JP2016092294A - 光電変換素子、太陽電池、および光電変換素子の製造方法 - Google Patents

光電変換素子、太陽電池、および光電変換素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子であって、耐湿性に優れた光電変換素子、および、この光電変換素子を用いた太陽電池製造方法を提供する。【解決手段】光吸収剤を含む感光層13Aを有する光電変換素子であって、光吸収剤が、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aのカチオンと、特定の金属原子Mのカチオンと、アニオン性原子Xのアニオンとを有するペロブスカイト化合物を含み、感光層表面は、水の接触角が、25℃で70°〜150°である光電変換素子、およびこの光電変換素子を用いた太陽電池。上記光電変換素子の製造方法であって、導電性支持体11a上に、MX2とAXと溶媒とを含有する溶液を塗布し、乾燥することにより、前記導電性支持体上に、水の接触角が25℃で70°〜150°である表面を有する感光層を形成する工程を含む、製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子、太陽電池、および光電変換素子の製造方法に関する。
光電変換素子は、各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。太陽電池は、非枯渇性の太陽エネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が期待されている。この中でも、増感剤として有機色素またはRuビピリジル錯体等を用いた色素増感太陽電池は、研究開発が盛んに進められ、光電変換効率が11%程度に到達している。
その一方で、近年、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物として金属ハロゲン化物を用いた太陽電池が、比較的高い光電変換効率を達成できるとの研究成果が報告され、注目を集めている。
例えば、特許文献1には、第1カチオンと、第2カチオンと、少なくとも1つのハライドアニオンまたはカルコゲニドアニオンとを含むペロブスカイト型結晶構造を有する光起電装置(photovoltaic device)が記載されている。特許文献1によれば、第1カチオンは、式:(RN)、または、式:(RN=CH−Rで表される有機カチオンであり、R〜Rは、各々、水素原子、置換もしくは無置換のC〜C20のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基であるとされている(同特許文献の請求項28および29)。
国際公開第2014/045021号パンフレット
上述のように、ペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物(以下、「ペロブスカイト化合物」ともいう)を用いた光電変換素子ないし太陽電池は、光電変換効率の向上に一定の成果が得られている。しかし、この光電変換素子ないし太陽電池は、近年、注目されたものであり、光電変換効率以外の電池性能についてはほとんど知られていない。
光電変換素子および太陽電池には、高い光電変換効率に加え、これらが実際に使用される現場環境において、初期性能を維持できる耐久性が求められる。
しかし、ペロブスカイト化合物は高湿環境下で損傷を受けやすいことが知られている。実際、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた光電変換素子ないし太陽電池は、高湿環境において光電変換効率が低下してしまう。
本発明は、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた光電変換素子であって、耐湿性に優れた光電変換素子、および、この光電変換素子を用いた太陽電池を提供することを課題とする。また、本発明は、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた光電変換素子の製造方法であって、耐湿性に優れた光電変換素子を得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子ないし太陽電池の製造において、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として含む感光層を、感光層表面に対する水の接触角が特定の範囲内となるように形成することにより、高湿環境においても光電変換効率が低下しにくい光電変換素子ないし太陽電池が得られることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子であって、
上記光吸収剤が、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aのカチオンと、周期表第一族元素以外の金属原子Mのカチオンと、アニオン性原子Xのアニオンとを有するペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を含み、
上記感光層表面は、水の接触角が、25℃で70°〜150°である、光電変換素子。
〔2〕
上記感光層表面は、水の接触角が、25℃で85°〜120°である、〔1〕に記載の光電変換素子。
〔3〕
上記カチオン性有機基Aが下記式(1)で表されるカチオン性有機基である、〔1〕または〔2〕に記載の光電変換素子。
式(1) R1a−NH
式中、R1aは炭素数20以下の炭化水素基であり、この炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されている。
〔4〕
上記カチオン性有機基Aのカチオンが、上記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンIと下記式(2)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンIIとからなり、
感光層中に存在する全ペロブスカイト型結晶構造中、上記有機カチオンIの含有量と上記有機カチオンIIの含有量が、モル比で、[有機カチオンIの含有量]:[有機カチオンIIの含有量]=99:1〜20:80を満たす、〔1〕または〔2〕に記載の光電変換素子。
式(2) R2a−NH
式中、R2aは炭素数20以下の無置換の炭化水素基である。
〔5〕
上記R2aの炭素数が1または2である、〔4〕に記載の光電変換素子。
〔6〕
上記R1aが有するフッ素原子の数と水素原子の数が下記式を満たす、〔3〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
0.5≦フッ素原子数/(水素原子数+フッ素原子数)≦1
〔7〕
上記R1aが少なくとも1つのトリフルオロメチル基を有する、〔3〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔8〕
感光層が、MXとAXと2種以上の溶媒とを含有する溶液を塗布し、乾燥して形成され、上記2種以上の溶媒のうち、最も沸点の高い溶媒の溶媒極性パラメータEが、最も沸点の高い溶媒以外の溶媒の溶媒極性パラメータEよりも小さい、〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔9〕
上記第一電極と上記第二電極との間に正孔輸送層を有する、〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔10〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
〔11〕
光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、
上記光吸収剤が、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aのカチオンと、周期表第一族元素以外の金属原子Mのカチオンと、アニオン性原子Xのアニオンとを有するペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を含み、
上記製造方法が、上記導電性支持体上に、MXとAXと溶媒とを含有する溶液を塗布し、乾燥することにより、上記導電性支持体上に、水の接触角が25℃で70°〜150°である表面を有する感光層を形成する工程を含む、製造方法。
〔12〕
上記の感光層を形成する工程が、水の接触角が25℃で85°〜120°である表面を有する感光層を形成する工程である、〔11〕に記載の製造方法。
〔13〕
上記カチオン性有機基Aが下記式(1)で表されるカチオン性有機基である、〔11〕または〔12〕に記載の製造方法。
式(1) R1a−NH
式中、R1aは炭素数20以下の炭化水素基であり、この炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されている。
〔14〕
上記のカチオン性有機基Aのカチオンが、上記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンIと下記式(2)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンIIとからなり、
感光層中に存在する全ペロブスカイト型結晶構造中、上記有機カチオンIの含有量と上記有機カチオンIIの含有量が、モル比で、[有機カチオンIの含有量]:[有機カチオンIIの含有量]=99:1〜20:80を満たす、〔11〕または〔12〕に記載の製造方法。
式(2) R2a−NH
式中、R2aは炭素数20以下の無置換の炭化水素基である。
〔15〕
上記R2aの炭素数が1または2である、〔14〕に記載の製造方法。
〔16〕
上記R1aが有するフッ素原子の数と水素原子の数が下記式を満たす、〔13〕〜〔15〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
0.5≦フッ素原子数/(水素原子数+フッ素原子数)≦1
〔17〕
上記R1aが少なくとも1つのトリフルオロメチル基を有する、〔13〕〜〔16〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔18〕
上記のMXとAXと溶媒とを含有する溶液において、上記溶媒が2種以上の溶媒からなり、上記2種以上の溶媒のうち、最も沸点の高い溶媒の溶媒極性パラメータEが、最も沸点の高い溶媒以外の溶媒の溶媒極性パラメータEよりも小さい、〔11〕〜〔17〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔19〕
上記光電変換素子が、上記第一電極と上記第二電極との間に正孔輸送層を有する、〔11〕〜〔18〕のいずれか1つに記載の製造方法。
