以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物としてユニット式建物を採用している。図1は、ユニット式建物の概要を示す正面図である。
図1に示すように、建物10は、基礎11上に配設される建物本体12と、この建物本体12の上方に配設される屋根13とを有して構成されている。建物本体12は、一階部分14と二階部分15とからなる二階建て建物であり、複数の建物ユニット20が互いに連結される等して構成されている。
本実施形態では、建物本体12の構造として、複数の建物ユニット20を離し置きし、その離し置き中間部分に建物ユニット20とは異なる構成の中間構造部を構築した、いわゆるユニット離隔配置工法を用いたものを採用している。図1で言えば、一階部分14及び二階部分15において、X1,X2の建物部分が、複数の建物ユニット20を互いに連結させてなるユニット構造部であり、X3の建物部分が、ユニット構造部X1,X2の間の中間スペースに設けられた中間構造部である。
中間構造部X3には建物ユニット20が設置されておらず、中間構造部X3は、ユニット構造部X1,X2の建物ユニット20を利用して、具体的には中間構造部X3を挟んで対向する建物ユニット20に各種建材を架け渡して構築されている。図示の構成では、建物ユニット20がその短手方向(妻方向)に1ユニット分離間して離し置きされており、これにより、中間構造部X3が建物ユニット20の短辺側(妻面側)の幅とほぼ同じ幅で形成されている。
ユニット離隔配置工法について簡単に説明すると、離し置きされた両建物ユニット20の間には、内通りの天井大梁22(図2参照)に架け渡した状態で中間天井梁が設けられている。中間構造部X3では、中間天井梁に支持された状態で外壁パネルが取り付けられる。また、一階床部分では基礎上に載置された状態で床フレームが固定され、二階床部分では中間天井梁上に載置された状態で床フレームが固定されるようになっている。なお、床フレームは、建物ユニット20の床部と同じ構成を有するものであり、4つの仕口部(柱レスの仕口)と床フレーム大梁とを有する。
建物本体12の一階部分14には、一階居室16が形成されている。一階居室16は、ユニット構造部X1に設けられ、建物ユニット20のスペース全体を利用して形成されている。建物本体12の二階部分15には、インナバルコニー18が設けられている。インナバルコニー18は、ユニット構造部X1において一階居室16の上方に設けられている。インナバルコニー18は、建物ユニット20の約半分のスペースを使って設けられ、その屋内側には二階居室19が形成されている。詳しくは、インナバルコニー18は、建物ユニット20を短手方向に二分してその一方側(屋外側)に設けられている。この場合、1つのユニット躯体内に屋内部とインナバルコニー18とが形成されている。
なお、一階居室16を形成する建物ユニット20と、インナバルコニー18(及び二階居室19)を形成する建物ユニット20とは上下に隣接して設けられ、以下の説明では、前者の建物ユニット20をバルコニー下ユニット20A、後者の建物ユニット20をバルコニーユニット20Bという。
図2は、建物ユニットの構成を示す斜視図である。図2に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(躯体)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして、すなわち溝部をユニット内側に向けるようにして設置されている。なお、溝形鋼の相対向する一対のフランジは上下に位置している。
建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されて固定されている。同じく建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されて固定されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔でかつ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23に水平に設けられている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
次に、バルコニー下ユニット20A及びバルコニーユニット20Bの構成について説明する。これらのユニット20A,20Bは上記の建物ユニット20に対して特徴的な構成を有しており、以下ではその特徴的な点を中心として説明する。
