JP2016090925A - 光学フィルム、タッチパネル用センサー及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents

光学フィルム、タッチパネル用センサー及び光学フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、生産工程での屈曲時のハードコート層に生じるクラックを防止し、その結果、白化や干渉ムラを抑制し、長時間使用での耐久性及び感度の向上を図ることができる光学フィルム、タッチパネル用センサー及び光学フィルムの製造方法を提供することである。【解決手段】光波長550nmにおける面内のリターデーション値(Ro)が、30〜250nmの範囲内である光学フィルムであって、少なくとも、基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に備えた基材ユニットが二つ積層された構成を有し、当該二つの基材ユニットは、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層されており、かつ前記基材フィルム層が、シクロオレフィン樹脂を含有していることを特徴とする光学フィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルム、タッチパネル用センサー及び光学フィルムの製造方法に関し、より詳しくは、光波長550nmにおける面内のリターデーション値(Ro)が、30〜250nmの範囲内である光学フィルム、タッチパネル用センサー及び光学フィルムの製造方法に関する。
タッチパネルは、テキスト、グラフィック等の情報入力が可能な入力装置として、液晶ディスプレイ(表示装置)、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子手帳などのフラットパネルディスプレイ装置の表示面に取付けられている。
タッチパネルの種類は、抵抗膜方式(Resistive)、静電容量方式(Capacitive)、電磁方式(Electro‐Magnetic)、表面弾性波方式(SAW;Surface Acoustic Wave)及び赤外線方式(Infrared)に区分される。このような様々な方式のタッチパネルは、信号増幅の問題、解像度の差異、設計及び加工技術の難易度、光学的特性、電気的特性、機械的特性、耐環境特性、入力特性、耐久性及び経済性を考慮して、電子製品に採用されている。現在もっとも幅広い分野で用いる方式は、抵抗膜方式と静電容量方式のタッチパネルである。
一般的に、抵抗膜方式タッチパネルや静電容量方式タッチパネルの製作に用いるタッチパネル用透明導電膜は、ガラスにITOをスパッタ形成した透明導電層を用いるのが一般的であった。しかし、ガラスにITOを形成した透明導電層には低抵抗化に限界があり、タッチ感度向上のためのさらなる低抵抗導電膜が望まれている。
また、近年のディスプレイの大型化やディスプレイのフレキシブル化に伴い、タッチパネルにも、さらなる薄膜化や軽量化、フレキシブル性が求められている。このため、ガラスのかわりに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透明プラスティック基板上にITO導電膜を形成する方法が知られている。
しかしながら、上記PCやPMMAは、光弾性係数が大きいため、タッチパネルなどの応力がかかる部材に用いた場合には、複屈折が大きくなることがあり、吸水性が高く、耐熱性も不十分である。さらに、PETは透明タッチパネルを液晶表示素子に重ね合わせて用いる使い方をすると、視認性及びコントラストなどの点で不十分であるという問題点がある。
そこで、透明性、耐湿性・吸水性に優れた熱可塑性ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン樹脂を、タッチパネル用基材として使用することが開示されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
シクロオレフィン樹脂からなる光学フィルムは、吸水性に優れているだけでなく、面内及び厚さ方向のリターデーション値を制御することができる。さらに、1軸又は2軸延伸を行うことにより、1/4波長機能を有する基材を成形することができる。
特許文献1及び2においては、シクロオレフィン樹脂からなるフィルム基材の両面に、それぞれハードコート層を介して導電層が形成されている。
しかしながら、上述のように、フィルム基材の両面にそれぞれハードコート層が形成され、そのハードコート層上にさらに導電層がそれぞれ形成された構成では、生産工程でのフィルムの巻取り時に屈曲することによって、ハードコート層にクラックが生じるという問題がある。そして、このクラックによって、長時間使用すると、電極の劣化が促進することから、車載などでの高温状態で長時間使用すると白化したり、感度が低下するという問題がある。
特開2013−242692号公報 特開2011−145593号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、生産工程での屈曲時のハードコート層に生じるクラックを防止し、その結果、白化や干渉ムラを抑制し、長時間使用での耐久性及び感度の向上を図ることができる光学フィルム、タッチパネル用センサー及び光学フィルムの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に備えた二つの基材ユニットを、各基材フィルム層が相互に直接対向するように積層し、かつ、基材フィルム層としてシクロオレフィン樹脂を用いることによって、生産工程時での屈曲時のハードコート層に生じるクラックを防止できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.光波長550nmにおける面内のリターデーション値(Ro)が、30〜250nmの範囲内である光学フィルムであって、
少なくとも、基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に備えた基材ユニットが二つ積層された構成を有し、
当該二つの基材ユニットは、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層されており、かつ
前記基材フィルム層が、シクロオレフィン樹脂を含有している
ことを特徴とする光学フィルム。
2.前記二つの基材ユニット間に、誘電率が22〜40×10−12(F/m)の範囲内の低誘電体層が設けられていることを特徴とする第1項に記載の光学フィルム。
3.前記基材フィルム層の厚さが、6〜100μmの範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の光学フィルム。
4.一方の基材ユニットの基材フィルム層、低誘電体層及び他方の基材ユニットの基材フィルム層の各静電容量の合計が、3000×10−18F以下であることを特徴とする第2項に記載の光学フィルム。
5.前記導電層の表面抵抗率が、200Ω/□以下であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の光学フィルムを具備したことを特徴とするタッチパネル用センサー。
7.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
シクロオレフィンを含有する基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に積層して基材ユニットを二つ形成する形成工程と、
前記基材ユニットを形成する工程後に、当該二つの基材ユニットを、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層して光学フィルムを形成する工程と、
前記光学フィルムを形成する工程後に、当該光学フィルムを巻き取る工程と、を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、生産工程での屈曲時のハードコート層に生じるクラックを防止し、その結果、白化や干渉ムラを抑制し、長時間使用での耐久性及び感度の向上を図ることができる光学フィルム、タッチパネル用センサー及び光学フィルムの製造方法を提供することである。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
少なくとも、基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に備えた基材ユニットが二つ積層された構成を有し、当該二つの基材ユニットは、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層されており、かつ前記基材フィルム層が、シクロオレフィン樹脂を含有しているので、各基材ユニットをそれぞれ形成した後に、二つの基材ユニットを積層するので、生産工程でのフィルムの巻取り時に屈曲した場合でも、ハードコート層にクラックが生じにくくなる。すなわち、一つの基材ユニットからなる構成(一枚構成)の場合には、応力集中によりハードコート層にクラックが生じるが、本発明では、二つの基材ユニットからなる構成(二枚構成)のため、基材ユニット間の低誘電体層により応力が分散されて、ハードコート層にクラックが生じにくくなる。その結果、長時間使用した場合でも、電極の劣化や、車載などでの高温状態での長時間使用による白化や、感度低下を防止することができる。
本発明に係る光学フィルムの構成を示す概略図 本発明に係るシクロオレフィン樹脂フィルム(基材フィルム層)の製造に用いることができる斜め延伸可能なテンターの模式図 図2(a)及び(b)に示す斜め延伸テンターにおける延伸方向の一例について説明するための模式図 本発明に適用可能なシクロオレフィン樹脂フィルム(基材フィルム層)の製造方法の一例(長尺フィルム原反ローラーから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図 本発明に適用可能なシクロオレフィン樹脂フィルム(基材フィルム層)の製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図