本明細書において、各化学式は、ペロブスカイト化合物の化学構造の理解のために、一部を示性式として表記することもある。これに伴い、各化学式において、部分構造を(置換)基、イオンまたは原子等と称するが、本明細書において、これらは、(置換)基、イオンまたは原子等のほかに、上記式で表される(置換)基もしくはイオンを構成する元素団、または、元素を意味することがある。
本明細書において、化合物の表記については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。さらに、置換または無置換を明記していない基ないし化合物については、所望の効果を奏する範囲で、任意の置換基を有する基ないし化合物を含む意味である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、または複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、環、例えば脂環、芳香族環、ヘテロ環はさらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
また、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の光電変換素子および太陽電池は、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いていながらも、耐湿性に優れる。また、本発明の光電変換素子の製造方法によれば、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いていながらも、耐湿性に優れた光電変換素子を得ることができる。
本発明の光電変換素子の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 本発明の光電変換素子の厚い感光層を有する好ましい態様について模式的に示した断面図である。 本発明の光電変換素子の別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 本発明の光電変換素子のさらに別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。
<<光電変換素子>>
本発明の光電変換素子は、導電性支持体と、光吸収剤を含む感光層とを有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有し、好ましくは、第一電極と第二電極の間に設けられた正孔輸送層を有する。感光層および第二電極はこの順で導電性支持体上に設けられている。また、光電変換素子が正孔輸送層を有する場合には、感光層、正孔輸送層および第二電極はこの順で導電性支持体上に設けられている。
光吸収剤は、後述するペロブスカイト化合物を少なくとも1種含んでいる。光吸収剤は、ペロブスカイト化合物と併せて、ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤を含んでいてもよい。ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤としては、例えば金属錯体色素および有機色素が挙げられる。
本発明において、「感光層を導電性支持体上に有する」とは、導電性支持体の表面に接して感光層を有する態様、および、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様を含む意味である。
導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電性支持体と感光層との間に設けられる他の層としては、例えば、多孔質層、ブロッキング層、電子輸送層および正孔輸送層等が挙げられる。
本発明において、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様としては、例えば、感光層が、多孔質層の表面に薄い膜状等に設けられる態様(図1参照)、多孔質層の表面に厚く設けられる態様(図2参照)、ブロッキング層の表面に薄く設けられる態様、および、ブロッキング層の表面に厚い膜状に設けられる態様(図3参照)、電子輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(図4参照)に設けられる態様、および、正孔輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(図5参照)に設けられる態様が挙げられる。感光層は、線状または分散状に設けられてもよいが、好ましくは膜状に設けられる。
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子および太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。
以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
図1〜図5において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
なお、図1および図2は、多孔質層12を形成する微粒子の大きさを強調して示してある。これらの微粒子は、好ましくは、導電性支持体11に対して水平方向および垂直方向に詰まり(堆積または密着して)、多孔質構造を形成している。
本明細書において、単に「光電変換素子10」という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A、10B、10C、10Dおよび10Eを意味する。このことは、システム100、第一電極1についても同様である。また、単に、「感光層13」という場合は、特に断らない限り、感光層13A、13Bおよび13Cを意味する。同様に、「正孔輸送層3」という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層3Aおよび3Bを意味する。
本発明の光電変換素子の好ましい態様として、例えば、図1に示す光電変換素子10Aが挙げられる。図1に示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、第一電極1Aと、第二電極2と、第一電極1Aと第二電極2の間に、後述する正孔輸送材料を含む正孔輸送層3Aとを有している。
第一電極1Aは、支持体11aおよび透明電極11bからなる導電性支持体11と、多孔質層12と、多孔質層12上に感光層13Aとを有している。また透明電極11b上にブロッキング層14を有し、ブロッキング層14上に多孔質層12が形成される。このように多孔質層12を有する光電変換素子10Aは、感光層13Aの表面積が大きくなるため、電荷分離及び電荷移動効率が向上すると推測される。
図2に示す光電変換素子10Bは、図1に示す光電変換素子10Aの感光層13Aを厚く設けた好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Bにおいて、正孔輸送層3Bは薄く設けられている。光電変換素子10Bは、図1で示した光電変換素子10Aに対して感光層13Bおよび正孔輸送層3Bの膜厚の点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の光電変換素子の別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Cは、図2に示す光電変換素子10Bに対して多孔質層12を設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。すなわち、光電変換素子10Cにおいて、感光層13Cはブロッキング層14の表面に厚い膜状に形成されている。
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Dは、図3に示す光電変換素子10Cに対してブロッキング層14に代えて電子輸送層15を設けた点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Cと同様に構成されている。第一電極1Dは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、電子輸送層15および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Dは、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。これにより、光電変換素子の生産性が向上し、しかも薄型化またはフレキシブル化が可能になる。
図5に示す光電変換素子10Eは、本発明の光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Eを含むシステム100Eは、システム100Aと同様に電池用途に応用したシステムである。
光電変換素子10Eは、第一電極1Eと、第二電極2と、第一電極1Eおよび第二電極2の間に電子輸送層4とを有している。第一電極1Eは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、正孔輸送層16および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Eは、光電変換素子10Dと同様に、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として、機能する。
すなわち、光電変換素子10Aにおいて、導電性支持体11を透過して、または第二電極2を透過して感光層13に入射した光は光吸収剤を励起する。励起された光吸収剤はエネルギーの高い電子を有しており、この電子を放出できる。エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体となる。
光電変換素子10A〜10Dにおいては、光吸収剤から放出された電子は、光吸収剤間を移動して導電性支持体11に到達する。このとき、エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体となっている。導電性支持体11に到達した電子が外部回路6で仕事をした後、第二電極2を経て(正孔輸送層3がある場合にはさらに正孔輸送層3を経由して)、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
一方、光電変換素子10Eにおいては、光吸収剤から放出された電子は、感光層13Cから電子輸送層4を経て第二電極2に到達し、外部回路6で仕事をした後に導電性支持体11を経て、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
光電変換素子10において、このような、上記光吸収剤の励起および電子移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
