JP2016093179A - 顆粒状ココアの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】容器内で少なくとも糖質を含む原料粉末が攪拌下に水蒸気を導入し、凝縮水で粉体表面に均一の層を発生させ、ココアパウダーを投入して原料粉末とココアパウダーを攪拌接触させる凝縮水の層を結着力として造粒した後に、さらに水蒸気を容器内に導入する顆粒状ココアの製造方法。水分負荷率(原料粉末の総重量に対する導入水蒸気の総重量比率)が、0.5〜10%である顆粒状ココアの製造方法。糖質を中心核とし、外殻がココアパウダーからなる層で覆われている顆粒状ココア。
【効果】造粒物が嵩密度が高く、僅かな水分量のため、除去すべき水分が少ないため、本来の香りが保持され、加熱によるオフレバーの発生が低く、更に中心核に糖質が存在することにより溶解し易い。
【選択図】なし
Description
ココア飲料の歴史は古く、中南米の古代文化圏では紀元前より飲用され、王侯貴族の間で普及していたとの記録がある。近年ではココアポリフェノールの様々な健康機能が明らかにされ、機能性食品としても注目を集めている。
[1] 容器内で少なくとも糖質を含む原料粉末が攪拌されている状況下に水蒸気を導入し、次いで、ココアパウダーを投入して糖質とココアパウダーを攪拌により接触させることで造粒する工程を含む顆粒状ココアの製造方法、
[2] 前記[1]に記載の製造方法により得られる顆粒状ココア、
[3] 糖質を中心核とし、その外殻がココアパウダーからなる層で覆われていることを特徴する顆粒状ココア、並びに
[4] 前記[2]または[3]に記載の顆粒状ココアを含有する調整ココア組成物に関する。
本発明の造粒手段では、極めて僅かな水分量で造粒物を調製できることを特徴としており、造粒後に除去すべき水分自体が無いか或いは非常に少ないため、長時間熱風に曝して乾燥する必要が無く、ココアパウダーが有している本来の香りが保持され、さらに加熱によるオフフレーバーの発生を抑制することができる。また、物性の点においては本手段により得られる造粒物は嵩密度が高く流動性に優れている。さらに、溶解性の点においては、糖質を中心核として外殻層にココアパウダーが付着している形態により、速やかに沈降して均一に分散させることができるため、溶解時の操作性や溶解後の安定性にも優れている。すなわち、本発明の手段を採用することにより、ココアパウダー本来の香りの保持と適正な溶解特性を併せ持つという従来技術では得られなかった優れた特徴を有する顆粒状ココアの提供が可能である。
本発明の調整ココア製造方法と従来技術による製造方法の比較評価を行った。
以下の条件で本発明の製造方法による実施例1の顆粒状ココアを調製した。
・造粒装置:過熱水蒸気渦流混合システム SSSMGS-12(有限会社G-Labo製)
・原料:グラニュー糖 CIM(伊藤忠製糖製)、 ハイファットココアパウダー PG22(油脂分22%、明治製)
・操作:造粒装置のジャケット温度を50℃に調整し、グラニュー糖を2.4kg投入した(原料温度は25℃)。次いで、アジテーター回転数150rpm、チョッパー回転数500rpmにて攪拌しながら、ヒーターで150℃に加熱した過熱水蒸気を、水蒸気流量2kg/hで60秒間導入した(水分量として33.3g)。この条件において水蒸気出口付近の温度(導入蒸気温度)は100℃であった。水蒸気導入終了直後にアジテーター回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpmに設定変更し、攪拌を継続しながらハイファットココアパウダーを0.6kg投入し、更に100℃の水蒸気を水蒸気流量2kg/hで30秒間を導入した(水分量として16.7g)。水蒸気投入後、継続して更に60秒間混合し、排出後に目開き1.41mmの篩で大粒になった粒子を取り除き、本発明実施例1の調整ココア顆粒2.69kgを得た(歩留り90.0%)。本実施例では造粒物の水分含量が1.45%と十分に低い値であったため、乾燥工程の必要は無かった。なお、本条件において導入した水蒸気の総水分量は50g、原料の総重量に対する水分負荷率は1.67%であった。