まず、バルコニー下ユニット20Aの構成について図3に基づいて説明する。図3は、バルコニー下ユニット20Aの構成を示す斜視図である。バルコニー下ユニット20Aは、図2で示した建物ユニット20と同様の基本構成を有しており、四隅に配設される柱21と、各柱21を連結する天井大梁22及び床大梁23と、床大梁23に連結された複数の床小梁26とを備える点で同様であり、天井部分の構成が相違している。なお、図3には、図2と同じ構成については同じ符号を付し、その説明については省略する。
図3に示すように、バルコニー下ユニット20Aでは、建物ユニット20と相違する構成として、長辺側の一対の天井大梁22の間に、複数の天井小梁25が架け渡されているとともに、補強梁35が架け渡されている。具体的には、バルコニー下ユニット20Aでは、建物ユニット20における複数の天井小梁25の一部が補強梁35に置き換えられた構成となっている。バルコニー下ユニット20Aにおいて天井小梁25は、天井大梁22よりも高さ寸法の小さいリップ溝形鋼により構成され、その下面部が天井大梁22の下面部(下側フランジの下面部)と同じ高さ位置となるように固定されている(この点は建物ユニット20も同様)。したがって、天井小梁25は、天井大梁22の上面部(上側フランジの上面部)よりも下方に固定されている。
補強梁35は、長辺側の一対の天井大梁22の間に複数(図3では2つ)架け渡されており、その両端部が図示しないブラケットにより各天井大梁22にそれぞれ連結されている。各補強梁35は、4本の天井大梁22により囲まれた内側領域をユニット長辺方向に略等分する位置にそれぞれ配置されている。また、各補強梁35は、複数の天井小梁25を挟んだ両側に配置されている。各補強梁35は、天井大梁22と同じ溝形鋼により構成され、天井大梁22と同じ高さ位置において互いの溝開口を向き合わせて設けられている。この場合、補強梁35は、天井小梁25の上面部よりも上方に一部が突出して設けられており、その上面部35a(上側フランジ部の上面部)の高さ位置が天井小梁25の上面部よりも上方に位置している。
続いて、バルコニーユニット20Bの構成を図4に基づいて説明する。図4(a)はバルコニーユニット20Bの骨格の構成を示す斜視図であり、図4(b)はバルコニーユニット20Bにインナバルコニー18が設けられた状態を示す斜視図である。バルコニーユニット20Bは、図2で説明した建物ユニット20と同様の基本構成を有しており、四隅に配設される柱21と、各柱21を連結する天井大梁22及び床大梁23とを備える点で同様であり、床部分の構成が相違している。なお、図4には、図2と同じ構成については同じ符号を付しており、その説明については省略する。
図4(a)に示すように、バルコニーユニット20Bでは、建物ユニット20と相違する構成として、短辺側の一対の床大梁23に架け渡すようにして中間梁31が設けられている。つまり、中間梁31は、長辺側の一対の床大梁23の間であってかつこれらに平行に設けられている。なお、図4(a)では、長辺側の一対の床大梁23のうち図の奥側が屋内側(図1の二階居室19側)の床大梁であり、図の手前側が屋外側(図1のインナバルコニー18側)の床大梁である。以下説明の便宜上、二階居室19側の床大梁23を「居室床大梁23A」、インナバルコニー18側の床大梁23を「バルコニー床大梁23B」とも言う。
中間梁31は、床大梁23と同じ溝形鋼により構成されるとともに、同じ高さ位置に設けられており、その両端部が図示しないブラケットにより短辺側の一対の床大梁23に連結されている。中間梁31は、その溝部を居室床大梁23Aに向けて設けられており、中間梁31と居室床大梁23Aとの間には複数の居室床小梁32が固定されている。この居室床小梁32は、通常の建物ユニット20の床小梁26と同様の角形鋼よりなりかつその固定方法も同様であるが、その長さが床小梁26の約1/2である点で相違している。
また、中間梁31とバルコニー床大梁23Bとの間には複数のバルコニー床小梁33が固定されている。このバルコニー床小梁33は、居室床小梁32よりも高さ方向の幅寸法が小さい角形綱により構成されており、一端がバルコニー床大梁23Bの溝部側に固定されるとともに、他端が中間梁31の溝部とは反対側(ウェブ外側面)に固定されている。固定方法は、ブラケット固定、溶接、ボルト締め等が用いられる。
