JP2016108599A - 転動疲労特性に優れた軸受用鋼材および軸受部品 - Google Patents
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Abstract
Description
円相当直径が0.01〜1.0μmの微細なNb、V、W、Mo系炭窒化物は、母相のき裂の発生・進展を抑制する作用を有する。このような効果は、上記微細なNb、V、W、Mo系炭窒化物の個数密度を3個/μm2以上に制御することで有効に発揮される。上記微細なNb、V、W、Mo系炭窒化物の個数密度の下限は、好ましくは3.5個/μm2以上、より好ましくは4.0個/μm2以上である。しかしながら、上記微細なNb、V、W、Mo系炭窒化物の個数密度が30.0個/μm2を超えると母相が強化され過ぎて、逆にき裂の伝搬速度を速めてしまうため、その上限を30.0個/μm2以下にすることが好ましい。上記微細なNb、V、W、Mo系炭窒化物の個数密度の上限は、より好ましくは20.0個/μm2以下である。
Cは、基地に固溶して、マルテンサイト粒を強化するため、焼入れ焼戻し後の軸受部品の強度を確保するために有効な元素である。軸受部品において、所望の強度を得るためには、Cは少なくとも0.8%以上含有させる必要がある。しかしながらC含有量が1.2%を超えると、鋳造後に大型の炭化物を生成し、その後の圧延中に割れを生じやすくなる。C含有量の好ましい下限は0.85%以上、より好ましくは0.9%以上である。また、C含有量の好ましい上限は1.15%以下、より好ましくは1.1%以下である。
Siは、マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有用な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、Si含有量は、0.1%以上を含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が多くなり過ぎると加工性や被削性が著しく低下するので、Si含有量は0.8%以下に抑える必要がある。Si含有量の好ましい下限は0.13%以上、より好ましくは0.15%以上である。また、Si含有量の好ましい上限は0.7%以下、より好ましくは0.6%以下である。
Mnは、鋼材マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させる元素である。Mn含有量が0.1%を下回るとその効果が発揮されず、1%を上回ると低級酸化物であるMnO含有量が増加し、転動疲労特性を悪化させる他、加工性や被削性が著しく低下する。Mn含有量の好ましい下限は0.2%以上、より好ましくは0.3%以上である。また、Mn含有量の好ましい上限は0.9%以下、より好ましくは0.8%以下である。
Crは、Cと結びついて炭化物を形成し、さらにオーステナイト中の炭化物を安定化させて炭化物の球状化を促進するのに有効な元素である。このような効果を発揮させるためには、1.1%以上含有させる必要がある。Cr含有量が1.8%を超えると、粗大な炭化物が生成し、転動疲労特性を悪化させる。Cr含有量の好ましい下限は1.2%以上、より好ましくは1.3%以上である。また、Cr含有量の好ましい上限は1.7%以下、より好ましくは1.6%以下である。
Pは、不可避的に不純物として含有する元素であり、粒界に偏析して加工性を低下させるため、P含有量の上限を0.05%以下に抑制する。P含有量は少ない程良く、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下とする。尚、P含有量を0%にすることは、工業生産上、困難である。
Sは、不可避的に不純物として含有する元素であり、MnSとして析出して転動疲労寿命を低下させるため、S含有量の上限を0.05%以下に抑制する。S含有量は少ない程良く、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下とする。尚、S含有量を0%にすることは、工業生産上、困難である。
