JP2016107523A - プラスチックシートの製造方法およびそれにより得られるプラスチックシート並びにディスプレイ用プラスチック基板 - Google Patents

プラスチックシートの製造方法およびそれにより得られるプラスチックシート並びにディスプレイ用プラスチック基板 Download PDF

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法重 前田
Norishige Maeda
法重 前田
早川 誠一郎
Seiichiro Hayakawa
誠一郎 早川
久保田 哲哉
Tetsuya Kubota
哲哉 久保田
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Abstract

【課題】表面特性や品質に優れ、大面積化や量産性に優れるプラスチックシートの製造方法およびそれにより得られるプラスチックシート並びにディスプレイ用プラスチック基板を提供する。【解決手段】2枚の平板状型材(ガラス板1A,1B)とスペーサ(バンク4)とからなる成形型(10)を用いて、縁部に形成された材料注入用の開口から、硬化性組成物からなる成形材料(M)を注入して硬化させるプラスチックシートの製造方法であって、成形型の成形空間に成形材料を注入する注型工程が、下記(1)の工程を含むことを特徴とするプラスチックシートの製造方法。(1)成形型の開口から液状物送出用のノズル(2A)を成形空間に差し入れ、成形型の縁部から離れた成形空間の中央部に、成形材料(M)を注入する工程。【選択図】図3

Description

本発明は、硬化性組成物を硬化して得られるプラスチックシートの製造方法およびプラ
スチックシートに関し、特に、光学特性,熱機械特性等に優れた大面積のディスプレイ用
プラスチック基板を得ることができるプラスチックシートの製造方法に関するものである
従来、ディスプレイ用の基板としては、ガラスを基板とするものが多く使われてきた。
例えば、カバーウィンドウ,タッチパネル,液晶ディスプレイおよび有機エレクトロルミ
ネッセンス(EL)ディスプレイでは、厚さ0.5〜1mm程度のガラス基板が汎用され
ている。
近年、軽量薄型化や安全性向上の観点から、プラスチック製の基板も使用され始めてき
ており、カバーウィンドウ(保護板)に、ポリメチルメタクリレート(以下PMMA)や
ポリカーボネートの基板が使用されている。また、タッチパネルに用いられる、透明電極
付き基板として、ITOが積層されたポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム
等が汎用されている。このようなプラスチック基板には、光線透過率や複屈折(光学歪)
などの光学性能はもとより、耐熱性や線膨張係数などの熱特性,耐衝撃性,表面硬度,曲
げ弾性率などの機械的特性と、吸水率,比重,耐薬品性,耐溶剤性などの物性および無機
膜の密着性などの高度な加工適性が要求される。
これらの諸特性を満足するために、熱可塑性あるいは光/熱硬化性を問わず数多くの樹
脂が提案されているが、ガラス代替用途に用いるには、性能や品質がまだまだ不十分であ
る。特に、ガラス基板に比べて、表面硬度など性能に優れる樹脂を開発しても、製法の不
適切さから、樹脂製代替品は、うねりなどの表面平坦性や、傷などの表面平滑性は、大き
く劣っているのが現状である。これら樹脂製代替品(上記プラスチック基板)の表面特性
は、樹脂自体よりも製法(成形法)に依存するところが大きく、樹脂本来の性能を発揮す
るためにも、製造方法の改良が重要である。
かかるプラスチック基板における性能や品質の改良のために、近年の提案の中には、特
定の光硬化性組成物を光硬化して得られる成形体も見受けられる。例えば、2官能の(メ
タ)アクリレートと分子内に2個以上のチオール基を有するメルカプト化合物とを含有す
る重合性組成物は、複屈折が小さい樹脂成形体を与えることが開示されている(例えば、
特許文献1参照。)。
また、3官能以上の脂肪族(メタ)アクリレート化合物を75wt%以上含有する重合
性組成物は、耐熱性が高く、複屈折が小さい樹脂成形体を与えることが開示されている(
例えば、特許文献2参照。)。また、2官能の脂肪族(メタ)アクリレート化合物と3官
能以上の(メタ)アクリレート化合物とを含有する重合性組成物は、耐熱性が高く、線膨
張係数が小さい樹脂成形体を与えることが開示されている(例えば、特許文献3参照。)
また、特許文献4には、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートと脂環
構造を有する多官能(メタ)アクリレートよりなる光重合性組成物が、鉛筆硬度の高い樹
脂成形体を与えることが開示されており、特許文献5には、脂環構造を有する単官能(メ
タ)アクリレート、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートおよび脂環構
造を有する多官能(メタ)アクリレートよりなる光重合性組成物が、光学特性や熱機械特
性に優れる樹脂成形体を与えることが開示されている。
さらに、特許文献6には、特定の脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物、特定
の脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物、および、脂環骨格を有する分子量200
〜2000の多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物よりなる光重合性組成物が、
光学特性や熱機械特性に優れる樹脂成形体を与えることが開示されている。
かかる光硬化性組成物を硬化して得られるプラスチックシート(基板)は、確かに、光
学特性、熱機械特性、加工適性などに優れる。一方、前述した通り、樹脂本来の性能を発
揮するためには、適切な製造方法が必要である。光硬化樹脂の場合は、一般的に、光硬化
性組成物を成形型内に注入して光硬化を行う注型成形、もしくは、光硬化性組成物を支持
フィルム上またはフィルム間に塗布し、光硬化を行う連続成形で行われる。
注型成形としては、例えば、2段階の光硬化により表面欠陥を低減する製造方法(特許
文献7)、硬化性シーリング材を用いて硬化収縮に伴う剥離跡を低減する製造方法(特許
文献8)等が開示されており、連続成形としては、例えば、支持フィルムを用いた製造法
(特許文献9,10)、ドラム型ロールを用いた製造方法(特許文献6)等が開示されて
いる。
図14に、成形型を用いた従来のプラスチックシートの製造方法(注型成形)の概略を
示す。この製造方法は、図面上、左上を始点として右回り(時計回り)に循環するもので
、下記の工程順に行われるようになっている。
(A)平板状型材(ガラス板)を準備する工程、
(B)ガラス板上にスペーサを配置して成形型を準備する工程、
(C)成形型を垂直に起立させて成形空間に成形材料を注入する注型工程、
(D)紫外線(UV光)を照射して成形材料(樹脂)を硬化させる照射工程
(E)2枚のガラス板を引き離しプラスチックシート(製品)を露出させる脱型工程、
(F)ガラス板からプラスチックシート(製品)を剥離する製品剥離工程、
(A’)使用済みの平板状型材(ガラス板)を洗浄して再度準備する工程。
また、上記(F)製品剥離工程で得られたプラスチックシートは、
(G)所定形状にカット(打ち抜き等)した後、刻印,洗浄する工程、
(H)熱処理による養生(アニリング)工程、
(I)製品検査工程、
を経てプラスチックシート製品として完成する。なお、上記のような多様な工程を経るバ
ッチ式の光成形過程は、通常、自動化(機械化)するのが困難で、部分的に補助的な機械
を用いている例はあるものの、その作業のほとんどを人手に頼っているのが現状である。
特開平9−152510号公報 特開2002−302517号公報 特開2003−292545号公報 特開2006−193596号公報 特開2007−204736号公報 特開2007−056180号公報 特開平10−058465号公報 特開2002−361656号公報 特開2002−012682号公報 特開2007−290364号公報
ところで、先に述べたような先行技術をもってしても、表面特性や品質に優れるプラス
チックシートを製造するのは困難であり、さらに、これらの先行技術は、大面積化や量産
性を考慮すると問題がある。
すなわち、特許文献1〜6に開示の製造方法では、光硬化性組成物を成形型に注入して
光硬化する注型成形の手法が取られているが、注型に際して多大な時間を要するため、生
産性に優れるとは言いがたい。特に、特許文献6では、光硬化性組成物をロール型ドラム
上に流延して光硬化する記載もあるが、この製造方法では、得られるプラスチックシート
