JP2016107778A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 車両の走行状態の変化を抑制しつつ各車輪の制駆動力制御により各車輪の接地荷重を適切に変更させることが可能な車両の制御装置を提供すること。【解決手段】モータECU40は、車両1の左前輪10fl及び右後輪10rr(一方の対角輪)にて発生させる制駆動力として同一の大きさ且つ同一の作用方向となるようにモータ20を制御して左前輪10fl及び右後輪10rrにて駆動力を発生させる。ECU40は、車両1の右前輪10fr及び左後輪10rl(他方の対角輪)にて発生させる制駆動力として同一の大きさ且つ同一の作用方向となるようにモータ20を制御して右前輪10fr及び左後輪10rlにて制動力を発生させる。更に、ECU40は、一方の対角輪にて発生させる駆動力の合計と他方の対角輪にて発生させる制動力の合計との和がゼロとなるようにモータ20を制御して車輪10に制駆動力を発生させる。【選択図】 図1

Description

本発明は、走行している車両において各車輪の接地荷重を制御することができる車両の制御装置に関する。
従来から、走行している車両において各車輪の接地荷重を制御することが行われている。例えば、特許文献1に提案された車両用接地荷重制御装置は、各車輪位置にポンプから供給される油圧により力を発生させる油圧シリンダが設けられたアクティブサスペンション装置を利用し、油圧シリンダが発生する力で各車輪の接地荷重を制御する。この場合、従来の車両用接地荷重制御装置では、一方の対角輪の各接地荷重と他方の対角輪の各接地荷重とを互いに反対の増減方向で変更し、且つ、各対角輪内での各接地荷重を同じ増減方向で変更するようになっている。これにより、従来の車両用接地荷重制御装置では、車体に無用な姿勢変化及び振動を生じさせることなく、車両の走行状態を安定させることができるようになっている。
特開2005−350063号公報
従来の車両用接地荷重制御装置では、車両の各車輪位置に対応してアクティブサスペンション装置を構成する油圧シリンダを設ける必要がある。この場合、油圧シリンダ自体が重量物であり、加えて、各油圧シリンダを作動させるための油圧装置及び油圧制御装置等の複雑な構造が必要であることから、車両の重量が増加し且つコストが極めて増大するという問題がある。
ところで、各車輪をそれぞれ独立して駆動する制駆動力発生装置を備え、この複数の制駆動力発生装置を個別に制御することにより、各車輪に制駆動力(制動力及び駆動力)を発生させる車両が考案されている。この車両では、車輪が発生する制駆動力が、車両に対して前後方向の力として作用するのみでなく、車輪と車体とを連結する通常のパッシブサスペンション装置によって車体に対する上下方向の力にも変換される。
従って、この車両では、各車輪に設けられた制駆動力発生装置にて各車輪に発生させる制駆動力を個別に配分して制御することにより、各車輪の接地荷重を変更することができる。しかしながら、単純に各車輪に発生させる制駆動力を個別に制御して接地荷重を変更すると、車両の走行状態、具体的に、車速及び進行方向等に運転者の意図しない変化が生じてしまう虞がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、車両の走行状態の変化を抑制しつつ各車輪の制駆動力制御により各車輪の接地荷重を適切に変更させることが可能な車両の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、
車両(1)の前輪用サスペンション装置(30f)により車体(Bo)に支持された左右前輪(10f)のそれぞれに独立して制駆動力を発生させる前輪用制駆動力発生装置(20f)と、
前記車両(1)の後輪用サスペンション装置(30r)により前記車体(Bo)に支持された左右後輪(10r)のそれぞれに独立して制駆動力を発生させる後輪用制駆動力発生装置(20r)と、を備えた車両に適用され、
前記車両(1)の走行のために要求される目標走行力(Ftotal)に基づいて、前記前輪用制駆動力発生装置(20f)及び前記後輪用制駆動力発生装置(20r)がそれぞれ前記左右前輪(10f)及び前記左右後輪(10r)に発生すべき目標各輪制駆動力(Fd)を決定し、
前記前輪用制駆動力発生装置(20f)に前記左右前輪(10f)のそれぞれにて前記目標各輪制駆動力(Fdf)を発生させ、
前記後輪用制駆動力発生装置(20r)に前記左右後輪(10r)のそれぞれにて前記目標各輪制駆動力(Fdr)を発生させる、
制御部(40)、を備えた車両の制御装置において、
前記前輪用サスペンション装置(30f)は前記前輪用制駆動力発生装置(20f)が前記左右前輪(10f)にて前記目標各輪制駆動力(Fdf)に加えて生じさせる制駆動力(Fcf、Fx1、Fx2)により前記左右前輪(10f)の前記路面に対する接地荷重(w1、w2)を増減させ、前記後輪用サスペンション装置(30r)は前記後輪用制駆動力発生装置(20r)が前記左右後輪(10r)にて前記目標各輪制駆動力(Fdr)に加えて生じさせる制駆動力(Fcr、Fx3、Fx4)により前記左右後輪(10r)の前記路面に対する接地荷重(w3、w4)を増減させるものであり、
前記制御部(40)は、
前記車両(1)の左右前後輪(10)における一対の対角輪のうちの一方の対角輪(10fl、10rr(又は10fr、10rl))の接地荷重の和である接地荷重和(w1+w4(又はw3+w4))から前記一対の対角輪のうちの他方の対角輪(10fr、10rl(又は10fl、10rr))の接地荷重の和である接地荷重和(w3+w4(又はw1+w4))を減じた対角接地荷重差(Fw)を変更する場合、
前記一方の対角輪のそれぞれの車輪(10fl、10rr(又は10fr、10rl))にて前記目標各輪制駆動力(Fd)に加えて同一の大きさ且つ同一の作用方向となる制駆動力(Fx1、Fx4(又はFx2、Fx3))を発生させるとともに前記他方の対角輪のそれぞれの車輪(10fr、10rl(又は10fl、10rr))にて前記目標各輪制駆動力(Fd)に加えて同一の大きさ且つ同一の作用方向となる制駆動力(Fx2、Fx3(又はFx1、Fx4))を発生させ、且つ、前記一方の対角輪のそれぞれの車輪(10fl、10rr(又は10fr、10rl))にて発生させる制駆動力(Fx1、Fx4(又はFx2、Fx3))の合計と、前記他方の対角輪のそれぞれの車輪(10fr、10rl(又は10fl、10rr))にて発生させる制駆動力(Fx2、Fx3(又はFx1、Fx4))の合計と、の和(Fx)がゼロとなるように、前記前輪用制駆動力発生装置(20f)及び前記後輪用制駆動力発生装置(20r)を制御する、ように構成されたことにある。
本発明の車両の制御装置によれば、制御部は、対角接地荷重差を変更する場合、一方の対角輪のそれぞれの車輪にて目標各輪制駆動力に加えて同一の大きさ且つ同一の作用方向となる制駆動力(例えば、駆動力)を発生させる。加えて、制御部は、対角接地荷重差を変更する場合、他方の対角輪のそれぞれの車輪にて目標各輪制駆動力に加えて同一の大きさ且つ同一の作用方向となる制駆動力(例えば、制動力)を発生させる。更に、これらの加えて、制御部は、対角接地荷重差を変更する場合、一方の対角輪にて発生させる制駆動力(例えば、駆動力)の合計と、他方の対角輪にて発生させる制駆動力(例えば、制動力)の合計と、の和がゼロとなるように、前輪用制駆動力発生装置及び後輪用制駆動力発生装置を制御する。