本発明の光学フィルムは、光波長550nmにおける面内のリターデーション値(Ro)が、30〜250nmの範囲内である光学フィルムであって、少なくとも、基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に備えた基材ユニットが二つ積層された構成を有し、当該二つの基材ユニットは、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層されており、かつ前記基材フィルム層が、シクロオレフィン樹脂を含有していることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項7までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記二つの基材ユニット間に、誘電率が22〜40×10−12(F/M)の範囲内の低誘電体層が設けられていることが、静電容量と膜厚の観点から好ましい。
また、前記基材フィルム層の厚さが、6〜100μmの範囲内であることが好ましい。6μm以上とすることにより、ハンドリング性が良好で、100μm以下とすることにより、ハードコート層にクラックが生じない。
また、一方の基材ユニットの基材フィルム層、低誘電体層及び他方の基材ユニットの基材フィルム層の各静電容量の合計が、3000×10−18F以下であることが、タッチパネル用センサーとして用いた場合のタッチ感度の点で好ましい。
また、前記導電層の表面抵抗率が、200Ω/□以下であることが、タッチパネル用センサーとして使用時のタッチ感度の点で好ましい。
本発明の光学フィルムは、タッチパネル用センサーに好適に用いることができる。
本発明の光学フィルムの製造方法は、シクロオレフィンを含有する基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に積層して基材ユニットを二つ形成する形成工程と、前記基材ユニットを形成する工程後に、当該二つの基材ユニットを、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層して光学フィルムを形成する工程と、前記光学フィルムを形成する工程後に、当該光学フィルムを巻き取る工程と、を有することを特徴とする。このような光学フィルムの製造方法によれば、フィルムの巻取り時に屈曲した場合でも、ハードコート層にクラックが生じにくくなる。その結果、長時間使用した場合でも、電極の劣化や、車載などでの高温状態での長時間使用による白化や、感度低下を防止することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[光学フィルム]
本発明に係る光学フィルムは、光波長550nmにおける面内のリターデーション値(Ro)が、30〜250nmの範囲内である光学フィルムであって、少なくとも、基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に備えた基材ユニットが二つ積層された構成を有し、当該二つの基材ユニットは、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層されており、かつ前記基材フィルム層が、シクロオレフィン樹脂を含有していることを特徴とする。
本発明で規定するリターデーション値(Ro)は、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃・55%RHの環境下で、550nmでの複屈折率測定によりRoを算出することができる。
図1は、本発明に係る光学フィルムの構成を示す概略図である。
図1に示すように、本発明に係る光学フィルム200は、基材フィルム層(第1の基材フィルム層ともいう。)101A、ハードコート層102A及び導電層103Aをこの順に備えた基材ユニット110Aと、基材フィルム層(第2の基材フィルム層ともいう。)101B、ハードコート層102B及び導電層103Bをこの順に備えた基材ユニット110Bとが積層された構成である。そして、二つの基材ユニット110A,110Bは、それぞれの基材フィルム層(第1の基材フィルム層及び第2の基材フィルム層)101A,101Bが相互に直接対向するように積層されている。
また、前記二つの基材ユニット110A,110B間に、誘電率が22〜40×10−12(F/m)の範囲内の低誘電体層104が設けられている。
なお、一方の基材ユニット110Aの基材フィルム層101A、ハードコート層102A及び導電層10と、他方の基材ユニット110Bの基材フィルム層101B及びハードコート層102B及び導電層103Bとは、それぞれ互いに同じ材料であっても良いし、異なっていても良い。
以下、各構成層について詳細に説明する。
<基材フィルム層>
基材フィルム層に含有されるシクロオレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体又はそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体又はそれらの水素化物等を挙げることができる。
市販のシクロオレフィン樹脂としては、「Topas」(Ticona)、「アートン」(JSR)、「ゼオノア」及び「ゼオネックス」(日本ゼオン)」、「アペル」(三井化学)などがある(いずれも商品名)。
このようなシクロオレフィン樹脂を成膜して、本発明の基材フィルム層となるシクロオレフィン樹脂フィルムを得ることができる。
本発明に用いられるシクロオレフィン樹脂フィルムは、ガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃の範囲内である。
また、シクロオレフィン樹脂フィルムの光弾性係数の絶対値は、好ましくは10×10−12Pa−1以下、より好ましくは7×10−12Pa−1以下、特に好ましくは4×10−12Pa−1以下である。
光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。光弾性係数がこのような範囲にある透明樹脂を用いると、光学フィルムの面内方向リターデーション(Ro)のバラツキを小さくすることができる。さらに、このような光学補償フィルムを液晶表示装置に適用した場合に、液晶表示装置の表示画面の端部の色相が変化する現象を抑えることができる。
本発明に用いられるシクロオレフィン樹脂フィルムは、他の配合剤を含んでいてもよい。配合剤としては、格別限定はないが、層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、低吸水性等を低下させることなく、フィルム成形時の酸化劣化等によるフィルムの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、シクロオレフィン樹脂100重量部に対して通常0.001〜5質量部の範囲内、好ましくは0.01〜1質量部の範囲内である。
無機微粒子としては、0.7〜2.5μmの範囲内の平均粒子径と、1.45〜1.55の範囲内の屈折率を有するものが好ましい。具体的には、クレイ、タルク、シリカ、ゼオライト、ハイドロタルサイトが挙げられ、中でもシリカ、ゼオライト及びハイドロタルサイトが好ましい。無機微粒子の添加量は特に制限されないが、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して、通常0.001〜10質量部の範囲内、好ましくは0.005〜5質量部の範囲内である。
滑剤としては、炭化水素系滑剤;脂肪酸系滑剤;高級アルコール系滑剤;脂肪酸アマイド系滑剤;脂肪酸エステル系滑剤;金属石鹸系滑剤;が挙げられる。中でも、炭化水素系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤及び脂肪酸エステル系滑剤が好ましい。さらに、この中でも融点が80℃〜150℃の範囲内、及び酸価が10mgKOH/mg以下のものが特に好ましい。
融点が80℃〜150℃の範囲内であり、さらに酸価が10mgKOH/mg以下であればヘイズ値が大きくなる恐れがない。
(シクロオレフィン樹脂フィルムの製造方法>
本発明の基材フィルム層に用いられるシクロオレフィン樹脂フィルムは、例えば、溶融押出法、溶液流延法、カレンダー法、圧縮成形法などの公知の方法により製造することができ、好ましくは溶液流延法により製造することができる。
溶液流延法では、シクロオレフィン樹脂及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状又はドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
また、特開2000−301555号公報、特開2000−301558号公報、特開平7−032391号公報、特開平3−193316号公報、特開平5−086212号公報、特開昭62−037113号公報、特開平2−276607号公報、特開昭55−014201号公報、特開平2−111511号公報、及び特開平2−208650号公報等の各公報に記載のセルロースアシレートフィルム成膜技術を本発明に応用できる。
溶液流延法では、ドープ中のシクロオレフィン樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、シクロオレフィン樹脂の濃度が高すぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%の範囲内が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%の範囲内である。流延(キャスト工程)前のドープ粘度は500〜50000の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1000〜12000の範囲内である。