は、ロール形状を反映して反ってしまうという問題がある。
特許文献7および8においても、注型に際して多大な時間を要するため生産性に優れる
とは言いがたい。また、特許文献9および10では、支持フィルムとして柔らかいプラス
チックフィルムを用いるため、光硬化に際してうねりが生じたり、表面平滑性や厚み精度
に劣るという問題がある。
これらの特許文献の技術を俯瞰すると、支持フィルムやドラムを用いた連続式の光成形
は、大面積化や量産性に優れるが、表面特性や品質に劣る傾向にある。一方、ガラス型を
成形型として用いたバッチ式の注型成形(図14参照)は、表面特性や品質に優れるが、
注型に多大な時間を要するために量産性に劣る。これは、従来の注型成形が、成形型を垂
直に立てて、上部の材料注入口(スペーサの切れ目である開口)より注入し(図14のC
工程)、型内下部に液溜まりを作った後、プレスする方法をとっていたからである。さら
に、従来の注型成形は、製造時における異物や気泡等の混入のおそれがあり、プラスチッ
クシートの品質を、より低下させる原因ともなっていた。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、表面特性や品質に優れ、大面積化や
量産性に優れるプラスチックシートの製造方法およびそれにより得られるプラスチックシ
ート並びにディスプレイ用プラスチック基板の提供をその目的とする。
しかるに、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、成形型の縁部
に設けられた開口(材料注入口)から、硬化性組成物からなる成形材料を注入・充填して
硬化させるプラスチックシートの注型成形において、注型工程が、下記工程(1)を含む
構成、好ましくは下記(1)及び(2)の2つの工程を含む構成とすることによって、上
記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、所定の間隙を空けて対向する2枚の平板状型材と、これらの型材
の間の成形空間を縁部で液封するスペーサとからなる成形型に、その縁部の所定位置に配
設された開口から、硬化性組成物からなる成形材料を注入して硬化させるプラスチックシ
ートの製造方法であって、成形型の成形空間に成形材料を注入する注型工程が、下記(1
)の工程を含むプラスチックシートの製造方法を、第1の要旨とする。
(1)成形型の開口から液状物送出用のノズルを成形空間に差し入れ、成形型の縁部から
離れた成形空間の中央部に、成形材料を注入する工程。
さらに、本発明のプラスチックシートの製造方法は、上記第1の要旨の製造方法の中で
も、注型工程が下記(2)の工程を含む構成を、好適に採用する。
(2)前記成形空間中央部へ成形材料を送出する第1のノズルとは異なる、複数の第2の
ノズルを用いて、中央部から離れた成形空間の縁部寄りの少なくとも2箇所の位置に、成
形材料を注入する工程。
なお、上記第1の要旨の製造方法の中でも、成形材料が、ノズルを経由して、2枚の平
板状型材の対向面間に広がる円形状または楕円形状に注入される構成を、好適に採用する
ことができる。
また、上記第1の要旨の製造方法の中でも、特に、注型工程の後に、下記工程(3)を
行うことが望ましい。
(3)注入された成形材料を、プレスの押圧により平板状型材の縁部にまで広げ、成形空
間全体に充填するプレス工程。
なお、上記(3)のプレス工程を備える第1の要旨の製造方法の場合、このプレス工程
(3)は、成形型の2枚の平板状型材の間で、かつ、スペーサより外縁側の位置に、プレ
ス圧に耐え得る板状のシムを挟み込んだ状態で行うことができる。
さらに、本発明の第1の要旨の製造方法においては、成形材料が光硬化性組成物からな
り、2枚の平板状型材が光線を透過する透明板である構成、または、成形型のスペーサが
、光硬化性組成物を光硬化させた堰状のバンクで形成されている構成を、好適に採用する
ことができる。
また、バンクを構成する光硬化性組成物と、プラスチックシートの成形材料を構成する
光硬化性組成物とが同一である構成を、採用してもよい。
ついで、本発明は、上記プラスチックシートの製造方法により得られるプラスチックシ
ートを、第2の要旨とする。
そして、本発明は、上記プラスチックシートの製造方法により得られたプラスチックシ
ートを用いたディスプレイ用プラスチック基板を、第3の要旨とする。
すなわち、本発明の要旨は、硬化性組成物を注型成形するに際し、成形型を略水平また
は水平に近い傾斜角に載置して、上記硬化性組成物が成形空間の中央部から周囲に向かっ
て均等に広がるように注入することにより、樹脂本来の性能と表面特性や品質等を維持し
ながら注型時間を短縮し、大面積化や量産性を向上させるものである。
本発明のプラスチックシートの製造方法によれば、製造時における異物や気泡等の混入
のおそれが少なく、表面特性(うねりなどの表面平坦性や、傷などの表面平滑性)および
品質(光学性能,熱特性,耐衝撃性,機械的特性,耐薬品性、加工適性等)に優れるプラ
スチックシートを得ることができる。また、品質に優れる大面積のプラスチックシートを
、製造することが可能になる。
しかも、本発明のプラスチックシートの製造方法は、成形材料の注型(充填)時に、こ
の成形材料が成形空間内で素早く広がって展開するため、注型にかかる時間が大幅に短縮
される。したがって、本発明によれば、上記品質に優れるプラスチックシートを短時間で
数多く作製することが可能となり、もって、その量産性が向上する。また、本発明によれ
ば、成形型を用いたプラスチックシートのバッチ式注型成形法を、シートの高品質を維持
したまま、製造工程(注型工程)を自動化することも可能になる。
また、かかる製造方法で成形されるプラスチックシートは、光学特性,熱機械特性,加
工適性,表面特性および品質に優れ、大面積化や量産性に優れるものとなる。そして、こ
のプラスチックシートは、ディスプレイ用プラスチック基板として好適である。
本発明のプラスチックシートの製造方法に用いる成形型の構成を説明する図である。 成形型を組み立てた状態と、成形型の水平面に対する傾斜角を説明する図である。 第1実施形態における、成形型に成形材料の注入を開始した状態を示す図である。 第1実施形態において、成形型内に注入完了した成形材料の平面形状を示す図である。 第1実施形態の変形例において、成形型に成形材料の注入を開始した状態を示す図である。 第1実施形態の変形例における、成形型内に注入された成形材料の流れを模式的に示す図である。 第2実施形態における、成形型に成形材料の注入を開始した状態を示す図である。 第2実施形態において、成形型内に注入された成形材料の流れを模式的に示す図である。 第3実施形態における、成形型に成形材料の注入を開始した状態を示す図である。 第3実施形態における、成形型に成形材料を注入する途中の段階の状態を示す図である。 第3実施形態において、成形型内に注入された成形材料の流れを模式的に示す図である。 本発明の実施形態において、プレスされた成形型内の成形材料の動きを模式的に表した図である。 成形型をプレスする工程を説明する図である。 従来のバッチ式のプラスチックシートの製造方法を説明する図である。
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は
、この実施の形態に限定されるものではない。
以下に説明する本発明の第1〜第3実施形態におけるプラスチックシートの製造方法も
、基本的な製造過程は、従来例(図14)に沿うものであり、成形型に注入・充填した硬
化性組成物を、硬化させ、これを脱型することにより、均一厚みのプラスチックシートを
得るものである。第1実施形態(図3,4)は、1本の液状物送出用注入ノズル2A(先
端に吐出用の開口を有する太径のメインパイプ)を用いて、成形材料を、成形空間の中央
部付近にのみ注入する例を示し、第2実施形態(図7,8)は、1本の液状物送出用注入
ノズル2Aと、2本の液状物送出用注入ノズル2B,2C(先端に吐出用の開口を有する
細径のサブパイプ)を用いて、成形材料を、成形空間の中央部付近の1箇所と、四角形の
成形型(10)の上縁角部付近の2箇所(二隅)に、同時に注入する例を示す。また、第
3実施形態(図9〜11)は、1本の注入ノズル2Aと、2本の注入ノズル2B,2Cを
用いて、成形材料を、成形空間の中央部付近の1箇所と、四角形の成形型(10)の各角
部(四隅)に注入する例である。
なお、以下、本発明において言う「水平」とは、鉛直方向に直交する平面(水平面)と
の間の角度が0°である状態(すなわち、水平面に沿った平行状態)を表し、「水平状態
」とは、水平に近い(水平面に対する角度が±1°未満の)状態も含めることとする。ま
た、以下の実施の形態では、従来例とは過程が異なる「注型工程」を中心に説明する。
