JP2016088443A - 海中構造物の海上施工システム及び海上構築方法 - Google Patents
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すなわち、全体形状が曲面(曲線)で構成される球殻型の構造物では、平面(直線)で構成される構造物に比較して、鉄筋の加工やセット、型枠の組み立て作業が困難となっていた。
また、例えば数100mとなる大スパンで大型の球殻型海中構造物を構築する場合には、完成体として上述したような陸上の製作ヤードで一度に製作することが困難であり、かつ海上輸送も難しいことから、海上でコンクリート打設等の作業を行うことによる施工となる。しかし、この場合に必要になる作業足場の設置量が膨大であり、海上に設置する作業が困難なうえ、これら作業足場も海上輸送する必要があり、コストがかかるうえ工期への影響も大きくなることから、その点で改善の余地があった。
しかも、躯体製造ユニットと仕上げユニットとが案内ガイドによって同時に移動することができるので、躯体フレームの構築と同一の高さ(レベル)で同じタイミングで耐水圧板の施工を完了することができる。
球殻構造物10は、外殻部11の上部の一部分のみを海上に浮上させた状態、全体が海中に潜水させた状態、或いは外殻部11の下部の一部分のみを海中に潜らせた状態などバラスト13の重量バランスを調整することで海中における任意の高さとなるように上下移動可能に設けられている。
球殻構造物10の内部空間Rは、上述した中央タワー部12と、その外側の大空間部14と、からなる。球殻構造物10の上部には、内部空間Rへの出入口となるエントランス部15が設けられている。
躯体フレーム16は、高強度で錆が発生しにくい材料、カーボン繊維、アラミド繊維等に樹脂を含浸させ任意形状に成型した補強筋等の樹脂筋16Bを混合した連続繊維補強樹脂16Aからなる複合構造によって形成されている。樹脂コンクリート16Aとしては、紫外線硬化樹脂が採用されている。躯体フレーム16は、外殻部11の下側から上側に向けて所定高さのスパン毎に順次コンクリートを打設することによって製造され、全体として一体的に形成されている。
コア部21は、鉄筋コンクリート造であり、上下方向に沿って一定の円形断面により形成され、例えば周知のスリップフォームを用いることで連続的に施工され、施工中において外殻部11の高さよりも高くなるように構築される。コア部21は、上下両端が外殻部11に対して一体的に接合され、外殻部11の底部分から支持されるとともに、天端部分から吊り下げられた半吊り構造となっている。コア部21を外殻部11の中心軸O上に設けることで、外殻部11が水圧などの外力を受けた場合に生じる変形を拘束できるようになっている。
なお、バラスト13の形状、大きさ、数量は、球殻構造物10の大きさ、重量、必要浮力などの条件に合せて任意に設定することができる。
図3、図6、及び図7に示すように、海上施工システム1は、外殻部11と中央タワー部12とをほぼ同時に上昇させることで球殻構造物10を構築していくものである。
海上施工システム1は、コア部21に沿って上下移動可能に設けられた案内ガイド3と、案内ガイド3に設けられ外殻部11の躯体フレーム16を施工するための一対の躯体製造ユニット4と、案内ガイド3に設けられ外殻部11の耐水圧板17を施工するための一対の仕上げユニット5と、外殻部11の断面形状を記憶するとともに、案内ガイド3、躯体製造ユニット4、及び仕上げユニット5を制御する制御部(図示省略)と、を備えている。
第1張出アーム31、31は、それぞれの先端に躯体製造ユニット4が設けられている。また、第2張出アーム32、32は、それぞれの先端に前記仕上げユニット5が設けられている。
つまり、躯体製造ユニット4及び仕上げユニット5は、コア部21に保持される保持部33から張出アーム31、32で支持されており、コア部21を中心にして水平面内で回転移動できる構成となっている。
張出アーム31、32の軸方向(長さ方向X、Y)における躯体製造ユニット4および仕上げユニット5の位置は、詳しくは後述するが、外殻部11の施工位置に対応して移動することになる。
第1揚重設備35は、球殻構造物10の施工中において、突出端31a、32aの下方における外殻部11の外方の海上に資材を搬送する資材台船8を配置しておき、この資材台船8上から資材を吊り上げ、案内ガイド3の資材搬送路34内に送り込むために設けられている。
第3揚重設備37は、各張出アーム31、32の下面にその長さ方向X、Yに沿って走行レール(図示省略)が設けられ、その走行レールに案内されて移動可能となっている。
移動式型枠41は、上面視で外殻部11の接線を中心にして矢印E方向(図7参照)に回転自在に設けられている。また、移動式型枠41は、構築に伴って変化する外殻部11の周方向の曲率に対応できる構成となっている。