光電変換素子10A〜10Dにおいて、感光層13から導電性支持体11への電子の流れ方は、多孔質層12の有無およびその種類等により、異なる。本発明の光電変換素子10においては、光吸収剤間を電子が移動する電子伝導が起こる。したがって、多孔質層12を設ける場合、多孔質層12は従来の半導体以外に絶縁体で形成することができる。多孔質層12が半導体で形成される場合、多孔質層12の半導体微粒子内部や半導体微粒子間を電子が移動する電子伝導も起こる。一方、多孔質層12が絶縁体で形成される場合、多孔質層12での電子伝導は起こらない。多孔質層12が絶縁体で形成される場合、絶縁体微粒子に酸化アルミニウム(Al)の微粒子を用いると、比較的高い起電力(Voc)が得られる。
なお、上記他の層としてのブロッキング層14が導体または半導体により形成された場合もブロッキング層14での電子伝導が起こる。
また、電子輸送層15でも、電子伝導が起こる。
本発明の光電変換素子および太陽電池は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。
本発明において、光電変換素子または太陽電池に用いられる材料および各部材は、光吸収剤を除いて、常法により調製することができる。ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子または太陽電池について、例えば、特許文献1を参照することができる。また、色素増感太陽電池について、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,084,365号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
以下、本発明の光電変換素子および太陽電池の主たる部材および化合物の好ましい態様について、説明する。
<第一電極1>
第一電極1は、導電性支持体11と感光層13とを有し、光電変換素子10において作用電極として機能する。
第一電極1は、図1〜5に示されるように、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15および正孔輸送層16の少なくとも1つの層を有することが好ましい。
第一電極1は、短絡防止の点で少なくともブロッキング層14を有することが好ましく、光吸収効率の点および短絡防止の点で多孔質層12およびブロッキング層14を有していることがさらに好ましい。
また、第一電極1は、有機材料で形成できる点で、電子輸送層15または正孔輸送層16を有することが好ましい。
− 導電性支持体11 −
導電性支持体11は、導電性を有し、感光層13等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体11は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された構成、または、ガラスもしくはプラスチックの支持体11aとこの支持体11aの表面に形成された導電膜としての透明電極11bとを有する構成が好ましい。
なかでも、図1〜図5に示されるように、ガラスまたはプラスチックの支持体11aの表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明電極11bを成膜した導電性支持体11がさらに好ましい。プラスチックで形成された支持体11aとしては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体11aを形成する材料としては、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、支持体11aの表面積1m当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体11を用いる場合、光は支持体11a側から入射させることが好ましい。
導電性支持体11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
支持体11aおよび導電性支持体11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明電極11bを設ける場合、透明電極11bの膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
導電性支持体11または支持体11aは、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、導電性支持体11または支持体11aの表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
− ブロッキング層14 −
本発明においては、光電変換素子10A〜10Cのように、好ましくは、透明電極11bの表面に、すなわち、導電性支持体11と、多孔質層12、感光層13または正孔輸送層3等との間に、ブロッキング層14を有している。
光電変換素子および太陽電池において、例えば感光層13または正孔輸送層3と、透明電極11bとが電気的に接続すると逆電流を生じる。ブロッキング層14は、この逆電流を防止する機能を果たす。ブロッキング層14は短絡防止層ともいう。
このブロッキング層は、光電変換素子が電子輸送層を有する場合にも設けられてもよい。例えば、光電変換素子10Dの場合、導電性支持体11と電子輸送層15との間に設けられてもよく、光電変換素子10Eの場合、第二電極2と電子輸送層4との間に設けられてもよい。
ブロッキング層14を形成する材料は、上記機能を果たすことのできる材料であれば特に限定されないが、可視光を透過する物質であって、導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質であることが好ましい。「導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質」とは、具体的には、伝導帯のエネルギー準位が、導電性支持体11を形成する材料(透明電極11bを形成する金属酸化物)の伝導帯のエネルギー準位以上であり、かつ、多孔質層12を構成する材料の伝導帯や光吸収剤の基底状態のエネルギー準位より低い化合物(n型半導体化合物)をいう。
ブロッキング層14を形成する材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられる材料でもよく、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化タングステン等も挙げられる。なかでも、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましい。
ブロッキング層14の膜厚は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
− 多孔質層12 −
本発明において、光電変換素子10Aおよび10Bのように、好ましくは、透明電極11b上に多孔質層12を有している。ブロッキング層14を有している場合、多孔質層12はブロッキング層14上に形成されることが好ましい。
多孔質層12は、表面に感光層13を担持する足場として機能する層である。太陽電池において、光吸収効率を高めるためには、少なくとも太陽光等の光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましく、多孔質層12の全体としての表面積を大きくすることが好ましい。
多孔質層12は、多孔質層12を形成する材料の微粒子が堆積または密着してなる、細孔を有する微粒子層であることが好ましい。多孔質層12は、2種以上の多微粒子が堆積してなる微粒子層であってもよい。多孔質層12が細孔を有する微粒子層であると、光吸収剤の担持量(吸着量)を増量できる。
多孔質層12の表面積を大きくするには、多孔質層12を構成する個々の微粒子の表面積を大きくすることが好ましい。本発明では、多孔質層12を形成する微粒子を導電性支持体11等に塗設した状態で、この微粒子の表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。多孔質層12を形成する微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径において、1次粒子として0.001〜1μmが好ましい。微粒子の分散物を用いて多孔質層12を形成する場合、微粒子の上記平均粒径は、分散物の平均粒径として0.01〜100μmが好ましい。
多孔質層12を形成する材料は、導電性に関しては特に限定されず、絶縁体(絶縁性の材料)であっても、導電性の材料または半導体(半導電性の材料)であってもよい。
多孔質層12を形成する材料としては、例えば、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(後述する光吸収剤を除く。)、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト)、またはカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤおよびカーボンナノロッド等を含む)を用いることができる。
金属のカルコゲニドとしては、特に限定されないが、好ましくは、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウムまたはタンタルの各酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。金属のカルコゲニドの結晶構造として、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されないが、遷移金属酸化物等が挙げられる。例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。なかでも、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素膜(グラフェンシート)を筒状に丸めた形状を有する。カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に分類される。多孔質層12としては、いずれのカーボンナノチューブも特に限定されず、用いることができる。
多孔質層12を形成する材料は、なかでも、チタン、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウムもしくはケイ素の酸化物、またはカーボンナノチューブが好ましく、酸化チタンまたは酸化アルミニウムがさらに好ましい。
多孔質層12は、上述の、金属のカルコゲニド、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ケイ素の酸化物およびカーボンナノチューブのうち少なくとも1種で形成されていればよく、複数種で形成されていてもよい。