流延工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mの範囲内とすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度としては、0〜100℃の範囲内で適宜決定され、5〜30℃の範囲内がさらに好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は、溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
シクロオレフィン樹脂フィルムが、良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%の範囲内が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲内又は60〜130質量%の範囲内であり、特に好ましくは、20〜30質量%の範囲内又は70〜120質量%の範囲内である。
残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。また、シクロオレフィン樹脂フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%の範囲内である。
フィルム乾燥工程では、一般にローラー乾燥方式(上下に配置した多数のローラーにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明に係るシクロオレフィン樹脂フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、シクロオレフィン樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することができる。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の範囲内の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になる。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、シクロオレフィン重合体を、少なくとも計15〜45質量%の範囲内で溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
《延伸工程》
本発明に係るシクロオレフィン樹脂フィルムは、本発明の光学フィルムの光波長550nmで測定した面内方向のリターデーション値Ro(550)が30〜250nmの範囲となるように、フィルム延伸によってリターデーションを付与することが好ましい。
具体的には、第1の基材フィルム層として使用するシクロオレフィン樹脂フィルムのリターデーションが0〜125nmの範囲内で、第2の基材フィルム層として使用するシクロオレフィン樹脂フィルムのリターデーションが0〜125nmの範囲内に制御することによって、本発明の光学フィルムのリターデーションを30〜250nmの範囲内とすることができる。
延伸する方法としては特に限定はない。例えば、複数のローラーに周速差をつけ、その間でローラー周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、又は縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれらの方法を適宜組み合わせて用いてもよい。すなわち、成膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸してもよく、さらに両方向に延伸する場合は、同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。なお、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できる点で好ましい。
本発明においては、特に、延伸方法としてはフィルム搬送ローラーの周速差を利用して搬送方向に行うか、又は搬送方向と直交方向(幅手方向又はTD方向ともいう)にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で行うことが好ましく、さらに左右把持手段によってウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できるテンターを用いることも好ましい。
また、本発明に係るシクロオレフィン樹脂フィルムを、延伸工程でフィルム搬送方向に対して45°方向に延伸することが、上記範囲のリターデーションを付与したシクロオレフィン樹脂フィルムを効率良く作製する観点から好ましい。
以下、45°の方向に延伸する具体的な方法について説明する。
本発明に係るシクロオレフィン樹脂フィルムの製造工程で、延伸に供される長尺の長尺フィルム原反に斜め方向の配向を付与するためには、斜め延伸テンターを用いるのが好ましい。
斜め延伸テンターは、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、さらに、フィルムの配向軸をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリターデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
図2は、本発明に係るシクロオレフィン樹脂フィルムの製造に用いることができる斜め延伸可能なテンターの模式図である。ただし、これは一例であって本発明はこれに限定されるものではない。
図2(a)に示す斜め延伸可能なテンター構造では、テンター入り口側のガイドローラー12−1によって方向を制御された長尺フィルム原反4は、外側のフィルム保持開始点8−1、内側のフィルム保持開始点8−2の位置で把持具(クリップつかみ部ともいう)によって担持され、斜め延伸テンター6にて外側のフィルム保持手段の軌跡7−1、内側のフィルム保持手段の軌跡7−2で示される斜め方向に搬送、延伸され、外側のフィルム保持終了点9−1、内側のフィルム保持終了点9−2によって把持を解放され、テンター出口側のガイドローラー12−2によって搬送を制御されて斜め延伸フィルム5が形成される。図中、長尺フィルム原反は、フィルムの送り方向14−1に対して、フィルムの延伸方向14−2の角度(繰出し角度θi)で斜め延伸される。
図2(b)は、斜め延伸可能な他のテンター構造を示しており、上記図2(a)に示す斜め延伸可能なテンター構造と同様にして延伸を行うことができる。
本発明に係るシクロオレフィン樹脂フィルムの製造工程での延伸は、上記斜め延伸可能なテンターを用いて行う。このテンターは、長尺フィルム原反を、オーブンによる加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅方向の中点の移動方向)に対して斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムローラーから繰り出され、テンターの入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、テンターのレール形状は、図2(a)及び(b)に示すように、製造すべき長尺延伸フィルムに与える配向角θ、延伸倍率等に応じて、左右で非対称な形状となっており、手動で又は自動で微調整できるようになっている。
本発明においては、長尺のシクロオレフィン樹脂フィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、好ましくは10〜80°の範囲内で任意の角度に設定できるようになっている。
把持具の走行速度は、適宜選択できるが、通常、1〜100m/分の範囲内である。左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口におけるシワ、寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。
一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは速度差には該当しない。
また、本発明で用いられる斜め延伸テンターでは、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定できることが好ましい。したがって、斜め延伸テンターは、任意の入り口幅及び出口幅を設定すると、これに応じた延伸倍率にすることができる。(図中、「○」で示す部位は、連結部である)。
本発明で用いられる斜め延伸テンターにおいて、把持具の軌跡を規制するレールには、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、又は局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が円弧を描くようにすることが望ましい。
図2(a)で示される斜め延伸テンターにおいては、長尺フィルム原反のテンター入口での進行方向14−1は、延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向14−2と異なっている。繰出し角度θiは、テンター入口での進行方向14−1と延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向14−2とのなす角度である。
図2(b)で示される斜め延伸テンターにおいては、長尺フィルム原反のテンター入口での進行方向14−1は、テンター内で繰出し角度θiにてテンター入口での進行方向とは異なる方向に転換され搬送される。その後、さらに搬送方向が転換され、最終的には延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向一致するような軌跡をとる。
本発明においては、上述のように好ましくは10〜80°の範囲内の配向角θを持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、10°<θi<60°、好ましくは15°<θi<50°で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅方向の光学特性のバラツキが良好となる(小さくなる)。
本発明において、テンターの把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
