JP2016098422A - 炭素系被膜、それを備えた摺動部材、および摺動部材製造方法 - Google Patents

炭素系被膜、それを備えた摺動部材、および摺動部材製造方法 Download PDF

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和昭 松尾
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Abstract

【課題】高い耐面圧性を有する炭素系被膜およびその製造方法を提供すること。高い耐面圧性を有する炭素系被膜を含み、適用用途の幅が広い摺動部材を提供すること。
【解決手段】
DLC被膜50は、硬質DLC層53と、硬質DLC層51よりも軟らかい軟質DLC層52とを交互に積層した積層構造を有する多層膜である。硬質DLC層51は、炭素、水素および珪素を含む膜組成を有している。軟質DLC層52は、炭素、水素、珪素および窒素を含む膜組成を有している。各軟質DLC層52の膜厚W2は、各硬質DLC層51の膜厚W1よりも大きい。硬質DLC層51と軟質DLC層52との膜厚比は約1:2である。
【選択図】図1

Description

この発明は、炭素系被膜、それを備えた摺動部材、および摺動部材製造方法に関する。
たとえば自動車の燃費を低減させるために、自動車に搭載される各種摺動部材の摺動抵抗を低減させることが求められている。そのため、摺動部材の基材の表面の少なくとも一部を、低摩擦性および耐摩耗性を有するDLC(Diamond Like Carbon)を含むDLC被膜によって被覆する場合がある。
下記特許文献1では、摩擦クラッチのクラッチプレート等に適用されるDLC被覆部材が開示されている。基材に対するDLC膜の密着力を高めるために、基材とDLC膜との間に、中間層を配置している。
特開2012−082477号公報
特許文献1に記載のDLC被膜(DLC膜)は、中間層を有しているために、基材に対する密着力が十分に確保されているものの、密着力を劇的に向上させるには至っていない。したがって、DLC被膜の適用は、現状、クラッチプレート等のような、相手材と滑り接触する摺動部材に限られている。
本願発明者らは、転がり軸受の転動輪のような相手材と転がり接触する摺動部材の摺動面を、炭素系被膜(DLC被膜)で形成することを検討している。しかしながら、相手材と転がり接触する摺動面には非常に高い荷重が作用するから、当該摺動面に適用される炭素系被膜には、基材に対する高い密着力が要求される。炭素系被膜の耐面圧性を向上させれば、当該炭素系被膜の基材に対する密着力を高めることができると考えられる。
そこで、本発明の目的の一つは、高い耐面圧性を有する炭素系被膜を提供することである。
また、本発明の他の目的は、高い耐面圧性を有する炭素系被膜を含み、適用用途の幅が広い摺動部材およびその製造方法を提供することである。
前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、硬質層と、前記硬質層よりも軟らかい軟質層とを交互に積層した積層構造を有する炭素系被膜であって、前記軟質層の膜厚が、前記硬質層の膜厚よりも大きい、炭素系被膜を提供する。
請求項2に記載の発明は、前記硬質層と前記軟質層との膜厚比が1:2である、請求項1に記載の炭素系被膜である。
請求項3に記載の発明は、前記軟質層は、水素、炭素、珪素および窒素を含有しており、前記硬質層は、水素、炭素および珪素を含有し、窒素は含有しない、請求項1または2に記載の炭素系被膜である。
請求項4に記載の発明は、前記軟質層および前記硬質層の合計数が4〜20であり、前記炭素系被膜の全体の膜厚が2.3μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素系被膜である。
請求項5に記載の発明は、前記炭素系被膜の最表面層は前記硬質層によって構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素系被膜である。
前記目的を達成するための請求項6に記載の発明は、基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する、前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素系被膜と、前記炭素系被膜により形成された摺動面とを含む、摺動部材を提供する。
請求項7に記載の発明は、前記基材と前記炭素系被膜との間に配置される中間層をさらに含み、前記中間層は、直流パルスプラズマCVD法を用いて、処理圧力5Paおよび直流パルス電圧のデューティ比50%の条件下で作成される、請求項6に記載の摺動部材である。
請求項8に記載の発明は、前記炭素系被膜のうち最も前記中間層寄りの層は、前記軟質層によって構成されている、請求項6または7に記載の摺動部材である。