以下の条件で攪拌造粒手段による比較例1の顆粒状ココアを調製した。
・造粒装置:過熱水蒸気渦流混合システム SSSMGS-12(有限会社G-Labo製)
・乾燥装置:流動層造粒コーティング装置 FLO-5(株式会社大川原製作所製)
・原料:グラニュー糖 CIM(伊藤忠製糖製)、 ハイファットココアパウダー PG22(油脂分22%、明治製)
・操作:造粒装置のジャケット温度を50℃に調整し、グラニュー糖を2.4kg投入した。
次いで、アジテーター回転数150rpm、チョッパー回転数500rpmにて攪拌しながら、常温(25℃)の純水200mlを90ml/分の速度でグラニュー糖に向けて噴霧した。直後にアジテーター回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpmに攪拌速度を設定し、攪拌しながらハイファットココアパウダー0.6kgを投入し、更に常温の純水100mlを約90ml/分の速度で噴霧した。噴霧終了後、継続して更に60秒間攪拌した。得られた造粒物の水分含量は3.15%であったため、前操作に次いで乾燥処理を施した。乾燥装置を70℃に十分に予熱し、造粒物の全量を乾燥装置に移し、吸気温度100℃で3分間流動乾燥し、排出後に目開き1.41mmの篩で大粒になった粒子を取り除き、比較例1の調整ココア顆粒2.8kgを得た(歩留り95%)。最終的な水分含量は0.75%であった。また、本条件において、噴霧した総水分量は300g、原料の総重量に対する水分負荷率は10.0%であった。
以下の条件で流動層造粒手段による比較例2の顆粒状ココアを調製した。
・造粒装置:流動層造粒コーティング装置 FLO-5(株式会社大川原製作所製)
・原料:グラニュー糖 CIM(伊藤忠製糖製)、 ハイファットココアパウダー PG22(油脂分22%、明治製)
・操作:造粒装置を吸気温度70℃で十分に予熱しておき、グラニュー糖2.4kg及びハイファットココアパウダー0.6kgを投入し、適度に原料粉末が流動するように吸排気量を調整して3分間流動混合した。その後、吸気温度70℃で流動状態を保持したまま85℃の純水400mlを80ml/分の速度で5分間噴霧して造粒し、水分含量7.96%の顆粒物を得た。さらに、吸気温度を100℃に変更し、全体が激しく吹き上がるように吸排気量を調節して、10分間流動乾燥し、排出後に目開き1.41mmの篩で大粒になった粒子を取り除き、比較例2の調整ココア顆粒2.9kgを得た(歩留り97%)。最終的な水分含量は5.76%であった。
また、本条件において、噴霧した総水分量は400g、原料の総重量に対する水分負荷率は13.3%であった。
<流動性評価>
パウダーテスターPT-E型(ホソカワミクロン社製)を用い、本装置付属の取扱説明書に従って安息角、圧縮度、スパチュラ角、均一度の測定を行い、同説明書記載の指数表を参照して各測定値を指数化し、これらの指数を合算して得られた流動性指数から流動性の程度を評価した。流動性指数は大きいほど流動性がよく、ハンドリングに優れている。なお流動性の程度は流動性指数より、良好な順から、最も良好(90.0〜100)、かなり良好(80.0〜89.9)、良好(70.0〜79.9)、普通(60.0〜69.9)、あまり良くない(40.0〜59.9)、不良(20.0〜39.9)、非常に悪い(0〜19.9)、で示した。なお、本評価方法はCarrの流動特性評価法(Chemical Engineering, Jan. 18, pp. 163-168)に基づくものである。
溶解性については以下の方法で評価した。
〔沈降性〕
熱湯100gを入れた200mlビーカーに造粒物の検体20gをそっと浮かべ、完全に水没するまでにかかる時間を測定した。
上記「沈降性」試験終了後、スパーテルで1秒間に2回の強さで20秒攪拌した後、速やかに60メッシュ(目開き250μm)の篩に通し、篩上の溶け残りを目視評価した。
上記「溶解性」試験における篩通過後の溶液を静置し、1分間経過時の溶解状態を目視観察した。
実施例1、比較例1および2で得られた調整ココア顆粒について、20gを約90℃の熱湯140mlに溶解してココア飲料を調製し、10名のパネラーで香味評価した。