図3(a)及び(b)は、上述の図2(a)及び(b)で示される斜め延伸テンターにおける延伸方向について、模式図で示している。
本発明では、図3(a)及び(b)で示されるように、搬送フィルムの両端が初めて把持具によって把持される点、つまり把持開始点A1とA1から導入側の搬送フィルムの中心線に略垂直に引いた直線が、反対側の把持手段の軌跡と交わる点B1(つまり反対側のフィルム把持開始点)の2点を起点とし、両端の把持具を実質的に一定速度で搬送すると、単位時間ごとにA1からA2、A3と経て延伸終了点An移動し、B1は同様にB1からB2、B3と経て延伸終了点Bnに移動する。このような延伸方法を用いることで、図3(a)及び(b)で示されるように、把持部AnはBnに対して次第に遅れていくため、延伸方向は、幅方向から徐々に傾斜していく。実質的な把持終了点(把持された搬送フィルムが把持していた把持具より解放される点)は、搬送フィルムの両端又はどちらか一方の端部が把持具から解放される点、すなわち把持終了点Bxと、Bxから次工程へ送られる搬送フィルムの中心線に略垂直に引いた直線が、反対側の把持手段の軌跡と交わる点Ayの2点で定義される。ここで略垂直とは90±1°以内にあることを意味する。
最終的なフィルムの延伸方向の角度は、把持終了点の距離W(BxとAyの距離)とAxとAyの比率で決まる。
したがって、延伸方向が次方向への搬送方向に対しなす傾斜角θfは、
tanθf=W/(Ay−Ax)
すなわち、
tanθf=W/|LA−LB|
を満たす角度となる。
ここでLAとは、大回り側のテンターレール上を把持具が把持開始点から把持終了点までの走行距離であり、LBとは小回り側のテンターレール軌跡上を把持具が把持開始点から把持終了点まで動いた距離であり、|LA−LB|は把持終了点における、左右の把持具がテンターレール上を走行した距離の差である。
また、前記図3を用いて本発明における延伸倍率の定義について説明する。
図3において、斜め延伸テンターにおいて搬送フィルムが把持具によって初めて把持される把持開始点A1からB1間までの直線距離をLo、前記把持具の両方が斜め延伸テンター内の全ての延伸ゾーンを通過した際の把持具の位置(延伸終了点)をAn、BnとしたときのAnからBn間の直線距離をLとおいたとき、斜め延伸テンター内における延伸倍率Rは、
R=L/L0
で定義される。
このときの延伸倍率Rは、好ましくは1.3〜3.0の範囲内、より好ましくは1.5〜2.5の範囲内である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向厚さムラが小さくなるので好ましい。斜め延伸テンターの延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚さムラをさらに良好なレベルにすることが可能になる。
斜め延伸テンター内において、長尺フィルム原反は、図2に示すように、テンター入口(符号aの位置)にて、その両端(両側)を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。テンター入口(符号aの位置)で、フィルム進行方向(14−1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具は、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、横延伸ゾーン、斜め延伸ゾーン、保持ゾーン、及び冷却ゾーンを有するオーブンを通過する。
ただし、必ずしも上記ゾーンの全てを上記順序でフィルムを搬送させる必要はなく、例えば、下記組み合わせ例のように、上記ゾーンの一部のみを使用したり、上記ゾーンのうち任意のゾーンを数回使用したりしてもよい。
1)予熱ゾーン/斜め延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
2)予熱ゾーン/横延伸ゾーン/斜め延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
3)予熱ゾーン/斜め延伸ゾーン/横延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
4)予熱ゾーン/横延伸ゾーン1/斜め延伸ゾーン/横延伸ゾーン2/保持ゾーン/冷却ゾーン
5)予熱ゾーン/横延伸ゾーン1/斜め延伸ゾーン1/横延伸ゾーン2/斜め延伸ゾーン2/保持ゾーン/冷却ゾーン
予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、フィルムの両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。
横延伸ゾーンとは、フィルムの両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をさす。このとき、両端の把持具が走行するレールの開き角度は、両レールともに同じ角度で開いてもよいし、各々異なる角度で開いてもよい。
斜め延伸ゾーンとは、フィルムの両端を把持した把持具が、把持具間隔を一定に保ったまま、又は広がりながら、屈曲するレール上を走行しはじめてから両把持具がともに再度直線レール上を走行しはじめるまでの区間をさす。
保持ゾーンとは、横延伸ゾーン又は斜め延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、両端の把持具が互いに平行を保ったまま走行する区間をさす。
冷却ゾーンとは、保持ゾーンより後の区間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成するシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度Tg℃以下に設定される区間をさす。
このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、あらかじめ対向する把持具間隔を狭めるようなレールパターンとしてもよい。
各ゾーンの温度は、シクロオレフィン樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃、冷却ゾーンの温度はTg−30〜Tg℃に設定することが好ましい。
なお、幅方向の厚さムラの制御のため、延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差を付けてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差を付与させる方法としては、例えば、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差を付けるようにして調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御するなどの公知の方法を用いることができる。
さらに、長尺延伸フィルムにおけるシワや寄りの発生を防止する方法としては、延伸時にフィルムの支持性を保ち、揮発分率が5体積%以上の状態を存在させて延伸した後、収縮させながら揮発分率を低下させる方法等を挙げることができる。
本発明でいうフィルムの支持性を保つとは、フィルムの膜性を損なうことなく両側縁を把持することを意味する。揮発分率については、延伸操作工程において常に5体積%以上の状態を維持していてもよいし、延伸操作工程の一部の区間に限って揮発分率が5体積%以上の状態を維持してもよい。後者の場合、入り口位置を起算点として全延伸区間の50%以上の区間、揮発分率が12体積%以上の状態となっていることが好ましい。いずれにせよ、延伸前に揮発分率が12体積%以上の状態を存在させておくことが好ましい。
ここで、揮発分率(単位;体積%)とは、フィルムの単位体積あたりに含まれる揮発成分の体積を表し、揮発成分体積をフィルム体積で除した値とする。
テンターの入口に最も近いガイドローラーは、フィルムの走行を案内する従動ローラーであり、軸受部を介してそれぞれ回転自在に軸支されている。ローラーの材質は、公知のものを用いることができるが、フィルムの傷つきを防止するためにセラミックコートを施す方法、アルミニウム等の軽金属にクロームメッキを施す方法等、軽量化を図るのが好適である。このローラーは、フィルムの走行時の軌道を安定させるために設けられるものである。
また、このローラーの上流側のローラーのうちの1本は、ゴムローラーを圧接させてニップすることが好ましい。このようなニップローラーにすることで、フィルムの流れ方向における繰出張力の変動を抑えることが可能だからである。
テンターの入口に最も近いガイドローラーの両端(左右)の一対の軸受部には、当該ローラーにおいてフィルムに生じている張力を検出するための第1フィルム張力検出装置、第2フィルム張力検出装置がそれぞれ設けられている。フィルム張力検出装置としては、例えばロードセルを用いることができる。
ロードセルとしては、引張又は圧縮型の公知のものを用いることができる。ロードセルは、着力点に作用する荷重を起歪体に取り付けられた歪ゲージにより電気信号に変換して検出する装置である。
ロードセルは、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラーの左右の軸受部に設置されることにより、走行中のフィルムがローラーに及ぼす力、すなわち、フィルムの両側縁近傍に生じているフィルム進行方向における張力を左右独立に検出するものである。
なお、ローラーの軸受部を構成する支持体に歪ゲージを直接取り付けて、該支持体に生じる歪に基づいて荷重、即ちフィルム張力を検出するようにしてもよい。発生する歪とフィルム張力との関係は、あらかじめ計測され、既知であるものとする。
上述したようなフィルム張力検出装置を設けて、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラーにおけるフィルムの両側縁近傍の張力を検出するようにしたのは、フィルムの位置及び方向が、フィルム延伸装置の入口部の位置及び方向に対してズレが生じている場合、このズレ量に応じて、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラーにおけるフィルムの両側縁近傍の張力に差を生じることになるため、この張力差を検出することによって、当該ズレの程度を判別するためである。
