JP2016082212A - 発光装置及び樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性に優れ、信頼性を有する発光装置を提供する。【解決手段】発光装置1は、パッケージ3と、パッケージに配置された発光素子4と、蛍光体と、酸化ケイ素などからなるナノ粒子13と、ナノ粒子が酸化ケイ素ナノ粒子を含む場合は、酸化ケイ素ナノ粒子の含有量が樹脂100質量部に対して0.02〜5質量部である樹脂組成物の硬化物であり、発光素子を被覆する封止部材9と、を含み、蛍光体が、4価のマンガンイオンで付活された下記式(I)の化学組成を有し、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体7を含む。A2[M1−xMn4+xF6](I)、式中、Aは、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4+からなる群から選択されるカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される元素であり、xは0<x<0.2を満たす。【選択図】図1

Description

本開示は、発光装置及び樹脂組成物に関する。
発光ダイオード(Light emitting diode:LED)は、窒化ガリウム(GaN)のような金属化合物から生産される半導体発光素子である。この半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせて白色、電球色、橙色等に発光する発光装置が種々開発されている。これらの白色等に発光する発光装置は、光の混色の原理によって得られる。白色光を放出する方式としては、紫外線を発光する発光素子と、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれに発光する3種の蛍光体とを用いる方式と、青色を発光する発光素子及び黄色等を発光する蛍光体を用いる方式がよく知られている。青色を発光する発光素子と黄色等を発光する蛍光体とを用いる方式の発光装置は、一般照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で求められている。このうち、液晶バックライト用途の発光装置に用いられる蛍光体としては、色度座標上の広範囲の色を再現するために、発光効率と共に色純度が良いことも求められている。特に液晶バックライト用途の発光装置に用いられる蛍光体は、カラーフィルターとの組合せの相性が求められ、発光ピークの半値幅の狭い蛍光体が求められている。
例えば、青色域に励起帯を有し、発光ピークの半値幅の狭い赤色発光の蛍光体として、KAlF:Mn4+、KAlF:Mn4+、KGaF:Mn4+、ZnAlF:Mn4+、KIn:Mn4+、KSiF:Mn4+、KTiF:Mn4+、KZrF:Mn4+、Ba0.65Zr0.352.70:Mn4+、BaTiF:Mn4+、KSnF:Mn4+、NaTiF:Mn4+、NaZrF:Mn4+、KRbTiF:Mn4+、KSi0.5Ge0.5:Mn4+等の組成を有するフッ化物蛍光体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
発光装置は、発光素子その他の部材の保護のため、ワイヤその他の配線とともに、蛍光体を含む封止材料で発光素子が封止される。
特表2009−528429号公報
バックライト用途に好適とされる、発光ピークの半値幅が狭い赤色発光のMn4+付活のフッ化物蛍光体の実用化が望まれている。
しかしながら、従来のMn4+で付活されたフッ化物蛍光体では、その粒子表面において、フッ化物蛍光体を構成する4価のマンガンイオンが空気中の水分と反応して二酸化マンガンが生成して、粒子表面が着色された結果、色度ずれが生じたり、発光出力が経時的に低下したりすると考えられている。そのため、従来のMn4+で付活された赤色蛍光体を用いる発光装置は、信頼性を重視する液晶バックライト用途に適用することが難しいという懸念がある。
以上のことから、本開示の一態様は、従来の問題を解決すべく、発光出力の低下と色度ずれが抑制され、耐久性に優れ、充分な信頼性を有する発光装置及び樹脂組成物を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りであり、本開示は以下の態様を包含する。
本開示の第一の態様は、パッケージと;前記パッケージに配置された発光素子と;蛍光体と、樹脂と、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種のナノ粒子とを含み、前記ナノ粒子が酸化ケイ素ナノ粒子を含む場合は、酸化ケイ素ナノ粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して0.02〜5質量部である、樹脂組成物の硬化物である、前記発光素子を被覆する封止部材と;を含み、前記蛍光体が、4価のマンガンイオンで付活された、下記式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体を含む、発光装置である。
[M1−xMn4+ ] (I)
式中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、xは0<x<0.2を満たす。
本開示の第二の態様は、蛍光体と;樹脂と;酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種のナノ粒子と;を含み、前記ナノ粒子が酸化ケイ素ナノ粒子を含む場合は、酸化ケイ素ナノ粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して0.02〜5質量部であり、前記蛍光体が、4価のマンガンイオンで付活された、下記式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体を含む、樹脂組成物である。
[M1−xMn4+ ] (I)
式中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、xは0<x<0.2を満たす。
本開示の一態様によれば、発光出力の低下が抑制され、耐久性に優れ、充分な信頼性を有する発光装置及び樹脂組成物を提供することができる。
本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。 本実施形態に係る発光装置の他の例を示す概略断面図である。 実施例1及び比較例1〜3に係る発光装置のPCT結果を示す図である。 本実施形態に係る発光装置の拡大断面の蛍光顕微鏡写真の一例を示す図である。 実施例2及び比較例4〜6に係る発光装置のPCT結果を示す図である。
以下、本開示の一態様に係る発光装置及び樹脂組成物について説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、発光装置、樹脂組成物、及びそれらの製造方法を例示するものであって、本発明は、発光装置、樹脂組成物、及びそれらの製造方法を以下のものに特定するものではない。
なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nm〜410nmが紫色、410nm〜455nmが青紫色、455nm〜485nmが青色、485nm〜495nmが青緑色、495nm〜548nmが緑色、548nm〜573nmが黄緑色、573nm〜584nmが黄色、584nm〜610nmが黄赤色、610nm〜780nmが赤色である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに封止材料中の各成分の含有量は、封止材料中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、封止材料中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<発光装置>
図1は、第一の実施形態に係る発光装置1の概略構成を説明する断面図である。
発光装置1は、パッケージ3と、パッケージ3に配置された発光素子4と、発光素子4を被覆する封止部材9とを含む。パッケージ3は、凹部2を形成する側壁を有する。パッケージ3は、底部に第一のリード5と第二のリード6とを一体的に備える。封止部材9は、赤色蛍光体7及び赤色蛍光体以外の蛍光体8と、樹脂(図示略)と、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種のナノ粒子13とを含み、そのナノ粒子13が酸化ケイ素ナノ粒子を含む場合は、酸化ケイ素ナノ粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して0.02〜5質量部である、樹脂組成物の硬化物である。
図1中、赤色蛍光体7、赤色蛍光体以外の蛍光体8及びナノ粒子13は、実際の大きさの関係を表すものではなく、封止部材9中に含まれる赤色蛍光体7、赤色蛍光体以外の蛍光体8及びナノ粒子13を模式的に示す。
赤色蛍光体7は、4価のマンガンイオンで付活された、下記式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色の光を発する蛍光体である。また、赤色蛍光体以外の蛍光体8は、赤色蛍光体以外の、緑色から黄色の光を発する蛍光体である。
[M1−xMn4+ ] (I)
式中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、xは0<x<0.2を満たす。
発光素子4は、パッケージ3の凹部2の底部に配置された第一のリード5に配置される。発光素子4は、発光素子4の正負極(図示略)と、パッケージ3に固定されている金属製の第一のリード5及び第二のリード6に、ワイヤ11、12でそれぞれ接続される。第一のリード5及び第二のリード6は、パッケージ3の凹部2の底面を構成する。
[パッケージ]
凹部を形成する側壁を有するパッケージの材料については、特に限定されず、耐光性、耐熱性に優れた電気絶縁性のものが好適に用いられる。このようなパッケージの材料としては、樹脂、セラミックス等を挙げることができる。なお、第一のリード及び第二のリードは、パッケージの凹部の底面を構成し、発光素子等が載置可能な略板状の部材である。
パッケージの材料としてのセラミックスには、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。また、セラミックスの粉体と、樹脂とを混合して得られる材料をシート状に成型して得られるセラミックスグリーンシートを積層させて焼成させたものを用いることができる。
パッケージの材料としての樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等を用いることができる。また、エポキシ樹脂を用いたパッケージとしては、例えば、硝子クロス入りのエポキシ樹脂やエポキシ樹脂を半硬化させたプリプレグに銅板を貼り付けて熱硬化させたもの等を用いることができる。
[発光素子]
発光素子には、可視光の短波長領域の光を発するものを使用することができる。例えば、青色から緑色光を発する発光素子としては、窒化物系半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものを用いることができる。これにより、蛍光体を効率よく励起し、可視光を有効活用することができる。
発光素子には、光源(以下、「励起光源」ともいう)として、可視光の短波長領域である380nm〜573nmの波長範囲の光を発するものを使用することが好ましい。光源として青紫色から青色の発光をする発光素子が好ましく、その発光ピーク波長(極大発光波長)が好ましくは420nm〜485nmの波長範囲、より好ましくは440nm〜480nmの波長範囲である。当該波長範囲の発光ピーク波長を有する励起光源を用いることにより、発光強度が高い発光装置を提供することができる。
励起光源に半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
[第一のリード及び第二のリード]
パッケージの凹部の底部には、第一のリード及び第二のリードが配置され、第一のリード及び第二のリードがパッケージの凹部の底面を構成する。第一のリード及び第二のリードを併せて、導電部材ともいう。第一のリード及び第二のリードは、導電性を備える母材のみからなるものでもよく、母材と、反射膜を含むものであってもよい。第一のリード及び第二のリードは、導電性を有する反射膜のみからなるものであってもよい。第一のリード及び第二のリードは、母材と反射膜の間に他の部材が介在するものであってもよい。導電部材が、母材と反射膜を備えるものである場合には、反射膜は、少なくとも発光素子が載置される側に配置される。
(第一のリード及び第二のリードの母材)
第一のリード及び第二のリードの母材が、導電性を備えるものである場合、母材としては、例えば銅、銅と鉄との合金等が挙げられる。
(第一のリード及び第二のリードの反射膜)
反射膜には、例えば、銀及びアルミニウムの少なくとも一方を含む材料を用いることができ、特に反射率の高い銀を含む材料を用いることが好ましい。反射膜には、銀に加えて、銅、アルミニウム、金、白銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属、鉄−ニッケル合金、リン青銅、鉄入り銅等の合金を含む材料を用いることができる。
[絶縁部材]
