10の外壁に対して屋内側に凹ませられることで形成された凹状空間となっている。アルコーブ32は、建物ユニット20Aの一部のスペースを用いて形成されている。
建物ユニット20Aにおいてアルコーブ32の屋内側には一階居室31(詳しくはその一部領域)が形成されている。アルコーブ32と一階居室31とは建物ユニット20Aの短手方向(ユニット短手方向)に並んで配置されている。この場合、建物ユニット20Aが「下階ユニット」に相当し、建物ユニット20Aにおいて一階居室31が「下階空間部」に相当する。
アルコーブ32と一階居室31とは仕切壁部34により仕切られている。仕切壁部34には掃き出し窓からなるアルコーブ窓部35が形成されている。このアルコーブ窓部35を通じて一階居室31からアルコーブ32への出入りが可能となっている。また、アルコーブ窓部35を挟んだ両側にはアルコーブ32の側壁を構成するアルコーブ袖壁部37が設けられている。
建物10の二階部分15には、二階居室41が設けられている。二階居室41は、二階部分15を構成する複数の建物ユニット20に跨がって形成されている。また、二階部分15には、建物ユニット20A上に配置された一の建物ユニット20(以下、この建物ユニット20の符号にBを付す)にインナバルコニー42(以下、略してバルコニー42という)が形成されている。バルコニー42は、建物ユニット20Bの一部のスペースを用いて形成されており、アルコーブ32の上方と一階居室31の上方とに跨がって設けられている。
建物ユニット20Bにおいてバルコニー42の屋内側には二階居室41(詳しくはその一部領域)が形成されている。二階居室41は、建物ユニット20Bにおいて一階居室31の上方に設けられている。バルコニー42と二階居室41とは建物ユニット20Bの短手方向(ユニット短手方向)に並んで配置されている。本実施形態では、建物ユニット20Bにおいて屋外側の半分のスペースがバルコニー42となっており、屋内側の半分のスペースが二階居室41となっている。
なお、この場合、建物ユニット20Bが「上階ユニット」に相当する。また、建物ユニット20Bにおいて二階居室41が「上階空間部」に相当し、バルコニー42が「半屋外空間」に相当する。
バルコニー42と二階居室41とは仕切壁部44により仕切られている。仕切壁部44には掃き出し窓からなるバルコニー窓部45が形成されている。このバルコニー窓部45を通じて二階居室41からバルコニー42への出入りが可能となっている。バルコニー窓部45を挟んだ両側にはバルコニー42の側壁を構成するバルコニー袖壁部47が設けられている。バルコニー42(換言するとバルコニー空間)は、これらバルコニー袖壁部47と仕切壁部44とにより3方が囲まれており、残りの一方が屋外に開放されている。そして、バルコニー42の屋外開放側には手摺り部48が設けられている。
なお、以下の説明では、バルコニー42を形成する建物ユニット20Bをバルコニーユニット20Bともいい、そのバルコニーユニット20Bの下方に隣接する建物ユニット20Aをバルコニー下ユニット20Aともいう。
次に、建物ユニット20の構成について図4に基づいて説明する。図4は建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(躯体)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その溝部をユニット内側に向けて設置されている。
建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同じ間隔でかつ各々上下に対応する位置に設けられている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
ここで、上下に隣接するバルコニー下ユニット20A及びバルコニーユニット20Bのうち、バルコニー下ユニット20Aについては建物ユニット20と同様の構成を有しているのに対し、バルコニーユニット20Bについては建物ユニット20と異なる構成を有している。そこで、以下では、そのバルコニーユニット20Bの構成について図5に基づいて説明する。図5(a)はバルコニーユニット20Bの骨格の構成を示す斜視図であり、図5(b)はバルコニーユニット20Bにバルコニー42を構成するバルコニー構成体55が設置された状態を示す斜視図である。
図5(a)に示すように、バルコニーユニット20Bは、建物ユニット20と同様、四隅に配設される柱21と、各柱21を連結する天井大梁22及び床大梁23とを備えている。その一方で、バルコニーユニット20Bは、床部分の構成が建物ユニット20と相違している。そこで、以下においてはその相違する構成を中心に説明する。なお、図5では、図4と同じ構成については同じ符号を付している。
バルコニーユニット20Bの床部には、対向する短辺側の各床大梁23の間に中間梁51が架け渡されている。中間梁51は、長辺側の各床大梁23の間においてそれら長辺側の床大梁23と平行に設けられている。なお、図5(a)及び(b)では、長辺側の各床大梁23のうち図の奥側が屋内側(二階居室41側)の床大梁23(以下、この符号にXを付す)であり、図の手前側が屋外側(バルコニー42側)の床大梁23(以下、この符号にYを付す)である。
中間梁51は、床大梁23と同じ溝形鋼よりなる。中間梁51は、床大梁23と同じ高さ位置に設けられており、その長手方向の両端部が図示しないブラケットにより短辺側の各床大梁23に連結されている。中間梁51は、その溝部を屋内側の床大梁23Xに向けて配置されている。したがって、中間梁51と床大梁23Xとは互いの溝部を向き合わせた状態で配置されている。