前記目的を達成するための請求項9に記載の発明は、基材と、硬質層と前記硬質層よりも軟らかい軟質層とを交互に積層した積層構造を有し、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する炭素系被膜と、前記炭素系被膜により形成された摺動面と、前記基材と前記炭素系被膜との間に配置される中間層とを含む摺動部材を製造する方法であって、炭素系化合物および珪素化合物を含む原料ガスを前記基材を収容する処理室内に供給し、処理圧力5Paおよび直流パルス電圧のデューティ比50%条件下で直流パルスプラズマCVD法により、前記中間層を形成する中間層形成工程を含む、摺動部材製造方法を提供する。
本発明によれば、硬質層と軟質層とを交互に積層した積層構造を有する炭素系被膜において、軟質層の膜厚を硬質層の膜厚よりも大きくすることにより、高い耐面圧性を有する炭素系被膜を提供できる。また、このような高い耐面圧性を有する炭素系被膜を含み、適用用途の幅が広い摺動部材を提供できる。さらに、このような高い耐面圧性を有する炭素系被膜を製造できる炭素系被膜の製造方法を提供できる。
本発明の一実施形態に係る摺動部材の要部を拡大して示す断面図である。 図1に示すDLC被膜および中間層の形成に用いられるCVD装置の構成を模式的に示す図である。 実施例1の被膜および比較例1の被膜の、硬さ、ヤング率、密着力および耐久評価を示す表である。 実施例1の被膜の転動疲労寿命試験の結果を示すグラフである。 転動疲労寿命試験の終了後のDLC被膜の表面の光学顕微鏡写真の画像図である。 実施例1の中間層および比較例1の被膜の、密着力、表面粗さ、硬さおよびヤング率を示す図である。 実施例2〜5および比較例2〜4の被膜の、密着力、硬さ、ヤング率、およびヤング率に対する硬さの比を示す図である。 硬質DLC層および軟質DLC層の膜厚比と、DLC被膜の基板に対する密着力との関係を示すグラフである。 直流パルスプラズマCVD法によるDLCの形成における、窒素ガス流量と、形成後の当該DLCのおよびヤング率との関係を示すグラフである。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る摺動部材30の要部を拡大して示す断面図である。
摺動部材30は、基材40と、基材40の表面を覆う中間層60と、中間層60の表面を覆う、炭素系被膜の一例としてのDLC被膜50とを含む。DLC被膜50は、摺動部材30の摺動面31を形成し、相手材と摺動する。摺動面31は、図1に示すような平坦平面であってもよいし、球面やその他の曲面であってもよい。以下において、DLC被膜50と中間層60とを含む膜の全体を指して被膜100という場合がある。
摺動部材30としては、玉軸受およびころ軸受を含む転がり軸受の軌道輪を例示できる。転がり軸受は、ラジアル軸受であってもよいし、スラスト軸受であってもよい。この場合、転走面が摺動面31に相当する。また、摺動部材30を、転がり軸受の転動体や保持器に適用することもできる。この場合、転動体の周面や保持器の内外周面が、摺動面31に相当する。また、基材40は、たとえば、軸受鋼(SUJ材等)を例示できる。
摺動部材30は、転がり軸受以外の、相手材と転がり接触する摺動部材にも適用でき、この場合、基材40は、工具鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼およびステンレス鋼のいずれかを含む。
相手材と転がり接触する摺動部材の摺動面には、高荷重が作用するのであるが、DLC被膜50は、後述するように高い耐面圧性を有しており、基材40に対する密着力が高い。そのため、本発明の摺動部材30を、相手材と転がり接触する摺動部材に適用しても、DLC被膜50は剥離しない。DLC被膜50は、硬質DLC層(硬質層)51と、硬質DLC層51よりも軟らかい軟質DLC層(軟質層)52とを交互に積層した積層構造を有する多層膜である。
硬質DLC層51は、炭素(C)、水素(H)および珪素(Si)を含む膜組成を有しているが、窒素(N)は含有していない。硬質DLC層51の水素濃度は(膜組成全体を1としたとき)20at.%以上40at.%以下である。水素濃度が20at.%未満は、成膜できない。また、水素濃度が40at.%を超えると、成膜できない。硬質DLC層51のSi添加濃度(膜組成全体を1としたとき)は5〜30at.%である。珪素量が5at.%未満は正確な濃度制御が行えない。また、珪素量が30at.%を超えると、正常な成膜ができない。ナノインデンション法による硬質DLC層51の硬さは、10〜20GPaである。
軟質DLC層52は、炭素、水素、珪素および窒素を含む膜組成を有している。軟質DLC層52の水素濃度(膜組成全体を1としたとき)は20at.%以上40at.%以下である。軟質DLC層52のSi添加濃度(水素を除いた炭素、珪素および窒素の組成合計を1としたとき)は5〜30at.%である。軟質DLC層52の窒素含有濃度(水素を除いた炭素、珪素および窒素の組成合計を1としたとき)は1〜10at.%であり、より好ましくは、3〜6at.%である。窒素含有濃度が1at.%未満は、通常のDLC膜としては形成できるが、軟質DLC膜としては成膜できない。また、窒素含有濃度が10at.%を超えると、本願のCVD装置1の装置条件では成膜できない。軟質DLC層52は、硬質DLC層51よりも軟らかい。ナノインデンション法による軟質DLC層52の硬さは、5〜10GPaである。