発光素子、第一のリード、第二のリード、及びワイヤは、絶縁部材で覆われていることが好ましい。絶縁部材は、発光素子、第一のリード、第二のリード、及びワイヤの上に連続するように設けられていることが好ましい。ここで、「連続するように設けられる」とは、発光素子、第一のリード、第二のリード、及びワイヤからなる対象物に対して、層状(膜状)に設けられる状態、或いは、粉末状若しくは針状の絶縁部材が部分的に空隙を有しつつも、発光素子、第一のリード、第二のリード、及びワイヤの略全体に設けられている状態を含む。絶縁部材によって、発光素子、第一のリード、第二のリード、及びワイヤを構成する金属、特に第一のリード及び第二のリードを構成し得る銀に対して変質作用を有するガス、水分、蛍光体に含まれるフッ素(F)等を遮断することができる。蛍光体に含まれるフッ素が導電部材等に含まれる銀と反応するとフッ化銀を形成するため、そのフッ化銀が発光素子から発生した光を吸収して発光出力が低下する場合がある。絶縁部材によって、第一のリード及び第二のリード等に含まれ得る銀の劣化を効率よく抑制することができ、光の出力効率を高めることができる。また、絶縁部材が、保護膜として機能し、水分等を遮断して、第一のリード及び第二のリード等に含まれる銀のマイグレーションを抑制することができる。そのため、赤色蛍光体の組成に含まれるフッ素(F)等とマイグレーションした銀との反応を抑制することができる。
(絶縁部材)
絶縁部材の材料は、透光性のものであることが好ましく、無機化合物を用いることが好ましい。絶縁部材の材料として、具体的には、SiO、Al、TiO、ZrO、ZnO、Nb、MgO、SrO、In、TaO、HfO、SeO、Y等の酸化物や、SiN、AlN、AlON等の窒化物、MgF等のフッ化物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。あるいは、1種又は2種以上の材料を含む絶縁部材を、2層以上積層してもよい。
絶縁部材の厚みは、導電部材、絶縁部材、封止部材等の各界面での多重反射によって光の損失が起きない程度の厚みであることが好ましい。一方、絶縁部材は、導電部材と、ガス、水分、蛍光体に含まれるフッ素(F)等とを反応させないように、ガス、水分、蛍光体に含まれるフッ素(F)等を遮断する程度の厚みが必要である。絶縁部材の厚みは、発光装置を構成する各部材の材料等によって多少変化する。絶縁部材の厚みは、好ましくは約1nm〜100nm程度である。絶縁部材の厚みは、より好ましくは1nm〜50nm、さらに好ましくは2nm〜25nm、特に好ましくは3nm〜10nmである。
絶縁部材は、スパッタや蒸着によって、導電部材、ワイヤ及び発光素子上に無機化合物からなる膜(層)として形成されることが好ましい。また、絶縁部材は、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition)により膜(層)として形成されることがより好ましい。原子層堆積法は、反応成分の層を1原子層ごとに形成する方法である。原子層堆積法によって、絶縁部材(膜)を形成すると、従来のスパッタや蒸着による方法と異なり、障害物が存在する場合であっても、反応成分が対象に均一に供給され、均一な膜厚及び均一な膜質の良質な保護膜を形成することができる。原子層堆積法によって形成された絶縁部材(膜)は、膜厚が薄く、光の吸収が抑制できるので、初期特性において光出力のより高い発光装置を提供することができる。
次に、原子層堆積法によって、酸化アルミニウム(Al)の絶縁部材(膜)を形成する一例を説明する。
まず、対象物である導電部材、ワイヤ及び発光素子には、トリメチルアルミニウム(以下、「TMA」ともいう)ガスが導入され、導電部材、ワイヤ及び発光素子の表面に存在するOH基とTMAガスとが反応する(第一反応)。次に、余剰ガスを排気する。次に、対象物にHOガスが導入され、第一反応でOH基と反応したTMAとHOとを反応させる(第二反応)。次に、余剰ガスを排気する。その後、第一反応、排気、第二反応、排気を1つのサイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことによって、所望の厚みの酸化アルミニウム(Al)膜が、導電部材、ワイヤ及び発光素子の表面上に形成される。
[封止部材]
封止部材は、赤色蛍光体、赤色蛍光体以外の蛍光体と、樹脂と、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種のナノ粒子とを含み、前記ナノ粒子が酸化ケイ素ナノ粒子の場合は、その含有量が前記樹脂100質量部に対して0.02〜5質量部である、樹脂組成物の硬化物である。
[封止材料(樹脂組成物)]
封止材料は、蛍光体と、樹脂と、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種のナノ粒子とを含み、前記ナノ粒子が酸化ケイ素ナノ粒子の場合は、その含有量が前記樹脂100質量部に対して0.02〜5質量部である、樹脂組成物である。
(樹脂)
封止部材を形成する樹脂組成物(封止材料)に含まれる樹脂は、発光素子からの光を透過可能な透光性のものであることが好ましい。樹脂の具体的な例としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。樹脂は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。また、樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの組合せの樹脂であってもよい。中でも、樹脂としては、変性シリコーン樹脂を用いることが好ましく、ポリシロキサンの側鎖の一部にフェニル基を導入したフェニルシリコーン樹脂を用いることがより好ましい。樹脂は、フェニルシリコーン樹脂を含むことが好ましい。
樹脂組成物中の樹脂含有量は、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは5〜95質量%である。樹脂組成物中の樹脂含有量は、より好ましくは35〜85質量%、さらに好ましくは40〜80質量%、特に好ましくは45〜75質量%である。樹脂含有量が、樹脂組成物100質量%中に、5〜95質量%であると、樹脂組成物を硬化させることによって、凹部に配置された発光素子等の部材を安定に保護することができる。また、樹脂組成物中の樹脂の含有量が上記範囲内であると、発光素子を被覆するのに十分な量の蛍光体を封止部材中に含むことができる。
(ナノ粒子)
封止部材を構成する樹脂組成物は、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種のナノ粒子を含む。
樹脂組成物は、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる1種のナノ粒子を単独で含んでいてもよく、前記群から選ばれる少なくとも2種のナノ粒子を組合せて含んでいてもよい。更に樹脂組成物は、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子のいずれか一方のナノ粒子を単独で含んでいてもよく、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子の両方のナノ粒子を含んでいてもよい。樹脂組成物が2種以上のナノ粒子を含む場合、それらの含有比は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択される。
ナノ粒子を含む樹脂組成物の硬化物である封止部材は、ナノ粒子によって蛍光体の分散性が向上し、蛍光体と水分との反応が抑制され、長期信頼性試験においても、優れた耐久性を有する発光装置を提供することができる。
樹脂組成物の硬化物である封止部材は、ナノ粒子が実質的に均一に分散されていることが好ましい。ここで、封止部材にナノ粒子が実質的に均一に分散とは、封止部材(硬化物)の任意の断面を観察したときに、そこに存在するナノ粒子の断面積が一定の範囲の大きさであり、一定範囲の断面に存在するナノ粒子の個数と、一定範囲の任意の断面に存在する個数の平均値との差が所定の範囲であり、断面においてナノ粒子が偏在していないことをいう。例えば、封止部材(硬化物)の任意の断面を任意の倍率で、任意の視野範囲において複数個所について電子顕微鏡観察したときに、そこに存在するナノ粒子の分布状態が不均一であったり、偏在したりしていることが観察されない場合、ナノ粒子が実質的に均一に分散されているといえる。
(酸化ジルコニウムナノ粒子)
酸化ジルコニウムナノ粒子(「ジルコニアナノ粒子」ともいう)は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)で測定される一次粒子の個数平均粒径が、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは2nm〜80nmであり、さらに好ましくは2nm〜60nmであり、特に好ましくは2nm〜50nmである。
樹脂組成物が酸化ジルコニウムナノ粒子を含む場合、酸化ジルコニウムナノ粒子の含有量は、樹脂組成物中に、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜30質量部、さらに好ましくは0.8〜28質量部、特に好ましくは1〜27質量部、最も好ましくは3〜25質量部である。
封止部材を構成する樹脂組成物は、樹脂組成物中に一次粒子径が比較的小さい酸化ジルコニウムナノ粒子を含むことにより、樹脂組成物中で酸化ジルコニウムナノ粒子が分散し、レイリー散乱によって発光素子からの光の散乱効果が大きくなり、樹脂組成物中に含まれる蛍光体の量を従来よりも少量とした場合であっても、同様の色調を得ることができる。また、封止部材を構成する樹脂組成物は、樹脂組成物中に酸化ジルコニウムナノ粒子を含む場合、酸化ジルコニウムナノ粒子のレイリー散乱によって蛍光体の量を少量とすることができるため、蛍光体と水分との反応をより抑制することができる。よって、酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂組成物を用いることで、長期信頼性試験においても、より優れた耐久性を有する発光装置を提供することができる。
(酸化ケイ素ナノ粒子)
酸化ケイ素ナノ粒子(「シリカナノ粒子」ともいう)は、TEMで測定される一次粒子の個数平均粒径が、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは5nm〜90nmであり、さらに好ましくは8nm〜80nmであり、特に好ましくは10nm〜70nmである。
樹脂組成物が酸化ケイ素ナノ粒子を含む場合、酸化ケイ素ナノ粒子の含有量は、樹脂組成物中に、樹脂100質量部に対して、0.02〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部、より好ましくは0.1〜2質量部、さらに好ましくは0.2〜1質量部、特に好ましくは0.3〜0.8質量部である。
封止部材を構成する樹脂組成物は、樹脂組成物中に特定量の酸化ケイ素ナノ粒子を含むことにより、樹脂組成物の粘度が上がり、蛍光体の分散性がよくなり、蛍光体を樹脂組成物の硬化物の内部に均一に分散させることができる。封止部材を構成する樹脂組成物は、特定量の酸化ケイ素ナノ粒子を含むことによって、蛍光体の分散性がよくなり、樹脂組成物の硬化物の表面に蛍光体が偏在することを抑制し、蛍光体と水分との反応をより抑制することができる。よって、酸化ケイ素ナノ粒子を含む樹脂組成物を用いることで、長期信頼性試験においても、優れた耐久性を有する発光装置を提供することができる。
(その他のナノ粒子)
樹脂組成物は、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子以外のその他のナノ粒子を含んでいてもよい。その他のナノ粒子として、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子等を挙げることができる。これらの各ナノ粒子は、TEMで測定される一次粒子の個数平均粒径が、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは2nm〜80nmであり、さらに好ましくは2nm〜60nmであり、特に好ましくは2nm〜50nmである。
その他のナノ粒子の含有量は、樹脂組成物中に、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜30質量部、さらに好ましくは0.8〜28質量部、特に好ましくは1〜27質量部、最も好ましくは3〜25質量部である。
(フィラー)
封止部材を構成する樹脂組成物は、ナノ粒子とは別に、フィラーを含んでいてもよい。封止部材を構成する樹脂組成物中に含まれるフィラーは、二次粒子の体積平均粒径が、好ましくは1000nmを超えるものである。フィラーは、レーザー回折散乱式粒度分布計で測定した二次粒子の体積平均粒径(メジアン径:d50)が、好ましくは5μm〜100μm、より好ましくは7μm〜90μm、さらに好ましくは8μm〜80μm、特に好ましくは10μm〜60μm、最も好ましくは10μm〜50μmである。
フィラーの材料としては、例えば無機酸化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素化合物及び硫化物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の無機材料を用いることができる。無機酸化物には、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)等を挙げることができる。また、これらの複合無機酸化物を用いることができる。金属窒化物には、窒化ケイ素等を挙げることができる。金属炭化物には、炭化ケイ素等を挙げることができる。炭素化合物には、炭素単体であるが、ダイヤモンド又はダイヤモンド・ライク・カーボン等の透光性を有する無機材料等を挙げることができる。硫化物には、硫化銅又は硫化スズ等が挙げられる。その他のフィラーの材料としては、チタン酸バリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、グラスファイバー等を挙げることができる。中でも、フィラーの材料は、アルミナ、シリカ、ジルコニアであることが好ましい。特にフィラーの材料は、シリカであることが好ましい。フィラーの形状は、球状、鱗片状、塊を粉砕した多形状のものが挙げられるが、球状のものが好ましい。