Alは好ましくない元素であり、本発明の鋼材においては、Alは極力少なくする必要がある。従って、酸化精錬後のAl添加による脱酸処理は行わない。Al含有量が多くなり、特に0.005%を超えてしまうと、Al2O3を主体とする硬質な酸化物の生成量が多くなり、しかも圧下した後も粗大な酸化物として残存するので、転動疲労特性が劣化する。従って、Alの含有量の上限を0.005%以下とする。但し、Al含有量を0.0002%未満にすると、酸化物中のAl2O3含有量が少なくなり過ぎ、SiO2を多く含む結晶相が生成する。また、Al含有量を0.0002%未満に制御するためには、Alの混入を抑制するために、鋼中成分のみならず、フラックス中のAl2O3含有量も少なくする必要があるが、高炭素鋼である軸受鋼においてAl2O3含有量の少ないフラックスは非常に高価であり、経済的でない。従って、Al含有量の下限は0.0002%以上である。Al含有量の好ましい下限は、0.0005%以上であり、より好ましくは0.0010%以上である。また、Al含有量の好ましい上限は、0.002%以下であり、より好ましくは0.0015%以下である。
Caは、酸化物中のCaO含有量を制御し、酸化物系介在物の結晶化を抑制して、転動疲労特性を改善するのに有効である。このような効果を発揮させるため、Ca含有量は0.0002%以上とする。しかしながら、Ca含有量が過剰になって0.002%を超えると、酸化物組成におけるCaOの割合が高くなり過ぎて、酸化物が結晶化してしまう。従って、Ca含有量は0.002%以下とする。Ca含有量の好ましい下限は0.0003%以上であり、より好ましくは0.0005%以上である。また、Ca含有量の好ましい上限は0.001%以下であり、より好ましくは0.0008%以下である。
Tiは、本発明を特徴付ける元素である。所定量のTiを添加し、酸化物中のTiO2含有量を適切に制御することにより、Si脱酸鋼で得られるSiO2含有酸化物系介在物の熱間加工時における結晶化、母相の鋼と酸化物系介在物の界面に発生する空洞、多結晶体である酸化物系介在物内部に発生する空洞の問題を解決することができ、転動疲労特性が向上する。このような効果を得るためには、Ti含有量は0.0005%以上とする必要がある。ただし、Tiの含有量が多くなり、0.010%を超えると、TiO2系酸化物が結晶相として単独で生成する。従って、Ti含有量は0.010%以下とした。よって、Ti含有量の上限を0.010%以下とする。Ti含有量の好ましい下限は0.0008%以上であり、より好ましくは0.0011%以上である。また、Ti含有量の好ましい上限は0.0050%以下であり、より好ましくは0.0030%以下である。
Nは、TiNを生成し、転動疲労特性を悪化させるため、できる限り低減することが推奨される。従って、N含有量の上限を0.01%以下とする。N含有量の好ましい上限は0.007%以下であり、より好ましくは0.006%以下である。
Oは、好ましくない不純物元素である。不可避的に不純物として含有する元素である。Oの含有量が多くなって、特に0.005%を超えると、粗大な酸化物が生成し易くなり、熱間圧延および冷間圧延後においても粗大な酸化物として残存し、転動疲労特性に悪影響を及ぼす。従って、Oの含有量の上限を0.005%以下とする。O含有量の好ましい上限は0.004%以下であり、より好ましくは0.003%以下とする。
Nb、V、W、およびMoは、本発明を最も特徴付ける元素であり、転動疲労寿命を向上させる上で重要な元素である。詳細には、これらの元素は、CやNと結合することによって、母相のき裂の発生・進展抑制に有用な上記Nb、V、W、Mo系炭窒化物の微細分散に寄与する元素である。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。具体的には、上記四種類の元素のうち少なくとも一つが上記範囲内で含まれていれば、上記効果を有効に発揮することができる。例えば、後記する試験No.5は、Nb、V、W、MoのうちVを除く三種類の元素を所定量含む例であり、微細なNb、V、W、Mo系炭窒化物の個数割合も適切に制御されているため、転動疲労寿命に優れている。
微細なNb系炭窒化物を所定の個数密度で析出させるため、Nb含有量の下限は0.005%以上とする。しかし、Nbの含有量が0.5%を超えると、Nb系炭窒化物が粗大になって破壊の起点となるため、かえって転動疲労寿命を悪化させる。よって、Nb含有量の上限は0.5%以下とする。Nb含有量の好ましい下限は0.010%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、Nb含有量の好ましい上限は0.45%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
微細なV系炭窒化物を所定の個数密度で析出させるため、V含有量の下限は0.01%以上とする。しかし、Vの含有量が1.0%を超えると、V系炭窒化物が粗大になって破壊の起点となるため、かえって転動疲労寿命を悪化させる。よって、V含有量の上限は1.0%以下とする。V含有量の好ましい下限は0.02%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、V含有量の好ましい上限は0.9%以下であり、より好ましくは0.8%以下である。
