JP2016081563A - 自己融着性絶縁電線、コイル用電線及び巻線束 - Google Patents

自己融着性絶縁電線、コイル用電線及び巻線束 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、電線間融着の信頼性が高く、かつ融着後の絶縁性が高い自己融着性絶縁電線を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る自己融着性絶縁電線は、線状の金属導体と、この金属導体の外周面側に積層される絶縁層と、この絶縁層の外周面側に積層され、加熱により膨張する熱融着層とを備える自己融着性絶縁電線であって、上記熱融着層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルとを有し、上記熱融着層の加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下である。上記化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度における上記熱融着層のマトリックスの弾性率としては1kPa以上が好ましい。上記熱融着層における化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの含有率としては、1質量%以上15質量%以下が好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、自己融着性絶縁電線、コイル用電線及び巻線束に関する。
絶縁電線を用いて例えばモーター用コイルを製造する場合、コアに電線を捲回した後、電線同士の隙間及び電線とコアとの隙間にワニスを含浸させて電線間及び電線−コア間を固着させるのが一般的である。しかしながら、ワニスの完全な含浸を担保することは難しく、電線の固定が部分的に不十分となるおそれがある。また、ワニスの含浸により工数が増え、コイルが高価となるおそれがある。
これに対し、モーター製造工程の簡略化のために金属導体の外周に互いに融着し合う熱融着層を設けた自己融着性絶縁電線が使用されることがある。このような自己融着性絶縁電線を使用する場合、電線の捲回密度が小さいと、電線間又は電線−コア間の融着が不十分となるおそれがあり、融着性を高めるために熱融着層を厚くすると捲線の密度が低下してコイルの体積効率が低くなるおそれがある。また電線の皮膜厚が厚くなることにより、電線をモーターに挿入する際の作業性が悪化するおそれがある。
そこで、熱融着層に発泡剤を添加し、捲線加工後に熱融着層を発泡させて電線間の融着性を向上させる技術が提案されている(特開平4−87214号公報参照)。
特開平4−87214号公報
上記公報に開示される自己融着性絶縁電線は、熱融着層が発泡により膨張して互いの当接圧力を高めると共に互いの隙間を埋めるように膨張しつ融着し合うので、電線間の固着が比較的容易であるが、自己融着性絶縁電線の用途を拡大するためには、電線間の融着の信頼性を高めることが望まれる。
また、上記公報に開示される自己融着性絶縁電線は、膨張時に熱融着層が流動化することにより電線間が固着しやすくする効果が得られるものである。しかし、熱融着層が流動しすぎるために融着樹脂の分布が部分的に不均一となり、その結果電線間の距離がばらつき、本来自己融着層により期待できる絶縁電圧、つまり部分放電開始電圧(Partial Discharge Inception Voltage)の向上効果を十分発揮できない場合があった。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、電線間融着の信頼性が高く、かつ融着後の絶縁性が高い自己融着性絶縁電線、コイル用電線及び巻線束を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る自己融着性絶縁電線は、線状の金属導体と、この金属導体の外周面側に積層される絶縁層と、この絶縁層の外周面側に積層され、加熱により膨張する熱融着層とを備える自己融着性絶縁電線であって、上記熱融着層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルとを有し、上記熱融着層の加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下である。
本発明の一態様に係る自己融着性絶縁電線及びコイル用電線は、電線間融着の信頼性が高く、かつ融着後の絶縁性が高い。
図1は、本発明の一実施形態の自己融着性絶縁電線を示す模式的断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る自己融着性絶縁電線は、線状の金属導体と、この金属導体の外周面側に積層される絶縁層と、この絶縁層の外周面側に積層され、加熱により膨張する熱融着層とを備える自己融着性絶縁電線であって、上記熱融着層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルとを有し、上記熱融着層の加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下である。
当該自己融着性絶縁電線は、熱融着層が合成樹脂を主成分とするマトリックス中に化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルを分散して形成され、加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下であることによって、特にコイルを形成する場合の熱融着層同士の融着の信頼性を確保しつつ、融着後の絶縁性を向上することができる。