多孔質層12の膜厚は、特に限定されないが、通常0.1〜100μmの範囲であり、太陽電池として用いる場合は、0.1〜50μmが好ましく、0.3〜30μmがより好ましい。
− 電子輸送層15−
本発明においては、光電変換素子10Dのように、好ましくは、透明電極11bの表面に電子輸送層15を有している。
電子輸送層15は、感光層13で発生した電子を導電性支持体11へと輸送する機能を有する。電子輸送層15は、この機能を発揮することができる電子輸送材料で形成される。電子輸送材料としては、特に限定されないが、有機材料(有機電子輸送材料)が好ましい。有機電子輸送材料としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PCBM)等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の低分子化合物、または、高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
− 正孔輸送層16−
本発明においては、光電変換素子10Eのように、好ましくは、透明電極11bの表面に正孔輸送層16を有している。
正孔輸送層16は、形成される位置が異なること以外は、後述する正孔輸送層3と同じである。
− 感光層(光吸収層)13 −
感光層13は、好ましくは、後述するペロブスカイト化合物を光吸収剤として多孔質層12(光電変換素子10Aおよび10B)、もしくはブロッキング層14(光電変換素子10C))、電子輸送層15(光電変換素子10D)、または、正孔輸送層16(光電変換素子10E)の各層の表面(感光層13が設けられる表面が凹凸の場合の内表面を含む。)に設けられる。
本発明において、光吸収剤は、上記の特定のペロブスカイト化合物を少なくとも1種含有していればよく、2種以上のペロブスカイト化合物を含有してもよい。
感光層13は、単層であっても2層以上の積層であってもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してもよく、また感光層と感光層の間に正孔輸送材料を含む中間層を積層してもよい。
感光層13を導電性支持体11上に有する形態は、上述した通りである。感光層13は、好ましくは、励起した電子が導電性支持体11に流れるように、上記各層の表面に設けられる。このとき、感光層13は、上記各層の表面全体に設けられていてもよく、その表面の一部に設けられていてもよい。
感光層13の膜厚は、導電性支持体11上に感光層13を有する態様に応じて適宜に設定され、特に限定されない。例えば、感光層13の膜厚(多孔質層12を有する場合、多孔質層12の膜厚との合計膜厚)は、0.1〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがさらに好ましく、0.3〜30μmが特に好ましい。
本発明において、感光層を厚い膜状に設ける場合(感光層13Bおよび13C)、この感光層に含まれる光吸収剤は正孔輸送材料として機能することもある。
本発明の光電変換素子が有する感光層13は、感光層表面(導電性支持体11とは反対側の表面)に対する水の接触角が70°〜150°である。すなわち、本発明の光電変換素子は、水の接触角が70°〜150°である感光層表面に、他の層(好ましくは正孔輸送層)が形成される。他の層が形成される前において、感光層表面に対する水の接触角が70°〜150°であることにより、感光層の疎水性が高まり、高湿環境下における光電変換素子の性能の劣化を効果的に抑えることができる。
本明細書において、感光層表面に対する水の接触角は、日本化学会編「新実験化学講座 1 8−界面とコロイド」(丸善、1977年発行)の97頁に記載された液滴法に準じて測定した値を用いる。すなわち、本発明において、感光層表面に対する水の接触角の値は、特に断らない限り、1μLの水滴(純水)を針先に作り、これを感光層の表面に触れさせて液滴を作り、その1分後にDropMaster500(商品名、協和界面科学社製)を用いて接触角を測定した値をいい、より詳細には後述の実施例に記載の方法で測定される。本明細書において、接触角の測定時の温度は25℃とする。
感光層表面に対する水の接触角が小さすぎると、感光層の吸湿を十分に抑えることができず、得られる光電変換素子は耐久性に劣る。
一方、感光層表面に対する水の接触角が大きすぎてもまた、十分な耐久性が得られない。その理由は定かではないが、感光層の疎水性が高くなりすぎると、感光層におけるペロブスカイト構造の安定性が低下することが一因と考えられる。
感光層は、正孔輸送層を形成する前の状態において、その表面に対する水の接触角が75°〜140°であることが好ましく、80°〜130°であることがより好ましく、85°〜120°であることがさらに好ましく、100°〜120°であることがさらに好ましい。
感光層表面に対する水の接触角は、後述するように、感光層を形成するペロブスカイト化合物に疎水性の基を導入したり、感光層を形成する際に用いる溶媒として特定の溶媒を用いたりすることにより調節することができる。
〔感光層の光吸収剤〕
感光層13は、光吸収剤として、「周期表第一族元素またはカチオン性有機基A」と、「周期表第一族元素以外の金属原子M」と、「アニオン性原子X」と、を有するペロブスカイト化合物を含有する。
ペロブスカイト化合物の周期表第一族元素またはカチオン性有機基A、金属原子Mおよびアニオン性原子Xは、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造において、カチオン(便宜上、カチオンAということがある)、金属カチオン(便宜上、カチオンMということがある)およびアニオン(便宜上、アニオンXということがある)の各構成イオンとして存在する。
本発明において、カチオン性有機基とは、ペロブスカイト型結晶構造においてカチオンになる性質を有する有機基をいい、アニオン性原子とはペロブスカイト型結晶構造においてアニオンになる性質を有する原子をいう。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、カチオンAは、周期表第一族元素のカチオンまたはカチオン性有機基Aからなる有機カチオンである。カチオンAは有機カチオンが好ましい。
周期表第一族元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはセシウム(Cs)の各元素のカチオン(Li、Na、K、Cs)が挙げられ、特にセシウムのカチオン(Cs)が好ましい。
有機カチオンは、下記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンであることがさらに好ましい。
式(1):R1a−NH
式中、R1aは炭素数20以下の炭化水素基を表し、この炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子はフッ素原子で置換されている。R1aは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数20以下の、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基である。このアルキル基は直鎖でも分岐を有してもよいが、直鎖であることが好ましい。)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15、より好ましくは炭素数4〜10、さらに好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基)、またはアリール基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜15のアリール基)が好ましい。なかでも、トリフルオロメチル基を有するアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基を1〜3個有するアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基を1または2個有するアルキル基がさらに好ましく、トリフルオロメチル基を1個有するアルキル基がさらに好ましい。
1aがトリフルオロメチル基を有することにより、感光層表面に対する水の接触角をより好ましい範囲内とすることができる。
1aが直鎖アルキル基であり、この直鎖アルキル基の末端がトリフルオロメチル基であることが好ましい。
上記R1aが有するフッ素原子の数と水素原子の数は、0.5≦フッ素原子数/(水素原子数+フッ素原子数)≦1を満たすことが好ましく、0.6≦フッ素原子数/(水素原子数+フッ素原子数)≦1を満たすことがより好ましく、0.7≦フッ素原子数/(水素原子数+フッ素原子数)≦1を満たすことがさらに好ましい。
本発明において、カチオン性有機基Aの有機カチオン(すなわち、Aがカチオン性有機基である場合における有機カチオン)は、上記式(1)中のR1aとNHとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基Aからなる有機アンモニウムカチオンが好ましい。
1aとして採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基は、いずれも、フッ素原子以外の置換基を有していてもよい。R1aが有していてもよいフッ素原子以外の置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、フッ素原子以外のハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が挙げられる。R1aが有していてもよい各置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
また、上記有機カチオンは、上記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオン(以下、「有機カチオンI」ともいう)と下記式(2)で表されるカチオン性有機基の有機カチオン(以下、有機カチオンIIともいう)からなること(すなわち、有機カチオンの一部が有機カチオンIであり、残りの有機カチオンが有機カチオンIIであること)も好ましい。
式(2):R2a−NH
式中、R2aは炭素数20以下の無置換の炭化水素基である。R2aは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。このアルキル基は直鎖でも分岐を有してもよいが、直鎖であることが好ましい。)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15、より好ましくは炭素数4〜10、さらに好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基)、またはアリール基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜15のアリール基)が好ましい。なかでもR2aはアルキル基が好ましい。