これにより、一方の対角輪にて発生される制駆動力(例えば、駆動力)の合計と他方の対角輪にて発生される制駆動力(例えば、制動力)の合計との和がセロとなるので、車両に無用な前後力が発生することを防止することができる。このため、対角接地荷重差を変更する場合において、車両に無用な車速の変化が発生することを防止することができる。加えて、一方の対角輪の車輪が同一の大きさ且つ同一の作用方向となる制駆動力(例えば、駆動力)を発生させ、他方の対角輪の車輪が同一の大きさ且つ同一の作用方向となる制駆動力(例えば、制動力)を発生するので、車両に無用なヨーモーメントが発生しない。このため、対角接地荷重差を変更する場合において、車両に無用な進行方向の変化が発生することを防止することができる。
本発明の他の側面は、
前記制御部(40)が、
走行している前記車両の前後左右輪のそれぞれに発生しているスリップ状態を表すスリップ率(S)を取得(ステップS11)し、
前記取得したスリップ率(S)が最大となる車輪を特定(ステップS12)し、
該車輪含む前記一方の対角輪のそれぞれの車輪における接地荷重が大きくなるように前記前輪用制駆動力発生装置及び前記後輪用制駆動力発生装置にて前記一方の対角輪のそれぞれの車輪に前記目標各輪制駆動力に加えて駆動力を発生させ(ステップS14、S16)、且つ、前記取得したスリップ率(S)が最大となる車輪を含まない前記他方の対角輪のそれぞれの車輪における接地荷重が小さくなるように前記前輪用制駆動力発生装置及び前記後輪用制駆動力発生装置にて前記他方の対角輪のそれぞれの車輪に前記目標各輪制駆動力に加えて制動力を発生させる(ステップS14、S16)ことにある。
これによれば、スリップ率の大きさに基づいて接地荷重を大きくする必要のある車輪を的確に特定し、この車輪を含む一方の対角輪の接地荷重の合計が他方の対角輪の接地荷重の合計よりも確実に大きくなるように対角接地荷重差を変更することができる。その結果、スリップ率が大きくスリップ状態にある車輪をスリップ状態から確実に復帰させることができる。或いは、スリップ率が大きくなってスリップ状態に陥る可能性の高い車輪がスリップ状態に陥ることを防止することができる。
更に、本発明の他の側面は、
前記前輪用制駆動力発生装置(20f)は、
前記左右前輪(10f)内に設けられて該左右前輪(10f)のそれぞれに独立して制駆動力を発生させるモータであり、
前記後輪用制駆動力発生装置(20r)は、
前記左右後輪(10r)内に設けられて該左右後輪(10r)のそれぞれに独立して制駆動力を発生させるモータであり、
前記制御部(40)は、
前記モータ(20)が発生する回転トルクを制御して前記左右前輪(10f)及び前記左右後輪(10r)にてそれぞれ独立した制駆動力を発生させることにもある。
これによれば、構造が複雑で且つ高価なアクティブサスペンションを用いなくても、車両を走行させるために必須の左右前輪及び左右後輪内に設けられたモータ及びパッシブ型のサスペンション装置を用いて、対角接地荷重差を適切に変更することができる。従って、構造を簡略化することができるので、部品数を低減して軽量化を達成することができる。更に、高価な油圧装置及び油圧制御装置等を排除することができるので、コストを低減することができる。
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は上記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る制御装置が搭載される車両の概略構成図である。 制駆動力と上下力との関係を説明するための図である。 (a)及び(b)はトラクションコントロールシステム等により4輪の駆動力を減少させてスリップ状態を解消する場合を説明するための図である。 (a)及び(b)はスリップ状態にある車輪を含む対角輪の接地荷重和を増加させることによりスリップ状態にある車輪の摩擦円を大きくし、スリップ状態を解消する場合を説明するための図である。 図1に示したモータECUにより実行される対角接地荷重差変更制御プログラムを表すフローチャートである。 図5のプログラムを実行することにより、対角荷重和を増加させるように制御する対角輪を表す制御モードを説明するための図である。 図5のプログラムの実行に伴いモータECUが参照するマップであって、最大スリップ率及び対角接地荷重差の関係を表すマップである。 本発明の変形例に係り、最大スリップ率及び対角接地荷重差の関係を表すマップである。 本発明の変形例に係り、最大スリップ率に対する対角接地荷重差の不感帯を有して、最大スリップ率及び対角接地荷重差の関係を表すマップである。
以下、本発明の実施形態に係る車両の制御装置について図面を参照しながら説明する。図1に示したように、車両1は、左前輪10fl、右前輪10fr、左後輪10rl及び右後輪10rrを備えている。左前輪10fl、右前輪10fr、左後輪10rl及び右後輪10rrの内部には、モータ20fl、モータ20fr、モータ20rl及びモータ20rrがそれぞれ組み込まれている。
モータ20fl、20fr、20rl及び20rrは、所謂インホイールモータであって、車輪10fl、10fr、10rl及び10rrのそれぞれとともに車両1のバネ下に配置される。モータ20fl、20fr、20rl及び20rrのトルク(モータの回転、モータの発生トルク)は、車輪10fl、10fr、10rl及び10rrにそれぞれ伝達される。これにより、車両1においては、各モータ20fl、20fr、20rl及び20rrのトルクをそれぞれ独立して(互いに独立して)制御することにより、車輪10fl、10fr、10rl及び10rrに発生させる駆動力及び制動力をそれぞれ独立して制御できる。
車輪10fl、10fr、10rl及び10rrは、モータ20fl、20fr、20rl及び20rrのケーシングをそれぞれ介して、独立したサスペンション装置30fl、30fr、30rl及び30rrにより車体Boにそれぞれ懸架されている。サスペンション装置30fl、30fr、30rl及び30rrは、車体Boと、車輪10fl、10fr、10rl及び10rr(従って、モータ20fl、20fr、20rl及び20rr)と、をそれぞれ連結する連結機構である。このため、サスペンション装置30fl、30fr、30rl及び30rrのそれぞれは、サスペンションリンク機構、上下方向の荷重を支え衝撃を吸収するためのサスペンションバネ、及び、バネ上(車体Bo)の振動を減衰させるショックアブソーバを備えている。サスペンション装置30fl、30fr、30rl及び30rrは、ストラット型サスペンション及びウィッシュボーン型サスペンション等、周知の4輪独立懸架方式のサスペンション装置(所謂、パッシブサスペンション装置)である。
車輪10fl、10fr、10rl及び10rrは、これらのうちのどの車輪であるかを特定する必要がない場合、以下、単に「車輪10」と称呼される。
モータ20fl、20fr、20rl及び20rrは、これらのうちのどのモータであるかを特定する必要がない場合、以下、単に「モータ20」と称呼される。
サスペンション装置30fl、30fr、30rl及び30rrは、これらのうちのどのサスペンション装置であるかを特定する必要がない場合、以下、単に「サスペンション装置30」と称呼される。
更に、前輪(10fl、10fr)側に設けられる部品を特定する場合には、末尾に「f」、後輪(10rl、10rr)側に設けられる部品を特定する場合には、末尾に「r」を付す。
各モータ20は、例えば、ブラシレスモータであり、モータドライバ25に接続される。モータドライバ25は、例えば、インバータであって、各モータ20に対応するように4組設けられる。モータドライバ25は、バッテリ60から供給される直流電力を交流電力に変換して、その交流電力を各モータ20に独立して供給する。これにより、各モータ20は、力行制御されてモータトルク(駆動トルク)を発生し、各車輪10に駆動力を発生させる。