フィルムの位置及び方向が、フィルム延伸装置の入口部の位置及び方向との関係で適正であれば、ローラーに作用する荷重は左右で粗均等になり、互いの位置がズレていれば左右のフィルム張力に差が生じるのである。
したがって、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラーにおける左右のフィルム張力差が等しくなるように、フィルムの位置及び角度を、適切に調整すれば、フィルム延伸装置の入口部における把持具による把持が安定し、把持具外れ等の障害の発生を少なくできる。さらに、フィルム延伸装置による斜め延伸後のフィルムの幅方向における物性を安定させることができる。
配向角の微調整や製品バリエーションに対応するために、斜め延伸テンター入口でのフィルム進行方向と斜め延伸テンター出口でのフィルム進行方向とがなす角度の調整が必要となる。その際、成膜及び斜め延伸を連続して行うことが、生産性や収率の点で好ましい。
成膜工程、斜め延伸工程、及び巻取工程を連続して行う場合、成膜工程と巻取工程でのフィルムの進行方向が一致していることが、工程の幅を小さくできる点で好ましい。そのような工程とするには、成膜したフィルムを斜め延伸テンター入口に導くためにフィルムの搬送方向を変更する、及び/又は斜め延伸テンター出口から出たフィルムを巻取装置方向に戻すためにフィルムの搬送方向を変更する方法が必要となる。
フィルムの搬送方向を変更する装置としては、エアーフローローラーなどを用いるなど公知の方法を実施することができる。斜め延伸テンター出口以降の装置(巻取り装置、アキューム装置、ドライブ装置など)は横方向にスライドできる構造が好ましい。
次いで、本発明に係るシクロオレフィン樹脂フィルムの製造方法について、図を用いて説明する。
図4(a)〜(c)は、本発明に適用可能な製造方法の一例(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図である。
図5(a)及び(c)は、本発明に適用可能な製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図である。
図4(a)〜(c)は、各々一旦ロール状に巻き取られた長尺フィルム原反を繰り出して斜め延伸するパターンの一例を示しており、図5(a)及び(b)は、各々長尺フィルム原反を巻き取ることなく連続的に斜め延伸工程を行うパターンの一例を示すものである。
図4及び図5において、16はフィルム繰り出し装置、17は搬送方向変更装置、18は巻き取り装置、19は成膜装置を各々示した。それぞれの図において、同じものを示す記号については省略している場合がある。
フィルム繰り出し装置16は、斜め延伸テンター入口に対して所定角度で前記フィルムを送り出せるように、スライド及び旋回可能となっているか、フィルム繰り出し装置16はスライド可能となっており、搬送方向変更装置17により斜め延伸テンター入口に前記フィルムを送り出せるようになっていることが好ましい。
前記フィルム繰り出し装置16、及び搬送方向変更装置17をこのような構成とすることにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さい延伸フィルムを得ることが可能となる。また、前記フィルム繰り出し装置16、搬送方向変更装置17を移動可能とすることにより、前記左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
巻き取り装置18は、斜め延伸テンター出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように形成することにより、フィルムの引き取り位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さい延伸フィルムを得ることが可能となる。そのため、フィルムの皺の発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻き取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本発明において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの間で調整する必要がある。
前記引取張力が100N/mより大きいと、フィルムのたるみや皺が発生しにくく、リターデーション、及び配向軸の幅方向のプロファイルも悪化することがない。また、引取張力が300N/m未満であると幅方向の配向角のバラツキが悪化することなく、幅収率(幅方向の取り効率)も良好となる。
また、本発明においては、上記引取張力Tの変動を±5%未満、好ましくは±3%未満の精度で制御する必要がある。上記引取張力Tの変動が±5%未満であると、幅方向及び流れ方向の光学特性のバラツキが小さくなる。
上記引取張力Tの変動を上記範囲内に制御する方法としては、テンター出口部の最初のローラーにかかる荷重、すなわちフィルムの張力を測定し、その値を一定とするように、一般的なPID制御方式(P(比例制御)、I(積分制御)、D(微分制御))により引取ローラーの回転速度を制御する方法が挙げられる。
前記荷重を測定する方法としては、ローラーの軸受部にロードセルを取り付け、ローラーに加わる荷重、すなわちフィルムの張力を測定する方法が挙げられる。ロードセルとしては、引張型や圧縮型の公知のものを用いることができる。
延伸後のフィルムは、把持具による把持が開放され、テンター出口から排出され、フィルムの両端(両側)がトリミングされた後に、順次巻芯(巻取りローラー)に巻き取られて、延伸フィルムの巻回体にすることができる。
また、必要に応じて、巻取ローラーに巻き取る前に、テンターの把持具で把持されていたフィルムの両端をトリミングしてもよい。また、巻き取る前に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルムを重ねて同時に巻き取ってもよいし、延伸フィルムの少なくとも一方、好ましくは両方の端にテープ等を張り合わせながら巻き取ってもよい。マスキングフィルムとしては、上記フィルムを保護することができるものであれば特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
なお、斜め延伸方法については、上記の斜め延伸方法に限らず、例えば、特開2012−56322号公報の段落[0045]〜[0063]に記載の方法を用いても構わない。
上記の製造方法により得られたシクロオレフィン樹脂フィルムは、配向角θが巻取り方向に対して、例えば10〜80°の範囲内に傾斜しており、少なくとも1300mmの幅において、幅方向の、面内リターデーションRoのバラツキが4nm以下、配向角θのバラツキが1.0°以下であることが好ましい。
本発明において、シクロオレフィン樹脂フィルムの面内リターデーションRoのバラツキは、幅方向の少なくとも1300mmにおいて、4nm以下、好ましくは3nm以下であることが好ましい。面内リターデーションRoのバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。
本発明において、シクロオレフィン樹脂フィルムの配向角θのバラツキは、幅方向の少なくとも1300mmにおいて、1.0°以下、好ましくは0.80°以下であることが好ましい。配向角θのバラツキが1.0°以下の延伸フィルムを偏光子と貼り合せて円偏光板を得、これを液晶表示装置に据え付けると、光漏れが生じることなく、コントラストを向上させることができる。
本発明のシクロオレフィン樹脂フィルムの面内リターデーションRoは、用いられる表示装置の設計によって最適値が選択される。なお、前記Roは、面内遅相軸方向の屈折率nと面内で前記遅相軸に直交する方向の屈折率nとの差にフィルムの平均厚さdを乗算した値(Ro=(n−n)×d)である。
本発明のシクロオレフィン樹脂フィルムからなる基材フィルム層の平均厚さは、機械的強度などの観点から、好ましくは6〜100μmの範囲内、より好ましくは20〜80μmの範囲内、さらに好ましくは30〜60μmの範囲内、特に好ましくは30〜40μmの範囲内である。
また、幅方向の厚さムラは、巻取りの可否に影響を与えるため、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
<ハードコート層>
本発明の光学フィルムにおいては、ハードコート層上に導電層を設けることによって、基材フィルム層に対して導電層を密着性良く設けることができる。
本発明に係るハードコート層の形成に使用される硬化型樹脂としては、熱硬化型樹脂や活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化型樹脂が好ましく用いることができる。
(1)熱硬化型樹脂
熱硬化型樹脂は、特に制限はなく、具体的には、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の種々の熱硬化性樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有するものであれば良く、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(具体的には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
(2)活性エネルギー線硬化型樹脂
本発明において好適に用いることができる活性エネルギー線硬化型樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化型樹脂層が形成される。
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化型樹脂が好ましい。
(2.1)紫外線硬化型樹脂
