JP2016097592A - 積層塗膜及び塗装物 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成であって見る角度によって異なった色を見ることができる積層塗膜及び塗装物を提供する。
【解決手段】本発明の積層塗膜は、多数の球形粒子50を含有する下層塗膜30と、該下層塗膜上に積層されており着色材を含有する上層塗膜20とを備え、上層塗膜は可視光領域において、少なくとも2つの波長域において光透過性を有しており、球形粒子は、透明であって且つ下層塗膜の球形粒子を除く塗膜形成要素よりも大きな屈折率を有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層塗膜及び塗装物に関するものである。
自動車の車体等の塗装においては、防錆用の電着塗料によって下塗り塗膜を形成し、その上に下地隠蔽性を有する中塗り塗膜を形成し、さらにその上に上塗り塗膜(ベース塗膜およびクリヤ塗膜)を重ねる塗膜構造が一般に採用されている。また、省資源等の観点から、中塗り塗膜をなくし、下塗り塗膜の上に上塗り塗膜を直接重ねることも試みられている。例えば、カチオン電着塗膜の上に下地隠蔽性を有するベース塗膜を形成し、その上にクリヤ塗膜を形成することがなされている。
ところで、上塗り塗膜において、ベース塗膜とクリヤ塗膜の屈折率を調整することによって、自動車塗膜に新たな意匠性を付与する試みは従来より知られている。例えば、特許文献1には、クリヤ塗膜の屈折率を1.522とすること、並びにベース塗膜とクリヤ塗膜との屈折率差を0.015以上とすることによって、塗膜の光輝感が見る角度によって変わるようにすることが記載されている。さらに、特許文献1には、メタクリル酸t−ブチルを50質量%以上使用したアクリル樹脂が低い屈折率を発揮し、スチレンを40質量%以上使用したアクリル樹脂が高い屈折率を発揮することが記載されている。
また、特許文献2には、ZnOナノ粒子を樹脂中に分散させると当該樹脂の高屈折率化が図れること、そのような樹脂を塗料組成物として用いることが記載されている。
特開2006−007006号公報 特開2008−044835号公報
塗装は被塗物に意匠性を付与する側面が強いところ、近年は個人の嗜好が多様化しており、なかには見る角度によって色に変化が出ることが好まれることもある。しかしながら、色の変化を的確に制御する技術は上記の特許文献からは導き出すことができない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成であって見る角度によって異なった色を見ることができる積層塗膜及び塗装物を提供することにある。
本発明の積層塗膜は、多数の球形粒子を含有する下層塗膜と、該下層塗膜上に積層されており着色材を含有する上層塗膜とを備えており、前記上層塗膜は可視光領域において、少なくとも2つの波長域において光透過性を有しており、前記球形粒子は、透明であって且つ前記下層塗膜の前記球形粒子を除く塗膜形成要素よりも大きな屈折率を有している構成を備えている。
ここで、「着色材」は、顔料、染料など塗膜に色彩を与える成分をいう。
上記の構成により、下層塗膜において球形粒子が入射光をスペクトルに分光し、上層塗膜の光透過性を有する少なくとも2つの波長領域の光が出射されて、少なくとも2つの色の光が分離して見えるようになる。
本発明の好ましい態様では、前記球形粒子の屈折率は、前記下層塗膜の前記球形粒子を除く塗膜形成要素の屈折率よりも0.3以上大きい。これにより、球形粒子が入射孔をより確実にスペクトルに分光する。
本発明の好ましい態様では、前記下層塗膜の前記球形粒子を除く塗膜形成要素の屈折率は、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率と略同等である。これにより、上層塗膜と下層塗膜との界面での反射を抑止でき、積層塗膜からの光の出射量が減らないようにできる。
本発明の好ましい態様では、前記球形粒子はナノ粒子である。
本発明の好ましい態様では、前記上層塗膜の上にさらに保護塗膜が設けられている。これにより、上層塗膜を傷等から保護することができる。
本発明の好ましい態様では、前記保護塗膜の塗膜形成要素の屈折率は、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率と略同等である。これにより、上層塗膜と保護塗膜との界面での反射を抑止でき、積層塗膜からの光の出射量が減らないようにできる。
本発明の塗装物は、被塗物に上記のいずれかの積層塗膜を備えている。