一方で、各モータ20は、発電機としても機能し、各車輪10の回転エネルギーにより発電して、発電電力を、モータドライバ25を介してバッテリ60に回生する。これにより、各モータ20は、回生制御されてモータトルク(回生制動トルク)を発生し、各車輪10に制動力を発生させる。尚、各車輪10には摩擦ブレーキ装置が設けられる。摩擦ブレーキ装置は、例えば、ディスクブレーキ装置及びドラムブレーキ装置等の周知のブレーキ装置であるので、図示及び説明を省略する。
モータドライバ25は、モータ制御用電子制御ユニット40(以下、単に「モータECU40」と称呼する。)に接続されている。モータECU40は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として備え、後述するプログラムを含む各種プログラムを実行して個々のモータ20の作動を独立して制御する。モータECU40は、運転者が車両1を走行させるために操作した操作状態を検出する操作状態検出装置50及び車両1の運動状態を検出する運動状態検出装置55と接続され、それらの検出装置50及び55から出力される検出信号を入力するように構成されている。
操作状態検出装置50は、アクセルセンサ、ブレーキセンサ及び操舵角センサ等を含んでいる。アクセルセンサは、アクセルペダルの踏み込み量(或いは、角度、圧力等)から運転者のアクセル操作量を検出する。ブレーキセンサは、ブレーキペダルの踏み込み量(或いは、角度、圧力等)から運転者のブレーキ操作量を検出する。操舵角センサは、運転者が操舵ハンドルを操作した操舵操作量(操舵角)を検出する。
運動状態検出装置55は、車輪速センサ、車速センサ、バネ上加速度センサ、前後加速度センサ、横加速度センサ、ストロークセンサ、ピッチレートセンサ、ロールレートセンサ、及び、ヨーレートセンサ等を含んでいる。車輪速センサは、各車輪10の回転速度である車輪速を検出する。車速センサは、4輪の車輪速に基づいて車体Bo(車両1)の走行速度である車体速を演算して検出する。バネ上加速度センサは、各車輪位置における車体Bo(バネ上)の上下方向の加速度を検出する。前後加速度センサは、車体Bo(車両1)の前後方向における前後加速度を検出する。横加速度センサは、車体Bo(車両1)の左右方向における横加速度を検出する。ストロークセンサは、各サスペンション装置30のサスペンションストローク量を検出する。ピッチレートセンサは、車体Boのピッチレートを検出する。ロールレートセンサは、車体Boのロールレートを検出する。ヨーレートセンサは、車体Bo(車両1)のヨーレートを検出する。
尚、操作状態検出装置50及び運動状態検出装置55によって検出される検出値について、方向要素が含まれる検出値はその符号によって方向が識別される。加えて、検出値の大きさを論じる場合にはその絶対値が用いられる。
<制御の概要>
次に、モータECU40が行う制御の概要について説明する。モータECU40は、操作状態検出装置50により検出されたアクセル操作量、及び、ブレーキ操作量に基づいて、運転者が要求する加速度(減速度を含む)にて車両1を走行させるために車両に要求される目標走行力Ftotalを決定する。より具体的に述べると、モータECU40は、アクセル操作量が「0」でなくブレーキ操作量が「0」であるとき、予め設定された駆動力マップと実際のアクセル操作量とに基づいて、アクセル操作量が大きいほど大きくなるトータル走行用駆動力を目標走行力Ftotalとして決定する。更に、モータECU40は、ブレーキ操作量が「0」でなくアクセル操作量が「0」であるとき、予め設定された制動力マップと実際のブレーキ操作量とに基づいて、ブレーキ操作量が大きいほど大きくなるトータル走行用制動力を目標走行力Ftotalとして決定する。モータECU40は、決定した目標走行力Ftotalを所定の配分比で4輪に配分することにより、各車輪10の目標各輪制駆動力Fdを決定する。
モータECU40は、目標各輪制駆動力Fdに対して、例えば、各車輪10に設けられる減速機(図示省略)のトルク変換比(比例定数)を乗算する。これにより、モータECU40は、目標各輪制駆動力Fdに対応する目標走行トルクTd(目標走行駆動トルクTd又は目標走行回生制動トルクTd)を各車輪10について演算する。モータECU40は、各モータ20がそのモータについての目標走行トルクTdを発生するように(目標走行トルクTdに対応する目標電流が各モータ20に流れるように)モータドライバ25を制御する。これにより、各車輪10においては、目標各輪制駆動力Fdに一致する制駆動力が発生する。尚、以下において、車輪10毎に目標各輪制駆動力Fdを特定する場合には、左前輪については目標各輪制駆動力Fd1、右前輪については目標各輪制駆動力Fd2、左後輪については目標各輪制駆動力Fd3、右後輪については目標各輪制駆動力Fd4と称呼する。更に、以下において、車輪10毎に目標走行トルクTdを特定する場合には、左前輪については目標走行トルクTd1、右前輪については目標走行トルクTd2、左後輪については目標走行トルクTd3、右後輪については目標走行トルクTd4と称呼する。
図2(a)及び(b)に示したように、車両1の側面視において、前輪側のサスペンション装置30fは、車体Boに対する前輪10fの回転中心(即ち、瞬間回転中心)Cfが、前輪10fよりも後方且つ上方に位置するように構成される。車両1の側面視において、後輪側のサスペンション装置30rは、車体Boに対する後輪10rの回転中心(即ち、瞬間回転中心)Crが、後輪10rよりも前方且つ上方に位置するように構成される。
この場合、前輪10fの接地点と瞬間回転中心Cfとを結ぶ線と接地水平面とのなす角度(小さい方の角度)をθf、後輪10rの接地点と瞬間回転中心Crとを結ぶ線と接地水平面とのなす角度(小さい方の角度)をθrとする。尚、以下においては、θfを瞬間回転角θfと称呼し、θrを瞬間回転角θrと称呼する。車両1においては、瞬間回転角θfに比べて瞬間回転角θrの方が大きくなる関係(θf<θr)を有するが、その逆(θr<θf)の関係を有していても良い。
このようなサスペンション装置30の構成(ジオメトリ)においては、例えば、特開2013−085375号公報及び特開2012−086712号公報等に開示されているように、各車輪10の駆動力及び制動力により車体Boの上下方向の力が発生する。具体的に、車両1においては、各車輪10にて発生する制駆動力により車体Boに上下力が作用する。尚、以下において、車体Boに作用させる上下力を発生させるための制駆動力は、便宜上、「姿勢制御用目標制駆動力」と称呼される場合がある。
以下、説明を簡略化するために、左前輪10fl及び右前輪10frを一つの前輪10fと見做し、左後輪10rl及び右後輪10rrを一つの後輪10rと見做す。この場合、図2(a)に示したように、前輪10fの接地点に車両1の進行方向と同方向(車両前方)の姿勢制御用目標制駆動力Fcf(駆動力)が作用すると、同制駆動力Fcfによって車体Boを下向きに付勢する上下力Fzfが前輪10fの接地点を通る鉛直線上に発生する。一方、後輪10rの接地点に車両1の進行方向と逆方向(車両後方)の姿勢制御用目標制駆動力Fcr(制動力)が作用すると、同制駆動力Fcrによって車体Boを下向きに付勢する上下力Fzrが後輪10rの接地点を通る鉛直線上に発生する。