居室床小梁32は、中間梁31の上面部(上側フランジの上面部)よりも上方に一部が突き出るようにして固定されているのに対し、バルコニー床小梁33は、中間梁31の上面部(上側フランジの上面部)よりも下方に固定されている。つまり、居室床小梁32とバルコニー床小梁33とは、それらを比較して前者の上面部が高い位置に、後者の上面部が低い位置になるように配置されている。ただし、バルコニー床小梁33の下面部は、床大梁23及び中間梁31の下面部から下方にはみ出ない位置に設定されており、本実施形態では、バルコニー床小梁33の下面部と床大梁23及び中間梁31の下面部とは同一レベルの高さとなっている。なお、居室床小梁32の下面部も同様に、床大梁23及び中間梁31の下面部から下方にはみ出ない位置に設定されている。また、居室床小梁32とバルコニー床小梁33とは基本的に、ユニット短手方向に見て一直線上に、かつ同じピッチで設けられている。そして、居室床小梁32のピッチ及びバルコニー床小梁33のピッチは、バルコニー下ユニット20Aの天井小梁25及び補強梁35のピッチと同じとなっている。
続いて、バルコニーユニット20Bにインナバルコニー18が設置された状態の構成を説明する。図4(b)に示すように、バルコニーユニット20Bの中間梁31上には、インナバルコニー18と二階居室19とを仕切る仕切壁部51が設けられている。仕切壁部51は、中間梁31に沿って設置されており、当該中間梁31によりその荷重が支持される構成となっている。仕切壁部51には、インナバルコニー18と二階居室19との行き来を可能とする出入口(図示略)が設けられ、その出入口には掃き出し窓(図示略)が設けられている。また、仕切壁部51を挟む左右両側であってインナバルコニー18の側方部分には一対のバルコニー袖壁部52が設けられ、インナバルコニー18の屋外開放側には、各バルコニー袖壁部52の屋外側端部に跨るようにして手摺壁部53が設けられている。そして、これら仕切壁部51,バルコニー袖壁部52及び手摺壁部53により囲まれた内側にバルコニー空間が形成されている。
次に、バルコニー下ユニット20Aとバルコニーユニット20Bとの間の階間部分40の構成について図5に基づいて説明する。図5は、それら各建物ユニット20A,20Bの階間部分40及びその周辺の構成を示す縦断面図である。なお、図5は、階間部分40を建物ユニット20A,20Bの長辺部(桁面)と平行となる面により切断した縦断面図であり、その切断面がインナバルコニー18側に設定されている。
図5に示すように、階間部分40は、バルコニー下ユニット20Aに形成された一階居室16と、バルコニーユニット20Bに形成されたインナバルコニー18及び二階居室19とを上下に仕切るものであり、一階居室16(バルコニー下ユニット20A)の天井部及びインナバルコニー18及び二階居室19(バルコニーユニット20B)の床部を含んで構成されている。階間部分40における一階居室16の天井部の構成として、バルコニー下ユニット20Aの天井小梁25及び補強梁35の下面には、これら各梁25,35と直交する向きで野縁41が固定されている。野縁41の下面には、石膏ボードからなる天井下地材42が固定され、その下面にはクロス等からなる天井仕上げ材(図示略)が固定されている。なおここで、補強梁35は、天井小梁25とともに天井下地材42を支持する天井支持小梁として機能している。
一方、インナバルコニー18の床部の構成として、バルコニーユニット20Bのバルコニー床小梁33上には、パーティクルボードからなる床下地材45が固定され、その床下地材45の上にはポリスチレンフォーム等からなるバルコニー床断熱材46が設けられている。また、バルコニー床断熱材46上には、塩化ビニル被覆鋼板からなる防水シート47が設けられ、その上面側にはバルコニー床仕上げ材(図示略)が適宜敷設される。なお、防水シート47の外縁部は、バルコニー袖壁部52の下端部を支持するスタータ金具49に沿って上方に立ち上げられている。
なお、図示は省略するが、二階居室19の床部の構成として、居室床小梁32上にはパーティクルボード等からなる床下地材が固定され、その上には二階居室19の床面を形成する床仕上げ材が設けられている。また、上記の構成において階間部分40には、天井下地材42と床下地材45(及び居室床小梁32上の床下地材)との間に階間空間50が形成されている。
図5に示されているその他の構成として、バルコニー下ユニット20Aの天井大梁22には、一階部分14の外壁パネル55が固定されており、外壁パネル55の屋内側には断熱材58と内壁パネル59とが設けられている。また、バルコニーユニット20Bの床大梁23には、二階部分15の外壁パネル56が固定されており、この外壁パネル56と一階部分14の外壁パネル55との境界部には見切り材57が取り付けられている。なお、バルコニー下ユニット20A及びバルコニーユニット20Bは、4面のうち3面が屋外に面して設けられている。
次に、階間部分40における断熱構造について説明する。