樹脂組成物がフィラーを含む場合、樹脂組成物中のフィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは0.2〜45質量部、さらに好ましくは0.5〜40質量部、特に好ましくは1〜35質量部である。
フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることによって、樹脂組成物に含まれる成分の分散性が向上し、例えば赤色蛍光体と、さらに緑色から黄色の光を発する蛍光体を含む場合には、封止材料中で赤色蛍光体と緑色から黄色の光を発する蛍光体を実質的に均一に分散させることができる。ここで、樹脂組成物の硬化物(封止部材)中に蛍光体を実質的に均一に分散させるとは、硬化物(封止部材)の任意の断面を観察したときに、一定範囲の断面に存在する蛍光体の個数の平均値からの差が所定の範囲内であり、断面において蛍光体が偏在していないことをいう。例えば、樹脂組成物の硬化物(封止部材)の任意の断面を任意の倍率で、任意の視野範囲において複数個所について電子顕微鏡観察したときに、そこに存在する蛍光体の分布状態が不均一であったり、偏在したりしていることが観察されない場合、蛍光体は、硬化物(封止部材)中に実質的に均一に分散されているといえる。
樹脂組成物中に含まれるフィラーは、蛍光体を樹脂組成物中に実質的に均一に分散させておくことができる。またフィラーは、パッケージの凹部に封止部材となる樹脂組成物を注入する前、注入時において、蛍光体、及びナノ粒子を各パッケージの凹部にほぼ均等な量を注入することができ、各パッケージ間での色調のばらつきが抑制された発光装置を容易に形成することができる。
(赤色蛍光体)
蛍光体は、4価のマンガンイオンで付活された、下記式(I)で示される化学組成を有し、内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体の少なくとも1種を含む。
[M1−xMn4+ ] (I)
式中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択
される少なくとも1種のカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、xは0<x<0.2を満たす。
式(I)で示される化学組成を有し、内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体は、耐湿性に優れ、長期信頼性試験において充分な耐久性を示すことができる。これは例えば、以下のように考えることができる。
一般に、式(I)で表される化学組成を有するフッ化物の赤色蛍光体においては、その粒子表面領域において、フッ化物を構成する4価のマンガンイオンが水と反応することで二酸化マンガンが生成して、粒子表面が着色される結果、発光出力が低下すると考えられている。このため、長期信頼性試験において充分な耐久性を達成することができず、信頼性を重視する用途に適用することが難しいという課題があった。
しかし、本開示の一態様に用いる赤色蛍光体は、フッ化物の粒子の表面領域における4価のマンガンイオンの濃度が、内部領域における濃度よりも低く抑えられている。そのため粒子表面における二酸化マンガンの生成がさらに抑制されて、長期間に渡って発光出力の低下と色度ずれが抑制されると考えられる。これにより優れた長期信頼性を達成することができると考えられる。
式(I)で表される化学組成を有する赤色蛍光体の粒径及び粒度分布は特に制限されないが、発光強度と耐久性の観点から、単一ピークの粒度分布を示すことが好ましく、分布幅の狭い単一ピークの粒度分布であることがより好ましい。また、赤色蛍光体の表面積や嵩密度は特に制限されない。
赤色蛍光体は、4価のマンガンイオン(Mn4+)で付活された蛍光体であり、可視光の短波長領域の光を吸収して赤色に発光可能である。可視光の短波長領域の光である励起光は、主に青色領域の光であることが好ましい。励起光は、具体的には、強度スペクトルの主ピーク波長(発光ピーク波長)が380nm〜573nmの範囲に存在することが好ましく、380nm〜500nmの範囲に存在することがより好ましく、380nm〜485nmの範囲に存在することが更に好ましく、400nm〜485nmの範囲に存在することが更に好ましく、440nm〜480nmの範囲に存在することが特に好ましい。
また赤色蛍光体の発光波長は、励起光よりも長波長であって、赤色であれば特に制限されない。赤色蛍光体の発光スペクトルは、ピーク波長が610nm〜650nmの範囲に存在することが好ましい。また発光スペクトルの半値幅は、小さいことが好ましく、具体的には10nm以下であることが好ましい。
式(I)におけるAは、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンである。Aがカリウムを含む場合には、Aにおけるカリウムの含有率は特に制限されず、例えば、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
式(I)におけるMは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、発光特性の観点から、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)であることがさらに好ましい。
Mがケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含む場合、Si及びGeの少なくとも一方の一部が、Ti、Zr及びHfを含む第4族元素、並びにC及びSnを含む第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。その場合、MにおけるSi及びGeの総含有率は特に制限されず、例えば、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
赤色蛍光体は、以下に詳述する第一の工程で形成される内部領域と、内部領域よりも4価のマンガンイオンの濃度が低く、第二の工程及び第三の工程、並びに第二’の工程で形成される表面領域とを有する。
赤色蛍光体の表面領域は、4価のマンガンイオンの濃度が内部領域よりも低濃度となっている。この表面領域は、層構造のような明確な界面で内部領域と区画されている態様であってもよく、また、明確な界面で内部領域と区画されておらず、表面領域の内側から外側に向けて徐々に4価のマンガンイオンの濃度が低下するような態様であってもよい。
後述する製造方法で得られる赤色蛍光体は、粒子全体としては4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体として、従来の赤色蛍光体を用いた発光装置を用いた場合よりも、画像表示装置の色再現範囲が広いという特性を維持しつつも、赤色蛍光体の表面が湿度で劣化した場合であっても、表面領域に4価のマンガンイオンが存在しない、または少ないことから、4価のマンガンイオンに由来する二酸化マンガンの生成が抑制される。これにより赤色蛍光体表面の着色が抑えられ、発光出力の低下を抑制できる。
赤色蛍光体の表面領域に存在する4価のマンガンイオンの濃度の平均値は、内部領域の4価のマンガンイオンの濃度の平均値に対して30質量%以下とすることが好ましい。表面領域に存在する4価のマンガンイオンの濃度は、より好ましくは内部領域の4価のマンガンイオンの濃度の25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。その一方で、表面領域の4価のマンガンイオンの濃度を内部領域の0.5質量%以上とすることもできる。上述の通り、4価のマンガンイオンの濃度をゼロに近付けることによって、耐湿性が向上するが、表面領域における4価のマンガンイオンの濃度が少なくなるに従って、フッ化物蛍光体粒子の表面領域において発光に寄与しない領域の割合が増加することとなって、発光強度が低下してしまう傾向があるためである。
また表面領域の厚みは、赤色蛍光体の粒径にもよるが、平均粒径に対して1/10〜1/50程度とすることが好ましい。赤色蛍光体の平均粒径が20μm〜40μmの場合、表面領域の厚みは2μm以下、好ましくは1μm以下とする。
赤色蛍光体は、赤色蛍光体の質量の1〜5倍量の純水中に投入した際の4価のマンガンイオンの溶出量が、25℃において、例えば0.05ppm〜3ppmの範囲となるように調製される。上記条件における4価のマンガンイオンの溶出量は、好ましくは0.1ppm〜2.5ppmの範囲であり、さらに好ましくは0.2ppm〜2.0ppmの範囲である。これは4価のマンガンの溶出量が少なくなるほど耐湿性は向上するが、4価のマンガンイオンが少ない表面領域の割合が大きくなるに従って、上述の通り発光強度が低下する傾向があるためである。なお、マンガンイオンの溶出量は、赤色蛍光体の重量の1〜5倍量(好ましくは3倍量)の純水に赤色蛍光体を投入し、25℃で1時間撹拌した後に、還元剤を加えて液中にマンガンイオンを溶出させた上澄みを採取し、ICP発光分析による定量分析で測定することができる。
赤色蛍光体を上記のような構成とすることで、赤色蛍光体が水に接した際の4価のマンガンイオンに起因する二酸化マンガンの生成による着色を伴った発光出力の低下を抑えることができるため、耐湿性の高い赤色蛍光体が実現できる。
赤色蛍光体の耐湿性は、プレッシャークッカーテスト(PCT)の変色によって確認することができる。その他に、耐湿性は、例えば、耐水試験後の発光輝度の維持率、すなわち、耐水試験前の発光輝度に対する耐水試験後の発光輝度の比率(%)で評価することができる。耐水試験後の発光輝度の維持率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
ここで、耐水試験は、具体的には赤色蛍光体を、その質量の1〜5倍(好ましくは3倍)の質量の水に投入し、25℃で1時間撹拌を行って実施する。
(赤色蛍光体の製造方法)
式(I)で示される化学組成を有し、内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体は、例えば、内部領域(以下、「コア部」ともいう)を形成する第一の工程と、表面領域を形成する第二の工程及び第三の工程とを含む製造方法で製造することができる。
(第一の工程)
赤色蛍光体の製造方法は、式(I)で表される化学組成を有するフッ化物粒子(コア部)を準備する第一の工程を含む。準備する工程は、式(I)で表される化学組成を有するフッ化物粒子の製造工程を含むことができる。
式(I)で表される化学組成を有するフッ化物粒子は、フッ化水素を含む液媒体中で、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオンと、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む第二の錯イオンとを接触させることで製造することができる。
式(I)で表される化学組成を有するフッ化物粒子は、例えば、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオン、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素並びにフッ素イオンを含む第二の錯イオン、並びにフッ化水素を少なくとも含む溶液aと、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン及びフッ化水素を少なくとも含む溶液bとを混合する工程を含む製造方法(以下、「第一のフッ化物製造工程」ともいう)で製造することができる。
溶液a
溶液aは、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオンと、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素並びにフッ素イオンとを含む第二の錯イオンとを含むフッ化水素酸溶液である。
4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオンを形成するマンガン源は、マンガンを含む化合物であれば特に制限はされない。溶液aを構成可能なマンガン源として、具体的には、KMnF、KMnO、KMnCl等を挙げることができる。中でも、付活することのできる酸化数(4価)を維持しながら、MnF錯イオンとしてフッ化水素酸中に安定して存在することができること等から、KMnFが好ましい。なお、マンガン源が、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含む場合、溶液bに含まれるカチオン源を兼ねることができる。第一の錯イオンを形成するマンガン源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶液aにおける第一の錯イオンの濃度は特に制限されない。溶液aにおける第一の錯イオン濃度の下限値は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。また、溶液aにおける第一の錯イオン濃度の上限値は、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
第二の錯イオンは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、フッ化ケイ素錯イオンであることがさらに好ましい。
例えば、第二の錯イオンがケイ素(Si)を含む場合、第二の錯イオン源は、ケイ素とフッ素とを含み、溶液への溶解性に優れる化合物であることが好ましい。第二の錯イオン源として具体的には、HSiF、NaSiF、(NHSiF、RbSiF、CsSiF等を挙げることができる。これらの中でも、水への溶解度が高く、不純物としてアルカリ金属元素を含まないことにより、HSiFが好ましい。第二の錯イオン源は、1種を単独で用いて2種以上を併用してもよい。