2aは炭素数1または2の炭化水素基であることが好ましく、メチル又はエチルであることがさらに好ましい。
上記有機カチオンが、上記有機カチオンIと上記有機カチオンIIとからなる場合において、感光層中に存在する全ペロブスカイト型結晶構造中の上記有機カチオンIの含有量と、上記有機カチオンIIの含有量の比は、モル比で、
[有機カチオンIの含有量]:[有機カチオンIIの含有量]=99:1〜20:80であることが好ましく、
[有機カチオンIの含有量]:[有機カチオンIIの含有量]=99:1〜30:70であることがより好ましく、
[有機カチオンIの含有量]:[有機カチオンIIの含有量]=99:1〜40:60であることがさらに好ましく、
[有機カチオンIの含有量]:[有機カチオンIIの含有量]=99:1〜50:50であることがさらに好ましい。
有機カチオンIの含有量と有機カチオンIIの含有量の比を上記好ましい範囲内とすることにより、感光層表面に対する水の接触角をより好ましい範囲内に調整することができる。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、金属カチオンMは、周期表第一族元素以外の金属原子Mのカチオンであって、ペロブスカイト型結晶構造を取りうる金属原子のカチオンであれば、特に限定されない。このような金属原子としては、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)等の金属原子が挙げられる。なかでも、金属原子MはPb原子またはSn原子が特に好ましい。Mは1種の金属原子であってもよく、2種以上の金属原子であってもよい。2種以上の金属原子である場合には、Pb原子およびSn原子の2種が好ましい。なお、このときの金属原子の割合は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、アニオンXは、アニオン性原子Xのアニオンを表す。このアニオンは、好ましくはハロゲン原子のアニオンである。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられる。アニオンXは、1種のアニオン性原子のアニオンであってもよく、2種以上のアニオン性原子のアニオンであってもよい。2種以上のアニオン性原子のアニオンである場合には、2種のハロゲン原子のアニオン、特に臭素原子のアニオンおよびヨウ素原子のアニオンが好ましい。なお、このときのアニオン性原子のアニオンの割合は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、上記の各構成イオンを有するペロブスカイト型結晶構造を有し、下記式(I)で表されるペロブスカイト化合物が好ましい。
式(I):A
式中、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表す。Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表す。Xはアニオン性原子を表す。
aは1または2を表し、mは1を表し、a、mおよびxはa+2m=xを満たす。
式(I)において、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aは、ペロブスカイト型結晶構造の上記カチオンAを形成する。したがって、周期表第一族元素およびカチオン性有機基Aは、上記カチオンAとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる元素または基であれば、特に限定されない。周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aは、上記カチオンAで説明した上記周期表第一族元素またはカチオン性有機基と同義であり、好ましいものも同じである。
金属原子Mは、ペロブスカイト型結晶構造の上記金属カチオンMを形成する金属原子である。したがって、金属原子Mは、周期表第一族元素以外の原子であって、上記金属カチオンMとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子であれば、特に限定されない。金属原子Mは、上記金属カチオンMで説明した上記金属原子と同義であり、好ましいものも同じである。
アニオン性原子Xは、ペロブスカイト型結晶構造の上記アニオンXを形成する。したがって、アニオン性原子Xは、上記アニオンXとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子であれば、特に限定されない。アニオン性原子Xは、上記アニオンXで説明したアニオン性原子と同義であり、好ましいものも同じである。
式(I)で表されるペロブスカイト化合物は、aが1である場合、下記式(I−1)で表されるペロブスカイト化合物であり、aが2である場合、下記式(I−2)で表されるペロブスカイト化合物である。
式(I−1):AMX
式(I−2):AMX
式(I−1)および式(I−2)において、Aは、上記式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。
Mは、周期表第一族元素以外の金属原子を表し、上記式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。
Xは、アニオン性原子を表し、上記式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、式(I−1)で表される化合物および式(I−2)で表される化合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。したがって、本発明において、ペロブスカイト化合物は、光吸収剤として少なくとも1種が存在していればよく、組成式、分子式および結晶構造等により、厳密にいかなる化合物であるかを明確に区別する必要はない。
以下に、本発明に用いうるペロブスカイト化合物の具体例を例示するが、これによって本発明が制限されるものではない。下記においては、式(I−1)で表される化合物と、式(I−2)で表される化合物とを分けて記載する。ただし、式(I−1)で表される化合物として例示した化合物であっても、合成条件等によっては、式(I−2)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。同様に、式(I−2)で表される化合物として例示した化合物であっても、式(I−1)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。
式(I−1)で表される化合物の具体例として、例えば、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CHNHPbI、CHNHPbBrI、CHNHPbBrI、CHNHSnBr、CHNHSnI、CFNHPbCl、CFNHPbBr、CFNHPbI、CFNHPbBrI、CFNHPbBrI、CFNHSnBr、CFNHSnI3、 CHFNHPbCl、CHFNHPbBr、CHFNHPbI、CHFNHPbBrI、CHFNHPbBrI、CHFNHSnBr、CHFNHSnI、CHFNHPbCl、CHFNHPbBr、CHFNHPbI、CHFNHPbBrI、CHFNHPbBrI、CHFNHSnBr、CHFNHSnIが挙げられる。
式(I−2)で表される化合物の具体例として、例えば、(CNHPbI、(CH=CHNHPbI、(CH≡CNHPbI、(n−CNHPbI、(n−CNHPbI、(CNHPbI、(CNHPbI、(CNHPbI、(CFCHNHPbI、(CHFCHNHPbI、(CHFCHNHPbI、(CFCFCHNHPbI、((CFCHNHPbI、(CH(CFCHNHPbI、(CF(CF(CHNHPbI、((CFCNHPbIが挙げられる。
ペロブスカイト化合物は、MXとAXとから合成することができる。例えば、上記特許文献1を参照してペロブスカイト化合物を合成することができる。また、Akihiro Kojima, Kenjiro Teshima, Yasuo Shirai, and Tsutomu Miyasaka, “Organometal Halide Perovskites as Visible−Light Sensitizers for Photovoltaic Cells”, J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),6050−6051も適宜に参照し、ペロブスカイト化合物を合成することができる。
光吸収剤の使用量は、多孔質層12またはブロッキング層14の表面のうち光が入射する表面の少なくとも一部であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
<正孔輸送層3>
本発明の光電変換素子は、第一電極と第二電極との間に正孔輸送層3を有することが好ましい。
正孔輸送層3は、光吸収剤の酸化体に電子を補充する機能を有し、好ましくは固体状の層である。正孔輸送層3は、好ましくは第一電極1の感光層13と第二電極2の間に設けられる。
正孔輸送層3を形成する正孔輸送材料は、特に限定されないが、CuI、CuNCS等の無機材料、および、特開2001−291534号公報の段落番号0209〜0212に記載の有機正孔輸送材料等が挙げられる。有機正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリシラン等の導電性高分子、2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心原子を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン等の芳香族アミン化合物、トリフェニレン化合物、含窒素複素環化合物または液晶性シアノ化合物が挙げられる。
正孔輸送材料は、溶液塗布可能で固体状になる有機正孔輸送材料が好ましく、具体的には、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTADともいう)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンゾアルデヒド ジフェニルヒドラゾン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等が挙げられる。
正孔輸送層3の膜厚は、特に限定されないが、50μm以下が好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、5nm〜5μmがさらに好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。