微細なW系炭窒化物を所定の個数密度で析出させるため、W含有量の下限は0.005%以上とする。しかし、Wの含有量が0.5%を超えると、析出するW系炭窒化物が粗大になって破壊の起点となるため、かえって転動疲労寿命を悪化させる。よって、W含有量の上限は0.5%以下とする。W含有量の好ましい下限は0.010%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、W含有量の好ましい上限は0.45%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
微細なMo系炭窒化物を所定の個数密度で析出させるため、Mo含有量の下限は0.01%以上とする。しかし、Moの含有量が2.0%を超えると、析出するMo系炭窒化物が粗大になって破壊の起点となるため、かえって転動疲労寿命を悪化させる。よって、Mo含有量の上限は2.0%以下とする。Mo含有量の好ましい下限は0.02%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、Mo含有量の好ましい上限は1.8%以下であり、より好ましくは1.6%以下である。
Cu、NiおよびCoは、いずれも母相の焼入れ性向上元素として作用し、硬さを高めて転動疲労特性の向上に寄与する元素である。これらの効果を有効に発揮させるために、いずれも0.01%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.02%以上である。しかしながら、いずれも1%を超えると加工性が劣化することになる。従って、いずれも1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.9%以下、更に好ましくは0.8%以下である。これらの元素は、夫々単独でまたは適宜組み合わせて含有させても良い。
Pb、BiおよびTeは、いずれも被削性向上元素である。これらの効果を有効に発揮させるために、Pb、Biはそれぞれ0.01%以上、Teは0.00001%以上含有させることが好ましく、より好ましくは、Pb、Biはそれぞれ0.02%以上、Teは0.00002%以上である。しかし、それぞれPb、Biの含有量が0.5%を超えるか、Teの含有量が0.1%を超えると、圧延疵の発生等、製造上の問題が生じることになる。Pb、Biの含有量の好ましい上限は0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。これらの元素は、夫々単独でまたは適宜組み合わせて含有させても良い。
Bは、Nと結合することで、窒素化合物を形成して、結晶粒を整粒化し、転動疲労寿命を向上させる上で有効な元素である。これらの効果は、Bで0.0001%以上含有させることで有効に発揮される。B含有量の好ましい下限は0.0001%以上、より好ましい下限は0.0002%以上である。しかしながら、Bの含有量が0.005%を超えると、結晶粒が微細化し、不完全焼入れ相が生成しやすくなる。Bの含有量の好ましい上限は0.005%以下、より好ましい上限は0.003%以下であり、更に好ましくは0.001%以下である。
CaOは塩基性酸化物であり、酸性酸化物であるSiO2に含まれると、酸化物の液相線温度が下がり、酸化物の結晶化を抑制する効果がある。このような効果は、酸化物の平均組成におけるCaO含有量を20%以上に制御することによって得られる。しかしながら、CaO含有量が高すぎると、酸化物が結晶化してしまうため、CaO含有量を50%以下とする必要がある。酸化物系介在物中に占めるCaO含有量の好ましい下限は22%以上であり、より好ましくは25%以上である。また、CaO含有量の好ましい上限は43%以下であり、より好ましくは41%以下である。
Al2O3は両性酸化物であり、酸性酸化物であるSiO2に含まれると、酸化物の液相線温度が下がり、酸化物の結晶化を抑制する効果がある。このような効果は、酸化物の平均組成におけるAl2O3含有量を20%以上に制御することによって得られる。一方、酸化物の平均組成における含有量が50%を超えると、溶鋼中および凝固過程でAl2O3(コランダム)結晶相が晶出したり、MgOとともにMgO・Al2O3(スピネル)結晶相が晶出する。あるいは、圧延温度域でこれらの結晶相が生成する。これらの固相は硬質であり、粗大な介在物として存在し、加工中に空洞が生成しやすくなり、転動疲労特性を悪化させる。こうした観点から、酸化物の平均組成におけるAl2O3含有量は50%以下とする必要がある。酸化物系介在物におけるAl2O3含有量の好ましい下限は22%以上であり、より好ましくは25%以上である。また、Al2O3含有量の好ましい上限は43%以下であり、より好ましくは41%以下である。