上記化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度における上記熱融着層のマトリックスの弾性率としては、1kPa以上が好ましい。このように、熱融着層のマトリックスの弾性率を上記範囲内とすることによって、熱融着層の略均一な膨張と、熱融着層同士の確実な融着とを促進できる。
上記熱融着層における化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの含有率としては、1質量%以上15質量%以下が好ましい。このように、化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの含有率を上記範囲内とすることによって、熱融着層のより均一な膨張が可能となる。
上記化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの発泡により上記熱融着層に形成される空孔の平均径としては、300μm以下が好ましい。このように、化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの発泡により形成される膨張後の熱融着層の空孔の平均径を上記上限以下とすることによって、熱膨張性マイクロカプセルが熱融着層の融着を阻害せず、熱融着層をより均一に膨張させられる。
上記熱融着層の加熱後の空隙率としては、10%以上80%以下が好ましい。このように、熱融着層の加熱後の空隙率を上記範囲内とすることによって、上記膨張率を達成しつつ膨張時に熱融着層のマトリックスの連続性を確保して、熱融着層同士の融着の信頼性をより向上することができる。
本発明の一態様に係るコイル用電線は、当該自己融着性絶縁電線を捲線加工し、熱融着層を膨張させて形成される。
当該コイル用電線は、このように、捲線加工して熱融着層を膨張させることで、自己融着性絶縁電線の熱融着層が互いに融着するので電線間を容易に固着できるため、固着の信頼性が高い。
本発明の一態様に係る巻線束は、複数の当該自己融着性絶縁電線を捲線加工して束ねることにより形成される巻線束である。
当該巻線束は、このように、自己融着性絶縁電線の熱融着の信頼性が高く、熱融着後の絶縁性が高いので、信頼性が高いモーター等を形成できる。
ここで、「平均厚さ膨張率」とは、加熱による膨張後の熱融着層の平均圧さの加熱前の熱融着層の平均厚さに対する比を意味する。また、「空孔の平均径」とは、細孔直径分布測定装置(例えばPorus Materials社の「多孔質材料自動細孔径分布測定システム」)により断面を測定することにより得られる値である。また、熱融着層の「空隙率」とは、熱融着層の体積に対する熱融着層内の気体の容積の百分率であり、熱融着層のマトリックス及び熱膨張性マイクロカプセルの外殻の含有質量と密度とから算出される実体積をV0、熱融着層の空隙を含むみかけの体積をV1とするとき、(V1−V0)/V1×100で算出される量である。また、「マトリックスの弾性率」とは、JIS−K−6868−2(1999)に準拠して測定されるせん断弾性率を意味する。また、「発泡開始温度」とは、化学発泡剤から気体の発生が確認される温度、又は熱膨張性マイクロカプセルの体積が、膨張前(常温、具体的には25℃)の1.05倍となる温度をいう。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る自己融着性絶縁電線の一つの実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
図1の自己融着性絶縁電線は、線状の金属導体1と、この金属導体1の外周面側に積層される絶縁層2と、この絶縁層2の外周面側に積層され、加熱により膨張する熱融着層3とを備える。
<金属導体>
金属導体1は、例えば断面が円形状の丸線とされるが、断面が正方形状の角線又は長方形状の平角線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
金属導体1の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。金属導体1は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
金属導体1の平均断面積の下限としては、0.01mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。一方、金属導体1の平均断面積の上限としては、100mmが好ましく、50mmがより好ましい。金属導体1の平均断面積が上記下限に満たない場合、金属導体1に対する熱融着層3の体積が大きくなり、当該自己融着性絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。逆に、金属導体1の平均断面積が上記上限を超える場合、従来の絶縁電線にワニスを含浸する方法でも比較的容易かつ安価にコイルを形成できるため、従来の絶縁電線に対して有利性が得られないおそれがある。
<絶縁層>
絶縁層2は、絶縁性を有する樹脂組成物で形成される。絶縁層2を形成する樹脂組成物としては、特に限定されないが、例えばポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、芳香族ポリアミド、熱硬化ポリアミドイミド、熱硬化ポリイミド等の熱硬化性樹脂や、例えば熱可塑性ポリイミド、ポリフェニルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン等の熱可塑性樹脂を主成分とするものが使用できる。絶縁層2は2種類以上の樹脂の複合体又は積層体であってもよく、また熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体又は積層体であってもよい。
絶縁層2を構成する樹脂組成物のガラス転移温度は、後述する熱融着層のマトリックス4のガラス転移温度及び発泡剤5の発泡開始温度よりも高い。