軟質DLC層52は、窒素を膜組成に含んでいる点で硬質DLC層51と相違している。硬質DLC層51および軟質DLC層52は、窒素を除いて、膜組成およびその組成比が共通している。窒素を膜組成に含んでいるために、硬質DLC層51よりも軟らかい軟質DLC層52を実現できる。
DLC被膜50の最表面層は、硬質DLC層51によって構成されている。そのため、DLC被膜50の表面に、高い硬質性および耐摩耗性を発揮させることができる。
一方、DLC被膜50の最下層(最も中間層60寄りの層)は、軟質DLC層52によって構成されている。軟らかい軟質DLC層52が最下層に配置されているので、基材40に変形が生じた場合であっても、その基材40の変形に追従して最下層の軟質DLC層52が変形し、これにより、DLC被膜50が発生するのを防止することができる。
各軟質DLC層52の膜厚W2は、各硬質DLC層51の膜厚W1よりも大きい。図1では、硬質DLC層51と軟質DLC層52との膜厚比が、約1:2である場合を示す。DLC被膜50の全体の膜厚W3は、2.3μm以下(より具体的には、たとえば、1.5μm以上2.3μm以下)である。
多層膜からなるDLC被膜50では、DLC被膜50中に繰り返し配置されている軟質DLC層52が、当該DLC被膜50に与えられる荷重を吸収する。軟質DLC層52の膜厚W2を硬質DLC層51の膜厚W1よりも大きくすることにより、より一層大きな荷重を受け止めることが可能になり、これにより、高い耐面圧性を有するDLC被膜50を提供できる。また、軟質DLC層52の間に硬質DLC層51が配置されているので、軟質DLC層52を有していても、DLC被膜50全体の硬さは、高く保持される。
硬質DLC層51および軟質DLC層52の合計数は、4〜20である。すなわち、DLC被膜50は、硬質DLC層51および軟質DLC層52の対を2〜10含む。図1では、硬質DLC層51および軟質DLC層52の合計数が8である場合を示す。また、DLC層51,52の数だけ、硬質DLC層51と軟質DLC層52との境界面が存在することから、多層膜からなるDLC被膜50内でのクラックの成長を十分に抑制できる。また、DLC層51,52の数が4〜20の範囲であれば、DLC被膜50の成膜のための時間やコストが膨大にもなるようなこともない。
このように、硬質DLC層51および軟質DLC層52の合計数が4〜20の範囲にあり、かつDLC被膜50の全体の膜厚W3が2.3μm以下である場合には、DLC被膜50の基材40に対する密着力が高い。
隣接するDLC層51,52の間には、DLC層51,52の一方に近づくに従って組成が連続的に変化する第1の傾斜層53が配置されている。第1の傾斜層53は、炭素、水素および珪素を含む膜組成を有する窒素の傾斜層である。
DLC被膜50は、直流パルスプラズマCVD(Direct Current Plasma−Chemical Vapor Deposition)法を用いて作成されている。直流パルスプラズマCVDでは、基材40に対して電圧が間欠的に印加される。したがって、基材40に対して電圧が印加され続ける直流プラズマCVD法に比べて、処理温度の上昇に繋がる異常放電の発生が抑制される。これにより、DLC被膜50は、低温成膜環境(たとえば、200℃以下)に維持された状態で形成されている。
中間層60は、炭素、水素および珪素を含む膜組成を有している。中間層60は、DLC被膜50と同様、直流パルスプラズマCVD法を用いて作成されている。但し、中間層60は、DLC被膜50の場合とは異なり、処理圧力5Paおよび直流パルス電圧のデューティ比50%の条件下で成膜(作成)される。
中間層60と、最下層を構成する軟質DLC層52との間には、層60,52の一方に近づくに従って組成が連続的に変化する第2の傾斜層70が配置されている。第2の傾斜層70は、炭素、水素および珪素を含む膜組成を有する珪素の傾斜層である。
図2は、図1に示すDLC被膜50および中間層60の作成に用いられるCVD装置1の構成を模式的に示す図である。
CVD装置1は、隔壁2で取り囲まれた処理室3と、処理室3内で基材40を保持する基台5と、処理室3内に成分ガスを供給するためのガス供給管6と、処理室3内を真空排気するための排気系7と、処理室3内に供給された成分ガス(原料ガス)をプラズマ化させるための直流パルス電圧を発生させる電源8とを備えている。
基台5は、水平姿勢をなす支持プレート9と、鉛直方向に延び、支持プレート9を支持する支持軸10とを備えている。この実施形態では、基台5として、支持プレート9が上下方向に3つ並んで配置された3段式のものが採用されている。しかしながら、2段式でも4段式以上であってもよいし、単段式であってもよい。基台5は、全体が銅などの導電材料を用いて形成されている。基台5には電源8の負極が接続されている。基材40は、支持プレート9上に載置される。
また、処理室3の隔壁2は、ステンレス鋼等の導電材料を用いて形成されている。隔壁2には、電源8の正極が接続されている。隔壁2はアース接続されている。隔壁2と基台5とは絶縁部材11によって絶縁されている。そのため、隔壁2はアース電位に保たれている。電源8がオンされて直流パルス電圧が発生されると、隔壁2と基台5との間に電位差が生じる。