加えて、図2(b)に示すように、前輪10fの接地点に車両1の進行方向と逆方向の姿勢制御用目標制駆動力Fcf(制動力)が作用すると、同制駆動力Fcfによって車体Boを上向きに付勢する上下力Fzfが前輪10fの接地点を通る鉛直線上に発生する。一方、後輪10rの接地点に車両1の進行方向と同方向の姿勢制御用目標制駆動力Fcr(駆動力)が作用すると、同制駆動力Fcrによって車体Boを上向きに付勢する上下力Fzrが後輪10rの接地点を通る鉛直線上に発生する。
これらの場合、サスペンション装置30fの構成(ジオメトリ)により、前輪10f側において車体Boに働く上下力Fzfは、前輪10fにて発生させる姿勢制御用目標制駆動力Fcfにtan(θf)を乗算した値となる。加えて、後輪10r側において車体Boに働く上下力Fzrは、サスペンション装置30rの構成(ジオメトリ)により、後輪10rにて姿勢制御用目標制駆動力Fcrにtan(θr)を乗算した値となる。
これらの「上下力Fzf及び上下力Fzr」を制御することにより、車両1の走行に伴って変化する車体Boの姿勢を制御することができる。従って、車体Boに発生した姿勢変化に伴う振動を減衰させることができる。車体Boに発生した姿勢変化のうちで、例えば、ピッチ挙動を制御する場合、モータECU40は、通常、図2(a)及び(b)に示したように、姿勢制御用目標制駆動力Fcfと姿勢制御用目標制駆動力Fcrとを同一の大きさで且つそれらの作用方向が逆向きとなるようにする。従って、姿勢制御用目標制駆動力Fcf及び姿勢制御用目標制駆動力Fcrの合計値は「0」となるので、車両前後方向の力は変化しない。更に、モータECU40は、目標走行力Ftotalが発生するように、前輪10fに目標各輪制駆動力Fdfを発生させ、後輪10rに目標各輪制駆動力Fdrを発生させる。尚、目標各輪制駆動力Fdfと目標各輪制駆動力Fdrとの和は目標走行力Ftotalと等しい。この結果、モータECU40は、目標走行力Ftotalを作用させながら、車体Boの姿勢変化(例えば、ピッチ挙動等)を制御することができる。
尚、姿勢制御用目標制駆動力Fcは、4輪のそれぞれに対する姿勢制御用目標制駆動力の総称である。このため、車輪10毎に姿勢制御用目標制駆動力を特定する場合には、左前輪については姿勢制御用目標制駆動力Fc1、右前輪については姿勢制御用目標制駆動力Fc2、左後輪については姿勢制御用目標制駆動力Fc3、右後輪については姿勢制御用目標制駆動力Fc4と称呼する。
車体Boに発生した挙動を制御するための駆動力又は制動力の演算手法は、例えば、特開2012−086712号公報等に開示されて周知である。本実施形態においても、車体Boに発生した挙動を制御するための姿勢制御用目標制駆動力Fcの演算手法として、上記公報等に開示された演算手法を用いる。従って、以下に簡単に説明しておく。
モータECU40は、車体Boに発生した挙動(姿勢変化)を制御するための制御目標値として、目標前後力Fv、目標ロールモーメントMx、目標ピッチモーメントMy、及び、目標ヨーモーメントMzを設定する。具体的に、モータECU40は、操作状態検出装置50及び運動状態検出装置55により検出された操舵角、車速、横加速度、ロールレート及びサスペンションストローク量等を用いて、これら各検出値と予め所定の関係にある目標ロールモーメントMxを決定する。モータECU40は、操作状態検出装置50及び運動状態検出装置55により検出されたアクセル操作量、ブレーキ操作量、車速、前後加速度、上下加速度、ピッチレート及びサスペンションストローク量等を用いて、これら各検出値と予め所定の関係にある目標ピッチモーメントMyを決定する。モータECU40は、操作状態検出装置50及び運動状態検出装置55により検出された操舵角、車速、横加速度及びヨーレート等を用いて、これら各検出値と予め所定の関係にある目標ヨーモーメントMzを決定する。尚、車体Boに発生した挙動を制御するための目標前後力Fvが変動すると、車両1に無用な前後力(運転者が意図しない前後力)が生じるので、通常、目標前後力Fvは「0」に設定される。
モータECU40は、決定した目標ロールモーメントMx、目標ピッチモーメントMy及び目標ヨーモーメントMzに一致する各モーメントを車両1の重心位置Cgにて発生させるために、各車輪10に要求される姿勢制御用目標制駆動力Fcを演算する。具体的に、モータECU40は、例えば、下記式1及び下記式2に従い、目標前後力Fv(=0)、目標ロールモーメントMx、目標ピッチモーメントMy及び目標ヨーモーメントMzを実現する、姿勢制御用目標制駆動力Fc1、Fc2、Fc3及びFc4を演算する。
Figure 2016107778
Figure 2016107778
但し、前記式2中の「tf」は図1に示したように左前輪10fl及び右前輪10fr間のトレッド幅を表し、「tr」は左後輪10rl及び右後輪10rr間のトレッド幅を表す。更に、前記式2中の「Lf」は図2(a)に示したように車両1の重心位置Cgと前輪10fの車軸との間の距離を表し、「Lr」は車両1の重心位置Cgと後輪10rの車軸との間の距離を表す。
モータECU40は、姿勢制御用目標制駆動力Fc1、Fc2、Fc3及びFc4に各車輪10毎に予め定められるトルク変換比(比例定数)をそれぞれ乗じることにより、姿勢制御用目標制駆動力Fc1、Fc2、Fc3及びFc4を目標姿勢制御トルクTc1、Tc2、Tc3及びTc4のそれぞれに変換する。尚、目標姿勢制御トルクTc1、Tc2、Tc3及びTc4は、左前輪、右前輪、左後輪及び右後輪のそれぞれの目標姿勢制御トルクである。目標姿勢制御トルクTcは、目標姿勢制御トルクTc1、Tc2、Tc3及びTc4として用いられる。
ところで、図3(a)に示したように、車両1が各車輪10にて駆動力を発生させて加速している状況において、例えば、左前輪10flと路面との間の摩擦係数が低くなり、左前輪10flの路面に対する摩擦力(グリップ力)が低下する場合がある。尚、図3において、各車輪10の位置に示した円は、路面の状態と車輪10(タイヤ)の摩擦力(グリップ力)との間の関係を表す摩擦円である。更に、図3において各車輪10の位置に示した太線の矢印は、各車輪10にて発生させている駆動力の大きさを表す。左前輪10flにおいては、路面との間の摩擦係数が低くなっているので、他の車輪10(右前輪10fl、左後輪10rl及び右後輪10rr)に比べて摩擦円の大きさが小さくなっている。
摩擦円の大きさは、各車輪10(タイヤ)がスリップすることなく路面との間で摩擦力(グリップ力)を発生させることができる限界を表している。このため、図3(a)に示したように、摩擦円の大きさが小さくなる状況では、左前輪10flにて発生させている駆動力の大きさが摩擦円の大きさよりも大きくなりやすく、その結果、左前輪10flがスリップ状態になる(或いは、スリップ状態になる可能性が高い)。換言すれば、摩擦円の大きさが小さくなると、左前輪10flにて発生させる駆動力の大きさは、摩擦円の大きさに対する余裕が少なくなる。左前輪10flがスリップ状態になると、左前輪10flが適切な制駆動力を発生することができなくなり、その結果、車両1に意図しない車速の変化が生じる場合があり、更には、車体Boの挙動(姿勢)を適切に制御できなくなる場合がある。
スリップ状態にある左前輪10flをスリップ状態から復帰させるために、例えば、従来のトラクションコントロールシステム等を作動させる事が考えられる。この場合、図3(b)に示したように、左前輪10flの駆動力が摩擦円内に収まるように左前輪10flの駆動力を減少させる。加えて、従来のトラクションコントロールシステム等では、左前輪10flの駆動力の減少に合わせて、スリップ状態にない右前輪10fr、左後輪10rl及び右後輪10rrの駆動力も減少させる。この場合、例えば、運転者が要求する加速度にて車両1を走行させる目標走行力Ftotalを発生させることができないので、運転者が意図しない減速度を知覚する。