溶液aにおける第二の錯イオン濃度の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、溶液aにおける第二の錯イオン濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
溶液aにおけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、溶液aにおけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
溶液b
溶液bは、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンとフッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。溶液bは、例えば、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。
溶液bを構成可能なカリウムカチオンを含むカリウム源として、具体的には、KF、KHF、KOH、KCl、KBr、KI、酢酸カリウム、KCO等の水溶性カリウム塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、KHFが好ましい。
溶液bを構成可能なナトリウムカチオンを含むナトリウム源として、NaF、NaHF、NaOH、NaCl、NaBr、NaI、酢酸ナトリウム、NaCO等水溶性のナトリウム塩を挙げることができる。
溶液bを構成可能なルビジウムカチオンを含むルビジウム源として、具体的には、RbF、酢酸ルビジウム、RbCO等の水溶性ルビジウム塩を挙げることができる。
溶液bを構成可能なセシウムカチオンを含むセシウム源として、具体的には、CsF、酢酸セシウム、CsCO等の水溶性セシウム塩を挙げることができる。
溶液bを構成可能な第四級アンモニウムカチオンを含むナトリウム源として、NHF、アンモニア水、NHCl、NHBr、NHI、酢酸アンモニウム、(NHCO等水溶性のアンモニウム塩を挙げることができる。溶液bを構成するイオン源は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
溶液bにおけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、溶液bにおけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
また、溶液bにおけるカチオン濃度の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、溶液bにおけるカリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
溶液a及び溶液bの混合方法としては特に制限はなく、溶液bを撹拌しながら溶液aを添加して混合してもよく、溶液aを撹拌しながら溶液bを添加して混合してもよい。また、溶液a及び溶液bをそれぞれ容器に投入して撹拌混合してもよい。
溶液a及び溶液bを混合することにより、所定の割合で第一の錯イオンと、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、第二の錯イオンとが反応して目的のフッ化物の結晶が析出する。析出した結晶は濾過等により固液分離して回収することができる。また析出した結晶をエタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。さらに乾燥処理を行ってもよく、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下で乾燥する。乾燥時間としては、フッ化物粒子に付着した水分を蒸発することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
なお、溶液a及び溶液bの混合に際しては、溶液a及び溶液bの仕込み組成と得られるフッ化物粒子の組成とのずれを考慮して、生成物としてのフッ化物粒子の組成が目的の組成となるように、溶液a及び溶液bの混合割合を適宜調整することが好ましい。
また、式(I)で表される化学組成を有するフッ化物粒子(コア部)は、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオン及びフッ化水素を少なくとも含む第一の溶液と、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン及びフッ化水素を少なくとも含む第二の溶液と、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素並びにフッ素イオンを含む第二の錯イオンを少なくとも含む第三の溶液とを混合する工程を含む製造方法(以下、「第二のフッ化物製造工程」ともいう)で製造することもできる。
第一の溶液と、第二の溶液と、第三の溶液とを混合することで、所望の組成を有し、所望の重量メジアン径を有するフッ化物粒子を、優れた生産性で簡便に製造することができる。
第一の溶液
第一の溶液は、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオンと、フッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第一の溶液は、例えば、4価のマンガン源を含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。マンガン源は、マンガンを含む化合物であれば特に制限はされない。第一の溶液を構成可能なマンガン源として、具体的には、KMnF、KMnO、KMnCl等を挙げることができる。中でも、付活することのできる酸化数(4価)を維持しながら、MnF錯イオンとしてフッ化水素酸中に安定して存在することができること等から、KMnFが好ましい。なお、マンガン源が、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含む場合、第二の溶液に含まれるK、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン源を兼ねることができる。第一の溶液を構成するマンガン源は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
第一の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、第一の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。フッ化水素濃度が30質量%以上であると、第一の溶液を構成するマンガン源(例えば、KMnF)の加水分解に対する安定性が向上し、第一の溶液における4価のマンガンイオン濃度の変動が抑制される。これにより得られるフッ化物蛍光体に含まれるマンガン付活量を容易に制御することができ、フッ化物蛍光体における発光効率のバラつき(変動)を抑制することができる傾向がある。またフッ化水素濃度が70質量%以下であると、第一の溶液の沸点の低下が抑制され、フッ化水素ガスの発生が抑制される。これにより、第一の溶液におけるフッ化水素濃度を容易に制御することができ、得られるフッ化物蛍光体の粒径のバラつき(変動)を効果的に抑制することができる。
第一の溶液における第一の錯イオンの濃度は特に制限されない。第一の溶液における第一の錯イオン濃度の下限値は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。また、第一の溶液における第一の錯イオン濃度の上限値は、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
第二の溶液
第二の溶液は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1のカチオンとフッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第二の溶液は、例えば、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。第二の溶液を構成可能なイオンを含むイオン源として、具体的には、KF、KHF、KOH、KCl、KBr、KI、酢酸カリウム、KCO等のカリウムを含む塩に加えて、NaF、NaHF、NaOH、NaCl、NaBr、NaI、酢酸ナトリウム、NaCO、RbF、酢酸ルビジウム、RbCO、CsF、酢酸セシウム、CsCO、NHF、アンモニア水、NHCl、NHBr、NHI、酢酸アンモニウム、(NHCO等の水溶性の塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、少なくともKHFを用いることが好ましく、カリウム以外のイオン源としてはNaHFが好ましい。第二の溶液を構成するイオン源は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
第二の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、第二の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
また、第二の溶液におけるK、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンのイオン濃度の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、第二の溶液におけるK、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンのイオン濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
第三の溶液
第三の溶液は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、フッ素イオンとを含む第二の錯イオンを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第三の溶液は、例えば、第二の錯イオンを含む水溶液として得られる。
第二の錯イオンは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、フッ化ケイ素錯イオンであることがさらに好ましい。
例えば、第二の錯イオンがケイ素(Si)を含む場合、第二の錯イオン源は、ケイ素とフッ素とを含み、溶液への溶解性に優れる化合物であることが好ましい。第二の錯イオン源として具体的には、HSiF、NaSiF、(NHSiF、RbSiF、CsSiF等を挙げることができる。これらの中でも、水への溶解度が高く、不純物としてアルカリ金属元素を含まないことにより、HSiFが好ましい。第三の溶液を構成する第二の錯イオン源は、1種を単独で用いて2種以上を併用してもよい。
第三の溶液における第二の錯イオン濃度の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、第三の溶液における第二の錯イオン濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
第一の溶液、第二溶液及び第三の溶液の混合方法としては特に制限はなく、第一の溶液を撹拌しながら第二の溶液及び第三の溶液を添加して混合してもよく、第二の溶液を撹拌しながら第一の溶液及び第三の溶液を添加して混合してもよく、第三の溶液を撹拌しながら第一溶液及び第二の溶液を添加して混合してもよい。また、第一の溶液、第二溶液及び第三の溶液をそれぞれ容器に投入して撹拌混合してもよい。
第一の溶液、第二溶液及び第三の溶液を混合することにより、所定の割合で第一の錯イオンと、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、第二の錯イオンとが反応して式(I)で表される化学組成を有するフッ化物の結晶が析出する。析出した結晶は濾過等により固液分離して回収することができる。また析出した結晶をエタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。さらに乾燥処理を行ってもよく、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下で乾燥する。乾燥時間としては、フッ化物粒子に付着した水分を蒸発することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
なお、第一の溶液、第二溶液及び第三の溶液の混合に際しては、第一〜第三の溶液の仕込み組成と得られるフッ化物粒子の組成とのずれを考慮して、生成物としてのフッ化物粒子の組成が目的の組成となるように、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合割合を適宜調整することが好ましい。
(第二の工程)
第二の工程では、第一の工程で得られたフッ化物粒子を含む分散物に還元剤を添加する。還元剤を添加することで、分散物に含まれる第一の錯イオンの少なくとも一部が2価のマンガンイオンに還元されることが好ましい。第二の工程では第一の錯イオンの90モル%以上が還元されることが好ましく、95モル%以上が還元されることがより好ましい。
還元剤は、第一の錯イオンを還元可能であれば特に制限はない。還元剤として具体的には、過酸化水素、シュウ酸等を挙げることができる。
これらの中でも、フッ化物粒子を溶解する等のフッ化物粒子に対する影響が少なく第一の錯イオンを還元することができ、最終的に水と酸素に分解することから、製造工程上利用しやすく、環境負荷が少ない点から、過酸化水素が好ましい。