中間梁51と床大梁23Xとの間には、複数の居室床小梁52が所定の間隔で架け渡されて固定されている。居室床小梁52は、通常の建物ユニット20の床小梁26と同様の角形鋼よりなる。居室床小梁52は、その長手方向の一端部がブラケット57を介して床大梁23Xに連結され、他端部がブラケット58(図6,図11参照)を介して中間梁51に連結されている。
また、中間梁51と屋外側の床大梁23Yとの間には、複数のバルコニー床小梁53が所定の間隔で架け渡されて固定されている。バルコニー床小梁53は、居室床小梁52と同じ間隔で並べられ、居室床小梁52と一直線となるように配置されている。バルコニー床小梁53は、居室床小梁52よりも高さ寸法が小さい角形綱よりなる。バルコニー床小梁53は、その長手方向の一端部が床大梁23Yにブラケット59(図6参照)を介して連結され、他端部が中間梁51のウェブ(の外側面)に連結されている。
ちなみに、居室床小梁52は、中間梁51の(上側フランジの)上面部よりも上方に一部が突き出るように配置されているのに対し、バルコニー床小梁53は、中間梁51の(上側フランジの)上面部よりも下方に配置されている。したがって、居室床小梁52の上面部よりもバルコニー床小梁53の上面部の方が低い位置に位置している。また、バルコニー床小梁53の下面部は、床大梁23及び中間梁51の下面部から下方にはみ出ない高さ位置に設定されており、詳しくは床大梁23及び中間梁51の下面部と略同じ高さ位置に設定されている。また、居室床小梁52の下面部も同様に、床大梁23及び中間梁51の下面部から下方にはみ出ない高さ位置に設定されている。
図5(b)に示すように、バルコニーユニット20Bにはバルコニー構成体55が設置されている。バルコニー構成体55は、仕切壁部44やバルコニー袖壁部47等を含んで構成されており、バルコニーユニット20Bの内部において屋外側に設置されている。バルコニーユニット20Bの中間梁51上には、バルコニー構成体55の仕切壁部44が設けられている。仕切壁部44は、中間梁51に沿って設置されており、その中間梁51により仕切壁部44ひいてはバルコニー構成体55が支持されている。なお、この場合、中間梁51が支持梁に相当する。
次に、バルコニー下ユニット20Aとバルコニーユニット20Bとの間の階間部分60の構成について図6に基づいて説明する。図6は、その階間部分60及びその周辺の構成を示す縦断面図である。なお、図6は、図3(b)のA−A線断面図に相当する。
図6に示すように、階間部分60は、バルコニー下ユニット20Aに形成された一階居室31及びアルコーブ32と、バルコニーユニット20Bに形成された二階居室41及びバルコニー42とを上下に仕切るものであり、バルコニー下ユニット20A(一階居室31及びアルコーブ32)の天井部と、バルコニーユニット20B(二階居室41及びバルコニー42)の床部とを含んで構成されている。
階間部分60におけるバルコニー下ユニット20Aの天井部の構成として、対向する天井大梁22の間に架け渡された各天井小梁25の下面にはそれぞれ野縁61が固定されている。それら各野縁61の下面には石膏ボードよりなる天井面材27が固定されている。天井面材27は、一階居室31とアルコーブ32とに跨がって配置されている。天井面材27の下面において一階居室31側には一階居室31の天井面を形成するクロス等の天井仕上げ材(図示略)が貼り付けられており、アルコーブ32側にはアルコーブ32の天井面を形成する軒天板63が固定されている。
一方、バルコニーユニット20Bの床部の構成として、二階居室41側には、床大梁23Xと中間梁51との間に架け渡された居室床小梁52の上面にパーティクルボードよりなる床下地材64が固定されている。床下地材64の上面には二階居室41の床面を形成するフローリング等の床仕上げ材(図示略)が敷設されており、床下地材64の下面側には床断熱材65が設けられている。
バルコニーユニット20Bの床部においてバルコニー42側には、床大梁23Yと中間梁51との間に架け渡されたバルコニー床小梁53の上面にパーティクルボードよりなる床下地材67が固定されている。床下地材67の上面にはポリエチレンフォーム等からなるバルコニー床断熱材68が設けられ、バルコニー床断熱材68の上には塩化被覆鋼板よりなる防水シート69が敷設されている。防水シート69は、床大梁23Y側の端部及び中間梁51側の端部がそれぞれ上方に立ち上げられて立ち上がり部となっている。なお、防水シート69上にはバルコニー床仕上げ材(図示略)が適宜敷設される。
図6に示されるその他の構成について説明すると、屋外側の床大梁23Yにはそれを上方から覆うようにして笠木71が取り付けられており、その笠木71上には手摺り部48が設けられている。また、床大梁23Yとその下方の天井大梁22とにはそれぞれ外壁パネル73,74が取り付けられており、それら外壁パネル73,74の境界部には見切り材75(化粧胴差)が取り付けられている。
次に、階間部分60における断熱構造について説明する。
階間部分60において、バルコニー下ユニット20Aに設けられた天井面材27と、バルコニーユニット20Bに設けられた各床下地材64,67との間の空間は階間空間70となっている。階間空間70において二階居室41(換言すると床下地材64)の下方(真下)に位置する空間は居室側空間部70aとなっており、バルコニー42(換言すると床下地材67)の下方に位置する空間はバルコニー側空間部70bとなっている。居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとは中間梁51を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。なお、居室側空間部70aが第1空間部に相当し、バルコニー側空間部70bが第2空間部に相当する。