前述したように、車輪10のスリップ状態は、駆動力の大きさが摩擦円の大きさを超えてしまうことで発生する。このため、スリップ状態が発生する可能性のある車輪10における摩擦円の大きさを大きくすれば、車輪10にスリップ状態が発生する可能性を低くすることができ、更に、発生したスリップ状態を解消することができる。摩擦円の大きさを大きくするためには、車輪10の路面に対する接地荷重を増加させることで達成することができる。
前述の姿勢制御において説明したように、車両1においては、各車輪10にて発生させる制駆動力を個別に制御することにより上下力を発生させることができるので、スリップ状態が発生する可能性のある(或いは、スリップ状態にある)車輪10の接地荷重を増加させることが可能である。尚、以下、スリップ状態が発生する可能性のある(或いは、スリップ状態にある)車輪10を「スリップ輪10」と称呼する。この場合、前述したアクティブサスペンションのような高価なシステムを用いる必要がなく、接地荷重を増加させることができる。従って、構造を簡略化することができるので、部品数を低減して軽量化を達成することができる。更に、高価な油圧装置及び油圧制御装置等を排除することができるので、コストを低減することができる。
具体的に、図3(a)の場合と同様に、図4(a)に示したように、左前輪10flにおける摩擦円の大きさが小さくなり、その結果、左前輪10flにて発生させる駆動力の大きさの摩擦円の大きさに対する余裕が小さくなった場合を想定する。この場合、車両1においては、モータ20flが発生する駆動トルクを制御することで、サスペンション装置30flが左前輪10flにて発生させる駆動力を変換して車体Bo及び路面に作用する上下力を発生させることができる。これにより、左前輪10flの接地荷重を増加させることができ、その結果、図4(b)に示したように、摩擦円の大きさを大きくすることができる。
しかし、左前輪10flの駆動力のみを独立して制御(変更)すると、車両1に無用な車速の変化が発生する場合がある。加えて、左前輪10flの駆動力のみを独立して制御(変更)すると、無用なヨーモーメントが発生して車両1の進行方向に悪影響を与える場合がある。更に、左前輪10flの駆動力のみを独立して制御(変更)すると、車体Boに無用な上下力が作用し、車体Boに不快な挙動(振動)が発生する場合がある。
そこで、モータECU40は、各車輪10の路面に対する接地荷重を変更する場合、無用な車速の変化及び進行方向の変化が生じないように各車輪10の制駆動力を制御する。具体的に、モータECU40は、図4(b)に示したように、対角輪となる左前輪10fl及び右後輪10rr側の接地荷重と、右前輪10fr及び左後輪10rl側の接地荷重と、の差が大きくなるように各車輪10の制駆動力を制御する。尚、以下、接地荷重の差を「対角接地荷重差」と称呼する。この場合、モータECU40は、例えば、スリップ輪10の含まれる側の対角輪の接地荷重を、スリップ輪10の含まれない側の対角輪の接地荷重よりも大きくして対角接地荷重差が大きくなるように、各車輪10の制駆動力を制御する。
この場合、対角接地荷重差は、各モータ20による各車輪10にて発生される制駆動力の配分を適宜変更することで制御できる。以下、各モータ20による各車輪10にて発生される制駆動力の配分を変更して行う対角接地荷重差の制御を説明する。
今、車両1が水平な路面上を走行しており、左前輪10fl位置における車体Boのバネ上上下変位をz1、右前輪10fr位置における車体Boのバネ上上下変位をz2、左後輪10rl位置における車体Boのバネ上上下変位をz3、及び、右後輪10rr位置における車体Boのバネ上上下変位をz4とする。又、左前輪10fl、右前輪10fr、右後輪10rr及び左後輪10rlの上下変位に対する等価剛性をそれぞれk1、k2、k3及びk4とする。等価剛性k1、k2、k3及びk4は、制駆動力によって変化するので、下記式3、4、5及び6により定義することができる。
Figure 2016107778
Figure 2016107778
Figure 2016107778
Figure 2016107778
但し、前記式3,4中の「kzf」は車両1の前輪10f(サスペンション装置40f)の位置におけるバネ定数を表し、前記式5,6中の「kzr」は車両1の後輪10r(サスペンション装置40r)の位置におけるバネ定数を表す。更に、前記式3,4中の「θf」は図2に示した前輪10f側の瞬間回転角を表し、前記式5,6中の「θr」は図2に示した後輪10r側の瞬間回転角を表す。
更に、前記式3中の「Fx1」は対角接地荷重差を変更させるために左前輪10flにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力を表し、前記式4中の「Fx2」は対角接地荷重差を変更させるために右前輪10frにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力を表す。加えて、前記式5中の「Fx3」は対角接地荷重差を変更させるために左後輪10frにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力を表し、前記式6中の「Fx4」は対角接地荷重差を変更させるために右後輪10rrにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力を表す。尚、接地荷重差目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4を合計したトータルの接地荷重差変更目標制駆動力Fxは下記式7で表される。
Figure 2016107778
左前輪10fl及び右後輪10rrは車両1において対角輪の関係にある。対角接地荷重差が変更される場合には接地荷重差目標制駆動力Fx1及びFx4が同じ増減方向となるように決定される。加えて、右前輪10fr及び左後輪10rlは車両1において対角輪の関係にある。対角接地荷重差が変更される場合には接地荷重差目標制駆動力Fx2及びFx3が同じ増減方向となるように決定される。
車両1にトータルの接地荷重差変更目標制駆動力Fxが生じた場合、車両1に生じる前後荷重移動量dwは下記式8で表される。
Figure 2016107778
ただし、前記式8中の「h」は図2に示したように路面から重心位置Cgまでの距離(重心高)を表し、「L」は車両1のホイールベースを表し、L=Lf+Lrである。
更に、対角輪接地荷重差変更制御時における拘束条件を以下のように定める。
(A).左前輪10fl、右前輪10fr、左後輪10rl及び右後輪10rrの4輪の合計荷重は変化しない。この拘束条件は、下記式9で表すことができる。
Figure 2016107778
(B).対角接地荷重差を変更することにより車体Boは捩れない。この拘束条件は、下記式10で表すことができる。
Figure 2016107778
(C).左前輪10fl及び右前輪10frと左後輪10rl及び右後輪10rrとの前後輪の荷重和は変化しない。この拘束条件は、下記式11で表すことができる。
Figure 2016107778
前後荷重移動量dwは左後輪10rl及び右後輪10rrの後輪左右荷重変化量の和に等しい。この拘束条件は、下記式12で表すことができる。
Figure 2016107778