また、ガス供給管6は、処理室3内における基台5の上方を水平方向に延びている。ガス供給管6の基台5に対向する部分には、ガス供給管6の長手方向に沿って配列された多数のガス吐出孔12が形成されている。ガス吐出孔12から次に述べる成分ガスが吐出されることにより、処理室3内に成分ガスが供給される。
ガス供給管6には、原料ガスおよびキャリアガスを含む成分ガスが供給される。原料ガスとしては、メタン(CH)やアセチレン(C)、ベンゼン(C)、トルエン(C)などの炭化水素系ガス(炭素系化合物)、テトラメチルシランガス(Si(CH)やシロキサンなどの有機珪素化合物ガス(珪素化合物)、窒素ガス(N)および水素ガス(H)などが供給されるようになっている。キャリアガスとしては、アルゴン(Ar)などが供給されるようになっている。ガス供給管6には、各成分ガスの供給源(ガスボンベや液体を収容する容器等)からそれぞれの成分ガスを処理室3に導くための複数の分岐供給管(図示しない)が接続されている。各分岐供給管には、各供給源からの成分ガスの流量を調節するための流量調節バルブ(図示しない)等が設けられている。また供給源のうち液体を収容する容器には、必要に応じて、液体を加熱するための加熱手段(図示しない)が設けられている。
排気系7は、処理室3に接続された第1の排気管13および第2の排気管14と、第1の開閉バルブ15、第2の開閉バルブ16および第3の開閉バルブ19と、第1のポンプ17および第2のポンプ18とを備えている。
第1の排気管13の途中部には、第1の開閉バルブ15および第1のポンプ17が、処理室3側からこの順で介装されている。第1のポンプ17としては、たとえば油回転真空ポンプ(ロータリポンプ)やダイヤフラム真空ポンプなどの低真空ポンプが採用される。油回転真空ポンプは、油によってロータ、ステータおよび摺動翼板などの部品の間の気密空間および無効空間の減少を図る容積移送式真空ポンプである。第1のポンプ17として採用される油回転真空ポンプとしては、回転翼型油回転真空ポンプや揺動ピストン型真空ポンプが挙げられる。
また、第2の排気管14の先端は、第1の排気管13における第1の開閉バルブ15と第1のポンプ17との間に接続されている。第2の排気管14の途中部には、第2の開閉バルブ16、第2のポンプ18および第3の開閉バルブ19が、処理室3側からこの順で介装されている。第2のポンプ18としては、たとえばターボ分子ポンプ、油拡散ポンプなどの高真空ポンプが採用される。処理室3内の気体は、第1のポンプ17および第2のポンプ18によって処理室3から排出される。
次に、図1および図2を参照しながら、DLC被膜50の成膜工程および中間層60の成膜工程について説明する。
まず、処理室3内に基材40を搬入し、基材40を、その表面を上方に向けた状態で基台5のプレート9上に載置する。
次いで、処理室3内が減圧される。具体的には、第1のポンプ17が駆動開始させられると共に、開閉バルブ15,16,19のうち第1の開閉バルブ15が開かれることにより、処理室3内が第1のポンプ17のみによって真空排気される。処理室3内が所定の真空度(たとえば100Pa程度)まで真空排気された時点で、第2のポンプ18が駆動開始させられ、かつ第2および第3の開閉バルブ16,19が開かれることにより、第1および第2のポンプ17,18によって処理室3内がさらに真空排気される。
処理室3内がある程度の真空に引かれた状態で、供給源(図示しない)からガス供給管6に成分ガスが供給される。成分ガスは、ガス吐出孔12を介して処理室3内に供給される。
処理室3内が目的の真空度(たとえば約5Pa)に達した時点で、電源8がオンされて、高圧の直流パルス電圧が基台5に印加される。これにより、イオンボンバード処理が実行される。オンボンバード処理は、DLC被膜50および中間層60の成膜に先立って実行される。そのため、処理室3内に先ず供給される成分ガスは、たとえば、水素ガスおよびアルゴンガスである。水素ガスおよびアルゴンガスは、それぞれ、プラズマを安定化させる作用を有する。成分ガスは、水素ガスを含まずにアルゴンガスだけであってもよい。
電源8がオンされて、高圧の直流パルス電圧が基台5に印加される。これにより、隔壁2と基台5との間に電位差が生じ、処理室3内にプラズマが発生する。基台5に印加されるパルス電圧の電圧値は、当初約1500V(負極性)であり、その後、時間の経過に伴って、約2000V(負極性)、約2500V(負極性)と段階的に上昇させられる。また、直流パルス電圧のデューティ比(パルス幅τを周波数fの逆数(1/f)で表されるパルス周期で除算した値)は、たとえば約50%に設定されている。印加電圧値やデューティ比をこのような高値に設定したのは、基材40と中間層60との密着性を確保しつつ、イオンボンバード処理のために必要な処理時間を短縮できるからである。また、周波数fは200Hz以上2000Hz以下、たとえば約1000Hz程度に設定するのが好ましい。電源8から基台5に印加される直流パルス電圧の波形がパルス状であるので、かかる高電圧が印加されても処理室3内に異常放電は生じない。処理温度をたとえば200℃以下の低温に抑制できる。
プラズマの発生により、処理室3内において成分ガスからイオンやラジカルが生成するとともに、このイオンやラジカルが電位差に基づいて基材40の表面に打ち付けられることにより、基材40の表面に吸着された異分子等をスパッタリング除去したり、基材40の表面を活性化したり、基材40の表面の原子配列等を改質したりできる(イオンボンバード処理)。