居室側空間部70aには階間吸音材77が設けられている。階間吸音材77は、グラスウールよりなり、所定の厚みを有する板状に形成されている。階間吸音材77は、その厚みが天井大梁22の溝部の高さ寸法よりも小さくされており、詳しくは溝部の高さ寸法の半分程度とされている。階間吸音材77は、居室側空間部70aにおいて天井面材27上に設置されており、各天井小梁25の上方を跨ぐようにして配設されている。また、階間吸音材77は、平面視において居室側空間部70aのほぼ全域に亘るように配設されており、その端部が床大梁23Xの溝部に入り込んでいる。
バルコニー側空間部70bには階間断熱材78が設けられている。階間断熱材78は、グラスウールよりなる。階間断熱材78は、所定の厚みを有する板状に形成されており、上下に2枚重ねされて設置されている。階間断熱材78は、その2枚重ねされた状態での厚み(上下高さ)が天井大梁22の溝部の高さ寸法よりも小さくされており、詳しくは溝部の高さ寸法の3/4程度とされている。階間断熱材78は、バルコニー側空間部70bにおいて天井面材27上に設置されており、各天井小梁25の上方を跨ぐようにして配設されている。また、階間断熱材78は、平面視においてバルコニー側空間部70bのほぼ全域に亘るように配設されており、その端部が床大梁23Yの溝部に入り込んでいる。この階間断熱材78が設けられていることで、バルコニー42下の一階居室31の断熱性能が確保されている。
居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとの境界部には境界断熱材79が設けられている。境界断熱材79は、階間吸音材77と階間断熱材78との間に配設されており、それら両部材77,78とそれぞれ連続(接触)した状態で設けられている。境界断熱材79は、階間断熱材78と同様、グラスウールよりなる。境界断熱材79は、中間梁51と同じ長さを有しかつ所定の厚みを有する長尺板状に形成されている。境界断熱材79は、天井面材27と中間梁51との間において上下に複数枚(具体的には4枚)重ねられた状態で設けられ、その重ねられた状態で中間梁51に沿って配設されている。この場合、境界断熱材79は、各天井小梁25の上方を跨いで中間梁51の長手方向全域に亘って配置されている。なお、この境界断熱材79が梁下断熱材に相当する。また、各境界断熱材79は上下に連続して設けられているため、この場合、これら各境界断熱材79により連続した断熱層85が形成されているといえる。
具体的には、境界断熱材79は、複数枚重ねられた状態における(自然状態での)境界断熱材79全体としての厚み(すなわち断熱層85の厚み)が中間梁51と天井面材27との間の間隔(上下間距離)よりも大きくなっている。そして、境界断熱材79は、天井面材27と中間梁51との間でそれら両部材27,51により上下に圧縮された状態で挟み込まれている。この場合、中間梁51と天井面材27(及び各天井小梁25)との間は境界断熱材79により塞がれた状態となっている。
このように、居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとの境界部では、中間梁51と境界断熱材79とが上下に並んで配設されており、それら上下に並ぶ両部材51,79を有した階間仕切部が構成されている。この階間仕切部は、階間空間70においてバルコニー下ユニット20Aの天井面材27とバルコニーユニット20Bの床下地材67とに跨がって上下に延びており、この階間仕切部によって居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとが互いに仕切られている。これにより、階間空間70では、居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとの間の空気の流通が抑制又は防止されている。
続いて、バルコニー下ユニット20Aの天井大梁22とバルコニーユニット20Bの床大梁23とが上下に対向する梁対向部における断熱構造について図6に加え図7を用いながら説明する。図7は、梁対向部において断熱構造が設けられた部分を示す平面図である。なお、図7では、バルコニーユニット20Bの床部上方から階間部分50を見ている。また、図7では、断熱構造が設けられた部分を網掛けで示している。
図7には、バルコニー下ユニット20A及びバルコニーユニット20Bに隣接する建物ユニット20を二点鎖線で示している。同図7に示すように、バルコニー下ユニット20A及びバルコニーユニット20Bは、4面のうち2面が屋外に面しており、残りの2面が他の建物ユニット20に隣接している。これら両建物ユニット20A,20Bの長辺側(桁面側)に隣接する上下各建物ユニット20(以下、この符号にCを付す)の間には階間空間76Cが形成されており、両建物ユニット20A,20Bの短辺側(妻面側)に隣接する上下各建物ユニット20(以下、この符号にDを付す)の間には階間空間76Dが形成されている。階間空間76Cは、上下各建物ユニット20Cの天井面材27及び床面材28の間に形成されており、階間空間76Dは、上下各建物ユニット20Dの天井面材27及び床面材28の間に形成されている。換言すると、これら各階間空間76C,76Dは一階居室31の天井面材27と二階居室41の床面材28との間に形成されている。これら各階間空間76C,76Dはいずれもバルコニー下ユニット20Aとバルコニーユニット20Bとの間の階間空間70に隣接している。