前記式3〜前記式12を連立方程式として解くことにより、等価剛性k1、k2、k3及びk4を求めることができ、バネ上上下変位z1、z2、z3及びz4を求めることができる。更に、前記連立方程式を解くことにより、トータルの接地荷重差変更目標制駆動力Fxを求めることができ、前後荷重移動量dwも求めることができる。
対角接地荷重差Fwは、左前輪10fl及び右後輪10rrからなる対角輪の接地荷重和と右前輪10fr及び左後輪10rlからなる対角輪の接地荷重和と、の差として表される。尚、以下、便宜上、左前輪10fl及び右後輪10rrからなる対角輪を「一方の対角輪」とも称呼し、右前輪10fr及び左後輪10rlからなる対角輪を「他方の対角輪」とも称呼する。左前輪10fl、右前輪10fr、左後輪10rl及び右後輪10rrの接地荷重をそれぞれw1、w2、w3及びw4とすれば、対角接地荷重差Fwは、等価剛性k1、k2、k3及びk4とバネ上上下変位z1、z2、z3及びz4と、を用いて下記式13で表すことができる。
Figure 2016107778
前記式13に対して、前述したように求められた解を代入して整理すると、対角接地荷重差Fwは、最終的に下記式14で表すことができる。
Figure 2016107778
従って、少なくとも前記式14を満たす接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4と一致するように各車輪10にて制駆動力を発生させることで、対角接地荷重差Fwを変更することができる。具体的に、対角接地荷重差Fwを変更することにより、一方の対角輪である左前輪10fl及び右後輪10rrの接地荷重和を増加(或いは、減少)させることができる。同時に、対角接地荷重差を変更することにより、他方の対角輪である右前輪10fr及び左後輪10rlの接地荷重和を減少(或いは、増加)させることができる。
図4(b)に示した状態では、モータECU40は、左前輪10flのスリップ状態を解消するために、左前輪10fl及び右後輪10rrの接地荷重(換言すれば、摩擦円の大きさ)を増加させる。この場合、モータECU40は、前記式14を満たすとともに、左前輪10flにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx1と右後輪10rrにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx4とを共に同一作用方向となる駆動力とし且つ同一の大きさに決定する。一方、モータECU40は、スリップ状態にない右前輪10fr及び左後輪10rlについては、駆動力の大きさに対して摩擦円の大きさに余裕があるので、接地荷重(換言すれば、摩擦円の大きさ)を減少させる。この場合、モータECU40は、前記式14を満たすとともに、右前輪10frにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx2と右後輪10rlにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx3とを共に同一作用方向となる制動力とし且つ同一の大きさに決定する。更に、図4(b)に示した状態では、モータECU40は、接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx4の合計値と接地荷重差変更目標制駆動力Fx2、Fx3の合計値と、の和として、前記式7で表されるトータル接地荷重差変更目標制駆動力Fxを「0」に設定する。
この場合においても、モータECU40は、目標走行力Ftotalが発生するように、前輪10fに目標各輪制駆動力Fdfを発生させ、後輪10rに目標各輪制駆動力Fdrを発生させる。この結果、モータECU40は、目標走行力Ftotalを作用させながら、対角接地荷重差Fwを変更することができる。
このように、各車輪10の制駆動力を制御することにより、車両1に無用な車速の変化が発生することを防止することができる。加えて、対角輪の関係にある車輪10の制駆動力を制御することにより、無用なヨーモーメントの発生を防止して車両1の進行方向が変化することを防止することができる。
<具体的作動>
次に、モータECU40の具体的作動について説明する。モータECU40は、スリップ輪10のスリップ状態を解消するために、図5に示す対角接地荷重差変更制御プログラムを所定の短い時間間隔にて繰り返し実行する。モータECU40は、ステップS10にて対角接地荷重差変更制御プログラムの実行を開始する。モータECU40は、続くステップS11にて、左前輪10fl、右前輪10fr、左後輪10rl及び右後輪10rrのそれぞれについてスリップ率Sfl、Sfr、Srl及びSrrを演算する。尚、スリップ率Sfl、Sfr、Srl及びSrrは、これらのうちのどのスリップ率かを特定する必要がない場合、以下、単に「スリップ率S」と称呼される。スリップ率Sは、車両加速時では、((駆動時車輪速度−車体速度)/駆動時車輪速度)×100(%)で表され、車両制動時では、((車体速度−車輪速度)/車体速度)×100(%)で表される。モータECU40は、各車輪10のスリップ率Sを演算すると、ステップS12に進む。
ステップS12においては、モータECU40は、前記ステップS11にて演算したスリップ率Sfl、Sfr、Srl及びSrrを比較し、スリップ率Sfl、Sfr、Srl及びSrrのうち、その大きさが最大値となるスリップ率Sを特定する。尚、以下、最大値を有するスリップ率Sを「最大スリップ率S」と称呼する。続いて、モータECU40は、最大スリップ率S(即ち最大スリップ率Sとなっている車輪10)に基づき、対角接地荷重差を変更する際の制御内容を表す制御モードA又は制御モードBを決定する。図6に示したように、制御モードAは、左前輪10fl及び右後輪10rrの接地荷重和を増加させるとともに右前輪10fr及び左後輪10rlの接地荷重和を減少させる制御モードである。制御モードBは、右前輪10fr及び左後輪10rlの接地荷重和を増加させるとともに左前輪10fl及び右後輪10rrの接地荷重和を減少させる制御モードである。
制御モードAでは、モータECU40は、左前輪10fl及び右後輪10rrにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx1及びFx4が駆動力となるように決定してモータ20fl、20rrを制御する。一方、制御モードAでは、モータECU40は、右前輪10fr及び左後輪10rlにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx2及びFx3が制動力となるようにモータ20fr、20rlを制御する。
制御モードBでは、モータECU40は、右前輪10fr及び左後輪10rlにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx2及びFx3が駆動力となるようにモータ20fr、20rlを制御する。一方、制御モードBでは、モータECU40は、左前輪10fl及び右後輪10rrにて発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx1及びFx4が制動力となるようにモータ20fl、20rrを制御する。
加えて、前記ステップS11にて演算されたスリップ率Sの値が同一の値になり、最大スリップ率Sが複数存在している場合には、モータECU40は、何れの対角輪についても接地荷重和を増加させることなく、後述するステップS15にて演算される目標対角接地荷重差Fwを「0」として変更させない。この場合には、モータECU40は、制御モードCを決定する。制御モードCでは、モータECU40は、各車輪10に接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4に一致する制駆動力を発生させない。このように、モータECU40は、制御モードA、B及びCのうちの何れか一つを決定すると、ステップS13に進む。