また、躯体製造ユニット4には、移動式型枠41内に打設した混合コンクリート16Cに向けて照射する紫外線照射部45が設けられている。つまり、打設されたコンクリートが紫外線硬化型樹脂であることから、打設後に紫外線照射部45によって紫外線を照射することで、硬化速度を上げることができ、施工の効率化を図ることができる。
図3及び図8(a)〜(c)に示すように、本実施の形態による球殻構造物10の海上構築方法は、躯体製造ユニット4における移動式型枠41を外殻部11の所定位置に位置決めする第1工程と、移動式型枠41内に混合コンクリート16Cを打設して躯体フレーム16を製造する第2工程と、製造された躯体フレーム16によって囲まれる被嵌合部分に仕上げユニット5を配置し、当該被嵌合部分に耐水圧板17を水密に嵌合する第3工程と、を有している。
そして、躯体製造ユニット4及び仕上げユニット5を外殻部11の形状に沿って案内ガイド3によって所定位置に移動させつつ、上記の第1工程、第2工程、及び第3工程を行うように制御部で制御する構成となっている。
なお、このとき各ユニット4、5で使用する樹脂コンクリートや樹脂筋、耐水圧板17等の資材は、各ユニット4、5の突出端31a、32aに設けられる第1揚重設備35によって海上の資材台船8より吊り上げられ各ユニット4、5で使用できるように外殻部11内に搬入される。
ここで、外殻部11が球状であり上面視で外殻部11の外径が異なるため、案内ガイド3の上昇と共に、張出ガイド31、32を適宜な長さに伸縮させ、躯体製造ユニット4および仕上げユニット5が外殻部11の所定位置に配置されるように制御される。例えば図7(c)に示す外殻部11は図7(a)、(b)に示す外殻部11に対して大径となるので、張出アーム31、32が伸張される。
本実施の形態では、図6に示すように、躯体製造ユニット4における移動式型枠41を外殻部11の所定位置に位置決めした後、移動式型枠41内にコンクリートを打設して躯体フレーム16を製造し、製造された躯体フレーム16によって囲まれる被嵌合部分に仕上げユニット5を配置し、被嵌合部分に耐水圧板17を水密に嵌合する施工工程を制御部7の制御によって自動的に行うことができる。そのため、全体形状が曲面(曲線)をなす球殻構造物10の外殻部11を海上で効率よく構築することができる。
しかも、躯体製造ユニット4と仕上げユニット5とが案内ガイド3によって同時に移動することができるので、躯体フレーム16の構築と同一の高さ(レベル)で同じタイミングで耐水圧板17の施工を完了することができる。
そのため、外殻部11の全周を1つの躯体製造ユニット4及び仕上げユニット5によって施工する場合に比べて施工時間が半分となることから、大幅な工期の短縮を図ることができる。
しかも、第3揚重設備37は、躯体製造ユニット4や仕上げユニット5とは別体であるので、これらユニット4、5を使用した施工を停止させずに、外殻部11の内部空間Rでの作業を並行して行えるので、作業効率を向上させることができる。
この場合、海上施工システム1を陸上で製造した直後の底盤部11Aに対して完成した状態でセットすることができるので、施工初期段階の盛り替え作業を省略することが可能となり、海上での作業工程を短縮することができる。
3 案内ガイド
4 躯体製造ユニット
5 仕上げユニット
10 球殻構造物(海中構造物)
11 外殻部
12 中央タワー部
13 バラスト
14 大空間部
16 躯体フレーム
17 耐水圧板
18 補強リブ
21 コア部(支持柱)
22 中央タワー外殻部
31 第1張出アーム
32 第2張出アーム
33 保持部
34 資材搬送路
35 第1揚重設備
36 第2揚重設備
37 第3揚重設備
41 移動式型枠
42 コンクリート打設口
Claims (13)
- コンクリート製の躯体フレームと、該躯体フレームによって囲まれる部分に嵌合される耐水圧板と、によって楕円球状の外殻部を構成する海中構造物を海上で構築するための海中構造物の海上施工システムであって、
前記躯体フレームの断面形状に合わせて移動可能、かつ姿勢変更可能に設けられた移動式型枠を有し、該移動式型枠内にコンクリートを充填して前記躯体フレームを製造する躯体製造ユニットと、
前記躯体フレームによって囲まれる部分に前記耐水圧板を水密な状態で嵌合させて前記外殻部を形成する仕上げユニットと、
前記躯体製造ユニットおよび前記仕上げユニットを前記外殻部の施工位置に合せて案内する案内ガイドと、
前記外殻部の断面形状を記憶するとともに、前記躯体製造ユニット、前記仕上げユニット、及び前記案内ガイドを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記外殻部の断面形状に基づいて、前記案内ガイドによって前記躯体製造ユニット及び前記仕上げユニットを前記外殻部の施工位置に移動させ、前記躯体製造ユニットにおいて前記移動式型枠内にコンクリートを打設し、前記仕上げユニットにおいて前記躯体フレームによって囲まれる部分に前記耐水圧板を嵌合させるように制御することを特徴とする海中構造物の海上施工システム。 - 前記海中構造物には、浮力を調整するバラストが設けられ、