まず、第1実施形態のプラスチックシートの製造方法は、成形型の成形空間に成形材料
を充填する注型工程が、(1)成形型の開口から液状物送出用のノズルを成形空間に差し
入れ、成形型の縁部から離れた成形空間の中央部に、成形材料を注入する工程を含んでい
る。これが、本実施形態のプラスチックシートの製造方法の特徴である。
上記プラスチックシートの製造方法(注型工程)について、具体的に説明すると、この
方法は、まず、図1に示す成形型10(各実施形態で共通)を用意する。成形型10は、
所定の間隙を空けて対向する2枚の平板状型材(ガラス板1A,1B)と、これらの型材
の間に形成される成形空間(キャビティ)を縁部で液封するスペーサ(バンク4)と、材
料注入用の開口(注入ノズル2A,2B,2C)寄りのガラス板1Aと1Bとの間(成形
型上部の間隙)を、隙間が空いた状態に保つための第1シム3,3とから構成されている
。なお、注入ノズル2A,2B,2Cは、実施形態によって利用方法(操作方法)が異な
り、第1実施形態のように、注入ノズル2B,2Cを利用しない場合もある(図3,図4
参照)。
第1実施形態の注型工程は、まず、図2のように、成形型10を組み立てる。成形型1
0を構成するガラス板1A,1Bの液封側(水平より下側)となる一辺を密着させ、ガラ
ス板1A,1Bの対向面間に配設されたバンク4により、成形空間の一方を液封状態にす
る。また、反対の他辺側は、第1シム3,3(図示省略)を挟み込んでガラス板1A,1
Bを接近させ、注入ノズルを差し込む隙間(材料注入用の開口)を空けた状態とし、成形
型10が作製される(この作業は各実施形態で共通)。
つぎに、組み立てた成形型10を、材料注入用開口(注入ノズル2A:図示省略)側が
水平より上を向く方向に、水平面に対する(正)傾斜角αが1°以上の所定角度になるま
で傾けて準備する(この操作も各実施形態で共通)。なお、注入ノズル2A側が水平より
上を向く方向に傾けるに際しては、水平状態から注入ノズル2A側を持ち上げてもよいし
、注入ノズル2A側の反対側を押し下げてもよい。
ついで、図3のように、上記材料注入用開口(傾斜の上側)から、注入ノズル2Aを成
形空間内の所定位置まで挿入し、上記のように成形型10をα°(本例では3°)傾斜さ
せた状態で、この注入ノズル2Aを経由して、成形空間の中に、予め用意した液状の成形
材料Mを吐出する。このように、成形型10を、1゜以上傾斜させて注入することにより
、気泡の混入なく、成形材料Mを、成形型10内の中央部に速やかに到達させることがで
きる。また、さらに速やかに到達させるため、加圧注入したり、成形材料Mを加温して低
粘度化したり、成形型10を加温して流動性を高めたりすることも可能である。
成形型10の水平面に対する傾斜角(正傾斜角)αは、成形材料の粘度や表面張力、ガ
ラス板表面の接触角、および/または、注入量やスペーサ厚にも依るが、好ましくは注入
時間短縮の観点から、1〜80°、より好ましくは、注型時間短縮の点から2〜50°、
特に好ましくは3〜20°である。傾斜角αが小さすぎると、成形材料が成形型10内を
流れ落ちる時間が長くなる傾向にある。傾斜角αが大きすぎると、成形材料が成形型10
内を流れ落ちる時間が短くなるものの、気泡などが入り込むおそれがある。また、成形空
間の中央部に、成形材料を注入することが困難となる。
ついで、所定量の成形材料Mの注入が終わると、図4のように、注入ノズル2Aおよび
第1シム3,3を退避させ、成形型10全体(下側のガラス板1B)を、平均角速度1゜
〜10゜/秒(この例では1゜/秒)で水平状態に戻し、隙間の空いていた、一方のガラ
ス板1A(上側)の開口側を他方のガラス板1B(下側)に近づけ、ガラス板どうしが平
行な状態とする。この状態において、成形型10の成形空間は、空気抜き用の小開口4a
,4a部位を除き、その縁部全体がバンク4により液封された状態で、その内部に注入さ
れた成形材料Mは、平面視ほぼ円形状(または楕円状)になっている。
なお、本実施形態の変形例である図5に示すように、注入ノズル2Aを、上記材料注入
用開口(傾斜の上側)から、成形空間内の中央部付近まで奥深く挿入し、この中央部付近
に、液状の成形材料Mを直接供給(注入)するようにしてもよい。この変形例においても
、注入ノズル2Aおよび第1シム3,3を退避させ、成形型10全体を水平状態に戻し、
ガラス板1A(上側)とガラス板1B(下側)とをバンク4を介して密着(液封)させた
状態では、先の例と同様、その内部に注入された成形材料Mは、図6のように、平面視ほ
ぼ円形状(または楕円状)になっている。
上記注型工程においては、図4のように成形型10を水平にした状態で、例えば、作業
員の目視等により、液状の成形材料Mの上下左右方向への広がり具合と、異物や気泡等の
混入の有無とをチェックする確認工程を行ってもよい。
また、成形型10が水平状態に戻った後も、成形材料Mの材料注入用開口側(傾斜の上
側)への展開(流動)が不足しているようであれば、この成形型10を、一旦、元の材料
注入用開口側(空気抜き用の小開口4a側)が水平より下を向く方向に傾け、所定時間静
止させた後、成形型10を水平状態に復帰させる方法を用いてもよい。この場合、成形型
10の、水平面に対する傾斜角(負の傾斜角)が−1゜〜−45゜(例えば−3°)にな
った時点で、成形型10を所定時間静止させる。
さらに、一連の成形型10の動き(動作)は、仮想水平面上に設定された回動軸(ガラ
ス板の上側辺または下側辺に平行)を支点として、成形型(材料注入用開口)を鉛直方向
上下に揺動させる動作、であると言うこともできる。したがって、上記のような成形型1
0の傾斜操作(傾け動作)は、成形型10を上面(台上)に載置して一体に揺動する揺動
台(揺動装置)を用いれば、自動的にかつ連続で行うことができる。この場合、回動(揺
動)の支点(軸)は、成形型10の上部,下部あるいは中間部(上部と下部の間)のどこ
に設けてもよい。
つぎに、上記注型工程についで実施されるプレス工程について説明する。
本実施形態のプラスチックシートの製造方法においては、上記注型工程の後に、成形材
料Mが均一に充填され、所定の厚さになるように、ガラス板1A,1Bを押圧するプレス
工程を実施することが好ましい。
上記プレス工程について詳しく説明すると、注型工程の後に行われるプレス工程は、図
13に示すようなプレス機を用いて、成形型10をプレス機により水平方向上下から押圧
し、注入された成形材料Mを、成形型10全体に万遍なく均一に充填する工程である。こ
のプレス工程を実施する際は、その前に予め、成形型10の上下のガラス板1A,1Bの
間で、かつ、スペーサ(バンク4)より外縁側の位置に、プレス圧に耐えることのできる
板状(所定厚さ)のシム(第2シム5)を差し込んだ状態で行う。なお、この第2シム5
および前記バンク4には、加圧時の成形空間内の余分なエア抜きを行う、空気抜き用の小
開口4a,4aが設けられている。
また、プレスの手法は、上記方法に特に限定されないが、一般的なプレス機を用いて、
水平状態でなされることが好ましい。かかる場合のプレス圧は、ガラス板の変形回避の点
で100MPa以下が好ましく、より好ましくは、厚み精度の点で0.01〜10MPa
、特に好ましくは、充填状態の制御の点で0.05〜5MPaである。プレス時間は、生
産性の点で10分以下が好ましく、より好ましくは、厚み精度の点で10秒〜10分、特
に好ましくは、充填状態の制御の点で1分〜5分である。プレス時の温度は、液漏れ回避
の点から、100℃以下が好ましく、より好ましくは、充填速度の点で70℃以下、特に
好ましくは、光学歪の原因となる液体流を回避するため50℃以下である。なお、プレス
時の温度は、通常0℃以上、好ましくは室温以上であることが好ましい。
ガラス板へのプレスは、板全面に一様である必要はなく、部分的にプレスしてもよいし
、経時的にプレス位置を変えてもよい。例えば、型内に液を一様に充填できる点で、中央
部にプレスする方法や、成形型のある一辺からその対向する一辺に向けて、例えば下部の
一辺から上部の一辺に向けて、経時的にプレスしていく方法などがある。
ガラス板の間のスペーサとして、上述したバンク4を使用する場合は、かかるプレス工
程において、所定の厚さのシム〔上記プレス圧に耐えることのできる板状のシム(第2シ
ム5)〕を、ガラス板1Aとガラス板1Bとの間に差し込んで空隙を確保したうえで、プ
レスを行い、前記空気抜き用の小開口4a,4aから空気を押し出して成形型10内に成
形材料Mを充填し、充填後に、上記シム(第2シム5)を取り外す。かかる手法により、
ゲル状(硬化未完)のバンク4が潰れるのを、回避することができる。
なお、プレス後の成形型10は、厚み精度を向上する観点から、水平状態で静置するこ
とが好ましい。かかる手法により、プレスにより変形したガラス板が元通りの平坦性を取