絶縁層2の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、絶縁層2の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、150μmがより好ましい。絶縁層2の平均厚さが上記下限に満たない場合、絶縁層2に破れが生じ、金属導体1の絶縁が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層2の平均厚さが上記上限を超える場合、当該自己融着性絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
<熱融着層>
熱融着層3は、合成樹脂を主成分とするマトリックス4と、このマトリックス4中に分散する発泡剤5とを有する。
熱融着層3は、加熱されることで発泡剤5が膨張することにより発泡し、全体的に膨張する。
熱融着層3の加熱前の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、膨張層3の加熱前の平均厚さの上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。膨張層3の加熱前の平均厚さが上記下限に満たない場合、当該自己融着性絶縁電線同士の固着が不十分となるおそれがある。逆に、膨張層3の加熱前の平均厚さが上記上限を超える場合、当該自己融着性絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
熱融着層3の加熱後の平均厚さ膨張率の下限としては、1.1倍であり、2倍が好ましい。一方、熱融着層3の加熱後の平均厚さ膨張率の上限としては、5倍であり、4倍が好ましい。熱融着層3の加熱後の平均厚さ膨張率が上記下限に満たない場合、当該自己融着性絶縁電線を捲線加工したときに、隣接し合う熱融着層3同士の融着が不十分となるおそれがある。逆に、熱融着層3の加熱後の平均厚さ膨張率が上記上限を超える場合、熱融着層3の密度が不十分となることにより却って当該自己融着性絶縁電線の強度が不十分となるおそれがある。熱融着層3の膨張率は発泡剤5の種類及び量、並びに発泡剤の発泡開始温度でのマトリックス4の弾性率を選択することにより制御できる。
加熱による発泡剤5の発泡によって熱融着層3に形成される空孔の平均径の下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、上記熱融着層3に形成される空孔の平均径の上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。上記熱融着層3に形成される空孔の平均径が上記下限に満たない場合、十分な膨張率が得られないおそれがある。逆に、上記熱融着層3に形成される空孔の平均径が上記上限を超える場合、熱融着層3が不必要に厚くなるおそれや、熱融着層3の膨張が不均一になるおそれがある。
熱融着層3の加熱後の空隙率の下限としては、10%が好ましく、50%がより好ましい。一方、熱融着層3の加熱後の空隙率の上限としては、80%が好ましく、70%がより好ましい。熱融着層3の加熱後の空隙率が上記下限に満たない場合、隣接する熱融着層3間の当接圧力が不足して融着が不十分となるおそれがある。逆に、熱融着層3の加熱後の空隙率が上記上限を超える場合、膨張した後の熱融着層3の強度が不十分となるおそれがある。
(マトリックス)
発泡剤5の発泡開始温度におけるマトリックス4の弾性率の下限としては、1kPaが好ましい。発泡剤5の発泡開始温度におけるマトリックス4の弾性率が上記下限に満たない場合、膨張時に熱融着層3が必要以上に流動して融着層の形成が不均一となるおそれがある。
マトリックス4を構成する樹脂組成物の主成分としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリアミド、ブチラール樹脂等の熱可塑性樹脂が使用でき、中でもフェノキシ樹脂が好適に使用される。また、上記熱可塑性樹脂にエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネートなどを添加することにより架橋させて、一部熱硬化タイプにすることも可能である。さらに、熱硬化性樹脂の場合は硬化剤と組み合わせることで半硬化状態又は硬化状態として使用することができる。また、マトリックス4を構成する樹脂組成物は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。
マトリックス4を構成する樹脂組成物として熱硬化性樹脂と硬化剤とを組み合わせた場合、熱融着層3のマトリックス4は熱融着層3の形成時の熱によって半硬化状態又は硬化状態となっている。さらに発泡処理時の加熱により完全に硬化する。マトリックスの弾性率は、未硬化の状態では温度上昇に伴って下がるが、さらに温度上昇して硬化反応が進むと上昇に転じる。マトリックスの弾性率が1kPa以上に上昇した状態で発泡反応を行うことが、発泡倍率や発泡径を制御しやすいので好ましい。
上記フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFを主成分とした樹脂や変性フェノキシ樹脂が例示される。フェノキシ樹脂は、硬化剤の添加により融着処理後に硬化させることが可能であることから、比較的大きな空孔を形成する熱膨張性マイクロカプセルを使用した場合でも膨張層の強度を十分に確保することができる。
上記ポリアミドとしては、例えば各種共重合ポリアミド、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等が例示される。
上記ブチラール樹脂としては、例えばポリビニルブチラール等が例示される。