以下、本発明に係るハードコート層の形成に好適な紫外線硬化型樹脂について説明する。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に、さらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシ基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載の樹脂を用いることができる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載の樹脂を用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
また、本発明では、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂を用いることが好ましく、このような化合物としては、例えば、多官能アクリレート樹脂等が挙げられる。ここで、多官能アクリレート樹脂とは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能アクリレート樹脂のモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートが挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであっても良い。
本発明において適用可能な紫外線硬化型樹脂の市販品としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、(株)ADEKA製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−2
0、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、DIC(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(以上、中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(以上、三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
(2.2)光重合開始剤
また、紫外線硬化型樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤を紫外線硬化型樹脂に対して2〜30質量%の範囲内で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させるルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
このようなオニウム塩としては、特に、芳香族オニウム塩をカチオン重合開始剤として使用するのが特に有効であり、中でも特開昭50−151996号公報、同50−158680号公報等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、同52−30899号公報、同59−55420号公報、同55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、同56−149402号公報、同57−192429号公報等に記載のオキソスルホニウム塩、特公昭49−17040号公報等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4139655号明細書等に記載のチオピリリウム塩等が好ましい。
また、アルミニウム錯体や光分解性ケイ素化合物系重合開始剤等を挙げることができる。上記カチオン重合開始剤と、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントン等の光増感剤を併用することができる。
(2.3)各種添加剤
ハードコート層には、耐傷性、滑り性や屈折率を調整するために無機化合物又は有機化合物の微粒子を含んでも良い。
ハードコート層に使用される無機微粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin
Oxide)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
また、有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、又はポリフッ化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物を加えることができる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)、フッ素含有アクリル樹脂微粒子が挙げられる。フッ素含有アクリル樹脂微粒子としては、例えば日本ペイント製:FS−701等の市販品が挙げられる。また、アクリル粒子として、例えば日本ペイント製:S−4000、アクリル−スチレン粒子として、例えば日本ペイント製:S−1200、MG−251等が挙げられる。
また、ハードコート層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。
ハードコート層の形成に用いるハードコート層形成用塗布液には、溶媒が含まれていても良く、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであっても良い。ハードコート層形成用塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル等)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、又はこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
さらに、ハードコート層には、シリコーン系界面活性剤又はポリオキシエーテル化合物を含有させることができる。また、ハードコート層にはフッ素−シロキサングラフトポリマーを含有しても良い。
これらのハードコート層は、ハードコート層形成用塗布液を用いて、例えば、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の湿式塗布方法で塗設することができる。
ハードコート層塗布液の塗布量は、ウェット層厚として0.1〜40μmの範囲内が適当で、好ましくは、0.5〜30μmの範囲内である。また、層厚としては、0.1〜30μmの範囲内、好ましくは1〜10μmの範囲内である。
(2.4)ハードコート層の硬化処理方法
フィルム基材上に、ハードコート層を形成した後、該ハードコート層に活性エネルギー線、好ましくは紫外線を照射して、最終的にクリアハードコート層を硬化する。
紫外線硬化型樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化したハードコート層を形成するために用いる光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性エネルギー線の照射量は、好ましくは5〜350mJ/cmの範囲内であり、特に好ましくは250〜300mJ/cmの範囲内である。
<導電層>
本発明における導電層は、可視光領域において透過度を有し、かつ導電性を有する層であればよく、特に限定されないが、導電性ポリマー、銀ペーストやポリマーペースト等の導電性ペースト、さらに金や銅等の金属コロイド、ITO等の金属酸化物等が挙げられる。
その材料としては、具体的には、錫をドープしたインジウム酸化物(ITO)、アンチモン又はフッ素をドープした錫酸化物(ATO又はFTO)、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物(AZO)、カドミウム酸化物、カドミウムと錫の酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、ヨウ化銅などの金属酸化物、又は金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの金属、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブ(以下、CNT)の無機系、有機系のナノ材料等が挙げられる。これらの中でも、該導電層を液晶表示素子用のタッチパネルとして用いる場合には、光線透過性及び耐久性等の観点より、ITOが最も好ましい。
この導電層の成膜方法は、特に限定されないが、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、ゾル・ゲル法、コーティング法などが挙げられる。
導電層は、静電容量式タッチパネルとして使用する場合は、パターン化して成膜される場合が多い。
パターンとしては、メッシュ状で且つ直線が略直交した直線格子パターン、交差部間の導電部分が少なくとも1つの湾曲部を有する波線格子パターン、ダイヤモンド状のパターン等がある。
導電層の厚さは、特に限定されないが、ITOの場合には、好ましくは10〜150nmの範囲内、さらに好ましくは15〜70nmの範囲内である。
また、導電層の表面抵抗率は、特に限定されないが、好ましくは200Ω/□以下である。
導電層にCNTを使用する場合、用いられるCNTは、単層CNT、二層CNT、三層以上の多層CNTのいずれでもよいが、直径が0.3〜100nmの範囲内、長さ0.1〜20μm程度のものが好ましく用いられる。導電層の透明性を高め、表面抵抗値を低減するためには、直径10nm以下、長さ1〜10μmの範囲内の単層CNT、二層CNTがより好ましい。また、CNTの集合体にはアモルファスカーボンや触媒金属などの不純物は極力含まれないことが好ましい。
<低誘電体層>
本発明に用いられる低誘電体層は、二つの基材ユニットを接合するために、両者の間に設けられる。
低誘電体層は、誘電率が、22〜40×10-12(F/m)であることが好ましい。低誘電体層には、例えば、感圧性接着剤層(粘着剤層)又は硬化接着剤層、ポリイミド樹脂、セルロース、又は薄膜ガラス等を用いることができる。
感圧性接着剤層としては、好ましくはアクリル系粘着剤層であり、市販の光学透明粘着剤(OCA: Optical Clear Adhesive)を使用することができる。