バルコニー下ユニット20Aの天井大梁22には、グラスウールからなる梁内断熱材61が当該天井大梁22の溝部67を埋めるように、かつ当該天井大梁22の長手方向全域に亘り設けられている。梁内断熱材61は、バルコニー下ユニット20Aにおける4つの天井大梁22それぞれに配設されている。したがって、梁内断熱材61は、屋外側に配置された3つの天井大梁22だけでなく、屋内側(中間構造部X3側)に配置された天井大梁22にも設置されている。
バルコニーユニット20Bの床大梁23にも同様に、グラスウールからなる梁内断熱材62が、当該床大梁23の溝部68を埋めるように、かつ当該床大梁23の長手方向全域に設けられている。梁内断熱材62は、バルコニーユニット20Bにおける4つの床大梁23それぞれに配設されている。このように、天井大梁22及び床大梁23に梁内断熱材61,62が設けられることで、各大梁22,23が熱橋となって断熱性能が低下するのが抑制されている。
バルコニー下ユニット20Aの天井大梁22とバルコニーユニット20Bの床大梁23とは上下に隣接して設けられており、それら各大梁22,23の間には所定の隙間69(以下、梁間隙間という)が形成されている。この梁間隙間69には、グラスウールからなる梁間断熱材63が設けられている。梁間断熱材63は、梁間隙間69において大梁22,23の長手方向全域に延びるように形成されており、建物ユニット20A,20Bの4辺の大梁22,23それぞれの梁間隙間69に配置されている。梁間断熱材63は、梁間隙間69の上下幅よりも大きい厚み(上下長さ)を有し、梁間隙間69において各大梁22,23により圧縮された状態で設けられている。この場合、梁間隙間69を通じて階間空間50に空気が出入りするのを抑制できるため、階間空間50の気密性を保つことができる。また、階間空間50への空気の出入りを抑制することで同空間50への熱の出入りも抑制できるため、断熱性能の向上を図ることができる。
また、階間空間50には、階間断熱材65が設けられている。本実施形態では、この階間断熱材65の設置構成に特徴を有している。以下、その設置構成について図5に加え図6及び図7を参照しつつ詳細に説明する。図6は、バルコニー下ユニット20Aとバルコニーユニット20Bとを上下に分解した状態を示す斜視図であり、図7は階間部分40の構成を示す縦断面図である。なお、図7は、図5と同じ切断面により切断した縦断面図であり、便宜上、階間断熱材65の図示を省略している。
図6に示すように、階間断熱材65は、バルコニー下ユニット20Aの天井裏空間すなわち階間空間50においてインナバルコニー18の下方となる領域(以下、この領域をバルコニー下方領域Xといい、階間空間50における二階居室19の下方領域を居室下方領域Yという。)を少なくとも設置領域として含むように設けられている。具体的には、階間断熱材65は、階間空間50において概ねバルコニー下方領域Xにのみ設置され、居室下方領域Yには設置されていない(詳細には、階間断熱材65は居室下方領域Yにも一部はみ出している)。なお、上述したように、中間梁31は、インナバルコニー18と二階居室19とを仕切る仕切壁部51の下方に設置されていることから、階間空間50ではこの中間梁31を挟んだ両側がそれぞれバルコニー下方領域X及び居室下方領域Yとなっている。
階間断熱材65は、グラスウールにより形成されている。階間断熱材65は、バルコニー下ユニット20Aの長辺部と略同じ長さを有する長尺状をなしており、所定の厚みを有した板状に形成されている。階間断熱材65は、階間空間50のバルコニー下方領域Xにおいてバルコニー下ユニット20Aの長辺方向に延びる向きで、かつバルコニー下ユニット20Aの短手方向に沿って複数並べて設けられている。この場合、隣接する階間断熱材65同士は上記短手方向に連続しており、それ故複数の階間断熱材65により連続した断熱層66が形成されている。
また、バルコニー下方領域Xにおいてユニット短手方向に並べられた上記各階間断熱材65のうち、居室下方領域Y側に配置された階間断熱材65(以下、符号を65aとする)については上下に2枚重ねされて設置されている。この階間断熱材65aは、バルコニーユニット20Bの中間梁31の下方において当該中間梁31に沿って配置されており、後述するように、同中間梁31と天井下地材42との間で圧縮されるものとなっている。この場合、中間梁31の下方位置では、断熱層66の厚み(詳細には非圧縮状態における断熱層66の厚み)がその他の部位と比べて大きいものとなっている。