SiO2は酸性酸化物であり、酸化物系介在物を非晶質化させるために不可欠の成分である。このような効果を有効に発揮させるためには、酸化物中にSiO2を20%以上含有させる必要がある。しかしながら、SiO2含有量が70%を超えると、SiO2を多く含む結晶相が生成し空洞が形成されるため、転動疲労特性が悪化する。酸化物系介在物中におけるSiO2含有量の好ましい下限は25%以上であり、より好ましくは30%以上である。また、SiO2含有量の好ましい上限は50%以下であり、より好ましくは45%以下である。
TiO2は、本発明を特徴付ける酸化物成分であり、酸性酸化物であるSiO2に含まれると、TiO2濃化相(A相)とSiO2濃化相(B相)の2相に分離でき、両相とも結晶質化を抑制することができる。その結果、Si脱酸鋼で得られるSiO2含有酸化物系介在物の熱間加工時の結晶化の抑制、母相の鋼と酸化物系介在物との界面に発生する空洞の抑制、多結晶体である酸化物系介在物内部にも発生する空洞の抑制を実現でき、転動疲労特性が一層を向上する。このような効果は、酸化物の平均組成におけるTiO2含有量を3%以上に制御することによって得られる。しかしながら、TiO2含有量が高すぎると、TiO2系酸化物が結晶相として単独で生成し、空洞が形成され、転動疲労特性が低下するため、10%以下とする。酸化物系介在物中におけるTiO2含有量の好ましい下限は4%以上であり、より好ましくは5%以上である。また、TiO2含有量の好ましい上限は8%以下であり、より好ましくは7%以下である。
鍛圧比=熱間圧延または熱間鍛造前の鋼材の長手方向に垂直な断面積/熱間圧延または熱間鍛造後の鋼材の長手方向に垂直な断面積
小型溶解炉(容量150kg/1ch)を用い、下記表1、2に示す各種化学成分組成の供試鋼(残部は鉄および不可避不純物)を溶製し、直径がφ245mm、高さが480mmの鋳片を作製した。溶製時にMgO系耐火物の取鍋を用い、通常実施されるAl脱酸処理を行わず、Si脱酸処理を行った。
このようにして得られた鋳片を1250℃に加熱して1時間保持した後、1200℃で分塊圧延し、室温まで冷却した。次いで表3、4に示す条件で加熱および熱間圧延を行い、熱間圧延の終了温度である900℃から500℃までの温度域を表3、4に示す平均冷却速度で冷却した後、放冷してφ65mmの丸棒鋼の熱間圧延材を作製した。なお、熱間圧延前の加熱は、表3、4に示す加熱温度で45〜75分間行った。このようにして得られた丸棒鋼について、その表面からD/2位置(Dは直径)で圧延方向断面が観察できるように上記丸棒鋼から20mm×20mm×10mmの試験片を得た。この試験片を用いて、以下に示すNb、V、W、Mo系炭窒化物の個数密度、および酸化物系介在物の平均組成を測定した。
上記試験片の表面に金蒸着を行い、電解放出型透過型電子顕微鏡(FE−TEM)によりレプリカ観察を実施した。この際、TEMのエネルギー分散型X線検出器(EDX、Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)により、Nb、V、W、およびMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種、CおよびNの少なくとも1種と、を含有する析出物を特定し、30000倍の倍率で視野内を観察した。1視野は16.8μm2とし、任意の3視野について合計50.4μm2観察し、粒子解析ソフト[「粒子解析III for Windows.(登録商標) Version3.00 SUMITOMO METAL TECHNOLOGY製」(商品名)]を用い、円相当直径が0.01〜1.0μmの微細なNb、V、W、Mo炭窒化物の個数密度を求めた。個数密度はμm2当たりに換算した。
上記試験片の表面を研磨した後、日本電子データム製の電子線マイクロプローブX線分析計(Electron Probe X−ray Micro Analyzer:EPMA 商品名「JXA−8500F」)により観察を実施した。この際、Nb、V、W、およびMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種と、CおよびNの少なくとも1種と、を含有する析出物を特定し、1視野を1cm2として任意の3視野について合計3cm2観察し、円相当直径が5μm以上の粗大なNb、V、W、Mo系炭窒化物の個数密度を求めた。個数密度はcm2当たりに換算した。