本発明の積層塗膜によれば、上層塗膜は可視光領域において、少なくとも2つの波長域において光透過性を有しており、下層塗膜の球形粒子は屈折および反射によって入射光をスペクトルに分光し、スペクトルに分光された光が上層塗膜を通って出射されるので、出射光は前記の波長域に対応する色の光が分離して見える光となる。
実施形態に係る積層塗膜の断面模式図である。 実施形態に係る上層塗膜の透過光スペクトルを模式的に示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1に係る積層塗膜は上から順に、保護塗膜10、上層塗膜20、及び下層塗膜30の三層構造を有している。また、下層塗膜30の下には下地層40が設けられている。保護塗膜10は無色透明であり、例えば合成樹脂からなっている。上層塗膜20は有色透明であり、例えば合成樹脂に着色材を含有させてなっている。下層塗膜30は無色透明であるとともに透明な球形粒子50を多数含有しており、例えば合成樹脂からなっている。
本実施形態においては、上層塗膜20の着色材を除く塗膜構成要素の屈折率は、1.5であり、保護塗膜10の塗膜構成要素の屈折率および下層塗膜30の塗膜構成要素の屈折率も同じく1.5であり、空気の屈折率1.0よりも大きい。このため、保護塗膜10と上層塗膜20との境界および上層塗膜20と下層塗膜30との境界では光はほとんど反射せず、通過していくが、保護塗膜10の表面では光が一部反射して艶感が出る。また、下地層40は、例えば鋼製被塗物(例:自動車の車体外板)の表面に形成されたエポキシ系カチオン電着塗料による下塗り塗膜とその上に形成された、耐光劣化性、耐チッピング性及び発色性を高めるための下地隠蔽性を有する中塗り塗膜の二層からなる塗膜であって、下層塗膜30と下地層40との境界では光の反射はほとんどない。
上述のような屈折率とするために、本実施形態では保護塗膜10の塗膜構成要素と上層塗膜20の塗膜構成要素と下層塗膜30の塗膜構成要素とを同じものとしている。具体的にはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂を塗膜構成要素として使用している。
また、上層塗膜20には着色材として顔料が添加されている。それにより、上層塗膜20は図2に示す、青の波長域と赤の波長域は光を透過させ、それ以外の波長域では光を吸収する光透過特性を有している。
下層塗膜30に含有されている多数の球形粒子50,50,・・は透明であって、下層塗膜30の塗膜構成要素の屈折率よりも大きな屈折率を有している。そのため、下層塗膜30内で球形粒子50に入射した光は球形粒子50と下層塗膜30との界面で反射すると共に分光が行われて、雨粒により虹が生じるのと同じ原理で分光された光がスペクトルとして出射される。すなわち、下層塗膜30の塗膜構成要素と球形粒子50との間で光が出入りする際の屈折と、下層塗膜30の塗膜構成要素と球形粒子50との界面での複数回の反射とにより分光されるのである。このとき、分光がより確実に生じるように球形粒子50の屈折率は、下層塗膜30の塗膜構成要素の屈折率よりも0.3以上大きいことが好ましい。
球形粒子50は透明なガラス、酸化ジルコン、酸化チタンなどからなっている。球形粒子50は、下層塗膜30の塗膜構成要素に対して1体積%以上、10体積%以下加えることが好ましい。また、球形粒子50の粒径は下層塗膜30の膜厚以下が好ましい。例えば球形粒子50は球形のナノ粒子であってもよい。ナノ粒子の粒子径は、ナノレベルといえるものであれば特に制限されないが、通常は20nm以下である。より好ましくは1nm以上、19nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上、18nm以下である。
外部から本実施形態の積層塗膜へ入射する入射光60は、まず保護塗膜10内を通過して上層塗膜20へと入射する。保護塗膜10には着色材が含有されていないので光はほとんど吸収されずに上層塗膜20へ入射する。上層塗膜20では青と赤以外の波長域の光が着色材により吸収されるので、下層塗膜30へ入射するときには、赤と青が混色された光となっている。そして、下層塗膜30においては、上述のように多数の球形粒子50,50,・・によって赤と青が混色された光が分光されて、赤色光80と青色光70とが異なる出射角度となって分かれて上層塗膜20へと出射される。上層塗膜20および保護塗膜10においては、赤色光80と青色光70はそのまま通過していき、積層塗膜外へと出て行く。