図5に示すように、階間断熱材65は、階間空間50において天井下地材42上に設置されており、各天井小梁25及び各補強梁35の上方を跨ぐようにして設けられている。ここで、各天井小梁25及び各補強梁35はそれぞれバルコニーユニット20Bのバルコニー床小梁33と鉛直方向上下にとなる位置に設けられており、階間断熱材65は、天井小梁25とバルコニー床小梁33との間及び補強梁35とバルコニー床小梁33との間を通じて配設されている。なお、この配設状態において、階間断熱材65は、その長手方向(建物ユニット20長辺方向)の両端部が梁内断熱材61と連続しており、階間断熱材65と梁内断熱材61とで連続した断熱ラインを形成している。
図7に示すように、上述したように補強梁35は、その上面部35aの高さ位置が天井小梁25の上面部(上側フランジの上面部)よりも上方に設定されているため、補強梁35の上面部35aとバルコニー床小梁33の下面部との間の上下間隔H1は天井小梁25の上面部とバルコニー床小梁33の下面部との間の上下間隔H2よりも小さくなっている。具体的には、補強梁35とバルコニー床小梁33との間の上下間隔H1は、階間断熱材65の(非圧縮状態における)厚み寸法L1(図6参照)よりも小さいものとなっている。そのため、階間断熱材65は、補強梁35とバルコニー床小梁33との間においてそれら各梁33,35により上下に圧縮された状態で挟み込まれている。この場合、補強梁35とバルコニー床小梁33との間が階間断熱材65により塞がれているため、階間空間50では、階間断熱材65の上記挟み込み部位を挟んだ両側空間の間で空気の流通が抑制されている。
図8は、中間梁31の設置部位における階間部分40の構成を示す縦断面図である。なお、図8は、階間部分40を建物ユニット20A,20Bの長辺部(桁面)と平行となる面(換言すると、中間梁31の長手方向と平行となる鉛直面)により切断した縦断面図である。
図8に示すように、階間空間50において中間梁31の下方位置には、当該中間梁31に沿って、2枚重ねされた階間断熱材65aが設置されている。階間断熱材65aは、2枚重ねの状態で上下の厚みL2(図6参照)が中間梁31と天井下地材42との間の上下間隔H3よりも大きいものとなっている(L2はL1の2倍)。そのため、階間断熱材65aは、中間梁31と天井下地材42との間で上下に圧縮された状態で挟み込まれている。この場合、階間断熱材65aにより中間梁31と天井下地材42との間が塞がれた状態となっており、それ故階間空間50では中間梁31を挟んだ両側空間の間で、すなわちバルコニー下方領域Xと居室下方領域Yとの間で空気の流通が抑制されている。また、詳しくは、階間断熱材65aは、その居室下方領域Y側の端部において中間梁31と天井下地材42との間で挟み込まれており、その挟み込み状態において一部が居室下方領域Y側にはみ出している。
図9は、補強梁35上にスペーサ部材71が設置された状態を示す斜視図である。なお、図9では、便宜上、断熱層66の厚みを一定にして図示している。図9に示すように、補強梁35上には、階間断熱材65(詳細には複数の階間断熱材65からなる断熱層66)を挟んだ両側にスペーサ部材71が設けられている。スペーサ部材71は、補強梁35とその上方のバルコニー床小梁33との間の上下間隔H1とほぼ同じ高さ寸法を有する円柱状をなしており、補強梁35上に設置された状態で当該補強梁35とバルコニー床小梁33との間の上下間隔H1を保持する機能を有している(図7参照)。この場合、バルコニー床小梁33が下方に撓みバルコニー床小梁33と補強梁35との間で階間断熱材65が挟まれるのを抑制でき、その結果かかる挟み込みにより階間断熱材65が切れるといった損傷の発生を抑制できる。このため、上述した階間断熱材65による空気の流通の抑制効果を長期にわたって維持することが可能となる。
また、スペーサ部材71は、比較的熱伝導率の低い材料により形成されており、例えば硬質ゴム材からなる。そのため、スペーサ部材71が階間部分40の熱橋となるのが抑制されている。なお、スペーサ部材71は、必ずしも熱伝導率の低い材料で形成する必要はなく、金属等の熱伝導率の高い材料で形成してもよい。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
階間空間50においてインナバルコニー18の下方となるバルコニー下方領域Xを少なくとも設置対象として含むように階間断熱材65を設置した。そして、バルコニー下ユニット20Aの天井部には、相対する一対の天井大梁22の間に、バルコニー床小梁33と上下に対向するように、かつ当該床小梁33に沿って延びるように補強梁35を架け渡した。そして、補強梁35の上面部35aの高さ位置を天井小梁25よりも上方に設定し、その上面部35aとバルコニー床小梁33の下面部との間で階間断熱材65を圧縮状態で挟み込むようにした。この場合、補強梁35とバルコニー床小梁33との間を階間断熱材65により塞ぐことができるため、階間空間50において補強梁35とバルコニー床小梁33との間を通じた空気の流通を抑制できる。そのため、階間空間50における空気の対流を抑制でき、その結果断熱性能の低下を抑制できる。
