JP2016098940A - ヨークとシャフトの結合構造 - Google Patents
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特許文献1には、上述の用途でトルク伝達時にヨークに大きな応力集中が生じることを抑制するために、ヨークの基部のシャフトが嵌合される貫通穴の内周面の形状や周縁部の厚さを、高応力領域となる部分で他の領域と異なるものにすることが記載されている。
この発明の課題は、ヨークとシャフトの結合構造において、ヨークとその基部の貫通穴に嵌合されるシャフトの製造コストを上昇させることなく、トルク伝達時にヨークの基部に大きな応力集中が生じることを抑制することである。
(1) 一対のアーム部と、これらのアーム部を連結する基部と、によりU字状に形成されたヨークと、前記基部から前記U字の外側に延びるシャフトと、を有する。前記基部に前記アーム部と平行に延びる貫通穴が形成されている。
この態様の結合構造において、前記基部の前記一対のアーム部間における前記開口端の周縁部が、前記貫通穴の軸方向に垂直な基準面を有し、前記結合部のスプライン溝の最大直径(Ds)に対する、前記一対のアーム部の外側面間の寸法であるアーム幅(Ha)の比(Ha/Ds)が、2以上3以下である場合には、前記基準面での開口端位置と前記境界位置との距離が1.0mm以上3.0mm以下であり、前記境界位置と前記シャフトの一端部の端面位置との距離2.0mm以上4.0mm以下とする態様が挙げられる。
[構成の説明]
図1および2に示すように、この実施形態の結合構造において、ヨーク1は、一対のアーム部11と、これらのアーム部11を連結する基部12と、によりU字状に形成されている。基部12は、ヨーク1をなすU字の内側部を形成する内側部分121と、U字の外側部を形成する外側部分122と、一方のアーム11側だけに形成された一対の締め付け板部123とからなる。一対の締め付け板部123の一方にはボルト挿通穴123aが形成され、他方には、ボルト挿通穴123aに対応する雌ねじが形成されている。
この実施形態の結合構造では、ヨーク1の基部12から、ヨーク1をなすU字の外側にシャフト2が延びている。このシャフト2の一端部21が、基部12の貫通穴13の結合部131にスプライン結合され、シャフト2の一端部21の端面21aが、結合部131と大径部132との境界位置Kよりも結合部131側に存在している。
図1に示すように、ヨーク1にトルクTが作用した場合、基部12の貫通穴13の周縁部13bに、貫通穴13の周方向の応力Fが集中する。
そこで、本発明者等は、貫通穴13のスプライン開始位置(実施形態の「結合部131と大径部132との境界位置」に相当)K、貫通穴13の基準面121aでの開口端位置M、シャフト2の端面位置Jの各位置に注目し、K、M、Jの一致状態を変化させて、基部12の貫通穴13の周縁部13bに生じる応力をFEM解析で調べた。
図4のグラフでは、その結果が、K≠M≠Jの場合(K、M、Jのすべての位置が一致していない場合)の応力を「1」とした比で表されている。
M=K=Jは、貫通穴13のスプライン開始位置Kと、シャフト2の端面位置Jと、貫通穴13の基準面121aでの開口端位置Mとが一致している場合を示す。つまり、この場合は、貫通穴13の全体にスプラインが形成され(貫通穴13が大径部132を有さず)、シャフト2の端面21aが貫通穴13の基準面121aに存在する。
そして、貫通穴13の大径部132を鍛造で形成する場合、前述の結果から導き出された「L1=2.0mm、L2=3.0mm」±1.0mmの範囲である「1.0mm≦L1≦3.0mm、2.0mm≦L2≦4.0mm」が採用できる。
つまり、この実施形態のヨーク1とシャフト2の結合構造では、Ha/Dsが2以上3以下で、L1が1.0mm以上3.0mm以下、L2が1.0mm以上3.0mm以下となっているため、鍛造で貫通穴13の大径部132を形成する場合、M、K、Jの各位置に生じる応力を小さくできることが分かる。
したがって、この実施形態のヨーク1とシャフト2の結合構造によれば、ヨーク1とその基部12の貫通穴13に嵌合されるシャフト2の製造コストを上昇させることなく、トルク伝達時にヨーク1の基部12に大きな応力集中が生じることを抑制できる。
ヨークと十字軸とからなる自在継手に高トルク伝達機能が要求される用途の例として、操舵系に操舵補助力を付与する操舵補助機構の出力軸と、ステアリングギヤ機構との間に配設される用途が挙げられる。この用途の一例について以下に説明する。
コラムアシスト式電動パワーステアリング装置を備えた車両のステアリング装置の一例は、図7に示すように、ステアリングホイール501と、ステアリングシャフト502と、ステアリングコラム503と、操舵補助機構504と、ステアリングギヤ機構506を有する。
ウォーム減速機511の出力軸514には、自在継手517Aを介して中間シャフト518が連結されている。中間シャフト518は、自在継手517Bを介して、ラックピニオン式のステアリングギヤ機構506のピニオン軸519に連結されている。ステアリングギヤ機構506のラック軸(図示せず)は、タイロッド505を介して、図示しない転舵輪に連結されている。