上述のように出射した出射光により、積層塗膜は赤色の帯状に見える部分と、青色の帯状に見える部分と、それ以外の赤と青の混色として見える部分の3つの異なる色の部分に見えるようになるとともに、赤色の帯状に見える部分および青色の帯状に見える部分は、見る位置または見る角度を変えると、見える位置が変わる。本実施形態では、簡単な構成により複数の種類の色が見えるようになる。また、見る位置または見る角度を変えると、一部の色については見える場所が変わって特異な意匠性を発揮する。
<実施例>
実施例1に係る積層塗膜として、図1に示す構造を有しており、各層の塗膜の構成は表1に示す通りの積層塗膜を作製した。
Figure 2016097592
表1において「アクリル系樹脂」とあるのは、日本ペイント株式会社製アクリル樹脂(酸価:20mgKOH/g、水酸基価:75mgKOH/g、数平均分子量:5000、固形分60質量%)である。下層塗膜30に含有されている球状粒子として、住友大阪セメント社製ZrOナノ粒子分散液(ZrO固形分20質量%)を採用した。上層塗膜20に含有されている顔料として、ペリレン(BASF社製パリオゲンマルーンL3920)を採用した。ZrOの屈折率は2.0である。また、ペリレンは青の波長域と赤の波長域の光を透過させ、それ以外の波長域の光を吸収する。
本実施例の積層塗膜を太陽光の下において見てみると、赤色の帯状に見える部分と、青色の帯状に見える部分と、それ以外の赤と青の混色として見える部分の3つの異なる色の部分に見えるようになっていた。そして、赤色の帯状に見える部分および青色の帯状に見える部分は、見る位置または見る角度を変えると、見える位置が変わり、ユニークな色彩を放つ塗膜であるとの印象を受けた。
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
実施形態1における保護塗膜はなくてもよい。すなわち、下層塗膜と上層塗膜だけで二層構造の積層塗膜を構成してもよい。
上層塗膜において光透過性を有している波長域は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。光透過性を有している複数の波長域において、隣接する波長域のピーク波長同士は、50nm以上の差があることが好ましい。これにより目に見える色の違いが明確になるからである。光透過性を有している波長域は、赤、青の光の波長域に限られず、黄や緑、紫など、どのような色の波長域であってもよい。
上層塗膜における光透過性を有している波長域を少なくとも2つとする手段は着色材に限定されず、例えば塗膜構成要素自身の光吸収特性を利用してもよく、それと着色材との組み合わせであってもよい。
保護塗膜、上層塗膜、下層塗膜には、屈折率を下げるためにSiO等の無機の非球形のナノ粒子を添加してもよい。このように屈折率を下げることによって屈折率が比較的小さい原材料を用いて球形粒子を形成することができる。このようにすることにより、屈折率が1.6よりも小さいガラスビーズを球形粒子として利用することができる。
10 保護塗膜
20 上層塗膜
30 下層塗膜
50 球形粒子

Claims (7)

  1. 多数の球形粒子を含有する下層塗膜と、該下層塗膜上に積層されており着色材を含有する上層塗膜とを備えてなる積層塗膜において、
    前記上層塗膜は可視光領域において、少なくとも2つの波長域において光透過性を有しており、
    前記球形粒子は、透明であって且つ前記下層塗膜の前記球形粒子を除く塗膜形成要素よりも大きな屈折率を有している、積層塗膜。
  2. 前記球形粒子の屈折率は、前記下層塗膜の前記球形粒子を除く塗膜形成要素の屈折率よりも0.3以上大きい、請求項1に記載されている積層塗膜。
  3. 前記下層塗膜の前記球形粒子を除く塗膜形成要素の屈折率は、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率と略同等である、請求項1又は2に記載されている積層塗膜。
  4. 前記球形粒子はナノ粒子である、請求項1から3のいずれか一つに記載されている積層塗膜。
  5. 前記上層塗膜の上にさらに保護塗膜が設けられている、請求項1から4のいずれか一つに記載されている積層塗膜。
  6. 前記保護塗膜の塗膜形成要素の屈折率は、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率と略同等である、請求項5に記載されている積層塗膜。
  7. 被塗物に請求項1乃至6のいずれか一つに記載の積層塗膜を備える、塗装物。
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