階間空間70の四方にはそれぞれバルコニー下ユニット20Aの天井大梁22(以下、この天井大梁22の符号にAを付す)とバルコニーユニット20Bの床大梁23(以下、この床大梁23の符号にBを付す)とが上下に対向した状態で配設されている。階間空間70は、これら天井大梁22A及び床大梁23Bにより四方を囲まれており、換言するとこれら大梁22A,23B同士が上下に対向する梁対向部81〜84により四方を囲まれている。
階間空間70の四方を囲む各梁対向部81〜84には、建物ユニット20A,20Bの長辺側(ユニット長辺側)に位置する梁対向部81,82として、階間空間70と屋外との境界部に位置する梁対向部81と、階間空間70と階間空間76Cとの境界部に位置する梁対向部82とがあり、建物ユニット20A,20Bの短辺側(ユニット短辺側)に位置する梁対向部83,84として、階間空間70と屋外との境界部に位置する梁対向部83と、階間空間70と階間空間76Dとの境界部に位置する梁対向部84とがある。
本建物10では、これら各梁対向部81〜84のうち、ユニット短辺側の各梁対向部83,84にのみ断熱構造が設けられ、ユニット長辺側の各梁対向部81,82には断熱構造が設けられていない。そこで、以下では、これら各梁対向部83,84に設けられた断熱構造について説明する。
まず、梁対向部83に設けられた断熱構造について説明する。梁対向部83は、その一部が居室側空間部70aと屋外との境界部に位置する梁対向部83aとなっており、残りの部分がバルコニー側空間部70bと屋外との境界部に位置する梁対向部83bとなっている。梁対向部83では、梁対向部83aに対して断熱構造が設けられている一方、梁対向部83bに対しては断熱構造が設けられていない。
図8は梁対向部83a周辺の構成を示す縦断面図であり、図9は梁対向部83b周辺の構成を示す縦断面図である。以下、これらの図8,9を用いながら梁対向部83(83a,83b)周辺の構成について説明する。なお、図8は図7のB−B線断面に対応し、図9は図7のC−C線断面に対応している。
図8及び図9に示すように、梁対向部83を構成する天井大梁22A及び床大梁23Bにはそれぞれ外壁パネル86が取り付けられている。外壁パネル86は、上下に隣接する各建物ユニット20A,20Bにそれぞれ設けられ、バルコニー下ユニット20Aの外壁パネル86(以下、その符号にAを付す)が天井大梁22Aに固定され、バルコニーユニット20Bの外壁パネル86(以下、その符号にBを付す)が床大梁23Bに固定されている。
外壁パネル86Aは、外壁面を形成する外壁面材87と、外壁面材87の裏面側に設けられた外壁フレーム88とを備える。外壁面材87は窯業系サイディングボードよりなる。外壁フレーム88は、断面コ字状の軽量鉄骨材よりなる複数のフレーム材88a,88bを有し、それら各フレーム材88a,88bが矩形枠状に連結されることにより構成されている。フレーム材88a,88bには、外壁面材87の高さ方向(上下方向)に延びる縦フレーム材88aと、外壁面材87の幅方向に延びる横フレーム材88bとがある。これら各フレーム材88a,88bのうち、外壁フレーム88の上端に配された横フレーム材88bが天井大梁22Aのウェブの屋外側面にボルト93及びナット94を用いて固定されている。
外壁パネル86Aの屋内側には、内壁面材89が設けられている。内壁面材89は、石膏ボードよりなり、一階居室31に面して設けられている。外壁パネル86Aと内壁面材89との間にはグラスウールよりなる壁内断熱材91が設けられている。この壁内断熱材91により、外壁部の断熱性能が確保されている。
外壁パネル86Bも、外壁パネル86Aと同様の構成を有している。外壁パネル86Bでは、外壁フレーム88の各フレーム材88a,88bのうちフレーム下端に配された横フレーム材88bが床大梁23Bのウェブの屋外側面にボルト93及びナット94を用いて固定されている。また、図示は省略するが、外壁パネル86Bの屋内側には内壁面材が設けられ、その内壁面材と外壁パネル86Bとの間にはグラスウールよりなる壁内断熱材が設けられている。また、上下に並ぶ各外壁パネル86A,86Bの境界部には、当該境界部を屋外から覆い隠す見切り材95(化粧胴差)が設けられている。
このように上下に隣接する各建物ユニット20A,20Bの屋外側にはそれぞれ外壁パネル86A,86Bと内壁面材89とが設けられており、それら各建物ユニット20A,20Bの外壁パネル86A,86B及び内壁面材89により各建物ユニット20A,20Bに跨がって上下に延びる外壁部97が構成されている。この外壁部97により、一階居室31、アルコーブ32、二階居室41、バルコニー42及び階間空間70が屋外と仕切られている。
外壁部97の内部には、各建物ユニット20A,20Bに跨がって上下に延びる通気層98が形成されている。外壁部97において外壁パネル86Aの外壁面材87と壁内断熱材91との間には壁内空間99が形成されており、また外壁パネル86Bの外壁面材87と壁内断熱材との間にも同様の壁内空間X(図示略)が形成されている。また、外壁部97において梁対向部83の高さ位置では、外壁パネル86Aの外壁面材87と天井大梁22Aのウェブとの間に所定の空間101が形成されており、外壁パネル86Bの外壁面材87と床大梁23Bのウェブとの間に所定の空間102が形成されている。これら各所定の空間101,102は互いに連続する連続空間となっており、その連続空間は各壁内空間99,Xにそれぞれ連続している。この場合、各壁内空間99,Xと各所定の空間101,102とにより通気層98が形成されている。
通気層98は、その下端部に屋外に開口された取込口(図示略)を有しており、その取込口を介して屋外の空気(外気)が通気層98に取り込まれるようになっている。通気層98に取り込まれた外気は通気層98において上方に向けて流れ、その後、通気層98の上端部に設けられた排出口を通じて屋外に排出される。排出口は、外壁部97の上端部又は屋根13に設けられる。なお、通気層98が通気経路を構成している。