イオンボンバード処理の開始時には、処理室3内の真空度が約5Pa程度の中真空に設定されている。
電源8がオンにされてから予め定める処理時間が経過すると、処理室3への水素ガスおよびアルゴンガスの供給が停止させられる。これにより、イオンボンバード処理が終了する。
次いで、中間層60の成膜(形成)が行われる。具体的には、処理室3内のプラズマ状態を維持しながら、供給源(図示しない)からガス供給管6に原料ガスを含む成分ガスが供給される。この成分ガスがガス吐出孔12を介して処理室3内に供給される。このとき処理室3内に供給される成分ガスは、原料ガスとして、たとえば炭化水素系ガス、有機珪素化合物ガスおよび水素ガスである。また、アルゴンもキャリアガスとして供給される。
中間層60の形成(成膜)は、基台5に印加されるパルス電圧の電圧値が約1500V(負極性)、直流パルス電圧のデューティ比が約50%、処理室3内の圧力が5Pa、1kHzの条件で行われる。より詳しくは、前記条件で成膜が開始され、段階的に処理室3内の圧力が5Paから35Paに変更されるとともに、直流パルス電圧のデューティ比も50%から20%に段階的に変更される。その後、有機珪素化合物ガス以外の原料ガスよびキャリアガスの流量が増加されるとともに、処理室3内の圧力は100Paから200Paへと段階的に変更され、直流パルス電圧のデューティ比も13%から10%に段階的に変更される。なお、成膜を開始してから原料ガスおよびキャリアガスの流量を増加させるまでの時間を、前記流量を増加させてから中間層60の成膜を終了するまでの時間よりも長く設定することで、安定的に中間層60を成膜することが可能となる。
中間層60の成膜開始から予め定める処理時間が経過すると、処理室3への成分ガスの供給が停止させられる。これにより、中間層60の成膜が終了する。
処理室3への成分ガスの供給を停止しても、処理室3内には成分ガスは残留している。また、処理室3内のプラズマ状態が維持されている。これにより、中間層60の上に第2の傾斜層70が形成される。
次いで、DLC被膜50の成膜(形成)が行われる。具体的には、処理室3内のプラズマ状態を維持しながら、供給源(図示しない)からガス供給管6に原料ガスを含む成分ガスが供給される。この成分ガスがガス吐出孔12を介して処理室3内に供給される。このとき処理室3内に供給される成分ガスは、たとえば原料ガスとして、炭化水素系ガス、有機珪素化合物ガス、水素ガスおよび/または窒素ガスである。また、アルゴンもキャリアガスとして供給される。
前述のように、DLC被膜50は硬質DLC層51と軟質DLC層52とを交互に積層して構成される。先ず、軟質DLC層52の成膜(形成)が行われ、次いで、硬質DLC層51の成膜(形成)が行われる。軟質DLC層52の成膜(形成)と、軟質DLC層52の成膜(形成)とが繰り返し交互に行われる。
また、硬質DLC層51の成膜と軟質DLC層52の成膜との切換えは、直流パルスプラズマCVD法を用いた一連の成膜工程で、供給する原料ガスの種類や流量比を切り換えることにより実施する。すなわち、軟質DLC層52の形成時には、窒素ガスを含む原料ガスが処理室3内に供給され、硬質DLC層51の形成時には、窒素ガスを含まない原料ガスが処理室3内に供給される。供給する原料ガスを切り換えても、処理室3内の雰囲気は直ちには切り換わらないので、互いに隣接する硬質DLC層51および軟質DLC層52の層間には、窒素の傾斜層である第1の傾斜層53が形成される。
また、硬質DLC層51の形成時に、基台5に印加される直流パルス電圧の大きさは、たとえば1000V〜1500V(負極性)に設定されている。一方、軟質DLC層52の形成時に、基台5に印加される直流パルス電圧の大きさは、硬質DLC層51の形成時における直流パルス電圧よりも小さな値に設定され、たとえば700V〜1000V(負極性)に設定される。
軟質DLC層52の形成時には、処理室2に供給される原料ガス(成分ガス)に窒素ガスが含まれる。窒素ガスの供給に並行して、直流パルス電圧の大きさを増大させる。これにより、処理室3に放電されるプラズマ量が増大し、処理室3内の窒素ガスがイオン化し易くなる。そのため、DLCに窒素が溶け込み易くなるが、軟質DLC層52の窒素含有濃度を増大させることもできる。これにより、窒素を組成に含む軟質DLC層52を容易に得ることができる。
各軟質DLC層52の成膜時間は、各硬質DLC層51の成膜時間の約2倍に設定されている。そのため、DLC被膜50の成膜後における、各硬質DLC層51と各軟質DLC層52との膜厚比を約1:2に設けることができる。
また、軟質DLC層52の形成および硬質DLC層51の形成は、ともに、基台5に印加される直流パルス電圧のデューティ比:約10%、処理室3内の圧力:200Paの条件で行われる。デューティ比が約10%と低く設定されているので、DLC被膜50の形成時にも、イオンボンバード処理の場合と同様、処理温度をたとえば200℃以下の低温に抑制でき、これにより、低温成膜環境下でDLC被膜50を成膜できる。