また、天井小梁25の上面部の高さ位置を補強梁35の上面部35aの高さ位置よりも低くしたため、バルコニー床小梁33の下面部と天井小梁25の上面部との間隔がバルコニー床小梁33の下面部と補強梁35の上面部35aとの間隔よりも大きくなっている。そのため、階間断熱材65をバルコニー床小梁33と補強梁35との間では挟み込むことができる一方、バルコニー床小梁33と天井小梁25との間では挟み込まないようにすることができる。あるいは、バルコニー床小梁33と補強梁35との間及びバルコニー床小梁33と天井小梁25との間のいずれにおいても階間断熱材65が挟み込まれている場合に、その挟み込みにより圧縮される程度を、前者と後者とで異ならせることができ、具体的には、後者の方を小さく圧縮するようにすることができる。したがって、バルコニー床小梁33と天井小梁25との間では階間断熱材65により断熱性の確保をしつつ、バルコニー床小梁33と補強梁35との間では階間断熱材65により空気の流通を抑制できる。
また、バルコニー下ユニット20Aの各天井小梁25をすべて補強梁35に置き換えたとしても、階間空間50における空気の対流を抑制することはできる。しかしながら、工業化住宅の一種であるユニット式建物では、コストの増大を極力抑えるべく、天井小梁25が天井下地材42等を支持できる程度の強度で形成されるのが望ましく、そのため天井小梁25が天井大梁22(補強梁35)よりも高さ寸法を小さくして形成されるのが望ましい。この点、各天井小梁25のうち一部だけを補強梁35に置き換えた上記の構成では、コストの増大を抑えつつ断熱性能の抑制を図ることができる。
補強梁35を、天井小梁25の上下寸法よりも大きい上下寸法を有して形成するとともに、その下面を天井小梁25の下面と略同じ高さとして設置することで、上面部35aを天井小梁25よりも上方に位置させた。この場合、補強梁35を天井小梁25とともに天井下地材42を支持するために用いることができる。つまり、この場合、天井下地材42を支持する天井支持小梁を用いて挟み込み部材(補強梁35)が構成されているため、挟み込み部材を天井支持小梁とは別部材として設置する場合と比べ、構成の簡素化を図ることができる。
バルコニーユニット20Bにおいて、複数のバルコニー床小梁33に対し平行に延びる一対の床大梁23の間に、補強梁35の上方を跨ぐように中間梁31を架け渡し、中間梁31を補強梁35により下方から支持する構成とした。この場合、中間梁31がインナバルコニー18を構成する構成部材(例えば仕切壁部51)の荷重により下方に撓むのを抑制できる。つまり、かかる構成では、挟み込み部材(補強梁35)に、中間梁31を支持する支持機能を設けた構成となっており、これにより挟み込み部材の多機能化が図られている。
階間空間50に、複数の階間断熱材65により連続した断熱層66を形成するとともに、断熱層66の厚みL1,L2が大小異なる複数の領域を設けた。そして、断熱層66の厚みの大きい領域を中間梁31の下面に沿って設け、中間梁31と天井下地材42との間で挟み込むようにした。この場合、階間空間50において中間梁31を挟んだ両側間での、すなわちバルコニー下方領域Xと居室下方領域Yとの間での空気の流通を抑制できる。したがって、階間空間50において補強梁35により小梁25,33と直交する方向への空気の流通を抑制できるとともに、中間梁31により小梁25,33と平行となる方向への空気の流通を抑制できる。そのため、階間空間50での空気の対流をより一層抑制することができ、断熱性能の更なる抑制を図ることができる。
バルコニーユニット20Bにインナバルコニー18と二階居室19とを隣接して設け、これら両空間18,19の間に中間梁31を設置し、断熱層66の端部を中間梁31と天井下地材42との間で挟み込んだ。この場合、上述したように、階間空間50においてバルコニー下方領域Xと居室下方領域Yとの間で空気の流通が抑制されているため、インナバルコニー18の床下地材45等を介して冷やされたり暖められたりした階間空間50の空気がバルコニー下方領域X側から居室下方領域Y側に流れ込むのを抑制できる。そのため、バルコニーユニット20Bの一部を利用してインナバルコニー18を形成した上記の構成において、居室下方領域Yに階間断熱材65を設置しなくても、階間部分40における二階居室19側の断熱性能を確保できる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)階間空間50では、上述したように階間断熱材65が設置されているため、配管や配線を通すことが困難となっている。そこで、バルコニー下ユニット20Aの補強梁35内側のスペースを利用して配管や配線を通すようにしてもよい。例えば、補強梁35内側のスペースに通気ダクトを設置することが考えられる。その具体例を図10に示す。図10(a)に示す建物80では、バルコニー下ユニット20Aの一部にアルコーブ84が形成され、アルコーブ84のスペース分一階居室16の居室スペースが縮小されている。アルコーブ84は、バルコニー下ユニット20Aにおいてインナバルコニー18の下方に設けられている。