通気層98には、当該通気層98を上下に仕切るように所定の間隔で外壁フレーム88の横フレーム材88bが配設されているが、これら各横フレーム材88bには厚み方向に貫通する通気孔104が形成されている。通気孔104は、横フレーム材88bの長手方向に所定の間隔で複数形成されている。この通気孔104が設けられていることで、通気層98が横フレーム材88bにより上下に仕切られているにもかかわらず、通気層98が通気孔104を介して横フレーム材88bの上下に連通している。
続いて、梁対向部83aの断熱構造について図8を用いながら説明する。
図8に示すように、梁対向部83aでは、天井大梁22Aの溝部106に梁内断熱材107が設けられている。梁内断熱材107は、防湿層付きのグラスウールよりなる。梁内断熱材107は、天井大梁22Aの溝部106を埋めるようにして溝部106の上下方向全域に亘って配設され、かつ梁対向部83aの長さ方向(長手方向)全域に亘って配設されている。梁内断熱材107は、両面テープ又は接着剤により天井大梁22Aに固定されている。また、梁内断熱材107は、その防湿層107aを居室側空間部70a側に向けて溝部106に配置されている。なお、梁内断熱材107(詳しくは防湿層107a)には階間吸音材77が接触した状態で配置されている。
梁対向部83aでは、床大梁23Bの溝部108に梁内断熱材109が設けられている。梁内断熱材109は、梁内断熱材107と同様、防湿層付きのグラスウールよりなる。梁内断熱材109は、床大梁23Bの溝部108を埋めるようにして溝部108の上下方向全域に亘って配設され、かつ梁対向部83aの長さ方向(長手方向)全域に亘って配設されている。梁内断熱材109は、両面テープ又は接着剤により床大梁23Bに固定されている。また、梁内断熱材109は、その防湿層109aを居室側空間部70a側に向けて溝部108に配置されている。
このように、梁対向部83aでは、天井大梁22A及び床大梁23Bにそれぞれ梁内断熱材107,109が設けられていることで、各大梁22A,23Bが熱橋となって居室側空間部70aへ熱が出入りすることが抑制されている。
梁対向部83aでは、天井大梁22Aと床大梁23Bとの間の隙間111(以下、梁間隙間111という)に梁間断熱材112が設けられている。梁間断熱材112は、グラスウールよりなり、所定の厚みを有する長尺板状に形成されている。梁間断熱材112は、梁間隙間111において梁対向部83aの長さ方向(長手方向)全域に亘って配設されている。これにより、梁対向部83aでは、梁間隙間111を通じて居室側空間部70aに通気層98を流れる空気(外気)が出入りすることが抑制されており、ひいてはかかる外気の出入りに伴う熱の出入りが抑制されている。
また、梁対向部83aでは、各梁内断熱材107,109と梁間断熱材112とが全体として居室側空間部70a(階間空間70)の高さ方向略全域に亘るよう設けられている。これにより、梁対向部83aでは、これら各断熱材107,109,112により断熱壁部113が構成されている。
断熱壁部113において梁対向部83b側とは反対側の端部は柱21の側面に当接している(図7参照)。この柱21と断熱壁部113とにはそれら両部材21,113に跨がって柱断熱材116が設けられている。図10には、その柱断熱材116がバルコニーユニット20Bに設けられた状態が示されている。
同図10に示すように、柱断熱材116は、防湿層付きのグラスウールによりブロック状に形成されており、梁内断熱材109の内側面と柱21の側面とに跨がって配設されている。この場合、柱断熱材116において柱21の側面に隣接する部分は長辺側の床大梁23B(23X)の溝部に収容されている。柱断熱材116は、梁内断熱材109の内側面と柱21の側面とにそれぞれ両面テープを用いて固定されている。この柱断熱材116が設けられていることで柱21が熱橋となることが抑制されている。また、柱断熱材116は、その防湿層116aを居室側空間部70a側に向けて配置されている。また、図示は省略するが、バルコニー下ユニット20Aの天井部にも、これと同様の柱断熱材が梁内断熱材107と柱21の側面とに跨がって設けられている。
一方、図9に示すように、梁対向部83bでは、天井大梁22Aの溝部106及び床大梁23Bの溝部108のいずれにも梁内断熱材107,109が設けられていない。天井大梁22Aの溝部106には階間断熱材78の端部(一部)が入り込んでおり、その入り込んだ端部が天井大梁22Aのウェブの内側面に接触している。
また、梁対向部83bでは、梁間隙間111に梁間断熱材112が設けられていない。詳しくは、梁対向部83bでは、梁間隙間111の全域に亘って梁間断熱材112が設けられていない。そのため、この梁間隙間111(全域)を介してバルコニー側空間部70bと通気層98とが互いに連通されている。この場合、バルコニー側空間部70bには、この梁間隙間111を通じて通気層98を流れる空気の出入りが可能となっている。つまり、梁対向部83bでは、梁間隙間111が、バルコニー側空間部70bと通気層98との間で通気を可能とする通気部114となっている。
続いて、梁対向部84の断熱構造について説明する。
上述したように、梁対向部84は、階間空間70と、バルコニー下ユニット20A及びバルコニーユニット20Bに隣接する上下各建物ユニット20Dの間の階間空間76Dとの境界部に位置している。梁対向部84は、その一部が居室側空間部70aと階間空間76Dとの境界部に位置する梁対向部84aとなっており、残りの部分がバルコニー側空間部70bと階間空間76Dとの境界部に位置する梁対向部84bとなっている。梁対向部84では、梁対向部84bに対して断熱構造が設けられている一方、梁対向部84aには断熱構造が設けられていない。