最表面層を構成する硬質DLC層51の形成が終了した後、電源8がオフされるとともに、成分ガスの供給が停止される。その後、第1のポンプ17による排気を続けながら常温まで冷却させられる。次いで、第1の開閉バルブ15を閉じ、代わってリークバルブ(図示しない)を開いて処理室3内に外気を供給して処理室3内を常圧に戻した後、処理室3から、表面がDLC被膜50によって被覆された基材40が取り出される。これにより、摺動面31がDLC被膜50により形成された摺動部材30が製造される。
次に、実施例および比較例について説明する。
<実施例1>
高速度工具鋼(SKH4)製の基板上に、図1に示す被膜100を形成することにより、試験片を作成した。被膜100の形成は、図2に示すCVD装置1を用いて、前述した成膜条件で、直流パルスプラズマCVD法により行った。実施例1では、DLC被膜50に含まれる硬質DLC層51と軟質DLC層52との膜厚比が、約1:2である。DLC被膜50の全体の膜厚W3は、1.5μmである。硬質DLC層51および軟質DLC層52の合計数は8である。軟質DLC層52の窒素含有濃度(膜組成全体を1としたとき)は、5at.%である。
<比較例1>
高速度工具鋼(SKH4)製の基板上に、Si傾斜層からなる中間層を形成し、かつ当該中間層の上に単層のDLC被膜を形成することにより、試験片を作成した。このDLC被膜は、炭素、水素および珪素を組成に含んでいる。中間層およびDLC被膜(以降、併せて、単に「被膜」という場合がある。)の形成は、図2に示すCVD装置1を用いて、直流パルスプラズマCVD法により行った。中間層の成膜条件は、処理圧力:200Paおよび直流パルス電圧のデューティ比:10%である点を除くと、前述の中間層60の成膜条件と同一である。また、DLC被膜の成膜条件は、前述の硬質DLC層51の成膜条件と同一である。比較例1のDLC被膜の全体の膜厚は、3.3μmである。
実施例1の被膜100および比較例1の被膜について、硬さ、ヤング率および密着力を測定し、併せて耐久評価を行った。
硬さは、ナノインデンテーション法によって測定した硬さである(以降の硬さについても同様)。
被膜の基板に対する密着力は、スクラッチ試験法による剥離荷重、およびロックウェル圧痕試験(HRC)により評価した。スクラッチ試験法による剥離荷重は、日本機械学会基準JSME S010(1996)において規定されたスクラッチ試験により、DLC被膜に局所的な剥離が生じたときの測定値である(以降の密着力についても同様)。ロックウェル圧痕試験による被膜の剥離状態は6段階のレベル表示で表し、(悪)HF6<HF5<HF4<HF3<HF3<HF2<HF1(良)の関係がある(以降のロックウェル圧痕試験による剥離状態についても同様)。
被膜(または中間層)の基板に対する必要最小限の密着力は、ロックウェル圧痕試験による剥離状態であればHF4であり、スクラッチ試験法による剥離荷重であれば35Nである。
また、耐久評価は、転動疲労寿命特性試験により行った。転動疲労寿命特性試験は、森式スラスト型転動疲労試験機を用い、回転速度:1200rpm、ボール:3個(SUJ2製直径9.5mm)、潤滑剤:クリセフ油(F8)、および最大回転数:10回という試験条件で、試験荷重(面圧)を、1.7GPa、2.2GPa、2.6GPaおよび3.3GPaで変化させたときにおいて、DLC被膜が剥離するまでの回転回数(以下、「耐久回数」という。)を測定した。
実施例1の被膜100および比較例1の被膜の、硬さ、ヤング率、密着力および耐久評価を図3に示す。図4は、実施例1の被膜100の転動疲労寿命試験の結果を示すグラフである。図5は、転動疲労寿命試験の終了後のDLC被膜50の表面の光学顕微鏡写真の画像図である。
図4では、試験荷重(面圧)と耐久回数との関係が示されている。転動疲労寿命試験において、比較例1の被膜(DLC被膜)は、試験荷重(面圧)が1.0GPa以下で剥離した。これに対し、実施例1の被膜100では試験荷重(面圧)が1.7GPaおよび2.2GPでも、被膜100(DLC被膜50)は基板から剥離しなかった。そのため、実際の耐久回数は10回を超えるが、図4には、試験荷重(面圧)が1.7GPaおよび2.2GPの場合の耐久回数として、10回を示している。図5には、試験荷重(面圧)が1.7GPaである場合の回転回数10回の評価後の状態が示されている。図5に示すように、転動疲労寿命試験後のDLC被膜の転走面には転走痕が付されるものの、DLC被膜50が基板から剥離していなかった。
また、試験荷重(面圧)が2.6GPaおよび3.3GPaであるときの耐久回数は10回には到達しなかったものの、十分に大きな耐久回数が得られた。
図3〜図5から、実施例1の被膜100(DLC被膜50)が、非常に高い耐面圧性を有していることがわかる。
次に、実施例1の中間層60の特徴について検討する。
<実施例1の中間層>
高速度工具鋼(SKH4)製の基板上に、図1に示す中間層60を形成した。中間層60の形成は、図2に示すCVD装置1を用いて、直流パルスプラズマCVD法により行った。中間層60の膜厚は、140nmである。基板の表面に中間層60のみを形成することにより試験片を作成した。
実施例1の中間層および比較例1のDLC被膜について、密着力、表面粗さ、硬さおよびヤング率を測定した。