マトリックス4を構成する樹脂組成物の主成分として使用可能なその他の熱可塑性樹脂としては、例えば共重合ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルフォン、半芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド等が例示される。
(発泡剤)
発泡剤5としては、化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルを用いることができる。
発泡剤5の熱融着層3における含有率の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。一方、発泡剤5の熱融着層3における含有率の上限としては、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。発泡剤5の熱融着層3における含有率が上記下限に満たない場合、熱融着層3の膨張率が小さく、当該自己融着性絶縁電線同士の固着が不十分となるおそれがある。逆に、発泡剤5の熱融着層3における含有率が上記上限を超える場合、相対的にマトリックス4が少なくなることにより、熱融着層3の強度及び融着性が不十分となるおそれがある。
〈化学発泡剤〉
発泡剤5として用いられる化学発泡剤は、加熱することにより分解して、例えば窒素ガス、炭酸ガス、一酸化炭素、アンモニアガス等を発生するものであり、有機発泡剤又は無機発泡剤が使用できる。
有機発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(A.D.C.A)、アゾビスイソブチロニトリル(A.I.B.N)等のアゾ系発泡剤、例えばジニトロソペンタメチレンテトラミン(D.P.T)、N,N’ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド(D.N.D.M.T.A)等のニトロソ系発泡剤、例えばP−トルエンスルホニルヒドラジド(T.S.H)、P,P−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(O.B.S.H)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(B.S.H)等のヒドラジド系、他にはトリヒドラジノトリアジン(T.H.T)、アセトン−P−スルホニルヒドラゾンなどが例示され、これらを単独で、又は二種類以上合わせて使用できる。
また、無機発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム、ソジウムボロンハイドライド、シリコンオキシハイドライド等が例示される。一般的に無機発泡剤は、ガス発生速度が有機発泡剤より緩慢でありガス発生の調整が難しい。そのため、化学発泡剤としては、有機発泡剤が好ましい。
化学発泡剤の分解温度の下限としては、60℃が好ましく、70℃がより好ましい。一方、化学発泡剤の分解温度の上限としては、250℃が好ましく、200℃がより好ましい。化学発泡剤の分解温度が上記下限に満たない場合、当該自己融着性絶縁電線製造時、輸送時又は保管時に化学発泡剤が意図せず発泡してしまうおそれがある。逆に、化学発泡剤の分解温度が上記上限を超える場合、膨張工程でコイル以外のモーター部品に過剰な熱負荷がかかるために悪影響が出たり、発泡剤を発泡させるために必要なエネルギーコストが過大となるおそれがある。
熱融着層3には、化学発泡剤と共に、発泡助剤を配合してもよい。発泡助剤としては、化学発泡剤の熱分解を促進するものであれば特に限定されず、例えば加硫促進剤、充填剤、加硫促進助剤、PVC用安定剤、老化防止剤、加硫剤、尿素化合物等が挙げられる。このような発泡助剤は、化学発泡剤の分解を促進し、発泡温度を低下させる。
加硫促進剤としては、例えばグアジニン系、アルデヒド−アンモニア系、スルフェンアミド系、チウラム系、ザンテート系、アルデヒド−アミン系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系のもの等が挙げられる。充填剤としては、例えばシリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛、塩基性炭酸鉛、水酸化カルシウム、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ジエチレングルコール、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、有機アミン等が挙げられる。PVC用安定剤としては、例えば三塩基性硫酸鉛、ジブチルすずジラウレート、ジブチルすずジマレート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。老化防止剤としては、例えばナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、P−フェニレン系、キノリン系、モノフェノール系、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、亜りん酸エステル系のもの等が挙げられる。加硫剤としては、例えばタイク、硫黄安息香酸アンモニウム等が挙げられる。その他薬品としては、無水フタル酸、サリチル酸、安息香酸、三酸化アンチモン、白色ワセリン、酸化チタン、酸化カドミウム、ホウ砂、グリセリン、ジブチルチンジマレート等が挙げられる。発泡助剤としては、これらの中でも、亜鉛華、三塩基性硫酸鉛、及び各種加硫促進剤が好ましい。
これらの発泡助剤の化学発泡剤100質量部に対する配合量の下限としては、5質量部が好ましく、50質量部がより好ましい。一方、上記発泡助剤の配合量の上限としては、200質量部が好ましく、150質量部がより好ましい。上記発泡助剤の配合量が上記下限に満たない場合、化学発泡剤を分解させる効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記発泡助剤の配合量が上記上限を超える場合、当該自己融着性絶縁電線の製造時や保管時等に熱融着層3が意図せず膨張してしまうおそれがある。