梁対向部84aの断熱構造について説明すると、梁対向部84aには、上述した梁対向部83bの断熱構造と同様の断熱構造が設けられている。すなわち、梁対向部84aでは、天井大梁22Aの溝部106に梁内断熱材107が設けられており、床大梁23Bの溝部108に梁内断熱材109が設けられている。これら各梁内断熱材107,109はいずれも梁対向部84aの長さ方向(長手方向)全域に亘って設けられている。
梁対向部84aにおいて天井大梁22A及び床大梁23Bにそれぞれ梁内断熱材107,109が設けられていることで、通気層98を流れる空気(外気)が通気部114を通じてバルコニー側空間部70bに流入しても、その流入した外気の熱がそれらの大梁22A,23Bが熱橋となって階間空間76Dへ伝わることが抑制されている。
梁対向部84aでは、天井大梁22Aと床大梁23Bとの間の梁間隙間111に梁間断熱材112が設けられている。梁間断熱材112は梁対向部84aの長さ方向(長手方向)全域に亘って設けられている。これにより、通気層98を流れる外気がバルコニー側空間部70bに流入しても、その流入した外気が梁対向部84aの梁間隙間111を通じてバルコニー側空間部70bから階間空間76Dに出入りすることが抑制されており、ひいてはかかる外気の出入りに伴う熱の出入りが抑制されている。
また、梁対向部84aでは、各梁内断熱材107,109と梁間断熱材112とが全体としてバルコニー側空間部70b(階間空間70)の高さ方向略全域に亘るよう設けられている。この場合、梁対向部84aでは、これら各断熱材107,109,112により断熱壁部115が構成されている。
一方、梁対向部84bでは、上述した梁対向部83aと同様、天井大梁22Aの溝部106及び床大梁23Bの溝部108のいずれにも梁内断熱材107,109が設けられていない。また、梁間隙間111には梁間断熱材112が設けられていない。
ユニット長辺側の各梁対向部81,82には、上述したように断熱構造が設けられていない。したがって、これらの梁対向部81,82では、天井大梁22A及び床大梁23Bのいずれにも梁内断熱材107,109が設けられておらず、また梁間隙間111には梁間断熱材112が設けられていない。
続いて、居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとの境界部における断熱構造について説明する。
図6及び図7に示すように、居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとの境界部には、当該境界部に沿って中間梁51が設けられており、その中間梁51の溝部51aには梁内断熱材117,118が設けられている。梁内断熱材117,118は、上述した梁内断熱材107,109と同様、防湿層付きのグラスウールよりなる。なお、梁内断熱材117,118が支持梁断熱材に相当する。
上述したように、中間梁51の溝部51a側には複数の居室床小梁52が連結されており、その関係で上記の梁内断熱材117,118は中間梁51の長さ方向において複数に分割されている。図11には、それら分割された各梁内断熱材117,118が中間梁51の溝部51aに配設された状態が示されている。なお、図11では、バルコニー床小梁53の図示を省略している。
図11に示すように、中間梁51には、各居室床小梁52がそれぞれ一対のブラケット58を介して連結されている。一対のブラケット58は、中間梁51の溝部51aにおいて居室床小梁52を挟んだ左右両側に配置されている。ブラケット58は、鋼板よりなり、居室床小梁52の側面に固定された縦板部58aと、その縦板部58aの上下両端部に接続され中間梁51の上下のフランジにそれぞれ固定された一対のフランジ部58bとを有している。
中間梁51の溝部51aは、上記のブラケット58により中間梁51の長手方向に複数に分断されている。そして、それら分断された溝部51aの各領域にそれぞれ梁内断熱材117,118が分割して配設されている。この場合、溝部51aにおいて隣り合う各居室床小梁52の間となる領域には梁内断熱材117が配設され、溝部51aにおいて居室床小梁52と(梁長手方向で)同位置となる領域には梁内断熱材118が配設されている。より詳しくは、梁内断熱材117は、隣り合う居室床小梁52の各ブラケット58間に配設され、梁内断熱材118は、居室床小梁52の両側面に固定された各ブラケット58間に配設されている。
また、梁内断熱材118は、溝部51aへの配設作業を容易とすべく、上下に複数(具体的には2つ)に分割されている。具体的には、居室床小梁52は、その下面部が中間梁51の高さ方向(上下方向)の中間位置(詳しくは中央位置)に位置している。そのため、溝部51aにおいて梁内断熱材118が配設されるブラケット58間の領域は居室床小梁52の下面部よりも下方で開口しており、当該領域に梁内断熱材118を配設する際はその開口を通じて配設することになる。したがって、上記のように、梁内断熱材118を上下に複数に分割することで、上記の開口を通じた溝部51aへの配設作業が容易となっている。
各梁内断熱材117,118は、中間梁51の溝部51aを埋めるようにして溝部51aの上下方向全域に亘って配設されている。また、各梁内断熱材117,118は、中間梁51の長手方向に分割されているものの、断熱材117,118全体として中間梁51の長さ方向全域に亘るように配設されている。各梁内断熱材117,118は、両面テープ又は接着剤により中間梁51に固定されている。また、梁内断熱材117,118は、防湿層117a,118aを居室側空間部70a側に向けて溝部51aに配置されている。