還元剤の添加量は特に制限されない。還元剤の添加量は、例えば、分散物に含まれる第一の錯イオンの含有量等に応じて適宜選択することができるが、分散物中のフッ化水素濃度の変動が少ない添加量であることが好ましい。還元剤の添加量は具体的には、分散物中のフッ化物粒子以外に含まれる第一の錯イオンの含有量に対して3当量%以上とすることが好ましく、5当量%以上であることがより好ましい。
ここで、1当量とは、1モルの第一の錯イオンを2価のマンガンイオンに還元するのに要する還元剤のモル数を意味する。
第二の工程は、前記分散物に還元剤を添加した後に混合することを含んでいてもよい。分散物と還元剤とを混合する混合手段は反応容器等に応じて、通常用いられる混合手段から適宜選択することができる。
第二の工程における温度は特に制限されない。例えば15〜40℃の温度範囲で還元剤の添加を行うことができ、23〜28℃の温度範囲であることが好ましい。
また第二の工程における雰囲気は特に制限されない。通常の大気中で還元剤を添加してもよく、また窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
また、第二の工程における反応時間は、特に制限されない。例えば1分〜30分、より好ましくは3分〜15分である。
(第三の工程)
第三の工程では、還元剤が添加された分散物中のフッ化物粒子に、フッ化水素の存在下で、第二の錯イオン及びカリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを接触させてフッ化物蛍光体を得る。フッ化水素の存在下で、フッ化物粒子と第二の錯イオン及びカリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンとを接触させることで、例えば、フッ化物粒子の表面上に、第二の錯イオンに含まれる第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンとを含むフッ化物が析出して、所望の赤色蛍光体が得られる。
第三の工程は、第二の工程の後に独立して行ってもよく、第二の工程の開始後であってその終了前に第三の工程を開始して、第二の工程と第三の工程とを一部並行して行ってもよい。
第三の工程で得られる赤色蛍光体は、式(I)で表されるフッ化物粒子と第二の錯イオン及びカリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンとが接触して形成されることから、内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有し、表面領域は下記式(II)で表される組成を有することが好ましい。式中、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、yは0<y<xを満たす。
[M1−yMn4+ ] (II)
x及びyは、0<y<x<0.2を満たす限り特に制限されない。yの値は、目的とする発光特性及び耐湿性等に応じて適宜選択することができる。また、yの値は、例えば、第三の工程における第二の錯イオン及びカリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンのフッ化物粒子に対する接触量を調整することで制御することができる。
第三の工程において、還元剤が添加された分散物中のフッ化物粒子と、第二の錯イオン及びカリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンとを接触させる方法は特に制限されない。例えば、還元剤が添加された分散物と、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含む溶液及び第二の錯イオンを含む溶液の少なくとも一方とを混合する方法であることが好ましく、還元剤が添加された分散物と、前記第二の溶液及び第三の溶液の少なくとも一方とを混合する方法であることがより好ましく、還元剤が添加された分散物と、前記第二の溶液と、第三の溶液とを混合する方法であることがさらに好ましい。ここで第二の溶液及び第三の溶液の好ましい態様は既述の通りである。
なお、分散物と、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含む溶液及び第二の錯イオンを含む溶液の一方とを混合する場合、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン及び第二の錯イオンのうち混合する溶液に含まれない他方のイオンは、分散物中に第三の工程に必要な含有量で含まれていればよい。
第三の工程における第二の溶液及び第三の溶液は、第一の工程における第二の溶液及び第三の溶液と同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
第三の工程が、還元剤が添加された分散物と、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含む溶液及び第二の錯イオンを含む溶液の少なくとも一方とを混合することを含む場合、混合手段は反応容器等に応じて、通常用いられる混合手段から適宜選択することができる。
第三の工程における温度は特に制限されない。例えば15〜40℃の温度範囲で行うことができ、23〜28℃の温度範囲であることが好ましい。
また第三の工程における雰囲気は特に制限されない。通常の大気中で行ってもよく、また窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
また、第三の工程における反応させる時間は、特に制限されない。例えば1分〜60分、より好ましくは5分〜30分である。
第三の工程が、還元剤が添加された分散物と、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含む溶液及び第二の錯イオンを含む溶液の少なくとも一方とを混合することを含む場合、還元剤が添加された分散物中のフッ化物粒子に対する第二の錯イオンを含む溶液及びカリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH )からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンを含む溶液の添加量は、目的とするフッ化物蛍光体の発光特性及び耐湿性等に応じて適宜選択することができる。例えば、フッ化物粒子に対する第二の錯イオンの添加量を、1モル%〜40モル%とすることができ、5モル%〜30モル%とすることが好ましい。
[その他の工程]
赤色蛍光体の製造方法は、必要に応じてその他の工程をさらに含んでいてもよい。例えば、第三の工程で生成した赤色蛍光体を濾過等により固液分離して回収することができる。また赤色蛍光体をエタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。さらに乾燥処理を行ってもよく、その場合、例えば50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、例えば110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下で乾燥する。乾燥時間としては、赤色蛍光体に付着した水分を蒸発することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
(他の蛍光体)
発光装置は、赤色蛍光体に加えて、他の蛍光体をさらに含むことが好ましい。他の蛍光体は、光源からの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものであればよい。他の蛍光体は、例えば、前記赤色蛍光体と同様に封止材料に含有させて発光装置を構成することができる。
他の蛍光体としては例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、サイアロン系蛍光体;Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩;Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩;及びEu等のランタノイド系元素で主に付活される有機及び有機錯体等からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
他の蛍光体として具体的には例えば、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu、(Y,Gd,Lu)(Ga,Al)12:Ce、(Si,Al)(O,N):Eu(β−サイアロン)、(Ba,Sr,Ca)Ga:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、CaAlSiN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、(Ca,Sr,Ba,Zn)MgSi16:Eu、(Ca,Sr,Ba,Zn)MgSi16(F,Cl,Br,I):Eu、LaSi11:Ce、CaScSi12:Ce、CaSc:Ce、BaSi12:Eu等が挙げられる。
他の蛍光体を含むことにより、種々の色調の発光装置を提供することができる。
発光装置が他の蛍光体のさらに含む場合、その含有量は特に制限されず、所望の発光特性が得られるように適宜調整すればよい。
発光装置が他の蛍光体をさらに含む場合、緑色から黄色の光を発する蛍光体を含むことが好ましく、380nm〜485nmの波長範囲の光を吸収し、495nm〜590nmの波長範囲の緑色から黄色の光を発する蛍光体を含むことがより好ましい。発光装置が緑色から黄色の光を発する蛍光体を含むことで、液晶表示装置に、より好適に適用することができる。なお、発光素子として、発光色が異なる複数の発光素子、例えば、青色の光を発する発光素子と、緑色から黄色の光を発する発光素子とを備えた発光装置とする場合、緑色から黄色の光成分については、それらの発光色は発光素子から得ることができるので、緑色から黄色の光を発する蛍光体は、本形態の発光装置の構成としては必須ではない。
緑色から黄色に発光する蛍光体は、組成式が(Si,Al)(O,N):Euで表されるβ−サイアロン、組成式が(Ca,Sr,Ba,Zn)MgSi16(F,Cl,Br,I):Euで表されるハロシリケート、組成式が(Ba,Sr,Ca)Ga:Euで表されるアルカリ土類チオガレート、及び組成式が(Y,Lu)(Al,Ga)12:Ceで示される希土類アルミン酸塩蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることが好ましい。緑色から黄色の発を発する蛍光体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(封止材料(樹脂組成物)の蛍光体の含有量)
封止材料(樹脂組成物)の蛍光体の含有量は、樹脂100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましい。樹脂100質量部に対して、蛍光体の含有量は、より好ましく5〜195質量部であり、さらに好ましくは10〜190質量部であり、特に好ましくは15〜185質量部であり、最も好ましくは20〜180質量部である。樹脂組成物中の蛍光体の含有量が上記範囲であると、発光素子を十分に被覆することができ、発光素子から発せられた光を蛍光体で効率よく波長変換することができ、発光装置として効率よく発光することができる。また、樹脂組成物中の蛍光体の含有量が、樹脂100質量部に対して、1〜200質量部であると、均一な厚みで発光素子を被覆する赤色蛍光体のみを、または、赤色蛍光体と赤色蛍光体以外の蛍光体とを含む封止部材を形成することができる。
(緑色から黄色の光を発する蛍光体と赤色蛍光体の質量比)
蛍光体が赤色蛍光体と緑色から黄色の光を発する蛍光体を含む場合、緑色から黄色の光を発する蛍光体と赤色蛍光体の質量比(緑色から黄色の光を発する蛍光体:赤色蛍光体)は、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10、さらに好ましくは20:80〜80:20、特に好ましくは25:75〜75:25である。蛍光体が赤色蛍光体と緑色から黄色の光を発する蛍光体とを上記範囲で含む場合には、赤色蛍光体が、式(I)で表される化学組成を有するフッ化物を含むため、赤色蛍光体の発光スペクトルの半値幅が狭く、緑色から黄色に発光する発光スペクトルのピークとの隙間が大きく、発光素子からの光を吸収して、高色域かつ発光出力の高い光を発することができる。
(その他の材料)
封止部材を構成する封止材料(樹脂組成物)は、少なくとも樹脂と、蛍光体と、ナノ粒子とを含み、必要に応じてフィラーを含み、その他に、樹脂を硬化させる硬化剤等を含んでいてもよい。また、封止材料中には、染料や顔料等を含んでいてもよい。封止部材の信頼性に悪影響を与えない程度に、光を拡散させるための空隙(ボイド)をある程度含んでいても良い。
(封止材料(樹脂組成物)の製造方法)
封止材料(樹脂組成物)の製造方法は、特に限定されず、材料等の混合順序も特に限定されない。
樹脂組成物の製造方法としては、所定量の各材料を同時に混合する方法が、所定量の各材料を順次混合する方法等を挙げることができる。封止材料(樹脂組成物)は、好ましくは、樹脂、蛍光体、ナノ粒子、フィラー、その他の材料をこの順序で容器内に投入し、撹拌して製造することが好ましい。
図2は、第二の実施形態に係る発光装置100の概略構成を説明する図である。図2に示すように、発光装置100は、パッケージ30と、パッケージ30に配置された発光素子40と、発光素子40を被覆する封止部材90を備える。封止部材90は、発光素子40を被覆する赤色蛍光体70及び赤色蛍光体以外の蛍光体80を含む第一の部位101と、その第一の部位101上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位102とを有する。パッケージ30は、凹部20を形成する側壁を有する。また、パッケージ30は、底部に第一のリード50と第二のリード60とを一体的に備える。第二の実施形態に係る発光装置100は、第一の部位101と、第二の部位102を含む封止部材90を備えていること以外は、第一の実施形態に係る発光装置1と同様である。封止部材90は、ナノ粒子130を含む。ナノ粒子130は、第一の部位101及び第二の部位102の両方に含まれる。