〈熱膨張性マイクロカプセル〉
発泡剤5として用いられる熱膨張性マイクロカプセルは、内部発泡剤からなる芯材(内包物)と、この芯材を包む外殻とを有し、芯材の膨張によって外殻が膨張する。
熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤は、加熱により膨張又は気体を発生するものであればよく、その原理は問わない。熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤としては、例えば低沸点液体、化学発泡剤及びこれらの混合物を使用することができる。
上記低沸点液体としては、例えばブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等のアルカンや、トリクロロフルオロメタン等のフレオン類などが好適に用いられる。
上記化学発泡剤としては、加熱によりNガスを発生するアゾビスイソブチロニトリル等の熱分解性を有する物質が好適に用いられる。
熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の膨張開始温度、つまり低沸点液体の沸点又は化学発泡剤の熱分解温度としては、後述する熱膨張性マイクロカプセルの外殻の軟化温度以上とされる。
より詳しくは、熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度の下限としては、60℃が好ましく、70℃がより好ましい。一方、熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度の上限としては、250℃が好ましく、200℃がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度が上記下限に満たない場合、当該自己融着性絶縁電線製造時、輸送時又は保管時に熱膨張性マイクロカプセルが意図せず膨張してしまうおそれがある。逆に、熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度が上記上限を超える場合、膨張工程でコイル以外のモーター部品に過剰な熱負荷がかかるために悪影響が出たり、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させるために必要なエネルギーコストが過大となるおそれがある。
一方、熱膨張性マイクロカプセルの外殻は、上記内部発泡剤の発泡時に破断することなく膨張し、発生したガスを包含するマイクロバルーンを形成できる延伸性を有する材質から形成される。この熱膨張性マイクロカプセルの外殻を形成する材質としては、通常は、熱可塑性樹脂等の高分子を主成分とする樹脂組成物が用いられる。
熱膨張性マイクロカプセルの外殻の主成分とされる熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリレート、メタアクリレート、スチレン等の単量体から形成された重合体、あるいは2種以上の単量体から形成された共重合体が好適に用いられる。好ましい熱可塑性樹脂の一例としては、アクリロニトリル系共重合体が挙げられ、この場合の内部発泡剤の分解温度は、70℃以上250℃以下とされる。
加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径の下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径の上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記下限に満たない場合、十分な膨張率が得られないおそれがある。逆に、加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記上限を超える場合、熱融着層3が不必要に厚くなるおそれや、熱融着層3の膨張が不均一になるおそれがある。なお、熱膨張性マイクロカプセルの「平均径」とは、熱膨張性マイクロカプセルの10以上のサンプルを顕微鏡観察した際の平面視における最大径とこの最大径に直交する方向の径との平均値をいうものとする。
熱膨張性マイクロカプセルの平均径の熱融着層3の平均厚さに対する比の下限としては、1/16が好ましく、1/8がより好ましい。一方、熱膨張性マイクロカプセルの平均径の熱融着層3の平均厚さに対する比の下限としては、9/10が好ましく、8/10がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記下限に満たない場合、外殻の厚さが不足して膨張時に破れるおそれや、内容積が小さくなり発泡剤が不足して十分に膨張できないおそれがある。逆に、熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記上限を超える場合、熱膨張性マイクロカプセルがマトリックス4から突出して熱融着層3を十分に膨張させられないおそれや、熱融着層3が部分的に膨張して均一に膨張できないおそれがある。
熱膨張性マイクロカプセルの膨張率の下限としては、3倍が好ましく、5倍がより好ましい。一方、熱膨張性マイクロカプセルの膨張率の上限としては、20倍が好ましく、10倍がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの膨張率が上記下限に満たない場合、熱融着層3の膨張率が不十分となるおそれがある。逆に、熱膨張性マイクロカプセルの膨張率が上記上限を超える場合、熱融着層3のマトリックス4が熱膨張性マイクロカプセルに追従することができず、熱融着層3を全体的に膨張させられないおそれがある。なお、熱膨張性マイクロカプセルの「膨張率」とは、熱膨張性マイクロカプセルの加熱前の平均径に対する加熱時の平均径の最大値の比をいう。