り戻すことが可能となる。静置時間は、生産性の点から10分以内が好ましい。より好ま
しくは1秒〜7分、特に好ましくは2秒〜5分である。
つぎに、上記プレス後からプラスチックシート製品になるまで(図14におけるD工程
〜I工程)を簡単に説明すると、照射工程(D)は、例えば、光硬化性の組成物(成形材
料)が充填された成形型に、紫外線を照射光量1〜100J/cm2の範囲で光照射して
、光硬化させることが好ましい。照射光量は、使用する樹脂の種類にも依るが、好ましい
範囲は5〜70J/cm2、より好ましい範囲は10〜50J/cm2である。照射光量が
少なすぎると硬化が不十分となる傾向があり、多すぎると生産性が低下する傾向がある。
紫外線の照度は、通常10〜5000mW/cm2、好ましくは100〜1000mW/
cm2である。照度が小さすぎると内部硬化が不十分となる傾向があり、照度が大きすぎ
ると重合が暴走し、プラスチックシートの複屈折が増大する傾向がある。
紫外線源としては、例えば、メタルハライドランプ,高圧水銀灯ランプ,無電極水銀ラ
ンプ,LEDランプ等が挙げられる。光源から発生する赤外線により重合が暴走するのを
防ぐため、ランプに赤外線を遮断するフィルターや赤外線を反射しない鏡等を用いること
も可能である。紫外線の照射に際しては、複数回に分割して照射すると、複屈折がより小
さいプラスチックシートが得られるので好ましい。例えば、1回目に全照射量の1/10
0〜1/10程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射する方法が挙げられる。
続く脱型−製品剥離工程(E→F)は、硬化により得られたプラスチックシートを、ガ
ラス板から剥離する工程である。すなわち、上記成形材料Mの硬化(照射工程D)が終了
した成形型10から、片側のガラス板(例えば、ガラス板1A)を剥離して除去した後、
もう一方のガラス板(例えば、ガラス板1B)に付着したプラスチックシートを剥離する
。剥離の手段としては、脱型刃をガラス板とプラスチックシートの界面に差し込んで剥離
する手法、成形型全体に熱衝撃を加えてガラス板とプラスチックシートを剥がす手法、圧
縮エアーを吹き付けてガラス板とプラスチックシートを剥がす手法などが挙げられる。
かかるプラスチックシートの剥離を容易にするために、ガラス板の表面は剥離剤などの
手法で表面処理しておくことが好ましい。さらに、片側のガラス板のみを除去しやすくす
るため、片側のガラス板のみ剥離剤濃度を高めておくことも可能である。剥離剤としては
フッ素系のシランカップリング剤が、ガラス板表面に強固な剥離膜を形成する観点から好
ましい。
なお、脱型−剥離工程後に、硬化度向上や応力歪除去のために、プラスチックシートを
熱処理することも可能である。熱処理は、大気圧下,不活性ガス下,真空下のいずれでも
よく、温度は50℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上で
ある。なお、上限としては、通常300℃である。熱処理時間は、通常0.1〜100時
間、好ましくは1〜10時間である。
さらに、本実施形態の製造方法により得られたプラスチックシートは、CN加工やレー
ザー加工など公知の技術で所望サイズにカットしたり、洗浄することも可能である(図1
4−I工程)。
以上詳述した手法により、プラスチックシートが得られるが、かかるプラスチックシー
トの厚さは、用途により異なるが、0.05〜3mmであることが好ましい。厚さが薄す
ぎると、ディスプレイ用基板としての剛性が不足する傾向にあり、厚すぎるとディスプレ
イの軽量薄型化が困難となる傾向がある。厚さは、好ましくは0.1〜2mm、より好ま
しくは0.2〜1mmである。
また、本実施形態の製造方法により得られるプラスチックシートは、ガラス転移温度が
100℃以上であることが、耐熱性の点から好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、う
ねりが生じたり、色相が低下する傾向がある。ガラス転移温度の好ましい範囲は100〜
500℃、より好ましくは150〜400℃、さらに好ましくは200〜300℃である
。かかるガラス転移温度を上記範囲に調整するにあたっては、後記する成形材料Mの種類
や成分の含有量を、適宜コントロールする手法が挙げられる。例えば、多官能(メタ)ア
クリレートの官能基数を上げる等の手法が可能である。
さらに、本実施形態の製造方法により得られるプラスチックシートは、鉛筆硬度が3H
以上であることが、表面硬度の点から好ましい。鉛筆硬度は、より好ましくは3H〜10
H、特に好ましくは4H〜8Hである。かかる鉛筆硬度を上記範囲に調整するにあたって
は、上述と同様、後記する成形材料Mの種類や成分の含有量を、適宜コントロールする手
法が挙げられる。例えば、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A1)として3〜6官
能等のものを使用する等の手法が可能である。
そして、本実施形態の製造方法により得られるプラスチックシートの曲げ弾性率は、3
GPa以上であることが好ましい。曲げ弾性率が低すぎると剛性が低下する傾向にある。
曲げ弾性率は3〜5GPaであることがより好ましく、より好ましくは3.5〜4GPa
である。かかる曲げ弾性率を上記範囲に調整するにあたっては、上述と同様、後記する成
形材料Mの種類や成分の含有量を、適宜コントロールする手法が挙げられる。例えば、多
官能ウレタン(メタ)アクリレート(A1)として3〜6官能等のものを使用する等の手
法が可能である。
また、本実施形態の製造方法により得られるプラスチックシートは、通常、全光線透過
率が80%以上であることが好ましく、特には85%以上、さらには90%以上であるこ
とが好ましい。
本実施形態の製造方法により得られるプラスチックシートには、種々の用途に応じて、
粘着剤層,ハードコート層,印刷層,ガスバリア膜,透明導電膜等を形成してもよい。
つぎに、以上の工程に使用する部材や材料等について説明する。
本実施形態で使用される成形型10は、対向した2枚のガラス板(1A,1B)と、厚
さ制御のためのスペーサ(バンク4等)とで構成される。かかるガラス板は、成形型10
の強度の点から、厚さ1mm以上が好ましく、より好ましくは、プラスチックシートの表
面平坦性や表面平滑性の点から、成形材料Mが接するガラス表面が、光学的研磨(光沢研
磨)されていることが好ましい。さらに好ましくは、成形材料が接するガラス表面の平坦
性が20μm以下、特に好ましくは、表面平滑性Raが10nm以下である。ガラス板の
厚さが薄すぎると、成形材料が硬化する際に生じる収縮応力に耐えられず、ガラス板に割
れや反りが発生する傾向にある。ガラス板は、かかる強度の観点から化学強化されていて
もよい。さらに、先にも述べたようにプラスチックシートの脱型性を向上させるため、表
面を離型剤で処理してもよい。
成形型10の液封に用いるスペーサは、プラスチックシートの厚さを制御するものであ
るが、ゴム質やゲル状の材料であれば、目的とするプラスチックシートと同じ厚さにする
必要はなく、厚さが0.05〜10mmのものが好適である。材料としては、樹脂など公
知の材料が使用されるが、本実施形態においては、下記の2つの工程(4)と(5)とで
形成された、堰状のバンク4であることが好ましい。
(4)ガラス板1Bの外周部に、光硬化性組成物を高さ0.1〜10mm、幅0.1〜1
0mmで吐出する工程。
(5)吐出後、光(紫外線)照射して、光硬化性組成物をゲル化させる工程。
上記工程(5)においては、吐出後の光照射は、吐出後速やかに行うことが好ましい。
なお、プラスチックシートを構成する成形材料Mが、光硬化性組成物である場合、この
バンク4を構成する光硬化性組成物を、上記プラスチックシートを構成する成形材料と同
一とすることが望ましい。これにより、バンク4とプラスチックシートとが一体化し、よ
り大面積の成形体を得ることができる。
また、先にも説明したが、バンク4を用いる場合、ガラス板1Bの下部(注入ノズル2
Aと反対側寄りの下側)に形成されたバンク4とガラス板1Aの下部とを密着させ、ガラ
ス板1Aの上部(注入ノズル2A寄りの上側)は、バンク4と密着していない状態(図2
)で、成形材料の注型(図3参照)を行うことが好ましい。かかる手法により、成形型1
0内に注入ノズル2Aを差し込むのが容易になり、かつ、注入速度を向上させることがで
きる。さらに、注入ノズル2Aより注入する際に、該注入ノズル2Aをガラス板1A,1
Bの上部に設けて注入するのが好ましいが、例えば、該注入ノズル2Aをガラス板1A,
1Bの中腹(傾斜の中間部)に配設して注入し始め、注入が進むとともに、ガラス板1A
,1Bの上部に移動させながら注入することも可能である。