図2中、赤色蛍光体70、赤色蛍光体以外の蛍光体80及びナノ粒子130は、実際の大きさの関係を表すものではなく、封止部材90中に含まれる赤色蛍光体70、赤色蛍光体以外の蛍光体80及びナノ粒子130を模式的に示している。
本明細書において、第二の部位において、蛍光体を実質的に含まないとは、第二の部位において、蛍光体がほぼ存在しないことをいい、限定的ではないが、第二の部位の全体量に対して、蛍光体が1質量%以下であることをいう。
[第一の部位及び第二の部位]
第一の部位101と第二の部位102は、発光素子40を封止する封止部材90を構成する。第一の部位101及び第二の部位102は、封止材料である前記樹脂組成物を用いて形成される。第一の部位101及び第二の部位102は、発光素子40が配置されたパッケージ30の凹部20に、封止材料である樹脂組成物を注入した後、赤色蛍光体70、赤色蛍光体以外の蛍光体80を発光素子40側に遠心沈降させた後、樹脂を硬化させて、発光素子40を被覆し、赤色蛍光体70及び赤色蛍光体以外の蛍光体80を含む第一の部位101と、その第一の部位101上に配置され、赤色蛍光体70及び赤色蛍光体以外の蛍光体80を実質的に含まない第二の部位102とを形成する。赤色蛍光体70は、4価のマンガンイオンで付活された、式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体の内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体を含む。また、赤色蛍光体以外の蛍光体80は、上記赤色蛍光体以外の、緑色から黄色の光を発する蛍光体である。ナノ粒子130は、遠心沈降後、第一の部位101に実質的に均一に分散され、第二の部位102にも実質的に均一に分散される。ここで、ナノ粒子が第一の部位及び/又は第二の部位に実質的に均一に分散とは、第一の部位及び/又は第二の部位の任意の断面を観察したときに、そこに存在するナノ粒子の一次粒子の大きさが一定の範囲の大きさであり、一定範囲の断面に存在するナノ粒子の個数と、一定範囲の任意の断面に存在する個数の平均値との差が所定の範囲であり、断面においてナノ粒子が偏在していないことをいう。例えば、第一の部位及び/又は第二の部位の任意の断面を任意の倍率で、任意の視野範囲において複数個所について電子顕微鏡観察したときに、そこに存在するナノ粒子の分布状態が不均一であったり、偏在したりしていることが観察されない場合、ナノ粒子は、実質的に均一に分散されているといえる。
第一の部位101は、式(I)で表される化学組成を有し、内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体70を含む。赤色蛍光体70を含む蛍光体は、樹脂組成物中で、十分に分散し、遠心沈降によって、蛍光体が密に詰まり過ぎることなく、蛍光体が発光素子上に堆積し、樹脂組成物が層分離して、第一の部位101及び第二の部位102が形成される。
第一の部位101及び第二の部位102は、共通する樹脂によって構成されるため、発光出力の低下を抑制することができる。また、発光素子40は、赤色蛍光体70及び赤色蛍光体以外の蛍光体80に覆われているため、発光素子から発光した光を蛍光体で効率よく波長変換することができ、発光を効率よく放出することができる。
従来の4価のマンガンイオン(Mn4+)で付活された赤色蛍光体は、その粒子表面において、赤色蛍光体を構成する4価のマンガンイオンが空気中の水分と反応して二酸化マンガンが生成され、粒子表面が着色された結果、色度ずれが生じたり、発光出力が低下したりする場合がある。
発光装置100は、第二の部位102によって形成された発光面とパッケージ30の界面等から侵入する空気中の水分が、第二の部位102によって阻まれる。第二の部位102によって阻まれるため、空気中の水分は、第一の部位101に含まれる赤色蛍光体70まで到達しにくく、第一の部位101に含まれる4価のマンガンイオン(Mn4+)で付活された赤色蛍光体に含まれる4価のマンガンイオンと水分との反応を抑制することができ、二酸化マンガンの生成によって、粒子表面が着色することを抑制することができる。そのため、本開示の一態様にかかる発光装置は、発光出力の低下と色度ずれとを抑制することができ、長期信頼性試験において十分な耐湿性を達成することができる。
また、発光装置100は、第二の部位102によって赤色蛍光体と封止部材の最上面との間隔を空けることができる。そのため、空気中の水分が第一の部位101に含まれる赤色蛍光体まで到達し難くすることができ、赤色蛍光体の劣化を抑制することができる。赤色蛍光体が水分と反応すると、赤色蛍光体中に含まれるMn4+やF-が溶出する場合がある。この場合、第一の部位101及び第二の部位102を構成する樹脂が着色することがあるが、上記構成により赤色蛍光体の水分との反応を抑制することができるため、第一の部位101及び第二の部位102の樹脂の着色も抑制することができる。
第二の部位102の厚みは、発光素子の直上において、封止部材全体の厚みの10分の1以上であることが好ましい。発光素子の直上において、第二の部位102の厚みが、封止部材全体の厚みの10分の1以上であることによって、上記の効果を得ることができ、蛍光体によって変換された光を効率よく発光装置の外部に放出することができる。
第二の部位102の厚みは、発光素子の直上において、封止部材全体の厚みの4分の1以上であることが好ましい。発光素子の直上において、第二の部位102の厚みが、封止部材全体の厚みの4分の1以上であることによって、空気中の水分が、第二の部位102によって阻まれて、第一の部位101に含まれる蛍光体まで到達しにくく、第一の部位101に含まれる4価のマンガンイオン(Mn4+)で付活された赤色蛍光体70に含まれる4価のマンガンイオンと水分との反応を抑制することができ、二酸化マンガンの生成によって、粒子表面が着色することを効率よく抑制することができる。
(第一の部位の蛍光体の含有量)
第一の部位101の蛍光体の含有量は、第一の部位101中の樹脂100質量部に対して、好ましくは20〜400質量部、より好ましくは25〜380質量部、さらに好ましくは30〜350質量部、特に好ましくは35〜300質量部である。第一の部位101中に含まれる蛍光体の含有量が上記範囲であると、均一な厚みの蛍光体で発光素子を被覆することができ、発光素子からの光を蛍光体で効率よく波長変換することができる。
[発光装置の製造方法(第一の実施態様)]
本開示の発光装置の製造方法は、第一の実施態様として、凹部を形成する側壁を有するパッケージを準備する工程と、凹部に発光素子を配置する工程と、凹部に前記樹脂組成物を注入する工程と、前記樹脂組成物で発光素子を被覆し、該樹脂組成物を硬化させて封止部材を形成する工程を含む。
以下、図1を参照に、発光装置の製造方法について説明する。
(パッケージの準備工程)
パッケージ3を準備する。第一の実施態様では、パッケージ3は、凹部2を形成する側壁を有する。また、パッケージ3は、凹部2の底面に、第一のリード5及び第二のリード6を一体的に成形する。
(発光素子の配置工程)
パッケージ3の凹部の底面を構成する第一のリード5の上に、発光素子4を配置し、ダイボンディングにより接着する。発光素子4の正負の電極(図示せず)は、それぞれワイヤ11及び12により第一のリード5及び第二のリード6に接続する。また、本開示の発光装置の製造方法は、必要に応じて、発光素子4、第一のリード5、第二のリード6、並びにワイヤ11及び12を、絶縁部材(図示略)で覆う工程を含んでいてもよい。絶縁部材は、スパッタや蒸着によって、第一のリード5及び第二のリード6(導電部材)、ワイヤ11及び12並びに発光素子4上に無機化合物からなる膜(層)として形成されることが好ましい。また、絶縁部材は、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition)により膜(層)として形成されることがより好ましい。
(被覆工程)
次に、パッケージ3の凹部2に、樹脂(図示略)、ナノ粒子13、必要に応じてフィラー(図示略)、及び赤色蛍光体7、赤色蛍光体以外の蛍光体8を含む封止材料を注入し、パッケージ3に配置された発光素子4を封止材料で被覆する。具体的には、封止材料(樹脂組成物)は、凹部2に充填され、発光素子4を被覆する。樹脂組成物は、複数配置されたパッケージ3の複数の凹部2にシリンジ等で注入することが好ましい。樹脂組成物は、必要に応じてその他の材料を含んでいてもよい。
(硬化工程)
硬化工程ではパッケージ3の凹部2に充填された樹脂組成物を硬化処理する。これにより、樹脂組成物の硬化物である、発光素子4を被覆する封止部材9が形成された発光装置を得ることができる。樹脂の硬化方法は、特に限定されず、樹脂の種類に応じて、硬化方法を適宜選択できる。樹脂組成物中に含まれるナノ粒子13は、封止部材9に実質的に均一に分散される。
[発光装置の製造方法(第二の実施形態)]
本開示の発光装置の製造方法に係る第二の実施態様について説明する。
発光装置の製造方法の第二の実施形態として、パッケージを準備する工程と、パッケージに発光素子を配置する工程は、第一の実施形態と同様である。
発光装置の製造方法に係る第二の実施形態は、第一の実施形態で説明した硬化工程の前に、発光素子を被覆した封止材料(樹脂組成物)中の蛍光体を発光素子が配置された側に遠心沈降させる遠心沈降工程を含む。遠心沈降工程後に、樹脂を硬化させることによって、蛍光体を含み発光素子を被覆する第一の部位と、この第一の部位上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位とを含む封止部材を形成することができる。以下、蛍光体の遠心沈降工程と、最後の工程である樹脂組成物を硬化させて封止部材を形成する工程を、図2を参照に説明する。
(蛍光体の遠心沈降工程)
図2に示すように、パッケージ30の側壁を形成する凹部20に封止材料(樹脂組成物)を注入し、凹部20に封止材料(樹脂組成物)を充填する。封止材料(樹脂組成物)が充填されたパッケージ30には、強制的な遠心力を付加し、樹脂組成物中の赤色蛍光体70及び赤色蛍光体以外の蛍光体80が、発光素子40を被覆するように遠心沈降させる。その後、樹脂を硬化させ、樹脂組成物の硬化物によって、発光素子を被覆し蛍光体を含む第一の部位101と、その第一の部位101上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位102とを含む封止部材90を形成する。遠心沈降工程では、凹部20に樹脂組成物を充填したパッケージ30を、マガジンに入れて遠心機で十分に沈降するまで回転させ、蛍光体を遠心沈降させることが好ましい。
蛍光体の遠心沈降は、遠心力と重力との合力の方向を、発光素子が配置されたパッケージの底面に垂直な方向と一致させることにより行う。ここで、パッケージの底面には、発光素子が載置された第一のリード50と、第二のリード60とを含む。蛍光体の遠心沈降は、遠心力と重力の合力の方向を、発光素子を配置するパッケージの底面に垂直な方向と一致させることにより、樹脂組成物中に分散されていた蛍光体が、発光素子及びパッケージの底面上に均一な厚みで沈降し、均一な厚みの第一の部位101を形成することができる。
蛍光体の遠心沈降は、発光素子40の直上において、第二の部位102の厚みが、樹脂組成物全体の厚みの10分の1以上となるように行うことが好ましい。遠心沈降の条件、封止材料中の樹脂の種類や量、蛍光体の種類や量を適宜調整することによって、第二の部位102の厚みを調整することができる。条件を設定して蛍光体を遠心沈降することによって、第二の部位の厚みが、封止材料(樹脂組成物)全体の厚みの10分の1以上となるように蛍光体を遠心沈降させることができる。
蛍光体の遠心沈降は、発光素子40の直上において、第二の部位102の厚みが、封止材料全体の厚みの4分の1以上となるように行うことが好ましい。遠心沈降の条件、封止材料(樹脂組成物)中の樹脂の種類や量、蛍光体の種類や量を適宜調整することによって、第二の部位の厚みが、封止材料(樹脂組成物)全体の厚みの4分の1以上となるように蛍光体を遠心沈降させることができる。
樹脂組成物中に含まれるナノ粒子130は、蛍光体を遠心沈降した場合であっても、第一の部位101に実質的に均一に分散され、第二の部位102にも実質的に均一に分散される。
(硬化工程)
そして、蛍光体を遠心沈降させた後、樹脂を硬化させる。これにより、パッケージ30の凹部20に注入された封止材料(樹脂組成物)の硬化物によって、赤色蛍光体70、赤色蛍光体以外の蛍光体80を含み発光素子40を被覆する第一の部位101と、この第一の部位101上に配置され、赤色蛍光体70を実質的に含まない第二の部位102とを含む封止部材90が形成された発光装置100を得ることができる。樹脂の硬化方法は、特に限定されず、樹脂の種類に応じて、硬化方法を適宜選択できる。
<画像表示装置>
画像表示装置は、前記発光装置の少なくとも1つを備える。画像表示装置は、発光装置を備えるものであれば特に制限されず、従来公知の画像表示装置から適宜選択することができる。画像表示装置は例えば、前記発光装置に加えて、カラーフィルター部材、光透過制御部材等を備えて構成される。
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
(赤色蛍光体の製造例1)