本発明において、多孔質層12を有する場合、多孔質層12と感光層13と正孔輸送層3との合計膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.1〜200μmが好ましく、0.5〜50μmがより好ましく、0.5〜5μmがさらに好ましい。
<電子輸送層4>
本発明においては、光電変換素子10Eのように、好ましくは、感光層13Cと第二電極2との間に電子輸送層4を有している。
電子輸送層4は、電子の輸送先が第二電極である点、および、形成される位置が異なること以外は、上記電子輸送層15と同じである。
<第二電極2>
第二電極2は、太陽電池において正極として機能する。第二電極2は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、導電性支持体11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、支持体11aは必ずしも必要ではない。
第二電極2の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層13に光が到達するためには、導電性支持体11と第二電極2との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の太陽電池においては、導電性支持体11が透明であって太陽光を支持体11a側から入射させるのが好ましい。この場合、第二電極2は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
第二電極2を形成する材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスニウム(Os)等の金属、上述の導電性の金属酸化物、炭素材料等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。
第二電極2としては、金属もしくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、または、この薄膜を有するガラス基板もしくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板もしくはプラスチック基板としては、金もしくは白金の薄膜を有するガラス、または、白金を蒸着したガラスが好ましい。
第二電極2の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜1μmが特に好ましい。
<その他の構成>
本発明では、第一電極1と第二電極2との接触を防ぐために、ブロッキング層14等に代えて、または、ブロッキング層14等とともに、スペーサーやセパレータを用いることもできる。
また、第二電極2と正孔輸送層3の間に正孔ブロッキング層を設けてもよい。
<<太陽電池>>
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて構成される。例えば図1〜図5に示されるように、外部回路6に対して仕事させるように構成した光電変換素子10を太陽電池として用いることができる。第一電極1(導電性支持体11)および第二電極2に接続される外部回路は、公知のものを特に制限されることなく、用いることができる。
本発明の太陽電池は、構成物の劣化および蒸散等を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
<<光電変換素子の製造方法>>
本発明の光電変換素子の製造方法は、上述した導電性支持体上に、MXとAXと溶媒とを含有する溶液を塗布し、乾燥することにより、上記導電性支持体上に、水の接触角が70°〜150°である表面を有する感光層を形成する工程を含むこと以外は、公知の製造方法、例えば、特許文献1に記載の方法等に準拠して、製造できる。
以下に、本発明の実施形態にかかる光電変換素子および太陽電池の製造方法を簡単に説明する。
導電性支持体11の表面に、所望により、ブロッキング層14および多孔質層12、電子輸送層15および正孔輸送層16の少なくとも一つの層を形成する。
ブロッキング層14は、例えば、上記絶縁性物質またはその前駆体化合物等を含有する分散物を導電性支持体11の表面に塗布し、焼成する方法またはスプレー熱分解法等によって、形成できる。
多孔質層12を形成する材料は、好ましくは微粒子として用いられ、さらに好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。
多孔質層12を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、導電性支持体11の表面またはブロッキング層14の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成することが好ましい。これにより、微粒子同士を密着させることができる。
焼成を複数回行う場合、最後の焼成以外の焼成の温度(最後以外の焼成温度)を、最後の焼成の温度(最後の焼成温度)よりも低い温度で行うのがよい。例えば、酸化チタンペーストを用いる場合、最後以外の焼成温度を50〜300℃の範囲内に設定することができる。また、最後の焼成温度を、100〜600℃の範囲内において、最後以外の焼成温度よりも高くなるように、設定することができる。支持体11aとしてガラス支持体を用いる場合、焼成温度は60〜500℃が好ましい。
多孔質層12を形成するときの、多孔質材料の塗布量は、多孔質層12の膜厚および塗布回数等に応じて適宜に設定され、特に限定されない。導電性支持体11の表面積1m当たりの多孔質材料の塗布量は、例えば、0.5〜500gが好ましく、さらには5〜100gが好ましい。
次いで、感光層13を設ける。
まず、感光層13を形成するための光吸収剤溶液を調製する。光吸収剤溶液は、上記ペロブスカイト化合物の原料であるMXとAXと溶媒とを含有する。ここで、Aは上述のカチオン性有機基A、Mは上述の金属原子M、Xは上述のアニオン性原子Xである。この光吸収剤溶液において、MXとAXとのモル比は目的に応じて適宜に調整される。
次いで、調製した光吸収剤溶液を、その表面に感光層13を形成する層(光電変換素子10においては、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15または正孔輸送層16のいずれかの層)の表面に塗布し、乾燥する。これにより、ペロブスカイト化合物が多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15または正孔輸送層16の表面に形成される。上記乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常は、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。
上記光吸収剤溶液に用いる溶媒は、MXとAXとを溶解できれば特に制限はなく、1種または2種以上の溶媒を用いることができる。また、沸点の異なる2種以上の溶媒を用いることも好ましい。この場合において、2種以上の溶媒(好ましくは2種の溶媒)のうち最も沸点の高い溶媒の溶媒極性パラメータEが、他の溶媒の溶媒極性パラメータEに比べて小さいことが好ましい。すなわち、上記光吸収剤溶液に用いる溶媒の中で最も沸点の高い溶媒が、溶媒極性パラメータEが最も小さいことが好ましい。
溶媒極性パラメータEは、溶媒分子中の電気的な偏りを表す指標のことであり、Christian Reichardt、Thomas Welton著「Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry」(Wiley−VCH、2011年)第7章や日本化学会編「新実験科学講座14 有機化合物の合成と反応V」(丸善、1978年)第2591〜2595頁に各種パラメータがその定義とともに記載されている。本発明においては、ベタイン色素のソルバトクロミズムから算出されたE値を用いることとし、上述の「Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry」の第455〜461ページに記載されている値を用いる。
上記光吸収剤溶液に2種類以上の溶媒を用いる場合に、沸点が最も高い溶媒の溶媒極性パラメータE値が最も小さいこと、すなわち高沸点かつ低極性の溶媒を含んでいる場合には、感光層の形成のために加熱乾燥する工程で、低沸点溶媒から揮発していくため、乾燥終了間際には高沸点かつ低極性の溶媒が表面から揮発することになり、光吸収剤溶液中の低極性成分を感光層表面に偏在させる効果が期待でき、感光層表面に対する水の接触角をより高めることができる。
高極性溶媒としては、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−ヘキサノール、ベンゾニトリル、アセチルアセトンなどが挙げられる。低極性溶媒としては、トルエン、p−キシレン、メシチレン、テトラリン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンなどが挙げられる。
このようにして設けられた感光層13上に、正孔輸送層3または電子輸送層4を形成する。
正孔輸送層3は、正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料溶液を塗布し、乾燥して形成することができる。正孔輸送材料溶液は、塗布性に優れる点、および多孔質層12を有する場合は多孔質層12の孔内部まで侵入しやすい点で、正孔輸送材料の濃度が0.1〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。
電子輸送層4は、電子輸送材料を含有する電子輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。
正孔輸送層3または電子輸送層4を形成した後に第二電極2を形成して、光電変換素子および太陽電池が製造される。
各層の膜厚は、各分散液または溶液(塗布液)の濃度、塗布回数を適宜に変更して、調整できる。例えば、膜厚が厚い感光層13Bおよび13Cを設ける場合には、塗布液を複数回塗布、乾燥すればよい。
上述の各塗布液は、それぞれ、必要に応じて、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
光電変換素子および太陽電池の製造方法に使用する溶媒または分散媒としては、上述したものの他、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、さらにアルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、および、これらの2種以上の混合溶媒がより好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)もしくはジメチルアセトアミド、または、これらの混合溶媒が好ましい。