[自己融着性絶縁電線の製造方法]
当該自己融着性絶縁電線は、絶縁層2の主成分が熱硬化性樹脂である場合、金属導体1の外周面側に絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物を塗布する工程と、加熱により塗布した絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物を硬化する工程と、硬化した絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物の外周側面側に、溶媒で希釈したマトリックス4中に発泡剤5を分散した熱融着層形成用組成物を塗布する工程と、溶媒を揮発させて熱融着層形成用組成物を乾燥する工程と備える方法により製造できる。
<絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物塗布工程>
絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物塗布工程では、金属導体1の外周面側に絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物を塗布する。絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物を金属導体1の外周面側に塗布する方法としては、例えば液状の絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物を貯留した液状組成物槽と塗布ダイスとを備える塗布装置を用いた方法を挙げることができる。この塗布装置によれば、金属導体1が液状組成物槽内を挿通することで液状組成物が金属導体外周面側に付着し、その後塗布ダイスを通過することで、この液状組成物が略均一な厚さに塗布される。なお、この絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物の塗布に先駆けて金属導体1の外周面にプライマー処理層を公知の方法で形成してもよい。
<絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物硬化工程>
絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物硬化工程では、加熱することによって絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、絶縁層2を形成する。この加熱に用いる装置としては、特に限定されないが、例え金属導体1の走行方向に長い筒状の焼付炉を用いることができる。加熱方法は特に限定されないが、例えば熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等、従来公知の方法により行うことができる。また、加熱温度としては、例えば300℃以上600℃以下とされる。
上記絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物塗布工程と絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物硬化工程とは、複数回繰り返して行ってもよい。このようにすることで、絶縁層の厚さを順次増加させていくことができる。このとき、塗布ダイスの孔径と繰り返し回数とは、金属導体の径及び絶縁層の狙い塗布膜厚にあわせて適宜調整される。
<熱融着層形成用組成物塗布工程>
熱融着層形成用組成物塗布工程では、マトリックス4を構成する樹脂組成物を溶媒で希釈した溶液に発泡剤5を分散した熱融着層形成用組成物を、上記絶縁層2の外周面側に塗工する。熱融着層形成用組成物の塗布方法としては、上記絶縁層形成用熱硬化性樹脂組成物塗布工程と同様とすることができる。
<熱融着層形成用組成物乾燥工程>
熱融着層形成用組成物乾燥工程では、発泡剤5の膨張開始温度よりも低い温度で溶媒を蒸発させることにより、熱融着層形成用組成物を乾燥して、熱融着層3を形成する。乾燥方法としては、例えば熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等、従来公知の方法により行うことができる。
[コイル用電線]
本発明の別の実施形態に係るコイル用電線は、上述の自己融着性絶縁電線を捲線加工し、熱融着層3を膨張させて形成される。
熱融着層3を膨張させるための加熱方法としては、例えば熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等、従来公知の方法により行うことができる他、金属導体1への通電により発生する熱を用いる方法が適用できる。
[巻線束]
本発明の別の実施形態に係る巻線束は、複数の当該自己融着性絶縁電線を捲線加工して束ねることにより形成される。
[利点]
当該自己融着性絶縁電線は、熱融着層3が合成樹脂を主成分とするマトリックス4中に発泡剤5を分散して形成されていることによって、発泡剤5の膨張に伴って確実かつ比較的均一に膨張することができる。
また、当該自己融着性絶縁電線は、熱融着層3の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下であることによって、特にコイルを形成する場合の熱融着層3同士の融着による当該自己融着性絶縁電線間の固着が容易かつ確実であり、融着時に金属導体1間の距離が小さくならず、かつ金属導体1間に一定の空孔を形成することができる。
従って、当該自己融着性絶縁電線を捲線加工し、熱融着層3を膨張させて形成される当該コイル用電線は、熱融着層3間の融着の信頼性が高く、かつ金属導体1間の絶縁性が高い。