さらに、成形材料の注入が終了した時点で、注入ノズル2Aを型内から引き抜き、ガラ
ス板1Aが上部までバンク4と密着して、バンク4全体がガラス板1Bと密着する(図7
参照)ことが好ましい。かかる手法により、型内への液充填速度を向上することができる
つぎに、本発明のプラスチックシートを構成する成形材料Mについて、詳細に説明する
。成形材料Mは、硬化性組成物からなるものであり、これが硬化されプラスチックシート
となる。
本発明のプラスチックシートの製造方法は、光硬化性組成物を用いた場合に特に効果を
発揮するが、同様に、注型成形が一般的である熱硬化性組成物にも適用が可能である。
本発明において、光硬化性組成物と熱硬化性組成物を合わせて「硬化性組成物」と称す
る。重合開始剤が光重合開始剤である場合は「光硬化」、重合開始剤が熱重合開始剤であ
る場合は「熱硬化」とされるが、重合性官能基は共通であることが多い。また、両開始剤
を混合して光/熱併用硬化も可能であるし、光硬化の後の熱処理により熱硬化を進めるこ
とも可能である。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレート
の総称であり、「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの総称である。また、こ
こで言う「多官能」とは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することを意
味する。
本発明のプラスチックシートの製造方法で用いる硬化性組成物は、例えば、(メタ)ア
クリル系組成物,エポキシ系組成物,チオール・エン付加系等の光硬化性組成物,(メタ
)アクリル系組成物,エポキシ系組成物,アリル系組成物,スチレン系組成物,アミド系
組成物,イミド系組成物,ウレタン系組成物,チオウレタン系組成物等の熱硬化性組成物
などが挙げられる。好ましくは、注型性の点で、粘度が10〜10000mPa・s、よ
り好ましくは、速硬化の点で、光硬化性組成物、さらに好ましくは、プラスチックシート
の光学特性の点で、(メタ)アクリル系組成物、さらに好ましくは、プラスチックシート
の熱特性の点で、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A1)と光重合開始剤(A3)
よりなる(メタ)アクリル系組成物、特に好ましくは、プラスチックシートの機械特性の
点で、下記成分(A1),(A2)および(A3)を含有してなる(メタ)アクリル系組
成物である。
(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレート
(A2)脂環骨格含有多官能(メタ)アクリレート
(A3)光重合開始剤
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、多官能であるため、硬化により架橋
樹脂を形成し、表面硬度や耐熱性の高いプラスチックシートを得ることができる。また、
分子内にウレタン結合を有し、得られるプラスチックシートは水素結合により適度な靱性
を有するため、曲げ弾性率が高く、かつ高強度なプラスチックシートを得ることができる
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、ポリイソシアネート系化合物と水酸
基含有(メタ)アクリレートを反応させてなるものであり、ポリイソシアネートとしては
、例えば、芳香族系,脂肪族系,脂環式系等のポリイソシアネートが挙げられ、中でもト
リレンジイソシアネート,ジフェニルメタンジイソシアネート,水添化ジフェニルメタン
ジイソシアネート,ポリフェニルメタンポリイソシアネート,変性ジフェニルメタンジイ
ソシアネート,水添化キシリレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,ヘキ
サメチレンジイソシアネート,トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート,テトラメチ
ルキシリレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ノルボルネンジイソシア
ネート,1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン,フェニレンジイソシアネ
ート,リジンジイソシアネート,リジントリイソシアネート,ナフタレンジイソシアネー
ト等のポリイソシアネート、あるいは、これらポリイソシアネートの3量体化合物または
多量体化合物、ビューレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例え
ば、日本ポリウレタン工業社製の「アクアネート100」,「アクアネート110」,「
アクアネート200」,「アクアネート210」等)、または、これらポリイソシアネー
トとポリオールの反応生成物等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて
使用することができる。これらの中でも、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート,イ
ソホロンジイソシアネート,ノルボルネンジイソシアネート,1,3−ビス(イソシアナ
トメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ポリイソシアネートが、プラスチックシートの吸
水率を少なくできる点で好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(
メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシブ
チル(メタ)アクリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキ
シエチルアクリロイルホスフェート,2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロ
キシプロピルフタレート,2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メ
タ)アクリレート,カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,ペ
ンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)
アクリレート,カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート
,カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,エチレンオキサ
イド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート,エチレンオキサイド変性
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2
種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、アクリレートが速硬化性の
点から好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールト
リ(メタ)アクリレートなどの炭素鎖(水酸基と(メタ)アクリロイル間の炭素鎖)が比
較的短いものが、プラスチックシートの機械特性を向上できる点でより好ましい。
脂環骨格含有多官能(メタ)アクリレート(A2)は、多官能であるため、硬化により
架橋樹脂を形成し、表面硬度や耐熱性の高いプラスチックシートを得ることができる。ま
た、脂環骨格を有するためプラスチックシートの吸水率を低減することができる。
脂環骨格含有多官能(メタ)アクリレート(A2)としては、例えば、ビス(ヒドロキ
シ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート,ビス(ヒドロキ
シ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート,ビス(ヒド
ロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート,ビス
(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレ
ート,ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ
ン=ジ(メタ)アクリレート,ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.0