各層を形成する溶液または分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法、浸漬法等、公知の塗布方法を用いることができる。なかでも、スピンコート、スクリーン印刷、浸漬法等が好ましい。
上記のようにして作製した光電変換素子は、第一電極1および第二電極2に外部回路を接続して、太陽電池として用いることができる。
以下に実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1、比較例1
[光電変換素子(試料No.101)の製造]
以下に示す手順により、図1に示される光電変換素子10Aを製造した。なお、感光層13の膜厚が大きい場合は、図2に示される光電変換素子10Bに対応することになる。
<ブロッキング層14の形成>
チタニウム ジイソプロポキシド ビス(アセチルアセトナート)の15質量%イソプロパノール溶液(アルドリッチ社製)を1−ブタノールで希釈して、0.02Mのブロッキング層用溶液を調製した。
ガラス基板(支持体11a、厚さ2.2mm)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(透明電極11b)を形成し、導電性支持体11を作製した。調製した0.02Mのブロッキング層用溶液を用いてスプレー熱分解法により、450℃にて、上記SnO導電膜上にブロッキング層14(膜厚50nm)を形成した。
<多孔質層12の形成>
酸化チタン(アナターゼ、平均粒径20nm)のエタノール分散液に、エチルセルロース、ラウリン酸およびテルピネオールを加えて、酸化チタンペーストを調製した。
調製した酸化チタンペーストをブロッキング層14の上にスクリーン印刷法で塗布し、500℃で1時間焼成した。得られた酸化チタンの焼成体を、40mMのTiCl水溶液に浸した後、60℃で1時間加熱し、続けて500℃で30分間加熱して、TiOからなる多孔質層12(膜厚0.6μm)を形成した。
<感光層13Aの形成>
トリフルオロメチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、30mL)を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CFNHIの粗体を得た。得られたCFNHIの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶した。析出した結晶をろ取し、60℃で24時間減圧乾燥して、精製CFNHIを得た。
次いで、精製CFNHIとPbIとSnIとをモル比2:0.99:0.01(下記式(IA)においてn1=0.01)でγ−ブチロラクトン中、60℃で12時間攪拌混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液(a)を調製した。
調製した光吸収剤溶液(a)をスピンコート法(2000rpmで60秒、続けて3000rpmで60秒)により多孔質層12の上に塗布し、塗布した光吸収剤溶液Aを、ホットプレートにより100℃で40分間乾燥して、ペロブスカイト化合物を有する感光層13A(膜厚0.70μm、多孔質層を含む)を形成した。感光層13Aは、カチオンAとしてCF−NH と、金属カチオンとして(Pb2+ 0.99Sn2+ 0.01)と、アニオンXとしてIとを有するペロブスカイト型結晶構造を持ち、式(IA):(CFNH)(Pb(1−n1)Snn1)I(但しn1=0.01)で表されるペロブスカイト化合物(PA1)を含んでいた。
このようにして、第一電極1Aを作製した。
<接触角の測定>
上記で形成した感光層13Aの表面に対する水(純水)の接触角を、液滴法により測定した。接触角の測定は、協和界面科学社製、DropMaster500を用いておこなった。1μLの水滴を針先に作り、ペロブスカイト化合物を有する感光層の表面に触れさせて液滴を作った。1分後に接触角を測定した。この測定を5mm以上離れた3点で繰り返し、これら測定値の平均値を感光層13A表面における接触角とした。接触角の測定時の温度は25℃とした。
なお、接触角測定に用いた試料はこの測定のみに使用し、これ以降の操作には同時に同一方法で作製した接触角を測定してない試料を第一電極1Aとして使用した。
<正孔輸送層3の形成>
正孔輸送材料としてのSpiro−OMeTAD(180mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させた。このクロロベンゼン溶液に、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(170mg)をアセトニトリル(1mL)に溶解させたアセトニトリル溶液(37.5μL)と、t−ブチルピリジン(TBP、17.5μL)とを加えて混合し、正孔輸送材料溶液を調製した。
次いで、正孔輸送材料溶液を、スピンコート法により、第一電極1Aの感光層13A上に塗布し、塗布した正孔輸送材料溶液を乾燥して、正孔輸送層3(膜厚0.1μm)を形成した。
<第二電極2の作製>
蒸着法により金(膜厚0.1μm)を正孔輸送層3上に蒸着して、第二電極2を作製した。
このようにして、図1に示される光電変換素子10Aを製造した。
[光電変換素子(試料No.102、103)の製造]
光電変換素子(試料No.101)の製造において、光吸収剤溶液(a)の、精製CFNHIとPbIとSnIとの混合比(モル比)を2:(1−n1):n1(n1は式(IA)のn1と同義であり、表1に示す。)に調整したこと以外は光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、光電変換素子(試料No.102、103)を製造した。
製造した各光電変換素子において、感光層は、それぞれ、式(IA)のn1が異なる点を除いて、光電変換素子(試料No.101)の感光層が含むペロブスカイト化合物(PA1)と同じであった。
[光電変換素子(試料No.C11〜C13の製造)
光電変換素子(試料No.101〜103)の製造において、光吸収剤溶液(a)に代えて、表1に示したR1aを有するアミン(R1aNH)を用いて作製した光吸収剤溶液を用いたこと以外は光電変換素子(試料No.101〜103)の製造と同様にして、光電変換素子(試料No.C11〜C13)を製造した。なお、試料No.C11〜C13(比較例)におけるR1aは本発明で規定するR1aとは異なるが、説明の便宜上、表1では本発明、比較例を問わずR1aと表記している。このことは表2及び3についても同様である。
製造した光電変換素子の感光層は、式(IA)のカチオン、n1が異なる点を除いて、光電変換素子(試料No.101)の感光層が含むペロブスカイト化合物(PA1)と同じペロブスカイト化合物を含んでいた。
実施例2、比較例2
[光電変換素子(試料No.201)の製造]
光電変換素子(試料No.101)の製造において、光吸収剤溶液(a)に代えて下記光吸収剤溶液(b)を用いたこと以外は光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、光電変換素子(試料No.201)を製造した。
製造した光電変換素子の感光層は、カチオンAとしてCFCH−NH と、金属カチオンとして(Pb2+ 0.99Sn2+ 0.01)と、アニオンXとしてIとを有するペロブスカイト型結晶構造を持ち、式(IB):(CFCH−NH(Pb(1−n1)Snn1)I(但しn1=0.01)で表されるペロブスカイト化合物(PB1)を含んでいた。
<光吸収剤溶液(b)の調製>
2,2,2−トリフルオロエチルアミンの40%エタノール溶液と57質量%のヨウ化水素の水溶液とを、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CFCHNHIの粗体を得た。得られた粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶した。析出した結晶をろ取し、60℃で12時間減圧乾燥して、精製CFCHNHIを得た。次いで、精製CFCHNHIとPbIとSnIとをモル比3:0.99:0.01(上記式(IB)においてn1=0.01)で、ジメチルホルムアミド(DMF)中、60℃で5時間攪拌して混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液(b)を調製した。
[光電変換素子(試料No.202〜208、C21〜C24)の製造]
光電変換素子(試料No.201)の製造において、光吸収剤溶液(b)に代えて表2に示したR1aに対応するアミン(R1aNH)を用いて作製した光吸収剤溶液を用いたこと以外は光電変換素子(試料No.201)の製造と同様にして、光電変換素子(試料No.202〜208およびC21〜C24)を製造した。
製造した各試料において、感光層は、式(IB)の有機カチオンが異なる点を除いて、光電変換素子(試料No.201)の感光層が含むペロブスカイト化合物(PB1)と同じペロブスカイト化合物を含んでいた。
[耐湿性の評価]
<初期の光電変換効率の測定>
光電変換効率を以下のようにして評価した。
各試料No.の光電変換素子を上記製造方法と同様にして3検体製造した。3検体それぞれについて、電池特性試験を行って、光電変換効率(η/%)を測定した。そして、その3検体の平均値を各試料No.の光電変換素子の初期の光電変換効率(η/%)とした。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター「WXS−85H」(WACOM社製)を用いて、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/mの擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率(η/%)を求めた。
<耐湿性の評価>
光電変換素子の耐湿性を以下のようにして評価した。
各試料No.の3検体それぞれを、温度25℃、湿度60%RHの恒温恒湿槽に24時間保存してから、上記と同様にして電池特性試験を行って、光電変換効率(η/%)を測定した。3検体の平均値を各試料No.の光電変換素子の、保存後の光電変換効率(η/%)とした。
光電変換素子の耐湿性は、下記式によって算出される光電変換効率の維持率から下記評価基準に沿って評価した。

維持率=(保存後の光電変換効率)/(初期の光電変換効率)

− 耐湿性評価基準 −
A: 維持率が1.0以下0.9以上
B: 維持率が0.9未満0.8以上
C: 維持率が0.8未満0.7以上
D: 維持率が0.7未満
結果を下記表1および2に示す。
Figure 2016092294
Figure 2016092294