また、複数の当該自己融着性絶縁電線を捲線加工して束ねることにより形成される当該巻線束は、例えば巻線束同士を強固に固着させると共に、巻線束とその支持体及び周りの部品とを強固に固着させることができる。その結果、当該自己融着性絶縁電線同士が確実に融着して機械的強度及び電気的絶縁性の向上させることができる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、当該自己融着性絶縁電線において、金属導体と絶縁層との間や絶縁層と熱融着層との間にプライマー処理層等のさらなる層が設けられてもよい。
(プライマー処理層)
プライマー処理層は、層間の密着性を高めるために設けられる層であり、例えば公知の樹脂組成物により形成することができる。
金属導体と絶縁層との間にプライマー処理層を設ける場合、このプライマー処理層を形成する樹脂組成物は、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステル及びフェノキシ樹脂の中の一種又は複数種の樹脂を含むとよい。また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。このような樹脂組成物によって金属導体と絶縁層との間にプライマー処理層を形成することで、金属導体と絶縁層との間の密着性を向上することが可能であり、その結果、当該自己融着性絶縁電線の可撓性や耐摩耗性、耐傷性、耐加工性などの特性を効果的に高めることができる。
また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、上記樹脂と共に他の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂等を含んでもよい。
また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物に含まれる各樹脂として、市販の液状組成物(絶縁ワニス)を使用してもよい。
プライマー処理層の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、プライマー処理層の平均厚さの上限としては、20μmが好ましく、10μmがより好ましい。プライマー処理層の平均厚さが上記下限に満たない場合、金属導体との十分な密着性を発揮できないおそれがある。逆に、プライマー処理層の平均厚さが上記上限を超える場合、当該自己融着性絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
また、絶縁層と熱融着層との間にプライマー処理層を設ける場合も、公知技術に基づいて、絶縁層及び熱融着層に対して高い接着性を有する樹脂組成物が選択される。
また、当該自己融着性絶縁電線の製造方法は、上述の方法に限られない。例えば、絶縁層の主成分を熱可塑性樹脂とする場合には、上記熱融着層の積層方法と同様に溶剤で希釈して乾燥する方法や、溶融した樹脂組成物を塗布ダイスで塗布して冷却硬化させる方法等が適用できる。また、絶縁層や熱融着層を例えば吹付塗装等のさらに他の方法により積層してもよい。
また、当該自己融着性絶縁電線は、コイルを形成する以外にも、複数の絶縁電線を平行に配置した状態とするような他の用途にも使用することができる。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
<自己融着性絶縁電線No.1〜8>
直径1.0mmの銅線に、平均厚さ40μmの絶縁層及び平均厚さ40μmの熱融着層をこの順に積層することによって、自己融着性絶縁電線No.1〜8を試作した。絶縁層及び熱融着層は、それぞれ表1に記載する組成の樹脂組成物を塗布ダイスを用いて塗布し、炉長3mの横炉を用いて炉温200℃、線速4.8m/分の条件で乾燥(焼付)した。
(絶縁層形成用樹脂組成物)
絶縁層形成用樹脂組成物としては、ポリエステルイミドを主成分とするワニス、ポリアミドイミドを主成分とするワニス、ポリイミドを主成分とするワニス又はポリエーテルエーテルケトンを主成分とするワニスを使用した。
(熱融着層形成用組成物)
熱融着層形成用組成物のマトリックスの樹脂成分としては、ガラス転移温度が130℃のポリヒドロキシポリエーテル(フェノキシ樹脂)(新日鉄住金社の「YPS−007A30」)、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド又は耐熱ポリウレタンを使用した。熱融着層形成用組成物のマトリックスの硬化剤としてはノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金社の「YDCN−704」)又はポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社の「MILLIONATE MS−50」)を使用した。また、熱融着層形成用組成物の発泡剤としては、発泡開始温度が190℃の化学発泡剤(永和化成工業社の「ビニホールAC#3C−K2」)又は発泡開始温度が180℃の熱膨張性マイクロカプセル(積水化学社の「EM501」)を使用した。
(マトリックス弾性率の温度依存性)
自己融着性絶縁電線No.1〜8のマトリックスについて、別途、発泡剤を含まない状態で乾燥、固化させたマトリックスを調整し、徐々に温度を上げて弾性率が1kPaとなる温度を測定したところ、自己融着性絶縁電線No.1〜4のマトリックスでは137℃、自己融着性絶縁電線No.5のマトリックスでは116℃、自己融着性絶縁電線No.6のマトリックスでは181℃、自己融着性絶縁電線No.7のマトリックスでは143℃、自己融着性絶縁電線No.8のマトリックスでは241℃であった。なお、「弾性率が1kPaとなる温度」は、ユービーエム社の粘弾性測定装置を用いて測定した。
(可とう性及び絶縁性の評価)