ステップS13においては、モータECU40は、前記ステップS12にて制御モードA、B及びCから決定した制御モードに応じた符号Kを決定する。目標対角接地荷重差Fwは、前記式13からも明らかなように、左前輪10fl及び右後輪10rrからなる一方の対角輪の接地荷重和と、左前輪10fl及び右後輪10rrからなる他方の対角輪の接地荷重和と、の差として表される。この場合、制御モードAでは、一方の対角輪の接地荷重和を増加させるとともに他方の対角輪の接地荷重和を減少させるので、目標対角接地荷重差Fwは正の値となる。これに対して、制御モードBでは、一方の対角輪の接地荷重和を減少させるとともに他方の対角輪の接地荷重和を増加させるので、目標対角接地荷重差Fwは負の値となる。
このように、制御モードA又は制御モードBに応じて変化する目標対角接地荷重差Fwの符号に対応するために、モータECU40は符号Kを決定する。具体的に、モータECU40は、前記ステップS12にて制御モードAに決定した場合には、後述するステップS15にて演算される目標対角接地荷重差Fwが正の値となるように符号Kの値を「+1」に決定する。一方、モータECU40は、前記ステップS12にて制御モードBに決定した場合には、目標対角接地荷重差Fwが負の値となるように符号Kの値を「−1」に決定する。更に、前述したように、制御モードCでは、目標対角接地荷重差Fwが「0」とされる。このため、モータECU40は、前記ステップS12にて制御モードCに決定した場合には、目標対角接地荷重差Fwが「0」となるように符号Kの値を「0」に決定する。このように、符号Kを決定すると、モータECU40はステップS14に進む。
ステップS14においては、モータECU40は、前記ステップS11にて演算したスリップ率のうちの最大スリップ率Sと、図7に示したスリップ率Sと対角接地荷重差Fw’との間の関係を表すマップとに基づいて、最大スリップ率Sに対応する対角接地荷重差Fw’を決定する。尚、図7に示したマップでは、最大スリップ率Sが大きいほど対角接地荷重差Fw’が大きくなる関係を示している。このため、この関係を満たすものであれば、マップを用いることに代えて最大スリップ率Sと対角接地荷重差Fw’との間に成立する関数を用いて、最大スリップ率Sに対応する対角接地荷重差Fw’を決定することも可能である。モータECU40は、最大スリップ率Sに対応する対角接地荷重差Fw’を決定すると、ステップS15に進む。
ステップS15においては、モータECU40は、目標対角接地荷重差Fwを演算する。具体的に、モータECU40は、前記ステップS13にて決定した符号Kと、前記ステップS14にて決定した対角接地荷重差Fw’と、を乗算し、符号も加味した目標対角接地荷重差Fwを演算する。モータECU40は、目標対角接地荷重差Fwを演算すると、ステップS16に進む。
ステップS16においては、モータECU40は、前記ステップS15にて演算した目標対角接地荷重差Fwを実現する接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4を演算する。この場合、モータECU40は、目標対角接地荷重差Fwを実現する一方で、車両1に無用な車速の変化及び進行方向の変化を防止し、且つ、車体Boの振動の発生を防止するように接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4を演算する。以下、具体的に説明する。
モータECU40は、前記ステップS15にて演算した目標対角接地荷重差Fwを前記式14に代入する。加えて、モータECU40は、接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4に一致する制駆動力を各車輪10にて発生させた場合に車両1に無用な車速の変化(加減速)が発生しないように、下記式15に従ってトータルの接地荷重差変更目標制駆動力Fxを「0」とする。具体的に例示すると、モータECU40は、制御モードAに決定した場合、駆動力として発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx1及びFx4の合計と、制動力として発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx2及びFx3の合計と、の和を「0」とする。を同一の大きさとなるようにする。これにより、車両1の前後方向の力は変化しない。加えて、モータECU40は、接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4に一致する制駆動力を各車輪10にて発生させた場合に車両1の進行方向が無用に変化しないように、下記式16に従って目標ヨーモーメントMzを「0」とする。これにより、駆動力として発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx1及びFx4と、制動力として発生させる接地荷重差変更目標制駆動力Fx2及びFx3の合計と、を同一の大きさにする。更に、モータECU40は、接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4に一致する制駆動力を各車輪10にて発生させた場合に車体Boに生じたピッチ振動を減衰させるように、下記式17に従って目標ピッチモーメントMyを設定する。
Figure 2016107778
Figure 2016107778
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モータECU40は、前記式14、15、16及び17からなる連立方程式を解くことにより、目標対角接地荷重差Fwを実現し、且つ、車両1の走行状態に影響を与えない接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4を演算する。
モータECU40は、接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4を演算すると、ステップS17に進み、対角接地荷重差変更制御プログラムの実行を一旦終了する。モータECU40は、所定の短い時間の経過後、再び、ステップS10にて同プログラムの実行を開始する。
モータECU40は、接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4を演算すると、図示しないルーチンにより、接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4に各車輪10毎に予め定められるトルク変換比(比例定数)をそれぞれ乗じる。これにより、接地荷重差変更目標制駆動力Fx1、Fx2、Fx3及びFx4を接地荷重差変更目標トルクTx1、Tx2、Tx3及びTx4に変換する。モータECU40は、接地荷重差変更目標トルクTx1、Tx2、Tx3及びTx4を発生するように(接地荷重差変更目標トルクTx1、Tx2、Tx3及びTx4に対応する目標電流がモータ20に流れるように)モータドライバ25を制御する。