硬化接着剤層としては、接着するシクロオレフィン樹脂を含有する基材フィルム層に悪影響がないような温度で硬化できる点で、好ましくは紫外線硬化型接着剤層である。基材フィルム層に含有されるシクロオレフィン樹脂は、紫外線硬化型接着剤の硬化に利用される光源(例えば、高圧水銀ランプ)の波長365nmの光をよく透過させるため、紫外線硬化型接着剤を短時間で硬化させることができる。
紫外線硬化型接着剤としては、例えば、高透明性接着剤転写テープ(3M社製 製品番号8172CL)を使用することが好ましい。
特に、紫外線硬化型接着剤を紫外線硬化させる前に、中空シリカを含有させたのちに紫外線硬化させることが好ましい。中空シリカとしては、例えば、シリナックス(登録商標/日鉄鉱業株式会社製)を使用することが好ましい。また、中空シリカの含有量は、30質量%程度であることが好ましい。
ポリイミド樹脂としては、IST社製のポリイミドフィルムを使用することが好ましい。
セルロースとしては、市販のセルロースアシレートフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UA、KC2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フィルム(株)製等)を使用することが好ましい。中でも、コニカミノルタタックKC4UAHを使用することが好ましい。
薄膜ガラスとしては、日本電気硝子社製のG−Leafを使用することが好ましい。
本発明に係る光学フィルムは、一方の基材ユニットの基材フィルム層、低誘電体層及び他方の基材ユニットの基材フィルム層の各静電容量の合計が、3000×10−18F以下であることが、タッチパネル用センサーとして用いた場合のタッチ感度の点で好ましい。
静電容量は、下記式により求めることができる。
C=ε×S/d
上記式において、εは誘電率、Sは電極面積、dは膜厚を表す。
[光学フィルムの製造方法]
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、シクロオレフィンを含有する基材フィルム層(上述のシクロオレフィン樹脂フィルム)、ハードコート層及び導電層をこの順に積層して基材ユニットを二つ形成する形成工程(基材ユニット形成工程ともいう)と、前記基材ユニットを形成する工程後に、当該二つの基材ユニットを、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層して光学フィルムを形成する工程(積層工程ともいう)と、前記光学フィルムを形成する工程後に、当該光学フィルムを巻き取る工程(巻取り工程)と、を有することを特徴とする。
(1)基材ユニット形成工程
あらかじめ、上述の方法によりリターデーションを付与して作製したシクロオレフィン樹脂フィルム(第1の基材フィルム層)の一方の面上に、紫外線硬化型樹脂及び界面活性剤等を含有した溶液をコーティングし、乾燥後、紫外線照射等により硬化させてハードコート層を形成する。
次いで、ハードコート層上に、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、ゾル・ゲル法、コーティング法などにより導電層を形成した基材ユニットを二つ形成する。
(2)積層工程
基材ユニット形成工程で形成した一方の基材ユニットの第1の基材フィルム層と、他方の基材ユニットの第2の基材フィルム層とを、それぞれの導電層が外側となるように、低誘電体層により接合し、二つの基材ユニットを積層する。
積層後、一方の基材ユニットの導電層を保護フィルムで保護して、他方の基材ユニットの導電層の表面にフォトレジストパターンを形成して、透明電極パターンを形成し、同様にして、一方の基材ユニットの導電層の表面に透明電極パターンを形成し、光学フィルムを形成することが好ましい。
(3)巻取り工程
積層工程で得られた光学フィルムは、巻き取りローラーにより巻き取る。巻取りローラーとしては、光学フィルムを巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
[タッチパネル用センサー]
本発明に係るタッチパネル用センサーは、上記光学フィルムの最表面にカバーガラスを設けることで作製することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
[光学フィルム1の作製]
<第1の基材ユニットの作製>
《第1の基材フィルム層の形成》
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過してシクロオレフィン溶液(ドープD−1)を調製した。
シクロオレフィン重合体P−1(JSR社製「アートン」(登録商標))
150質量部
ジクロロメタン 380質量部
メタノール 70質量部
次に、上記で調整したシクロオレフィン溶液(ドープD−1)を含む下記組成物を分散機に投入し、微粒子分散液(M−1)を調製した。
微粒子(アエロジルR812:日本アエロジル社製、一次平均粒子径:7nm、見掛け比重50g/L) 4質量部
ジクロロメタン 76質量部
メタノール 10質量部
シクロオレフィン溶液(ドープD−1) 10質量部
上記シクロオレフィン溶液(ドープD−1)を100質量部、微粒子分散液(M−1)を0.75質量部を混合し、成膜用ドープ1を調製した。
上記で調製した成膜用ドープ1を、無端ベルト流延装置を用いて、温度33℃、幅2000mmでステンレスベルト支持体上に均一に流延(キャスト)した。次いで、溶媒を蒸発させた後、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したフィルムを、160℃の熱を付与しながら、テンターを用いて幅方向に5%延伸した。
次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃とした。
次いで、原反フィルムをフィルム巻出工程より巻出し、図2(a)で示すような斜め延伸テンターを用いて、斜め延伸を行った。このとき、前工程で巻き取ったフィルム積層ローラーにおいて、その後尾より巻出す形とした。
ロール状の原反フィルムを、図2(a)に示す斜め延伸装置のスライド可能な繰出装置にセットし、角度θi=47°となるようにレールパターンが設定された斜め延伸機に供給した。このときのゾーン組み合わせとしては、予熱ゾーン、横延伸ゾーン、斜め延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーンとし、そのとき、斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドローラーの主軸と斜め延伸テンターの把持具(クリップつかみ部)との距離を80cmとした。クリップは搬送方向の長さが5.08cm(2インチ)のものを、上記ガイドローラーとして直径10cmのものを使用した。
斜め延伸テンター内にて、予熱ゾーンの温度を185℃、横延伸ゾーンの温度を185℃、斜め延伸ゾーンの温度を185℃、保持ゾーンの温度を185℃、冷却ゾーンの温度を110℃とし、テンター出口における引取張力200N/mとした。
このときの延伸倍率は、1.93倍となるように延伸を行った。延伸倍率の内訳としては、横延伸ゾーンにて1.38倍、さらに斜め延伸ゾーンにおいて1.36倍となるように延伸した。この際、配向角θが45°となるように斜め方向に延伸を行った。
レールが45°屈曲する際に延伸と垂直方向に0.82倍に収縮した。延伸後のフィルムは、斜め延伸テンター出口側第一ローラーで測定した張力の変動を引取モーター回転数に反映させるフィードバック制御を行って、引取張力の変動が3%未満となるように制御した。その後、フィルム両端をトリミングして、エアーフローローラーからなる搬送方向変更装置で搬送方向を変更し、スライド可能な巻取装置で巻き取り、厚さ40μm、2000mm幅のロール状で長尺の基材からなるシクロオレフィン樹脂を含有した第1の基材フィルム層を得た。
《ハードコート層及び導電層の形成》
第1の基材フィルム層の一方の面上に、紫外線硬化型樹脂(JSR社製オプスターZ7527)及び界面活性剤(AGCセイミケミカル社製サーフロンS−651)を含有した溶液を、ハードコート層が3μmの膜厚となるようにマイクログラビアでコーティングした。
次いで、80°Cに設定された乾燥部で1分間乾燥した後、120mW/cmで紫外線照射することによりハードコート層を形成した。そして、ハードコート層上に、厚さ27nmのインジウムスズ酸化物層(導電層)を形成した。以上のようにして、第1の基材ユニットを形成した。
<第2の基材ユニットの形成>
《第2の基材フィルム層の形成》
上記第1の基材フィルム層の形成において、同様のシクロオレフィン重合体P−1を用いて、延伸温度と延伸倍率を適宜変更して、面内リターデーション値(Ro)が下記表1に記載の値となるように調整して、シクロオレフィン樹脂を含有した第2の基材フィルム層を形成した。
《ハードコート層及び導電層の形成》
第2の基材フィルム層上に、第1の基材ユニットの作製と同様の方法でハードコート層及びインジウムスズ酸化物層(導電層)を形成した。
<第1及び第2の基材ユニットの積層>
第1の基材フィルム層と第2の基材フィルム層とを、それぞれのインジウムスズ酸化物層(導電層)が外側になるように、低誘電体層となる、厚さ50μmの高透明性接着剤転写テープ(3M社製 製品番号8172CL)(アクリル系OCA)を用いて接合し、高圧水銀ランプから紫外線(波長365nm)を照射して、紫外線硬化型接着剤を硬化させ、積層体とした。
上記の積層体の一方のインジウムスズ酸化物層(導電層)を保護フィルム(株式会社サンエー化研製アクリル粘着剤付ポリエステルフィルム)で保護し、他方のインジウムスズ酸化物層の表面にストライプ状のフォトレジストパターンを形成した。積層体を塩酸に浸漬して不要なインジウムスズ酸化物層を除去し、ストライプ状の透明電極パターン(幅2mm、ピッチ6mm)を形成した。次に、積層体の他方のインジウムスズ酸化物層(導電層)にも上記の操作を行い、各基材フィルム層の外側に、ストライプ状の透明電極パターンを形成し、光学フィルム1を得た。