2,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート,ビス(ヒドロキシメチル)ペ
ンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジ(メタ)アクリレート
,ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデ
カン=アクリレートメタクリレート,2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオ
キシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン,1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシ
メチル)シクロヘキサン,1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)シクロヘ
キサン,1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン,1,4−
ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)シクロヘキサンなどの2官能(メタ)アクリ
レート,トリス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=トリ(メタ)ア
クリレート,トリス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=トリ
(メタ)アクリレート,トリス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7
.09,13]ペンタデカン=トリ(メタ)アクリレート,トリス(ヒドロキシメチル)ペン
タシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=トリ(メタ)アクリレート
,1,3,5−トリス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン,1,3,
5−トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)シクロヘキサンなどの3官能(メタ)
アクリレートが挙げられる。これらの中では、基板の耐熱性の観点から、2官能(メタ)
アクリレートが好ましく、中でもビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デ
カン=ジ(メタ)アクリレート,ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02
,6]デカン=ジ(メタ)アクリレートが好ましい。上記脂環骨格含有多官能(メタ)アク
リレートは2種以上を併用することもできるし、アクリレートとメタクリレートとを併用
することもできる。
本発明において、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の含有量は、成分(A
1)と成分(A2)の合計に対して、5〜50重量%であることが好ましく、特には8〜
40重量%、さらには10〜30重量%であることが好ましい。成分(A1)の含有量が
少なすぎるとプラスチックシートの表面硬度が低下する傾向にあり、逆に、多すぎるとプ
ラスチックシートの吸水率が増大する傾向にある。
また、脂環骨格含有多官能(メタ)アクリレート(A2)の含有量は、成分(A1)と
成分(A2)の合計に対して、50〜95重量%であることが好ましく、特には60〜9
2重量%、さらには70〜90重量%であることが好ましい。成分(A2)の含有量が少
なすぎるとプラスチックシートの吸水率が増大する傾向にあり、逆に、多すぎるとプラス
チックシートの強度が低下する傾向にある。
光重合開始剤(A3)としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、ベンゾフ
ェノン,ベンゾインメチルエーテル,ベンゾインプロピルエーテル,ジエトキシアセトフ
ェノン,1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン,2,6−ジメチルベンゾイルジ
フェニルホスフィンオキシド,2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィン
オキシド等が挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケト
ン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのラジカル開
裂型の光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤(A3)は単独で用いても、2種
以上を併用してもよい。
光重合開始剤(A3)の含有量は、成分(A1)と成分(A2)の合計100重量部に
対して、0.1〜5重量部、さらには0.2〜4重量部、特には0.3〜3重量部である
ことが好ましい。含有量が多すぎるとプラスチックシートのリタデーションが増大し、ま
た黄変が生じやすい傾向にあり、少なすぎると重合速度が低下し、重合が十分に進行しな
いおそれがある。
本発明で用いる光硬化性組成物は、プラスチックシートの光学特性や熱機械特性などを
阻害しない程度に、さらに少量の補助成分を含んでいてもよく、例えば、成分(A1)及
び(A2)以外のエチレン性不飽和結合を有する単量体,連鎖移動剤,酸化防止剤,紫外
線吸収剤,熱重合開始剤,重合禁止剤,消泡剤,レべリング剤,ブルーイング剤,染顔料
,フィラーなどが挙げられる。
なお、先にも述べたように、本発明のプラスチックシートを構成する成形材料Mが、光
硬化性組成物からなる場合、このバンク4を構成する光硬化性組成物を、上記プラスチッ
クシートを構成する光硬化性組成物と同一とすることが望ましい。バンク4用の材料を、
プラスチックシートを構成する光硬化性組成物の組成と同一にすることにより、バンク4
とプラスチックシートが一体化し、より大面積の成形体を得ることができる。
上記本発明の第1実施形態のプラスチックシートの製造方法によれば、製造時における
異物や気泡等の混入のおそれが少なく、表面特性および品質に優れる、高品質なプラスチ
ックシートを得ることができる。また、成形材料の注型にかかる時間が大幅に短縮され、
その生産性が大幅に向上する。
つぎに、本発明の第2実施形態および第3実施形態について説明する。
これら第2,第3実施形態は、成形空間の中央部に成形材料Mを供給する、第1実施形
態の液状物送出用注入ノズル2A(メインパイプ)に加え、成形空間の角部(隅部)に成
形材料Mを供給する、2本の注入ノズル2B,2C(サブパイプ)も使用する。なお、第
2,第3実施形態とも、注型工程以外の工程は第1実施形態と同様であるため、その詳細
な説明を省略する。
上記第2実施形態のプラスチックシートの製造方法における注型工程は、まず、第1実
施形態と同様、組み立てた成形型10(図2参照)を、材料注入用開口(注入ノズル2A
,2B,2C:図示省略)側が水平より上を向く方向に、水平面に対する(正)傾斜角α
が1°以上の所定角度になるまで傾けて準備する。
ついで、図7のように、水平に対して傾斜(本例では約3°)するように配設された成
形型10の材料注入用開口(傾斜の上側)から、注入ノズル2Aを成形空間内の所定位置
(中央部付近)まで挿入するとともに、残りの各注入ノズル2B,2Cを、材料注入用開
口(傾斜の上側)に近い、成形型10(ガラス板1A,1B)の角部の所定位置まで挿入
する。
そして、注入ノズル2Aを用いて、図7のように、成形空間の中央部付近に、液状の成
形材料Mを直接供給(注入)すると同時に、各注入ノズル2B,2Cから、成形型10の
傾斜上側の角部(二隅)に、上記と同じ液状の成形材料Mを吐出・供給する。このように
、成形材料Mを、成形空間内の複数箇所に、同時に供給することにより、成形材料Mを、
成形空間内に効率良く送給することができる。
なお、本願における「同時に供給」とは、各注入ノズルから成形材料を吐出している時
間が一部重複している状態であり、各注入ノズル2A,2B,2Cから供給を開始/停止
するタイミングは、ノズルの開口口径や吐出圧,吐出量等により異なる。また、成形材料
Mをより速やかに隅々まで到達させるため、加圧注入したり、成形材料Mを加温して低粘
度化したり、成形型10を加温して流動性を高めたりすることも可能である点も、上記第
1実施形態と同様である。
また、この場合、メインパイプ(注入ノズル2A)およびサブパイプ(注入ノズル2B