更に、モータECU40は、目標走行力Ftotalが発生するように、前輪10fに目標各輪制駆動力Fdfを発生させ、後輪10rに目標各輪制駆動力Fdrを発生させる。加えて、モータECU40は、姿勢制御用目標制駆動力Fcが発生するように、前輪10fに姿勢制御用目標制駆動力Fcfを発生させ、後輪10rに姿勢制御用目標制駆動力Fcrを発生させる。この結果、モータECU40は、目標走行力Ftotalを作用させながら、車体Boの姿勢変化(例えば、ピッチ挙動等)も制御することができる。
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、スリップ率Sの大きさに基づいて接地荷重を大きくする必要のある車輪(例えば、左前輪10fl)を的確に特定し、この車輪を含む一方の対角輪の接地荷重の合計が他方の対角輪の接地荷重の合計よりも確実に大きくなるように対角接地荷重差Fwを変更することができる。その結果、スリップ率Sが大きくスリップ状態にある車輪(例えば、左前輪10fl)をスリップ状態から確実に復帰させることができる。或いは、スリップ率Sが大きくなってスリップ状態に陥る可能性の高い車輪(例えば、左前輪10fl)がスリップ状態に陥ることを防止することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変更例を採用することができる。
例えば、上記実施形態においては、モータECU40が図5に示した対角接地荷重差変更制御プログラムを実行し、図7に示したように、対角接地荷重差Fw’が原点を通り、且つ、対角接地荷重差Fw’が最大スリップ率Sの増加に対して一次関数的に増加するマップを参照した。この場合、図7のマップを参照することに代えて、図8に示したように、モータECU40が、対角接地荷重差Fw’が原点を通り、且つ、対角接地荷重差Fw’が最大スリップ率Sの増加に対して二次関数的に増加するマップを参照しても良い。このようなマップを参照して対角接地荷重差Fw’を決定した場合であっても、前述した実施形態と同様に、最大スリップ率Sに応じた対角接地荷重差Fw’を決定することができる。
又、前述したように、図7に示したマップは、対角接地荷重差Fw’が原点を通り、且つ、対角接地荷重差Fw’がスリップ率Sの増加に対して一次関数的に増加する。この場合、図9に示したように、最大スリップ率Sの値が所定のスリップ率S0の値未満であれば対角接地荷重差Fw’が「0」とされ、最大スリップ率Sの値が所定のスリップ率S0以上であれば対角接地荷重差Fw’が最大スリップ率Sの増加に対して一次関数的に増加するマップを参照してもよい。このマップを採用する場合、最大スリップ率Sが所定のスリップ率S0未満である場合には対角接地荷重差Fw’が「0」に維持されるので、最大スリップ率Sの大きさに対する対角接地荷重差Fw’の増加に不感帯を設けることができる。
更に、上記実施形態においては、前輪用制駆動力発生装置としてモータ20fを用い、後輪用制駆動力発生装置としてモータ20rを用いた。この場合、左右前輪10f及び左右後輪10rにおいてそれぞれ独立した制駆動力を発生させることができれば、モータ20以外を採用しても良い。具体的には、左右前輪10rに対して1つのモータが摩擦ブレーキ装置と協働して制駆動力を付与し、且つ、左右後輪10rに対して1つのモータが摩擦ブレーキ装置と協働して制駆動力を付与するようにしても良い。更には、モータ20以外に、電気的に作動して制駆動力を発生させることができる他のアクチュエータを用いても良い。
1…車両、10fl,10fr,10rl,10rr…車輪、20fl,20fr,20rl,20rr…モータ、25…モータドライバ、30fl,30fr,30rl,30rr…サスペンション装置、40…モータ制御用電子制御ユニット(モータECU)、50…操作状態検出装置、55…運動状態検出装置、60…バッテリ、Bo…車体

Claims (3)

  1. 車両の前輪用サスペンション装置により車体に支持された左右前輪のそれぞれに独立して制駆動力を発生させる前輪用制駆動力発生装置と、
    前記車両の後輪用サスペンション装置により前記車体に支持された左右後輪のそれぞれに独立して制駆動力を発生させる後輪用制駆動力発生装置と、を備えた車両に適用され、
    前記車両の走行のために要求される目標走行力に基づいて、前記前輪用制駆動力発生装置及び前記後輪用制駆動力発生装置がそれぞれ前記左右前輪及び前記左右後輪に発生すべき目標各輪制駆動力を決定し、
    前記前輪用制駆動力発生装置に前記左右前輪のそれぞれにて前記目標各輪制駆動力を発生させ、
    前記後輪用制駆動力発生装置に前記左右後輪のそれぞれにて前記目標各輪制駆動力を発生させる、
    制御部、を備えた車両の制御装置において、
    前記前輪用サスペンション装置は前記前輪用制駆動力発生装置が前記左右前輪にて前記目標各輪制駆動力に加えて生じさせる制駆動力により前記左右前輪の前記路面に対する接地荷重を増減させ、前記後輪用サスペンション装置は前記後輪用制駆動力発生装置が前記左右後輪にて前記目標各輪制駆動力に加えて生じさせる制駆動力により前記左右後輪の前記路面に対する接地荷重を増減させるものであり、
    前記制御部は、
    前記車両の左右前後輪における一対の対角輪のうちの一方の対角輪の接地荷重の和である接地荷重和から前記一対の対角輪のうちの他方の対角輪の接地荷重の和である接地荷重和を減じた対角接地荷重差を変更する場合、
    前記一方の対角輪のそれぞれの車輪にて前記目標各輪制駆動力に加えて同一の大きさ且つ同一の作用方向となる制駆動力を発生させるとともに前記他方の対角輪のそれぞれの車輪にて前記目標各輪制駆動力に加えて同一の大きさ且つ同一の作用方向となる制駆動力を発生させ、且つ、前記一方の対角輪のそれぞれの車輪にて発生させる制駆動力の合計と、前記他方の対角輪のそれぞれの車輪にて発生させる制駆動力の合計と、の和がゼロとなるように、前記前輪用制駆動力発生装置及び前記後輪用制駆動力発生装置を制御する、
    ように構成された、車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制御装置において、
    前記制御部は、
    走行している前記車両の前後左右輪のそれぞれに発生しているスリップ状態を表すスリップ率を取得し、
    前記取得したスリップ率が最大となる車輪を特定し、
    該車輪を含む前記一方の対角輪のそれぞれの車輪における接地荷重が大きくなるように前記前輪用制駆動力発生装置及び前記後輪用制駆動力発生装置にて前記一方の対角輪のそれぞれの車輪に前記目標各輪制駆動力に加えて駆動力を発生させ、且つ、前記取得したスリップ率が最大となる車輪を含まない前記他方の対角輪のそれぞれの車輪における接地荷重が小さくなるように前記前輪用制駆動力発生装置及び前記後輪用制駆動力発生装置にて前記他方の対角輪のそれぞれの車輪に前記目標各輪制駆動力に加えて制動力を発生させる、
    車両の制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置において、
    前記前輪用制駆動力発生装置は、
    前記左右前輪内に設けられて該左右前輪のそれぞれに独立して制駆動力を発生させるモータであり、
    前記後輪用制駆動力発生装置は、
    前記左右後輪内に設けられて該左右後輪のそれぞれに独立して制駆動力を発生させるモータであり、
    前記制御部は、
    前記モータが発生する回転トルクを制御して前記左右前輪及び前記左右後輪にてそれぞれ独立した制駆動力を発生させる、
    車両の制御装置。
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