自己融着性絶縁電線No.1〜8について、加熱により熱融着層を膨張させる前の可とう性及び絶縁性を確認し、良好であったものを「A」、不良であったものを「B」とした。なお、可とう性は、20%伸長後に自己径巻きで巻線を30ターン巻付けて、割れ及び浮きがないか目視で確認し、割れ及び浮きがなければ良好とした。また、絶縁性は、絶縁破壊電圧をJIS−C3003−5(2011)に従い、2個撚り線の線間に交流電圧を加え500V/秒で昇圧し、絶縁破壊したときの電圧を測定し、この絶縁破壊電圧が規格値以上のものを良好とした。この結果、表1に示すように、自己融着性絶縁電線No.1〜8のいずれも、可とう性及び絶縁性が共に良好であった。
(熱融着層の平均厚さ膨張率)
自己融着性絶縁電線No.1〜8を加熱して熱融着層を膨張させる前後において、熱融着層の平均厚さを測定し、平均厚さ膨張率を算出した。具体的には、180℃の熱風循環型恒温槽で2時間加熱することにより自己融着性絶縁電線の熱発泡層を膨張させ、マイクロメーターで膨張前の線径と膨張後の線径を測定することにより、熱融着層の平均厚さ膨張率を算出した。表1に示すように、自己融着性絶縁電線No.1〜7の熱融着層は、適度に膨張したが、自己融着性絶縁電線No.8は、まったく膨張しなかった。これは、自己融着性絶縁電線No.8の熱融着層のマトリックスの弾性率が1kPa以上に上昇する温度が発泡剤の膨張開始温度よりも高いことに起因すると考えられる。
(平均空孔径)
加熱後の自己融着性絶縁電線No.1〜8について、熱融着層に形成された空孔の平均径を測定した。なお、この空孔の平均径の測定は、熱融着層の断面をPorus Materials社の「多孔質材料自動細孔径分布測定システム」を用いて測定した。表1に示すように、自己融着性絶縁電線No.1〜7の熱融着層に形成される空孔の平均径は、100μmから130μmの範囲内であった。一方、上述のように加熱により膨張させることができなかった自己融着性絶縁電線No.8は、空孔が形成されなかったので、空孔の平均径を測定することができなかった。
(空隙率)
また、加熱後の自己融着性絶縁電線No.1〜8について、上記膨張前後の平均厚さの測定値を基に、熱融着層の空隙率を算出した。表1に示すように、自己融着性絶縁電線No.1〜7の膨張後の熱融着層の空隙率は、65%から76%の範囲内であった。一方、上述のように加熱により膨張させることができなかった自己融着性絶縁電線No.8は、空孔が形成されなかったので空隙率は0%とされる。
(固着力)
自己融着性絶縁電線No.1〜8を直径6.4mmのステンレス棒に捲き付けて空芯ヘリカルコイルを作製し、この空芯ヘリカルコイルに軸方向に400gfの圧縮力を作用させながら使用した発泡剤の分解温度で20分間加熱処理した後、温度180℃でJIS−K7171(2008)に準拠した3点曲げ試験を行い、空芯コイルの曲げ応力を測定し、これを自己融着性絶縁電線間の固着力の指標とした。表1に示すように、自己融着性絶縁電線No.1〜8は、いずれも十分な固着力を有していた。
Figure 2016081563
No.8のサンプルのマトリックス樹脂は弾性率が1kPa以上となる温度が241℃と高く、発泡温度(180℃)付近での弾性率は1kPaより低いと推測される。そのため、発泡剤の分解反応は起こるがマトリックス樹脂が流れやすいために樹脂表面から気泡が抜け、融着層内に空隙を形成できなかったと思われる。
本発明に係る自己融着性絶縁電線は、コイルやモーター等を形成するために好適に利用することができる。
1 金属導体
2 絶縁層
3 熱融着層
4 マトリックス
5 発泡剤(熱膨張性マイクロカプセル)

Claims (7)

  1. 線状の金属導体と、この金属導体の外周面側に積層される絶縁層と、この絶縁層の外周面側に積層され、加熱により膨張する熱融着層とを備える自己融着性絶縁電線であって、
    上記熱融着層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルとを有し、
    上記熱融着層の加熱後の平均厚さ膨張率が1.1倍以上5倍以下である自己融着性絶縁電線。
  2. 上記化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度における上記熱融着層のマトリックスの弾性率が1kPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の自己融着性絶縁電線。
  3. 上記熱融着層における化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの含有率が1質量%以上15質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の自己融着性絶縁電線。
  4. 上記化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルの発泡により上記熱融着層に形成される空孔の平均径が300μm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の自己融着性絶縁電線。
  5. 上記熱融着層の加熱後の空隙率が10%以上80%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の自己融着性絶縁電線。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の自己融着性絶縁電線を捲線加工し、熱融着層を膨張させて形成されるコイル用電線。
  7. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の複数の自己融着性絶縁電線を捲線加工して束ねることにより形成される巻線束。
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