実施例1の中間層および比較例1のDLC被膜の、密着力、表面粗さ、硬さおよびヤング率を図6に示す。図6に示す結果から、実施例1の中間層は、非常に高い密着力を有していることがわかる。
次に、DLC被膜50について、硬質DLC層51の軟質DLC層52に対する膜厚比の最適化、ならびにDLC層51,52の合計数の最適化を検討する。
以下の実施例2〜5では、高速度工具鋼(SKH4)製の基板上に、図1に示す被膜100を形成することにより、試験片を作成した。以下の実施例2〜5および比較例2,3では、高速度工具鋼(SKH4)製の基板上に、図1に示す被膜100を形成することにより、試験片を作成した。実施例2〜5の被膜100および比較例2,3の被膜の形成は、図2に示すCVD装置1を用いて、前述した成膜条件で、直流パルスプラズマCVD法により行った。比較例2,3の硬質DLC層および軟質DLC層の成膜条件は、個々の成膜時間を除いて同一であった。軟質DLC層の窒素含有濃度(膜組成全体を1としたとき)は、5at.%である。
<実施例2>
硬質DLC層51と軟質DLC層52との膜厚比を約1:4にし、硬質DLC層51および軟質DLC層52の合計数を4とした。DLC被膜50の全体の膜厚W3は、2.2μmである。
<実施例3>
硬質DLC層51と軟質DLC層52との膜厚比を約1:4にし、硬質DLC層51および軟質DLC層52の合計数を8とした。DLC被膜50の全体の膜厚W3は、2.2μmである。
<実施例4>
硬質DLC層51と軟質DLC層52との膜厚比を約1:2にし、硬質DLC層51および軟質DLC層52の合計数を8とした。DLC被膜50の全体の膜厚W3は、2.0μmである。
<実施例5>
硬質DLC層51と軟質DLC層52との膜厚比を約1:4にし、硬質DLC層51および軟質DLC層52の合計数を16とした。DLC被膜50の全体の膜厚W3は、2.3μmである。
<比較例2>
硬質DLC層と軟質DLC層との膜厚比を約1:1にし、硬質DLC層および軟質DLC層の合計数を8とした。DLC被膜の全体の膜厚は、2.1μmである。
<比較例3>
硬質DLC層と軟質DLC層との膜厚比を2:1にし、硬質DLC層および軟質DLC層の合計数を16とした。DLC被膜の全体の膜厚は、2.1μmである。
<比較例4>
高速度工具鋼(SKH4)製の基板上に、SiとCとHとからなる中間層を形成し、かつ当該中間層の上に単層のDLC被膜を形成することにより、試験片を作成した。このDLC被膜は、炭素、水素および珪素を組成に含んでいる。中間層およびDLC被膜の形成は、図2に示すCVD装置1を用いて、直流パルスプラズマCVD法により行った。中間層の成膜条件は、処理圧力:200(Pa)および直流パルス電圧のデューティ比:10%である点を除くと、前述の中間層60の成膜条件と同一である。また、DLC被膜の成膜条件は、前述の硬質DLC層の成膜条件と同一である。比較例4のDLC被膜の全体の膜厚は、2.6μmである。
実施例2〜5の被膜100および比較例2〜4の被膜について、密着力、硬さ、およびヤング率に対する硬さの比(硬さ(H)/ヤング率(E))を測定した。実施例2〜5および比較例2〜4の、密着力、硬さ、ヤング率、およびヤング率に対する硬さの比(H/E)を図7に示す。図8は、硬質DLC層および軟質DLC層の膜厚比と、DLC被膜の基板に対する密着力との関係を示すグラフである。
図7および図8から、実施例2、実施例3、実施例4および実施例5において、良好な密着力を有することがわかる。とくに、硬質DLC層51および軟質DLC層52の膜厚比が1:2である場合に、極めて良好な密着力を有することがわかる。
また、図7から、DLC被膜50の全体の膜厚W3が2.3μm以下である場合において、DLC被膜50の基板に対する密着力が高いことがわかる。図3も併せて参照すると、DLC被膜50の全体の膜厚W3が2.3μm以下である場合、とくに、1.5以上2.3μm以下であることが、密着性の観点から望ましいことがわかる。
また、DLC層51,52の合計数が、4、8および16のいずれである場合にも、DLC被膜50の基板に対する密着力が高いことがわかる。
図9は、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの形成における、窒素ガス流量と、形成後の当該DLCの硬さおよびヤング率との関係を示すグラフである。
図9では、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの作成時に、雰囲気中に窒素ガスが存在している場合の方が、窒素ガスが存在していない場合よりも、得られるDLCの硬さおよびヤング率が低下した。また、図9では、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの作成時に、雰囲気中の窒素ガス流量が多くなるのに従って、得られるDLCの硬さおよびヤング率が低下した。図9から、窒素を組成に含むDLCの方が、窒素を組成に含まないDLCよりも軟らかいことがわかる。また、DLCの窒素含有濃度が増大するに従って、DLCが軟らかくなることもわかる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、窒素を膜組成に含むことにより、軟質DLC層52を硬質DLC層51よりも軟らかく設けたが、他の金属元素(たとえばタングステン等)を添加することによって、軟質DLC層52を軟らかく設けるようにしてもよい。