,2Cの合計)を通じて成形空間内に供給される成形材料Mの比率は、重量比で、通常メ
イン:サブ=40〜60:95〜5、好ましくはメイン:サブ=60〜40:90〜10
である。
ついで、注入ノズル2Aおよび注入ノズル2B,2Cともに、所定量の成形材料Mの注
入が終わると、図8のように、全ての注入ノズル2A,2B,2Cと第1シム3,3を退
避させ、成形型10全体(下側のガラス板1B)を、平均角速度1゜〜10゜/秒(この
例では1゜/秒)で水平状態に戻し、隙間の空いていた、一方のガラス板1A(上側)の
開口側を他方のガラス板1B(下側)に近づけ、ガラス板どうしが平行な状態にする。こ
の状態において、成形型10の成形空間は、空気抜き用の小開口4a,4a部位を除き、
その縁部全体がバンク4により液封された状態で、各注入ノズル2A,2B,2Cから成
形空間内に注入された成形材料M,M’は、それぞれが、平面視ほぼ円形状(または楕円
状)になっている。
つぎに、上記注型が完了した成形型10は、第1実施形態と同様のプレス工程を行い、
注入された成形材料Mを成形空間全体に行き渡らせる操作を行うのであるが、この第2実
施形態のプラスチックシートの製造方法では、上記プレスによっても成形材料Mが行き渡
りにくい、成形型10の注入側(傾斜上側)の2箇所の角部に、注入ノズル2B,2Cか
ら供給された成形材料M’,M’が予め配置されている。そのため、本実施形態の製造方
法は、上記プレス工程に先立ち、第1実施形態のように「成形型10を一旦、元の材料注
入用開口側(空気抜き用の小開口4a側)が水平より下を向く方向に傾け、所定時間静止
させた後、成形型10を水平状態に復帰させる」等の対策をとる必要がない。
したがって、第2実施形態のプラスチックシートの製造方法は、上記複数の注入ノズル
使用による成形材料注入時間の短縮効果と相俟って、成形材料Mを、成形空間内に万遍な
く均一に、素早く短時間で充填することができる。
つぎに、上記第3実施形態のプラスチックシートの製造方法における注型工程も、まず
、第1,第2実施形態と同様、組み立てた成形型10(図2参照)を、材料注入用開口(
注入ノズル2A,2B,2C:図示省略)側が水平より上を向く方向に、水平面に対する
(正)傾斜角αが1°以上の所定角度になるまで傾けて準備する。なお、第3実施形態で
使用する成形型10には、成形空間の傾斜下側にも、空気抜き用の小開口4b,4bが設
けられている(図2では図示省略)。
ついで、図9のように、水平に対して傾斜(本例では約3°)するように配設された成
形型10の材料注入用開口(傾斜の上側)から、注入ノズル2Aを成形空間内の所定位置
(中央部付近)まで挿入するとともに、残りの各注入ノズル2B,2Cを、開口から離れ
た、成形型10の下部(傾斜の下側)に近い角部(深い位置)まで挿入する。
そして、まず、注入ノズル2B,2Cにより、図9のように、成形空間下側の角部(二
隅)近傍に、液状の成形材料Mを供給(注入)するととともに、成形空間の中央部付近で
は、注入ノズル2Aを用いて、同様に液状の成形材料Mを供給開始する。上記注入ノズル
2B,2Cによる成形空間下側の角部への成形材料Mの供給が所定量に達したら、これら
注入ノズル2B,2Cを、図10のように、成形型10の傾斜上側の角部(第2実施形態
の場合と同様の位置)まで引き出し、この位置に再度、所定量の成形材料Mを供給(注入
)する。
注入ノズル2Aによる成形空間の中央部付近への成形材料Mの供給と、注入ノズル2B
,2Cによる成形空間の角部(四隅)への成形材料Mの供給とが、所定量に達したら、図
11のように、全ての注入ノズル2A,2B,2Cと第1シム3,3を退避させ、成形型
10全体(下側のガラス板1B)を、平均角速度1゜〜10゜/秒(この例では1゜/秒
)で水平状態に戻し、隙間の空いていた、一方のガラス板1A(上側)の開口側を他方の
ガラス板1B(下側)に近づけ、ガラス板どうしが平行な状態にする。この状態において
、成形型10の成形空間は、成形型上部の空気抜き用の小開口4a,4aおよび成形型下
部の空気抜き用の小開口4b,4b部位を除き、その縁部全体がバンク4により液封され
た状態であり、各注入ノズル2A,2B,2Cから注入された成形材料M,M’は、それ
ぞれが、平面視ほぼ円形状(または楕円状)になっている。
つぎに、上記注型が完了した成形型10は、第1,第2実施形態と同様のプレス工程を
行い、注入された成形材料Mを成形空間全体に行き渡らせる操作を行う。その際、この第
3実施形態のプラスチックシートの製造方法では、成形材料の行き渡りにくい、成形型1
0の4箇所の角部(四隅)に、注入ノズル2B,2Cから2度にわたって供給された成形
材料M’が予め配置されているため、図12のように、上記プレスにより、注入された成
形材料Mが隅々まで流動して素早く行き渡り、成形空間内に均一に充填される。
したがって、この第3実施形態のプラスチックシートの製造方法によっても、上記複数
の注入ノズルの使用による成形材料注入時間の短縮効果と相俟って、成形材料Mを、より
素早く短時間で、成形空間内に万遍なく均一に充填することができる。しかも、本実施形
態の製造方法も、第1実施形態のように、上記プレス工程に先立ち、「成形型10を一旦
、水平より下を向く方向に傾け、所定時間静止させた後、成形型10を水平状態に復帰さ
せる」等の対策をとる必要がないという利点がある。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えな
い限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、
重量基準を意味する。また、各物性については以下の通り測定した。
(イ)光線透過率
長さ50mm×幅50mmの試験片を5枚用意し、日本電色社製ヘイズメーター「ND
H−2000」で、全光線透過率(%)を測定した。
(ロ)鉛筆硬度
長さ50mm×幅50mmの試験片を5枚用意し、JIS K−5600に準じて、鉛
筆硬度を測定した。
(ハ)ガラス転移温度
長さ30mm×幅3mmの試験片を用い、セイコー電子社製「TMA120」で、引張
法TMA(支点間距離20mm、加重100g、昇温速度5℃/分、窒素フロー140m
l/分)にて、ガラス転移温度(℃)を測定した。
(ニ)曲げ弾性率
長さ25mm×幅10mmの試験片を5枚用意し、島津製作所社製オートグラフ「AG
−5kNE」(支点間距離20mm、0.5mm/分)にて、25℃で曲げ弾性率(GP
a)を測定した。
<実施例1>
630mm×730mm×8mmのガラス板(ガラス板1A,1B)を2枚用意し、ガ
ラス板1Bの片面に、6官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製)30部,ビ
ス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート(新
中村化学社製「DCP」)70部,1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ
スペシャリティケミカルズ社製「Irgacure184」)1部,よりなる、粘度が1
000mPa・sに調整された光硬化性組成物(成形材料M)を用いて、幅1mm,厚さ
1.1mmのバンク(符号4)を形成した。この時、バンクの二隅に空気排出用の開口部
(符号4a)を設けた(図1を参照)。
ガラス板1Bを、上記バンク4が形成された面を上向きにして水平状態に設置し、ガラ
ス板1Aの片面が、ガラス板1Bの上記面と対向するようにガラス板1Aを配置し、これ
が、空気排出用開口部4aを有さないバンク4の1辺(成形型の下部に相当)で密着する
ようにして、成形型10を準備した。この時、密着しない辺側(成形型の上部に相当)に
は、注入ノズル2A,2B,2Cの差し込みが可能になるように、厚さ3mmのシム(2
個の第1シム3)を差し込んだ。
成形型10全体を、密着した辺が下になるようにして3゜傾斜(α=3°)させ、成形
型10上部の隙間より注入ノズル2A,2B,2Cを差し込み(図7)、温度25℃で光
硬化性組成物465gの注入を開始した。かかる光硬化性組成物の粘度は1000mPa
・sである。
注入ノズル2Aから365g、注入ノズル2Bから50g、注入ノズル2Cから50g
の成形材料(光硬化性組成物)の吐出が終了した後、各注入ノズルとシム3,3をこの順
で引き抜いて(図8)、バンク4全体をガラス板1Aの片面と密着させた。
ついで、成形型10全体を、平均角速度1゜/秒で水平方向に傾きを戻し、光硬化性組
成物を成形型10の成形空間内に広げた。
ついで、厚さ1mmのシム(第2シム5)を、ガラス板1Aと1Bの間に差し込み、プ
レス角度の調整が可能なプレス機を用いて、空気排出用開口部4aを有さないバンク4の