また、他方のヨーク524も、ヨーク523と同様に、一対のアーム部524a,524bと、これらのアーム部524a,524bを連結する基部524cとでU字状に形成されている。基部524cの中心位置に貫通穴524dが形成されている。各アーム部524a,524bに、十字軸525を結合するための貫通穴が形成されている。
自在継手517A,517Bを組み立てる際には、十字軸525の各軸部525bに、スパイダーピン525cおよび針状ころ525dを覆うようにベアリングカップ525eを配設した状態で、各軸部525bの先端部を、各ヨーク523,524の各アーム部523a,523b,524a,524bの貫通穴526に挿入する。これにより、十字軸525が各ヨーク523,524に取り付けられ、十字軸525の各軸部525bは、針状ころ525dとベアリングカップ525eとからなる針状ころ軸受で、各ヨーク523,524の各アーム部に対して回転自在に支持される。
このとき、操舵補助機構504の電動モータ512が、ステアリングホイール501に伝達された操舵トルクに応じた最適な操舵補助力を発生させるため、運転者はステアリングホイール501を軽く操舵することができる。
そのため、中間シャフト518の両端に連結された自在継手517A,517Bを構成するヨーク523のアーム部523a,523b間に捩じれ力が作用する。同様に、自在継手517A,517Bを構成するヨーク524のアーム部524a,524b間にも捩じれ力が作用する。これに伴い、ヨーク523,524の基部523c,524cには、貫通穴523d,524dの周縁部に周方向の応力が集中する。
つまり、ヨーク523,524と前記いずれかのシャフトとの結合構造を、前述の実施形態のように、シャフト2の一端部が、ヨーク1の基部12の貫通穴13の結合部131にスプライン結合され、シャフト2の一端部21の端面21aが、結合部131と大径部132との境界位置Kよりも結合部131側に存在するように構成する。
このように、この発明のヨークとシャフトの結合構造を、一対のヨークとこれらのヨークを連結する十字軸とを有する自在継手によるシャフトの結合に適用することにより、ヨークとシャフトの製造コストを上昇させることなく、この自在継手が高トルク伝達機能が要求される用途で使用された場合でも、トルク伝達時にヨークの基部に大きな応力集中が生じることを抑制できる。
よって、この発明のヨークとシャフトの結合構造を備えた態様として、「一対のヨークとこれらのヨークを連結する十字軸とを有する自在継手において、前記ヨークの少なくとも一方は、この発明のヨークとシャフトの結合構造を構成するヨークである自在継手」と、「操舵補助機構をステアリングコラム側に設けた電動パワーステアリング装置を備えた車両のステアリング装置であって、ステアリングコラム側からステアリングギヤ機構に対してトルクを伝達するステアリング軸の自在継手として、前記態様の自在継手を備えたステアリング装置」が挙げられる。
11 アーム部
12 基部
121 基部の内側部分
121a 基準面
122 基部の外側部分
123 締め付け板部
123a ボルト挿通穴
13 基部の貫通穴
13a U字の内側での貫通穴の開口端
13b 基部の開口端13aの周縁部
131 貫通穴の結合部
131a スプライン溝
132 貫通穴の大径部
14 アーム部の貫通穴
2 シャフト
21 シャフトの一端部
21a シャフトの一端部の端面
J シャフトの一端部の端面位置
K 結合部と大径部との境界位置(貫通穴のスプライン開始位置)
M 貫通穴の基準面での開口端位置
Ha アーム幅
Ds 結合部のスプライン溝の最大直径
Dd 大径部の直径
L1 KとMとの距離
L2 KとJとの距離
519 ピニオン軸
518 中間軸
517A,517B 自在継手
523,524 ヨーク
523a,523b ヨークのアーム部
524a,524b ヨークのアーム部
523c,524c ヨークの基部
523d,524d ヨークの基部の貫通穴
525 十字軸
Claims (2)
- 一対のアーム部と、これらのアーム部を連結する基部と、によりU字状に形成されたヨークと、
前記基部から前記U字の外側に延びるシャフトと、
を有し、
前記基部に前記アーム部と平行に延びる貫通穴が形成され、
前記貫通穴は、前記シャフトとスプライン結合されるスプライン溝が形成された結合部と、前記結合部のスプライン溝の最大直径より大きな直径を有する大径部と、を有し、
前記スプライン溝は、前記U字の内側での前記貫通穴の開口端より低い位置から前記U字の外側に向けて形成され、
前記大径部は、前記開口端と前記結合部との間の部分であり、
前記シャフトの一端部が前記結合部にスプライン結合され、前記一端部の端面が、前記結合部と前記大径部との境界位置よりも前記結合部側に存在しているヨークとシャフトの結合構造。 - 前記基部の前記一対のアーム部間における前記開口端の周縁部は、前記貫通穴の軸方向に垂直な基準面を有し、
前記結合部のスプライン溝の最大直径(Ds)に対する、前記一対のアーム部の外側面間の寸法であるアーム幅(Ha)の比(Ha/Ds)が、2以上3以下であり、
前記基準面での開口端位置と前記境界位置との距離が1.0mm以上3.0mm以下であり、
前記境界位置と前記シャフトの一端部の端面位置との距離が2.0mm以上4.0mm以下である請求項1記載のヨークとシャフトの結合構造。
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