表1に示す仕込み組成比となるように、KMnFを21.66g秤量し、55重量%のHF水溶液800gに溶解した後、40重量%のHSiF水溶液400gを加えて溶液Aを調製した。一方でKHFを260.14g秤量し、それを55重量%のHF水溶液450gに溶解させて溶液Bを調製した。また、40重量%のHSiF水溶液200gを秤量したものを溶液Cとした。
次に室温(23〜28℃)で、溶液Aを撹拌しながら溶液Bと溶液Cとを同時に滴下していくことで蛍光体結晶(フッ化物粒子)を析出させていき、表2に示すように、溶液Bと溶液Cのそれぞれ75重量%の滴下が終了した段階で一旦滴下を停止した(第一の工程)。
還元剤として15gを秤量した30%のH水溶液を溶液Aに添加した(第二の工程)後、溶液Bと溶液Cの滴下を再開した(第三の工程)。溶液Bと溶液Cの滴下が終了後、得られた沈殿物を分離、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄を行い、70℃で10時間乾燥することで製造例1の赤色蛍光体1(K[Si0.97Mn4+ 0.03])を作製した。製造例1の赤色蛍光体1は、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有していた。
(赤色蛍光体の製造例2)
赤色蛍光体の製造例1において、第二の工程を有しない以外は、製造例1と同様にして製造例2の赤色蛍光体2(K[Si0.97Mn4+ 0.03])を作製した。この
製造例2の赤色蛍光体2は、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有していなかった。
(実施例1)
(封止材料(樹脂組成物)の製造)
赤色蛍光体として、製造例1の赤色蛍光体を使用した。緑色から黄色に発光する蛍光体として、(Si,Al)(O,N):Eu(β−サイアロン)を使用した。緑色から黄色に発光する蛍光体と赤色蛍光体は、緑色から黄色に発光する蛍光体と赤色蛍光体の質量比(緑色から黄色に発光する蛍光体:赤色蛍光体)で、27:73となるように配合した。樹脂は、フェニルシリコーン(Dow Corning(登録商標OE−6630))を使用した。ナノ粒子は、TEMで測定した一次粒子の個数平均粒径が12nmである、シリカナノ粒子(酸化ケイ素ナノ粒子)を使用した。フィラーは、レーザー回折散乱式粒度分布計(MALVERN社製MASTER、SIZER 2000)で測定した体積平均粒径(メジアン径:d50)が11μmのシリカ(酸化ケイ素)を使用した。各成分の配合は、以下のとおりである。
撹拌容器に、樹脂、蛍光体(赤色蛍光体及び緑色から黄色に発光する蛍光体)を投入し、次に、シリカナノ粒子及びフィラーを投入し、5分程度撹拌して、封止材料(樹脂組成物)1を得た。
(樹脂組成物1)
フェニルシリコーン樹脂材料(A剤) 20質量部
赤色蛍光体(製造例1)平均粒径28μm 31.57質量部(43.25質量部×0.73)
緑色から黄の光を発する蛍光体(β−サイアロン)平均粒径15μm 11.68質量部(43.25質量部×0.27)
シリカナノ粒子(シリカ、一次粒子の個数平均粒径:12nm) 0.4質量部
フィラー(シリカ、二次粒子の体積平均粒径:11μm) 5質量部
フェニルシリコーン樹脂材料(B剤) 80質量部
(発光装置の製造方法)
凹部を形成する側壁を有するパッケージを準備し、凹部に発光素子を配置した後、樹脂組成物1をパッケージの凹部にシリンジを用いて注入した。発光素子は、発光ピーク波長が約445nmであるものを用いた。その後、パッケージの凹部に注入した樹脂組成物1で発光素子を被覆し、該樹脂組成物を硬化させて封止部材9を形成し、実施例1の発光装置を得た。封止部材9には、シリカナノ粒子が実質的に均一に分散されていた。
(比較例1)
樹脂組成物において、実施例1とは異なる赤色蛍光体2を用いたこと以外は、樹脂組成物1と同様にして、樹脂組成物2を得た。この赤色蛍光体2は、製造例2の赤色蛍光体であり、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有していない。樹脂組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の発光装置を得た。
(比較例2)
樹脂組成物において、シリカナノ粒子及びフィラーを含んでいないこと以外は、樹脂組成物1と同様にして、樹脂組成物3を得た。この樹脂組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の発光装置を得た。
(比較例3)
樹脂組成物において、シリカナノ粒子及びフィラーを含まず、実施例1とは異なる赤色蛍光体2を用いたこと以外は、樹脂組成物2と同様にして、樹脂組成物4を得た。この樹脂組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の発光装置を得た。
〔PCT(Pressure Cooker Test)〕
実施例1及び比較例1〜3に係る発光装置について、121℃、湿度100%、2気圧(atm)で100時間プレッシャークッカーテスト(PCT)を行った。結果を表3及び図3に示す。
表3は、実施例1及び比較例1〜3に係る発光装置について、赤色蛍光体の表面領域の有無、シリカナノ粒子の有無、封止部材の第一の部位及び第二の部位の有無、100時間PCT試験後の変色の有無をまとめた。
赤色蛍光体が蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する場合はYes、表面領域を有していない場合はNoとした。発光装置の封止部材を構成する樹脂組成物中にシリカナノ粒子を含有する場合はYes、シリカナノ粒子を含有しない場合はNoとした。発光装置の封止部材が第一の部位及び第二の部位を有する場合はYes、封止部材の第一の部位及び第二の部位を有してない場合はNoとした。
またPCT試験後に変色の有無を以下の基準で評価した。
A:変色無し
B:変色が若干有った
C:変色が有った。
図3(a)は、実施例1の発光装置のPCT100時間経過後の写真を示す。
図3(a)に示すように、実施例1の発光装置は、PCT100時間経過後も、発光装置の表面において変色は確認できなかった。図3(a)に示す結果から、実施例1の発光装置は、耐久性に優れることが分かる。
図3(b)は、比較例1の発光装置のPCT100時間経過後の写真を示す。
図3(b)に示すように、比較例1は、PCT100時間で、発光装置の表面に若干変色が確認できた。これは、表面領域を有していない赤色蛍光体の粒子表面において、4価マンガンイオンと水分との反応が実施例1ほど抑制されず、赤色蛍光体の粒子表面において二酸化マンガンが生成されたためと推測される。
図3(c)は、比較例2の発光装置のPCT100時間経過後の写真を示す。
図3(c)に示すように、比較例2は、PCT100時間で、発光装置の表面に若干変色が確認できた。これは、樹脂組成物中にシリカナノ粒子を含んでいないため、赤色蛍光体の表面における4価マンガンイオンと水分との反応が実施例1ほど抑制されず、赤色蛍光体の粒子表面において二酸化マンガンが生成されたためと推測される。
図3(d)は、比較例3の発光装置のPCT100時間経過後の写真を示す。
図3(d)に示すように、比較例3は、PCT100時間で、発光装置の表面に変色が確認できた。これは、樹脂組成物中にシリカナノ粒子を含まず、さらに表面領域を有していない赤色蛍光体の粒子表面において、4価マンガンイオンと水分との反応が実施例1や、比較例1及び2ほど抑制されず、赤色蛍光体の粒子表面において二酸化マンガンが生成されたためと推測される。
(実施例2)
(発光装置の製造方法)
図2を参照にして、凹部20を形成する側壁を有するパッケージ30を準備し、凹部20に発光素子40を配置した後、樹脂組成物1をパッケージ30の凹部20にシリンジを用いて注入した。発光素子40は、発光ピーク波長が約445nmであるものを用いた。
次いで、凹部20に樹脂組成物1を充填したパッケージ30は、マガジンに入れて遠心機で十分に回転させ、赤色蛍光体70、赤色蛍光体以外の蛍光体80を遠心沈降させた後、パッケージ30の凹部20に注入された樹脂組成物1によって、赤色蛍光体70、赤色蛍光体以外の蛍光体80を含み、発光素子40を被覆する第一の部位101と、その第一の部位101上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位102とを含む封止部材90を形成した。硬化前の第二の部位102の厚みが、発光素子40の直上において、封止材料(樹脂組成物1)の全体の厚みの10分の1以上であった。具体的には、硬化後において、発光素子40の直上において、封止部材90全体の厚みが410μmであり、第一の部位101の厚みが150μmであり、第二の部位102の厚みが260μmであった。
蛍光体を遠心沈降させる工程において、遠心力と重力との合力の方向を、発光素子を配置するパッケージの底面の垂直方向と一致させて、蛍光体の遠心沈降を行った。
その後、樹脂組成物1を硬化し、赤色蛍光体70、赤色蛍光体以外の蛍光体80を含み、発光素子40を被覆する第一の部位101と、その第一の部位101上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位102を含む封止部材90を形成し、実施例2の発光装置2を得た。
図4は、実施例2の発光装置の断面を蛍光顕微鏡で撮影した20倍の写真である。図4に示すように、実施例2の発光装置100は、赤色蛍光体70、赤色蛍光体以外の蛍光体80を含み、発光素子40を被覆する第一の部位101と、第一の部位101上に配置され、赤色蛍光体70を実質的に含まない第二の部位102が形成されていることが確認できた。シリカナノ粒子は、第一の部位101に実質的に均一に分散され、第二の部位102にも実質的に均一に分散されていた。
(比較例4)
樹脂組成物において、実施例1とは異なる赤色蛍光体2を用いたこと以外は、樹脂組成物1と同様にして、樹脂組成物2を得た。この赤色蛍光体2は、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有していない。樹脂組成物2を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例4の発光装置を得た。
(比較例5)
樹脂組成物において、シリカナノ粒子を含んでいないこと以外は、樹脂組成物1と同様にして、樹脂組成物5を得た。この樹脂組成物5を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例5の発光装置を得た。
(比較例6)
樹脂組成物において、シリカナノ粒子を含まず、実施例1とは異なる赤色蛍光体2を用いたこと以外は、樹脂組成物2と同様にして、樹脂組成物6を得た。この赤色蛍光体2は、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有していない。この樹脂組成物6を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例6の発光装置を得た。
〔PCT(Pressure Cooker Test)〕
実施例2及び比較例4〜6に係る発光装置について、121℃、湿度100%、2気圧(atm)で100時間プレッシャークッカーテスト(PCT)を行った。結果を表4及び図5に示す。
表4は、実施例2及び比較例4〜6に係る発光装置について、赤色蛍光体の表面領域の有無、シリカナノ粒子の有無、封止部材の第一の部位及び第二の部位の有無、100時間PCT試験後の変色の有無をまとめた。赤色蛍光体が蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する場合はYes(有)、表面領域を有していない場合はNo(無)とした。発光装置の封止部材を構成する樹脂組成物中にシリカナノ粒子を含有する場合はYes(有)、シリカナノ粒子を含有しない場合はNo(無)とした。発光装置の封止部材が第一の部位及び第二の部位を有する場合はYes(有)、封止部材の第一の部位及び第二の部位を有してない場合はNo(無)とした。
またPCT試験後に変色の有無を以下の基準で評価した。
A:変色無し
B:変色が若干有った
C:変色が有った。
図5(a)は、実施例2の発光装置のPCT100時間経過後の写真を示す。
図5(a)に示すように、実施例2の発光装置は、PCT100時間経過後も、発光装置の表面において変色は確認できなかった。
図5(b)は、比較例4の発光装置のPCT100時間経過後の写真を示す。
図5(c)は、比較例5の発光装置のPCT100時間経過後の写真を示す。
図5(d)は、比較例6の発光装置のPCT100時間経過後の写真を示す。
また、図5(b)〜(d)に示すように、比較例4〜6も、PCT100時間で、発光装置の表面において、変色は確認できなった。
この結果から、遠心沈降によって、発光素子を被覆し蛍光体を含む第一の部位と、その第一の部位上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位とを含む封止部材が形成された発光装置は、発光面とパッケージの界面等から侵入する空気中の水分が、第二の部位によって阻まれるため、空気中の水分は、第一の部位に含まれる蛍光体まで到達しにくく、第一の部位に含まれる4価のマンガンイオン(Mn4+)で付活された赤色蛍光体に含まれる4価のマンガンイオンと水分との反応を抑制することができ、二酸化マンガンの生成によって、粒子表面が着色することを抑制することができることが確認できる。そのため、発光装置は、長期信頼性試験において十分な耐湿性を達成することが確認できる。
また、発光装置は、第二の部位によって、空気中の水分が第一の部位に含まれる赤色蛍光体まで到達するのを抑制することができ、赤色蛍光体中に含まれるMn4+やF-が溶出することを抑制し、第一の部位及び第二の部位を構成する樹脂の劣化することができることが確認できた。
(実施例3〜5、比較例7〜9及び参考例)