上記表1および2の結果から、感光層が、感光層表面に対する水の接触角が本発明で規定するよりも小さくなるように形成された光電変換素子では、初期の光電変換効率に対して、高湿環境下における光電変換効率の維持率が0.7未満となり、耐湿性に大きく劣る結果となった(試料No.C11〜C13、C21〜C24)。
これに対し、感光層表面に対する水の接触角が本発明で規定する範囲内になるように形成された光電変換素子では、高湿環境下における光電変換効率の低下が抑えられていた(試料No.101〜103、201〜208)。そして、感光層表面に対する水の接触角が高い方が、耐湿性により優れる結果となった(試料No.101〜103、201、204〜208)。なお、感光層表面に対する水に対する接触角は大きいほど耐湿性が向上するわけではなく、感光層表面に対する水に対する接触角が149°まで高まると、接触角が110〜120°程度の場合に比べて耐湿性はやや劣っていた(試料No.208)。
実施例3、比較例3
[光電変換素子(試料No.301〜308、C31、C32)の製造]
光電変換素子(試料No.101)の製造において、光吸収剤溶液(a)におけるトリフルオロメチルアミンに代えて、表3に示す比率のR1aNHとR2aNH混合物を用いたこと以外は実施例1の試料101と同様にして、光電変換素子(試料No.301〜308、C31、C32)を製造した。
試料No.301〜308およびC31、C32の耐湿性評価結果を表3に示す。
Figure 2016092294
表3の結果から、感光層が、感光層表面に対する水の接触角が本発明で規定するよりも小さくなるように形成された光電変換素子では、初期の光電変換効率に対して、高湿環境下における光電変換効率の維持率が0.7未満となり、耐湿性に大きく劣る結果となった(試料No.C31、C32)。
これに対し、感光層表面に対する水の接触角が本発明で規定する範囲内になるように形成された光電変換素子では、高湿環境下における光電変換効率の低下が抑えられていた(試料No.301〜308)。
なお、上記表3の結果は、R1aとR2aの比、すなわち、感光層を構成するペロブスカイト化合物の結晶構造の化学組成よりも、感光層表面に対する水の接触角が、光電変換素子の耐湿性に重要であることも示している。
実施例4、比較例4
[光電変換素子(試料No.401〜406、C41〜C44)の製造]
光電変換素子(試料No.101)の製造において、光吸収剤溶液(a)におけるトリフルオロメチルアミンに代えてトリフルオロメチルアミンとメチルアミンの1:1混合物(モル比)を用い、γ−ブチロラクトンに代えて表4に示す溶媒1〜3の等体積混合液を用いたこと以外は実施例1の試料101と同様にして、光電変換素子(試料No.401〜406、C41〜C44)を製造した。
試料No.401〜406およびC41〜C44の耐湿性評価結果を表4に示す。
Figure 2016092294
表4の結果から、感光層が、感光層表面に対する水の接触角が本発明で規定するよりも小さくなるように形成された光電変換素子では、初期の光電変換効率に対して、高湿環境下における光電変換効率の維持率が0.7未満となり、耐湿性に大きく劣る結果となった(試料No.C41〜C44)。
これに対し、感光層表面に対する水の接触角が本発明で規定する範囲内になるように形成された光電変換素子では、高湿環境下における光電変換効率の低下が抑えられていた(試料No.401〜406)。
また、感光層表面に対する水の接触角を大きくするには、2種類の溶媒を用いて、最も沸点が高い溶媒と最もEが小さい溶媒を同一とすることが有効であることもわかった。
以上の結果から、本発明の光電変換素子ないし太陽電池が、優れた耐湿性を示すことがわかった。
また、上記実施例1〜4における光電変換素子の形態を図3〜5に示す形態とし、且つ、上記実施例1〜4と同様に感光層表面の水の接触角を25℃で70°〜150°とし、上記と同様の試験を実施した。その結果、得られた光電変換素子は、上記実施例1〜4と同様に、耐湿性に優れることがわかった。
1A、1B、1C、1D、1E 第一電極
11 導電性支持体
11a 支持体
11b 透明電極
12 多孔質層
13A、13B、13C 感光層
14 ブロッキング層
15 電子輸送層
16 正孔輸送層
2 第二電極
3A、3B 正孔輸送層
4 電子輸送層
6 外部回路(リード)
10A、10B、10C、10D、10E 光電変換素子
100A、100B、100C、100D、100E 光電変換素子を電池用途に応用したシステム
M 電動モーター

Claims (19)

  1. 光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子であって、
    前記光吸収剤が、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aのカチオンと、周期表第一族元素以外の金属原子Mのカチオンと、アニオン性原子Xのアニオンとを有するペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を含み、
    前記感光層表面は、水の接触角が、25℃で70°〜150°である、光電変換素子。
  2. 前記感光層表面は、水の接触角が、25℃で85°〜120°である、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記カチオン性有機基Aが下記式(1)で表されるカチオン性有機基である、請求項1または2に記載の光電変換素子。
    式(1) R1a−NH
    式中、R1aは炭素数20以下の炭化水素基であり、該炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されている。
  4. 前記カチオン性有機基Aのカチオンが、前記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンIと下記式(2)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンIIとからなり、
    感光層中に存在する全ペロブスカイト型結晶構造中、前記有機カチオンIの含有量と前記有機カチオンIIの含有量が、モル比で、[有機カチオンIの含有量]:[有機カチオンIIの含有量]=99:1〜20:80を満たす、請求項1または2に記載の光電変換素子。
    式(2) R2a−NH
    式中、R2aは炭素数20以下の無置換の炭化水素基である。
  5. 前記R2aの炭素数が1または2である、請求項4に記載の光電変換素子。
  6. 前記R1aが有するフッ素原子の数と水素原子の数が下記式を満たす、請求項3〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
    0.5≦フッ素原子数/(水素原子数+フッ素原子数)≦1
  7. 前記R1aが少なくとも1つのトリフルオロメチル基を有する、請求項3〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 感光層が、MXとAXと2種以上の溶媒とを含有する溶液を塗布し、乾燥して形成され、前記2種以上の溶媒のうち、最も沸点の高い溶媒の溶媒極性パラメータEが、最も沸点の高い溶媒以外の溶媒の溶媒極性パラメータEよりも小さい、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  9. 前記第一電極と前記第二電極との間に正孔輸送層を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
  11. 光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、
    前記光吸収剤が、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aのカチオンと、周期表第一族元素以外の金属原子Mのカチオンと、アニオン性原子Xのアニオンとを有するペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を含み、
    前記製造方法が、前記導電性支持体上に、MXとAXと溶媒とを含有する溶液を塗布し、乾燥することにより、前記導電性支持体上に、水の接触角が25℃で70°〜150°である表面を有する感光層を形成する工程を含む、製造方法。
  12. 前記の感光層を形成する工程が、水の接触角が25℃で85°〜120°である表面を有する感光層を形成する工程である、請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記カチオン性有機基Aが下記式(1)で表されるカチオン性有機基である、請求項11または12に記載の製造方法。
    式(1) R1a−NH
    式中、R1aは炭素数20以下の炭化水素基であり、該炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されている。
  14. 前記のカチオン性有機基Aのカチオンが、前記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンIと下記式(2)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンIIとからなり、
    感光層中に存在する全ペロブスカイト型結晶構造中、前記有機カチオンIの含有量と前記有機カチオンIIの含有量が、モル比で、[有機カチオンIの含有量]:[有機カチオンIIの含有量]=99:1〜20:80を満たす、請求項11または12に記載の製造方法。
    式(2) R2a−NH
    式中、R2aは炭素数20以下の無置換の炭化水素基である。
  15. 前記R2aの炭素数が1または2である、請求項14に記載の製造方法。
  16. 前記R1aが有するフッ素原子の数と水素原子の数が下記式を満たす、請求項13〜15のいずれか1項に記載の光電変換素子。
    0.5≦フッ素原子数/(水素原子数+フッ素原子数)≦1
  17. 前記R1aが少なくとも1つのトリフルオロメチル基を有する、請求項13〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. 前記のMXとAXと溶媒とを含有する溶液において、前記溶媒が2種以上の溶媒からなり、前記2種以上の溶媒のうち、最も沸点の高い溶媒の溶媒極性パラメータEが、最も沸点の高い溶媒以外の溶媒の溶媒極性パラメータEよりも小さい、請求項11〜17のいずれか1項に記載の製造方法。
  19. 前記光電変換素子が、前記第一電極と前記第二電極との間に正孔輸送層を有する、請求項11〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
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