[光学フィルム2〜9及び21〜24の作製]
光学フィルム1の作製において、第1及び第2の基材フィルム層の材料とリターデーション値(Ro)、低誘電体層の材料を下記表1に示すとおりに変更した以外は光学フィルム1と同様にして光学フィルム2〜9及び21〜24を作製した。
なお、表1に記載の各用語は以下のとおりである。
「シクロオレフィン」:上記シクロオレフィン重合体P−1
「アクリル系OCA」:高透明性接着剤転写テープ(3M社製 製品番号8172CL)
「アクリル系OCA+中空粒子」:高透明性接着剤転写テープを貼りつけて、高圧水銀ランプから紫外線照射して硬化する前に、中空シリカを30質量%含有させ、その後、紫外線照射して硬化
「中空シリカ」:シリナックス(日鉄鉱業株式会社製)
「ポリイミド樹脂」:ポリイミドフィルム(IST社製)
「セルロース」:KU4UAH(コニカミノルタ社製)
[光学フィルム10の作製]
光学フィルム2の作製において、第1及び第2の基材フィルム層の膜厚を20μmに変更した以外は、光学フィルム2と同様にして光学フィルム10を作製した。
[光学フィルム11〜13の作製]
光学フィルム10の作製において、第1及び第2の基材フィルム層の膜厚を表2に示す膜厚に変更した以外は、光学フィルム10と同様にして光学フィルム11及び12を作製した。
また、光学フィルム6の作製において、第1及び第2の基材フィルム層の膜厚を表2に示す50μmに変更した以外は、光学フィルム6と同様にして光学フィルム13を作製した。
[光学フィルム14〜18の作製]
光学フィルム1の作製において、第1及び第2の基材フィルム層の膜厚を表3に示す膜厚に変更した以外は、光学フィルム1と同様にして光学フィルム14〜18を作成した。
[評価]
(1)光学フィルム1〜9及び21〜24の評価
上記で作製した光学フィルム1〜9及び21〜24を下記の評価方法にしたがって評価し、その結果を下記表1に示した。
<リターデーション値(Ro)>
上記で作製した光学フィルムのリターデーション値(Ro)を、下記式により求めた。
Ro=(n−n)×d
上記式において、光波長550nmにおいて、dはフィルムの膜厚(nm)を表し、nはフィルム面内の最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率ともいう)を表し、nはフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率を表す。
また、リターデーション値(Ro)は、自動複屈折率計としてKOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用い、23℃、55%RHの環境下で測定した。
<干渉ムラ>
上記で作製した光学フィルムの裏面に黒ビニールテープ(日東電工社製、No.21)を貼り、暗室内で波長の光源下に置き、光学フィルムの法線方向から方位角30〜60°の範囲内で観察し、干渉ムラの有り無しを目視検査を行った。
○:干渉ムラが認められない。
△:干渉ムラが僅かに認められる。
×:干渉ムラが認められる。
<偏光サングラス装着時の視認性>
市販の液晶モニター上に、上記で作製した光学フィルムを貼り付け、偏光サングラスを装着しフィルムの法線方向から方位角0〜90°の範囲内で観察してブラックアウトの有り無しを確認した。
○:ブラックアウト無し
△:ブラックアウトが僅かに認められる。
×:ブラックアウトが認められる
<屈曲試験>
上記で作製した光学フィルムを、直径10mmの円筒マンドレルを備えた円筒形マンドレル屈曲試験器(コーテック(株)社製)を用いて、20回曲げ試験に供した。その後、下記の表面抵抗率、ヘイズ及び全光線透過率を測定した。
<耐久試験>
上記で作製した光学フィルムを80℃・90RH%の環境下で240時間静置し、その後の表面抵抗率、ヘイズ、全光線透過率を測定した。
<表面抵抗率>
導電層の導電性領域の表面抵抗率を、三菱化学株式会社製Loresta(登録商標)−GP MCP−T600を用いて測定した。10cm×10cmのサンプルの導電性領域の中央部のランダムに選択した5箇所について表面抵抗率を測定し、その平均値を当該サンプルの表面抵抗率とした。なお、表面抵抗率が0〜200Ω/□の範囲内を、実用上好ましい範囲とする。
<ヘイズの測定>
ヘイズは、曇価ともよばれ、曇り具合、拡散度合いを表すものであって、市販されているヘイズメーター(日本電色社製、製品名「NDH 2000」)を用いて、JISK−7136に準拠してヘイズ(%)を測定した。測定したヘイズを下記の基準で評価した。なお、光学フィルムのヘイズが2%以上であると、白ボケが発生しタッチパネルの視認性が低下する。
○:0%以上1%未満
△:1%以上2%未満
×:2%以上
<全光線透過率>
全光線透過率は、市販されているヘイズメーター(日本電色社製、製品名「NDH 2000」)を用いて、JISK−7361に準拠して測定した。なお、測定した光学フィルムの全光線透過率は、90%以上であれば実用上好ましい範囲とし、90%未満であると視認性が低下するため好ましくない。
Figure 2016090925
(2)光学フィルム10〜13及び21の評価
上記で作製した光学フィルム10〜13及び21を下記の評価方法にしたがって評価し、その結果を下記表2に示した。
<静電容量>
上記で作製した光学フィルムの第1の基材フィルム層、低誘電体層及び第2の基材フィルム層についてそれぞれ、下記の式により静電容量を求めた。そして、第1の基材フィルム層の静電容量C、低誘電体層の静電容量C及び第2の基材フィルム層の静電容量Cの合計から静電容量Ctotalを求めた。なお、電極面積Sは100μm×100μmとした。
C=ε×S/d
上記式において、εは誘電率、Sは電極面積、dは膜厚を表す。
Figure 2016090925
(3)光学フィルム14〜18及び21の評価
<耐久試験>
上記で作製した光学フィルムを80℃・90RH%の環境下で240時間静置し、その後の表面抵抗率を測定した。
上記耐久試験前と耐久試験後のそれぞれについて表面抵抗率を測定した。
<表面抵抗率>
導電層の導電性領域の表面抵抗率を、三菱化学株式会社製Loresta(登録商標)−GP MCP−T600を用いて測定した。10cm×10cmのサンプルの導電性領域の中央部のランダムに選択した5箇所について表面抵抗率を測定し、その平均値を当該サンプルの表面抵抗率とした。なお、表面抵抗率が0〜200Ω/□の範囲内を、実用上好ましい範囲とする。
Figure 2016090925
表1〜表3に示した結果より、本発明の光学フィルムは、比較例の光学フィルムに比べて、白化や干渉ムラを抑制し、長時間使用での耐久性及び感度の向上を図れることが認められる。
101A,101B 基材フィルム層
102A,102B ハードコート層
103A,103B 導電層
104 低誘電体層
110A,110B 基材ユニット
200 光学フィルム
4 長尺フィルム原反
5 長尺延伸フィルム
6 斜め延伸テンター
7−1 外側のフィルム把持手段の軌跡
7−2 内側のフィルム把持手段の軌跡
8−1 外側のフィルム把持開始点
8−2 内側のフィルム把持開始点
9−1 外側のフィルム把持終了点
9−2 内側のフィルム把持終了点
10−1 外側斜め延伸開始点
10−2 内側斜め延伸開始点
11−1 外側斜め延伸終了点
11−2 内側斜め延伸終了点
12−1 テンター入口側のガイドローラー
12−2 テンター出口側のガイドローラー
13 フィルムの延伸方向
14−1 斜め延伸前のフィルムの搬送方向
14−2 斜め延伸後のフィルムの搬送方向
Wo 斜め延伸前のフィルム幅手長さ
W 斜め延伸後のフィルム幅手長さ
16 フィルム繰り出し装置
17 搬送方向変更装置
18 巻き取り装置
19 成膜装置

Claims (7)

  1. 光波長550nmにおける面内のリターデーション値(Ro)が、30〜250nmの範囲内である光学フィルムであって、
    少なくとも、基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に備えた基材ユニットが二つ積層された構成を有し、
    当該二つの基材ユニットは、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層されており、かつ
    前記基材フィルム層が、シクロオレフィン樹脂を含有している
    ことを特徴とする光学フィルム。
  2. 前記二つの基材ユニット間に、誘電率が22〜40×10−12(F/m)の範囲内の低誘電体層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記基材フィルム層の厚さが、6〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学フィルム。
  4. 一方の基材ユニットの基材フィルム層、低誘電体層及び他方の基材ユニットの基材フィルム層の各静電容量の合計が、3000×10−18F以下であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
  5. 前記導電層の表面抵抗率が、200Ω/□以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学フィルムを具備したことを特徴とするタッチパネル用センサー。
  7. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
    シクロオレフィンを含有する基材フィルム層、ハードコート層及び導電層をこの順に積層して基材ユニットを二つ形成する形成工程と、
    前記基材ユニットを形成する工程後に、当該二つの基材ユニットを、それぞれの前記基材フィルム層が相互に直接対向するように積層して光学フィルムを形成する工程と、
    前記光学フィルムを形成する工程後に、当該光学フィルムを巻き取る工程と、を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
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