1辺側(成形型の下部に相当)から、0.1MPaで荷重を開始し(この時点では、成形
型の上部側は無荷重)、この荷重が1分間で、空気排出用開口部4aのある辺側(成形型
の上部に相当)に到達するようにプレスを進行させ、成形型10全体が0.1MPaでプ
レスされた状態(図13)を1分間保持した。かかるプレス工程の温度は室温である。
この〈実施例1〉において、成形材料の注入開始からプレス終了まで要した時間は2分
である。
プレスを解放後、成形型10から第2シム5を取り外し、2秒間静置した後、メタルハ
ライドランプを用いて、ガラス板を通して上下両面から、光量20J/cm2で紫外線を
照射して、光硬化を完了した。
脱型・剥離して得られた成形体を、200℃の真空オーブン中で2時間加熱した後、レ
ーザーで550mm×650mmサイズにカットして、厚さ1mmの〈実施例1〉のプラ
スチックシートを得た。得られた〈実施例1〉のプラスチックシートは、うねりもなく平
坦であり、異物や傷も無く平滑であった。また、全光線透過率は92%、ガラス転移温度
は250℃以上、鉛筆硬度は7H、曲げ弾性率は4GPaであった。
<実施例2>
使用するバンク4および第2シム5の厚さを0.2mmに変更した以外は〈実施例1〉
と同様の条件にして行い、脱型・剥離して得られる成形体の厚さ(全厚)を0.2mmと
した〈実施例2〉のプラスチックシートを得た。光硬化性組成物の注入量は、注入ノズル
2Aから50g、注入ノズル2Bから25g、注入ノズル2Cから25gであった。また
、この〈実施例2〉において、成形材料の注入開始からプレス終了まで要した時間は3分
である。
得られた〈実施例2〉のプラスチックシートは、うねりもなく平坦であり、異物や傷も
無く平滑であった。また、全光線透過率は92%、ガラス転移温度は250℃以上、鉛筆
硬度は6H、曲げ弾性率は4GPaであった。
<実施例3>
2官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製)10部,ビス(ヒドロキシメチ
ル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート(新中村化学社製「A−D
CP」)90部,1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケ
ミカルズ社製「Irgacure184」)1部,よりなる、粘度が200mPa・sに
調整された光硬化性組成物(M)を使用したこと以外、〈実施例1〉と同様の条件にして
、〈実施例3〉のプラスチックシートを得た。光硬化性組成物の注入量は、注入ノズル2
Aから365g、注入ノズル2Bから50g、注入ノズル2Cから50gであった。また
、この〈実施例3〉において、成形材料の注入開始からプレス終了まで要した時間は1分
である。
得られた〈実施例3〉のプラスチックシートは、うねりもなく平坦であり、異物や傷も
無く平滑であった。また、全光線透過率は92%、ガラス転移温度は200℃、鉛筆硬度
は3H、曲げ弾性率は3GPaであった。
<実施例4>
注型工程において注入ノズル2B,2Cを使用しない(注入ノズル2Aのみ使用)こと
以外は、〈実施例1〉と同様の条件にして、〈実施例4〉のプラスチックシートを得た。
光硬化性組成物は、注入ノズル2Aから465g注入した。また、この〈実施例4〉にお
いて、成形材料の注入開始からプレス終了まで要した時間は3分である。
得られた〈実施例4〉のプラスチックシートは、うねりもなく平坦であり、異物や傷も
無く平滑であった。また、全光線透過率は92%、ガラス転移温度は250℃以上、鉛筆
硬度は7H、曲げ弾性率は4GPaであった。
<実施例5>
注型工程において、注入ノズル2Bと2Cから、先ず成形型下部(傾斜下側)の二隅へ
各50gの光硬化性組成物の注入を行い、次いで注入ノズル2Aから、成形型の中央部位
へ265gの光硬化性組成物の注入を続けた状態で、上記注入ノズル2Bと2Cとを成形
型上部(傾斜上側)の二隅へ移動させ、この部位に、注入ノズル2Bと2Cから各50g
の光硬化性組成物の注入を行った。それ以外は、〈実施例1〉と同様の条件にして、〈実
施例5〉のプラスチックシートを得た。なお、この〈実施例5〉において、成形材料の注
入開始からプレス終了まで要した時間は1.5分である。
得られた〈実施例5〉のプラスチックシートは、うねりもなく平坦であり、異物や傷も
無く平滑であった。また、全光線透過率は92%、ガラス転移温度は250℃以上、鉛筆
硬度は7H、曲げ弾性率は4GPaであった。
いずれのプラスチックシートも品質や性能に優れるものであった。また、実施例による
製造方法を行うことにより、従来多くの時間を要していたのに対して、非常に効率的でか
つ量産性良くプラスチックシートを製造することができる。
本発明のプラスチックシートの製造方法により得られるプラスチックシートは、様々な
光学材料,電子材料に有利に利用できる。例えば、保護シート,タッチパネル,液晶基板
,有機/無機EL用基板,PDP用基板,電子ペーパー用基板,導光板,位相差板,光学
フィルター等,各種ディスプレイ用部材,光ディスク基板を初めとする記憶・記録用途,
薄膜電池基板,太陽電池基板などのエネルギー用途,光導波路などの光通信用途、さらに
は、機能性フィルム・シート、各種光学フィルム・シート用途に利用できる。また、光学
材料,電子材料の他にも、例えば、照明材料,自動車用材料,建材用材料,医療用材料,
文房具などにも利用できる。なかでも、ディスプレイ用プラスチック基板として最適であ
る。
1A,1B ガラス板
2A,2B,2C 注入ノズル
3 第1シム
4 バンク
10 成形型
M 成形材料

Claims (10)

  1. 所定の間隙を空けて対向する2枚の平板状型材と、これらの型材の間の成形空間を縁部
    で液封するスペーサとからなる成形型に、その縁部の所定位置に配設された開口から、硬
    化性組成物からなる成形材料を注入して硬化させるプラスチックシートの製造方法であっ
    て、
    成形型の成形空間に成形材料を注入する注型工程が、下記(1)の工程を含むことを特
    徴とするプラスチックシートの製造方法。
    (1)成形型の開口から液状物送出用のノズルを成形空間に差し入れ、成形型の縁部から
    離れた成形空間の中央部に、成形材料を注入する工程。
  2. 成形型の成形空間に成形材料を注入する注型工程が、下記(2)の工程を含むことを特
    徴とする請求項1記載のプラスチックシートの製造方法。
    (2)前記成形空間中央部へ成形材料を送出する第1のノズルとは異なる、複数の第2の
    ノズルを用いて、中央部から離れた成形空間の縁部寄りの少なくとも2箇所の位置に、成
    形材料を注入する工程。
  3. 成形材料が、ノズルを経由して、2枚の平板状型材の対向面間に広がる円形状または楕
    円形状に注入されることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチックシートの製造
    方法。
  4. 注型工程の後に、下記工程(3)が行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
    一項に記載のプラスチックシートの製造方法。
    (3)注入された成形材料を、プレスの押圧により平板状型材の縁部にまで広げ、成形空
    間全体に充填するプレス工程。
  5. プレス工程(3)が、成形型の2枚の平板状型材の間で、かつ、スペーサより外縁側の
    位置に、プレス圧に耐え得る板状のシムを挟み込んだ状態で行われることを特徴とする請
    求項4記載のプラスチックシートの製造方法。
  6. 成形材料が光硬化性組成物からなり、2枚の平板状型材が光線を透過する透明板である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラスチックシートの製造方法。
  7. 成形型のスペーサが、光硬化性組成物を光硬化させた堰状のバンクで形成されているこ
    とを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラスチックシートの製造方法。
  8. バンクを構成する光硬化性組成物と、プラスチックシートの成形材料を構成する光硬化
    性組成物とが同一であることを特徴とする請求項7記載のプラスチックシートの製造方法
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法により得られるプラスチックシート。
  10. 請求項9記載のプラスチックシートよりなるディスプレイ用プラスチック基板。
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