このように、中間梁51に梁内断熱材117,118が設けられていることで、通気層98を流れる空気(外気)が通気部114を通じてバルコニー側空間部70bに流入しても、その流入した外気の熱が中間梁51が熱橋となって居室側空間部70aへ伝わることが抑制されている。
また、居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとの境界部では、上述したように、中間梁51とバルコニー下ユニット20Aの天井面材27との間に境界断熱材79が設けられ、それら中間梁51と境界断熱材79とを有して構成される階間仕切部により居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとが仕切られている。そのため、通気層98を流れる外気がバルコニー側空間部70bに流入しても、その流入した外気がバルコニー側空間部70bから居室側空間部70aに出入りすることが抑制されており、ひいてはかかる外気の出入りに伴う熱の出入りが抑制されている。
また、居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとの境界部では、上下に配された梁内断熱材117,118と境界断熱材79とが全体としてバルコニー側空間部70b(階間空間70)の高さ方向略全域に亘るように設けられている。この場合、居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとの境界部では、これら各断熱材79,117,118により断熱壁部119が構成されている。
断熱壁部119を構成する各断熱材79,117,118のうち、中間梁51の長さ方向全域に亘って配設された梁内断熱材117,118は、長さ方向の両端部において各梁対向部83a,84bにおける床大梁23Bの梁内断熱材109と連続(接触)している。また、境界断熱材79は、その長さ方向の両端部において各梁対向部83a,84bにおける天井大梁22Aの梁内断熱材107と連続(接触)しているとともに、各梁対向部83a,84bにおける梁間断熱材112と連続している。したがって、断熱壁部119は、その両端部において梁対向部83aの断熱壁部113(梁内断熱材107,109及び梁間断熱材112)と梁対向部84bの断熱壁部115(梁内断熱材107,109及び梁間断熱材112)とにそれぞれ連続している。そのため、階間部分60では、これら各断熱壁部113,115,119により連続した断熱ラインが形成されている。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
階間空間70を囲む各梁対向部81〜84のうち、居室側空間部70aと屋外との境界部に位置する梁対向部83aでは、梁間隙間111の全域に亘って梁間断熱材112を設ける一方、バルコニー側空間部70bと屋外との間に位置する梁対向部83bでは、梁間隙間111に梁間断熱材112を設けないことで、当該梁間隙間111をバルコニー側空間部70bを外壁部97の通気層98に連通させる通気部114とした。この場合、バルコニー側空間部70bに通気部114(及び通気層98)を介して屋外の空気を出入りさせることができるため、階間空間70において結露の生じ易いバルコニー42下の領域を換気することができる。
また、このようにバルコニー側空間部70bを換気可能とした構成にあって、階間空間70に居室側空間部70aとバルコニー側空間部70bとを仕切る階間仕切部(具体的には中間梁51及び境界断熱材79)を設けたため、その階間仕切部によりそれら両空間部70a,70bの間の空気の流通を抑制することができる。これにより、バルコニー側空間部70bに外気が流入しても、その外気が居室側空間部70a側に流れ込むのを抑制することができる。そのため、その外気の熱により居室側空間部70a上方の二階居室41において断熱性能が低下するのを抑制することができる。よって、この場合、二階居室41における断熱性能の低下を抑制しながら、階間空間70を好適に換気することができる。
通気部114を介してバルコニー側空間部70bを外壁部97に形成された通気層98に連通させた。この場合、もともと外壁部97に形成されている通気層98を利用してバルコニー側空間部70bを換気することができるため、構成の簡素化を図りながら上述の効果を得ることができる。
居室側空間部70aと屋外との境界部に位置する梁対向部83aでは、その梁間隙間111の全域に亘って梁間断熱材112を設けないようにした。この場合、通気部114を上記境界部に沿って広範囲に形成することができるため、バルコニー側空間部70bの換気性能を高めることができる。
中間梁51とバルコニー下ユニット20Aの天井面材27との間に境界断熱材79を挟み込んだ状態で設け、それら中間梁51と境界断熱材79とを有して階間仕切部を構成した。この場合、バルコニーユニット20Bの床部に設けられている中間梁51を利用して、その中間梁51と天井面材27との間に境界断熱材79を挟み込むといった比較的簡単な作業で階間仕切部を構築することができる。
中間梁51の溝部51aに梁内断熱材117,118を設けたため、バルコニー側空間部70bに屋外の空気(外気)が流入しても、その外気の熱が中間梁51が熱橋となって居室側空間部70aに伝わるのを抑制することができる。これにより、居室側空間部70a上方の二階居室41における断熱性能の低下をより一層抑制することができる。