また、硬質DLC層51および軟質DLC層52は、窒素を除く部分の膜組成およびその組成比が共通しているとして説明したが、窒素を除く部分の膜組成およびその組成比が互いに異なっていてもよい。
また、DLC被膜50の各DLC層51,52として、水素および珪素を含む層を例に挙げたが、各DLC層51,52は、水素を含有していなくてもよいし、珪素を含有していなくてもよいし、その双方を含有していなくてもよい。
また、DLC被膜50は、直流パルスプラズマCVD法ではなく、他のプラズマCVD法(たとえば直流プラズマCVD法や高周波プラズマCVD法)を用いて形成されたDLC被膜であってもよい。また、DLC被膜50は、イオンビームスパッタ法や、DC(直流)スパッタ法、RF(高周波)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法を用いて形成されたDLC被膜であってもよい。
また、中間層60を設けない構成であってもよい。
また、炭素系被膜の一例としてDLC被膜50を例に挙げたが、炭素系被膜は、DLC被膜に限られず、c−BN 膜やmCN膜を含んでいてもよい。
また、摺動部材30の適用は、相手材と転がり接触する摺動部材に限られない。相手材と滑り接触する摺動部材にも摺動部材30を適用できる。具体的には、摩擦クラッチのクラッチプレート、ステアリング装置のウォーム(炭素系被膜を歯面に形成)、およびプロペラシャフト(駆動軸、雄スプライン部および/または雌スプライン部に炭素系被膜を形成)に摺動部材を適用できる。この場合、基材は、工具鋼、炭素鋼、軸受鋼、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼およびステンレス鋼のいずれかを含む。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
30…摺動部材、31…摺動面、50…DLC被膜(炭素系被膜)、51…硬質DLC層(硬質層)52…軟質DLC層(軟質層)、60…中間層、W1…硬質DLC層の膜厚(硬質層の膜厚)、W2…軟質DLC層の膜厚(軟質層の膜厚)、W3…DLC被膜の全体の膜厚

Claims (9)

  1. 硬質層と、前記硬質層よりも軟らかい軟質層とを交互に積層した積層構造を有する炭素系被膜であって、
    前記軟質層の膜厚が、前記硬質層の膜厚よりも大きい、炭素系被膜。
  2. 前記硬質層と前記軟質層との膜厚比が1:2である、請求項1に記載の炭素系被膜。
  3. 前記軟質層は、水素、炭素、珪素および窒素を含有しており、
    前記硬質層は、水素、炭素および珪素を含有し、窒素は含有しない、請求項1または2に記載の炭素系被膜。
  4. 前記軟質層および前記硬質層の合計数が4〜20であり、前記炭素系被膜の全体の膜厚が2.3μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素系被膜。
  5. 前記炭素系被膜の最表面層は前記硬質層によって構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素系被膜。
  6. 基材と、
    前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する、前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素系被膜と、
    前記炭素系被膜により形成された摺動面とを含む、摺動部材。
  7. 前記基材と前記炭素系被膜との間に配置される中間層をさらに含み、
    前記中間層は、直流パルスプラズマCVD法を用いて、処理圧力5Paおよび直流パルス電圧のデューティ比50%の条件下で作成されている、請求項6に記載の摺動部材。
  8. 前記炭素系被膜のうち最も前記中間層寄りの層は、前記軟質層によって構成されている、請求項6または7に記載の摺動部材。
  9. 基材と、硬質層と前記硬質層よりも軟らかい軟質層とを交互に積層した積層構造を有し、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する炭素系被膜と、前記炭素系被膜により形成された摺動面と、前記基材と前記炭素系被膜との間に配置される中間層とを含む摺動部材を製造する方法であって、
    炭素系化合物および珪素化合物を含む原料ガスを前記基材を収容する処理室内に供給し、処理圧力5Paおよび直流パルス電圧のデューティ比50%条件下で直流パルスプラズマCVD法により、前記中間層を形成する中間層形成工程を含む、摺動部材製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020199013A (ja) * 2019-06-07 2020-12-17 サーモス株式会社 断熱容器及びその製造方法

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