上記試験片の断面を研磨した後、日本電子データム製の電子線マイクロプローブX線分析計(Electron Probe X−ray Micro Analyzer:EPMA 商品名「JXA−8500F」)を用いて観察し、短径が1μm以上の酸化物系介在物について成分組成を定量分析した。このとき、観察面積を100mm2(研磨面)とし、介在物の中央部での成分組成を特性X線の波長分散分光により定量分析した。分析対象元素は、Ca、Al、Si、Ti、Ce、La、Mg、Mn、Zr、Na、K、Cr、O(酸素)とし、既知物質を用いて各元素のX線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておき、分析対象とする上記介在物から得られたX線強度と上記検量線から各試料に含まれる元素量を定量し、その結果を算術平均することで介在物の平均組成を求めた。このようにして得られた定量結果のうち、酸素含量が5%以上の介在物を酸化物とした。このとき、一つの介在物から複数の元素が観測された場合には、それらの元素の存在を示すX線強度の比から各元素の単独酸化物に換算して酸化物の組成を算出した。本発明では、上記単独酸化物として質量換算したものを平均して、酸化物の平均組成とした。なお、REMの酸化物は、金属元素をMで表すと、鋼材中にM2O3、M3O5,MO2などの形態で存在するが、本実施例では、観測される全ての酸化物をM2O3に換算してREM酸化物の平均組成を算出した。その結果を算術平均することで平均の介在物組成を求めた。
上記(2)で得られた丸棒鋼を770℃で6時間保持した後、10℃/時の平均冷却速度で680℃まで冷却し、その後、放冷して軟化させることにより球状化焼鈍材を得た。このようにして得られた球状化焼鈍材からφ60mm、厚さ6mmの円盤状のスラスト転動疲労試験用のテストピースを切り出し、840℃で30分加熱後に油焼入れをし、次いで160℃の温度で120分間焼き戻しを行った。最後に仕上げ研磨を施して、表面粗さRa0.1μmのスラスト転動疲労試験片を作製した。このようにして得られたスラスト転動疲労試験片を用い、スラスト疲労試験機(スラスト型転動疲労試験機「FJ−5T」、富士試験機製作所製)にて、繰り返し速度1500rpm、鋼球数3個、面圧5.3GPa、中止回数2×108回の条件でスラスト転動疲労試験を実施した。
L10寿命5.0×107回以上を転動疲労特性に優れると評価した。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.8〜1.2%、
Si:0.1〜0.8%、
Mn:0.1〜1%、
Cr:1.1〜1.8%、
P:0%超0.05%以下、
S:0%超0.05%以下、
Al:0.0002〜0.005%、
Ca:0.0002〜0.002%、
Ti:0.0005〜0.010%、
N:0%超0.01%以下、および
O:0%超0.005%以下を含有し、
更に、Nb:0.005〜0.5%、V:0.01〜1.0%、W:0.005〜0.5%、およびMo:0.01〜2.0%よりなる群から選択される1種以上を含み、残部は鉄及び不可避不純物からなり、
鋼中に含まれる短径1μm以上の酸化物系介在物の平均組成が質量%で、
CaO:20〜50%、Al2O3:20〜50%、SiO2:20〜70%、およびTiO2:3〜10%を含有し、残部は不可避不純物からなると共に、
鋼中に含まれる円相当直径が0.01〜1.0μmのNb、V、W、Mo系炭窒化物の個数密度が3個/μm2以上であることを特徴とする軸受用鋼材。 - Cu:0%超1%以下、Ni:0%超1%以下、およびCo:0%超1%以下よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1に記載の軸受用鋼材。
- Pb:0%超0.5%以下、Bi:0%超0.5%以下、およびTe:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1または2に記載の軸受用鋼材。
- B:0%超0.005%以下を含む請求項1〜3のいずれかに記載の軸受用鋼材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の軸受用鋼材を用いて得られる軸受部品。
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