一階部分14において、建物ユニット20が設置されない中間構造部X3には、浴室85が形成されている。浴室85には、排気装置87が設置されている。排気装置87は、換気扇やフード等を有して構成されており、排気ダクト88に接続されている。排気ダクト88は、アルコーブ84に設けられた排気口89に接続されている。この場合、排気装置87により排気ダクト88を通じて浴室85内の空気をアルコーブ84に排出でき、ひいては屋外に排出できる。
排気ダクト88は、浴室85の天井裏空間91と、バルコニー下ユニット20A(アルコーブ84及び一階居室16)の天井裏空間(つまりは階間空間50)とに跨って延びている。この場合、バルコニー下ユニット20Aの中間構造部X3側の天井大梁22(詳細にはそのウェブ)には、排気ダクト88を挿通可能なダクト貫通孔が形成されており、このダクト挿通孔を通じて排気ダクト88が両天井裏空間50,91に跨って延びている。なお、浴室85の天井裏空間91は、浴室85の天井材90上方に形成されており、この天井材90は、中間構造部X3の二階部分15に設置された床ユニット94により支持されている。また、床ユニット94は、離し置きされた各建物ユニット20の間に架け渡されて設置されている。
図10(b)は、補強梁35における排気ダクト88の設置状態を示す縦断面図である。本図に示すように、階間空間50では、排気ダクト88が補強梁35の内側領域95に、詳細には補強梁35においてウェブ部及び上下の各フランジ部により囲まれた内側領域95に配置されている。上述したように、補強梁35は、天井小梁25よりも上下高さの大きい溝形鋼からなるため、その内側領域95が比較的大きくなっており、当該内側領域95を排気ダクト88を設置する設置スペースとして利用可能となっている。補強梁35の内側領域95において、排気ダクト88は当該補強梁35に沿って延びるように設置されており、その下流側が補強梁35(詳細にはその下側フランジ部)において排気口89上方に形成された挿通孔を通じ当該排気口89まで延びている。かかる構成によれば、補強梁35の内側領域95を利用することで、階間空間50において好適に排気ダクト88を設置することができる。
続いて、補強梁35の内側領域95を利用して配線を設置する場合の例を図11に示す。図11に示す建物100は、図10の建物80において、中間構造部X3の一階部分14を浴室85に代えて居室101としたものである。居室101の天井裏空間102には蓄電池設備103が設置されている。蓄電池設備103には、ソーラパネル(図示略)により発電された発電電力等を蓄えることが可能となっている。蓄電池設備103には電源配線104が接続されており、電源配線104は居室101の天井裏空間102とバルコニー下ユニット20Aの階間空間50とに跨って延びている。階間空間50では、電源配線104は、補強梁35の内側領域95において当該補強梁35に沿って延びるように設けられている。そして、電源配線104は、一階居室16の天井材に形成された開口部(図示略)を通じて一階居室16に引き出され、アルコーブ84と一階居室16とを仕切る仕切壁105に設置された屋外コンセント106に接続されている。この場合、アルコーブ84において蓄電池設備103の充電電力を利用可能となっている。かかる構成によれば、補強梁35の内側領域95を利用して、階間空間50において好適に電源配線104を設置できる。
なお、補強梁35を溝形鋼ではなく角形鋼により構成し、その内側領域を配線や配管を設置する設置スペースとして利用してもよい。この場合、角形鋼は、その内側領域に配線・配管を設置可能とすべく、天井小梁25よりも上下高さの大きなものを用いる必要がある。その点は溝形鋼の場合と同様である。
(2)挟み込み部材(上記実施形態では補強梁35)の構成は上記実施形態の構成に限定することなくその他の構成としてもよい。例えば、挟み込み部材を、天井小梁25と同じ構成でかつ同じ大きさで形成し、天井小梁25に対して上方に位置をずらした状態で相対する一対の天井大梁22の間に架け渡してもよい。この場合、挟み込み部材の上面部の高さ位置が天井小梁25の上面部よりも上方に位置するため、階間断熱材65の挟み込みが可能となる。また、この場合、挟み込み部材を天井小梁25と同一部材により構成できるため、部品の共通化を図れるという利点がある。