実施例1、比較例1および2で得られた調整ココア顆粒について、上記方法で評価した結果を表1に示した。
実施例1の製造条件をベースとして、導入する水蒸気温度の影響を実施例2〜7で検証した。各実施例の条件と結果を表2に示した(なお表中には実施例1を再掲した)。なお、実施例2〜4では油脂分の少ないローファットココアパウダー(ココアパウダー PG12、油脂分12%、明治製)を使用した。
実施例1の製造条件をベースとして、水蒸気導入量(水分負荷率)の影響を実施例8〜13で検証した。各条件と結果を表3に示した(なお表中には実施例1を再掲した)。
実施例3の製造条件をベースに、造粒容器温度の歩留りに与える影響を実施例14〜17で検証した。各条件と結果を表4に示した。
ショ糖に代えて2.6kgのエリスリトールを原料とするほかは実施例11と同様の条件で操作を行い、実施例18の本発明の顆粒状ココアを調製した(歩留り97.3%)。造粒後の水分は1.15%であり、乾燥処理は行わなかった。調製品の評価結果は次の通り。流動性指数:77.5(かなり良い)、沈降性:0秒、溶解性:全量が溶解、安定性:安定、香味評価:期待するココア感を有し、エリスリトールに特有のすっきりとした甘みが感じられる良好な香味、総合的にも「良好」と評価された。本実施例の結果より、本発明の製造方法はショ糖以外にも低カロリーの糖質でも適用可能であることを確認した。
ローファットココアパウダーを10%含有するショ糖(ココアプレパレーション)2.5kgを中心核となる粉末原料として70℃に温度調節した造粒容器に投入し、実施例1と同様の条件で攪拌した。攪拌状態を維持しながら125℃の水蒸気を4kg/hの速度で50秒間導入した後に、ローファットココアパウダー0.4kgを投入し、一次的な顆粒物を形成させた。
次いで、前記同条件で水蒸気導入を行い、ローファットココアパウダー0.2kgを投入して、ココアパウダーからなる外殻層を成長させた。さらに、同条件での水蒸気を25秒間導入してココアパウダー層を固着し、100℃の熱風で3分間乾燥させ、実施例18の本発明の顆粒状ココアを調製した。本操作における水分負荷率は3.8%、歩留りは95.3%であり、製造上の問題も認められなかった。得られた顆粒物の物性(流動性、溶解特性)も良好で、香味評価に関しては、ココア原料使用比率の増加により、更なるココア感の向上が認められた。本試験結果より、水蒸気導入とココアパウダー付着を繰り返すことで、ココアパウダーからなる外殻層の厚みを調製できることが確認された。
実施例1の顆粒状ココアを用いて、表5に示す配合で各原料をビニール袋に入れ、均一になるまで約5分間振り混ぜ、本発明実施例19の飲料用調整ココア組成物を調製した。
Claims (6)
- 容器内で少なくとも糖質を含む原料粉末が攪拌されている状況下に水蒸気を導入し、次いで、ココアパウダーを投入して前記原料粉末とココアパウダーを攪拌接触させることによって造粒する工程を含む顆粒状ココアの製造方法。
- 攪拌接触により造粒した後に、さらに水蒸気を容器内に導入する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の顆粒状ココアの製造方法。
- 水分負荷率(原料粉末の総重量に対する導入水蒸気の総重量比率)が、0.5〜10%である請求項1または2記載の顆粒状ココアの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られる顆粒状ココア。
- 糖質を中心核とし、その外殻がココアパウダーからなる層で覆われていることを特徴する顆粒状ココア。
- 請求項4または5記載の顆粒状ココアを含有する調整ココア組成物。
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JOURNAL OF FOOD ENGINEERING, 2010, VOL.97, PP.283-291, JPN6017015977 * |
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