また、この場合、梁内断熱材117,118と境界断熱材79とにより、階間仕切部の上下方向全域(又は略全域)に亘って断熱性能を付与することができるため、バルコニー側空間部70bから居室側空間部70aへの熱の流入を抑制する効果を高めることができる。
ところで、バルコニー側空間部70bに熱が流入する経路としては、上述した外気の流入に伴うものの他、バルコニーユニット20Bの床大梁23Bやバルコニー下ユニット20Aの天井大梁22Aを熱橋として流入するものがある。この場合、かかる熱橋を抑制するためには大梁22A,23Bの梁内に梁内断熱材を設ける必要があるが、居室側空間部70aへの熱の流入はそもそも階間仕切部(梁内断熱材117,118及び境界断熱材79)により抑制されているため、かかる梁内断熱材は不要と考えられる。そこで、この点に着眼し、バルコニー側空間部70bと屋外との境界部に位置する梁対向部81,83bにおいては、上下に対向する各大梁22A,23Bの溝部に梁内断熱材を設けないようにした。この場合、梁内断熱材を設けない分、コスト低減や施工工数の低減といった効果を得ることができる。
階間空間70においてバルコニー側空間部70bを通気部114を介して換気可能とした構成では、バルコニー側空間部70bには湿気が滞留することが抑制されている一方、居室側空間部70aには湿気が滞留し易いことが想定される。そこで、この点に鑑みて、梁内断熱材117,118における居室側空間部70a側に防湿層117a,118aを設けた。この場合、居室側空間部70a側から梁内断熱材117,118に湿気が流入するのを抑制することができるため、梁内断熱材117,118の内部で結露が生じる等の不都合の発生を抑制することができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、中間梁51と境界断熱材79とを有して階間仕切部を構成したが、階間仕切部は必ずしもこれら両部材51,79を有して構成する必要はない。例えば、境界断熱材79に代えて、中間梁51とバルコニー下ユニット20Aの天井面材27とに跨がる壁体を設けてもよい。この場合、中間梁51とその壁体とを有して階間仕切部が構成される。また、バルコニーユニット20Bの床部に中間梁51が設けられていない構成では、バルコニーユニット20Bの床面材(床下地材64,67)とバルコニー下ユニット20Aの天井面材27との間に跨がって境界断熱材を配設してもよい。この場合、境界断熱材により階間仕切部が構成される。
(2)上記実施形態では、バルコニー側空間部70bと屋外との間に位置する梁対向部83bでは、梁間隙間111の全域に亘って梁間断熱材112を設けないようにしたが、これを変更して、梁間隙間111の(長手方向の)一部にのみ梁間断熱材112を設けないようにしてもよい。つまり、梁間隙間111において一部にのみ梁間断熱材112を配設し、梁間断熱材112が設けられていない残りの部分を通気部114としてもよい。その場合においても、その通気部114を通じてバルコニー側空間部70bの換気を行うことができる。
(3)上記実施形態では、バルコニー側空間部70bと屋外との境界部に位置する各梁対向部81,83(83b)のうち、梁対向部83bにのみ通気層98に通じる通気部114を形成したが、例えばバルコニー42の屋外開放側に手摺り部48ではなく壁内通気層を有する腰壁が設置されている場合には、梁対向部81にその壁内通気層に通じる通気部を形成することが可能である。その場合、その梁対向部81の通気部を通じてバルコニー側空間部70bを換気することができる。
(4)上記実施形態では、バルコニー側空間部70bと屋外との境界部に位置する各梁対向部81,83bにおいて、バルコニー下ユニット20Aの天井大梁22Aとバルコニーユニット20Bの床大梁23Bとのいずれにも梁内断熱材107,109を設けないようにしたが、それら各大梁22A,23Bのうち少なくともいずれかに梁内断熱材を設けるようにしてもよい。そうすれば、これらの大梁22A,23Bを熱橋としたバルコニー側空間部70bへの熱の流入を抑制することができるため、バルコニー側空間部70bから居室側空間部70aへの熱の流入をさらに抑制することが可能となる。
(5)上記実施形態では、梁間隙間111を利用して形成した通気部114を外壁部97の通気層98に連通させたが、建物によっては外壁部97に通気層98が設けられていない場合も考えられる。その場合、例えば上下に並ぶ外壁パネル73,74間に通気用の開口を設け、その開口と通気部とを連通する通気経路を設けることが考えられる。また、外壁面材87を貫通しかつ通気部114に通じる通気管を設け、その通気管を通気経路として利用してもよい。これらの場合にも、通気経路(及び通気部114)を通じてバルコニー側空間部70bを換気することが可能である。
(6)上記実施形態では、バルコニーユニット20Bに半屋外空間としてインナバルコニー42を設けたが、ベランダやテラス等その他の半屋外空間を設けてもよい。また、上記実施形態では、バルコニーユニット20Bに上階空間部として二階居室41を設け、バルコニー下ユニット20Aに下階空間部として一階居室31を設けたが、これら上階空間部及び下階空間部は必ずしも居室である必要はなく、寝室や洗面所、浴室、トイレ等であってもよい。
(7)ユニット式建物を3階建てとして構築し、三階部分にバルコニーユニット20Bを、二階部分にバルコニー下ユニット20Aを上下に隣接して設置してもよい。また、3階建ての建物において、二階部分にバルコニーユニット20Bを、一階部分にバルコニー下ユニット20Aを上下に隣接して設置してもよい。それらの場合にも、バルコニー下ユニット20Aとバルコニーユニット20Bとの間の階間部分60に本発明の階間構造を適用することができる。