また、挟み込み部材を梁材以外の部材により構成してもよい。例えば、挟み込み部材として、天井小梁25上に、同小梁25に沿って延びる長尺状のスペーサ部材を設置してもよい。スペーサ部材は、例えば扁平形状をなす角形鋼により形成する。この場合、スペーサ部材の上面部の高さ位置が天井小梁25よりも上方に位置するため、階間断熱材65の挟み込みが可能となる。また、かかる構成では、バルコニー下ユニット20Aの天井部の構成を建物ユニット20のそれと同じとすることができるため、バルコニー下ユニット20Aとして(通常の)建物ユニット20を用いることができる。そのため、建物ユニットの共通化を図れるという利点がある。なお、かかる構成では、スペーサ部材を相対する一対の天井大梁22間に跨って設けなくてもよく、例えば階間断熱材65の下方にのみ配設してもよい。
(3)上記実施形態では、階間断熱材65を階間空間50においてバルコニー下方領域Xにのみ設けたが、これに加えて、居室下方領域Yにも設けてよい。例えば、階間空間50全域に設けることが考えられる。この場合、階間部分40の断熱性能を高めることができる。
また、この場合、階間断熱材65の厚みを補強梁35の上面部35aと居室床小梁32の下面部との上下間隔よりも大きくすることが望ましい。そうすれば、階間断熱材65を補強梁35とバルコニー床小梁33との間だけでなく、補強梁35と居室床小梁32との間でも挟み込むことができ、階間空間50において補強梁35の長手方向全域を階間断熱材65により閉塞することが可能となる。そのため、階間空間50での空気の対流をより一層抑制することができる。
(4)上記実施形態では、上階ユニットとしてのバルコニーユニット20Bに半屋外空間としてインナバルコニー18を形成したが、ベランダやテラス等その他の半屋外空間を形成してもよい。また、上記実施形態では、バルコニーユニット20Bの一部のスペースを利用してインナバルコニー18を形成したが、バルコニーユニット20Bの全部のスペースを利用してインナバルコニーを形成してもよい。その場合には、階間空間50全域に階間断熱材65を設置する必要がある。
(5)ユニット式建物を3階建てとして構築し、三階部分にバルコニーユニット20Bを、二階部分にバルコニー下ユニット20Aを上下に隣接して設置してもよい。また、3階建ての建物において、二階部分にバルコニーユニット20Bを、一階部分にバルコニー下ユニット20Aを上下に隣接して設置してもよい。
(6)上記実施形態では、バルコニー下方領域Xにおいて、中間梁31の下方位置と、それ以外の部位とで、階間断熱材65の重ね方向の枚数(重ね枚数)を異ならせる構成とし、中間梁31の下方位置以外の部位では、階間断熱材65の重ね枚数を1枚、中間梁31の下方位置では階間断熱材65aの重ね枚数を2枚としたが、これを変更し、中間梁31の下方位置では階間断熱材65aの重ね枚数を3枚以上としてもよい。要するに、バルコニー下方領域Xにおいて、中間梁31の下方位置における断熱層66の厚み(詳細には非圧縮状態における断熱層66の厚み。以下、同じ。)を中間梁31の下方位置以外の部位における断熱層66の厚みよりも大きくすればよい。また、階間断熱材65aを、その他の階間断熱材65(つまり、中間梁31の下方位置を除く部分に設置される階間断熱材65。以下において同じ。)よりも厚みを大きくして形成してもよい。この場合、階間断熱材65aの重ね枚数は任意としてよい。
また、階間断熱材65aを、その他の階間断熱材65よりも厚みを小さくして形成し、それを複数枚重ねて設置することで、重ねた状態での階間断熱材65aの厚みをその他の階間断熱材65の厚みL1(1枚当たりの厚みL1)よりも大きくしてもよい。例えば、階間断熱材65aの厚みを、その他の階間断熱材65の厚みL1よりも小さくし、それを4枚以上に重ねて設置することで重ねた状態での階間断熱材65aの厚みを、その他の階間断熱材65の厚みL1の3倍としてもよい。また、階間断熱材65aの厚みを、その他の階間断熱材65の厚みL1よりも小さくし、それを2枚重ねして設置することで、重ねた状態での階間断熱材65aの厚みを、その他の階間断熱材65の厚みL1の1.5倍としてもよい。なお、これらの場合には、階間断熱材65aを複数枚重ねた状態での厚み、すなわち中間梁31の下方位置における断熱層66の厚みを、中間梁31と天井下地材42との上下間隔H3よりも大きくする必要がある点に留意する。