参考例に係る発光装置は、蛍光体はYAGを使用した。参考例は、蛍光体にYAGを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、発光装置を製造した。実施例3〜5は、製造例1によって得られた赤色蛍光体を用いた。実施例3〜5において、緑色から黄色に発光する蛍光体として表5に示す蛍光体を用いたこと以外は、樹脂組成物1と同様の成分及び配合割合を有する樹脂組成物7〜9を用いて、実施例2と同様にして、発光装置を製造した。比較例7〜9において、実施例1とは異なる赤色蛍光体(CaAlSiN:Eu、以後「CASN」ともいう。)を用いた。また、比較例7〜9において、緑色から黄色に発光する蛍光体(β−サイアロン)と赤色蛍光体(CASN)は、緑色から黄色に発光する蛍光体と赤色蛍光体の質量比率(β−サイアロン:CASN)で、90:10となるように配合したこと以外は、樹脂組成物1と同様の成分及び配合割合を有する樹脂組成物10〜12を用いた。比較例7〜9において、樹脂組成物10〜12を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、発光装置を製造した。参考例、実施例3〜5及び比較例7〜9の発光装置は、いずれも蛍光体を含み、発光素子40を被覆する第一の部位101と、その第一の部位101上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位102を有する封止部材90を有する(図2参照)。
〔NTSC比〕
参考例、実施例3〜5及び比較例7〜9の発光装置を画像表示装置に組み込んだ。これらの画像表示装置のNTSC比を測定した。
NTSC比とは、アメリカテレビジョン標準化委員会(National Television Standards Committee)によりCIE1931 XYZ表色系の色度(x,y)にて定められた標準方式の3原色、赤(0.67,0.33)、緑(0.21,0.71)、青(0.14,0.08)を結ぶ三角形を基準として、画像表示装置の赤・緑・青単色の色度を結んで得られる三角形を比較した面積比のことである。この面積比が即ち色再現範囲として定義され、その比率が高いほど色再現性が高いと判定される。
画像表示装置は、CIE1931色度図上において、色再現範囲が、NTSC比70%以上であることが好ましい。
〔sRGB〕
参考例、実施例3〜5及び比較例7〜9の発光装置を画像表示装置に組み込んだ。これらの画像表示装置のsRGBを測定した。
sRGB比とは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)によりCIE1931 XYZ表色系の色度(x,y)にて定められた標準方式の3原色、赤(0.6400,0.3300)、緑(0.3000,0.6000)、青(0.1500,0.0600)を結ぶ三角形を基準として、画像表示装置の赤・緑・青単色の色度を結んで得られる三角形を比較した面積比のことである。この面積比が即ち色再現範囲として定義され、その比率が高いほど色再現性が高いと判定される。
〔光束:Relative Flux(LED)〕
参考例、実施例3〜5及び比較例7〜9の発光装置について、積分球を用いて光束を測定した。
参考例、実施例3〜5、比較例7〜9の発光装置のNTSC比、sRGB、光束(LED)の測定の結果を表5に示す。表5中の蛍光体においてかっこ内に示した数値は、各蛍光体の発光ピーク波長を示す。
表5に示すように、実施例3〜5の発光装置は、比較例7〜9の発光装置と比較して、NTSC比、sRGB、光束(LED)のいずれもが優れた数値を示しており、色再現性、光束(LED)のいずれもが改善された。参考例の発光装置の光束100に対して、比較例7〜9の発光装置の光束は68、64、58と低下していた。これらの比較例7〜9の発光装置に対して、実施例3〜5の発光装置の光束は87、82、75と改善された。
(実施例6〜11)
ナノ粒子は、ジルコニアナノ粒子及び/又はシリカナノ粒子を使用した。樹脂組成物中のナノ粒子と蛍光体の配合量を、表6に示すように配合したこと以外は、樹脂組成物1と同様の成分及び配合割合を有する樹脂組成物13〜18を用いた。樹脂組成物13〜18を用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光装置を製造した。樹脂組成物に使用したナノ粒子は、以下のとおりである。封止部材9には、ジルコニアナノ粒子及び/又はシリカナノ粒子が実質的に均一に分散されていた。
ジルコニアナノ粒子(二酸化ジルコニウム、TEMで測定した一次粒子の個数平均粒径:5nm)
シリカナノ粒子(シリカ、TEMで測定した一次粒子の個数平均粒径:12nm)
(比較例10)
樹脂組成物中に、ジルコニアナノ粒子も、シリカナノ粒子も含まないこと以外は、樹脂組成物1と同様の成分及び配合割合を有する樹脂組成物19を用いた。この樹脂組成物19を用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光装置を製造した。
〔光束維持率(%)〕
得られた発光装置は、温度85℃湿度85%に設定した恒温槽に設置し、1mAで点灯させ発光装置の信頼性試験を行った。発光装置の信頼性は、恒温槽で点灯させる前後の光束維持率を測定して評価した。光束維持率は、恒温槽で点灯させる前の光束に対する、恒温槽で点灯1993時間経過後の光束を測定することで評価した。
光束維持率(%)=(1993時間経過後の光束/点灯前の光束)×100
実施例6〜11及び比較例10の光束維持率(%)を表6に示した。
実施例6〜7のジルコニアナノ粒子及び/又は特定量のシリカナノ粒子を用いた発光装置は、比較例10の発光装置よりも光束維持率が大きいことから、長期信頼性試験において優れた耐久性を有することが分かる。より具体的には、ジルコニアナノ粒子あるいはシリカナノ粒子のいずれか一方を含む実施例6、7、8は、それらのいずれも含まない比較例10よりも光束維持率が高いことが分かる。また、実施例10、11に示されるように、ジルコニアナノ粒子とシリカナノ粒子の両方を特定量含むことにより、ジルコニアナノ粒子あるいはシリカナノ粒子のいずれか一方を含む実施例6、7、8よりも、光束維持率を高くすることができたことが分かる。
(実施例12〜14)
ナノ粒子は、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子を使用した。樹脂組成物中のナノ粒子と蛍光体の配合量を、表7に示すように配合したこと以外は、樹脂組成物1と同様の成分及び配合割合を有する樹脂組成物19〜21を用いた。樹脂組成物19〜21を用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光装置を製造した。樹脂組成物に使用したナノ粒子は、以下のとおりである。
酸化アルミニウムナノ粒子(TEMで測定した一次粒子の個数平均粒径:31nm)
酸化チタンナノ粒子(TEMで測定した一次粒子の個数平均粒径:36nm)
酸化亜鉛ナノ粒子(TEMで測定した一次粒子の個数平均粒径:34nm)
〔光束維持率(%)〕
得られた発光装置は、温度85℃湿度85%に設定した恒温槽に設置し、1mAで点灯させ発光装置の信頼性試験を行った。発光装置の信頼性は、恒温槽で点灯させる前後の光束維持率を測定して評価した。光束維持率は、恒温槽で点灯させる前の光束に対する、恒温槽で点灯352時間経過後の光束を測定することで評価した。
光束維持率(%)=(352時間経過後の光束/点灯前の光束)×100
実施例12〜14及び比較例11の光束維持率(%)を表7に示した。
本開示の一態様に係る発光装置は、発光出力の低下と色度ずれが抑制され、特に青色発光ダイオードを光源とする白色の照明用光源、バックライト光源、LEDディスプレイ、信号機、照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に利用でき、特に照明用途において優れた耐久性、信頼性及び発光特性を示す。
1、100:発光装置、2、20:凹部、3、30:パッケージ、4、40:発光素子、5、50:第一のリード、6、60:第二のリード、7、70:赤色蛍光体、8、80:赤色蛍光体以外の蛍光体、9、90:封止部材、101:第一の部位、102:第二の部位、11、12、110、120:ワイヤ、13、130:ナノ粒子。

Claims (17)

  1. パッケージと;
    前記パッケージに配置された発光素子と;
    蛍光体と、樹脂と、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種のナノ粒子とを含み、前記ナノ粒子が酸化ケイ素ナノ粒子を含む場合は、酸化ケイ素ナノ粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して0.02〜5質量部である、樹脂組成物の硬化物であり、前記発光素子を被覆する封止部材と;を含み、
    前記蛍光体が、4価のマンガンイオンで付活された、下記式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体を含む、発光装置。
    [M1−xMn4+ ] (I)
    (式中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、xは0<x<0.2を満たす。)
  2. 前記樹脂組成物が、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子及び酸化ジルコニウムナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1種のナノ粒子を、前記樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部含む、請求項1に記載の発光装置。
  3. 前記ナノ粒子が酸化ジルコニウムナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
  4. 前記ナノ粒子が酸化アルミニウムナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
  5. 前記ナノ粒子が酸化チタンナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
  6. 前記ナノ粒子が酸化亜鉛ナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
  7. 前記ナノ粒子が酸化ケイ素ナノ粒子及び酸化ジルコニウムナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
  8. 前記封止部材は、前記蛍光体を含み、前記発光素子を被覆する第一の部位と、その第一の部位の上に配置され、前記蛍光体を実質的に含まない第二の部位とから構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光装置。
  9. 前記ナノ粒子は、前記第一の部位及び前記第二の部位に実質的に均一に分散している、請求項8に記載の発光装置。
  10. 前記ナノ粒子の一次粒子の個数平均粒径が1nm〜100nmである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光装置。
  11. 前記式(I)中のMが、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光装置。
  12. 前記発光素子が、380nm〜573nmの範囲に発光ピーク波長を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発光装置。
  13. 前記蛍光体が、380nm〜485nmの範囲に極大波長を有する光を吸収し、495nm〜590nmの範囲に発光ピーク波長を有する緑色から黄色の光を発する蛍光体をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発光装置。
  14. 前記緑色から黄色の光を発する蛍光体は、組成式が(Si,Al)(O,N):Euで表されるβ−サイアロン、組成式が(Ca,Sr,Ba,Zn)MgSi16(F,Cl,Br,I):Euで表されるハロシリケート、組成式が(Ba,Sr,Ca)Ga:Euで表されるアルカリ土類チオガレート、及び組成式が(Y,Lu)(Al,Ga)12:Ceで示される希土類アルミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含む、請求項13に記載の発光装置。
  15. 前記緑色から黄色の光を発する蛍光体と前記赤色蛍光体との質量比率が、5:95〜95:5である、請求項13又は14に記載の発光装置。
  16. 前記樹脂が、フェニルシリコーン樹脂を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の発光装置。
  17. 蛍光体と;樹脂と;酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子及び酸化ケイ素ナノ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種のナノ粒子と;を含み、前記ナノ粒子が酸化ケイ素ナノ粒子を含む場合は、酸化ケイ素ナノ粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して0.02〜5質量部であり、
    前記蛍光体が、4価のマンガンイオンで付活された、下記式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体を含む、樹脂組成物。
    [M1−xMn4+ ] (I)
    (式中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、xは0<x<0.2を満たす。)
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