前記制御部は、前記外殻部における前記躯体製造ユニット及び前記仕上げユニットの海面からの高さを一定にするように前記バラスト量を制御することを特徴とする請求項1に記載の海中構造物の海上施工システム。 - 前記外殻部の内部には、上下方向に延びる前記外殻部の中心軸に沿って支持柱が設けられ、
前記案内ガイドは、
前記支持柱に沿って上昇可能、かつ該支持柱を中心に回転可能に保持される保持部と、
上面視で前記保持部から前記外殻部の径方向の外側に向けて延びる複数の張出アームと、
を備え、
前記躯体製造ユニット及び前記仕上げユニットは、前記複数の張出アームのうちいずれかに該張出アームの長さ方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の海中構造物の海上施工システム。 - 前記張出アームは、上面視で前記保持部を中心とした十字型に配置され、前記保持部を挟んだ一対の前記張出アームのそれぞれに前記躯体製造ユニットが設けられ、他の一対の前記張出アームのそれぞれに前記仕上げユニットが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の海中構造物の海上施工システム。
- 前記張出アームには、内部に資材搬送路が設けられるとともに、前記張出アームの突出端に前記外殻部の外側と前記資材搬送路内との間で資材を受け渡しする第1揚重設備が設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の海中構造物の海上施工システム。
- 前記支持柱は、前記海中構造物の躯体の一部をなすコア部であって、
前記支持柱の上端には、当該支持柱を上方に延長するための第2揚重設備が設けられ、
前記第2揚重設備は、前記支持柱の延長とともに盛り替え可能に設置されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の海中構造物の海上施工システム。 - 前記張出アームの下面には、前記長さ方向に移動自在な第3揚重設備が設けられていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の海中構造物の海上施工システム。
- 前記移動式型枠は、上面視で前記外殻部の接線を中心にして回転自在に設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の海中構造物の海上施工システム。
- 前記移動式型枠には、打設したコンクリートを養生するための養生機能を備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の海中構造物の海上施工システム。
- 前記コンクリートは、樹脂筋を混合した樹脂コンクリートであって、
前記躯体製造ユニットには、前記移動式型枠内に打設した前記樹脂コンクリートに向けて紫外線を照射する紫外線照射部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の海中構造物の海上施工システム。 - 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の海上施工システムを用いた海中構造物の海上構築方法であって、
前記躯体製造ユニットにおける前記移動式型枠を前記外殻部の所定位置に位置決めする第1工程と、
前記移動式型枠内にコンクリートを打設して躯体フレームを製造する第2工程と、
製造された前記躯体フレームによって囲まれる被嵌合部分に前記仕上げユニットを配置し、当該被嵌合部分に前記耐水圧板を水密に嵌合する第3工程と、
を有し、
前記躯体製造ユニット及び前記仕上げユニットを前記外殻部の形状に沿って前記案内ガイドによって所定位置に移動させつつ、前記第1工程、前記第2工程、及び前記第3工程を行うように前記制御部で制御するようにしたことを特徴とする海中構造物の海上構築方法。 - 前記外殻部における前記躯体製造ユニット及び前記仕上げユニットの海面からの高さが一定となるように施工されることを特徴とする請求項11に記載の海中構造物の海上構築方法。
- 陸上で製造された前記外殻部の底盤部を海上輸送により構築する海上に配置する工程と、
前記底盤部に対して前記海上施工システムを組み込む工程と、
海上において前記海上施工システムを用いて前記底盤部上に前記外殻部の他の部分を構築する工程と、
を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の海中構造物の海上構築方法。
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